ここはかつて江戸と呼ばれ多くの人々で活気にあふれていた大都市であった。しかし今は敷地全てが砂漠に覆われ、とても人が住める環境ではない、一日に何度も起こる砂嵐、砂漠の奥底に潜むは人を食らう謎の生命体。一滴の水分さえ乾かそうとするかの如くさんさんと照らし続ける太陽。とある出来事でこの星はもはや人の住める星ではなくなってしまったのだ。今ここにいる者は江戸を守ろうとして最後まで戦ったほんの一握りの集団のみ。真撰組、かつては人々にそう呼ばれていた幕府を護る武装警察である。砂漠で荒れ果てたこの地で戦いに負けたことを認められない愚かな男達はこの身果てるまで抗うことを誓ったのであった。だがそれもいよいよ限界へと迫って来た。「わりぃな近藤さん、こんな粗末は墓でよ・・・・・・もうこの辺には墓標になるもんなんて何処にもねえんだ」砂漠のド真ん中にポツンと置いてある拠点場こそ真撰組最後の砦。一帯にはズラリと散っていった隊士達の墓と思われるボロっちい板が刺さってある。その中の一つの前で小汚いローブで身を包み静かに両手を合わせて祈る者は真撰組の頭脳と呼ばれていた、土方十四郎だ。そして彼の前にある墓は彼が最期までつき従った大将、近藤勲の墓。墓標の代わりにそこには一本の腐ったバナナが突き刺さっていた。「俺達の明かりを何時も照らしてくれていたアンタが死んじまった今、俺達はもう何処に進めばいいのかわかんねえ・・・・・・どうやらアンタが最期まで護りたかったモンを俺は護れそうにない・・・・・・」「へ~随分とふぬけた事言うようになったじゃないですか土方さん」「何?」急に後ろから自分を嘲笑する声が聞こえたので土方はパッと振り返った。そこに立っていたのは真撰組一番隊隊長、沖田総悟。土方と同じく砂嵐対策として全身を覆う事が出来るローブを制服の上から着用している。彼も土方同様数少ない生存者の一人だ。「まさかかつて鬼の副長と呼ばれていたアンタが随分と弱気になっちゃいましたね、これじゃああの世へ先に逝っちまった近藤さんに顔向け出来ませんぜ?」「・・・・・・・そうかもしれねえな」「あり? もう噛みつく気も起きなくなっちまいやしたかい? タバコ吸えなくなっちまったからニコチン切れでブチキレると思ったのに」「タバコなんて関係ねえよ、俺はもう疲れた。さっさと近藤さんの所に逝きてえとさえ思ってる・・・・・・」「あらら、これじゃあもう副長の資格なんてありませんね土方さん」「欲しけりゃお前にやる、俺にはもう必要ねえ」「へ、近藤さんが死んじまった今、もう副長の座なんて欲しくもなんともないんですよこっちは。ん?」現実に絶望してしまった土方はもはや死人同然。沖田はそんな彼にも自分らしい皮肉言葉で話しかけていると、突然彼等の足元でゴゴゴゴゴゴと地鳴りが生じる。「こいつは・・・・・・・どうやら『奴』が来たようですぜ土方さん。よかったじゃないですかぃこれでもう俺等はあの世へ直行だ」「チッ・・・・・・・」「奴だァァァァァァァ!!! 奴が来たぞォォォォォォォ!!」「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」沖田と土方が感じた様に他に生き残った数人の隊士達も次第に大きくなる地鳴りに気付き、小さなベースキャンプから全員が出て来る。隊士達が手に持つ刀はもはや刃こぼれで原形をとどめておらずとても使える状態ではない。「近藤さん、どうやら俺達は江戸を救うなんて真似は出来ないらしい・・・・・・俺達はただの脇役、ヒーローなんかじゃねえんだ」「土方さんッ! 来ますぜッ!」隊士達が陣形を作っている間土方があの世にいる近藤に向かって呟いていると、沖田が目の前を指差して叫ぶ。どんどん大きくなって行く地鳴りと共に、目の前から激しく砂をまき散らせ。『奴』が現れたのだ。「ウオォォォォォォォ!! オ前ノ母チャン××ダァァァァァァァ!!!」「・・・・・・随分と立派になりましたね新八君も」「自我を失いもはや俺達の事さえ忘れてやがる・・・・・・」数十メートルはあるであろう身長を誇る巨大な志村新八が上半身だけ出して砂漠の上から現れた白目をむいた状態で天に向かって咆哮を上げた後、すぐにこちらを見下ろして両手を振り上げる「チョメチョメェェェェェェェ!!!!」「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」巨大化した新八が両手を振り下ろすとその場一帯に大量の砂埃が。隊士の一人がその砂埃に飲まれ消えてしまった。土方は咄嗟に残った隊士達に伝令を伝える「全員後方に下がれッ! 今の俺たちじゃコイツに勝てないッ!」「うわ~もう俺達おしまいだ~ッ! 俺達は全員あのメガネに殺されるんだ~ッ!」「切腹しようにもこの刀じゃ・・・・・・クソ~ッ! せめて侍として死にたかった~ッ!」「ダメですぜ土方さん、もう隊士の奴等はみんな魂が死んでるんでさぁ」「く・・・・・・もうこれで終わりなのか」目の前で大口を上げて雄叫びを上げている巨大新八を前にして隊士達はもうこの現状をどうする事も出来ないのに気付いたのだ。