ここは麻帆良学園校舎内、真撰組チーム、そして直にやってくるであろう朝倉チームを叩きつぶす為に万事屋チームは各自行動に移っていた。最初の第一手は戦力を二つに分断して二人二人で学園内の敵の捜索だ。「銀さん、もしくは千雨さんと組むなら文句も何もありませんでしたわ」あやか(3位)は今、ツカツカと廊下を歩いて行きながら隣で一緒に行動している“彼女”に話しかける。「でもエヴァさん、あなたと二人っきりで行動することに関しては不満と文句しかありまえんわ」「私だってお前とこんな事するハメになるなんてゴメンだったわッ! よりによって貴様と組むとか不幸にも程があるッ! 普通は私と銀時の最強最愛コンビの筈だろッ!」あやかの一言に頭に血管を浮かべて吼えるのはエヴァ(8位)。どうやら戦力分断であやかとエヴァは二人で行動するハメになってしまったらしい。「あなたと銀さんが一緒になったら戦力バランスが大きく出てしまうでしょ、ぶっちゃけ私と千雨さんだけでは真撰組の方達とまともに戦えるなんて無理ですし」「なるほど、てことは銀時と私が弱いお前等の為に仕方なくこうやって別々に行動しているのだな、全く貴様等と違い強者である私にとってはこの上なくめんどくさい事だ」「よかったですわねエヴァさん、こんな時ぐらいしかあなたロクに銀さんに期待されませんものね。腕っぷしだけが唯一の取り柄、それ以外は全部ヘタレ、しかも泣き虫、ホント魔法使いというキャラ性だけは残ってて良かったですわねエヴァさん」自分の手首ポキポキを無意味に鳴らしながら好き勝手言うあやかをエヴァはジト目で睨みつける。「その魔法を自分自身の体で体験してみたいと思わないか雪広あやか・・・・・・?」「銀さんとの約束をお忘れになって? 今回は「敵のみに対しての魔法使用許可」でしたわよね、味方の私に一回でも使用したらあなたはその場で銀さんとの約束を破ったという事になりますわよ」「私にとってはお前は敵の中の敵だ、コレ以上無いぐらいもっとも貴様が私の『敵』に相応しい、『エヴァちゃんの敵グランプリ』とかがあったらお前は間違いなくストレート優勝だ」「じゃあ魔法なり血を吸うなり私にやって下さいませ。それであなたは銀さんに一生口聞いてもらえないという豪華特典がお付きになりますけど」「ぐッ! それだけは絶対に嫌だ・・・・・・」「だったら大人しくわたくしと行動しなさい、こんなつまらない事で揉めてないでさっさと敵さんを探しに行きますわよ」「うー・・・・・・・」子供に説教する母親の様な態度で、あやかは指差してそう言うと、言われた本人であるエヴァは突然立ち止まって両腕を上下して悔しそうなリアクションを取った。「うーうーッ!」「・・・・・・ハァ~~~」やることが小学生レベルな彼女にあやかは呆れた様な目つきで彼女を見る。「うーうーッ!」「静かにして下さい・・・・・・敵に勘付かれでもしたらどう責任取ってくれるんですの?」今にも泣き出しそうな表情で悔しそうに叫んでくるエヴァにあやかが少し怒った様に睨みつける。毎度のことだが600年生きてる割には精神面は見た目通りの幼さだ。だがそう思ったその時「安心しな、とっくの昔にテメェ等の行動はこっち側に筒抜けだ」「!!」「うーうーッ!」廊下の曲がり角から突然、男の声がこちらに聞こえて来た、それと同時に足音も。あやかは表情をハッとさせて声が聞こえた方向に振り向いた。エヴァは叫ぶ事に夢中で気が付かなかったらしくまだ両腕を振っている。「チッ、旦那とやり合って見てぇと思ってたのに。俺はどうやら外れくじを引いちまったらしいな」「この気配は・・・・・・」「うーうーうーッ!」