これはある男が異世界に初めて行った日から数十年後の話。ここは江戸、何年の時を経ても代わり映えのない都市。未だに宇宙船は飛び交い、天人達もこの場所に居着いている。何も変わらない風景。そして未だ根強く生きている彼らもまた少なからず存在する。侍武士道という己の信念を貫き、魂を込めた一本の刀で弱き者を護る者時代の激流に流れながらも残された彼等は今日も江戸の風を肩で切りながら歩くそして彼等の血を受け継ぐ者達もまた・・・・・・・第?訓 銀色の魂を受け継ぐ者「また君ここに来たんだ・・・・・・」「・・・・・・」時刻はちょうどかぶき町が賑わうぐらいの真夜中。場所はとある部屋の小さな取調室。一人の黒い制服を着た男が呆れた目つきで机に肘をかけ、向こう側に座っている少女を眺める。ここは無く子も黙る武装警察『真撰組』の屯所内。何十年も経った今でも江戸では凶悪事件が後を絶たない、おかげで彼等もこうして市民を護る為に日々鍛錬を怠らず活動している。男は今、急遽上司に呼ばれ、この少女の尋問をしろと押しつけられ仕方なくここにやってきたのだ。「君もさぁ、ここ何回目? 今度は何したの? また喧嘩?」「・・・・・・」「いや黙ってないで何か言ってくんないかな・・・・・・」「・・・・・・」少女はこちらに目を背けて一向に口を開けようとしない。こんな態度を取る彼女に男はハァ~とため息を突いてイスの背にもたれて天井を見上げた。彼の名は山崎退、この真撰組が生まれた時から働いているベテラン隊士だ。数十年前より少し老けたがそれ以外はあまり変わらず、未だに現役バリバリで“地味に”働いている。主な任務は雑用と密偵、監察。そして最近上司に命じられた“ある新人隊士達の教育”。だが、いつもの様に目の前にいる少女がここにやって来ると彼は必ずその上司に呼ばれ相手をしなければならない。昔から変わらず、“イヤな仕事”はすぐに彼に回って来るのだ。「今日は何か言えない事をしちゃったの?」「・・・・・・」持っているボールペンを回しながら山崎は少女に尋ねるもやはり無言。こういう時がたまにある。彼にとってこういう彼女の態度はもう慣れっこだ。山崎は昔から彼女の事をよく知っている。髪型は銀髪のストレートにしているつもりなのだろうが、所々にピンと跳ねているクセっ毛が所々にあり、ボサボサ頭にか見えない少女。目は少し死んだ魚の様な眼をしているが、顔立ちは綺麗に整っているのでじっくり見てみれば可愛いと言えば可愛いし、綺麗と言えば綺麗。だがあの目を見て誰もそんな事を言う筈ない。波柄模様の着流しをいつも着ていてその下には赤い線が襟に入った上着、靴は黒いブーツ。極めつけは腰の帯に差す一本の木刀、柄には『洞爺湖』と彫られている。つまるところ、この銀髪の少女は山崎がよく知っている“ある人物”と瓜二つの格好をしているのだ。「あ~あ、今日はせっかくのオフだったのにさ・・・・・・あ、口笛止めて」銀髪の少女に愚痴の様な事をボソッと呟く山崎。だが彼女は全く口を割ろうとせず、それどころか机に肘かけて口笛まで吹き出す始末。天井を見上げながら「カミさんに帰りが遅れるって連絡しとこうかな?」とか山崎が考えていると。突然、取調室のドアがガタンと音を立てて開いた。「やっぱそいつがここに来てたのか」「ん? 君まだ残ってたの? 副長と一緒にもう帰ったんだと・・・・・・あッ! だから子供はタバコ吸っちゃダメだってッ!」山崎がドアの方に振り向くと、そこには目を覆うぐらい長い前髪から、右目だけを覗かせる様に切ってある髪型をした少女が、真撰組の制服を着て口にタバコを咥えたまま立っていた。