全員その場に崩れ落ちて泣き叫び、もはや生きる気力さえ失っている。だが土方も沖田もわかっているのだ。もう俺達に光は無いと・・・・・・・「ガァァァァァァァ!! お通チャァァァァァァン!!!」「テメェと一緒に死ぬ事になるとはな・・・・・・・最悪だ・・・・・・・」「俺だってアンタと一緒に死ぬなんてゴメンでしたぜ」右拳を振り上げこちらに鉄槌を振り下ろそうとする新八に、もはや戦機も失せた土方は沖田と一緒にフッと笑った。これで死んでいった隊士達に会いに行ける。「チョメチョメェェェェェェェ!!!」新八の鉄槌が泣き叫ぶ隊士達を無視してこちらに突っ込んで来た、土方と沖田は最後の抵抗をせんと同時に刀を抜く。だがその時であった。二人の前に突如ある人物が新八の拳の前に立ちはだかったのである。「は・・・・・・・!」「副長、沖田隊長、お久しぶりです」現れた人物に土方が驚いた瞬間、その男は突っ込んで来た拳をある物を使って受け止める。それは彼が常に持っていたミントン・・・・・・・「俺の“相棒”はありとあらゆる異能の力を打ち消す能力。つまり新八君、君のやわな拳など俺から見れば赤子同然さ」「ウオォォォォォォォ!!!」「お前は・・・・・・山崎ッ!」「こいつは驚いた、てっきり数年前から姿を見せねえから逃げ出しちまったのかどっかで野垂れ死にしたと思ってたぜぃ」目の前に立ち新八の拳をミントンだけで止めているのはなんとあの真撰組の密偵、山崎退。土方と沖田はまるで幽霊を見ているかのように彼をジロジロと眺めていると、山崎は余裕気に新八の拳を止めながら彼等の方に振り返る。「心配かけてすみませんでした、単刀直入にいますが実は俺、ある異世界へ飛ばされたんです」「異世界だ? 異世界ってまさか・・・・・・」「いえ、昔俺達が行っていたあの世界じゃないんです、別の文明を持った世界がもう一つあったんですよ副長」「なん・・・・・・だと?」山崎の話を聞いて土方は唖然とする、まさかここと自分の知っている異世界ではなくもう一つ異世界が存在していたとは・・・・・・・。山崎は更に話を続ける「俺はそこで数年間あらゆる経験と力を身につけました、そして救いを求める者の為に、俺はこの世界へ戻って来たんです」「何故こんな地獄へわざわざ戻ってくる必要があったんだ・・・・・・もうここは江戸なんかじゃねえ、ただの地獄なんだ、俺達はただ死んでいくしか道はもうねえんだ」「バッキャローッ!」「!!」突然大声でこちらに怒鳴り声を上げた山崎に弱気になっていた土方は目を見開く。そして気付いた、山崎はもう数年前より別人の様なオーラを放っている事に「こんな展開を、何のためにここまで歯を食いしばってきたんだッ!? アンタ達のその手でたった一つの江戸を救って見せるって誓ったじゃねえのかよッ!? アンタ達だって主人公の方がいいだろッ!? 脇役なんかで満足してんじゃねえ、命を懸けてたった一つの街を救いたいんじゃないのかよッ!? だったら、それは全然終わってねえ、始まってすらいねぇ・・・・・・ちょっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよッ! 手を伸ばせば届くんだッ! いい加減に始めようぜ真撰組ッ!」「山崎・・・・・・・」「土方さん、どうやら俺達は山崎のおかげで忘れていたモンを思い出しちまったようですぜ」「・・・・・・そうだな、まるで目が醒めた様な気分だ」山崎のセリフに感化したのは沖田はフッと笑って土方の肩に手を置く。土方もそれに笑い返し、抜いた刀を目の前にいる巨大新八に突き出した。「テメェ等何腑抜けてやがるッ! 山崎の言う通りだッ! 例え手に持つ刀が腐り果てようとも、俺達はまだ腐っちゃいけねえッ! 俺達は真撰組最期の剣だッ! こんな所でくたばちまったら死んでいった仲間に顔向けできねえぞッ!」「副長ぉ・・・・・・・」「そうだ・・・・・・真撰組の俺達がこんな不人気メガネに・・・・・・!」「負けちゃいけねえんだッ!」土方の熱い一言に隊士達はすぐにそこから起き上がる。彼等の目はもう死んでいない。誠の侍の目だ。山崎はそれを見てフッと笑った後、さっきから執拗に拳を振ってくる巨大新八の方に顔を戻す。「しばらく見ない内に変わってしまった様だね新八君、これではもう君を救う事は出来ない、だから・・・・・・」「ヌワァァァァァァ!!!」思いっきり山崎がミントンを払った瞬間、新八は強風でバランスを崩し後ろにのけ反る。山崎はその隙に両手を合わせ、『気』を溜める。「や~ま~ざ~き~」「総悟ッ! 山崎の周りに巨大な衝撃波が出てるぞッ!」「どうやら山崎は新八君をひと思いに殺る気ですぜこりゃあ」“あのポーズ”で何かを放とうとする山崎に土方と沖田が戦慄を覚えていると。山崎は目をカッと開けた「波ァァァァァァァ!!!」「ウワァァァァァァ!!」山崎の両手を合わせた場所から出て来た青色の破壊光線は巨大新八を砂漠から出して、そのまま新八の腹に入りながら彼と共に遥か遠くに飛んで行ってしまった。新八は瞬く間にキュピーンと小さな星になる。