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No.8211の一覧
[0] 魔法生徒ネギま!(改訂版)[雪化粧](2019/05/20 01:39)
[132] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第零話『魔法学校の卒業試験』[我武者羅](2010/06/06 23:54)
[133] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第一話『魔法少女? ネギま!』[我武者羅](2010/06/06 23:54)
[134] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第二話『ようこそ、麻帆良学園へ!』[我武者羅](2010/06/06 23:55)
[135] 魔法生徒ネギま! [序章・プロローグ] 第三話『2-Aの仲間達』[我武者羅](2010/06/06 23:56)
[136] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第四話『吸血鬼の夜』[我武者羅](2010/06/07 00:00)
[137] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第五話『仮契約(パクティオー)』[我武者羅](2010/06/07 00:01)
[138] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第六話『激突する想い』[我武者羅](2010/06/07 00:02)
[139] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第七話『戦いを経て』[我武者羅](2010/06/07 00:02)
[140] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第八話『闇の福音と千の呪文の男』[我武者羅](2010/07/30 05:49)
[141] 魔法生徒ネギま! [第一章・吸血鬼編] 第九話『雪の夜の惨劇』[我武者羅](2010/07/30 05:50)
[142] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十話『大切な幼馴染』[我武者羅](2010/06/08 12:44)
[143] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十一話『癒しなす姫君』[我武者羅](2010/06/08 23:02)
[144] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十二話『不思議の図書館島』[我武者羅](2010/06/08 20:43)
[145] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十三話『麗しの人魚』[我武者羅](2010/06/08 21:58)
[146] 魔法生徒ネギま! [幕間・Ⅰ] 第十四話『とある少女の魔術的苦悩①』[我武者羅](2010/06/09 21:49)
[147] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十五話『西からやって来た少年』[我武者羅](2010/06/09 21:50)
[148] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十六話『暴かれた罪』[我武者羅](2010/06/09 21:51)
[149] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十七話『麻帆良防衛戦線』[我武者羅](2010/06/09 21:51)
[150] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十八話『復讐者』[我武者羅](2010/06/09 21:52)
[151] 魔法生徒ネギま! [第三章・悪魔襲来編] 第十九話『決着』[我武者羅](2010/06/09 21:54)
[152] 魔法生徒ネギま! [第四章・麻帆良の日常編] 第二十話『日常の一コマ』[我武者羅](2010/06/29 15:32)
[153] 魔法生徒ネギま! [第四章・麻帆良の日常編] 第二十一話『寂しがり屋の幽霊少女』[我武者羅](2010/06/29 15:33)
[154] 魔法生徒ネギま! [第四章・麻帆良の日常編] 第二十二話『例えばこんな日常』[我武者羅](2010/06/13 05:07)
[155] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十三話『戦場の再会?』[我武者羅](2010/06/13 05:08)
[156] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十四話『作戦会議』[我武者羅](2010/06/13 05:09)
[157] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十五話『運命の胎動』[我武者羅](2010/06/13 05:10)
[158] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十六話『新たなる絆、覚醒の時』[我武者羅](2010/06/13 05:11)
[159] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十七話『過去との出会い、黄昏の姫御子と紅き翼』[我武者羅](2010/06/13 05:12)
[160] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十八話『アスナの思い、明日菜の思い』[我武者羅](2010/06/21 16:32)
[161] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第二十九話『破魔の斬撃、戦いの終幕』[我武者羅](2010/06/21 16:42)
[162] 魔法生徒ネギま! [第五章・修学旅行編] 第三十話『修学旅行最後の日』[我武者羅](2010/06/21 16:36)
[163] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十一話『修行の始まり』[我武者羅](2010/06/21 16:37)
[164] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十二話『ボーイ・ミーツ・ガール(Ⅰ)』[我武者羅](2010/07/30 05:50)