「うーうー言うの止めなさいって言ってるでしょッ!」「うぐッ!」曲がり角に隠れながら喋っている男の声にあやかは嫌な予感を感じ取っていたが、隣にいるエヴァがまだうるさく叫んでいるので遂に彼女の頭に鉄拳制裁。鈍い音を立ててエヴァは頭を押さえて痛みに悶絶する。「全くあなたって人は・・・・・・」「グスッ、銀時に絶対に言いつけてやる・・・・・・」「好きに言ってなさい、それより・・・・・・・」「ん?」頭を押さえて涙目で睨んで来るエヴァにあやかは前方を見るよう顎でしゃくる。渋々エヴァはそちらに目を向けるとそこには・・・・・・サディスティック星の王子「旦那にはわりぃが・・・・・・テメェ等には俺達真撰組の生け贄になってもらうぜぃ」「なッ! この状況でサドプリだと・・・・・・!」「テニプリみたいな略し方やめてくれません?」ズボンのポケットに手を突っ込み、口の中からクチャクチャとガムを噛んでいる音。そんな隙だらけの格好に見えながら、突然現れたその男にエヴァとあやかは凍りついた。「よりによってコイツの登場か、どうやら一人らしいが・・・・・・」「頑張って下さい“私の大切な友達”のエヴァさん、あなたならきっとやれると信じてますわ。」「ああ安心しろ、お前もあいつも二人両方消してやる」この状況で都合よく持ち上げてくるあやかにエヴァは無表情で一言。この女と仲良くなる事は未来永劫無いんだろうなとエヴァはしみじみ思う。そうしていると目の前の男が一歩こちらに歩いて来た。「金髪デカチビコンビ、テメェ等の順位を剥奪し俺達真撰組が上位を独走させてもらうぜぃ」「ほう、威勢はいいが少し相手を間違えたらしいなお前、死ぬぞ?」男が遂に動き出した。腰に差す刀を手に持ち、笑みを浮かべながらゆっくりと鞘から抜いていく。エヴァもそれに対抗するかの如くニヤリと笑い返した。サドプリこと沖田総悟(7位)、起動。番外編 人気投票など・・・・・・あ、さっきからこれ言ってるの全部私だからなエヴァ。あやかペアが敵部隊の沖田と衝突したその頃。もう一つの万事屋組の銀時(1位)と千雨(2位)は、あやか達とは反対方向の方に進んで敵の捜索活動を続けていた。「なあ、やっぱり4人で固まって行動していた方が良かったんじゃねえか? いいんちょはともかく私はなんの戦力にもならねえぞ?」「何弱気になってんだオメー、それでもネットアイドルランキング一位のちうたんか」「いや関係ねぇしッ! それと他人に言われると恥ずかしいから止めろッ!」顔を赤に染めて隣にいる銀時に叫ぶ千雨だが、彼は彼女の方へは向かずにそっと語りかけた。「いいか“ちうちう”。武装警察真撰組とか呼ばれていても所詮俺達の敵じゃねえんだよ、俺は主人公だしチビは一応本編中最強クラスだし、いいんちょはテニプリだしお前はツッコミダメガネだし。」「おういッ! 後半の二人は全く強さと関係ねえじゃねえかッ! つうかツッコミダメガネってなんだよッ!」「そのまんまの意味だダメガネ。安心しろ、例えお前がツッコミしか出来ないメガネでも真撰組なんざバカ共余裕で叩きつぶせんだよ、例え二つに戦力分断しててもな」相変わらずテンションの高いツッコミをしてくる千雨に銀時は余裕の笑みを浮かべて手をヒラヒラさせる。1%たりとも向こうの連中に負けない自信があるらしい。しかし「ほう、随分と俺達に対してナメた口聞いてくれるじゃねえか。余程一位から降格してえらしい」「一位の称号だけではなく首も奪ってやろうか白夜叉」「うわぁッ! いきなり出てきやがったッ!」 「早速テメェ等か・・・・・・」真正面からこちらに歩いて来たのは真撰組サイドの土方(12位)と右目に眼帯を付ける刹那(13位)。