「さよなら、俺と同じ地味キャラだった新八君、君の事は忘れないよ・・・・・・」「礼を言うぞ山崎、お前がいなかったら俺達はきっとあいつに殺されていた」「やるじゃねえか山崎、お前こそ真撰組のエースオブエースかもしれねえな」「いえ、俺は俺が出来る事をやったまでですよ」星になった新八に思いを馳せていると土方と沖田が笑みを浮かべて称賛の声を上げてくれたが、山崎はまだ不安そうな表情を浮かべている。「それに敵はまだまだいるんですよね?」「そうだ、全ての黒幕である悪の大魔王、万事屋の銀髪天然パーマメントを倒さねえと俺達の江戸は救えねえ」「旦那だけじゃねえですぜ、旦那の下には悪魔四天王と呼ばれる最強の四人がいるって話でさぁ、あらゆる空気をぶち壊す四天王のトップ『女帝千鶴』、千のホビーアイテムを巧みに操る鬼神『サウザンドホビーキング新田』、旦那に何よりも服従するメス豚『ドMスナイパー龍宮』、そして何故か強引に旦那に四天王にされたザコ『アホのまき絵』」江戸を壊滅させた真の黒幕、坂田銀時、そして彼の配下に置かれた悪魔四天王。彼等を倒さなければ地球は死の星となってしまう。かつては色々な事で仲良くしたり喧嘩していたりしていた男に山崎はいたたまれない気持ちで一杯だった。「万事屋の旦那に悪魔四天王か・・・・・・・俺達はまだまだ戦わなきゃいけない様ですね」「ああ、だがお前がいてくれれば俺達はもう何も恐かねえ、例え相手があの野郎でも」「行こうぜ山崎、江戸を救う為に俺達も協力させてもらうぜぃ」「副長に沖田隊長・・・・・・ありがとうございますッ!」すっかり生きる希望を失っていた土方と沖田にとって今の山崎は太陽の様に美しく輝いて見えた。他の隊士達もまた山崎に雄叫びを上げる。「ザキさんバンザ~イッ!!!」「アンタは真撰組の星だぁぁぁぁぁぁ!!!」「YAッ! MAッ!! ZAッ!!! KIッ!!!!」「ヤマザキ一番ッ!」「局長はお前だ山崎ィィィィィィィ!!!」次々と山崎に向かって盛大な歓声を上げる隊士達(ついでに近藤が墓場から涙を流しながら全裸で復活した)。山崎は彼等の思いを背に受けキッと空を見上げる。「待っていろ旦那、真撰組も江戸も、この星も全部俺が護ってやる・・・・・・!」今ここに、地球に残されし全人類の救世主が戦いの舞台に舞い降りたのだ。新作品「とある山崎の世界再生」近日、連載開始「むにゃむにゃ・・・・・・俺が真撰組の星だ~、へっへっへ・・・・・・」「オイ、ナンカアホ面デニヤニヤ笑イナガラ寝言イッテルゾコイツ、キモチワリー」「姉さん、寝ている人は大体みんなそうなるんです、マスターや銀時様も時々そういう状態になります」場所変わってここは“現実世界”。近衛家の屋敷の中にある一つの個室。山崎は今、布団の中で寝言を言いながら幸せそうによだれを垂らして寝ている。彼の枕元にはエヴァ従者であるちっちゃな性悪人形チャチャゼロが。そして布団の横で寝ている山崎を起こさない為に微動だにせずに正座している絡操茶々丸がいる。時刻は夜、そして今まさに山崎以外の真撰組は屋敷の外で江戸へ帰る準備をしている。本来なら密偵としてこの世界に来た山崎もようやく江戸に帰れるチャンスなのだが・・・・・・「オイ、コイツ起コサナクテイイノカ?」「ダメです、人間である山崎さんには今回の事件が原因でどっと疲れが溜まっている筈。ここは朝までグッスリと寝かしてあげるべきです」「ソウカ~、ジャア起コサナクテイイカ、外ガナンカ慌タダシイケドヨ」眠る山崎の寝顔をのぞき込みながら茶々丸は丁寧にチャチャゼロに説明してあげる。彼も色々あったのだ、今はとにかく寝かせてあげよう。それが茶々丸なりの彼に対する思いやりであった。そして今、ここで一つの結論が打ち出される。山崎、異世界残留決定「俺に続け野郎共~・・・・・・・へへへ・・・・・・・」第七十八訓 さよなら銀八先生「テメェ等早く入りやがれ~、もう出発すっぞ~」とっつぁんは戦艦の中へ入りながら帰還メンバーに指示を出す。山崎をすっかり忘れている真撰組はというと、巨大異世界転移装置のジャスタウェイD4Cに次々と乗って既に帰る為に出発開始の準備をしていた。次々と戦艦の中へと入っていく真撰組隊士達。土方も戦艦に乗り込もうとするがその前に最後にのどかの方へ振り返る。「夏休みになったら今度はお前が江戸に遊びに来い。そん時は俺が色々と案内してやる」「ありがとうございます、あの・・・・・・十四郎さんもまた遊びに来て下さいね・・・・・・?」「ああ、達者でな。あと刹那、片目になっちまったのは残念だったがお前はまだ戦える、気を落とさずまっすぐに進め」「私は別に落ち込みませんから大丈夫です・・・・・・・・それより土方さんッ! 私の事忘れないで下さいねッ! のどかさんの事ばっかり考えてッ!」「お前みたいなキャラの濃い奴忘れられるわけねえだろうが」のどかの隣にいた刹那とも言葉を交えると土方は戦艦の中へと入っていった。それに入れ換わるように近藤がにゅっと戦艦の入り口から顔だけ出す。「じゃ、じゃあね夕映ちゃんッ! ちゃんと一日三食食べて風邪引かない様にするんだぞッ!」