修学旅行4日目の夜。阿伏兎はアリカ同様元々敵側の人間であったが今は真撰組や近衛家の者、女子生徒達がいる所に身を置いていた。しかし彼は彼等の味方になるなど毛頭ない、あくまでネギの師匠の“代わり”としてこうなる事になってしまったのだ。「あれ? なんでおたくは俺等みたいに鎖に繋がれてねぇんだ?」「阿伏兎ッ! アンタまさかそっちに寝返ったんかッ!」短い間だったとはいえ一応仲間として一緒にいた全蔵と千草が背中合わせに縛られている状態でその場に座っている。阿伏兎は疲れた表情を浮かべて彼等を見下ろした。「アホな上司に子守り任されたんだよ・・・・・・」「え? そんなんで自由の身になれんの?」「何処が自由だよ、むしろお前等見たいに捕まってた方がマシだっつーの・・・・・・」「あ、こんな所にいたんですか阿伏兎さん」「げ・・・・・・」全蔵に向かってげんなりした表情でぼやていると背後からあの少年の声が・・・・・・。阿伏兎はすぐにその場から逃げようとしたが、後ろから着ているマントをがっつり掴まれる。「とりあえず生徒の皆さんに阿伏兎さんの事を話そうと思いまして」「いや・・・・・・いいよ俺人見知りするタイプだし、ていうかマジで俺をお前等の所に連れて行く気か?」マントを持ってズルズルと立っている阿伏兎を引きずりながらネギは彼の方に笑いかける。「だって神威さんから聞きましたよ? このまま春雨に戻っても首を飛ばされるだけだとか。それなら僕等の所で暮らした方が全然マシですよね?」「マシとかそれ以前にお前絶対俺を連れて行く気だろ?」「神威さんに言われているので」「ったく、すぐ神威、神威、神威って・・・・・・そんなにあのバカ団長が好きなのかよ・・・・・・」ネギに引きずられるのを抵抗せずにそのまま阿伏兎は彼と一緒に行ってしまった。全蔵は彼の姿を眺めながら後ろにいる千草にボソッと呟く。「もし俺達もアイツみたいに自由になったらお前今後どうする?」「・・・・・・お前はなんかあるんか?」「いや、バイトでもやろうかなと思ってよ、配達業とか俺得意だし」呑気な事を言う全蔵に千草はやれやれと首を横に振った。「忍びが配達ってアホか・・・・・・・」「で? お前は何するんだよ」「う~ん、コンビニとかスーパーでバイトしようかな・・・・・・」「お前こそ魔法使いのクセに何様だよ」「うっさいボケ」戦いが終わって緊張感が取れたのか、千草も随分と落ち着いて来たようだ。しばらくして今度は千草の方から全蔵に話しかける。「バイトするも何もお前はどうするんや? やっぱり元の世界へ帰るんか?」「帰れるなら帰りてえけどよ・・・・・・アイツ等俺を連れて行く気ゼロだし・・・・・・」「そ、そうか・・・・・・」なんだかぎこちない返事をした後千草は彼からすぐにそっぽを向く。すると全蔵は彼女の方へ振り返らずに一言。「またお前の所に身を寄せていいか?」「はッ!?」「この世界じゃ他に頼れるモンお前しかいねえし」「ド、ドアホッ! そんな図々しい事を男のクセに・・・・・・・」「ダメか、しょうがねえな、じゃあ一人で暮らすわ、じゃあな」「ま、待たんかいッ! 何でそんな簡単に引くんやッ! 別に一緒に住むのが嫌とは言うてへんやろッ!」千草は慌てて全蔵の方に振り返って叫んだ。それに「ん?」と全蔵は彼女と顔を合わせる。「なんだその口ぶりだと一緒に住んでいいのか? 俺から言って見てなんだけど、お前そんな簡単に男を家に上げていいのか? それとも慣れてるのかそういうの?」「ウチが男を自分の近くに置くのはお前が初めてやドアホッ!」「てことはオメー彼氏とか作った事ねえのかよ。べっぴんなんだからそんぐらい何人かいたと思ってたんだがな」勝手な推測をしていた全蔵に千草は顔を赤面させた状態で食ってかかる。「その辺の尻軽女と一緒にすなッ!復讐の為に人生を費やしていたんやからそんなもん作る気も暇も無かったんやッ!」「何それ言い訳? モテナイ女の言い訳? やっぱアレか? 性格がそれだからモテなかったのか?」「キィィィィィィ!! 言い訳じゃないわボケコラカスッ! 本当に男なんて作る暇無かったんやッ! ウチがちょっとフェロモン出せば男なんてイチコロやッ!」「お前のフェロモン吸い取ったらなんか一週間ぐらい体の全身が麻痺するとかありそうだよな」「ウチのフェロモン毒ガスッ!? なわけないやろグレープフルーツのいい匂いやきっとッ!!」互いに顔を向き合わせながら全蔵と千草は長々とどうでもいい会話を続ける。なんだかんだで二人の仲は悪くないのだ。こんな二人を置いて銀時を始め江戸側+αの連中は刻々と帰る準備を進めて行く。第七十七訓 去る前にドタバタ騒いで最後の最後に別れを惜しめ一方阿伏兎はというと、ネギに連れられて何人かの生徒の前に立たされていた。敵であった彼が現れた途端アスナは目を丸くさせる。「ネギ、マジでコイツを女子寮に連れて行く気・・・・・・・?」「はい」即答するネギの返事を聞いてアスナはジーッとさっきから黙っている阿伏兎に両目を近づける。「まあ確かによく見ると私のタイプにメチャクチャピンポイントストライクね・・・・・・ありっちゃあありよ、ていうかめっちゃありよ、ネギ、反対する奴は私が黙らせるから安心しなさい」「え? お前俺みたいなオッサンがタイプとかどんだけ?」「ハハハハ、アスナは昔からヒゲの合うオッサンが好きでござるからな」「うおぉぉぉぉぉ!! すっげぇ強そうアルッ!!」アスナの感想に阿伏兎が若干引いていると、彼女の近くに立っていた長瀬楓が相槌を打ってクーフェイは阿伏兎を見て興奮したように叫んでいた。「まあ女子寮には山崎殿もいるし異世界の人間一人や二人増えてもなんら問題は無い」「勝負するアルッ!」「管理人もいないのは学校側も困る筈でござるしな、なんとかなるでござろう」「勝負するアルッ!」「おいこの色黒チャイナの言葉俺わかんねえんだけど? 通訳してくれ」楓の説明の後にクーフェイが叫んでいるのだがまったく話と関係無い。阿伏兎がネギの方へ振り向くとネギは苦笑しながら「あ~クーフェイさんは強そうな人見かけたらずっとしつこくそういう事言って来るんですよ、一回勝負しない限りずっと」「勝負するアルッ!」「ウチの団長でもここまでしつこくねえぞ・・・・・・」まだ言うか・・・・・・・という目線でクーフェイを眺める阿伏兎。するとネギが彼に向かって一つの疑問を投げかける。「ところで阿伏兎さん、もしかしてクーフェイさんって夜兎族とかじゃないですよね?」「なわけねえだろ、こんな色黒の夜兎族なんかいねえよ、太陽の光を浴びれない種族なのになんでこんな黒いんだよ? 