偶然の鉢合わせだがまさか捜索始めて早々この二人に出会うとは銀時も予想外だった。「真撰組ん所のマヨネーズ中毒者と序盤のボスキャラが俺達になんの様だ」「私のトラウマに触れるなァァァァァ!! さっさと殺しましょう土方さんッ!」「落ち着け、つうかお前いつの間にボスキャラになってたんだ?」「その事については一切ノータッチでお願いしますッ!」聞かれたくない事に関して事更に敏感に反応する刹那に土方は首を傾げるも、とりあえず今目の前にいる標的の殲滅に重点を置いた。口にタバコを咥えて火を付け。優雅に吸い始めながら銀時の方へ土方は目を向ける。「“足手まとい”がついてるのに俺等二人に勝てると思ってんのか万事屋」「う・・・・・・やっぱり私じゃ足引っ張るだけだよな・・・・・・」「ああ? ウチの千雨ナメてんじゃねえよ」「え?」「いざとなったらメガネ族に伝わる眠れる力を覚醒させて巨神兵になるんだぜ。すげえだろビビったか?」「本人の私が一番ビビるわそんなのッ! つかねえよそんな能力ッ!」真顔で大ボラを吹く銀時に千雨が彼の後頭部に蹴りを入れると、土方は銀時に向かってフッと笑い。「巨神兵とか対した事ねえな、ウチの刹那も第三の目を覚醒させてデイダラボッチになるんだぜ。お前等なんざ瞬殺だ」「張り合って私にも変な設定付けないで下さい土方さん・・・・・・」「ていうかなんでそこまでジブリキャラにトランスフォームさせたがるんだお前等ッ!」「いて」対抗して同レベルなホラを吹く土方の頭を勢い良く叩く千雨。すると土方は頭を押さえながら額から汗を一滴たらす。「・・・・・・ツッコミのドサクサにこの俺に一発を入れるとは・・・・・・」「い、いやこれは勢いというか流れであって・・・・・・」「刹那、どうやらこのメガネも本気で俺達とやり合おうとしているらしいな」「はいッ!?」銀時はおろか千雨に対しても本気を出す構えを見せる土方。千雨が口をあんぐりと開けて驚いていると土方に向かって刹那はコクリと頷く。「とりあえず2位のプレートを破壊した後、二度とこちらに立ち向かう事が出来ないよう再起不能になるまでボコっておけばいいんですね、わかりました」「ちょ、ちょっと待てェェェェェェ!! 私お前等見たいに刀使えるわけでもないただの一般人だぞッ!?」「問答無用です、順位とは強い者こそが上位に入るべきなんです、ただのツッコミダメガネのあなたでは2位の荷は重すぎます」「敵にまでダメガネ言われたッ! クソッ! ど、どうすんだ銀八ッ! コイツ等私まで潰す気なんだけどッ!?」黒い札をサッと取り出して一本の呪い刀、死装束に具現化させて構える刹那に、千雨は反射的に銀時の方へ振り返ると、彼はもう既に腰に差していた木刀を抜いた。「オメェは下がってろ。おいお前等、二人まとめてかかってこいや」「銀八ッ!」「いいから下がれ、じゃねえとホントに足手まといになるぞ」「う、うん・・・・・・」銀時に言われ千雨は彼を心配そうに見つめながら彼の背中へと回る。相手は二人だ、いくら銀時といえども真撰組副長と、神鳴流剣士では分が悪過ぎる。そして土方と刹那は容赦なく彼等に刃を向けようと刀を構えた。「テメェの居場所はもうここにはねえ、ここは俺達真撰組サイドが主役だ。さっさと学園都市に戻ってあっちのガキ共と戯れてろ」「寝言ほざいてんじゃねえよ、『禁魂』だろうがここだろうが主役はこの俺以外にいねえ、そいつを今証明してやる」(禁魂?・・・・・・え、キン○マ・・・・・・?)(何でこのタイミングで下ネタ言ってんだコイツ・・・・・・)シリアスな表情で土方と対峙している銀時に刹那と千雨はちょっと引いた。