ガッシャーンッ!という音と共に一人の少女、エヴァンジェリン(8位)がファーストフード店の二階からガラスを割って出て来た。エヴァはダン!と地面に両足で着地し必死な形相で荒い息を吐く。「ハァッ! ハァッ!・・・・・・チッ!」さっき飛び下りた2階から放たれた殺気に気付きエヴァはは咄嗟に体を横に翻す。その瞬間銃声が鳴り、彼女がコンマ0.1秒前にいた地点に鉛弾が着弾した。(ちょッ! 奴等マジでこの私を殺る気かッ!? ていうか町中で普通に実弾使うとか何考えてんだアイツはッ!)「闇の福音と呼ばれた悪の魔法使いが逃げ腰に徹するとは情けないな」「なにッ!」 挑発とも思える発言が耳に届き、すぐさまエヴァは振り返ってガラスを割って出て来たファーストフード店の二階に顔を上げる。そこには片手でも扱うにはかなりの技術を要求される銃、デザートイーグルを両手に一丁ずつ構えながら龍宮真名(22位)がこちらを見下ろして立っていた。「得意の魔法を使えば私たちなんて瞬殺出来るんじゃないか? 呪いはもう解呪されたんだろ?」「ぎ、銀時から自分が許可下ろさない限り使っちゃいけないって言われてるのだッ!」狙ってくるハンターに威嚇する獣の様に、エヴァはキッと尖った二本の八重歯を出して龍宮に向かって吠える。だが「先生との契りは絶対に破らないと言う訳か、だがその強情が仇になるとも知らずに」「ぬわッ!」返事は二発目の銃弾だった。狙いはやはり8位の順位プレート。狙う場所を知っていたエヴァは頭を前に下げて間一髪の差でそれを避ける。「魔法は使わずとも身体能力は意外にあるんだな」「龍宮さん倒せそう?」「なに、魔法を使えないエヴァンジェリンなどビー玉の撃てないビーダマンと同じだ」「いや例えが意味分からない」(朝倉和美・・・・・・)ヒョコっと龍宮の隣に現れ彼女に話しかけてる朝倉和美(22位)に視線を泳がせるエヴァ。(コイツに戦闘力は無い、だがコイツはしつこいからなぁ・・・・・・逃げても中々振り切れんぞ絶対)「ねえ、まだ終わらないの?」「千鶴さん、なんで呑気にポテト食ってるの?」「お腹が減ったからよ」「いやそんなキリッと言われても・・・・・・」(那波千鶴に関してはなんかもう勝てる構図が想像出来ん・・・・・・仕方ないここは一旦逃げるぞ)「あッ! エヴァちゃんが逃げたッ!」ポリポリとポテトを食いながらやってきた那波千鶴(20位)に和美がジト目で呟いているのを見送った後、エヴァは踵を返してその場から走り出す。龍宮はその後ろ姿に銃口を向けるが数秒間静止した後スッと銃を下ろした。「捨て置くか」「えッ! どうしてよッ!?」「エヴァンジェリンの行動は大体予測できる、彼女の交流の幅は狭いからな。行く場所は大体分かる」「え? 何処? 自分の家に逃げり込むの?」「いや・・・・・・」タッタッタッタッと町の中を全力疾走するエヴァの背中を眺めながら龍宮は目を細めた。「学校だな、あそこには彼等がいる筈だ」「チィッ! バカ共め私に牙を突き付けた事を永遠に後悔させてやるッ!」息を荒げ無我夢中で走り続け、エヴァはある場所に向かう事だけを考える。とにかくここはあそこへ行かなければ・・・・・・・そう一位がいるであろう万事屋へ番外編 人気投票など死刑だうわぁぁぁぁぁん!!数分後、麻帆良校舎内ダッダッダッダっと階段を二段飛ばしで駆け上がりエヴァは廊下も全力疾走で走る。「アイツ等を撒けたか・・・・・・?」走りながらチラリと後ろに振り返るがそこには和美達はおろか人っ子一人いない。追って来ない、その怪しい雰囲気に戸惑りつつもエヴァは走るのを止めなかった。あの男なら・・・・・・一位のあの男ならきっとなんとかしてくれる。そのただ一つの希望の為にエヴァは廊下を駆け巡る。そして遂に・・・・・・「着いたッ!」