夜兎は本来色白だ」「ああそういえば・・・・・・いやなんかクーフェイさんって神楽さんとなんか似てるので、もしかしたらと思いまして」「まあ、喋り方と性格は被ってるな・・・・・・」ネギと阿伏兎はクーフェイ達には聞こえない様そんな会話をしていると・・・・・・・「おうビリビリ、ガキ共とオッサン一人連れて何やってるアルか?」「噂をすれば・・・・・・・」クチャクチャ音を立てながら酢昆布を食べてこっちに来たのは神威の妹、星海坊主の娘、神楽だ。「おいビリビリ、帰る前にまず言っとくアル、テメェの脳みそにしっかり入れやがれ。バカ兄貴を倒すのは私だからなコノヤロー」ブスっとした表情で自分を親指で指差す神楽。そんな彼女にネギは決意を込めた眼差しで笑って見せた。「僕だって神威さんを倒す事を目標にしているんです、例えあなたが神威さんの妹でもそこは一歩も譲る気などありません」「フン、じゃあどっちがあのバカ兄貴を倒すか競争ネ」「はい」互いに譲れないモノを持つ者はライバルという形で競い合う。ネギにとっても神楽がライバルという一つの存在になった頃。「こんな所まで来てたのねこのナマモノは、私とすぐにイギリスに帰るわよ」「待ってくれネカネの姐さ~んッ! 俺っちはネギの兄貴をアシストする使命がッ!」「必要ないわよ」「あれ? ネカネお姉ちゃん?」 傍から聞こえる二つの声を聞いてネギはそちらに顔を向ける。彼の親戚であるネカネ・スプリングフィールドがオコジョ妖精のカモに、尻尾を掴んだ状態でブラブラさせながら話しかけていた。更にその彼女の近くに立っているのは「アハハハッ! そんな事しちょったら動物愛護団体に訴えられるぞッ!」「このナマモノはいいのよ、散々私や他の女の子の下着を奪って・・・・・・イギリスに連れて帰って檻の中にぶち込んどくわ」「坂本の旦那~ッ! 俺っちを監禁しようとするこの悪魔をなんとかしてくれ~ッ!」「アハハハハッ! 無理じゃッ!」カモの涙ながらの訴えをヘラヘラと笑い飛ばすのは坂本辰馬。しかも彼の後ろには部下である陸奥も立っている。「喋るオコジョか、わし等の世界でもそうそう見かけん生き物じゃな」「見かけない方がいいですよこんな生物、こんなんでも下心の塊なんですから」「なんじゃウチの大将となんら変わらんじゃないか」「アハハハハッ!」上司である坂本に自然に陸奥がそう言うと、彼女に向かってネカネは目を光らせる。「・・・・・・その話し詳しく教えてもらえませんか?」「ん? 別にいいが聞いても面白くないぜよ? こんな性病を持ちかねない男の話など」「性病・・・・・・? あなたどれだけ女遊びして来たんですか・・・・・・?」「ハハハ・・・・・・・」坂本の過去を聞いてネカネはキッと彼の方へ向いて睨みつける。その威圧感に坂本はヘラヘラ笑いながら後ずさり、そんな彼を見てネカネは睨むのを止めてハァ~と深いため息を突く。「こんな人でももう会えなくなっちゃうのはちょっと寂しいわね・・・・・・」「会えなくなる? なんでじゃネカネさん?」「だってあなた自分の世界に帰るんでしょ・・・・・・・?」憂鬱な気持ちでネカネがそう言うと、坂本は「へ?」と首を傾げる。「わしゃぁ確かに帰るが別にそれでもう会えなくなるわけじゃないぜよ?」「え?」「実はの、ネカネさんに会いに行きたくなったらいつでも行けるようにとウチで時空超越を故意に出来る船を造る気なんじゃ」「私と会う為に・・・・・・?」坂本が計画している話にネカネは呆然とした表情で呟いていると、陸奥は彼に向かって不満そうな目で口を開いた。「大将、なんでそんなモンウチで造らなならんのじゃ? 造るならソロプレイでやってくれ」「いいじゃろ陸奥~、これからは女遊びはほどほどにするきん、だから頼むぜよ」「その決定事項はわしだけじゃ無理じゃ、他の仲間にも聞いとかんといけん」「そうか~じゃあ早く帰らんとな~」「当たり前じゃ、そんな船造るより前にアンタには仕事が山ほど残っているんじゃからの」「アハハ・・・・・・イヤな事思い出させるんじゃなか・・・・・・」頭を掻き毟りながら苦笑している坂本、彼のそんな姿を見てネカネは恐る恐る口を小さく開いた。「またすぐ会えるって事よね・・・・・・?」「アハハハハッ! 会える会えるッ! 仕事終わったらすぐに会いに行くきんッ! わしやぁネカネさんの事気にいっちょるけんのッ!」「も、もう・・・・・・!」「アハハッ! アハハハハッ!」顔を赤らめてうなだれるネカネを見て坂本は大笑い。だが「「ふんッ!」」「ふんぬがッ!」「へ?」突然ネカネの後ろから飛んで来た二人の人物の蹴りが坂本の顔面を襲った。「なにネカネお姉ちゃんといちゃついてんですか黒モジャのクセに」「見てるだけですっげえイライラするアル、バカップルの掛け合いほど見ててムカつくモンはないネ」倒れる坂本を静かに見下ろすはネカネを異常なまでに慕うネギと、二人の空間に我慢できなくなった神楽だ。「あなた達何やってるのよッ!」「害虫駆除だけど?」「バカップル駆除アル、文句あんのかゴラァ」「あ~・・・・・・・見た目は可愛い男の子と女の子なのになんでこんなに腹黒に・・・・・・」こちらに振り向く笑顔のネギと額に青筋立てている神楽を見てネカネが頭を押さえてショックを受けていると「ネギ、こんな所にいたんじゃな」「おい銀時のダチの馬鹿がぶっ倒れてるぞ、何があった?」彼女とネギ達の所にやって来たのはネギの両親であるアリカ・スプリングフィールドとナギ・スプリングフィールド。二人が来た瞬間、ネカネはズカズカと二人に近寄る。「アリカさんッ! 今後はあなたがネギの教育をしっかりして下さいッ! なんかネギの様子がおかしいんですッ! あんなに純粋でいい子だったのに今は笑顔で人を蹴るという悪魔に変貌してッ!」「そ、それはわかるんじゃが・・・・・・・」「あれ? なんで俺には頼まないの?」「あなたに頼んでも無駄だって既に予測可能ですから、ナギさん」「一体何なんだよ、親戚にまでダメだしされる俺って一体何なんだよ」「ダメ人間アル」「そうかダメ人間か、殺すぞチャイナ」神楽とナギの掛け合いを無視してアリカはネカネに何て言おうか悩んでいる。実は彼女にはどうしてもネギと一緒にいる事が出来ない理由があるからだ。「すまんがネカネ、実はわらわ達はこの世界に住むと言う事が出来んのじゃ、わらわ達はわけあってお尋ね者みたいな身じゃからの」「え? てことはつまり・・・・・・」「悪いがわらわ達は異世界へ行かせてもらう、ここでネギと家族仲良く暮らすというのはまだ出来んのじゃ・・・・・・」「そんな・・・・・・!」申し訳なさそうにするアリカにネカネは呆然としたまま固まっていると、ネギが彼女の方へ歩み寄った。