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No.8211の一覧
[0] 魔法生徒ネギま!(改訂版)[雪化粧](2019/05/20 01:39)
[132] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第零話『魔法学校の卒業試験』[我武者羅](2010/06/06 23:54)
[133] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第一話『魔法少女? ネギま!』[我武者羅](2010/06/06 23:54)
[134] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第二話『ようこそ、麻帆良学園へ!』[我武者羅](2010/06/06 23:55)
[135] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第三話『2-Aの仲間達』[我武者羅](2010/06/06 23:56)
[136] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第四話『吸血鬼の夜』[我武者羅](2010/06/07 00:00)
[137] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第五話『仮契約(パクティオー)』[我武者羅](2010/06/07 00:01)
[138] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第六話『激突する想い』[我武者羅](2010/06/07 00:02)
[139] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第七話『戦いを経て』[我武者羅](2010/06/07 00:02)
[140] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第八話『闇の福音と千の呪文の男』[我武者羅](2010/07/30 05:49)
[141] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第九話『雪の夜の惨劇』[我武者羅](2010/07/30 05:50)
[142] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十話『大切な幼馴染』[我武者羅](2010/06/08 12:44)
[143] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十一話『癒しなす姫君』[我武者羅](2010/06/08 23:02)
[144] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十二話『不思議の図書館島』[我武者羅](2010/06/08 20:43)
[145] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十三話『麗しの人魚』[我武者羅](2010/06/08 21:58)
[146] 魔法生徒ネギま! [幕間・Ⅰ] 第十四話『とある少女の魔術的苦悩①』[我武者羅](2010/06/09 21:49)
[147] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十五話『西からやって来た少年』[我武者羅](2010/06/09 21:50)
[148] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十六話『暴かれた罪』[我武者羅](2010/06/09 21:51)
[149] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十七話『麻帆良防衛戦線』[我武者羅](2010/06/09 21:51)
[150] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十八話『復讐者』[我武者羅](2010/06/09 21:52)
[151] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十九話『決着』[我武者羅](2010/06/09 21:54)
[152] 魔法生徒ネギま! [第四章・麻帆良の日常編] 第二十話『日常の一コマ』[我武者羅](2010/06/29 15:32)
[153] 魔法生徒ネギま! [第四章・麻帆良の日常編] 第二十一話『寂しがり屋の幽霊少女』[我武者羅](2010/06/29 15:33)
[154] 魔法生徒ネギま! [第四章・麻帆良の日常編] 第二十二話『例えばこんな日常』[我武者羅](2010/06/13 05:07)
[155] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十三話『戦場の再会?』[我武者羅](2010/06/13 05:08)
