とある田舎のとある小さな村の中にある一つの屋敷。その屋敷の中では様々な種類の子供達が共に学問を学び勉学に励んでいた。しかしある時、その屋敷で子供達に学問を教えていた先生が風邪で寝込んでしまったのだ。すると彼の教え子である三人の少年がある物を持ってきて彼の寝ている部屋に上がり込んで来たのである。「これを私の為に?」布団から半身を起こしてまだ若いであろう男性の先生の問いかけに、彼の目の前に座る三人の子供の二人は強く頷き、一人はプイッと顔を逸らした。男が手に持っているのは泥だらけのひと束ほどの小さな薬草。三人の少年の来ている服に草やらクモの巣やら泥がついている所から見て、どうやらわざわざ山の奥から風邪に効く薬草を子供達だけで採ってきたようだ。それに気付いた若い先生はニコッと三人に笑いかけた。「ありがとう、あなた達のおかげで私の風邪もすぐに治りそうです」「先生ッ! 風邪なんかさっさと治してくれよッ! 先生の授業がねえとつまんねえんだよ俺ッ!」「ええ、あなた達の為に一日でも早く治さなければいけないですしね」三人の中で一際元気そうな少年に言われて男性が頬笑みを浮かべながら頷いた。するとその少年の隣にいた長髪を一つに束ねて礼儀正しそうなもう一人の少年はブスっとした表情で彼に横目を向ける。「毎回ボケっとしながら先生の授業を聞いているお前が何を言っているんだ」「うるせえなッ! 俺はああいう状態でもちゃんと聞いてるんだよッ! お前みたいにバカみたいに礼儀正しく聞かなくてもちゃんと先生の言っている事は頭に入れてんだッ!」「フン、どうだかな」「んだとッ!」「全くお前はすぐに頭に血が昇るな、だからお前は背が低いのだ」「いや背は関係ねえだろうがッ!」「ハハハハ、二人はいつも喧嘩していますね、悪い事では無いのですがほどほどにお願いします」尊敬する先生である男に咎められると二人は渋々睨み合いながら座り直す。そんな彼等を見て男はニコッとほほ笑むと、二人からほんのちょっぴり離れて端っこで座っている一人の少年の方を見た。二人とは距離を取っている様に座ってそっぽを向くボサボサした銀髪の少年。両手には大事そうに子供には重いであろう一本の刀が握られている。男は笑いかけながらその少年の頭に手を伸ばして髪がクシャクシャになるぐらい撫でて上げた。「君も彼等と一緒に山へ行ったんですか」「・・・・・・」「そいつさぁ、なんか知らねえけど、俺達が先生の為に薬草採りに行くって言ったら勝手に俺達の後をついてきたんだよ、俺達が何を言っても無視するしなんか愛想がねえっつうか」「背の低いお前にきっと警戒していたのだろう」「だから背は関係ねえだろッ! どこまで俺のコンプレックスに蹴りいれてくるつもりだテメェはッ!」また怒りだす少年を冷静に受け流す少年に見守る様に目をやった後、男は銀髪の少年の頭から手を下ろす。「この二人と一緒に夜中まで山へ登っていってどんな気持ちでしたか?」「・・・・・・」「あなたが初めて、自分と同年代の子と仲良く出来たんですね」「・・・・・・」男に何を言われても少年はそっぽを向いて目を合わせようとしない。だが男はそれに怒りもせずに悲しみもせずに優しく微笑むだけ。しばらくして銀髪の少年は三人を置いて何も言わずに刀を持ったまま部屋を出て行ってしまった。残された二人の少年は立ち去る少年の背中に目をやる。「なんだアイツ、先生に何も言わずに行っちまいやがって」「きっと背が低いお前と一緒の部屋にいるのがイヤなんだろ」「おい、大人になったらいつかお前を見下せるぐらいデカくなってやるからな・・・・・・」何度も似た様な嫌味を言ってくるのでわんぱくそうな少年は長髪の少年を見て額に青筋を立てていると、男はそんな二人に向かって口を開いた。