「大丈夫だよネカネお姉ちゃん、母さんと父さんと離ればなれになっても僕には生徒のみんながいるし、それに・・・・・・」そう言うとネギは後ろに振り返る。「阿伏兎さんもいますし」「うい~す」「ってなんであなたがネギと一緒なのよッ! 石ッ! 人一人撲殺出来るのに丁度いい大きさの石はッ!」「うん、もうそれ俺の中で結構トラウマだから止めてくんない?」「ネギの兄貴ッ! この俺っちを差し置いてまさかこんなおっさんを自分の傍に置いとくつもりですかいッ! 俺っちという優秀な使い魔を置いてこんなおっさんを使い魔にするんですかいッ!?」「そうだね、カモ君より阿伏兎の方がずっと強いし、じゃあネ」「あっさり捨てられたッ! なんてこったいこの子供魔王ッ!」周りをキョロキョロと見渡して手頃な石を探すネカネを疎める阿伏兎と、彼女がしっぽを持ってぶら下げているカモをバッサリと切り捨てるネギ。そんな三人と一匹をアリカは呆れた調子で眺めていた。「賑やかじゃの本当に・・・・・・・それにしてもまさかあの阿伏兎がネギと・・・・・・」「あのニヤケ面の男よりは全然マシだろ、ったく俺達がしっかりしてりゃああんな奴をネギに近づけなかったのに・・・・・・」ニヤケ面、神威の顔を思い浮かべながらナギがしかめっ面をすると、アリカはフンと鼻を鳴らした。「過ぎた事はもうしょうがない、今はとにかくネギとの時間を作らねば」「あっちの世界に住んでてもこっちの世界にちょこっと遊びに行ける事は出来るしな、なんでも真撰組の奴等がもっと自由にこっちとあっちを行き来出来る装置を作るらしいぜ?」「それが出来ればすぐにネギの所に行けるの」「ネギにも会えるし、アイツが普段どんな事をしているのかも知りたいしな・・・・・・」ネギが教師をやっている姿や遊んでいる姿を一度は見てみたい。アリカとナギがそんな思いをはせていると二人の背後からイヤな気配が・・・・・・「ほう、そしてアリカ姫を置いて私との深夜の密会も可能もですね?」「うおッ!」いきなり二人の顔の間ににゅっと顔を出して来たのは二人の古くからの知り合いアルビレオ・イマ。そしてその後から桂が連れて行動している犬上小太郎とエリザベスがやってきた。「おいホモ~、何子持ちの旦那を口説いてんねん、お前の惚れた相手はあの銀髪天然パーマやろ」「ハハハ、実は私もあの人の様にハーレムルートを狙っておりまして、あの人とナギ、そして最後に桂さんも・・・・・・」「死ね」『死ね』容赦なく冷たい一言を浴びせる小太郎とエリザベスにアルは笑みを浮かべたまま両肩をすくめる。「おやおや、どうやら桂さんはライバルが多くて難解そうですね、まあそれでこそ攻略しがいがありますが・・・・・・」「アル、やっぱり貴様ホモじゃったか・・・・・・もう金輪際ナギに近づくな」「イヤですねえ冗談ですよ、冗談かもしれないけど冗談でもない冗談ですよ」「いやそれ結局どっちなんじゃ・・・・・・・」曖昧にして受け流したアルにアリカはジト目でツッコミを入れると、彼は目を彼女に向かって光らせ「春雨という悪の組織に加担するあなたに私の真実はお答えできません」「ネチネチネチネチとしつこい奴じゃな本当に・・・・・・・! お前のそういう所が昔からわらわは好かんかった」「ご安心を、私もあなたの事は嫌いです」笑顔でサラッと酷い事を言うアルにアリカはグッと歯を食いしばって睨みつけていると。彼の背後から勢いよく飛び出して来た人影が・・・・・・「アリカ殿ッ! 俺はお主の事は嫌いじゃないから大丈夫だぞッ! むしろ好きだッ! 結婚してくれッ!」「おやおやアリカ姫、あなたはどうしてこうも私の攻略対象を寝取ろうとするんですか? 嫌がらせですか?」後ろからいきなり気配も出さずに出て来た桂にもアルは動じずに話を続けると、アリカはもう疲れて相手をする気も起きない表情でシッシッと手を振る。「そんな奴お前にやる、わらわは絶対にいらん・・・・・・」「ハ~ハッハッ! 素直じゃないなアリカ殿はッ!」 「おい長髪野郎ッ! テメェどれだけウチのカミさんを口説けば気が済むんだッ! アリカの夫は俺なんだぞコラァッ!」「長髪野郎じゃない桂だ。少年、エリザベス、まずはお前達が背後からあの男を襲い、その隙に俺がアリカ殿とフラグを立てる、やれるな?」後ろにいる小太郎とエリザベスに最低の指令を伝える桂だが二人は動かずにシレッと。「ヅラ、お前もホモと一緒に死ね」『桂さん・・・・・・』「男はみな人妻を求める狼なのだ」「それはオメーだけだッ!」特殊性癖の桂が言った瞬間、ナギは勢いよくツッコミを入れた。桂小太郎の人妻好きを理解出来る者、少なくともここにいる者達は共感出来ない、間違いなく。「十四郎さん・・・・・・・もう帰っちゃうんですね」「ああ・・・・・・」桂一派とネギファミリーと違い、戦艦ジャスタウェイの下で待機している真撰組の中で。宮崎のどかはその中で一人タバコを口に咥えてしゃがみ込んでいる一人の男に話しかけた。「また会えますよね・・・・・・・?」「当たり前だろうが」心配そうに尋ねて来たのどかに土方はタバコを咥えたまま速攻で返事すると彼女の方へ顔を上げた。「例え今は住む世界が違えど、俺とお前の繋がりは何があっても切れる事はねえ」「は、はい」「こっちに来れるようになったら今度はお前と二人だけでどっか遊びに行くか」「ええッ! わ、わかりましたッ! 私、楽しみに待ってます・・・・・・」「おう」頬を紅潮させて恥ずかしそうに頷くのどかの顔を照れて直視できなかったのか、土方はそっぽを向いて返事をする。すると・・・・・・・「お~お~お熱いね~、中学生と恋愛育むなんて本当立派な警察官だね~」「旦那、ちゃち入れないで下さいよ~、土方さんは普段はクールよそぶってるけど実はかなりのウブなんですぜ」「お前等・・・・・・!」「ぎ、銀八先生と沖田さん・・・・・・」傍から冷やかしてくる二人組に土方は睨みつけ、のどかは一歩引く。ドSコンビこと、坂田銀時と沖田総悟がニヤニヤしながら土方とのどかの会話を聞いていたようだ。「ここまでいったらもうキスするしかないんじゃないの? これはもうするしかないよね~、何ていったってもう恋人同士なんだから」「何言ってるんですかい旦那、土方さんとのどかちゃんは恋人同士じゃありませんぜ。正真正銘夫婦でさぁ」「え? じゃあもうキスより凄いあんなことこんな事やっちゃてる系?」「当たり前でさぁ、数ヵ月後には腹が膨らんでるのどかちゃんを拝めますぜ」「おいおいおい~い、鬼の副長と呼ばれてる方は中学生相手にそんな事してたんですか~? まさに鬼の所業だな」「や、止めて下さいッ!」ちゃかしてくる銀時と沖田にのどかは恐がりながらも彼等に向かって叫ぶ。そして彼女の後ろに立っていた土方は腰に差す刀に手を置いた。