[156] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十四話『作戦会議』[我武者羅](2010/06/13 05:09)
[157] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十五話『運命の胎動』[我武者羅](2010/06/13 05:10)
[158] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十六話『新たなる絆、覚醒の時』[我武者羅](2010/06/13 05:11)
[159] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十七話『過去との出会い、黄昏の姫御子と紅き翼』[我武者羅](2010/06/13 05:12)
[160] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十八話『アスナの思い、明日菜の思い』[我武者羅](2010/06/21 16:32)
[161] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十九話『破魔の斬撃、戦いの終幕』[我武者羅](2010/06/21 16:42)
[162] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第三十話『修学旅行最後の日』[我武者羅](2010/06/21 16:36)
[163] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十一話『修行の始まり』[我武者羅](2010/06/21 16:37)
[164] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十二話『ボーイ・ミーツ・ガール(Ⅰ)』[我武者羅](2010/07/30 05:50)
[165] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十三話『暗闇パニック』[我武者羅](2010/06/21 19:11)
[166] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十四話『ゴールデンウィーク』[我武者羅](2010/07/30 15:43)
[167] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十五話『ボーイ・ミーツ・ガール(Ⅱ)』[我武者羅](2010/06/24 08:14)
[168] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十六話『ライバル? 友達? 親友!』[我武者羅](2010/06/24 08:15)
[169] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十七話『愛しい弟、進化の兆し』[我武者羅](2010/06/24 08:16)
[170] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十八話『絆の力』[我武者羅](2010/07/10 04:26)
[171] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十九話『ダンスパーティー』[我武者羅](2010/06/25 05:11)
[172] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十話『真実を告げて』(R-15)[我武者羅](2010/06/27 20:22)
[173] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十一話『天才少女と天才剣士』[我武者羅](2010/06/28 17:27)
[175] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十二話『産まれながらの宿命』[我武者羅](2010/10/22 06:26)
[176] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十三話『終わりの始まり』[我武者羅](2010/10/22 06:27)
[177] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十四話『アスナとネギ』[我武者羅](2011/08/02 00:09)
[178] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十五話『別れる前に』[我武者羅](2011/08/02 01:18)
[179] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十六話『古本』[我武者羅](2011/08/15 07:49)