「あなた達にお願いがあるんですけどいいですか?」「なんでしょうか?」「俺先生の頼みならなんでも聞くけどッ!?」片方は正座したまま礼儀良く、片方は立ち上がってはしゃいでいる姿に、男は頬笑みを浮かべたままそのお願いを言った。「今後もあの子と仲良くしてくれませんか?」「さっきの銀色の髪の子ですか?」「え~、アイツすっげぇ愛想悪いんだよなぁ、何考えてるかわかんねえし、子供のクセに刀持ってやがるし」「お前、先生の頼みならなんでも聞くと言っただろ」「ていうか俺、コイツとも友達じゃねえし~」「俺だってお前なんか友達などと思っていない」またもや口喧嘩を始め出した二人に男はクスクスと笑った後。両手を伸ばして、二人の肩にポンと手を置いた。「あの子はまだここに来てまだ間もない、ですから彼にここの事を色々と教えて上げてやって下さい」「わかりました」「お前は気真面目だな~、ま、先生の頼みなら仕方ねえか」「ありがとう」コクリと縦に頷く少年に横目を向けた後、もう一人も不服ながらもとりあえず承諾してくれた。男は二人に礼を言うと突然布団から出て立ち上がる。「では、私はちょっと用があるので」「先生ッ! お身体は大丈夫なのですかッ!?」「そうだよ先生ッ! 風邪は寝ねえと治んねえぞッ!」部屋から出ようとする男に二人の少年は慌てて声をかける。だが男は二人の方振り返って優しく一言。「用が終わったらすぐに戻ってきますよ」銀髪の少年は一人刀を大事そうに持ったまま、屋敷の庭の前で腰かけてボーっとしていた。茂みから聞こえるフクロウの声や鈴虫の音を耳に入れながら、少年はなんの目的も無くそこにいた。だが彼の背後からスーッと近づいてくる何者かの気配が「ここにいたんですね」呼びかけられた声が聞こえたので少年はパッと後ろに振り返る。そこには探し物を見つけた子供の様に笑っているあの男の姿が「隣? いいですか?」「・・・・・・」男の問いかけにやはり少年は無言で背中を見せるだけ。だが男はそれに構わず彼の隣に腰かけた。「人は独りで生きて行く事はとてもツラく、哀しい。君がそれをその年で既に体験している」「・・・・・・」「出会いというのは時に残酷な未来へ辿る結果になる可能性もあります。だからって己の周りに壁を作る事は私はお薦めしない。時に人との出会いには一生の幸福になる場合だってあるのですから」「・・・・・・」「あの二人と君が将来どんな道を歩んでいくのか誰もわかりませんが。人生というのは長いようで短い、君自身彼等に一歩だけでも歩んでみなさい。一人で生きて行く事しか出来なかったあなたには見えなかったモノが見える筈ですから」少年は隣で語りかけて来る男の方を向いて無言で聞いていた。しかし突然「どんな道を歩んでいくのか誰もわからない? 私は知っているぞ、その男達の未来とやらを」「!!」目の前にある庭の奥の茂みの中から聞いた事のない少女の声が聞こえた。銀髪の少年は目を見開いて驚いた様子でそちらに目をやる。男の方は全く動じずに少年の見る方向に笑いかけた。「こんな夜中に誰が迷い込んで来たのですか?」「迷ってなどおらんわ」大人びた口調で少女はそう言うとガサゴソと音を立てながら茂みの中から出て来た。髪は美しいと思えるほどの綺麗な長い金色、そしてこの辺では見かけた事のない服装をしているまだ小さな少女だ。「・・・・・・これはこれは、もののけのたぐいか何かですかな?」「別に私の事をどう思おうとも構わんよ、だが安心しろ、私はお前等に危害を加えるつもりなど毛頭ない。だからそこにいるチビッ子、刀を抜こうとするのを止めろ」「・・・・・・」庭に下りて持っている刀を鞘から抜こうとする少年に、少女は指差して言葉を投げかける。少年は額に汗を垂らしながら用心深そうに刀を鞘にしまい戻した。