彼女がここにいた事に山崎は一瞬驚くが、すぐに彼女が咥えているタバコを見て注意する。だが少女をそれを聞いても山崎に向かってフンと鼻を鳴らして口から煙を吐いた。「俺はガキじゃねえっていつも言ってんだろ」「いやぶっちぎりの未成年だから・・・・・・・それに女の子なのにそんな乱暴な口調を使うのはどうかと思うんだけど、ただでさえ君母親似なんだから・・・・・・」「うるせえな、アンタには関係ねえだろ」「・・・・・・こんな極上の反抗期を育てられる人って本当凄いよな・・・・・・」瞳孔開き気味の目で睨んで来る少女に山崎は頭を押さえる。毎度の事だが彼女には年相応の女の子になって欲しいものだ・・・・・・。現実逃避しながら山崎がボーっとしていると、その少女はツカツカとこちらに歩いて来て銀髪の少女の方に近づいて行く。「山崎さん、コイツの親に連絡は?」「え? それはまだ早過ぎるんじゃ・・・・・」「アンタ“あの人”から何も聞いて無かったのか?」「いや、どうせまたこの子が誰かと喧嘩したんだろうと思って、すぐに電話切ってここに来ちゃったんだよ俺」苦笑している山崎に少女はタバコを咥えながらボリボリと頭を掻いた。「この女がやったのは『家出』だ」「えぇぇぇぇぇぇ!! い、家出ッ!? またやったのッ!?」銀髪少女がやった事を聞いて山崎はすっときょんな声を上げる。「コイツの母親から捜索願いが出されてる。それをあの人が見つけて保護したってわけだ。相変わらず人騒がせな野郎だなお前は・・・・・・・」「・・・・・・」「シカトぶっこいてんじゃねえぞ家出娘、山崎さん、早く連絡してくれ」「う、うん、わかったッ!」机の上に置いてあった灰皿でタバコの火を消しながら少女はすぐに指示。山崎はすぐに取調室から出て行った。残された二人の少女は黙ったままそっぽを向く。だがしばらくして銀髪少女に向かって長い前髪を手でいじくっていた少女は重い口を開いた。「何度目だテメェが家出してウチに来るのは? ウチは託児所じゃねえんだよ。コレ以上面倒かけんな」「・・・・・・フン」「あ?」一応真撰組隊士である自分に対して不機嫌そうに鼻を鳴らす銀髪少女に彼女は目を細めた。「んだよ文句があるなら言ってみろ」苛立っている様に瞳孔を開かせて、彼女は銀髪少女を睨む。するとそんな彼女に銀髪少女はだるそうに顔を上げた。「あなたのお父様もわたくしに思いっきり同じ事言ってましたわよ」「なッ!!」「親子二代に伝承されてるんですかその説教ワードは? こっちはうんざりですわコノヤロー」「う、うるせえッ! 親父が何を言おうがこっちは知った事かッ!」顔を突然恥ずかしそうに赤らめる少女を見て銀髪少女はニヤリと意地の悪い笑みを見せる。「極上の反抗期でも性格は親とそっくりですわね、“愛さん”」「テメェ・・・・・・!」名前を呼ばれた事に反射的に少女は瞳孔を開いて腰に差してあった刀を手に持った。「その名前を言うんじゃねぇ・・・・・・! たたっ斬るぞ・・・・・・!」「あら、自分のお母様にいつも呼ばれてるじゃないですか? 「愛ちゃん、お弁当作ったからお父さんと仲良く一緒に食べてね~」って」銀髪少女がせせら笑いしながら言った一言に。ヤンキーみたいな顔つきをしていた少女の頭の中で何かが勢いよくブチ切れる音がした。「フ~、連絡して来たよ。すぐに迎えに来るらしいから早く支度して・・・・・・って何やってんのォォォォォ!!」先程銀髪少女の親に連絡を取っていた山崎が取調室に戻ってみると。自分の組織で働き始めた新人隊士といつもここに戻って来る迷惑銀髪少女が得物を抜いてつばぜり合いをおっぱ始めていた。方や真剣、方や木刀。