「万事屋、テメェ人の事言えるのか・・・・・・! ああ・・・・・・!?」「いや俺はお前と違ってまだ手ぇ出すつもりねえから、ヘヘヘ」「こっちだってまだ出すつもりなんざねえよッ! つうかよく考えてみろッ! 俺よりお前の方がはるかに外道だろッ!」「ほ~何を根拠にそんな事・・・・・・・」タバコをプッと吐きだしてブチ切れた土方に一歩も引かずにニヤつきながら銀時が言葉を返そうとすると「銀時~~~ッ!」「え? うおいッ!」泣き叫ぶような声が聞こえたので銀時は咄嗟に振り返るがその直後、金髪少女が自分の腰に頭から突っ込んで強く抱きしめてきた。無論、エヴァンジェリンだ。「私を置いて帰るとか何考えてるんだッ! 私も一緒に連れてけッ!」「うぐぐ・・・・・・ったく出来るわけねえだろうがッ! ちゃんとお前等が学校卒業したら連れて帰ってやるってッ!」「いやだいやだッ! そんなの待てないに決まってるだろ~ッ! 連れて行かないと泣くぞッ!」「お前泣き過ぎなんだよ少しは自重しろッ! 一話ごとに泣いてんじゃねえのかッ!?」「ふえ~んッ!」「つかもう泣いてるしッ!」ワガママ放題に叫んだ後、急に目から雫を垂れ流して泣いてしまうエヴァに銀時は苛立つのを押さえながらなだめようとする。しかしその時「銀さんッ! もうその子を甘やかすのは止めて下さいなッ! さもないとどんどん調子乗りますわよその子ッ!」「600年も生きてるんだろ、脳みそはずっと成長してなかったのかよ・・・・・・」3年A組の『いいんちょ』こと雪広あやかがエヴァを指差したまま抗議の声を上げて近づいてくる。そして彼女の隣にはエヴァを見てもはや呆れてるというより諦めている長谷川千雨の姿が。二人がやって来た瞬間、銀時はすぐに反論した。「仕方ねえだろッ! コイツが耳元で泣かれるとうるさくてしょうがねえんだよッ!」「いいんですッ! そんな子はほっといて好きなだけ泣かせばいいんですわッ! ずっと甘やかしてたら子供は成長しませんのよッ!」「っておいッ! お前は私のお母さんかッ!」「あなたみたいな可愛げのない子を私は銀さんと作った覚えはありませんわ、私が銀さんと作る子供はもっと素直でいい子の筈ですから」「まだ作る事さえしてないのにそんな事言い切っていいのかよいいんちょ・・・・・・」叫んでくる銀時に子育ての仕方を教えてエヴァには胸を張って自分の子供の事を喋るあやかに、千雨はボソリと小さな声で呟く。すると聞こえていたあやかは彼女の方へ向いて「千雨さん、他人事に考えては駄目ですわよ、あなただっていつ銀さんと子作りしてもおかしくないんですから」「い、いや私はそんな予定は・・・・・・」「子供作ろう千雨ちゃんッ! 銀さんと千雨ちゃんの子供ならきっと可愛いに決まってるからッ! 私が全力で保障するッ!」「お前は何の前触れも無しに出て来るな朝倉ッ!」少しだけ顔を赤くしながら首を横に振る千雨の後ろからガバァっと出てきてすぐに彼女に抱きつく朝倉和美。そして千雨の頭にグリグリと頬ずり。「子育ては私も手伝って上げるからさ~、あ、子供の名前はどうする? 私的には銀さんの『銀』の字と千雨ちゃんの『千』の字を取って、銀千代(ぎんちよ)って名前がいいと思うんだけどさ~? 千雨ちゃんはなんか候補ある?」「何でそんな深く子供の名前まで考えてるんだよッ! まだ子供が生まれることも決まってないのに話進めんなぁッ!」「新八君はいいと思うよねぇッ! 銀千代ッ!」「は、はいッ! それは真に言い名だと思いまして候ッ!」「あ、あいついたんだ、気付かなかった」突然後ろに振り返って誰に叫んだかと思いきやそこには足をビシッと揃えて和美に向かって変な口調で叫び返す新八の姿。和美はその神出鬼没の能力で気付かなかったが、新八は地味ゆえに気付かなかったのだ。そんな事をやっている子供達を見て冷静さを取り戻した土方は腕を組んで銀時を睨みつける。「おい万事屋、言っとくが江戸でも重婚罪は適用されるんだからな・・・・・・」「重婚罪? くだらねえ、まずはそのふざけた法律をぶち殺す」「出来るかバカ、グレートスペシャルバカ」何言ってるんだコイツと言う風に土方は箱から取り出したタバコを口に咥えながらツッコむ。すると銀時は腰にエヴァを抱きつかせまま彼の方に振り返り「法律じゃ俺を縛れねえんだよ国家の犬。結婚出来る相手は一人? はん、法律上はそうかもしれねえが俺の六法には書いてねえんだぜ」「ってマジでお前この三人娘とそんな事する気なのかよ・・・・・・! チッ、まさかそこまで腐ってたとは・・・・・・」「いいんちょや長谷川さん、エヴァさんまで・・・・・・・凄い」土方が侮蔑の言葉を呟いてのどかが銀時のやる事に驚いていると。沖田はそんな銀時にニヤリと笑みを浮かべる。「さすが旦那だ、一気に三人を調教しちまうとはさすがに俺も出来ませんでしたぜ」「コラッ! 逃げようとしてんじゃないわよメス豚2号ッ!」「ふえ~~もう堪忍して~~~ッ!」沖田の後ろでは彼が調教した柿崎美砂が首輪を付けたまま、メス豚2号こと月詠の首輪に付いている鎖をグイグイと引っ張っていた。「俺はまだ二人しか出来てないのに、旦那は三人か。コイツは負けてらんねえな」「人聞きの悪い事を言うな、俺は首輪プレイなんざゴメンだ」「わ、私は別に・・・・・・」「あやか、変な事考えるの止めなさい、銀さんからのお願い」ドギマギしながら呟くあやかに銀時は彼女の顔を見ずに一言。そんな危ない橋を渡る事もいとわない彼女を含めた三人を貰う予定の男を眺めながら、土方はフゥ~とタバコの煙を口から吐いてのどかの方へ目をやる。「ああいう馬鹿共と違ってちゃんと俺は手順をふまえる。できちゃった婚とかねえからな」「で、できちゃった婚ッ!? わ、わかってます・・・・・・・わかってますから・・・・・・」とんでもない事を平気で言う土方にのどかは震えながらも何度も頷く。銀時のただれた恋愛などとは違い土方は一途の上に純愛だ。間違いなどするわけがない。(でもなんで私なんかをこんなに十四郎さんは・・・・・・・)のどかが一つの疑問を頭に浮かべ悩んでいると、そんな彼女と土方の元にまたもや一人の男女が「だ~はっはッ! なんだトシッ! 夫婦で別れの言葉でも掛け合っているのかッ!? しばらく会えないだけなんだからそう固くなるなよッ!」「これだから草食系の男は、抱きついてキスするとかそういう事も出来ないんですかあなたは」「な、何言ってるの夕映ッ!」「近藤さん・・・・・・あと最後までムカつく小娘・・・・・・」二人の前に現れたのは声高々に笑う真撰組局長の近藤勲、そして土方が最も嫌いな少女、綾瀬夕映。のどかは顔を赤らめ、土方は物凄く嫌そうな顔を浮かべた。