[180] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十七話『知恵』[我武者羅](2011/08/30 22:31)
[181] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十八話『造物主の真実』[我武者羅](2011/09/13 01:20)
[182] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十九話『目覚め』[我武者羅](2011/09/20 01:32)
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[8211] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十五話『ボーイ・ミーツ・ガール(Ⅱ)』
Name: 我武者羅◆cb6314d6 ID:87b1fc72 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/24 08:14
魔法生徒ネギま! 第三十五話『ボーイ・ミーツ・ガール(Ⅱ)』


 ゴールデンウィークの最終日、ネギはアスナとあやかと一緒にあやかの家のリムジンで麻帆良にある大型デパートに買い物にやって来ていた。昨日、故郷の合衆国に帰っていたキャロが電話をしてきたのだ。
『そうそう、言い忘れてた事があったんだ~。今月の末に高等部でダンスパーティーがあるの。ウルスラの人達とかも来て、格式の高いダンスパーティーなんだけど、私達も中等部だけど例外的に参加出来るんだよ~。いい経験になるから、ネギちゃんも参加する様に! それで、ドレスを一着用意しておいて欲しいんだ。どうしても用意出来なかったら、私のを貸してあげるけど、いい機会だから少なくともお店でどういうドレスがあるのかくらいは確認しておいてね』
 という事で、今日はドレスを買いに来たのだ。
 今後も必要になるだろうし、キャロに借りてばかりというのも難だと思ったからだ。最初は一人で来ようと思っていたのだが、ドレスの事などサッパリなネギは、知識のありそうなあやかにドレスについて尋ねた。すると、あやかは是非にと買い物に同行を申し出たのだ。それを偶然聞いていたアスナも自分も一緒に行くと言って、現在に至る。
「私も幾つかのダンスパーティーに招待された事があるのですが、聞いた限りではネギさんがダンス部で参加するというダンスパーティーは社交ダンスで間違いありませんわ」
「私、社交ダンスとかはちょっと…………」
 イギリスに居た頃、魔法学院でも当たり前の教養としてある程度は習っていたが、毎回アーニャの足を踏んでしまい怒られた記憶しかない。
「社交ダンスは男女で踊るのが基本なのですが、その辺はどうなっているのですか?」
「えっと、キャロはダンス部の男子は人数が少ないから、出来れば友達の男子を連れてきて欲しいって」
「なら、小太郎でいいじゃない」
 アスナが言うと、ネギはうっと呻いた。
「あの黒髪の少年ですか? …………確かに、ダンスでは互いの関係が重要ですけど」
「何よ、ショタコンのいんちょが珍しい」
 あやかにとってはピンポイントっぽい年下の男の子である小太郎に渋面する姿にアスナは驚いた。
「し、失礼ですわね。私はショタコンではありません! まぁ、あのくらいの年頃の少年を見るとつい……。いえ、今はいいのです!」
 ネギは一瞬だけあやかが泣きそうになった気がした。アスナも余計な事を言ったと苦い表情になった。
「ダンスの中でも格式の高い部類なので……」
 あやかの言わんとしている事に察しがついてアスナは苦笑した。
「確かに、小太郎に社交ダンスって、あんまりイメージつかないわよね」
「で、でも……。小太郎はその……決める時は決めてくれるというか…………」
 何とか小太郎の弁護をしようとネギが言うと、アスナとあやかが一緒になって口元を押さえ噴出した。クスクス笑う二人にネギは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「あ、ごめんごめん!」
「ついその……甘酸っぱくて」
 何とかネギのご機嫌を取り戻そうと謝罪する二人に、ネギは何となく複雑な気持ちになりながら気を取り直した。
「でも、その様子ならちゃんと小太郎を誘えるかしらね」
「ふえ!?」
 アスナはシテヤッタリという顔をしながら言った。ネギは目を丸くした。
「ですから、ダンスパーティーに誘うのですよ。日本では男性から女性に申し込むのが殆どですが、海外では女性側から申し込む事の方が寧ろ多いですわ。特に、ハイスクールのダンスパーティーでは」
「え、あの……。小太郎も忙しいかもしれないですし…………」
「とりあえず、聞いてみたらいいじゃない」
「でも…………」
 尻込みしているネギの姿にアスナとあやかはニヤケナイ様にするのに必死だった。他人の恋愛ほど愉快な事は早々無い。
「小太郎を誘わなきゃ、ダンス部の人とかが相手になるんでしょ? もしかしたら、高等部の人かも。知らない人相手にちゃんと踊れる?」
「う…………」