「バイバイで~す」必死なツラをして叫んで来た近藤に夕映は無表情で手を振って送ってやると、近藤の背後に沖田が迫る。「近藤さん、こいつの問題は後でゆっくりと屯所で聞かせてもらいやすからね」「あ、ああ・・・・・・ぬおわぁッ!」明らかに不機嫌そうな様子で沖田が言葉を放った直後、近藤は瞬く間に戦艦の奥へ引きずり込まれていった。恐らく彼を夕映に会いに行かせない様に引っ張っていた隊士達の仕業であろう。最後に沖田は戦艦の入り口から顔を出して仏頂面で立っている夕映を鋭く睨みつけながら「テメェは俺が直々に殺してやっから覚悟しとけ・・・・・・」ドスの効いた声でそう言うと沖田はさっと戦艦の奥へ行ってしまった。「夕映、アンタどうするのよ・・・・・・なんか知らないけどあの人凄いアンタに殺気飛ばしてたわよ?」「障害は乗り越えるのみです」「乗り越えた先にあのゴリラ・・・・・・・ハァ~アンタ本当にバカね、さすがバカブラックよ」あの沖田にターゲットにされてもめげない様子の夕映に隣にいたハルナは呆れながらため息を突く。どうやら彼女は自ら茨の道に頭から突っ込むようだ・・・・・・ハルナがそんな事考えている頃、真撰組全員(山崎除く)が収入された戦艦に、今度は異世界漂流者の一人であった坂本と、その坂本を迎えに来た陸奥が一緒に中へと入っていった。「アハハハハッ! そんじゃあのネカネさんッ! わしゃあまた会いに来るけッ! そん時はまたよろしくのッ!」「坂本さんッ! 今度は空から墜落してやってくるとか止めなさいよッ!」「善処するけ~ッ! じゃあの~ッ! もふッ!」「ネギッ!」互いに笑みを浮かべながら最期の挨拶を交える坂本とネカネを見て、ネギはその辺で拾った石を思いっきり坂本にぶつける。慌ててネカネが叫ぶもネギは笑顔で坂本に「さっさと消えて下さい黒モジャ」「ネギッ! 違うのよ本当にッ! あの人は皆さんと同じ立派な侍なのよッ!」「あ、別に侍だろうがバカだろうが黒モジャだろうが関係ないよ、ただネカネお姉ちゃんにやたらとイチャつくから殺してやろうと思ってるだけ」「ネギィィィィィィ!! あなたどうしてそんなに変わっちゃったのッ!? お姉ちゃんすっごい恐いわッ! あなたのその眩しい笑顔が更に恐いわッ!」必死に坂本を庇おうとするネカネの言葉も聞かずにネギは爽やか笑顔で坂本をぶっ殺す発言。ネカネは彼の両肩を持って激しく揺さぶり純粋で可愛かったあの時の少年になってくれるよう懇願する。そんな事をしている彼女を、陸奥は気絶している坂本を引きずりながら頬をボリボリと掻いた「お互い苦労する身じゃの・・・・・・幸運を祈る」坂本を引きずりながら陸奥は戦艦の中へと入っていった。そして次はネギの両親であるナギとアリカ「しばしの別れじゃネギ、たまにそっちに顔出しに行くからの、元気でな」「母さんも元気で、また春雨に入るとかバカな真似は止めてね?」「う、うむ・・・・・・」軽い毒を混ぜた別れの言葉にアリカは顔をこわばらせながらも縦に頷く。するとアリカの隣にいたナギは自分を指差してネギに向かって「おい、愛する息子よ、俺にはなんもなしか?」「え? 僕が父さんになんか言う事なんてあったっけ?」「・・・・・・泣いていいか?」「え~と、母さんを生活苦で困らせるな、ぐらいかな? 父さんに言う事は」「自身は無いけど頑張りますッ!」「なんでネギに対して敬語つかっとるんじゃお主は・・・・・・」笑いかけて来るネギにナギは力強く叫ぶのにアリカは冷ややかにツッコむと、ナギは突然自分が手に持っている杖をネギの方に見せる。「本当にコレ俺が持って行っていいのか? この杖はお前の為にわざわざあのハゲに託して・・・・・・」「大丈夫だよ、僕はその杖に十分力を貰ったし、それに今後は杖無しでの戦い方を学びたいんだ」「そうかぁ・・・・・・息子に俺の自慢の杖を拒絶された感じでなんかヘコむなぁ・・・・・・」自分の杖を見つめながらナギはしょぼんとしていると、アリカはネギに近づいて強く抱きしめる。「わらわ達は家族じゃ、どんなに遠くへ離れていてもずっと一緒。ネギ、強く生きるんじゃぞ・・・・・・・」「うん」アリカの胸に顔をうずめながらネギが答えると、アリカは恐る恐る口を開いた「・・・・・・だからお主を愛する母の望みを聞いてくれるかの・・・・・・・? 出来れば神威の事は忘れて欲しいじゃが・・・・・・」「ハハハハ、無理」「うう・・・・・・」彼そっくりな笑顔で即答するネギにアリカは苦い表情を浮かべた。やはりネギと神威の関係に口出しするのは家族である自分達でも無理な様だ。「わらわがしっかりしてればこんな事には・・・・・・・阿伏兎ッ! コレ以上ネギがあの男みたいにならない様にキッチリ見張っとくんじゃぞッ!」「へいへい、なんで春雨辞めたお前にそんな指図されなきゃいけねえんだか・・・・・・・」「何か言ったかッ!」「言ってませんよ元春雨幹部のアリカ姫」ネギの後ろに立っていた彼の付き人的な存在である阿伏兎にアリカは声を上げて命令する。