互いに歯をむき出していがみ合っている二人の少女に慌てて山崎が近づいて止めに入った。「取調室で何サムライチャンプルーやろうとしてんのッ! 二人共武器しまってッ!」「コイツの母親には「娘さんはピンポンダッシュして逃げる途中で階段から転げ落ちて死んだ」って言えば問題ないッ!」「いや問題しか残ってねえよッ! ていうか問題以前の問題になってるよッ! また新たな問題を創造してどうすんだよッ!」目をギラギラ血走らせながら恐ろしい事を言う少女に山崎はすぐにツッコミを入れる。すると彼女と刃を交えている銀髪少女が口元に笑みを浮かべながら「そんな隠蔽工作して私を斬り殺そうとするなんて、ご両親にはよ~く言っておきますから、愛ちゃん」「殺すッ!! 一欠片も残さずにコイツを千切りにして殺すッ!!」「あ~もうッ! 君も愛ちゃんを刺激しないでよッ!」「アンタも俺の名を言うんじゃねえッ!」ドサクサに自分の名を言う山崎に向かって少女は叫びながら、とりあえず苦々しい表情で刀を鞘におさめる。一応山崎には世話になっているしここで彼を無視して暴れるわけにはいかない。銀髪少女もそんな彼女を見て渋々木刀を腰に差す。「君達って本当に親の遺伝子をがっちり受け継いでるね・・・・・・」山崎に言われた事にムスッとした表情で黙りこむ二人の少女。認めたくない事でもあるのだろうか。「んじゃ、ま、とりあえず君のお母さんが迎えに来るから、大人しく待っててよね」「お母様が・・・・・・?」「当たり前でしょ、君の事話したらすぐに行くって慌ててたよ?」「・・・・・・」母親が来る事を知って銀髪少女の表情に曇らせるも、しばらくして首をコキコキと鳴らしながら取調室のドアに向かって歩いて行く。「お母様はここに来る前にちょっと用があるので行ってきますわ」「え? 何処に?」「“ウンコです”、全く、年頃の女の子に言わせないで下さいな、セクハラですわよ」「いやそこトイレとかお手洗いでいいじゃんッ! わざわざ出すモンの名を言う必要ないからねッ! 年頃の女の子なら言葉の使い方改めてッ!」ツッコんで来る山崎に手を振りながら、銀髪少女はドアを開けて出て行った。彼女が言った後、山崎はジト目で愛という名の少女の方へ振り向く。「二世になっても犬猿の仲は続くか・・・・・・・」「・・・・・・親は関係ねえ」ポケットからタバコを取り出して口に咥えた後、『マヨ形』のライターで少女は火を付けて優雅にタバコを吸い始める。そんな彼女に対して山崎は頭を抱えながらやれやれと首を横に振った。「さすが真撰組鬼の副長、土方十四郎の娘だよ」「だから親父は関係ねえだろ、俺は俺だ」「のどかちゃん、じゃないや“姐さん”にはなるべく心配かけない様にね」「わかってるよ」タバコの煙を上に向かって吐きながら、少女はウンザリした様子で答える。土方愛 それが彼女の本名何年も前から今までずっと現役で真撰組を支えているある男と、ひょんな偶然から彼と出会った一人の異世界出身の少女の間に生まれた大事な一人娘だ。今は父親の元で真撰組の新人隊士としてまだ少女でありながら日夜鍛錬の日々を送っているちなみに彼女の名前を決めたのは当然母親の方。「ていうか山崎さん、いいのかアイツを行かしちまって」「別にトイレ行っただけだよすぐ帰って来るって」「何言ってんだ、そんなモンこっから抜け出す為だけの口実だろ、逃げたに決まってる」「えええええッ!!! ウソでしょッ! もうすぐあの子のお母さん来るんだよッ!?」「だから逃げたんだろうが、アイツは家出してたんだぞ?」冷静に状況を話す愛に山崎は両手を頭に付けて仰天する。あの銀髪少女の性格は彼女は昔からよく知っている。