この場面で何故に男の股にぶら下がってるモンを言う必要があったのだろうか・・・・・・そんな疑問が頭に浮かぶ刹那と千雨をよそに。銀時と土方は互いに構えを取った状態で互いに突っ込む。「テメェ等真撰組はッ! 端っこでウロチョロしてる脇役がお似合いだァァァァァァ!」「抜かしやがれェェェェェェ!!」「それじゃあ私達も殺り合いましょうか」「待てェェェェェ!! 非戦闘キャラの私がお前とまともに戦えるわけねえだろォォォォォォ!!」いよいよ銀時と土方が戦おうとする中、刹那もまた首を激しく横に振る千雨に刀を構える。銀時はともかく千雨は絶体絶命のピンチ。だがその時、予期せぬ事態が起こった。「あん?」「コイツは・・・・・・煙幕かッ!?」「一体誰がこんな事をッ!」突如4人の周りを覆う黒い煙。その煙はあっという間に4人の視界を遮り、辺り一帯が暗闇と化す。銀時と土方、千雨に斬りかかろうとしていた刹那が慌てて周りを見渡している中、千雨は頭を両手で押さえてその場にしゃがみ込んでいた。「ぎゃぁぁぁぁぁ!! なんだよコレッ!? なんだよコレッ!?」「やっほー千雨ちゃん」「ん? この声何処かで・・・・・・」パニくった千雨の頭上から聞いた事のある声、千雨が恐る恐る顔を上げると声の主は彼女の手をグイッと強く引っ張った。「起きて起きて、さっさとこっから立ち去るよ。龍宮さんの説明だとこの煙あんま長く持たないから」「うわッ!」「銀さんも逃げるよ」「うおッ! おい誰だいきなりッ!」「いいからいいから、ここは私を信じて」千雨を立ち上げた後、声の主は暗闇の中にも関わらず容易に銀時を見つけてすぐに彼の腕を取る。「ふふ~ん、龍宮さんから借りた暗視ゴーグルのおかげで視界はバッチリ~」煙幕で張られた環境の中、銀時と千雨の腕を引っ張って先導していく声の主は軽やかに走り出す。そして銀時と千雨はこの声の主の正体に気付いた。この妙に軽い口調、間違いなく彼女だ。「おいお前ッ! 確か俺達に反抗して・・・・・・!」「私が銀さんと千雨ちゃんのツートップを妨害するとでも? 無い無い、天地がひっくりかえってもそれは無い」「あ、朝倉ッ!」黒い煙幕の中からやっと三人は抜け出す。それと同時に“彼女”は二人の腕を離した。目の前に現れた彼女に千雨が走りながら声を掛けると、彼女は水中眼鏡の様な暗視ゴーグルを外して首に掛けて二カッと笑って千雨の方に振り向いた。「はいは~い」この土壇場で思わぬ助っ人(?)の登場だった。朝倉和美(22位)、彼女のおかげで銀時と千雨が難を逃れている頃。彼女が使った煙幕で視界をやられていた土方と刹那は無我夢中で周りを探っていた。「チィッ! 煙幕食らうのはこれで二度目だッ! そこかァッ!」「いだいッ! 土方さん私ですッ! なんですかこのデジャヴッ!?」二人の視界が晴れるのはこれから数十秒後の事であった。銀時と千雨が和美のおかげで難を逃れた頃、先程衝突してしまったエヴァ達と沖田は廊下という狭いスペースで激しい音を鳴らしながら激線を繰り広げていた。「ほれほれほれ~ッ! もう一発飛んでくるぞ~ッ! 避けるかッ!? 斬るかッ!? 死ぬかッ!?」「だりぃなチクショ~、旦那のガキがまさかここまで可愛げのねえガキだとはな」もはやその廊下は多くの生徒達が歩きまわれる環境では無い。辺り一面にエヴァの魔法により氷が張られ、あらゆる方向から大量の氷柱がターゲットを襲っている。エヴァは優雅に床から1メートル程浮いて腕と脚を組んで余裕の構え。反対に沖田は刀一本で飛んでくる氷柱を叩き斬るのが精一杯だ。