『万事屋銀ちゃん』と書かれた表札がある部屋を見つけ、エヴァは足で急ブレーキをかけてその部屋の前にピタリと止まる。「この時間帯ならアイツはきっとここにいる筈だ、もしかしたら“アイツ等”もいるかもしれんが・・・・・・」眉間にしわを寄せながらエヴァはドアノブを握る。だが「ん? なんで鍵がかかってるのだ?」ガチャガチャっと音が出るだけでドアは一向開こうとしない。いつもは鍵などかけていないのに・・・・・・「お~い銀時、いるか~?」『ああ~?』「銀時ッ! やっぱりここにいたかッ!」試しに声を出して彼の名を呼んでみるとすぐ様返事が飛んで来た。エヴァは顔を輝かせドンドン!と激しくドアをノックする。「私だッ! 早く開けろ緊急事態なんだッ!」『え、誰? 鶴屋さん?』 「違うわッ!」 『すんません鶴屋さん、SOS団はもう終わりなんですけど?』「だから違うと言ってるだろッ! さっさと開けろッ!」この状況下でもふざけている人気投票一位の男、坂田銀時にエヴァはドア越しに怒鳴りつける。しかしそこから数秒の沈黙が流れた後、ドアの向こう側にいる銀時は怪しむ様に『・・・・・・じゃあお前誰だ?』「はぁッ!? 貴様のヒロインのエヴァンジェリンに決まっておるだろうッ!」『お前知ってる?』『私、エヴァさんは知ってますがヒロインのエヴァさんは知りませんの』「貴様等ァァァァァァ!! ていうかお前もいるのか雪広あやかァァァァァァ!!!」『・・・・・・白井黒子ですの』「嘘つけぇぇぇぇぇぇ!! 口調似てるからって騙されんぞぉぉぉぉぉッ! てかさっさと開けろォォォォォォ!!!」『ジャッジメントですの』『ああ似てる似てる、あいつもそんな感じだった』「うっさいわぁぁぁぁぁぁぁ!!」部屋の中には銀時と恐らく3位の雪広あやかがいるのであろう。二人仲良く自分をダシにしてコントをしている。あやかもいると知ってエヴァは怒り心頭で両手でドアを叩きまくる、するとしばらくして『お前等コントやってないでさっさと開けてやれよ』「ん? この声は長谷川千雨・・・・・・おい長谷川千雨さっさとここを開けろッ!」『はいはい、開けるからドアを叩くのを止めろ。壊れる』万事屋トリオ唯一の常識人にして2位の長谷川千雨も部屋にいた。エヴァはドアを両手で叩きながらすぐ様彼女に向かって偉そうに命令すると、ドアからカチャリと鍵を解いた音が聞こえ、すぐにガチャっと開く。「開けろ開けろッ!」「ったく、んな大騒ぎして連中にかぎつかれでもしたらどうすんだ・・・・・・おふッ!」「あ、すまん」ドアを思いっきり拳で叩く事に集中していたおかげで、千雨がドアを開けたのも気が付かなかった。ドアが開いて千雨が出て来た瞬間、エヴァは彼女の腹に思いっきり拳を叩きこむ。突然の奇襲に千雨は成すすべなく腹を押さえてしゃがみ込んだ。「いきなり腹殴るとかお前何考えてんだ・・・・・・!」「だからすまんと言うておるであろう」「あのな・・・・・・ところでお前どうしたんだ今日は?」少しも悪びれもせずにしかめっ面で謝罪するエヴァに、千雨は彼女以上にしかめっ面になりながら腹を押さえて立ち上がる。するとエヴァは彼女の頭の上にある“ある物”を見つけた。1位の銀時に次ぐ2位と書かれた順位プレートを・・・・・・・「せいッ!」「ぐぶッ! コ、コイツ故意的に・・・・・・!」「故意じゃないぞ~、間違えてしまったのだ。いや~すまんすまん」「すげぇやコイツ、自分でやっておいてわざとじゃないかとほざいてやがるよ・・・・・・」2位の順位プレートが目に入った瞬間、エヴァは間髪いれずに千雨の腹に真正面からストレート。またもや腹を押さえてその場に崩れ落ちた彼女にエヴァは棒読みで謝罪する。「そこでしゃがみ込んでると入れないではないか、さっさと退け」「いやしゃがみ込んでるのは誰のせいだと思ってんだよ・・・・・・」高慢な態度で近づいてくるエヴァに千雨は悪態を突きながらも彼女が部屋に入れるように立ち上がって一歩後ろに引く。