「母親のツラぐらいまともに見れねえのかアイツは・・・・・・」「お~すッ! 山崎さんッ! おッ! お前もまだいたのかッ!」「あ?」銀髪の少女に微かな苛立ちを覚えているその時、ガチャリと取調室のドアが開き豪快な声が飛んで来た。そちらに目を向けてみると案の定、同じ真撰組の制服を着た自分よりもずっと背も高く体格もがっちりした男が笑みを浮かべて立っている。パッと見でゴリラと思わせる様な顔だ。「よう愛ッ! こんな時間になるまで勤務するとはさすが副長の娘だなッ!」「おい、俺は鬼の娘とか副長の娘とか言われるの大嫌いだって昔から何度も言ってんだろうが」「何を言うッ! 俺達がこうして生を受けたのは全て親のおかげッ! その立派な親の血を受け継いで認めれると言う事はとっても名誉なことなんだぞッ!」「相変わらずこんな時間でもうるせえ奴だな・・・・・・」急に熱くなって語り出す男に愛はウンザリした表情で目を背ける。すると男は今度は山崎の方へ「山崎さんも非番であるのに勤務ご苦労様ですッ!」「君もね、それにしても日に日に父親の局長にどんどん似て来たね・・・・・・ホント似過ぎてクローンじゃないかと疑うぐらい・・・・・・」「ダ~ハッハッ!! 親父の様な立派な侍になる為に俺は頑張りますよッ!」「妹は母親そっくりで兄貴は父親そっくりか・・・・・・」豪快に大笑いをする自分よりも背の高くなった男を見て山崎は頬を引きつりながら苦笑する。この男の名は近藤勝(こんどうまさる)見た目と性格で分かる通りあの真撰組局長、近藤勲の長男坊である。愛と“もう一人の少女隊士”とは小さい頃からの幼馴染であり、数少ない愛が自分の名を呼んでいいと認めている人物だ。ちなみに愛より年は一つ上、そしてもう一人の少女とは二つ上だ。愛はそんな彼の方へまた振り向くと今度は自分から話しかける。「ところで近藤さん、今日は“妃”(きさき)の奴が見えなかったんが?」「ああ、「ふてぶてしくタバコ吸ってる未成年が視界に入ったから気分悪くなった」って言って家に帰って行ったな」「あんのサディスティック星のプリンセスは全然やる気がなってねえな・・・・・・一回ヤキ入れとくか?」「よせ、愛。俺とお前、そして妃は偉大なる親父達の後を継がなければいけねえんだ、いつかあの三人の親父を超えれるよう立派な侍になる為に、三人で仲良くしようじゃねえか」「親父を超えれる様になるというのは賛成だがアイツと仲良くするのはごめんだ」力強く訴えて来る勝に愛は嫌そうな顔を浮かべてポケットからタバコを取り出して咥える。「アンタは俺やアイツと仲良くやっていけるが、俺とアイツはお互いに死んで欲しいと思っているからな」「う~ん・・・・・・あ、喧嘩するほど仲がいいって奴かッ!?」「日頃の俺等を見てどう解釈すればそのことわざに結び付くんだ? 犬猿の仲だろ普通」少ない頭で自分の覚えていることわざを言って見る勝に愛がズバッとツッコミを入れていると、山崎が勝の方に歩み寄って来た。「もう君も帰った方がいいよ、家の人達が心配するからさ」「いえッ! こんな時間にこそ江戸に危険が迫っている筈ッ! 今日は徹夜でパトロールに行ってきますッ! 真撰組はいかなる時でも江戸を護る事を最優先にするというのが仕事だと親父に徹底的に教わっているんでッ!」「へ~頼もしいなぁ」力強く叫ぶ若い隊士がここまでガッツを見せて来るとベテランのこっちまで元気が湧いてくる。山崎がそう感じている時、突然、勝の制服のポケットに入ってある携帯の着信音が鳴った。「あ、すみません」携帯が鳴った後に一回山崎に謝った後、勝は携帯を取り出してピッとボタンを押して耳に当てる。