「これがチビッ子の時の“アイツ”か・・・・・・てことはお前はコイツに勉学を教えていた先生とやらか?」「一応その身ですが」「ふ~ん」男に質問した後、少女は少年の方に近づいてジロジロと眺める。少年は手に持っている刀をいつでも抜ける様に構えながら彼女に警戒の視線を送る。だが少女は一瞬にして彼の眼前に立ち「お前のファーストチュー貰うぞ」「!!」フッと消えた途端いきなり目の前に現れた事に慌てさせる隙も与えずに少女は強引に少年の唇に自分の唇を押し当てた。「フハハハハ、も~らったも~らった」「!!」何故少女が嬉しそうにしているのかわからずに、少年は一気に顔面を真っ赤にさせ、慌てて屋敷の中へ上がり、すぐに男の背中に隠れた。男は赤面している少年と喜んでいる少女の方へ目をやりながら愉快そうに笑みを浮かべる。「もののけはこの子をからかいに来たのですか?」「いや違うぞ、私はただそのガキとお前を見に来ただけだ。お前等の知らないそれは遠い遠い未来からな」「未来、ですか」未来から来たと名乗る少女に男は笑みを浮かべるだけで全く動じようもしない。「まさか遠い未来からお客さんが来るとは思いもしませんでした」「ん? 疑わんのか?」「疑う理由などありませんからね」「面白い奴だなお前、いや変わっているというべきか」男の返しに少女はケラケラと笑った後、彼の方へ顔を上げる。「で? 知りたいと思わんのか?」「何をです?」「未来をだ、私はそこのガキ、ここにいるであろう二人のガキの未来も知っている。どういう未来になるか教えてやろうか?」「結構ですよ」「答えるの速いなッ!」即答で凄い暴露話を断る男に少女は思わずツッコミを入れてしまう。男はそんな未来から来た彼女に口を開いた。「生憎私には必要のない事ですから、この子達にも」「・・・・・・未来が分かればもしかしたら今後起きるかもしれない事を変えれるかもしれんのだぞ?」「だからこそ聞かないんですよ」「どうしてだ」問いかけてくる少女に、男は自分の背中に身を潜めている少年の後ろ襟を掴んで自分の隣にポンと置いた。「この子が将来どうなるかを今知ってしまったら、面白くないでしょう」「あ・・・・・・」「あなたの言う遠い未来でこの子達がどうなるのかは、私は私の目で見ておきたいんです」「・・・・・・」慈愛に満ちた表情で銀髪の少年の頭を優しく撫でて上げている男を見て少女は悲しそうな表情でうつむく。まるでこれから先の出来事で彼に何が起こるのかを知っているかのように・・・・・・「・・・・・・本当にそれでいいのなら、私はもう何も言わん・・・・・・だが去る前にちょっといいか」「どうぞ」「いや何をやるかぐらい聞けッ! お前には警戒心とかそういうのは無いのか全く・・・・・・」何も聞かずにすぐに承諾する男に少女は叫んだ後、彼の隣にいる少年に近づいていく。少年は黙ったまま目をキッとさせて彼女を睨みつけるが、少女はそんな少年の表情を見てフッと笑った。「私はお前の敵になるなど決してない」「・・・・・・」「私はお前の、お前の血を引く者の一生の護り人だ」「・・・・・・」何を言っているのかは理解出来なかったが、そう優しく語りかけてくる少女の目を見ると次第に警戒心は失っていった。少女は彼の両手を取りしげしげと眺める。「ちっちゃな手だな・・・・・・」「・・・・・・」「お前はいつかこの手で多くの人々を護り抜けれる様な男になれ、例えどんな目に遭おうとも自分の魂だけは裏切らない侍にな」「・・・・・・」「約束だぞ、いいな?」少女の言う約束に少年はぎこちなく小さく縦に頷く。すると少女は悲しそうな目を浮かべたまま彼をひしっと抱きしめた。