「この分厚い氷のおかげで体も寒さで鈍っちまう、認めたくはねえが。不利だな」「ハ~ハッハッハッ! 見たかコレが私だッ! もう誰にもヘタレだとか泣き虫などとは呼ばせんッ! 私こそが地上最強の魔術を持った吸血鬼ッ! 『闇の福音』エヴァンジェリンだッ!」辺り一帯の温度はみるみると膨大な冷気のおかげで低下している。真撰組最強と称されている沖田でさえ、さすがにこの環境では刀の動きが鈍る。それを見てもはや勝ちは決まったと確信したのかエヴァは宙に浮いたまま大笑い。散々バカにされていた屈辱を遂に挽回する時が来たのだ。だがそんな彼女のおかげで。彼女の作った氷のフィールドのせいで沖田だけではなく、一緒にいたあやかも体を震わせ廊下の片隅でかじかんでいた。「ななななな何してんですかアナタはッ! わたくしを凍死させるおつもりですかッ! こんな氷さっさと消しなさいッ!」「ええいなんだその口の効き方はッ! 私のおかげで敵を倒せそうなんだぞッ! 胸だけが取り柄の貴様は隅っこでガタガタ震えてろッ!」「だだだだ誰が胸だけ・・・・・・う~ホントに寒くて死にそうですわ、逃げようにも足が震えて動けないし・・・・・・」強がって言い返そうにもそれよりもこの極寒が薄着の格好に響く。白い吐息を吐きながら苦しそうにしゃがみこんでいるあやかを見て、エヴァのテンションはMAXに達した。「ガハハハハッ! みっともない姿だな雪広あやかッ! そうだコレが私とお前の力の差だッ! 今の貴様の姿こそが一番の貴様のお似合いの姿だッ! 泣けッ! 喚けッ! ひざまずけッ! 私の怒りと憎しみその身に刻めッ!」「く~~~~絶対に後悔させてやりますわッ!」「俺の事忘れてコイツ等勝手に仲間割れ始めやがった、まあいいや、やっぱりガキはガキだって事だな」沖田の事を忘れ、悔しそうに睨みつけて来るあやかの方に振り向いて高笑いをしているエヴァ。不用心にバカ丸出しで背中を見せている彼女に沖田は刀をチャキっと構える。「8位殺っても順位は減らねえが、そこにいる3位なら別だ。二人まとめて地獄に送ってやる」飛びかかる体制に入ってターゲットに狙いを定め沖田は刀を強く握った。しかし、そんな時“彼女”はやって来た。「ふ~んふふ~んふ~ん、そんな所で何やってるのかしらあやか?」「!!!」前方から鼻歌交じりに楽しそうにスキップで歩いてくる“彼女”に。沖田は珍しく目をギョッとさせた。この世界には唯一無二、この沖田に対抗できる女性が一人だけ存在する。その女性とは・・・・・・「なんだか寒そうで苦しそう、ウチのあやかをこんな酷い目に合わせたのはだ~れ?」「ち、千鶴さんッ! あなたもここにッ!」「ぎやぁぁぁぁぁぁ!! なんで貴様がこんな所にィィィィィィ!!」「おいおいマジかよマジかよあり得ねえだろオイ・・・・・・なんであの女がここにいやがるんでぃ・・・・・・・」あやかは寒さに震えながらも驚き、エヴァは頭を押さえて絶叫を上げ。沖田に至っては呪文の様にブツブツと呟きながらガックリと肩を落とした。のほほんとした微笑を浮かべて千鶴(20位)がこの戦場にやってきたのだ。「な、なんだか外から凄い音が一杯聞こえてきますね・・・・・・・十四郎さん大丈夫かな・・・・・・」「なあに、トシが女子供に負けるタマじゃないだろ。まあ万事屋ならわからんがな、アイツの底の強さは長い付き合いの俺達でもわからん」「じゃあもしかしたら十四郎さんはぎ、銀八先生に・・・・・・」「きっとトシが無事に帰ってくると信じてやるのが君の任務だ。大丈夫、あの男がテメーの女を置いて死ぬわけないさ」「はい・・・・・・」ここは3年A組の教室。