そして次の瞬間「ママ~ッ!! どうしたの急にッ!」携帯に耳を押し当てながらさっきまでとは一気に方向転換して満面の笑みを浮かべて甘えた声になる勝。山崎は唖然とした表情を浮かべ、愛は普通にそれをタバコを吸いながら眺める。「ええッ! 晩御飯のが冷えちゃうから早く帰って来てだってッ!? うんわかった俺ママの為に全速力で帰るよッ! じゃあねッ!」電話の相手は彼の母親だろうか?終始甘え声で電話をした後、勝は電話を切ってポケットにしまい、すぐに真顔になって山崎に向かって敬礼する。「お袋が危篤らしいんですぐ帰りますッ!」「さっきまでの一部始終を見せて嘘付くなァァァァァァ!!!」白々し過ぎるウソを突く勝に山崎は額に青筋を立てて叫んだ。近藤勝の異常なマザーコンプレックスを見て、愛はタバコの煙を吐きながらボソッと呟いく。「アレさえなければな・・・・・・・」銀髪の少女は今、真撰組屯所から抜け出してブラブラとかぶき町を歩いていた。家に帰る気など更々ない。彼女は死んだ目で『洞爺湖』と彫られた木刀を腰に差して人波をかき分けて行く。まるでこのかぶき町を颯爽と歩いていた一人の銀髪の男の様に「いっその事“銀千代”を誘って万事屋やってみるのも悪くありませんわね・・・・・・」だるそうにボサボサになっている髪を掻き毟りながら銀髪の少女は、夜にも関わらず光があちらこちらに照らされているおかげで明るい街並みの中を進む。「お母様はいつまでわたくしの事を子供扱いすれば気が済むんですの・・・・・・」ブツブツと文句を言いながら段々不機嫌そうな顔になっていく少女。反抗期まっさかりなのか彼女は母親とは上手くいってないらしい・・・・・・少女が苛立ちを隠せない様子でかぶき町を悠々と歩いていると・・・・・・目の前に道中合羽を着て三度笠を頭にかぶった者がこちらに歩いてくる事に気付いた。廃刀令のご時世に腰の両脇に二本の脇差しを差し、その任侠物のドラマで見た様な格好に少女は一瞬物珍しそうに視線を向けるがすぐにそっぽを向いて黙って横切ろうとする。だが「・・・・・・その着物と木刀は父親の?」「!!」突然相手が口を開いた事にも少女は驚くがそれより驚いたのは自分の服装と木刀の持ち主を知っている事である。その声が自分とさほど年も離れていない様な女性の声だ。すぐに少女はパっと振り返り、いつの間にかこちらに向かって立っている謎の女を睨みつける。「なにもんだテメェ・・・・・・ツラ見せろ」「せっかちな女ね・・・・・・」先程までとは一転して荒々しい口調になった少女に言われて女はひょいと三度笠を取った。そこに現れたのは薄いピンクと銀が混ざった様な髪色をした小柄の少女。目はぱっちりと開いており顔つきも幼いのでパッと見だととても可愛らしいただの女の子だ。「・・・・・・・この辺じゃ見かけねえツラだな」「アタシの名前は佐々木銀鏡(ささきしろみ)」銀鏡と名乗った少女はニッコリと少女に笑いかける。「あなたは坂田銀時と坂田あやかの一人娘だよね? 坂田銀華(さかたぎんか)さん?」「お前・・・・・・!」己の名前を知っている事に少女は否、銀華は目を見開いて驚く。この銀鏡という少女は会った覚えも無いのに自分の事をよく知っている。「ホントに何モンだ・・・・・・」「フフフ~、アタシの正体知りたい? 後悔しない?」「いいから言え、私はキレやすいんだ、特にあの“ダメ親父”の名前が出た後だとな」既に死んだ目ではなく殺気を込めた目に変わっている銀華を前にして、銀鏡は茶化す様に笑みを浮かべたまま自分の頬を人差し指で突いて首を傾げる。「しょうがないな~、ま、アンタが話聞いくれないと元も子もないし」「なんなんだコイツ・・・・・・」よくわからない性格をしている銀鏡に銀華はしかめっ面を浮かべる。