「全くこの私を部屋に入れる事だけにどれだけ時間をかけておるのだ・・・・・・」やっと万事屋銀ちゃんの部屋に入ったエヴァは腕を組んだ状態で部屋の中を見回してみる。別段変わった様子も無い、だが部屋の奥にある事務用の机に足を乗せながら椅子に座る銀髪天然パーマ、坂田銀時(1位)と、中央にあるソファにチョコンと行儀よく座っている雪広あやか(2位)が目に入った時、エヴァは二人を睨みつける。「ドアぐらいさっさと開けろバカ者」「なに言ってんだオメー、このサバイバル戦のバトルロワイヤルな状況で不用心にドア開ける甘い奴なんて何処にもいねえよ、ああいたわここに。千雨、お前警戒心無さ過ぎんだよ」先程すぐにドアを開けた千雨に銀時はけだるそうに注意するが、注意された本人は口をへの字にして「声でエヴァだって分かっただろ・・・・・・」「だから甘えんだよ、今回はチビだからよかったものもし俺の順位を脅かそうと狙っている鶴屋さんだったら今頃俺達は3人仲良く順位圏外だぜ」「そもそも鶴屋さんいねえよこの世界にッ!」眉を潜ませ考察深い表情を作る銀時に千雨はビシッと指差してツッコミを入れる。するとソファに座っているあやかの向こう側のソファに座ったエヴァは二人の会話にふと気になった事が。「バトルロワイヤルな状況・・・・・・?」「この校舎内で下位の順位が自分より上位の人を襲うという事態があるかもしれませんのよ」「なッ! まさかお前等もそんな目にあっていたのかッ!?」あやかの情報にエヴァはすっときょんな声を上げて驚く。まさか朝倉和美以外にもこの人気投票を歪ませようとする者達がいたとは・・・・・・あやかは足を組み、ソファの肩かけに頬杖を突いて向かいに座るエヴァに向かって目を細める。「まあ私と千雨さんと銀さんはトップ3ですからね、8位のあなたより敵が多いんですの」「なんかそのムカつく言い方が癪に障るな・・・・・・」「で? “8位”のエヴァさんも誰かに襲われたんですか?」 「8位を強調するな殺すぞ。ついさっき朝倉和美含む三人の下位順位の連中に襲われた」「朝倉さんが・・・・・・? 千雨さん」「ん?」イライラした調子でエヴァは吐き捨てる様に数分前の出来事を教えると、あやかは細めていた目をパチッと開き、後ろで腕を組んで立っている千雨の方に振り返った。「朝倉さんもこの順位競争に参加してるらしいですわよ?」「マジか? でもアイツだったら問題ねえだろ、どっちかというとこっち側の勢力じゃねえか」別段心配してなさそうな表情の千雨にエヴァは顔を上げて「ちなみに朝倉和美の仲間は龍宮真名と那波千鶴だぞ、そして数分前に9位を亡き者にした」「前言撤回・・・・・・並大抵のレベルじゃない敵勢力じゃねえか・・・・・・」「よくもまあそんな濃い連中が結束しましたわね・・・・・・」和美の愉快な仲間達に戦慄を感じる千雨とあやか。龍宮真名は戦闘術に関してはプロだし、千鶴に関してはその存在だけで恐ろしさを感じる。「でもいいんちょは那波に襲われねえだろ、アイツと仲良いんだし」「それだったら千雨さんも朝倉さんに襲われる心配はないじゃないですか、龍宮さんは銀さん意外全員狙う理由がありますが・・・・・・」げんなりした表情でそう答えるあやかに千雨ははぁ~とため息をついた。「どっちみちここに近づかせちゃいけない勢力ってわけか・・・・・・朝倉がこっち側だったら便利だったんだけどな」「チッ、仕方ねえ」さっきからずっと黙って彼女達の話を聞いていた銀時は、机に足を乗せたまま腕を組んで顎に手を当てる。「和美が敵に回るっていうなら俺達もそれなりの作戦を立てなきゃな」「銀八、まさか・・・・・・」「このままここに隠れてるわけにもいかねえだろ」「銀時」「あん?」