小指で耳をほじりながら阿伏兎はめんどくさそうに返事をする所からして不満げな様子だ。アリカはそれに少々気に障ったが、こちらに近づいて来た一人の男のせいでそっちに注意を向ける事になる。「アリカ殿、俺の愛はいつまでもお主に・・・・・・・ラブ・イズ・フォ~エバ~」「人が話している時にまた出てきおって・・・・・・あ~寄るな気色悪い、この男を見るなネギ、目に毒じゃ」「母さん相手に何してるんですか桂さん・・・・・・・」居残り組である桂、彼が自分の母親に向かって最後のアタックを仕掛けているのを見てネギはアリカの胸の中でドン引きした表情を浮かべるが、桂は彼を見下ろして「少年よ、これからは俺の事をお義父さんと呼ぶがいい」「マジ死んでください」「ハッハッハ、親子そろってツンデレか」「オメーは一度ウィキペディアでツンデレが何なのか調べてこいッ!」「ぐはッ!」冷たくネギにあしらわれても全くへこむ様子も見せずに笑い声を上げる桂に顔面にナギの飛び蹴りが入る。桂はズザーッと地面を滑りながら倒れた。「俺の前でよく出来るなそんな事ッ! なんなんだよこの長髪はコンチクショウッ! もうさっさと帰ろうぜッ!」「そうじゃな・・・・・・・ネギ、また今度会いに行くからな」「うん、二人共あっちでの生活頑張ってね」倒れている桂に向かって悪態を突いた後、ナギはアリカの手を取って戦艦へと向かう。アリカがこちらに手を振りながら別れの言葉を言うとネギも手を振って二人を見送る。二人は真撰組と坂本達のいる戦艦の中へ入っていった。程なくして今度は初代万事屋の新八と神楽が現れる。二代目万事屋のあやかと千雨、エヴァ、和美も見送りにやってきた「オラオラどけ小便臭いガキ共ッ! ヒロインのお通りだゴラァッ!」「神楽ちゃん、もうお別れなんだから好感度下げる発言は止めようよ・・・・・・」日傘を肩に掛けながらズンズンと歩いて行く神楽を新八が後ろから疎めていると、見送りに来たあやかがジト目でフンと鼻を鳴らす。「チャイナさんはいつヒロインになったんですか?」「ああん? 自分がヒロインだと思ってんのか金髪デカ乳がぁ?」更に喧嘩腰になって顔を近づけて来る神楽にあやかはやれやれと頭を横に振る。「あなたっていつも私だけに噛みつきますわね・・・・・・・千雨さんとエヴァさんはどうなんですか?」「こんなん敵じゃないネ、特に金髪ミニ乳」両肩をすくめてせせら笑いを浮かべた神楽に、エヴァは顔をムッとさせる。「おい貴様、長谷川千雨は別に金髪でもないし貧乳でもないぞ」「いやお前だよ、金髪ミニ乳ってどう考えてもお前しかいないだろ」「何ィィィィィィ!! おい小娘ッ! この私をそんなあだ名で呼ぶとは死ぬ覚悟は出来ているのかッ!?」サラッとツッコミを入れて来た千雨の話を聞いてエヴァはやっと気付いて激怒。だが神楽はそんな彼女に見下して目を向ける。「お前のその粗末なヒロインステータスじゃこの私の足元にも及ばないネ」「ふざけるなッ! 私の方が遥かに貴様より上だッ! 雪広あやかと長谷川千雨さえ私には遠く及ばないのだぞッ!」「いや私はエヴァちゃんより千雨ちゃんの方がヒロインだと思う絶対ッ!」「お前の意見は聞いとらんわ朝倉和美ッ!」二人の会話に全く関係のない和美がしゃあしゃあと出て来た事にエヴァが即座に彼女に向かって叫んでいると、ネギはふとある男が何処にもいない事に気が付いた。木乃香から聞いた所によると彼も江戸に帰るらしいのだが・・・・・・・「神楽さん、銀さんは何処行ったんですか? もしかしてもうあの中に?」「銀ちゃんはちょっと前にウンコ行って来るとかいってどっか行っちゃったアル」「ハァ~こんな時にもあの人は・・・・・・」相変わらずのマイペース振りにネギが呆れてため息を突いていると、タイミング良く銀時がいつもの死んだ魚の様な目でコツコツと歩いて来た。「あ~すっきりした、帰る前にここで食ったモン全部出しておかないとな」「いやそういう決まりなんてねえから・・・・・・・」やって来た早々けだるそうにそう言う銀時に千雨はブスっとした表情でツッコむ。もうすっかりこの掛け合いには慣れた。「・・・・・・やっぱ帰んのかお前?」「あっちでかなり家賃滞納してるからヤベェんだよ、ババァに何言われるかわかったもんじゃねえし」「・・・・・・」「落ち着いたらすぐ戻ってくるからよ」「・・・・・・きっとだからな・・・・・・」帰ると聞いてしゅんとする千雨に銀時が髪を掻き毟りながらポツリと呟くと、彼女はそれにわかったように頷く。すると今度は銀時にエヴァが飛びかかる。「銀時ッ! 私も連れてけッ!」「うおッ!」 「エヴァさんッ! なんて図々しいッ! そしてはしたないですわッ!」慣れた手つきで銀時の腰に両手でしがみついて抱きついてくるエヴァ。そんな彼女にあやかが非難の声を上げるがエヴァは無視して銀時の顔へ見上げる。「このチャンスを逃すかッ! 連れてけッ!」「出来るわけねえだろッ! お前も一応学生なんだからッ!」「知るかッ! 私が何年あそこに留年していると思っているのだッ! 雪広あやかや長谷川千雨を置いて私達の愛の巣で楽しもうではないかッ!」