中では心配そうにのどかが窓から目を覗きこみ、土方達が何処にいるかキョロキョロと窺っている。そんな彼女を安堵させる為に護衛役として残った近藤は優しく声を掛ける。モグモグと焼き芋をほおばりながら。「あ、あの近藤さん・・・・・・なんで焼き芋食べてるんですか、ていうか何処から・・・・・・」「いやぁなんか何もしてないとそれはそれで腹が減っちゃってさ。屯所から持って来た『ザキのお手製、真撰組紫焼き芋』、食べる?」「いいです・・・・・・」「大丈夫だって、ここにいるの俺と君だけだし。トシもいないんだから屁の一発や二発やっても構わんよ。無礼講、無礼講」「いいですッ!」焼き芋がたくさん入った紙袋を口をモグモグさせながら差し出してくる近藤にのどかは顔を赤らめて拒絶する。気になるお年頃の少女を前にいかがわしい事を自然に言えるとはさすがはモテないゴリラだ。「皆さんが大変な目に遭ってるかも知れないのに焼き芋なんて・・・・・・」「食ってる内に食っておかんといざという時に身が持たんぞ。腹が減って動けないとか、それこそ仲間の足を引っ張る事になる。局長命令だ、一緒に焼き芋を食おう」「はぁ・・・・・・まあそんなに言うならわかりました・・・・・・」どんな局長命令だよというツッコミをするのは置いといて。のどかは遠慮がちに近藤に近づいて、彼が手に持つ焼き芋を受け取る。江戸から持って来たというのに不思議とまだほっこりと温かった。「十四郎さん怪我とかしてないかなぁ・・・・・・」「君はいつもトシの事を考えてるんだな」「夕映もよく近藤さんの事話してますよ」「ああ夕映ちゃんか・・・・・・」同じ方向に体を向けながら近藤とのどかは戦場である事を忘れて焼き芋を食べ始める。「そういえばあの子いつも思うんだけど基本はずっと無表情だよね。もう喜んでるのか怒ってるのか楽しんでるのかいつもわかんなくてさ」「あまり感情を表に出さない性格ですからねあの子。でもずっと付き合ってるウチに私は大体わかってますよ? 近藤さんの事話してる時は心なしか嬉しそうにしてます、アチチ」舌を火傷しないよう気を付けながら食べているのどかの話に近藤は「う~ん」と頭を捻って芋を食べる。「そうなのか、俺はまだ付き合い短いから全くわからんのよな。でもなんか初めて会った頃の総悟に似てるんだよなぁあの子」「お、沖田さんとですか・・・・・・」「まあ総悟の方がずっとやんちゃだったけどな」「へ、へぇ~・・・・・・」親友が最も自分が恐怖の対象としている人物とダブらせている事にのどかは複雑な気持ちで苦笑する。まああの沖田でさえ素直にできる近藤の人格こそが夕映が懐いた原因なのかもしれない「コレが終わったらちょっと会いに行ってみるか、せっかくこっちに来たんだし」「そうですね、夕映もきっと喜びます」「君も今日はトシとどこか行って来るといい、アイツも顔には出さないが溜まっていた仕事のせいで疲れている。二人っきりで遊びに行ってアイツの疲れを癒してくれ」「え? いいんですか?」「それぐらいの時間ぐらい作ってやるさ、俺は真撰組局長だぞ?」頬っぺたに芋のかけらを付けながら近藤は二カッとのどかに笑いかけた。やはりコレぐらいの度量がなければ真撰組などというチンピラ警察24時の頭は務まらないのだろうか。のどかもそれに感謝を込めて頭を下げた。「あ、ありがとうございます・・・・・・でももし十四郎さんにイヤだって言われたら・・・・・・」「トシが君の誘いを断るとでも? 心配するな、アイツが君の誘いを断るわけないさ」「え~とその根拠は・・・・・・」「ハハハ、野生の勘って奴だッ!」