 アスナの言葉はネギの痛い所を突っついた。見知らぬ男性に手を取られて振り回されている姿を想像してネギは首を振った。
「無理でしょ? 大丈夫だって、アイツなら断ったりしないから」
「でも…………」
 それでも尻込みしているネギにあやかは手をパチンと叩いた。ネギは音に驚いてビクリとした。
「とにかく、社交ダンスは踊りと同じか、それ以上にマナーが大切なのです! マナーに関してはわたくし、僭越ながらお力添えが出来ますわ! で・す・か・ら!」
「ひゃ、ひゃい……」
 あやかはネギの両肩を掴んでグイッと顔を近づけた。あまりのあやかの迫力にネギは涙目になった。
「ちゃんと、小太郎さんを誘っておいてください。一朝一夕では身に付きませんからね」
「は、はい…………」
 ネギは力無く返事をした。

 ドレスの売り場は十三階建てのデパートの十階にあった。品揃えは豊富とは言えなかったが、ネギが自分のお金で買うと言うので、本当はオーダーメイドでもしようかと考えたあやかは仕方なくここに案内したのだ。質は中々で、値段も手頃なのだ。お店に入ると、アスナとあやかはそれぞれ二、三着ずつ見つけてきた。あやかはアスナがあまりにも“まとも”なドレスを持ってきた事に驚いた。
「私だって、このくらいは朝飯前なのよ!」
 あやかが何かを言う前にアスナは得意になって言った。あやかは一瞬怪訝な顔をしたが、直ぐに感心した様な表情をした。
「少し、スポーティーな感じがしますが、アスナさんらしいですわね」
「そう言ういんちょだって、ちょっと豪奢なんじゃない?」
「このくらいは普通ですわ。ネギさんの可愛らしい顔立ちを引き立てるにはこういうのがよろしいのです」
「私のだって! ネギは線が細いから、こういうので見せかけだけでも活発そうにした方がいいのよ」
 アスナが持ってきたのは、鮮やかなブルーの膝丈のスリップドレス。ネギは髪の毛と瞳が両方とも赤いから逆に映えると思ったのだ。あやかが持ってきたのは、一つは薄いピンクのドレス。もう一つは、ストラップレスのシンプルな黒いロングドレスだった。二人共値段もキチンとネギの予算に合う様に選んでいた。試着室で二人に選んでもらったドレスを交互に着て、二人に感想を求めると、アスナの選んだドレスは失敗だった。
「う~ん、映えると思ったんだけど……」
「やはり、正反対の色ですから。ですが、スリップドレスは悪くありませんわ。色の違うのを試してみましょう」
 そう言うと、あやかはサッとドレスを戻しに行き、直ぐに色の違う同じ形のドレスを持ってきた。今度は白いドレスだ。
「うん。やっぱ、白は清楚さが引き立つわね」
「まあ、アスナさん本当にお分かりになっているのですね」
 アスナの感想にあやかは意外そうに呟いた。それから、あやかが持ってきたドレスもネギが試着すると、薄いピンクのドレスはネギの髪と瞳によく似合った。
「さっきのもいいけど、コッチも中々ね」
「そうですわね。ネギさん、何とも愛らしいお姿ですわ」
「そ、そうですか?」
 ネギは鏡に映ったドレス姿の自分の姿に今一ピンと来なかった。
『あやかさんやアスナさんが褒めてくれてるし…………、小太郎も褒めてくれるかな?』
 背中を鏡で映しながらネギは何となくそんな事を考えていた。アスナとあやかはネギを褒めちぎり、ネギは薄いピンク色のドレスに決めた。それから却下されたドレスをラックに戻した。
 以前、こういう場所でネカネと買い物に来ると恐ろしい程時間が掛かったが、それに比べるとずっと短時間で楽だった。恐らくは選択肢が限られているからだろう。ネカネは直ぐに目移りをして、無駄なモノまで買ってしまうから。
 それから、靴と小物の売り場に向かった。パーティー用なのだから、ドレスだけ買っても仕方ないのだ。ネギは帰るつもりだったので、アスナとあやかに連れられて驚いていると呆れられてしまった。アスナとあやかは二人で相談しながらネギのドレスに合う靴と小物を見繕い始めた。ネギは手持ち無沙汰に二人を眺めながら適当に小物を手で抓んだ。ついでに新しい靴も買おうかなとも思ったが、さすがにそこまでの予算は無いかと諦めた。
「あのぅ、アスナさん」
 アスナとあやかが見繕って来たピンクのストラップシューズを試しながらネギは恐る恐るアスナに切り出した。
「なに?」
 アスナが幾つかのサイズの靴をネギに合わせている。
「アスナさんは、その…………」
 中々言い出し難かった。言うと、何だか自分の中で何かのラインを乗り越えてしまいそうで怖かった。だけど、自分では中々難しい問題だった。
「そのホワイトのブーツいいですね」
 アスナは自分用にも普段用のブーツを見つけていたのだ。
「ん~、そう思う? ネギがそういうなら~、買っちゃおうかな」
 可愛らしい、活発なアスナが普段使うにはあまりにも脆そうだ。それ故に、ネギにもその靴の用途に察しがついた。
「もしかして……、高畑先生にデートを申し込んだのですか?」
 同じく察しがついたらしく、僅かに動揺しながらあやかが尋ねた。祝福したいが、もし本当なら生徒と教師の間で不純な香りが漂う。
「違うの……。そうだったね。いんちょには一番に教えるべきだった……。明日さ、ちょっと時間頂戴」
「え? …………いいですけど」
 違うと言われて、あやかは動揺した。てっきり、デート用の靴を選んだのだと思ったのだが、自分の見当違いだった様だ。だが、自分に一番に教えるべきだったとはどういう事だろう? あやかは戸惑いを隠せなかった。