「近藤さん、ちゃかすのは結構だが一つ聞かせて欲しい。なんでアンタそのガキいつも連れてるんだ?」「ギクッ! い、いやだなぁトシ、俺が元々子供に好かれやすいタイプだって知ってるだろ~」「口でギクッ!って言ってる時点でメチャクチャ怪しいんだが?」「違う違うッ! ギクッ!じゃなくて本当はザクッ!って言いたかったんだよッ!」「なんでセリフの冒頭にモビルスーツが出て来るんだよ」夕映との仲を土方が追及した瞬間、近藤の顔からさっきまでの笑みが消えて、急に汗をダラダラと流し始めて慌てて下手くそな言い訳をして誤魔化そうとするが。どうも彼のそんな不審な挙動に土方はますます近藤を怪しむ様にジッと眺める。だがしばらくして「おうお前等ァ、もうすぐジャスタウェイD4Cを出すぞ。さっさと準備しやがれ」「おおとっつぁんッ! ナイスタイミングッ!」「は? 何がだよゴリラ?」とっつぁんこと真撰組の創立者である松平片栗虎がやって来た途端近藤は話を流せるとガッツポーズ。当のとっつぁんは口をポカンとして首を傾げた。「ま、ゴリラの戯言なんかどうでもいいとして・・・・・・・おい野郎共~、全員ここに集まれコノヤロー」とりあえず近藤をスル―して、とっつぁんはその場に散らばっている真撰組隊士達に号令をかけてこちらに集合させる。隊士達は迅速にとっつぁんの前に集まった。「よ~し、おいトシ、ちょっくらのどかちゃんを貸せ」「は? なんでコイツが必要なんだよ? このまま戦艦に入るんじゃねえのか?」「その前にやらなきゃ行けねえ事があるだろ? いいから貸せ」「いや意味わかんねえし・・・・・・まあいい、おい、ちょっととっつぁんの所に行ってやれ」「あ、はい、わかりました・・・・・」とっつぁんの言動に土方は不信感を募るも、上司の命令ならばと仕方なくのどかをとっつぁんの所に行けと指示、不安そうな表情で彼女はとっつぁんの隣に立った。そこからの光景は今までに見た事のない景色・・・・・・・「おいあれが副長の・・・・・・」「なるほどなぁ、まだ小さいってのは聞いてたが・・・・・・」(ちょ、ちょっと恐いかも・・・・・・)武装警察・真撰組がチンピラ警察と呼ばれているのは伊達ではない。のどかの目の前にいる隊士達はとても善良な警察官とは程遠く、恐ろしい形相でこちらを睨んで立っている。もしかしたら土方と自分の関係を既に知っていてそれを快く思っていないのでは?無理も無い、鬼の副長と呼ばれた土方の女がただのちっぽけな中学生だと聞いて不満と思わない方がおかしい。(で、でも十四郎さんの仲間なんだからこんな所で逃げちゃダメ・・・・・・!)「テメェ等耳の穴かっぽじってよ~く聞けッ!!」彼女は恐れながらも必死に自分を奮い立たせてそこに直立不動で構えていると、とっつぁんは彼女の肩をポンと叩き。「このガキはお前等の上司であるトシの嫁だッ! そして今度からお前等の姐さんだッ! わかったなら返事しろオラァッ!!」「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ!!! とっつぁん今なんつったッ!? もう一回言ってくれッ!」 いきなりとんでもない発言を隊士達に叫んだとっつぁんに、のどかは顔を真っ赤にして驚き、のどかは慌ててとっつぁんに詰め寄る。するととっつぁんはタバコをコートから取り出しながら冷静に。「え? だからのどかちゃんがお前の嫁で、アイツ等にとってはのどかちゃんが姐さんになるって事だよ、二度も言わせんなよ、オジサンは同じ事を二度言うのは大嫌いなんだよ」「ふざけんなッ! 俺とコイツはまだそこまで進んでねえッ!」 本当はちゃんと結婚できる段階までステップが踏めたら隊士達に言おうとしていたのにこんなタイミングで言われると思っていなかった土方は激怒した様子でとっつぁんに歩み出る。「勝手に変なこと隊士にほざきやがってッ! 考えてみろッ! 上司の俺の女がこんなガキだと知った途端奴等反対にするに決まって・・・・・・・!」土方がとっつぁんにキレた状態で叫んでいたその時。隊士達は同時にビシッと敬礼した。「「「「「「「「「「了解しやしたッ!!!」」」」」」」」」」「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」「オイィィィィィィ!!! 何でお前等全員即決で認めてんだッ!」何の異議も唱えずにすぐにのどかを姐さんと認める隊士達にのどかはまた叫んで土方も仰天した様子でツッコミを入れる。すると隊士達の先頭にいた原田が嬉しそうに「副長ッ! 俺達はアンタが選んだ女にとやかく言う資格なんかねえぜッ!」「そうだそうだッ! しっかもめちゃくちゃカワイイしその子ッ!」「そんな可愛い子が俺達の姐さんになってくれるんならこっちから喜んでついていくぜッ!」「おめでとうございます副長ッ!」「嫁さん泣かしたら切腹ですからね副長ッ!」「お前等なぁ・・・・・・・」次から次へと隊士達の温かい言葉を受け取り、土方は呆れた表情でため息を突く。「おめでたい奴等だぜ本当に・・・・・・・」「で、でも、嬉しいです。私の事認めてもらえて・・・・・・・」「・・・・・・・まあな」隣で隊士達を眺めながら顔をほころばせているのどかを見て土方もフッと笑みを浮かべた。しかしそんな祝福ムードの中に空気を読めないあの片目少女が・・・・・・「いやぁ、さすがに現段階で真撰組の姐さんと決めるのはどうかと思うんですが・・・・・・?」「ん?」不満げな声が聞こえたので土方はふとそちらに振り返る。そこにいたのはボロボロの姿で木の棒を杖代わりにして立っている桜咲刹那の姿が。ちなみに彼女がボロボロになった理由は詠春の逆鱗に触れたせいである。「だってのどかさんはまだ中学生ですよ? しかも土方さんと会ったのはほんの数か月前、決断が早過ぎると思うんですよ私。もうちょっとのどかさんも隊士の皆さんも冷静になって考えてみてくださいよ、か弱い女の子が屈強な男達を支えられる姐さんというポジションに立てるわけ・・・・・・ぬぐッ!」嫌味ったらしくのどかが土方の正妻になる事に異議を唱えだす刹那。だが彼女の長ったるいセリフは途中で止められる。何時の間にか刹那の背後に沖田が回っており、彼女の頭を思いっきり拳でぶっ叩いたのだ。「おいおいお~い、俺達の姐さんに向かってナメた口聞いてんじゃねえよ独眼女」「お、沖田さん・・・・・・!」「おいお前等」元々疲れ果ててボロボロになっていた刹那は彼の一撃ですぐに倒れてダウン、そんな彼女を沖田は片手でヒョイと掴んで、隊士達の方へ向いて「姐さん侮辱罪で粛清だ」「え? ちょッ!」いきなり隊士達の方に高くほおり投げられ刹那が驚いた時にはもう遅い。