心配そうな表情を浮かべる千雨と会話している銀時にエヴァがソファに深々と座りながら口を開く。「朝倉和美達意外にも敵がいるのだろ? それは誰だ?」「オメーはここに来る前に連中に会わなかったのか?」「連中?」小首を傾げるエヴァに銀時は不機嫌そうにフンと鼻を鳴らした。「真撰組サイドだよ」「真撰組サイド? まさかッ!」「ああ、アイツ等はトップ3に入った俺達の首を狙っている、万事屋サイドの俺等を抹殺して自分達をもっと上位に食い込ませようとしているらしい」「やはり朝倉和美達と考えてる事は同じか・・・・・・」思わぬ敵勢力にエヴァが眉間にしわを寄せていると、今度はあやかが彼女に向かって話しかける。「真撰組の例の御三家に咥え、刹那さんや宮崎さんもいますわ。しかもこの校舎内の何処かに潜んでいるらしいですの。だから私達はここで息をひそめて隠れていたんです」「そんな奴等など私はここに来るまで一回も見なかったぞ?」「ホントですか? でも私と千雨さんはいつも通りにここに来た時に連中が集まってコソコソと喋っていたのを耳に入れましたわ」あやかがそう言うと後ろにいる千雨がエヴァの方に口を開いた。「万事屋サイドを潰して読者の人気を自分達で総取りして。次回作の銀八先生スピンオフを『真撰組特番スペシャル』にするってな」「・・・・・・いや無理だろそれ・・・・・・」「だよな、別にそんな事しても一回や二回は真撰組の回はあると思うんだけど・・・・・・」「あの人達は自分達の回だけで次回作をやりたいのでしょう、要するに人気投票トップ3の私達の存在が邪魔なんですの、自分達が負けた事を強引に捻じ曲げようとするなんて野蛮極まりありませんわ」朝倉和美達に加え真撰組という強大な敵勢力。彼等の目的を聞いてエヴァは頬を引きつらせ千雨も同意するように頷き、あやかは呆れた調子で彼等に悪態を突く。すると彼女達の話を聞いていた銀時は机から足を下ろし、スクッと立ち上がると。三人に向かっていつもの死んでいる魚の様な目で話しかける。「とにもかくにも連中の好き勝手にはさせねえ、俺達はなんとしてでもこの順位を護るんだ。やられる前にやってやるよ、真撰組だろうが和美達だろうがな」はっきりと断言する銀時にあやかも強く頷く。「ええ、なにせ私達トップ3ですから、この順位は絶対に死守しなければ。それにしてもメインヒロイン二人と主人公のトップ3・・・・・・なんかいいですわね・・・・・・」「そうか? 私はこんな面倒事に巻き込まれるならもっと後ろの順位でも良かったぞ?」「それは私に対して喧嘩をお売りになってんですか千雨さん・・・・・・!?」「い、いやそんなつもりはないんですけど・・・・・・・な、なんかごめん」やる気のなさそうにぶっちゃける2千雨にあやかは目を細めてキッと睨みつける。銀時に次ぐ2位になれた千雨がそんな事言っても勝者の戯言にしか聞こえないのだ。少し怒った調子になっているあやかに千雨が困った様子で後ろ髪を掻いていると、エヴァがあやかにジト目で話しかける。「おい、さっきから私の事忘れてないか、私もヒロインで万事屋サイドなんだぞ」「・・・・・・まあこんな所に素敵な捨て駒が一人おりましたわ、特攻要員に使えそうですわね」「おいッ!」「私達は2位と3位なのに8位だなんて・・・・・・フ、随分中途半端じゃありませんこと? それでヒロインって名乗れますか?」「うう・・・・・・・」「あらあらまたお泣きになるんですか? あなたはそればっかり、まあそういうキャラだから仕方ありませんわね。8位のエヴァさんにはふさわしいキャラですわ」意地悪な事を行って来るあやかに、エヴァはすぐに目頭を熱くさせじんわりと涙目になりすぐに「うわぁぁぁぁぁぁんッ! 好きでこんな順位についた訳じゃないんだぞ~~ッ!!」