[165] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十三話『暗闇パニック』[我武者羅](2010/06/21 19:11)
[166] 魔法生徒ネギま! [第六章・麻帆良の日常編・partⅡ] 第三十四話『ゴールデンウィーク』[我武者羅](2010/07/30 15:43)
[167] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十五話『ボーイ・ミーツ・ガール(Ⅱ)』[我武者羅](2010/06/24 08:14)
[168] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十六話『ライバル? 友達? 親友!』[我武者羅](2010/06/24 08:15)
[169] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十七話『愛しい弟、進化の兆し』[我武者羅](2010/06/24 08:16)
[170] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十八話『絆の力』[我武者羅](2010/07/10 04:26)
[171] 魔法生徒ネギま! [第七章・二人の絆編] 第三十九話『ダンスパーティー』[我武者羅](2010/06/25 05:11)
[172] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十話『真実を告げて』(R-15)[我武者羅](2010/06/27 20:22)
[173] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十一話『天才少女と天才剣士』[我武者羅](2010/06/28 17:27)
[175] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十二話『産まれながらの宿命』[我武者羅](2010/10/22 06:26)
[176] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十三話『終わりの始まり』[我武者羅](2010/10/22 06:27)
[177] 魔法生徒ネギま! [第八章・祭りの始まり編] 第四十四話『アスナとネギ』[我武者羅](2011/08/02 00:09)
[178] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十五話『別れる前に』[我武者羅](2011/08/02 01:18)
[179] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十六話『古本』[我武者羅](2011/08/15 07:49)
[180] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十七話『知恵』[我武者羅](2011/08/30 22:31)
[181] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十八話『造物主の真実』[我武者羅](2011/09/13 01:20)
[182] 魔法生徒ネギま! [第九章・そして祭りは始まる] 第四十九話『目覚め』[我武者羅](2011/09/20 01:32)
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[8211] 魔法生徒ネギま! [第二章・麻帆良事件簿編] 第十二話『不思議の図書館島』
Name: 我武者羅◆cb6314d6 ID:87b1fc72 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/08 20:43
魔法生徒ネギま! 第十二話『不思議の図書館島』


 二年生の三学期が終わり、数日前から麻帆良学園は春休みに入った。空はスッキリと晴れ渡っていたが、冷たい強風が少し少女には意地悪だった。
「うう……、どうして皆さんはスカートを押えないで大丈夫なんですか?」
 ネギは強風に煽られてスカートが翻るのを必死に押えながら悠々と前を歩く明日菜と木乃香、刹那に羨ましげな視線を送っていた。別に周りに男子は居ないし、少しくらい見えた所で問題は無いのだろうが、女体化していて下着も女性物を着けているネギだったが、それでも一応は異性の前なので下着を披露するのはさすがに嫌過ぎた。
 スカートが捲れない様に必死になりすぎて肩に掛けていた鞄が肘の所までずり下がってしまっていた。ネギがこれほど悲痛な状況に陥っているにも関らず、前を歩く少女達は不可解なほど強風を受けてもまったく捲れないでいる。それが全くもって謎だった。
「どうしてって言われてもねえ? 歩き方じゃない? ネギってミニスカートとか向こうであんまり履いてなかったの?」
 明日菜は必死にスカートを押えるネギの姿に少しだけ可愛いなぁとか考えながら言った。
「向こうではその……はい。あんまり履いてなかったもので」
「でもミニスカートって長いスカートより捲れ難いで?」
 実際は当たり前だがズボンばかりだったので、誤魔化すように頷くと、木乃香が人差し指を顎に当てながら言った。
「そうですね。一応麻帆良の制服はスカートが捲れないように先を少し重くしている筈なので、普通はそんなに捲れない筈……ああそうか。ネギさんは風の魔力で身体補助をしているのでしたね?」
 刹那は思い出した様に言うとネギは頷いた。
「だからじゃないですか? 身体強化の魔法と強風が合わさって人より取り巻く風が強いからスカートが捲れ易いのでは?」
「え!? 解除してみます」
 ほとんどいつも無意識にしている身体補助の魔法の解除は体に気怠るさを残した。その代わりにネギのスカートはまだ僅かにはためくものの、微妙に下着が見えない程度まで収まった。
「よかった……。ありがとうございます刹那さん」
「ネギさんのお役に立てたのなら喜ばしい限りです」
 ニコッと笑みを浮べる刹那に、ネギも笑みを返した。千草との戦いの後、刹那が大事にしていた木乃香とお揃いのストラップが戦いの最中でどこかに無くなってしまったりもして、色々と騒動があったのだが、あれから一週間。
 刹那は木乃香を昔の様に“このちゃん”と呼ぶ様になり、戦いの最中に木乃香の為に命を懸けたネギに対して恩義を感じているのか、木乃香程では無いにしても若干過保護なお姉さんの様になってしまった。
 一番困ったのはお風呂だった。ネギは段々慣れてきた皆とのお風呂で、頭を洗おうとすると、刹那が近づいてくるのだ。
『ネギさん、私が洗って差し上げます』
 バスト71という微妙な大きさの胸は背中に当るなどという事は無かったが、それでも刹那の鼓動が聞こえてくる様で、ネギは何度か逃げ出す事があったが、頭を洗うというのは未だ軟化された結果なのだ。
 あの戦いの翌日など、ネギの体を洗うと言って聞かずに最初は背中を優しく洗っていたのだが――。