「あぎッ!」と刹那が落ちたポイントは隊士達のド真ん中。さっきまでとは打って変わって恐ろしい形相で見下ろしてくる隊士達がズラリと彼女を取り囲んでいる。そして「オラァァァァァ!! 俺達の姐さんを虐めようとするとはいい度胸じゃねえかッ!」「いやちが・・・・・・! あだッ」「テメェ副長にコバンザメみてぇにくっついてた女だろッ! さては姐さんの場所を横取りするつもりだったなッ!」「出来るわけねえだろッ! エセ独眼竜のクセにッ! 二度と姐さんに立てつけねえようにここでシバいてやるッ!」「そ、そんな殺生な・・・・・・・! おぐッ!」周りを取り囲んで隊士達のフルボッコが刹那を襲う。彼女の叫び声やら悲鳴をのどかは震えながら聞いているが、後ろにいる沖田と夕映は澄ました表情でその光景を眺めていた。「あわわわわ・・・・・・どうしよう刹那さんが・・・・・・」「俺達真撰組の姐さん、俺は命令通りの事をしましたぜ、さすが土方さんの女だ、やる事が鬼だぜ」「ええッ! 私そんな命令してませんッ!」「さすがですのどか、これでわかったでしょう、あなたの命令ならあの人達はなんでも聞くと」「だから私そんな命令してないよッ! 十四郎さんなんとかしてッ!」沖田の狂言と夕映の恐ろしい発想にのどかに首を激しく横に振って否定した後、すぐに刹那を助ける為に土方に訴える。それに土方は新しいタバコを口に咥えながら応える「わ~ってるよ、お前等、もういいからそいつをこっちによこせ」めんどくさそうに土方が言うと、しばらくしてボロボロから更にズタボロになった刹那がポイッと土方の前にほおり投げられた。体中に隊士達の無数の足跡が残っており、白目をむいてピクピクと体が痙攣している。「コイツはもうちょっと勉強が必要だな・・・・・・隊士達とのコミュニケーションを取らねえと真撰組隊士としてやっていけるのはちと難しいからな」「あが・・・・・・・あがが・・・・・・・」呻き声みたいなのを上げた刹那を見下ろしながらそう呟いた後頭を掻き毟り、とっつぁんの方に目をやる。「言っとくがとっつぁん、俺がコイツとそういうのになるのはずっと先だ、ていうかコイツまだ結婚出来る年じゃねえし」「トシぃ、オジさんが正しいって言えばそれは正しいんだよ。ということで14歳でものどかちゃんはお前の嫁だ。で? 式はいつにする? オジさんすんごい楽しみなんだけど? 結婚式は全部オジさんがバックアップしてやるからな」「アンタ本当に警察ッ!? 人のプランをハンマーでぶっ壊して突き進んでいくの止めてくんないッ!? 俺は俺でやるからハンマー返せッ!」「おいおい、こういう役目は年寄りに任せてくれよ。やることねえんだよ、ヒマなんだよ、若者の恋話に首突っ込みたい年頃なんだよ~」「結局アンタ面白半分で首突っ込みたいだけなんじゃねえかッ!」自分の肩に手を回して猫撫で声で暴露するとっつぁんに土方は額に青筋を立てて叫ぶ。結局彼は他人の恋愛話に参加したいだけなのだ、まあ真撰組の隊士達は彼にとっては息子同然なので、あくまで父親的な立場として参加したいのであろう。「いいじゃねえか、のどかちゃんも奴等に姐さんとして認められたんだし、ねえのどかちゃん?」「は、はい・・・・・・」「猫撫で声でのどかに話しかけるな・・・・・・・」「ほんじゃま、次行ってみるか」「は?」愛しい娘を見るかのようにのどかに喋りかけた後、とっつぁんは突然後ろに振り返る。土方はわけがわからなそうに首を傾げるが、とっつぁんの視線の先には近藤の手を繋いで立っている夕映の姿が・・・・・・。「ゆえっち~、ちょっとこっち来てくんねえかな~?」「ふむ、遂に私の出番ですか、じゃあちょっと行って来るです」「え? どういう事?」困惑している近藤を置いて夕映は彼の手を離してとっつぁんの元へ。「なるほど、こうやって改めてあの人の仲間達を見ると人相が悪いチンピラ集団ですね」「あッ! あれってまさか局長の背中に張り付いてたガキじゃねえかッ!」「はぁッ!? おいガキお呼びじゃねえんだよッ! 引っ込めッ!」早速毒舌を吐く夕映に彼女の目の前にいる隊士達はブーイングの嵐。するととっつぁんはそんな彼等を凄みのある形相で睨みつけて「おいテメェ等黙って聞きやがれッ! この娘っ子を誰と心得ているんだコラッ!」「は?」「あのとっつぁん、何言おうとしてんの? なんか変な事言おうとしてない? すっごいヤバい事言おうとしてない?」一喝するとっつぁんに土方は眉をひそめて近藤は額から汗を一滴流す。そして「このゆえっちこそお前等の総大将、近藤勲の嫁ッ!!! つまりお前等にとってのどかちゃんと同じくこの娘っ子も姐さん、いや大姐さんになんだよッ!!!!」「頭が高いですよあなた達、ひざまずきなさい」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「「「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?????」」」」」」」」」」長く長く時が止まった後、隊士達だけではなく周りにいた者全員が一斉に大声を上げる。無理もない、何故ならこの仏頂面のツンとした女の子がまさか・・・・・・・「とっつぁぁぁぁぁぁんッ!!! アンタ何言ってるのッ! 遂にボケちゃったッ!?」「うう・・・・・・おじさんは人生最大級に嬉しいぞ近藤・・・・・・・まさかこんなにお前を好きでいてくれている女の子がいたなんて・・・・・・世の中って捨てたもんじゃねえんだな・・・・・・こんなゴリラだって幸せが掴めたんだもんな・・・・・・『あいのり』みたいな恋愛もあるって事だよコンチクショウ・・・・・・」「ええッ!? とっつぁん泣いてんのッ!? ヤバいマジでボケたッ!」パニック状態で近藤はとっつぁんに詰め寄るが、彼はハンカチで目を拭いながら号泣。迫力満点のその泣き顔に近藤は思わず後ずさり。「なんなんだコレッ! 全く話が掴めんぞッ! 夕映ちゃんッ! コレ一体どういう事ッ!?」「どういう事も何も、こういう事ですよ“あなた”」澄ました表情で夕映が今、間違いなく飛んでもない呼称で自分を呼んだのを聞いて近藤はその場に頭を抱えて崩れ落ちる。「そ、そんなバナナァァァァァァァァ!!!」「バナナじゃねえよッ! おいクソガキッ! なんで近藤さんにテメェみたいなガキが嫁になるんだッ! 冗談にも限度ってモンがあるだろうがッ!」「ほほう、姐さんである私に対して随分と口の聞き方がなってないようですねぇトシ」「オメェがトシって呼ぶんじゃねえよッ! どうせまた面白半分のつもりでとっつぁんにホラ吹いたたんだろうがなッ! この人はお前が考えてるよりずっと脳みそが単純に出来てるんだよッ!」 