「きっとお前は私との出会いなど忘れてしまうだろうな・・・・・・この先に待っている出来事の方がお前にとって根強く残るんだから」「・・・・・・」「オイ、コイツの先生。記憶を飛ばすのは勘弁してやるから私とここで出会った事は忘れろ、いいな」「ええ、この出来事は私の胸の中で閉まって置く事にしますよ、ですがこの子が大人になったら話しても構いませんよね?」「・・・・・・ああ」男は頬笑みながら頷くと、少女はそんな彼を見て思わず目を潤ませる。そして一層強く少年を強く抱きしめた。「何があろうとも、私の力も心も愛も・・・・・・全部お前のモノだからな・・・・・銀時」第七十五訓 その契りは永遠に銀時は深い眠りからようやく目をパチッと覚ました。何時の間にか布団の上で目の前には木造りの天井、きっとここは近衛家の屋敷の中であろう。窓からは月の光が降り注いでいる、さっきまで太陽が昇っていたのにもう月が。どうやら山の頂から眠っている自分を誰かがここまで連れて来たらしい。(半日も寝てたのか俺・・・・・・それにしてもさっきの夢・・・・・・・あれ? 思い出せねえ? 確か昔あった事だったような気がすんだけどな・・・・・・ん?)さっきまで見ていた夢を思いだそうとするがやはり思い出せない。仕方なく銀時は諦めると、自らの体重に乗せられる圧迫感、謎の重圧が自分に襲いかかっている事に気付く。しかも、突然その体に乗せられている重圧が、モソモソと“動いた”「?」体に乗っかるその重みが自分の体の上で動いている事に銀時は疑問を感じる。そしておもむろに寝たまま両手を布団の中に入れて、自分にのしかかっている“何か”を触ってみた。「んあ・・・・・・そこダメ・・・・・・・」弾力感のある柔らかいソフトボールぐらいの球体が二つ体の上に乗っかっている。そこから気持ちよさそうに女性が声を上げたが、まだ寝ぼけてる銀時は聞こえなかったようで、両手に掴んだソフトボールをプニプニと何度も触って一体これはなんだと確かめる。「・・・・・・マシュマロ?」「あうぅ、そんなに揉むなぁ・・・・・・ん」1分ぐらいそれを揉み尽くした後、銀時は手をそこから下に移動させる。「はぁぁぁ・・・・・・・」さっきからやたらと聞こえる喘ぎ声を銀時は「まだ夢の中?」と認識しながら体の上に乗っかるモノを手でまさぐり出す。「・・・・・・なんだコレ?」「はうッ! そこお尻・・・・・・ダメだそこは・・・・・・うんッ!」先程両手に掴んだ二つのマシュマロソフトボールとは違う弾力を持つモノ。銀時はその不思議な柔らかさに寝ぼけたまま両手で少し強く掴んだ。すると「あああッ!」「ん?」「お尻ダメぇッ! そんなに強く掴んじゃダメぇッ!!」「あ、すんません・・・・・・え?」布団の中から聞こえた女性の大声で、銀時は初めて布団の中に人がいる事に気付いた。虚ろな目で銀時は恐る恐る布団の中を覗いてみると・・・・・・「お尻を強く揉むな、変な声が出ちゃうだろ・・・・・・・こういうのは初めてなんだからもっと優しくしろ・・・・・・」「・・・・・・」長い髪を乱した金髪の女性が、露出度の高い漆黒のドレスで自分の上に乗っかってこちらに向かって目をトロンとさせていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「のわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」重りの正体がこの女性だとわかった途端、我に返った銀時は布団の中から滑るように脱出。そのまま後ろにあったタンスにゴンと頭を打って悶絶する。「イテテテテ・・・・・・」「何やってんだ銀時?」「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」布団からのそっと出て来た女性が近づいてきたので銀時は頭の痛みを堪えながら這いずりながら部屋の隅っこに逃げる。