「あの~すみません、その愛の巣には僕や神楽ちゃんもいるんですけど?」銀時にしがみついて好き勝手述べるエヴァに新八が遠慮がちに会話に入ると、彼女は表情をキッとさせて「いらんわ貴様らなど帰れッ! ていうかお前誰だッ!」「いや新八ですけど・・・・・・アンタ達よりも銀さんと古い仲の志村新八ですけど・・・・・・」「知ってるか雪広あやか?」「チャイナさんの事は知ってましたけどこの人とは私も初めてお会いしましたわ、初めまして新二さん」「ちょっとォォォォォ!! おたくら一度会ってますからねッ!? なんで神楽ちゃん覚えてて僕の事忘れてるんですかッ!? つうか僕、新八だからッ!」エヴァどころかあやかにまで忘れられている事に新八は額に青筋を浮かべてツッコミを入れていると「あ、もう銀ちゃんも帰るん?」「木乃香から聞いたわよ天パ、アンタ私達ほったらかしにて帰るんでしょ? どんだけ自分勝手なのよったく・・・・・・」去りゆく銀時に最後に挨拶しようと、ゾロゾロと生徒達がやって来た。木乃香にアスナ、それに楓とクーフェイも「う~む、別れる前に銀時殿と一戦行いたかったでござる」「銀ちゃん帰って来たらまた勝負するアルッ!」「やるわけえねえだろ戦闘バカコンビ、まき絵とやってろまき絵と」しがみついてくるエヴァを引き離しながら銀時は好戦的な二人を乱暴に突き返している。そんな光景を眺めて新八は「へぇ」と感心した声を上げる。「やっぱ銀さんはなんだかんだで何処行っても親しまれてるんだなぁ」「う~ん、でもまだ銀さんの事を苦手とする生徒もいるんだよねぇ・・・・・・」「うわぁッ! あ、朝倉さんッ!」いきなり額に眉を寄せて悩み顔の和美が隣にやって来た事に新八はすっときょんな声を上げる。だが和美は気にせずに新八の方へ笑いかけた。「私達の代わりに銀さんよろしく」「りょ、了解でありますッ!」顔を赤らめながら敬礼する新八に和美は満足げに笑っている頃、神楽はというと・・・・・・。自分と非常にキャラが被っているクーフェイに喧嘩を売っていた「おい待てオラァッ!? お前ヒロインであるこの私とキャラ被ってるとかいい度胸してるアルなぁッ!?」「むむッ!? 銀ちゃんの仲間アルかッ!? 勝負するアルかッ!?」「くおらぁぁぁぁぁ!! 銀ちゃんを『銀ちゃん』と呼ぶのは私だけネッ! あと語尾にアル付けるのも私だけアルッ! 今すぐキャラ変えろコラァッ!」「そんなの私の勝手アルッ!」「私の2Pキャラみたいな色しやがってッ! 銀ちゃんこいつとっちめていいアルかッ!?」「銀ちゃんこの子が私にキャラ変えろとか命令してくるアルッ!」「あ~もうアルアルうるさい、黙れありきたりな語尾を使うアルアルチャイナコンビ」ギャーギャーこちらに向かって喚きだす神楽とクーフェイに銀時は素っ気なく手でシッシッと払う。「やっぱり二人合わせるとうるせぇなコイツ等・・・・・・神楽、それと新八。お前等先にジャスタウェイの中に入ってろ、ここにいられるとお前等誰かに喧嘩売りそうで恐い」「私はもう喧嘩売ってるアルッ! 金髪デカ乳とこのキャラ被りは私が絶対倒すネッ! あとビリビリッ!!」「そうか、じゃあ尚更早く行ってこい」偉そうにあやかとクーフェイ、そしてネギをターゲットに絞る神楽に銀時は戦艦の方へ指さして指示。すると今度は新八が彼の方に身を乗り出す。「僕は誰にも喧嘩なんて売りませんよ神楽ちゃんと違ってッ! 平和主義なんですから僕はッ!・・・・・・もうちょっとぐらいこの人とお喋りしてもいいじゃないですか・・・・・・・」「え、何? 後半よく聞き取れなかったんだけど?」「な、何も言ってねえしッ!」恥ずかしそうにそっぽを向いてか細い声で呟いた新八に銀時は口をへの字にして首を傾げると新八はムキになったように叫ぶ。ちなみにあの人というのは当然和美の事である。その後、神楽を連れて新八は怒った様に行ってしまった。「ほら行こう神楽ちゃんッ! 銀さんが女子中学生とイチャつきたいらしいから邪魔しちゃダメなんだってッ!」「え~またベタベタガキ共とくっ付く気アルかあの男、マジキモいアル」「人聞きの悪い事言ってんじゃねえッ! ほらッ! 早く行けッ!」勝手な思い込みで好き勝手言ってくる新八と神楽に銀時は早く行けと叫ぶと、二人は銀時に軽蔑の眼差しを向けながらスタスタと戦艦の中へ入ろうとする。すると銀時の隣にいたネギが神楽に向かって「神楽さ~ん、今度会う機会があったら昔の神威さんの話でも・・・・・・」「誰がお前なんかに話すアルかッ! バッキャローッ!」ネギが言い終えるうちに神楽は腕を振り上げて中指を立てて吼えた後、すぐに戦艦の奥へと引っ込んでしまった。新八はそんな彼女に「なんであの男の子に対してもそんなムキになるの?」と疑問を投げかけながら後を追うが、間もなく戦艦の中でゴスッと鈍い音と「ほぐッ!」という痛烈な声が。恐らくイライラしている神楽が新八を殴ったのであろう。自分をほっといてあやか達と仲良くやっている銀時と、兄に認められてなおかつ彼を心から慕っている一人の少年を見るのが彼女にとって複雑な心境だったのかもしれない。