『それでは、万歳をして下さい』
『ふえ!? まだやるんですか……?』
『ええ、ほら……バンザ~イ』
『えっと……、バ、バンザ~イ』
 ネギは刹那に言われて両手を上げると、その両脇から刹那のボディーソープ(高級品)のついた柔らかいタオルを持った手が伸びて、空いている左手でネギの腰を押え、右手のタオルで胸を優しく撫で上げた。
『ひゃう……、くすぐった……刹那さん……あう……』
 その二人を見ながら木乃香だけは羨ましげに見ていたがハルナはハァハァと怪しい息を吐き、のどかは顔を真っ赤にし、明日菜は見なかった事にして、和美は防水カメラを持ってくれば良かったと涙を流した。
 散々体中を揉まれたネギはそれ以降刹那を避け続け、それでもしつこく体を洗おうとする刹那に妥協案として木乃香が頭を洗うだけに留めるという案を出したのだが、若干恐怖心が残ったネギは逃げ出すことがしばしばあったのだ。
 放課後になってネギ、明日菜、木乃香、刹那の四人は漸くネギの下着を買いに来る事になった。散々ごねるネギにキレた明日菜が『これ以上ゴチャゴチャ抜かすと刹那さんに体全体洗ってもらうわよ?』と、素晴らしい笑みを浮べながら言ったのだ。効果は覿面で、ようやくこの日になって買いに行く事になった訳だ。
「あ、見えてきたわ」
 明日菜は遠くに見えるランジェリーショップを見て指を指した。ネギはゲンナリしながら視線を向けると、首と腕と脚の無い胴体と腰だけの黒光りしているマネキンにピンクの小花刺繍のブラジャーとショーツが着けられているのが入口のすぐの場所に見えた。
 店外の壁には下着姿の女性のポスターが貼られ、広い入口から見た中の内装は意外と落ち着いたアンティーク調だった。入口から伸びる外の光や、天井に取り付けられた円形のヘコミに埋め込まれたライトで中はかなり明るかった。店内に入ると、ブラジャーやショーツの他にも、ベビードールやビスチェ、ボディストッキングという少しハジけた物もあった。
「い、色々ありますね」
 ネギは顔を引き攣らせながら店内を見渡した。
「そう言えばこの前那波さんが黒くて可愛いベビードール着てたわね。ネギも似合うんじゃない?」
 明日菜は前に見た首下にリボンが付いているフリフリが沢山着いたロングスカートのベビードールを見事に着こなした千鶴を思い出した。
「結構です!」
 ネギはベビードールコーナーにあるエッチなベビードールの数々に断固として首を振った。あんなのを着せられては堪ったものではないからだ。
「見て見て、ネギちゃん! ガーター付やで!」
 今度は木乃香が黒の花柄のTバックショーツというとんでもない物体を持って来た。ネギは思わず噴出すと明日菜の背中に隠れてしまった。
「木乃香……それはエロ過ぎよ……」
「そっか~、ネギちゃんが着たら可愛いと思ったんやけどな~」
 残念そうに肩を落としながらショーツを戻しに行く木乃香に刹那は苦笑いを浮べながらブラジャーコーナーの中からネギに似合いそうな下着を吟味した。ブラジャーコーナーにはブラジャーだけのと、ブラジャーとショーツが二つで一式のがあった。そこで、刹那は肝心な事を忘れていた事に気がついた。
「そう言えば、ネギさんのバストのサイズは何センチですか?」
「えっと、いつもお姉ちゃんが買って来てくれるので自分で把握してないんです……」
「呆れた。自分のサイズも把握してないってどうなのよ……。新学期の身体測定で測るだろうけど……。しゃーない! お店の人に計ってもらいましょ」
 明日菜はネギの手を取ると、少し離れた場所で棚卸しをしている店員に声を掛けた。
「すいませーん! この娘のサイズ計って欲しいんですけど」
「あ、明日菜さん……」
 バストのサイズの測り方など知らないネギは少しだけ不安になった。ネカネはいつも何故かネギの胸囲を把握していたので、わざわざ計る事は無かったのだ。
「ハイ、かしこまりました。アチラのカーテンの中でお待ち下さい」
 店員の女性に言われて、ネギは明日菜に連れられてカーテンで仕切られた試着場所の中に入った。
「そんじゃ、私はアンタに似合いそうな柄見とくから店員さんが着たらちゃんと計って貰いなさいね」
「ええ!? 明日菜さん、一人にしないで下さい~~」
 ネギが情けない声を出すが、明日菜はさっさとブラを見ている刹那や木乃香の下に戻ってしまった。試着場所は意外に広く、ハンガーが三つあり、荷物や脱いだスカートを置ける台がある。手持ち無沙汰に鏡の前でモジモジしていると、しばらくして店員の女性がやって来た。
 上半身を脱がされて、メジャーのヒンヤリした感触につい変な声を上げてしまったが、何とか計り終えて顔を赤くしながら店員さんと一緒に試着場所から出てくると、明日菜がネギではなく店員にサイズを聞いていた。
「ん~、身長が低いから大きく見えるけど……これならスポーツブラとかでもいい感じするわね」
「でも、可愛ええのがええよ。これなんてどうや?」
「白の小花刺繍ですか。ネギさんに似合いそうですね。サイズも丁度いい様ですし――」
 刹那は木乃香の持っている純白の小花刺繍のブラに感想を言いながら、ショーツとセットになっている桃色の子供っぽい下着を手に取った。
「これもいいんじゃないですか?」
「ちょっと中学生には子供っぽ過ぎる気がするわよ? コッチの方がいいんじゃない?」
 そう言うと明日菜は水色の可愛らしいブラを見せた。柄は最低限でシンプルなデザインだった。刹那の持って来たリボンがアクセントとしてついているのより幾分か大人っぽい。
 完全に蚊帳の外に追い出された状態のネギは小さく溜息を吐いた。カモも連れてこようとしたのだが『俺っちはこれからTとA.Kとの話し合いがありやすんで。しからばサラバ!』と訳の分からない事を言って逃げられた。
 ネカネの下着を盗むくせに何を今更紳士ぶってるんだろう、とたった一人で女の園の中でも女湯より精神的にキツいランジェリーショップに取り残されてストレスの溜まったネギはつい恨み言を胸中で呟いてしまった。
「ていうかTとA.Kって誰だろ……」
「恐らく高畑先生とマスターの事では?」
「そっか、タカミチは高畑.T.タカミチだっけ。あれ? マスターって誰……って茶々丸さん!?」
「コホン、それよりもそう言った下着はネギさんには早いかと……」
「ふえ? ――――ッ!?」
 独り言を呟いていたネギは後ろから掛けられた声に吃驚すると、そこには茶々丸が立っていた。注意されたネギがさっきまで自分が顔を向けていた場所にとんでもなく布の面積が小さな紐パンツと紐ブラが掛けられていた。
「ちちちち違うんです~~! ちょっと考え事してて! べ、べつにこの下着を見てたとかではなく!」
 顔を真っ赤にしながらテンパッているネギに、茶々丸はクスリと笑みを浮べた。
「ええ、分かっていますよ。少しからかいました」
「にゃ!? ひ、酷いですよ茶々丸さん」
 剥れるネギに、茶々丸はクスクス笑いながら頭を下げた。
「すみませんネギさん。それよりも、下着を買いに着たのですか?」
 全く謝られた気がしなかったが、ネギは気を取り直して頷いた。
「私はいいって言ったんですけど、明日菜さんが私の……その、ブラを」
「ブラですか。ふむ……」
 そう呟くと、茶々丸はいきなりネギの胸を軽く撫でた。