「うわ、泣いた・・・・・・よっぽど気にしてたんだろうな、溜まったものが一気に爆発したよ」 「こんな泣き虫と一緒で大丈夫でしょうか、前途多難ですわ」「泣かしたのはお前だろうが・・・・・・ん?」目の前で大粒の涙を流して人目も気にせずに泣きだすエヴァにあやかはめんどくさそうに首を振り千雨がそんな彼女にツッコんでいると、銀時が突然ツカツカと部屋の中を歩きだしドアの方へと近づいて行く。そして怪しむ様に腰をかがめて鍵穴から目を覗かせる「どうしたんだ銀八?」「・・・・・・かったりいからスルーしていたがチビがこの部屋に来てからずっとこのドアの前に張り込む気配があってよ」「はッ!? マジかよッ!?」「どうにもそのチビはそいつに泳がされていたらしい。俺等が隠れている場所を見つける為にな、チビが誰にも会わなかったわけだぜ。今はもういねえがな、大方テメーの本拠地に戻ったんだろ」「真撰組サイドの連中の一人か・・・・・・すげぇなそいつ、一応エヴァってそれなりの腕を持った魔法使いなんだろ? そんな奴に気付かれる事なく尾行なんてするなんて・・・・・・」腐っても鯛、エヴァの実力が相当なのは修学旅行で千雨は十分熟知している。そんな彼女に何一つ租も無く近づいて尾行出来るとは・・・・・・。千雨が一体どんな者がエヴァを・・・・・・と考えながら後ろへ振り返ると「え~んッ! え~んッ!」「いい加減泣きやみなさいッ! みっともないですわよッ!」「ヒロインなのに私だけのけもの扱いッ!! ふぇぇぇぇぇぇんッ!!! 」涙&鼻水まみれのエヴァがあやかに叱られながらなお甲高く泣き叫んでいた。「・・・・・・私でも出来る気がする」「こんなチビ、チェ・ホンマンでも尾行出来るわ」千雨の呟きに銀時はボソッと相槌を打った。万事屋一行がグダグダながらも事態を進行させようと思案している頃。『3年A組』の教室の中で数人組のグループが集結していた。「連中はやはり土方さんの予測通り万事屋室にいました。一位の白夜叉と二位の長谷川さん、三位の雪広さんと数分前にやって来た八位のエヴァンジェリンの合計四人がそこに現在缶詰め状態で籠っています」「あのパイナップル頭のやかましいガキはどうした、アイツも万事屋の一味だと聞いているが?」「朝倉さんの事ですが、どうやら彼女は万事屋とは別々に独自のグループを作りこの投票戦争に参加している様です。エヴァンジェリンがそのような事を白夜叉達に言っていました」「ほう、さっそく内部分裂か。連中はそれを聞いてどんな反応だった」「是非に及ばず・・・・・・・私達もろとも駆逐するような事を連中は言っていました」「そうか」先程までエヴァンジェリンの尾行&情報盗聴を行い、今は目の前でかしづいて連中の情報をくまなく伝えた桜咲刹那(13位)に。真撰組副長、土方十四郎(12位)は口にタバコを咥えたままわかったと言う風に頷いた。「でかしたな、それだけ情報を得れば十分だ。連中はお前の存在に気付けなかったのか」「白夜叉は気付いてかもしれません・・・・・・他の三人は気付いて無かったようですが、エヴァンジェリンも・・・・・・」一応相手があの大魔法使いのエヴァンジェリンだったので尾行もそれなりの注意を払ってやっていたのだが、彼女は全く気付かずにノコノコと自分を仲間のアジトへ案内し、しかも貴重な情報をペラペラと喋ってくれていた。そんな彼女を脳裏に浮かべて刹那が呆れていると土方は嘲笑を浮かべて華を鳴らす。「フン、まともに使える奴が一人もいねえとは。万事屋の野郎も随分気の毒だな」「叩き伏せるのは容易だと思われます、こちらは5人であちらは4人。更に私達に匹敵する様な戦力を持つ者はあちらには2人しかおりません・・・・・・まあ私達の中にもまともに戦う事など出来ない人が1人いますけどね・・・・・・」「わ、私の事ですかッ!?」目の前の土方に向かって話している途中でチラッと横目でこちらに目をやって来た刹那に。