一体何を企んでるんだ・・・・・・・?彼女の疑問をよそに銀鏡は話を始めた。「アタシの母親ってさぁ、“佐々木まき絵”っていうんだよ、知ってる? アンタの母親の同級生で、アンタの父親の元教え子」「テメーの両親の知り合いなんか知らねえし興味がねえな、たぶらかしてねえでさっさと話したらどうだ」「別にたぶらかしてるわけじゃないよ~、必要な話だったから話したまでの事、そんじゃあ次はアタシの父親の話を・・・・・・」「おいいい加減にしろよテメェ、オメーの家族なんざどうでもいいんだよこっちは」母親とか父親とか銀華にとってはどうでもいい事だ。そんな彼女睨まれながらも銀鏡はニヤリと笑って真っ向から目を合わせた。「あたしの父親も・・・・・・坂田銀時って言うんだよね」「・・・・・・何言ってんだお前・・・・・・」「母親から聞いてないの? あん時は大変だったらしいよ実際~、なんせ元から妻が三人もいるのに、よりによってアタシの母親に手を出すとか、フフフ」「な・・・・・・!」自分の言っている事にニヤニヤ笑いだす銀鏡とは対照的に、銀華はショックを受けたように唖然とした表情で固まる。銀鏡の正体、それは・・・・・・「要するに私は佐々木まき絵と坂田銀時の隠し子、あれ、どうしたの? 顔が真っ青だけど?」「クソッタレ・・・・・・!」自分の反応見て愉快そうに笑みを浮かべたまま尋ねて来る銀鏡に、我に返った銀華はグッと彼女を睨みつける。すると銀鏡は話を続けた。「アタシって元々“こっち側”の人間じゃないんだよ、今までずっと“あっち側”の人間として生きていたけど、数か月前からここに来て色々と調査をしていたのよ」「・・・・・・調査? 調査ってなんの調査だ・・・・・・?」「私とアンタの父親の居所、ずっと前から行方不明なんでしょ?」「なッ! お前ッ!」銀鏡の目つきが鷹の様に鋭くなる。父親の現況を知っている彼女に銀華は思わず声を大きくしてしまった。そんな彼女に銀鏡は近づいていき、目の前に立つとスッと手を差し伸べた。「アンタも知りたいんでしょ? いなくなった親が何処で何をしているのか? アタシも知りたいのよ、父ちゃんの顔は写真でしか見た事ないから」「・・・・・・」「ねえ銀華」手を差し伸べたまま銀鏡はまたニッコリと笑みを浮かべる。「アタシと一緒に坂田銀時を探さない?」「!!」あやかと銀時の娘として生まれた銀華まき絵と銀時の隠し子として生まれた銀鏡二人の出会いが、再び江戸と麻帆良学園に波乱をまき起こす。新シリーズ【3年A組 銀八先生! 波乱未来編】人気投票編後に連載開始「嘘だけどな~、ハハハハハ」「オイィィィィィィィィ!!!!」ここは麻帆良学園の中にある万事屋、室内でソファに座っていた銀時が普通にぶっちゃけると、向かいに座っていた千雨が指差してすぐに叫んだ。「今まで長々と語ってたのに結局やんねえのッ!?」「は~? やらねえよ、例えテメーのガキでも主人公の座は渡さねえから絶対。キン肉マンとかジョジョ見たいになると思ったか? ねえよ、ここで完結だよ」「コレだけの為にあんな長いウソ予告を・・・・・・」「最近の読者は中々騙されねえからな、これぐらい大がかりじゃねえとすぐにバレちまう・・・・・・あ~あ、やっと終わった」頭を抱えてうなだれる千雨に銀時はふんぞり返って説明すると、彼の隣に座っていたあやかが目をパチクリさせて、千雨の隣で足を組んで座っていたエヴァが彼の方へ振り向いた。「え? 終わるんですかコレ?」「おい、私がロクに出番が無いのにここで終わるのか? いいのかここで? 」「え? 