「十四郎さん落ち着いて・・・・・・!」夕映に向かってツッコミながら激昂する土方をのどかは慌てて止めに入る。そして彼に向かって恐る恐る口を開いた。「実は夕映って元々近藤さんの事が本当に好きだったみたいなんです、十四郎さんは知らなかったと思いますけど実は近藤さんは一度一人で麻帆良学園に・・・・・・・」「は?」「それでその時夕映は近藤さんとバッタリ出くわして・・・・・・・」「ぶっちゃけ一目惚れに近いものがありましたあの時は」「はぁッ!?」たび重なるカミングアウトの連続、まさか正真正銘に彼女はこの近藤の事を・・・・・・・「お前マジで言ってるのか・・・・・・・? 相手は近藤さんだぞ? 俺達真撰組の大将だぞ? わかってんのか?」「わかってますよ」険しい表情を浮かべる土方に夕映は全く動じずにさらっと「けどそんな事全然構いません、私自身が選んだんです。私が誰を好きになろうと私の勝手、例えあなた達に反対されても私はこの想いを一生貫き通します」「お前本気で近藤さんの事を・・・・・・」「本気じゃないとこんな事チンピラの前で言うわけないでしょ、トシ」「だからトシって呼ぶの止めろ・・・・・・・」またもやあだ名で呼んでくる夕映に土方はタバコを口に咥え直しながら言葉を返す。皮肉屋で毒舌家でのどか達以外の他人とのコミュニケーションが物凄く下手くそな彼女がここまで素直に想いを暴露してでも自分の所の大将に惚れているとは・・・・・・。土方が少し思い詰めた表情をしていると、近藤の方は血気盛んな隊士達に猛抗議を受けていた。「局長ッ! 何考えてんだアンタッ! なんであんなガキを嫁にッ! 俺達は絶対反対だぜッ!」「そうだそうだッ! しっかもめちゃくちゃ態度悪いしこのガキッ! 俺達の事ぜってぇナメてるってあのツラッ!」「こんなガキが俺達の姐さんになるんなら俺は喜んで真撰組を止めさせてもらいますからねッ!」「ふざけんなロリコン局長ッ!」「腹斬れ局長ッ!」「おいお前等ぁッ! トシとのどかちゃんの時はあんなに祝ってたのに、何で俺と夕映ちゃんの時はそんな反抗意識むき出しッ!?」夕映と自分、のどかと土方の扱いにここまで差が出るものなのかと驚きながら近藤が隊士達に叫ぶと、彼等はキッパリと「副長と姐さんはいいんですよッ! 片ッぽは二枚目でもう片ッぽは特上級に可愛いしッ!」「それに比べて局長なんかゴリラと仏頂面の生意気なガキじゃないッスかッ! 確かにあのガキもまあレベルは高いっちゃ高いと思いますけど、性格が酷過ぎるんですよッ! 俺ハゲって言われたんスからッ!!」「おい上司に向かってゴリラとは何事だッ! 女子中学生達に散々ゴリラ呼ばわりされてたのにお前等にまでゴリラって言われたら泣きたくなっちゃうだろッ!」隊士達にランクの違いを指摘されて近藤は逆ギレで怒鳴り返す。別に本当に夕映を自分の妻にする事など考えていなかったのだがここまで言われるとつい。そんな近藤の姿に、トラブルの元凶である夕映は優雅にボーっと眺めていた。すると「・・・・・・・おい」「ん? なんですか? あなたから話しかけてくるとは珍しいですね、出来ればこれで最後にしてもらいたいですあなたから話しかけられるのは」後ろから聞いた事のある声が聞こえたので夕映はすぐに振り返る。そこには頬を引きつらせてプルプル震えている銀時が立っていた。「いや俺もね、本当はお前何かと話したくねえんだわ、だけどささっきヤクザのおっさんがとんでもないこと言ってたのを耳に聞いちゃってさ・・・・・・」 己の耳がに入った言葉が真なのか確かめる為に、銀時は思い切って夕映に聞いてみる。「なんかお前がゴリラの嫁になるだとかどうだとか・・・・・・」「本当ですけどそれが?」「うおぉぉぉぉぉぉぉいッ!! やっぱりマジなのかよッ! おいお前等このデコチビがゴリラの嫁とかになるってバカなことほざいてんだけどッ!?」「えぇぇぇぇ!! 本当に夕映さんあのゴリゴリの実の能力者みたいな人とッ!?」さらっと正直に言う夕映に銀時はビックリ仰天してすぐに後ろに振り返って叫ぶ。あやかはすっときょんな声を上げたが、エヴァはそれを聞いて高笑い。「フハハハハッ! バカか貴様はッ! 結婚という大事なイベントの相手をゴリラにするなど悪趣味にも程があるぞッ!」「何処ぞの銀髪ダメ教師に惚れてる人よりはマシだと思いますが?」「何をォォォォォォ!!」バカにしてくるエヴァを一瞬で怒り心頭にさせる夕映。そんな彼女をあやかの後ろで腕を組んで立っていた千雨は深いため息を突いた。「まさかお前が男に惚れて、しかも相手があの声のバカでかいゴリラだとはな・・・・・・ていうか何者なんだよあのゴリラ・・・・・・」「真撰組のトップ、近藤勲ですぅ」「真撰組? あ~そう言えば確かにあの恰好はそうだな・・・・・・・あれがトップだなんて下の奴等は大変だな・・・・・・」まだ隊士達と揉めている近藤を眺めながら千雨がボソッと呟く。彼女は彼の一体何に惚れたんだろうか・・・・・・?千雨がしかめっ面でそんな疑問に頭を悩ましていると、和美が慌ただしい様子で近づいて来た。「千雨ちゃん大変ッ!」「あ?」「新八君がッ!」「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」和美がバッと指差した方向にはうつ伏せになって新八がゴロゴロと激しい動作で左へ右へと転がっていた。「ウソだろオイィィィィィィィ!! なんで僕と同じ非モテキャラの近藤さんがァァァァァ! あんなのただのストーカーゴリラじゃんッ! ただの変態じゃんッ! なんで変態ゴリラががフラグ立てて僕だけ・・・・・・・! クソォォォォォォみんな死ねッ! 女の子にモテる野郎共はみんな死ねッ!」「・・・・・・何アレ黒魔術の儀式でもやってんのか?」「近藤さんの話を聞いた瞬間、呆然と空を眺めた後急にああなっちゃってさぁ。どうすればいいのかな?」「知るかよそんなの」人目も気にせずに転がりまわる新八に千雨は関わりたくなさそうに目を背け、苦笑する和美に冷たく一言。例え同じ万事屋でも新八の事をあまり知らない千雨にとっては彼の事などどうでもいいのだ。しかしその新八が突如何者かに思いっきり・・・・・・・「邪魔よ童貞メガネッ!」「誰が童貞・・・・・・おごぉッ!」ショックでツッコミ役を放棄していた新八の腹に痛恨の蹴りが入り、そのまま彼は吹っ飛ばされてしまう。蹴りを入れたのはのどかや夕映の友達である早乙女ハルナだ。「夕映ッ! さっきヤクザのオッサンがとんでもないこと言ってたけどやっぱりあなたマジだったのッ!?」「どうしてあなた達は私に対して疑り深いんでしょうか? 