自分の椅子に座ってずっと大人しくしていた宮崎のどか(14位)が慌てて自分を指差した。「け、けど、戦う事自体変じゃないですかッ! そもそもどうして私達があの人達と戦わなければいけないんですかッ!? 十四郎さんの考えが私わかりませんッ!」「私はわかりますけどね」「せ、刹那さん・・・・・・」席から立ち上がり土方に向かって大声で抗議し始めたのどかに、嫌みったらしい笑みを浮かべて刹那が口を開いた。「もしかしたらのどかさんより私の方が土方さんの考えを熟知してるかも知れませんね、だって本編の中で最も土方さんと一緒にいた人って私なんですから。のどかさんより私の方が土方さんと過ごした時間は多いですから。そもそも一緒に住んでましたし、順位も一つ差ですしね、そういえばのどかさんは・・・・・・ああ、すみません、私の一つ下でしたね、フフフ」「う、うう・・・・・・」なんだか本編の時よりかなりネチネチ文句に磨きがかかっている。何も言えずにがっくり肩を落として落ち込むのどかに、刹那が「勝った」という風に鼻を高くしていると土方は彼女を睨みつけ「おい刹那、それ以上コイツに舐めた事言ったら殺すぞ」「へ? ええッ!?」「お前もこんな奴の言う事を真に受けるな、俺はコイツなんかよりお前の方が大切だ」「十四郎さん・・・・・・」いきなり殺気をぶつけられて驚く刹那をよそに土方はのどかを安心させる為に優しく語りかける。そんな雰囲気を邪魔しようと刹那は両手をアタフタと振りながら近づこうとするが「の、のどかさんより私の方がよっぽど貴方の事を理解・・・・・・あぐッ!」「ヘイヘイヘ~イ、俺達のアイドルのどかちゃんにウザッてえ事を言いやがるのは何処のマヌケのド低能でぃ?」「お、沖田さん・・・・・・!」いきなり自分の頭を強い握力で鷲掴みにされ、痛みで涙目になりながら刹那が後ろを振り向くと、ドSモード全開の一番隊隊長、沖田総悟(7位)がそこにいた。「いいかゴミクズよく覚えとけ、テメェみてぇなカスに等しい存在がのどかちゃんをイジめるなんざ一兆年早ぇんだよ」「あがががががッ! 鷲掴みにしたまま宙ぶらりんしないで下さいッ!」「テメェのあるかないかわかんねえぐれぇちっぽけな脳みそに教えてやる・・・・・・」「もふんッ!」刹那の頭を鷲掴みにしたままブランブランと宙に浮かせた後乱暴に床に投げ捨て。倒れた彼女に向かって沖田は一瞬目を瞑り、すぐにカッと見開く。「この世でのどかちゃんをイジめていい存在は俺だけだッ!」「ふざけんなッ!」沖田の啖呵にすぐさま土方がツッコミを入れた。 「ていうかお前、本編終わってもまだコイツ狙ってるのか・・・・・・その執着心を仕事に生かしてほしいぜ」「何言ってんですかぃ土方さん。これは俺の大切な仕事ですぜ、のどかちゃんをイジメにイジメ抜いて悦に浸る事の何処が仕事じゃないって言い切れるんですかぃ?」「何処も仕事じゃねえだろ完全にお前の趣味だろ、完全にお前のプライベートドSタイムだろ・・・・・・!」「おらおらぁ、この中で一番順位が低いんだから茶でも持ってこい茶でも」「や、止めて下さい~」「ゴラァァァァァァァ!!!」会話の途中なのにのどかに近づき、器用に彼女の髪の毛一本だけをつまんでいびり始めた沖田に土方がタバコを咥えたまま遂にブチ切れた。だが「おい、うるさいぞお前等」「ん? 近藤さん・・・・・・」そんな騒ぎが起こっている教室にガララと扉を開けて入ってくる男が我らが真撰組の頭、近藤勲(6位)だ。「仲間割れなどするな、この人気投票は俺達、真撰組の大活躍集を公式に行う為の大切な戦いなんだぞ。一本の刀となるぐらい結束を固めるんだ」「近藤さん・・・・・・アンタ今まで何処に」「ちょっとトイレで一本グソを出していた、もう一度言うぞお前等、俺等は一本のクソとなるぐらい・・・・・・」「オイィィィィィ!! さっきと全然変わってるぞッ!」