「アハハ・・・・・・どうしようなんだか凄く不安になって来た・・・・・・」キランと歯を輝かせグッと親指を立てる近藤にのどかはちょっとばかり顔を曇らせる。野生の勘で当たって砕けろとはいかにも彼らしい。しかしそれが果たして自分にも出来るのだろうか・・・・・・。「でも、後ろ向きで考えてちゃダメですよね・・・・・・近藤さんみたいに前向きに生きて行かなきゃ・・・・・・」「おういい心がけだぞのどか君ッ! それでこそ鬼の副長の嫁だッ! 略して鬼嫁ッ!」「き、決まってもないんですから勝手に私が十四郎さんのお嫁さんになるって言わないで下さいッ! それに鬼嫁ってなんか別の単語になっちゃってますッ!」顔を真っ赤にさせながらペシペシと叩いてくるのどかに近藤は大笑い。「前向き前向きッ! 前だけ見とけばきっとトシの嫁になれるさッ! 挙式の時は俺とっつあんと一緒に裸踊りやっちゃうかもッ! ダ~ハッハッハッ!」「もう勝手に話を飛躍させないで下さいッ!」「挙式の時は君の所のクラスメイトも呼ぶかッ! この世界で式をやるのならば是非招待しなきゃなッ! 真撰組隊士全員も来るし賑やかな結婚式になりそうだッ! それに万事屋の奴等も呼んでやろうッ! あいつ等ならきっと場をもっと盛り上げてくれるぞッ!」「ハァ~もう・・・・・・そうかもしれませんね」まだ決まっても無い筈の結婚式で勝手に盛り上がっている近藤の姿を見てのどかももう呆れかえって思わず顔をほこらばせてしまう。戦場の中でのほんの一時の安らぎの時間。だがそんな安らぎが終わるのも唐突であった。「そういう会話は“死亡フラグ”だと相場で決まってるんだがね」「「・・・・・・へ?」」背後からの声に近藤とのどかの思考が一瞬停止する。そして次にカチャリと鳴る金属音。まるで銃の引き金を引いた音の様に・・・・・・「ここはいつ最悪なアクシデントが起こってもおかしくない戦場だ。背後の警戒は常に怠るべからず、無駄な会話をするべからず、大きな音を立てるべからず。そんな軍隊で習うべき基礎中の基礎も出来ないのか?」「こここここ近藤さん・・・・・・ななななななんか後頭部に冷たい金属を当てられる気がするんですけど・・・・・・」「アハ、アハハハハ・・・・・・奇遇だねのどか君、俺も細っこい金属で頭ゴリゴリさせられちゃってるよ・・・・・・」冷たくて細っこい金属を後頭部に当てられながら二人は目を泳がせながら顔を合わせる。この状況、どう考えてもピンチとしか言いようがない。二人の頭に当たっているのは。紛れも無い二つの拳銃。デザートイーグル。“彼女”の愛銃だ。「素直に両手を上げろ。脳みそを“スパゲッティ”にしたいなら話は別だが」「ヒィィィィィィ!!」「すんません俺スパゲッティよりうどん派なんですけどッ!」彼女の脅しにのどかは悲鳴を上げ近藤は緊張感のない叫びを上げながら、二人は急いで両手を上げた。彼女は冷たい口調で話しを続ける。「ここからは私の命令通りに動け、少しでもおかしな行動取った場合は君等の順位を撃ち抜く」「は、は、はい・・・・・・」「勘弁してッ! やっと自力で手に入れた一桁順位なのッ! もう手放したくないのッ!」「ホントはこの場で君達を抹殺してもいいのだが、実は私も“ある人物”の命でここに来てね、どうやら彼女には彼女の思惑があるらしい、君達にはその彼女の作られた舞台に上がってもらう」「ぶ、舞台ですか・・・・・?」「そう」両手に拳銃を構えてのどかと近藤をホールドアップしながら。彼女は、龍宮真名(22位)は淡々とした口調で答えた。目を怪しく光らせその両手に持つ愛銃を強く握る。「血沸き肉躍る人気投票の天王山へ」今こそ天下分け目の時