俺は終わるって聞いたんだけど?」「誰からそんな事を?」「ヅラから」「・・・・・・ヅラってあのウザったい長髪の事か?」桂の事を思い出してエヴァが首を傾げると、部屋のドアがバーンと勢いよく開き「たのもーッ!」『ちーす』その桂小太郎と仲間であるエリザベスがテンションを上げて万事屋に入って来た。銀時は二人の方を振り向いて眉間にしわを寄せる。「何でお前等がここ来るんだよ・・・・・・」「まあ待て銀時、このエリザベスを見てどこか変だと思わないか?」「あん?」桂が隣にいるエリザベスに指を指すので、銀時と他の三人もふとエリザベスの方を見る。相も変わらない無表情でいつものボードを持ってつっ立っていた。「・・・・・・いつも通りの変な生き物ですわよ?」「いつも通りのお前の気持ち悪いペットじゃねえか」「いつも通りじゃない、今エリザベスは猛烈に怒りを覚えているのだ。見ろエリザベスが持っているボードを」目を細めるあやかと銀時に言われると桂はすぐにエリザベスが持っているボードを見ろと指示。彼が持っているボードには『メラメラ』と四文字書いてあった。「な?」「何が「な?」だよッ! しかもそのどや顔すげぇ腹立つんだけどッ!?」どや?って顔で微笑を浮かべる桂に千雨がツッコんだ瞬間、エリザベスが急に『ぬおぉぉぉぉぉぉ!!』と書かれたボードを振り上げて桂の隣で暴れ回る。『うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!』「ハッ! どうしたエリザベスッ! 進化かッ!? 進化するのかッ!?」「おい勘弁しろよッ! この部屋狭いんだから暴れんなッ!」慌てて桂が止めようとするも、あっちこっちへボードを叩きつけながら暴れ回るエリザベスは彼の制止を振り払う。だが銀時が自室を滅茶苦茶にしている彼に怒鳴り声を空けた途端。エリザベスは急に静かになり、そこにいる者達に見える様ヒョイとボードを掲げた。『『3年A組 銀八先生!』のスピンオフ作品が制作決定』「「「「・・・・・・・え?」」」」「ヘ~イッ!」『ヘ~イッ!』ボードに書いてあった言葉に銀時達万事屋一行は物事の事態を飲み込むのに時間がかかった。その間に桂とエリザベスは元気にハイタッチ。そして桂はカメラ目線でビシッと指をさして「という事でまた会おう」『これからもよろしく』「「「「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!!!!」」」」万事屋メンバーの雄叫びが、部屋の外まで大きく木霊するのであった。最初で最後のあとがきこんにちは、『3年A組 銀八先生!』を書いていた者です。連載期間は一年と四カ月。最初は叩かれまくって辛かった時もありましたが、ようやく最後まで山を登れました。ここまで読んでくださった読者の皆さま、誠にありがとうございます。最後の最後に嘘予告とかやってすみません、もちろん未来編が続きなんてのはありませんのでご安心をw色々伏線っぽいものが残っている様ですがここで銀八先生は一旦終了とさせていただきます。ホントは書きたい話が一杯あるんです、読者さんからも要望があったのですが、結局出来なくて申し訳ございません。色々考えていますが、とりあえず人気投票編を書いた後、少し休んでから決めようと思います・・・・・・・執筆の間ロクに寝れなかったのでwそれではまた会える事を祈りましょう。最後にもう一度、本当に読んでくれてありがとうございましたカイバーマンP・S人気投票は8月1日まで投票可能とさせていただきます。それから人気投票の結果で話を書きますので※投票は既に終了しました