キリッとした表情で微笑んでいる近藤に土方は慌てて彼のセリフを止める。のどかがいる前で下ネタなどもっての他だ。しかし彼が近藤に気を取られている隙に沖田はというと「さすが俺等よりトップの上位に君臨する近藤さんだ、かっけぇセリフを一瞬にして下ネタに変化させちまうとは誰も真似出来ねえぜ、のどかちゃんも見習いな」「イヤですッ!」「ほほ~誰に対して反抗してるのかな~」「あう~ッ! 刀でぐりぐりしないで下さい~ッ!」「総悟ォォォォォォォ!!!」顔を赤らめながら拒否したのどかに沖田は目を光らせ刀の鞘を使って彼女の頬をぐりぐりする。のどかの悲鳴を聞き土方はすぐに眼光と腰の刀を光らせ、沖田に向かって飛びかかる。「テメェはここでおっ死ねェェェェェェ!!!」「いやでぃ、アンタが死んでくだせぃ。そうすりゃのどかちゃんは俺のモンだ」「ふざけろこのドSがァァァァァァ!!」「二人共止めてくださ~いッ!」「ちょッ! だからお前等仲間割れしないでッ!」お互い一瞬で刀を抜き、教室で剣撃をやり合う土方と沖田。のどかはあたふたしながら止めようとし近藤も必死に叫ぶが二人はお構いなしに真剣で斬り合いを続ける。「く、なんてこったこんな結束力じゃ奴等の出鼻を挫く事も出来ないッ! なんとかして俺達の人気を奴等より上にして『スッポンポンオフロ真撰組編』をやらなければならんのにッ!」「スピンオフです、全然違います・・・・・・」「俺とお妙さんのラブ話をやる為にもこの戦い負けるわけにはいかんのだッ!」「夕映に言いつけますよ・・・・・・」ドタバタと土方と沖田が騒いでいる中、低俗な野望を暴露する近藤にのどかが冷たくツッコミを入れた。投票戦争、間もなく勃発一方その頃、人気投票で戦争が始まっている事も知らないある家族はというと「ネギ・・・・・・そなたちと食べ過ぎではないか?」「え?まだ腹一分目だけど?」「なんてこったい、しばらく会わない間に息子がトリコになっちまったよ」とある焼き肉店にて。母であるアリカ・スプリングフィールド(9位)が隣で心配そうに見守る中、息子であるネギ・スプリングフィールド(4位)は牛一頭は余裕で平らげるのではないかという勢いで次々と牛肉を焼いては食い焼いては食いを繰り返していた。父親、ナギ・スプリングフィールド(5位)はそれを隣で恨めしそうに眺めている。「どうすんだ姫さん、愛する息子と一緒に美味そうに肉を食えるのは嬉しいがこの量は予想外の出来事だぞ。俺あんま金持ってねえのに・・・・・・」「な! 息子の前で何を話しとるのじゃバカ者・・・・・・!」困り果てた表情で話しかけて来るナギにアリカはビシッと黙らせるが、二人の間にいるネギの耳には普通に聞こえていた。「ああいいよいいよ二人共、僕が払うから」「よかったなぁ姫さん、俺達の息子がこんなにも立派に成長して、なんなら土産代も払ってもらうか?」「父親として恥ずかしくないのか貴様は・・・・・・」「全然」「・・・・・・選ぶ相手を間違えた・・・・・・」10歳にも満たない我が息子に奢らされるというのにナギは全く恥も知らずに肉を食べ始める。アリカは顔を赤面させ、申し訳なさそうにネギに顔を近づけ「ネギ、いつか必ず返すからの・・・・・・」「ハハハ、無理でしょ父さんの稼ぎじゃ」「・・・・・・おいナギ」「アハハ・・・・・・ちょっと泣きそうになった」さすがに笑顔で痛恨の一撃を言われてはさすがにナギも頬を引きつらせ固まった。「パチンコだな・・・・・・うん、パチンコで勝つしかねえわな」「何言ってんですかナギさん、アンタ江戸中のパチンコ店でいつも身ぐるみ剥がされてるじゃないですか」「うわおう新八、お前いつからいたの?」何時の間にか向かいに座って肉焼き係に徹している志村新八(21位)にナギはわざとらしい驚き方をしてみせる。