「ひゃんっ! な、何するんですか!」
 いきなり胸を撫でられたネギは茶々丸を睨むが、茶々丸はどこか遠い目をしていた。
「どうしたんですか……?」
「いえ、何でもありません」
 コホンと咳払いをすると茶々丸は気を取り直した様に言った。
「あれ? 茶々丸さんじゃない。茶々丸さんも下着買いに来たの?」
「こんにちは、明日菜さん」
「茶々丸さん、こんにちは」
「こんにちは」
「木乃香さん、桜咲さん、こんにちは」
 茶々丸が明日菜に挨拶すると、明日菜の後ろから顔を出した刹那と木乃香も挨拶をして、茶々丸も挨拶を返した。明日菜と木乃香、刹那の手には沢山の下着が乗っていて、ネギは顔をヒクつかせて逃げ出そうかどうしようか迷っていた。

 その後、茶々丸も参加して殆ど四人が勝手に選んではネギに試着させるというスタンスでネギのブラ選びはその日の夕方まで続いた。途中までは羞恥心があったが、さすがに疲労に塗りつぶされて、早くお家に帰りたいという思いで一杯になった。
 結局、明日菜は水色の最初に選んだショーツとセットのとオレンジ色のデザインが似通っているショーツセットのブラを、刹那も最初に選んだピンク色の可愛らしいリボンのアクセントが付いているのと、白地にピンクのラインの入った子供っぽいデザインの同じくショーツとセットのブラを、木乃香は純白のデザインの鮮やかなのをショーツとセットのを選んでなんと6点も選び、茶々丸は一着くらいアダルトな物があってもいいだろうと木乃香と一緒にベビードールを一着と金の刺繍の入ったエッチな下着を選んだ。
 はっきり言って欲しくも無いものにお財布の紐を緩めるのは抵抗感があり過ぎたが、なんと木乃香が代表して買う事になった。ネギが慌てて自分のお財布からお金を出そうとすると、木乃香は一枚の綺麗なカードを取り出した。
「ふふ~ん、お爺ちゃんに前以て言っておいたんや~。ネギちゃんの下着を買うからお小遣い欲しい言うたらこのカード貸してくれたんよ~」
「プ、プラチナカードって正気ですか学園長……」
「プラチナカードって何?」
 木乃香が取り出したカードを見て刹那は唖然とし、明日菜は首を傾げながら茶々丸に聞いた。
「クレジットカードの国際ブランドの一つ、アメリカンエキスプレスが始めて発行したゴールドカードの上位に当るカードです。更に上にはセンチュリオンカードなどがありますがそれが現在の最上位のカードです。俗に言うブラックカードですが。プラチナカードはブラックカードとは違い、招待性である場合と違う場合がありますが、それでも年会費が十万を越えるのが普通です」
「げっ!? そんなにお金掛かるの!?」
 明日菜は驚いた様に声を上げた。
「代わりに一部のホテル、航空機などで空席がある場合は無償のアップグレードがあったり、プラチナカード所有者のみのファッションショーに招待されたり、提携しているデパートの駐車場無料などの特典があり、社会人にとっての一種のステータスになっています」
「そ、そうなんだ」
 明日菜は茶々丸の話に冷や汗をかきながら木乃香が店員に渡しているカードを見ている。ネギはそれでも自分で払おうとしたが、木乃香が頑として受け付けずに笑顔で受け流し、結局木乃香が会計を済ませてしまうと申し訳無さそうに頭を下げながら木乃香に何度もお礼を言った。
 ちなみに、あのランジェリーショップはかなり高級な部類に入り、桁数はかなりの大きさになっていたので、刹那は冷や汗を流しながらネギに会計の値段が分からない様に背中で隠し、店員も察したのか値段を言わなかった。レシートもさっさと木乃香が財布にしまってしまって、結局ネギが値段を知る事は無かった。

 翌朝、明日菜がいつもの様にバイトに行く為にアラームが鳴り、一回目でネギと木乃香も明日菜と一緒に目を覚ました。
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよ~」
 布団から上半身だけ起き上がらせると三人は朝の挨拶をしていつもの様に居間に向かった。明日菜がシャワーを浴びている間に木乃香が朝食を作り、ネギがその手伝いをする。段々とネギも手馴れてきて、今では食卓に並べる一品を任せられる程だった。
 今日のメニューはブリ大根に味噌汁と白米で、ネギは味噌汁を作ることになり、煮干で出汁を取る事から始まり、和布や豆腐、長葱を刻んで入れ、味を木乃香に見て貰いながら中々に美味しく作る事が出来た。
 お風呂場から出て来た明日菜と朝食を食べると、明日菜はバイトに行ってしまい、二人で後片付けをすると、木乃香は朝の連続ドラマを見るので先にネギが朝風呂に入る。髪を洗うのにさえ慣れてしまえば、ネギはお風呂に入るのが好きになっていた。暖かい湯船に入りながらのんびりしている時間が楽しく、髪を洗ったり乾かしたりするのが少し面倒だったりもするが。
「さてと、そろそろ飲まなくちゃね」
 そう呟くと、ネギはお風呂場の鍵が確りと閉まっているのを確認するとタオルに包んだ二つのビーダマ程の大きさの球体を取り出した。
「えっと、紅いのが女体化で、蒼いのが解除薬っと」
 湯船の縁に腰掛ながら、ネギは蒼い球体を口に含んだ。体が一瞬熱を帯びると、ネギは一瞬視界が真っ白になったと感じた直後に下半身に異物感を感じた。
「うう……、最近元の姿で違和感持つ様になっちゃった……」
 もう半年以上を少女の体で過ごしていた為に何となく胸が無いのが頼りなく感じ、下半身の異物に落ち着かなくなってしまっていた。
「うう……、やっぱりさっさと紅いの飲んじゃお……」
 溜息交じりに紅い球を飲み込むと、ネギの姿はすぐに元の可愛らしい女の子の姿に戻った。
「こんなんで後一年間大丈夫かな~」
 ネギは基本的に一年間の修行期間よりも更に二ヶ月程修行期間が長い。学校に生徒として暮らすので、魔法使いの中で過ごすのとは違うから一般人の中に溶け込む期間を設けられたのだ。
 つまり、新学期になれば魔法学校の卒業式の時に言い渡された指令が正式に始まる。恐らくその時に学園長に会う事になるのだろう。実は今までネギは学園長に会った事が無かった。会いに行こうと思うといつも別の学校に居たりするので自分から会いに行くのは諦めていた。湯船に顔を沈めてブクブクと泡を作り、ネギは湯船の縁に腕を乗せてその上に顎を乗せて大きな溜息を吐いた。
「でも、明日菜さん達との毎日も楽しいんだよね……」
 小さく、ネギは笑みを浮べて湯船から上がった。体を軽く叩くように水滴を拭うと、刹那が選んだピンク色のブラジャーを胸に当てながら腰を曲げてワイヤーの部分を胸の下に当てて胸を押し上げた。そのままアンダーに指を沿わせながら背中のホックをとめて、肩紐の根元を引っ張りながら起き上がらせる。アンダーベルトをしっかりと下げて位置を完璧にしてセットになっていたショーツに脚を通すと、少しだけ鏡を見て「似合ってるかな……?」と呟いてしまって自己嫌悪しながらスカートとワイシャツをワタワタと少し慌てながら着て、ランジェリーショップでおまけしてもらった桃色のシュシュで髪を纏めると洗面所を出た。