そして銀時もまた、いよいよ帰る時間がやって来た。「さてと・・・・・・俺も帰るとするかね」「は? アンタねぇ、帰る前にいいんちょ達と何か話して来なさいよ、別れの言葉ぐらい掛けてあげなさい男なんだから」「そうやで銀ちゃん、ウチ等はともかくあの三人には・・・・・・」「んな事言ってもよ・・・・・・・」ジト目でこちらに警告してくるアスナと心配そうに口を開く木乃香に銀時が困った様にため息を突いていると「白夜叉・・・・・・」「あり? おまいどうしたのそんなボロボロの格好で?」やってきたのは一度は詠春、二度目は真撰組隊士にボコボコにされて今じゃすっかりボロボロ状態の独眼の刹那であった。銀時が首を傾げると刹那はキッと彼を睨みつけて「誰のせいでこんな目に遭ったっと思ってるんだッ! よくも私が預けてた夕凪をへし折ったなッ!」 「折れた? 何それ? 銀さん知らないよ? 何人のせいにしてんの?」「しらばっくれるなッ! よくも長から譲り受けたこの刀を・・・・・・・!」別れの時だというのに折れた夕凪を振り回しながらプンスカ銀時に怒りだす刹那。だがそんな彼女に木乃香は呆れた目つきで「んも~せっちゃん止めてよこんな時に、今はそういう空気読めへん事言うの止めて」「えええッ!?」「アンタたまには空気読みなさいよ。だから本屋ちゃんに勝てないのよ」「なんでそこでのどかさんが出て来るんですかッ!? 別に戦ってるとかそんなんないですからッ!」木乃香のアスナに批判されて刹那は納得いかない表情で叫んでいると、今度は銀時にとって刹那よりも性質の悪い人物が・・・・・・「せんせぇぇぇぇぇいッ! 私も連れてってくれェェェェェェ!! そげぶッ!」言わずも知れた龍宮が雄叫びを上げながら走って来たので銀時は躊躇せずに顔面にストレート。銀時の拳は龍宮の顔に思いきりめり込んだ。「お前連れてったらストーカーが二人に増えるだろうが、ふざけんな」「く・・・・・・! 私にとって先生がいない学校など犬のクソと同価値なんだ・・・・・・だから私は先生の世界に・・・・・・・ああんッ!」まだ言うかという風に今度はローキックを龍宮にお見舞いする銀時。彼女はすぐにその場に倒れて足を押さえて悶絶する。「犬のクソ以下のお前なんか連れてったら余計あいつ等になんか言われるだろうが、テメェは犬のクソ以下らしくそうやって地面に這いつくばってろ、カス」「まさか殴られ蹴られ罵られる事にこんなにも快感出来るとは・・・・・・このままだと気持ちよ過ぎて壊れてしまう・・・・・・」「もう壊れてるだろ、跡形も無くキャラ完全にぶっ壊れてるだろ」地面に倒れながら恍惚の表情を浮かべる龍宮に銀時は冷たくボソッと一言残し、踵を返して戦艦の方へ行こうとした。「ネギ、ガキ共の事はお前に任せたぜ」「わかってます、銀さんもお元気で」「銀ちゃんすぐ帰ってきてなッ!」「アンタがいないと張り合う奴がいないのよッ! 帰ってこなかったらこっちから行くんだからねッ!」銀時に言われてネギは力強く頷くと量隣にいた木乃香とアスナが彼の背中に向かって叫ぶ。銀時は返事をせずにダルそうにブラブラと手を振るだけだった。すると彼に突然抱きついてくる一人の少女が「銀時~ッ! 帰っちゃやだ~ッ!」「またかよチビ・・・・・・」恥もへったくれもない様子で腰に抱きついて大泣きしてしまったエヴァに銀時がウンザリした表情を浮かべると、和美がすぐに近づいて彼女を両手で銀時から引き剥がす。「あ~はいはい、エヴァちゃん泣かないで、すぐに銀さん帰ってくるって言ってんだから笑って見送ってあげないと」「やだやだ~ッ! ここに残るか私を連れて行くかどっちかにしろ~ッ!」「・・・・・・なんかどんどんガキになってきてねえかこのチビチビ?」「察して下さい銀さん、エヴァさんにとってあなたは誰にも代えられない最も大切な存在なんですのよ」泣きながら和美に持ってかれるエヴァを眺めながら銀時が感想をぼやいていると近づいて来たあやかは彼に微笑を浮かべた後、すぐに深いため息を突いた。「でもあんなにベタベタと銀さんにくっつくなんて・・・・・・羨まし、いや破廉恥極まりありませんわ、でも・・・・・・・・私もエヴァさんみたいな破廉恥な事・・・・・・していいですか?」最初は否定的だったのに徐々に顔を赤らめながら恥ずかしそうに要望を望むあやか、銀時はそんな彼女の顔を見て思わず鼻で笑ってしまう。「特別だからな」「ありがとうございますッ!」「ぬおッ! 急に来るんじゃねえッ!」銀時の許可を受け取った瞬間、あやかはすぐに彼の胸の中に飛びかかって顔をうずめる。さっきまで恥ずかしそうだったのにいきなり大胆に攻めて来るあやかに銀時は困惑しながらも、とりあえず彼女の綺麗な金髪を撫でて上げる。「最後に俺に何か言う事あるか?」「ベタですけど、愛してます・・・・・・・」「本当にベタじゃねえか、ちっとは捻れよ」銀時がツッコむと、あやかは彼の胸に顔をうずめた状態からひょこっと赤面させた顔を上げて、恐る恐る銀時に向かって口を開いた。