起きたら何時の間にか布団の中にいた見知らぬ女性。銀時が驚くのも無理は無い。「だ、誰だテメェェェェェェェ!!! どうやって俺の布団の中に忍びこんだッ!」「忍びこんだわけじゃないぞ、お前をこの部屋まで連れて来たのは私だ。最初からお前と私は一緒に添い寝をしていたのだ」「・・・・・・え? ああ~そうか・・・・・・もしかしてそういうアレ?」「へ?」不敵な笑みを浮かべながら女性が説明をすると、銀時は頭の中で一つの結論が出たと手をポンと叩く。「ここの屋敷の主人が大活躍した銀さんの為にご褒美として・・・・・・・あ~そうですかはいはい」「何を言っているのだ貴様・・・・・・・?」「で? 延長は何時間までいいの? アレだよね? 金はもうここの主人に貰っているとかそういうアレだよね?」「なんだアレって・・・・・・? それに延長ってなんだ? そんなモン私は知ら・・・・・わッ!」あっという間に元に戻った銀時は何時もの死んだ魚の様な目で女性に近づいて、彼女の両肩を掴んでマジマジと顔を眺める。「あれ? おねえちゃんスッゲー美人じゃない? 俺って見た目こんなんだけど実は教師やっててさ? 同僚でしずな先生っていう人がいるんだけど、お前その人と互角に渡り合えるぐらいべっぴんだよ? 俺のストライクゾーンド真ん中だよ?」「え・・・・・・お、お前がそんなに褒めてくれるなんて・・・・・・・きゃッ!」赤面させて嬉しそうな声を上げる女性を褒めちぎった後、銀時は力づくで彼女を布団に押し倒す。この後、銀時が自分に何をやるのかと想像して、思わず女性は心臓を激しく鳴らして息を荒げる。「俺、ドSなんで~、なんかこうあんな事こんな事大変な目にあわせちゃうけどいい? ねえちゃんに新しい世界を見せる事になっちゃうけどいい?」「・・・・・・うん」恥ずかしそうに頷く女性の顔に銀時はグイッと自分の顔を近づける。「いいよね? これ全年齢板だけど、もう最終回の一歩手前だからこういうサービスシーンもいいよね?」「・・・・・・うん、うん」コクコクと何度も頷く女性を押し倒したまま銀時はおもむろに彼女の豊満な胸に手を伸ばしてムニュっと強く握る。「き、来て・・・・・・・」意味深な会話を交えながら銀時は目を光らせて獣の如く女性にまたがろうとした。だがその直前、銀時の背中にあった部屋の襖が突然乱暴にピシャっと開かれる。「銀八ッ! 起きたのかッ!・・・・・・っておいまたかよ勘弁してくれよ本当・・・・・・・」「・・・・・・え?」「・・・・・・ん?」「何してんだよお前・・・・・・」襖を開けた音と聞いた事のある声を聞いて銀時は女性を押し倒したまま恐る恐る後ろに振り返る。長谷川千雨が額に青筋を浮かべながら腰に手を置いて怒りに震えていた。「オイィィィィィ!! またお約束のパターンかよッ!」「“銀八先生”は毎度毎度こういうシチューションに飽きないんですねぇ、いい加減にしてもらえます?」「い、いや敬語は止めてくれない千雨ちゃん、なんかこう殺気みたいなものを感じるからさ・・・・・・」明らかに怒っている目つきで睨んで来る千雨に銀時は慌てふためた様子で手を激しく振って見せる。「こ、これは仕方ねえってッ! だってこのねーちゃんは俺へのご褒美として屋敷の主人が・・・・・・!」「はぁ? 何言ってんだよお前?」「え?」呆れた目つきに変わった千雨は顎で銀時が先程押し倒した女性を顎でしゃくる。「それ、エヴァだぞ?」「・・・・・・ワッツ?」一瞬千雨が何を言っているのか理解できなかった。銀時はふと荒い息を吐きながら横たわる金髪美人を今度はじっくりと観察する。