本当だって何回も言ってるでしょ、怒りますよ」「それは日頃の行いとアンタの趣味の悪さのせいでしょうがッ!」少々不機嫌になりつつある夕映をハルナはビシッと指差して叫ぶ。「やめときなよ夕映ッ! 土方さんとのどかなら絵になるけどアンタとあのゴリラーマンじゃただのお笑い芸人だよッ!」「やれやれ、どいつもこいつも私に反対意見ばっかですね・・・・・・」「友人として当然ッ! でしょのどかッ!」「え? 私?」さっきからほとんどの人に反対意見を言われかなりウンザリしている夕映にハルナはすかさず土方の隣に立っているのどかの方へ目を向ける。のどかは「う~ん」と人差し指を口に当てたまま考えた後、ポツリと一つの結論を述べた。「私は別に反対じゃないけど・・・・・・近藤さんっていい人だし」「のどか、やはりあなたは人を見る目があります、何処ぞのゴキブリメガネとは大違いです」「コラァァァァァ!! アンタ等何言ってるのかわかってんのッ!? どんなに中身が綺麗でも見た目がゴリラ以外の何者でもないのよッ!?」「もう俺の事をゴリラって呼ぶの止めてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」「うわぁッ! 急に出て来ないでゴリラッ!」ゴリラこと近藤が話し合いで揉めている三人の中に飛び込んで夕映の後ろに回ると、その後すぐに彼を追いかけて隊士達が現れた。「局長ッ! 俺達は絶対にそのガキを嫁に迎えるのに断固反対ですからねッ!」「つうかアンタずっと片思いの女がいるじゃないッスかッ!」「いや待てお前等ッ! 俺も色々と混乱してるからさッ! 話の経緯は全部まとめて江戸に戻ったら話すからそれまで待ってくれッ!」「待たなくてもいいですよ、さっさと式上げましょう式」「君は一番待ってッ! もう俺の想像を遥かに超えて行き過ぎだからッ!」夕映の肩に手を置いてパニくりながらも近藤は必死に怒っている隊士達をなだめようとしながら夕映の口を手で押さえる。コレ以上彼女に大胆発言されたら隊士達が黙っちゃいないのだ、いやもう既に黙っていないのだが。しかし近藤は知らないのだ。彼と夕映の結婚を一番快く思っていないのが誰なのかを・・・・・・その人物は大勢の隊士達の中を掻きわけて一番前に出て来た。サディスティックプリンス、沖田総悟だ。「・・・・・・近藤さん」「おおッ! 総悟ッ! お前ならわかってくれるよなッ! 俺と夕映ちゃんの事は誤解だってッ!」「誤解じゃないです真実です、むぐっ」「シャァァァァァラップッ!!」また余計な事を言おうとする夕映の口を近藤は必死に抑える。そんな光景を眺めながら沖田はフッと笑って見せた。「何言ってるんですかぃ近藤さん、誤解だろうが真実だろうがどうでもいいでしょうよ、俺はもっと“シンプル”にこの混乱を鎮める方法を知ってるんですからねぇ」「え? シンプル?」「だから・・・・・・」そう言うと沖田は自分の腰に差してある一本の刀を抜いた。月の光で怪しく光る刀、そして沖田はすぐにその刀を構え夕映を睨みつけた。「そのガキぶった斬れば万事解決ですぜ近藤さん・・・・・・!」「総悟ォォォォォォォ!!!」「前々から気に入らなかったからいつか殺そうと思ってたんだが・・・・・・どうやら殺す時が来たようだぜ・・・・・・」「総悟ストップッ! その解決方法は一番ダメだッ! ようやく敵を全員やっつけてスッキリして江戸に帰れるのにここでこんな小さな少女を殺めるのはマズイってッ!」「近藤さん、俺達の敵は一人残ってるじゃないですかぃ」両腕で夕映を掲げ上げながら必死に止めようとする近藤だが、沖田は全く聞いちゃいない。目を鋭く光らせ、笑みを浮かべて刀の鞘を強く握る。「アンタが今両手で持っているモンこそ・・・・・・・俺達真撰組の敵だァァァァァァ!!」「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」刀を振りあげ襲いかかって来た沖田に近藤は慌ててまわれ右して夕映を両手に持ったまま逃げた。すると沖田だけではなく他の隊士達まで追って来る。「局長まだこっちの話が済んでないんだけどッ!」「そのガキを嫁にするとか絶対に考えないで下さいよねッ!」「俺等のどかちゃんなら喜んで姐さんって呼びますがそのガキだけは絶対に駄目ッスよッ! だって俺の事ハゲって呼んだんスからッ!」「お前そんなにハゲ気にしてたっけ原田ッ!?」沖田や原田を始め追ってくる隊士達から近藤は必死に夕映を脇に抱えて逃げ回る。夕映は動きもせずに仏頂面で素直に彼に抱きかかえられていた。そして隊士達の後ろにはとっつぁんが額に青筋を立てて叫びながら追走している。「おいテメェ等ッ! 上司に嫁が出来たんだから祝いの言葉一つぐらい送りやがれッ! おじさんが社交辞令のマナーをその身に直接教えてやろうかぁッ!」夕映を抱きかかえて逃げる近藤。それを追いかけるは沖田率いる真撰組隊士。拳銃片手に隊士達を追いかけているとっつぁん。周りの人たちはそれをただ呆然と眺めるのみであった。土方とのどかもその一人で、土方はタバコを咥えたまま難しい表情を浮かべ、のどかは近藤に抱きかかえられて夕映が沖田に追われているのを心配そうに見つめている。「・・・・・・こいつは真撰組の今後に関わる事件だぜ・・・・・・・」「あ、あの十四郎さん・・・・・・?」「あん?」土方がぼやいているとのどかが不安そうに話しかけて来た。「夕映が近藤さんと結婚とかそういうのになる事は・・・・・・十四郎さんはどう思ってるんですか?」「決まってんだろ死ぬほどイヤだ、あのガキが姐さんになるとか想像もしたくねえ」「やっぱり・・・・・・・」煙を吐き散らしながらキッパリと言う土方にのどかはガックリ肩を下ろす。すると土方はそんな彼女にボソッと話を続けた。「だが結局は全て近藤さんが決める事だ、俺はそれがどうなろうとあの人についていく」「え? じゃあ夕映が近藤さんの奥さんになっても・・・・・・」「・・・・・・あの人がそうするなら腹をくくるさ、隊士達も俺がなんとかする」「本当ですかッ!? よかったぁ・・・・・・・」一応土方は夕映が本気で近藤を慕っているのは理解しているので、もし近藤がそう選ぶのであれば夕映の嫁入りを認めると言ってくれた。のどかはそれに安堵と嬉しさが込もった声を上げる。だが土方は彼女に聞こえないようそっぽを向いて小さく呟いた。「だが総悟は絶対に無理だ・・・・・・」タバコを携帯灰皿にしまいながら土方はやれやれと首を横に振る。「この問題は俺でも一筋縄じゃいかねえな・・・・・・」数々の課題を持ち抱えたまま真撰組は故郷である江戸へと銀時達と共に帰還する間もなく出発、そして別れの時だ。