「少し…………、小物を見繕って来ますわ」
 そう言うと、フラフラとあやかは去ってしまった。
「で?」
「…………え?」
「私に聞きたい事があるんでしょ? なあに?」
 アスナはネギの足のサイズに見事に合う一品を見つけて満足そうに呟いた。ネギは息を呑んだ。自分の考えは、アスナには何でもお見通しな気がしたのだ。どうして、自分が聞きたい事がある事を分かるんだろうか、ネギは戸惑った。
「顔に出てる。それに、もう、付き合い短くないのよ? 私達。そのくらい、分かるわよ。で、何が聞きたいの?」
 クスクス笑いながら、アスナはネギが座っている店内のベンチに座りながら遠くで小物を探しているあやかを見つめながら尋ねた。ネギは敵わないな、と実感しながら諦めた様にポツリと呟いた。
「その……、アスナさんならフェイトさんにどうやって切り出しますか?」
 アスナは予想をしていたかの様に平然と答えた。
「簡単よ。命令するわ。私と踊りなさい! ってね」
「命令ですか!?」
 思わず顔を上げる。
「当然。アスナでも、明日菜でも、私は命令するわ。だって、じゃなきゃフェイトはうじうじ言うし。ま~だ、引き摺ってるからね~」
 アスナは呆れた様な、だけどどこか面白がる様に言った。
「男の子を誘うのは自分の言葉の方がいいわよ? だって、その方が特別だし。何よりもそれが礼儀よ」
 アスナの言葉に、ネギは俯いた。
「自信が……無いんです」
 ネギは零す様に呟いた。
「不思議なんですけど……、もしも断られたらどうしようって……。それが、どうしてか怖くて。断られても、それは仕方ないって思うのが普通の筈なのに…………」
 瞳を僅かに揺らしながら呟くネギに、アスナは大きく溜息を吐いた。それから、意を決した様に言った。
「仕方なく無いって、そう思ったんでしょ? それ、自然な事だよ? 神楽坂明日菜(わたし)は何度も経験してる。息が出来なくなるくらい苦しい気持ちになったりね。どうやったら、あの人の気が惹けるかな? どうしたら、もっと私を見てくれるかな? そんな事年中考えて……」
「そ、そういうんじゃなくて!!」
 ネギは思わず顔を逸らした。現実から眼を逸らす様に。アスナは思案しながら呟いた。
「前に一歩踏み出す勇気。きっとね、それは何よりも難しくて、強いよ。魔法なんかよりずっとね」
「踏み出す勇気…………ですか?」
「そ、どうしても躊躇っちゃう一歩はどんな時だってある。その時に一歩踏み出せる人間は、きっと輝くわ。男でも、女でもね」
「そう言えば、お爺ちゃんが言ってました」
「なんて?」
「『Our magic is not almighty. Slight courage is true magic.』って」
「僅かな勇気が本当の魔法……か。いい言葉じゃない。なら、頑張ってみなさいよ」
「うっ…………」
「かっこいい事言ったくせに、しょうがないわね。ま、ダンスパーティーまで時間もあるんだから、ゆっくり考えなさいよ」
「はい…………」
 そうこう話していると、あやかが戻って来た。あやかが持ってきた小物も一緒に会計を済ませてしまうと、時間は未だかなり早かった。夕食には未だ早過ぎる。夕食はあやかのお薦めの穴場なイタリア料理店でとる予定だったのだが、時間を潰さないといけなくなった。服屋で適当に見て周り、それぞれ外行きの服を買って着替えてみたりもしたが、時間は有り余った。ちなみに、ネギの服はアスナがコーディネイトした。三人共目を引く可愛らしい格好となった。
 あやかとアスナがそれぞれ見に行きたい店があるという事で、店の場所だけ確認すると一時間後に集合という事で、あやかの家のリムジンに荷物だけ乗せると一旦分かれる事になった。
 ネギは別に見たいお店など無かったが、アスナとあやかの買い物の邪魔をするのもなんだと思い、適当に本屋で時間を潰す事にした。大手の本屋の店舗が幾つも並んでいて、どれもこれも同じ様な品揃えだった。どうしてこんなに密集させる必要があるんだろう? そう考えながら、適当にお店に入った。
 料理の雑誌を見つけると、適当に手に取って開いてみる。何気なく取ったつもりなのに、何故か京都料理の紹介が載っていた。深く考えない様にして、ネギは料理の作り方に目を通した。
 最近は木乃香と自然に分担し合って、お互いを助け合える様になっていた。最初は木乃香の手伝いが目的だったのだが、最近では趣味になりつつある。
 雑誌の中に京都料理のお弁当レシピがあった。
『今度、小太郎に持って行ってみようかな……』
 そんな事を考えながら、ネギは雑誌を会計に持って行った。時間は殆ど経っていなかった。
 店の場所は少し離れた地区の外れにある。ネギは地区の外れに向かって、夕方のラッシュで混雑する通りをふらふらと歩いていく。お弁当を渡す姿などを妄想しては自己嫌悪に陥ったり悶々したりして、何時の間にか人通りが少なくなって居る事に気がつかずに居た。本当はゴールデンウィークに一緒にどこかに行きたいな、と考えていた。なのに、ゴールデンウィークに入るとどこを探しても居ない。エヴァンジェリンに尋ねると、どうにも土御門に連れて行かれたらしいのだが……。何だか考えている内にイライラとし始めた。