新八は皿にのった肉をしかれた鉄板に焼きながら彼に向かってムスッとした表情で「最初からいましたよ、こんな一生に一度食えるか食えない高そうな焼き肉を僕等がアンタ等だけに食わせるとでも思ったんですか?」「8票しか貰ってないクセに焼き肉か、いい御身分だな」「関係ねえだろチクショウッ! 人の傷口に泥を塗りたくってそんなに楽しいかッ!」物凄く気にしていた事を容赦無しに言って来たナギに新八は突然青筋を立ててキレていると。彼の隣に座っていた同じく万事屋メンバーの一員である少女、神楽(20位)が口に大量の肉を入れて来ながらビシッと箸で前にいるネギに突きつけた。「おいビリビリィッ! その特上牛タンは私のネッ!」「あの、僕の名前いい加減覚えてくれませんか・・・・・・?」「ビリビリをビリビリって呼んで何が悪いアルか? 黒髪ツンツン頭にいつも呼ばれてんだろ?」「いえアイツの話はここではしないで下さい・・・・・・ていうかそのネタどんだけ引っ張る気なんですか?」複雑そうな表情でネギは呟くが神楽は食事に夢中の様で聞いちゃいなかった。すると今度は何時の間にか神楽の隣に座っていた“あの男”が「侍は常に質素な食事を取る、だがここはせっかくネギ殿が奢ってくれる場、遠慮するなど相手に失礼となる。ここはネギ殿に感謝を込めて遠慮せずに頂くとしよう」「あの~僕、桂さんは誘った覚えないんですけど?」「む? そんな小さな事を気にしては立派な侍になれんぞ」「いや侍じゃなくて僕魔法使いですから、一応」自然にそこに座っていた攘夷志士、桂小太郎(11位)にネギは普通にツッコむが桂は黙々と焼けた肉を食べ始める。「アリカ殿、このホルモン中々の味だぞ、是非食べてみぬか?」「箸を近づけるな、顔を近づけるな、息を吸うな、生きるな」「そうか、まだフラグが立たんか」銀時と戦ってた時の様な冷たい眼に戻って桂に酷い言葉を浴びせるアリカだが、桂は全くへこたれた様子も無く首を傾げるだけ。アリカの隣にいるネギは彼にしかめっ面で「一生かけても無駄ですからいい加減にして下さいよ、桂さん」「いやいつか実る筈だ、銀時や坂本にヒロインがいて俺にヒロインがいない筈がない」「本編終わってんですからもう無理ですよ・・・・・・」頑固に言い張る桂にネギは深いため息を突き呆れ果てるとふとある事に気付く。こんな数で焼き肉を食べてはさすがに自分でも払えないのではないか?「マズイな・・・・・・僕や神楽さんは結構食べてるし、おまけにイレギュラーの桂さんまでいるんだから結構な額に・・・・・・」「アハハハハッ! 安心せいッ!」「え?」困った様子のネギに豪快に笑いのけるのは「ここはボンボンのわしが奢っちゃるきんッ! 子供は遠慮せずに食えばええんじゃッ!」「ああ坂本さん・・・・・あなたといい桂さんといい一体何処から湧いて出て来たんですか?」「細かい事は気にすんなッ! アハハハハッ!」「細かくありません、唐突も無しにいきなりキャラが出て来る事は決して細かくないと思いますよ僕は」桂や銀時の友である坂本辰馬(10位)がネギに向かってゲラゲラと笑い飛ばす。それにネギは疑問を抱くが彼のおかげでこの経済危機を脱っせたのでそこはホッと一安心だ。「よかった・・・・・・これでなんとかなる」「ふぅ、さすがに息子の奢りで食べる事など出来んからの、これで安心してわらわも食べれる・・・・・・」「え? 母さん食べてなかったの?」「母としてそんな恥ずかしい真似出来るか」「え、でも父さんは・・・・・・」「うんめぇ~」「ゴラァァァァァ!! その牛タンは私のだって言っただろうがァ!」「知るか全部俺のだッ!」反対隣にいる恥もへったくれもない様子でバクバクと焼き肉にありついている夫の姿に妻は呆れ果てた表情でボリボリと頭を掻き毟った。「あんな奴もう知らん・・・・・・」