「もう好きで好きで好きでたまらないんです・・・・・・人に恋するとこんなにも苦しいんだなんて思いもしませんでしたわ・・・・・・こうして例え短い間でも愛するあなたと離れる事がとても苦しくて死にそうですの・・・・・・」「オイオイ、そんな重くすんなよ、すぐに帰ってくるから安心しろ」いきなり目に涙を溜め出すあやかに、銀時は手で彼女の涙を手で拭ってあげる。彼女の想いは銀時には痛いほど胸に染みた「きっとですからね・・・・・・・私はどれだけ時間が経ってもあなたの事を待ち続けますわよ、だって私が生涯愛する人はあなただけなんですから・・・・・・」「俺はお前含めて三人の子娘と三股してるんだけど?」「別にいいんですのよ、ずっと一緒にいてくれればそれで・・・・・・」自分の目からどんどん流れてくる涙を拭ってくれる銀時に、あやかはクスクスと笑った後、抱き合うのを止めて一歩下がり彼に向かって行儀よく頭を下げる「あなたと出会えて本当に良かったですわ、帰って来たらまたみんなで騒ぎましょう」「・・・・・・それはこっちのセリフだな」頭を下げて来たあやかの頭に銀時が手をポンと叩くと、前方の戦艦から土方が顔を出してきた「早くしろ万事屋ッ! もう出発すっぞッ! 近藤さんと隊士の奴等の間に嫌な空気が流れてんだよッ!」「別れの挨拶ぐらいゆっくりとやらせろよったく」「ホント、せっかちな連中ですわね」早く来いと催促してくる土方に銀時とあやかはしかめっ面を浮かべて文句を言うも時間は時間だ。もう銀時一人のおかげで時間を作る事はもう出来ないのだ。「じゃあな、あやか。チビの子守りをよろしくな」「あ、はい、出来る限りの事はやってみますわ」互いに笑いかけながらそう言うと、銀時はスタスタと戦艦の方へ歩いて行く。そんな彼を見て一人の少女は凄く焦った。(やべえどうしよう・・・・・・! 私まだ銀八に・・・・・・!)言おうか言わまいかずっと悩んでいた“二つの言葉”をここで言わなければ・・・・・・だがもうすぐ帰ってしまう彼を目にして焦りだけが芽生えて勇気が出ない。(ただ言うだけ・・・・・・・言うだけなのに足が・・・・・・)「千雨ちゃんッ!」「うわッ!」すると彼女のそんな態度を見て何かを読み取ったのか彼女の背中を強く叩く和美。そして二カッと笑いかけて千雨に親指を立てる。「ここで言わないと後悔する事があるんでしょッ!」「・・・・・・い、いや・・・・・・・」「行ってこい恋する乙女ッ!」「!!」和美にそう激を言われると不思議と体が軽くなった気がした。千雨は自分を勇気づけてくれた友に感謝する前に。愛する人の元へと走った。「やっと江戸に帰れんのか・・・・・・まず帰ったらちょっくら長谷川さんとパチンコでもやりに行こうかね?」戦艦の方へ歩いて行きながら銀時はそんな呑気な事を考えていると、後ろから彼を呼ぶ声が「銀八ッ!」「あ?」 銀時はすぐに振り返るとそこには、千雨が緊張した面持ちで立っていた。「まだ何か言う事あんのか千雨?」「銀八・・・・・・」こちらに振り返ってくれた銀時に千雨は段々と自分の息が荒くなっているのを感じるも、それを必死に抑えて彼に一歩一歩と近づいて行く。「おまえのおかげでさ、私、沢山の出会いや出来事を経験できた・・・・・・・」自分の声が震えている。「その中には恐い事や嫌な事もたくさんあった・・・・・・けど私、それでお前と出会った事に後悔していない・・・・・・」自分の頬に一筋の涙が伝っているがわかる。「むしろ感謝してる、漫画を読むとか、テレビゲームをするとか、ネットに入り浸ってもこんな体験出来やしなかった・・・・・・銀八、本当に本当に・・・・・・」何時の間にか銀時はもう目の前に立っている。千雨は黙って話を聞いてくれている彼に顔を涙で濡らしながら、ずっとずっと前から言いたかった言葉を呟いた。「ありがとう・・・・・・・」今まで経験して積み重ねてきたモンを全て含めた感謝の言葉。泣きながら礼を言ってくれた千雨に銀時は静かに笑いかける。そして自分の腰に差す木刀を抜いて「千雨」「え? うわッ!」銀時がずっと持っていた愛刀、『洞爺湖』。その木刀が今銀時に投げられ、宙を舞いながら千雨の両手におさまった。「俺が帰ってくるまで、そいつはお前が預かってろ」「銀八・・・・・・」「絶対にここに帰ってくるっていう俺の意志表示だと思ってくれや」「わかった・・・・・・わかったよぉ・・・・・・・」笑いかけながら大切な木刀を託してくれた銀時に、その木刀をしっかりと握りながら千雨は一層頬を涙で濡らす。そして「銀八ィッ!」泣きながら千雨は銀時に向かって走り、木刀を片手に持ったまま彼に胸に飛び込んだ後、彼女はすぐに銀時の顔を見上げて「んッ!」「!!!!」銀時が呆気に取られている間に千雨は彼の唇と自分の唇を押し当てる。彼女のファーストキスだ、その感触は暖かく、温もりを感じる。(ホントにホントに・・・・・・・)彼の首に両手を回し抱きしめて、初めての口付けを味わった後、千雨は驚いてる彼の顔を見て涙を流しながらもフッと笑いかける。その時の笑みは今まで銀時が見た中で一番の笑顔だったそして彼女の口から放たれた最後の一言は・・・・・・・「大好き、銀八先生」