そういえば前にエヴァの夢の中へ行った時・・・・・・・「え? ウソだろオイ・・・・・・ウソだと言ってくれよ」「何を言っているのだ・・・・・・私は正真正銘・・・・・・へくちッ!」呆然とした表情を浮かべる銀時に女性は首を傾げた後、大きな音を立ててくしゃみ。その瞬間、ボンと音を立てて女性の姿は一瞬にして・・・・・・・「う~~、久しぶりにやった幻術が解けてしまった・・・・・・・お前をここまで運ぶまでずっと持続していたからな」「・・・・・・」先程までのスタイル抜群の美女は消えてそこにいるのは鼻をすするちっこい金髪の女の子。それを見た銀時は口をあんぐりと開けて絶句の表情を浮かべる。「チェ・・・・・・チェ・・・・・・」「ん? どうしたのだ銀時?」体全身を震わせている銀時にエヴァはキョトンとしながら首を傾げる。すると銀時はすぐに後ろに振り返って。「チェェェェェェンジッ!!! 孔明の罠に騙されたからチェェェェェンジッ!!」「なんでだぁぁぁぁぁぁ!!!」急にさっきとは打って変わった態度を取る銀時にエヴァは立ち上がって怒鳴る。そして千雨はこちらに向かって叫んで来た銀時にブスっとした表情で腕を組みながら「申し訳ませんがお客様、こちらのお店では一度指名した女の子はチェンジできません」「何言ってんだコラァッ! さっきまでここにあった『ダブルマシュマロン』が『まな板』にチェンジしてるじゃねえかッ! 客の意見も聞かずにチェンジするとかぼったくりだろうがッ!」「なんだまな板ってッ! もしかして私のおっぱいの事言ってるのかッ!」こちらを指差して千雨に叫んでいる銀時に向かってエヴァはムッとした表情で食ってかかると、銀時はブチ切れた様子で振り返り「ったりめえだろうがまな板娘ッ! 俺はダブルマシュマロンを指名したんだよッ! まな板はキッチンに帰れッ!!」「そんなッ! 本当の私よりお前は幻術で変化した私の方がいいのか・・・・・・?」「そうだよボケ、お前の幼児体型なんて見てたら逆に冷めるだけ・・・・・・いッ!!」「う・・・・・・グス・・・・・・・うう・・・・・・・」思わず強く突き飛ばしてしまった事に後悔してももう遅い。銀時の一言でエヴァは鼻をすすって目からポロポロと滴を落としていた。「お前の前で幻術なんて使うんじゃなかった・・・・・・さっきあんなに私の事を褒めていたのは全部幻術状態の私の事だけだったんだな・・・・・・正体が私だと知った瞬間手のひら返して」「そ、それはその・・・・・・・・」「嬉しかったのに・・・・・・初めてあんなに褒めてくれたから凄い嬉しかったのに・・・・・・」嗚咽を繰り返しながら涙で顔をぐしゃぐしゃにするエヴァに銀時はあたふたした様子で何て言おうか迷っている。だがそこに千雨が冷たく一言「あ~あ、泣かしてやんの」「うるせぇぇぇぇぇぇ!! もう限界だッ! おいチビいい加減にしろよッ! 自分では悪の魔法使いだ600年も生きた吸血鬼だとか散々言ってるくせにちょっと言っただけでいつもピーピーピーピー泣きやがってッ! 長生きしていても精神年齢はずっとガキのまんまじゃねえかッ! だからテメェはいつまで経ってもナメられるんだよッ! だからテメェはいつまで経っても泣き虫チビなんだよッ!!」遂に堪忍袋の緒が切れた銀時がエヴァに向かって怒鳴りつけるが、一瞬エヴァは泣くのを止めた後大声で「うわぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!」「泣いたッ! 本格的に泣いたッ! もうヤダこの子どうにかしてッ! 銀さんもう限界ッ!」「知らねえよお前が撒いた種だろうが、責任はちゃんと取れ」両耳を押さえて天井に向かって叫ぶ銀時に千雨は冷淡な口調で突き返す。