 お昼になって、ネギは新学期に部活に入るかどうか迷っていると明日菜が紹介してあげると言うので二人で学園内を歩いていた。ちなみに、木乃香は占い研究部の次期部長として部室に顔を出しに行っている。最初に顔を出したのは麻帆良学園本校女子中等学校の第一体育館だった。バレーにバスケ、新体操、器械体操などを同時に行える程のとんでもない広さの体育館で、両脇には観客席がズラリと並んでいる。入口から見た奥には舞台があり、何かの大会の時にはここで校長や学園長などが演説を行ったりする。
 舞台のすぐ手前には新体操部が活動していた。
「きれい……」
 ネギが顔を向けると、クラスメイトの佐々木まき絵が華麗なリボン捌きで、まるで蝶が舞う様だった。
「ネギ、アッチには裕奈が居るわよ」
 明日菜がポンポンとネギの肩を叩いて指差すと、裕奈がスリーポイントを決めていた。
「す、すごーい!」
 ネギが明日菜と一緒に体育館に入ると、休憩に入ろうとしていたまき絵が気が付いて寄って来た。
「あっネギちゃん! なになに? 新体操見に来てくれたの~? 一緒にやってみる~?」
「え? いや……私は……」
 ネギは首を振るがまき絵はネギを強引に引っ張って行ってしまった。
「あらら……」
 置いていかれた明日菜は頬を搔きながら苦笑いを浮べていた。そこに、裕奈とチアの練習をしていた柿崎美砂と椎名桜子、釘宮円の三人が明日菜のところにやってきた。
「あれれ? 明日菜どうしたの?」と裕奈。
「明日菜だ! とうとう運動部にも入る気になったの?」と美砂。
「明日菜は運動神経抜群だし美術部だけじゃ勿体無いよ! 今から入っても全然オーケーだよ」と桜子が言った。
「違う違う。私じゃなくてネギの部活見学よ」
「ネギの? でもどこにも居ないけど?」
 裕奈がキョロキョロと視線を泳がせるが、当然の様にネギの姿は無い。
「今はまき絵に拉致されてどっか行っちゃったわよ」
「あっ! 来た来た!」
 明日菜が肩を竦めると、円が指を指した。そこには、胸の上で紐がクロスしているドレスレオタードを着て顔を赤くしているネギの姿があった。
「うう……やっぱり恥しいですよ~」
「そんな事ないよ! これはれっきとした新体操の制服なの! 恥しがる事なんてないんだよ!」
 もじもじしているネギにまき絵は自身たっぷりの言った。そう言われては、恥しがっているのが失礼に当ると、ネギは意を決して胸を張った。
「おっ! ネギ、可愛いじゃない」
「いいねえ、持って帰りたくなっちゃうわ」
「それは犯罪だ……」
 明日菜が腰に手を当ててウインクすると、裕奈がいやらしく目を細めてジワジワとネギに近づくと円がチョップを喰らわして止めた。
「それじゃあ、ハイッ! 私の真似をしてみてね~」
 まき絵はそう言うとクルクルとリボンを回して、右脚を顔のすぐ横まで上げたりした。
「や、やってみます」
 ネギは上手くリボンを回せるか不安になりながらリボンを振ると、意外とキチンと回り、まき絵を真似をして色々と試してみた。
「へへ、ネギちゃん上手だよ~」
「ありがとうございます、まき絵さん」
 褒められて嬉しくなったネギは笑みを浮べると、今度は裕奈に引っ張られた。
「今度はバスケ部よ~!」
「ええ!? すぐですか~!?」
 その後、バスケ部でフリースローを体験し、チア部でバトンをやったりして、ヘトヘトになってしまったネギを、苦笑いを浮べながら明日菜が連れ出し、そのままジュースを飲んで休憩すると、今度は射撃競技場に向かった。
「私、向こうで少し射撃をかじった事があるんですよ~」
 ネギが少しだけ自慢げに明日菜に話すと、突然隣にクラスメイトの龍宮真名が現れてニヤリと笑みを浮べた。そのまま両手で銃を握ると目にも留まらぬ速さで的に全弾命中させてしまった。
「すみませんでした~」
「すみませんでした~」
 明日菜とネギはそそくさと立ち去った。

「た……龍宮さん、凄かったですね」
「そうね……」
 二人はそのまま図書館島に向かった。
「実際に体験した方がいいと思ったんだけどさ。ちょっとハードだったわね」
「これからどこに行くんですか?」
「図書館島よ」
「図書館島?」
「そ、世界でも有数の蔵書量を誇るとんでも図書館よ。ぶっちゃけ、麻帆良学園って部活が多過ぎるからね~。図書館島で学園内の部活動を映像で見れるはずだから、それで一回観てから考えましょ」
 明日菜に先導されてネギは大きな湖が見えてきて目を丸くした。
「凄い広さですね……」
「しかも増改築を今では続けてるらしくてね。全貌が全く分からないらしいわよ」
「何だかウインチェスター館みたいッスね~」
「ウインチェスター銃の? って……カモ君いつの間に?」
 まるで最初から居たかの様に、昨晩にタカミチと飲み会に行って帰って来なかったカモがいつの間にかネギのすぐ近くの木に居た。ネギの肩にストンと降りると、スカートが捲れるのを防止する為に身体強化を解除していたネギは肩が外れるかと思い恨みがましい目でカモを見た。
「す、すいやせん……」
「でさ、ウインチェスター館って何なのよ?」
 明日菜が聞くと、カモはああ、言って説明した。
「ウインチェスター銃で成功を収めた男の妻の個人的な住宅でな。ウインチェスター銃で死んでいった者達の亡霊に呪われるのを防ぐ為に、かれこれ数十年も増改築を続けているって館でさ」
「尤も、実際に呪いなんてあるか分からないけどね」
「た、高畑先生!?」
 カモの話に続く様に、渋い男の声が背後から聞こえた。明日菜が振り返ると、そこに居たのはタカミチだった。
「や、二人共図書館島に行くのかい?」
「は、はい! ネギに部活動の紹介をしてたです、はい!」
「姉さん、テンパリ過ぎだ……」
 カモが呆れた様に言うと、明日菜が物凄い目つきでカモを睨みつけた。カモを乗せているネギも明日菜の目を見て涙目になってしまった。
「そ、そう言えば、もうすぐコンクールだけど作品の方は大丈夫なのかい?」
 話を変えようとタカミチが言うと、面白い様に明日菜の顔を蒼くなっていった。
「しまった~~~~! 未だ仕上げ部分が終わってなかったんだった~~~~!!」
 明日菜は頭を抱えるとネギの肩を掴んだ。
「本当にごめん! 多分、図書館探検部も活動してると思うから、電話しとくから本屋ちゃん達に紹介してもらって! 今度埋め合わせするわ! じゃあね!!」
 まるで突風の様に明日菜は駆けて行ってしまった。
「相変わらず凄い速さッスね~」
 カモが一瞬で見えなくなってしまった明日菜に感心した様に口笛を吹く。ふと、カモは上目遣いでタカミチを睨んでいるのを観た。
「どうしたんスか? 姉貴」
「見た?」
「……………………見てないよ」
 タカミチはダラダラと汗を搔きながら顔を背けた。明日菜が余りにも駆け出す時に、ネギのスカートが少し捲れてしまったのだ。プルプルと震えながら顔を真っ赤にしているネギにタカミチは溜息を吐いた。
「本当に見てないんだ。ちゃんと首を曲げたからね」
「うう……」
「ほ、ほら姉貴。見てないって言ってんスから。さっさと図書館島に行きやしょう?」
「うん……。じゃあね、タカミチ」
「ああ、春休みの宿題を忘れないようにね」
 そう言うと、タカミチは去って行った。
「はう……」
「どうしたんスか? 別にタカミチの野郎に見られても……」
「分かってるんだけどさ。何だか、タカミチに見られたかもって思ったら嫌な気分になっちゃって……」
「まあ、今は女体ッスからね。感じ方も違うんスよ。あんまり気にしない方がいいッスよ?」