 会いたいと思うのは、数少ない男友達だからで、と言い訳をしながら、会いたくなった時に会えない小太郎に何とも理不尽な怒りを覚えたのだ。本人が聞いたら、自分のどこに落ち度があるんだ!? と怒鳴り散らしそうな程理不尽な事を考えていると自分でも分かっていて、それが余計にイラつかせた。自分はどうしてしまったんだろうか、と。まるで、小太郎に自分が振り回されている様な気分だった。
 何とか、アスナ達と合流する前にこの何とも言えない感情を整理しないと、と考えて、ネギは耳に掛かった髪の毛を手櫛で払って深呼吸をした。しばらく歩いていると、おかしいと感じた。周りは何だか倉庫だらけだし、歩行者も殆ど居ない。数少ない歩行者も自分と反対の方向を歩いている。そろそろ合流しなければいけない時間だ。焦りを覚えながら道を駆けていく。と、前から男性が数人並んで角を曲がって来た。
 カジュアルな格好からして、恐らくは生徒だろう。この辺は少し不良の多い高等部があると前に聞いた事があった。大声で厭らしい冗談を飛ばし合って、けたたましく下品に笑いあって、小突き合っている。聞いているだけで嫌気が差す様な言葉が飛び交い、ネギは出来るだけサッサと速やかに通り過ぎようと壁際に身を寄せて、少年達が通れるスペースを作った。目を合わせないでスタスタと歩く。
「やぁ!」
 擦れ違い様に少年の一人が声を掛けてきた。周りには誰も居ないのだから、当然、少年の声を掛けた相手は自分しか居ない。ネギはつい目を向けてしまった。数人が立ち止まって、他の少年達も歩調を緩めた。ガッチリした感じの少年達は嘗め回す様にネギを観察した。
 全身が粟立つ様な感覚を覚えた。あまりにも気持ちの悪いその視線から逃れようと、さっと視線を逸らして急いで角に向かった。少年達がゲラゲラと笑い声を上げる。ネギにはどうして笑うのか分からなかった。ただ、無性に怖くなった。今迄感じた事の無い種類の感覚だった。
 脳が警鐘を鳴らしている。とにかく、逃げないと駄目だと思った。今は杖を持っていないし、外行きの服にお店で着替えた時に指輪も置いて来てしまったのだ。
 それに、セシルマクビーのパーカーにミニのジーンズスカートというアスナのコーディネイトした服装はあまり激しく動きたくない格好だった。何せ、少し動いただけで見えてしまうのだ…………。見えない様に歩くのも慣れたものだが、それでもこうまで短いと勝手が違う。ネギは少しだけアスナを恨んだ。
「おい、待てよ!」
 少年の一人がまた呼び掛けて来た。返事をするべきなのだろうと思うのだが、本能的に俯いたまま返事をせず角を曲がった。安堵の溜息をつくと、背後からまだ少年達の大きな笑い声が聞こえて耳が痛くなりそうだった。
 そのまま、逃げるように歩くと、そこは麻帆良にある倉庫街なのだと理解出来た。広大な敷地面積を持つ麻帆良には、所々にこういった施設が存在するのだ。エリア毎に業者の荷物の保管などに使われている。尤も、大手の店舗は自分の倉庫を店舗内に持っているのが殆どだが――。
 トラックの荷降ろし用の大きな出入り口があって、すでにどれも南京錠が掛けられている。厳重な管理がされている様子だ。天井には金網まで張ってある。どう考えても、学生が生活する区域を大幅に逸脱した空間に迷い込んでしまったらしい。
 空は茜色から漆黒の闇に変わっている。肌寒さを感じたが、上着もリムジンに置いて来てしまっている。胸の前でしっかりと腕を組んだ。空はどんどん暗くなっていく。心なしか、どんよりと雲も分厚く天を覆っている感じがする。
 小さな擦れる音が聞こえた気がして、肩越しに後ろを向くと、ギョッとした。さっきの少年達の内の何人かが数メートル後方に立っていたのだ。怖くなって直ぐにその場を後にして歩き出した。辛うじて身体強化は使えるのだ。いざとなれば逃げられる――。そう考えながらも、震えが治まらなかった。
 天気と関係の無い寒気に身震いする。と、唐突に足音が消えた。
 不意に、馬鹿馬鹿しくなった。つけられているなんて、そんなのは自分の馬鹿な妄想で、ただの被害妄想なんじゃないかと。それでも、次の角に向かって、殆ど走るようなペースで歩いた。微かに後方で足音がしたが、首を振って誤魔化した。心臓がドクドクと鼓動を早めている。喉がからからに渇き、自分が今何を感じているのか分からなかった。そもそも、自分は何を恐れているのだろう。何も分からなかった。
 ちらりと振り返ると、少年達はかなり遠くに居る。未だ、視線を此方に向けている気がするが、少し安堵した。永遠にも思える時間が駆け抜け、漸く角に辿り着くと、少年達も歩みを緩めていた。きっと、からかわれていたに違いない。そう考えて安堵した直後に息が止まった。
 角を曲がると、そこには何も無かった。店も、倉庫も、それどころか道そのモノが無かったのだ。
『行き止まり!?』
 凍りつくネギの耳に、カサリと音が聞こえた。我に返ると慌ててその行き止まりの路地から逃げ出そうと振り返った。すると、路地の入口には既にさっきまで自分を追っていた少年とさっき通り縋った少年達が物欲しげな目つきで塞いでいた。理解してしまった。
『からかうのを止めたんじゃなくて…………追い込まれたの?』
 カチカチと耳障りな音が聞こえる。それが、自分が震えて歯を鳴らしている音なのだと気付くのに僅かに遅れた。
 深まる夕闇は電灯の少ない路地を闇に染め、少年達を覆い隠す。ソレが一層恐怖を煽り立てた。
『知らない。何コレ!? 何で、だって…………』
 向けられる気色の悪い視線に鳥肌が立った。こんなのは知らない。未だ、雄も雌も知らないネギは、その正体が分からなかった。
「来ないで…………」
 搾り出す様に、それだけが言葉になった。一際ガタイのいい少年がニヤけながら近づいてくる。
「知ってるか? 学園都市ってのは、閉鎖された空間なんだぜ。“こういうお遊び”の事を、人に中々話せないんだ。なんせ、簡単に広まっちまうからな。逆に言うとだ、女の方も中々人に喋れないんだよコレが」
 そう言うと、少年は近くの壁を思いっきり蹴った。ズドンという思い響きが轟き、ネギはギクッとなった。
「こうやって脅してやるんだよ。んで、こう言うんだ。『俺達にゃ、他にも仲間が沢山居るんだ。だから、誰かに言って俺達が捕まったら、お前は俺達の仲間に報復されるぞ』ってな!」
 少年の言葉に、下卑た笑い声が路地に響き渡る。
「広域指導員たって、こんな場所までは中々目が届かないんだぜ。見回りの時間も把握してるしな」
 ニタニタと気持ちの悪い笑みを見せる少年に、ネギは足元がグラついた。まるで、足元の地面が揺れている様だった。
 何を言ってるのか分からない。ただ、恐怖が全身を支配した。
 少年が合図をすると、何人かの別の少年がネギに近寄って来た。
「こ…………ないで……」
 躯に力が入らない。こんな事は始めてだった。ヘルマンや、千草や、他の敵と戦う時にだって、こんな風にはならなかったのに――。
 少年達がネギを路地の行き止まりの壁に追い詰めて腕を押さえて磔にした。
「前のは結構良かったんだけどな~、ヤり過ぎて頭がおかしくなっちまったんでな。新しいの調達しようって事になってたんだよ。いや~、都合良くいいのが手に入ったわ」
 少年達の手が、ネギのアスナに選んでもらった服を脱がそうとしてくる。
『どうして!?』
 何故、自分の服を脱がそうとするのかが分からなかった。ただ、絶対に脱がされてはいけないとだけは直感して抵抗した。だが、力は殆ど入らなかった。
「ったく、そもそもこんな場所にそんな格好で来るってのは、そういうの期待してたんじゃないのか? なら、さっさと抵抗止めろよ!」
 と、ネギの頬を強い衝撃が襲った。叩かれたのだ。
 ネギは頭の中が真っ白になった。どうして、自分が叩かれたのかが分からなかった。ただ、一気に絶望感に満たされていった。
 焦れた少年達が、ネギのパーカーを無理矢理破こうとした、その時だった――。
「ナニシトルンヤ?」
 あまりにも恐ろしい殺気の篭った声が路地に響いた。路地を塞いでいた少年達から悲鳴が響き渡る。何かが折れる音や、何かが飛び散る音が聞こえる。そして、死神が絶望を運んで来た――少年達へと。
「なんだテメエ!!」
 ガタイのいい少年が怒声を上げながら殴りかかる。何人かの少年が制止を呼びかけるが、無駄だった。少年の骨は、暗闇から現れた小太郎の手によってあらぬ方向に折り曲げられた。少年の絶叫に少年達が凍りつく。尚も、小太郎は少年に攻撃を加えた。
 腹を蹴り飛ばし、両手の骨を踏み砕いた。他の少年もあっという間に地面にキスをさせると、小太郎はネギに自分の上着を掛けた。パーカーは所々破れてしまっていて、下着が露出していたのだ。
「もう、大丈夫やで」
 と、小太郎はそれまでの恐ろしい雰囲気を一変させてネギの頭を優しく撫でた。それから、力強く抱き締めた。緊張が解け、途端にネギは小太郎に縋りついた。上手く立っていられなくなっていたのだ。
 不意に込み上げてきた感情を抑え切れず、ネギは泣き喚いた。ずっと、小太郎はネギの頭をポンポンと優しく叩きながら、泣き止むのを待った。
「ほんに、遅うなってごめんな」
 稚児をあやす様に優しく、小太郎は泣きじゃくるネギを抱きしめ続けた。と、後ろから気配が現れた。
「コイツ等、常習犯だな。警備が万全じゃなかったか……クソッ!」
 背後に現れた土御門は恐ろしい形相で倒れている少年達を睨んでいた。
「土御門の修行のおかげやな……。ギリギリで間に合った……」
「こた……ろう?」
 小太郎が言うと、ネギが愚図りながら顔を上げた。
「ああ、ワイが修行を終えた後に土御門が迎えに来たんやけど、そん時に頭ん中にお前の声が聞こえた気がしたんや。そんで、土御門に術でネギの居場所探ってもろうてな」
「そう……だったんだ…………」
「さ、ここは俺が片付けておく。ここに居るのは…………よくない」
「ああ」
 土御門に促され、小太郎がネギを連れ出した。その時の小太郎がネギの手を握る手は僅かに震えていた。小太郎は影を掬い上げるように目の前にゲートを開いた。
「転移……!?」
 驚いてネギが聞くと、小太郎は頷いた。
「影を使った奴や。前に、エヴァンジェリンさんに見せてもらった奴やけど、修行を終えたら使える様になってた。これで、ショートカットしまくって来たんや。まだ、短距離しか転移出来なくてな」
「凄い…………」
 転移はかなり難しい高等術式だ。どちらかといえば、感覚的な部分の多い術式で、才能が強く求められる。転移で人の多い場所まで見つからない様に慎重に移動すると、ネギは小太郎のジャケットを着たまま近くのお店に入って既にコーディネイトされている…………少し可愛い感じの服を購入した。お財布だけは食事に行くので持っていたのだ。