「うん……」
 カモは頷くネギの肩で溜息を吐いた。
 少し拙いかもしれないと思いながらも、こういう場合に下手に何かすると精神的に何らかの支障が起こる可能性がある。カモはこの問題を先延ばしにして、後々考える事にした。
 図書館島はまるでどこぞの宮殿の様な入口だった。遠くにはビッグベンの様に巨大な時計塔が見え、ネギとカモは唖然として固まっていた。
「ネギさん!」
 呆然としながら見事な彫刻の彫られた入口を見上げていると声を掛けられた。
「宮崎さん!」
 声を掛けられた方に顔を向けると、腰に臍の前で交差したベルトを着けて、白い縦の薄いラインの入ったシャツの上に胸から首までを覆い、腕を覆っている袖の大きな上着を着て、下のほうに太いラインの入ったミニスカートを履いている宮崎のどかが立っていた。
「可愛い服ですね」
 ネギが素直な感想を漏らすと、のどかはハニカム様に笑みを浮べた。
「ありがとうございます。明日菜さんから連絡があって、私が案内をする事になりました。夕映とハルナは今ちょっと奥の方に行ってて来れなかったんですけど」
「奥ですか?」
「最近地下の方に新しいフロアが発見されたんです。そういう場所を調査するのが私達“図書館探検部”の仕事なんです」
 あれ? とネギは首を傾げた。
「それじゃあのどかさんも仕事だったんじゃ……。もしかして私の案内の為に……」
 ネギが申し訳なさそうな顔をすると、のどかはブンブンと首を振った。
「いいえ、私は夕映やハルナより運動神経が鈍いから留守番なんです。本の整理くらいしかする事が無かったので助かったくらいなんですよ」
 ニコッと笑みを浮べながら言うのどかに、ネギも笑みを浮べた。
「ありがとうございます……のどかさん」
「それじゃあ行きましょう」
 気遣ってくれたのだろうと判断してネギは礼を言うとそれ以上何も言わなかった。カモはネギのポケットにいつの間にか潜り込んで息を潜めた。図書館は動物厳禁が基本なのだ。
 だが、中に入ると司書の人にアッサリとばれてしまい、エントランスホールでケージに入れられて涙を流すカモを置いて行くのは心が痛んだ。
「何だかオコジョちゃんが泣いてるような……」
 冷たい汗を流しながらのどかはケージをパンパンと叩いているカモを見ながら呟くと、ネギは苦笑いを浮べながら「行きましょう……」と言って、のどかの手を取って歩いた。
 しばらくのどかに案内されながら歩いていると、階段が沢山あり、途中階が一階から見上げると沢山あった。
「わぁ……本が一杯ですね。凄い量……」
「蔵書に関しては世界一だそうです」
「これなんかとっても古そうです……」
「あ、駄目ですネギさん!!」
「え?」
 ネギが近くの本棚から一冊の本を取ろうとすると、のどかがタックルをしてネギを床に押し倒した。すると、のどかの背後を凄い速さで巨大な鉄球が通り過ぎた。
「――――――――ッ!?」
 声にならない悲鳴を上げると、のどかが体を起した。
「すみません、ここはかなり貴重な本もあるので動かす前に防犯装置を解除しないといけないんです……」
「ぁ……」
 ネギはのどかの話をあまり聞いていなかった。いつも前髪で隠れていたのどかの顔が、下から見上げると確りと見る事が出来た。瞳が大きく、ネギは思わず頬を赤くした。
 可愛い、と素直にそう思った。立ち上がると、のどかと一緒にネギは再び歩き始めた。
「ネギさん、こっちです」
 のどかはネギを連れて時に本棚の上を歩き、
「な、なんで本棚の上を歩く状況が……」
 時に狭い道を通り、
「裏道……?」
 時に水浸しの場所を石の足場を飛び移るように渡る。
「本が水に濡れてそうなんですけど……」
 漸く、部活関係コーナーに到着した。
「ここが部活関係の本のあるコーナーなんです」
「凄いですね、のどかさん。こんな所まで知ってるなんて」
 ネギが感心した様に言うと、のどかはあたふたしながら顔を赤くした。
「そ、そんな事無いです。えっと、ネギさんはどんな部活について観て見たいですか?」
「えっと、あんまり考えて無かったです。その、すみません」
「い、いえ。あ、そうだ。面白い本があるんです」
 肩を落とすネギに元気になって貰おうと、のどかは部活動コーナーのすぐ近くの本棚にある本を持って来た。
「この本は?」
「開いてみて下さい」
 のどかに言われてネギは“GENJI物語”という青い表紙の分厚い本を開いてみた。
「え?」
 本を開いた途端、魔力が噴出してきた。気が付いた時には体が光に包まれ、ネギの服が豪奢な十二単に変わっていた。
「コレ……魔導書!?」
 ネギは恐怖に固まった。
 “魔導書(グリモワール)”とは、原典と写本が存在し、魔術・呪術・神秘学、果ては悪魔や天使、精霊の術式まで書かれている場合もあり、殆どの場合に於いて、無断で閲覧する者に対しては迎撃術式が起動する場合が多いのだ。魔導書はそれ自体が一種の“魔術回路(マジックサーキット)”としての機能があり、解読すれば魔力さえあれば詠唱無しに上位呪文を連発する事すら可能な危険な代物だ。
 有名な迎撃術式としては、読んだ者の心を破壊し廃人にするというものだ。例え、その迎撃術式を解除出来ても、複雑な暗号を更に暗号化し、それを二重三重四重五重と暗号化しているので、世紀単位で研究しても一部でも解読できれば素晴らしい成果であるとされている。
 特に、偉大な力を持った魔導書として挙げられるのは“ソロモンの大きな鍵(レメゲトン)”で、それ単体でも魔術の奥義書と呼ばれ世界を滅ぼす力すら得られると言われているが、それに加えて“ソロモンの指輪”というアーティファクトの鍵にもなっているのだ。指輪はソロモンが従えた72の悪魔を使役する権利を使用者に与え、封印する力もある。更には、猛獣を従え、持ち主を透明化する『万能の魔法具』とも呼ばれている。
 ネギは前に読んだ“魔導書の創作手引き”という本を読んでいて知っていたのだが、同時に思い出した。この魔導書は表紙が青い。
「“青本”だっけ……?」
 原典を写した写本を更に大衆向けにした物で、表紙が青いという特徴を持っている。殆どは力など無い筈なのだが、少し心を落ち着ければこの図書館は魔力の濃度が濃い事に気が付き、芳醇な魔力のせいで魔法が発動してしまえる様になったのだろうかとネギは結論付けた。
 特に迎撃術式が発動していないのを確認すると、ニコニコしているのどかを見て首を傾げた。本を開いただけで服が変わるというのを自然と受け入れているのが妙だと感じながらも、ネギは問題が無いようなので気にしない事にした。
「わ、わ~、綺麗ですね」
「とっても似合ってますよ」
 のどかはそう言うと自分の持っていた本を開いた。
「うわ~、のどかさんとっても可愛いです!」
 光に包まれたのどかは椅子に座った状態でフリフリの沢山ついたエプロンドレスを着ていた。頭にはフリルの付いたカチューシャがある。
「えへへ、この“安楽椅子探偵兼メイド兼実は街角のカフェの店長の事件簿”、私が最近ハマってる本なんです」
 嬉しそうに自分の好きな小説を紹介するのどかの話を聞きながら、ネギはジュースを飲みながら近くのベンチに座っていた。ちなみに、魔力が切れたか数分後に着物やエプロンドレスは本に戻った。しばらくの間のどかの話を聞いていると、のどかはハッとなって恥しそうに俯いてしまった。
「す、すみません。つい本の事になると……。ネギさんは部活動の映像資料を観に来たのに……」
 申し訳無さそうに言うのどかに、ネギはブンブンと首を振った。
「いえ! のどかさんのお話とっても面白かったです!」
「そ、そうですか……?」
「はい! 私も本が好きなので、日本の面白い小説なんかを紹介してもらえて嬉しかったです。本当に!」
 ネギはのどかの手を両手で包みこみながら言うと、のどかは小さく息を呑んで笑みを浮べた。
「じゃあ、今度もっと面白い小説を紹介しますね?」
「是非お願いします」
 それから、ネギとのどかは本題である“部活動の映像資料”を観ながらネギにのどかが詳しく説明しながら瞬く間に時間が過ぎた。
「そろそろ帰らないと外が暗くなっちゃいますね」
「今日は本当にありがとうございました」
 入口に向かって歩きながら話していると、のどかはあれ? と首を傾げた。
「どうしたんですか?」
 ネギが聞くと、のどかは不安そうに辺りを見渡した。
「ココ……知らない場所なんです」
「え!?」
 ネギは慌てて周囲を見渡すと、さっきまで本棚に囲まれていた筈なのに真っ黒な壁に覆われた空間に居た。さっきまで歩いていた裏道を抜けたら本棚の上を歩く道? に繋がるはずだったのに……。
「のどかさん……あの扉って……?」
 ネギは黒い壁が続く遠くの方に巨大な神殿の扉の様な物があるのを発見した。
「分からないです……。こんな場所、あったら多分図書館探検部で話題になる筈ですし……。未発見エリア? でも、この辺は探索しつくした筈だし、さっきの裏道は横道なんか無い筈なのに……」
 不安気にのどかはネギの手を握ると僅かに震えながら言った。
「戻りましょう。図書館島はトラップが多いんです。だから、新しいエリアには高等部の人が居なきゃ行っちゃいけないんです」
 そう言って来た道を戻ろうと振り向いたのどかは絶句した。
「うそ……」
「どうしたんですか? のどかさ……えっ!?」
 ネギものどかの様子に首を傾げながら振り向くと、ネギとのどかが来た筈の道が真っ黒な壁に塞がれてどこにも道が無かった。
「ど、どういう事ですか!?」
 のどかが泣きそうな声で叫ぶと、ネギはそのおかげでパニックになりそうな頭が冷えた。
 ネギは心を落ち着けると、小さく呪文を唱えた。
「メア・ウィルガ」
 どれだけ時間が掛かるか分からないが、杖が来ない事にはネギには何も出来ない。万が一の場合は魔法の使用も辞さない覚悟を決めた。この状況で、優先すべきはのどかの安全である。
 魔法がばれれば厳罰が待っているが、それを恐れてのどかが怪我でもすればソッチの方が問題だ。ネギは決意を篭めてのどかの手を確りと握った。杖がいつ来るか。来れるかどうかも不明だ。呼びはしたが、間には壁や天井がある。さすがに分厚い天井や壁をぶち抜いて参上してくれるとは期待していない。どこかしらの隙間を縫って来てくれる事を祈るしかないのだ。そもそもココに隙間があるのかどうかすら不明だし、杖がちゃんと隙間を探してくれるかどうかも分からなかったが、父さんの杖を信じてネギは歩き出した。
「行きましょう。ココに居ても戻れそうにありません。せめて、向こうに見える扉の向こうに何かしらの出る為の糸口があるかもしれません」
「でも、図書館島には罠が沢山あって……」
「絶対!」
「――――ッ!?」
 ネギの大声に、言い掛けたのどかは息を飲んだ。
「絶対に私がのどかさんを護って見せます。信じて下さい。のどかさんは絶対に私が護ります!」
「ネギさん……」
 ネギは真っ直ぐにのどかを見て宣言した。のどかは顔が火照るのを感じた。それが、自分よりも背の低い少女がこんなにも頑張っているのに自分はどうだと恥じている……というのとは別種のモノだった。のどかは頷くと、顔を引き締めた。
「私も……図書館探検部です。ネギさんが私を護ってくれると言うのなら、私もネギさんを護ります!」
「のどかさん……ハイ。行きましょう」
 二人は慎重に歩き出した。四面を真っ暗な壁に覆われ、只一つの光源は遠くに見える扉から発せられていて、それが薄っすらとネギとのどか、お互いの顔を確認させた。罠が無いか慎重に気を張りながら二人は――――何事も無く扉に到着した。
 二人は肩をガックリと落とした。
「何もありませんでしたね……」
「何だか疲れちゃいました……」
 お互いに溜息を吐くと、ネギとのどかは休憩する事にした。
 二百メートルちょっととはいえ、罠を警戒しながら慎重に歩いていたのでここまで来るだけで一時間程度掛かってしまった。その間、杖は未だ到着していなかった。扉のすぐ脇で肩を寄せ合いながら次第にウツラウツラしていたネギとのどかはいつの間にか眠ってしまっていた。
「ふあ……あう……あれ?」
 目を開くと、ネギは体の節々が痛くなっていた。
「ここは……そうだ! 私達、寝ちゃったんだ……」
 慌てて起き上がると、背後で「きゃん!」と可愛らしい悲鳴が聞こえた。
「あれ、ここはどこですか? 私なんでこんな所に? あれれ? ネギさんとパフェを食べてたのに……」
 キョロキョロと視線を泳がせているが、寝起きで寝惚けているのか現状を思い出すのに少し時間が掛かった。
「そっか……私達扉の前で寝ちゃったんですね……」
「そろそろ行きましょう……」
 ネギは胸中で溜息を吐いた。眠っていたのがどのくらいか分からないが、その間杖は来ていなかった。もう杖は来ないものと考えた方がいいのだろう。
 身体強化は既にしている。杖が無くても最低限、この程度は可能だ。ネギはのどかの手を握り、扉の前に立った。
「行きましょう……」
「はい……」
 大きく息を吸って、ネギは扉に手を当てた。
「え!?」
「え!?」
 ネギとのどかは同時に声を上げた。手が扉に触れた途端に、扉から光が溢れ出し、ネギとのどか、二人の体が扉の中に吸い込まれてしまったのだ。光の波に飲み込まれ、必死に手を離さないようにだけ意識を集中させ、どれほどの時間が経ったのか、それこそ何時間も経った気がしたが、その実数秒だった気もした。光が途切れ、ネギとのどかは光の溢れる場所に尻餅をついていた。
「ここは?」
「綺麗……」
 ネギは唖然とし、のどかはその空間に心を奪われた。あまりにも現実感に乏しい空間だった。光が溢れ、何本もの塔が立ち並び、辺り一面の空間にクリスタルが浮かんでいる。光がクリスタルに反射して、幻想的な空間を演出していた。特にネギ達の正面の塔は途轍もない大きさで、ネギは周りの塔がピサの斜塔程なら、目の前の塔はパリのエッフェル塔並みだと思った。天井はビスケットの真ん中が砕けた様に大きな穴が空いていて、目の前の塔はその穴から更に上に伸びている。
『勇気を示せ。さすれば大いなる力と渡り合う術を授けよう』
「え、何ですかこの声!?」
「これは……っ!?」
 のどかとネギは心に響いた声に動揺した。
「ネギさん、あれを見て下さい!」
 のどかが指を指すと、塔の天辺に紅蓮の炎に包まれた塔の太さから比較しても分かる程大きな馬が二人を見下ろしていた。ネギは目を丸くした。
「まさか……“アイトーン”!?」
「アイトーン……?」
 ネギの言葉にのどかは首を傾げた。