 破れてしまったパーカーは一緒に購入した手提げ鞄に仕舞った。雑誌を失くしている事に気がついたが、どうでも良くなってしまった。店から出て、人どおりの少なくなってきた小太郎の座っている通りのベンチに近づくと、胸が高鳴った。
 まともに小太郎の顔を見る事が出来なかった。
『な、なんで!? …………そ、そういえば、さっき思いっきり泣いちゃったし…………。どうしよう、嫌われてないよね!? でも、泣き喚いて情け無いし……』
 頭の中がゴッチャになってしまっていると、突然立ち止まったネギに小太郎は怪訝な顔をした。そして、立ち上がるとすぐ隣の自販機からコーラを二つ買った。
「ひゃっ!?」
 突然冷やりとした感触が頬に当り、ネギは思わず変な声を上げた。
「ちょっと、落ち着こうや。怖かったやろうけど、もう大丈夫なんやで?」
 ニッと笑みを浮かべる小太郎に、また目尻に涙が浮かんできて、慌てて拭った。ベンチに腰を下ろすと、コーラをグイッと飲んだ。
「って、一気飲み!?」
 小太郎が驚くと、ネギは缶から口を離してゲホゲホと堰をした。小太郎は苦笑しながらハンカチをくれた。
「慌てて飲むからやで?」
「ご、ごめん……なさい」
 顔が真っ赤に染まった。
『な、何やってるの私!?』
 あわあわとしているネギに、小太郎は困った様な顔をした。
「ほんまに大丈夫か? なんやったら、ちょっと病院にでも…………」
「大丈夫!!」
「さ、さよか…………」
 慌てて叫ぶ様に言ってしまい、また赤面した。自分がどうにかなってしまった様な気分だった。まったく自制が効かない。
 小太郎に呆れられている気がしてまた泣きそうになった。すると、小太郎は困った様にしながら慰めようとしているのか、恥しそうに頭を撫でてくれた。
 その少し離れた場所で――。
「そこよ!! なんかよく分かんないけどチャンスよ、ネギ!!」
 物陰からアスナとあやかが興奮した面持ちで静かに声援を送っていた。
 実は、何時まで経ってもネギが来ないので心配になり、二人で探していたのだ。すると、ネギがお店から出てくるのが見えたのだ。ちょっと、心配を掛けた事に叱ってやろうとアスナが近寄ろうとすると、あやかが慌てて押し留めた。小太郎が居たのだ。
 どうして小太郎がここに!? と思ったが、あまりにも面白い展開に完全に観戦モードになってしまったのだ。ジュースとお菓子まで持って、双眼鏡を傾けている。
「一体何があったんでしょうか、とてつもない勢いでいい雰囲気になっていきますわね!!」
 ドキドキワクワクと二人の様子を眺めている。
 アスナとあやかの存在に気付かないまま、小太郎は只管ネギの頭を撫でながら何を言うべきか考えていた。アスナは気配を見事に消しているし、あやかも何故か巧みに隠している。その上、あやかの事を小太郎はよく知らないので全く気付かれる事は無かった。
「その……なんだ。今はその…………ワイがついとるんや。怖い事なんてなんもあらへんで? その…………誓ったるから!」
「…………?」
 ネギが顔を上げると、小太郎は顔を真っ赤にしながら言った。
「ワイが、お前を護ったる。ネギが危ない目にあったら、辛い目にあったら、ワイが助けに行く! せやから…………」
 そこまで言って限界だった。顔が熱くて仕方が無い。自分の言葉に身悶えしそうだ。恥しくてたまらない。これじゃあプロポーズじゃねえか! とその場で転がりたくなるほど恥しかった。
 ネギはぼーっとしながら小太郎の言葉を噛み締めた。思わず笑みが零れた。つい、衝動に駆られて口を開いた。
「小太郎!」
「な、なんや?」
 小太郎が突然のネギの大声に驚くと、ネギは潤んだ瞳で小太郎の顔を見上げていた。泣きじゃくったせいで、瞼は赤く腫れてしまっている。
 それでも、ネギの姿が可愛くて仕方が無かった。お互いにゴクリと息を呑む。
「今月の末にね、ダンスパーティーがあるの。高等部で…………」
「へ?」
 意味が分からなかった。微妙に何かを期待していたのだが、予想外の言葉に肩の力が抜けてしまった。
「それでね、ダンス部で参加する事になって、誰か男の子を誘わないといけないの……」
 再び、小太郎の体に緊張が走った。鼓動が早まる。心臓がバクバクしてうるさい。
「一緒に…………躍ってもらえないかな? …………あ、その……迷惑ならいいんだよ? ただ…………、一緒にその…………」
「行く!! 踊る!!」
 小太郎はネギが言葉を最後まで紡ぐ前にネギの両肩を掴んで鼻息を荒くしながら言った。小太郎の迫力に若干怯えながら「あ、ありがとう……」とお礼を言った。
「ナイスよ、ネギ!!」
「お見事ですわ!! わたくし、不覚にも手に汗握ってしまいましたわ~~!!」
 と、突然アスナとあやかが現れた。二人共鼻息が荒い。
「あ、アスナさん!? あやかさん!?」
「い、何時からそこに…………」
 ハイテンションな二人に若干引きながら尋ねると、アスナとあやかはピタリと止まって明後日の方向を向いた。
「さ~て、ご飯食べに行きましょ~」
「小太郎さんもどうぞ。奢ってさしあげますわ~!」
「おい待てッ! 最初からか!? ずっと居たんか!?」
「ええっ!?」
 その後、真っ赤な二人を心底楽しそうに弄るアスナとあやかの姿があった。


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