「“燃え盛る”という意味で、ギリシア神話に登場する炎を纏う神域の獣です。かのトロイア戦争の折には指揮官ヘクトールの愛馬として戦い、太陽神ヘリオスの馬としも知られ『アイネイス』にも登場し、アイネイアスを助けトゥルヌスと戦ったパラスの馬でもあったと言います。知性も高く、炎を操るまさに怪物です」
「し、神話の獣ですか。うわ~、凄いです感激です! 本の中だけだと思ってたのにあんなの本当に居たんですね!」
「はえ?」
 ネギは大喜びでハシャグのどかに呆気に取られた。普通は怖がるものなのに、のどかの神経は意外と図太いんだなと、ネギは少し失礼な感想を胸中で呟きながら、それでものどかのおかげで心が大分落ち着いた。
「勇気を示せって……どういう事なんでしょう?」
 ネギが呟くと「とりあえず登ってみましょう! もっと近くで見たいです!」とのどかは瞳を輝かせて言った。
「え!?」
「さあ、行きましょう!」
 興奮したのどかはネギの手を取って走り出した。
「ふえええええ!?」
 情け無い悲鳴を上げながらのどかに引っ張られて塔に辿り着いたネギは見上げるとウンザリしそうな程高い階段を見て、のどかに顔を向けた。
「本当に登るんですか……?」
 顔を引き攣らせながら尋ねると、のどかは目をこれ以上無く輝かせながら「え?」と顔を向けてきた。
「行きましょう……」
 ネギは早々に諦めると階段を登り始めた。
「のどかさん……好きな事には凄い大胆になる人なんだな……」
 ネギは大人し目なのどかの新しい魅力を発見した気がした。惚ける様にのどかを見ていると、のどかはトントンとどんどん先を行ってしまい、ネギは慌てて追い掛けた。なんだかんだで普通の女子中学生なのどかに身体強化の魔法を使っているネギはすぐに追いつく事が出来た。次第にのどかの顔に疲労の色が見え始めた。
「少し休憩しましょう。先はかなり長いですから」
「そう……ですね」
 肩で息をするのどかは段々頭が冷えた様だったが、それでも天辺に居るアイトーンに興味津々だった。
「そう言えば、ネギさんは神話に詳しいんですね」
「え?」
「だって、アイトーンなんて私全然知らなかったです。ネギさんはスラスラと説明してたのは神話に詳しいのかなって」
「――そうですね。色々と神話系の本はよく読みます。それに旧約の方ですけど聖書も割と読みますね」
「旧約聖書はカトリック、プロテスタントだけでなくてイスラム教や日本の仏教にも影響を及ぼしているらしいですよね? 私も読んだ事があるんですけど、翻訳者によって捉え方が違うので本当はどういう意味なのかな? って時々思うんです」
「どうしても、翻訳者の思いや考えが出ちゃうものですからね」
「教義の違いで同じ神様を崇拝するのにいがみ合って戦争を起しちゃう話が歴史の中で沢山あるのは悲しい話ですよね……」
「人はそれぞれ違った正義や思いがある」
「え?」
 ネギの突然の言葉にのどかは目を丸くした。
「私のお兄さん的な人? がよく私に言うんです。自分の思いや正義を押し付けるよりも、ちゃんと相手の思いを聞いてあげるのが一番大切なんだよって」
「人それぞれの思い……ですか。そうなんでしょうね……」
 しばらく休んだ二人は再び歩き出した。最初に異変を感じたのは息をするのも辛い暑さが襲い掛かって来た時だった。かと思えば突然豪雨が襲い、砂の階段が現れ、雪まで降り出す始末だった。まるで地獄巡りそのものの階段登りだったが、途中に通常状態に戻った時に必ず休む様にして、上り始めてから半日以上が経過した時に漸く頂上が見えて来た。紅蓮の炎が揺れるのが見える。
「もうすぐですね」
 ネギが言うと、のどかは頷いて足を進めた。二人共服はかなりボロボロだった。
 ネギの服装はワイシャツにチェックのスカートで、制服に似ている。それもスカートとワイシャツは所々が切れてしまっているし、水浸しになった直後に砂が全身に張り付いてしまったりしてドロだらけの状態だった。それでも終わりが見えれば元気が出た。
 最後の一段を飛ばして天辺に到着すると、見上げるほど巨大な炎を纏った馬は強烈な暑さを放っていた。
『よくぞここまでの試練を乗り越えた。勇気在る者よ。汝に最後の試練を授けよう。選ぶが良い、巨大な力と苦難を共に乗り越えた友。汝はどちらを選ぶ?』
 心の中にそう声が響いた途端に、ネギの体が光に包まれ、頂上の端に転移させられた。
「え?」
 ネギが目を丸くすると、今度はのどかから見て反対側に大きな槍が出現した。
『あの槍を持つ者はあらゆる望みを叶える事が出来る』
「あらゆる……望み?」
『左様、永遠に苦痛から切り離され、悩みも無く、誰にも囚われる事は無くなるだろう』
 心の声がそう言った瞬間に、アイトーンの炎が鞭の様に槍とネギに向かって振るわれた。炎の鞭は槍とネギの足場を崩した。
「ネギさん!」
 のどかが叫ぶと、心の声が響いた。
『選ぶがよい』
 既にのどかは迷う事無く走り出していた。ネギの方へ。一切の躊躇いも無く。
『汝は友を選ぶのか?』
「決まってます! あらゆる望みが叶うって素敵な事かもしれませんけど、友達と比べたら全然くすんで見えます!」
 そう言い切ると、のどかは落下していくネギに向かって跳んだ。
「駄目ですのどかさん!」
 落ちながら、自分に向かってくるのどかにネギは懸命に叫んでいた。それでのどかは確信する。自分は間違って無かったのだと。その途端に声が響いた。
『見事』
 突然、ネギとのどかの視界が光に包まれた。光が消えると、そこは塔の頂上で、どこも崩れた場所は無く、何よりも驚いたのは巨大なアイトーンの姿が消え、そこには一頭の白銀の捩れた角を持つ普通の馬と大きさの変わらない漆黒の馬が立っていた。
『汝の強さを認めよう。コレを受け取るがいい』
 声が響くと同時に、のどかの前に一冊の本が現れた。
「これは……?」
 のどかは困惑して首を傾げると、ネギも訳が分からないという顔だった。
『それでは、汝らを元の世界に返そう』
 再び声が響くと、ネギとのどかはいつの間にか図書館島の外に居た。
「え?」
「ここは……図書館島の外?」
 ネギとのどかが呆然としていると、突然大きな鐘の音が鳴り響いた。驚いて時計台に顔を向けるが、時計台は影に隠れていて見えなかった。代わりに、空を飛んでいる飛行船を見てネギは驚愕の叫びを上げた。
「どうしたんですか!?」
 のどかが驚いてネギに顔を向けると、そのままネギの視線の先を見て絶句した。そこには、図書館島で部活の映像資料を観終えて帰路についてから少しの時間しか経っていなかったのだ。日付も変わっていない。
「夢……だったんでしょうか?」
「さ、さあ……」
 服も全く汚れていない上に、あの塔の頂上でのどかが貰った本もどこにも無かった。まるで狐に化かされた様な感じで、ネギとのどかは首を傾げながら帰路についた。
 結局、その日の事はよく分からず、ネギとのどかだけの秘密になった。
 その後、寮に帰って来てからそのまま疲れていたネギは眠ってしまい、翌日になって図書館島に向かうと、カモがケージの中でいじけてしまっていて、ご機嫌を取る為に必死になるネギの姿があった。


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