しょうがなしに銀時は渋々泣き叫ぶエヴァの両肩を持って「もう泣きやんでくれよおチビちゃん頼むから・・・・・・お前を傷付けた事は謝るからさ・・・・・・」「クスンクスン・・・・・・チュー・・・・・・」「へ?」「チューしてくれたら許す・・・・・・」「・・・・・・」何言ってんだこのガキ、という様な視線を涙で顔を濡らすエヴァにぶつける銀時。だがコレ以上泣かれると泣き声に気付いて千雨以外の人達もこっちに来る可能性はある。銀時はしばらく頭の中で葛藤した後、チラッと千雨の方に目をやった。明らかに気を遣っている様子で彼女はこちらにそっぽを向いている。「・・・・・・ハァ~」「銀時ぃ・・・・・・・」「・・・・・・わかった、神威の件の礼もまだだったしな」腹をくくったのか銀時はエヴァの両肩を掴んだまま顔を近づけていく。「別にお前となら・・・・・・これぐらいどうって事ねえよ」「それも幻術状態の私に言ってるのか・・・・・・?」「バカ、泣き虫チビのお前に決まってんだろ」「んッ!」ウルウルした目で不安そうに言うエヴァにぶっきらぼうに返すと共に銀時は自分から彼女の唇を奪った。いきなりの行動にエヴァは驚くがすぐに彼の唇の感触に目をウットリとさせて幸せな気持ちに。この時間が永遠に続いたら・・・・・・・そんな事考えながらエヴァは銀時との接吻に夢中になっていると・・・・・・「あ、ヤバッ!」「あら千雨さん、銀さん起きてますか? この4人がどうしても銀さんと話し合う事があると・・・・・・」「起きたか銀時、ちょっとお前の小耳に挟まなければいけない情報が・・・・・・・」「アハハハッ! 銀時ッ! わし等元の世界に帰れ・・・・・・」「おい天パ侍、起きるの遅えんだよハハハハ・・・・・・・」「銀時、お主には色々と礼を・・・・・・・」「!!」焦った声を千雨が上げた瞬間、あやかと桂、坂本、ナギ、アリカがゾロゾロと部屋にやってきてしまった。5人は部屋の中の光景を見てフリーズしたように固まる。銀時が小さな少女を抱きしめて熱烈な接吻を施していたのだ。やってきた客人に気付いたエヴァは慌てて彼から唇を離す。「銀時ッ! 後ろッ!」「は? なにその志村後ろみたいな?」「いいから後ろだッ!」「なんだよったく・・・・・・・」まだ後ろにいるメンバーに気付いていない銀時にエヴァは指差して叫ぶんだ。訳のわからない様子で銀時は後ろに振り返ると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」あやかはともかく最も見て欲しくなった一同がその場に立っていた。銀時は雄叫びを上げてバンザイポーズで驚く。だが桂達は冷静に「・・・・・・銀時、実は高杉についての情報なのだが」「・・・・・・銀時、おまんは帰るんか? ここに残るんか?」「・・・・・・姫さん今何時?」「・・・・・・午後10時半じゃ」「オイィィィィィ!!! 何私達見てませんよ的な空気かもし出してんだコラァァァァァ!!!」ぎこちない態度を取りながらもあくまで自然に振舞ってくれるメンバーに銀時は立ち上がって咆哮を上げる。「いつもみたいに俺を罵ればいいじゃねえかッ! 大丈夫だよ俺慣れてるからッ! こういうハプニングTOLOVEるはこの世界に来てからもう結構な数で経験してるんだからさぁッ! ほら言えよッ! ロリコンだとか幼女趣味だったとかッ!」その場にいる人達にもはやヤケクソ状態の銀時。だがそれを聞いても桂と坂本はクイッと親指を立てて「お前が例えどんな人間であろうとお前は俺の友だッ!」「銀時ッ! わしぁあおまんのそういう事含めて好きになっちゃるきんッ!」「止めろぉぉぉぉぉぉ!!! お前等のそんな優しさなんかいらねぇぇぇぇぇぇ!!!」 銀時の訴えが屋敷の中に大きく響き渡るのであった。 「そうか、高杉の奴はもうどっかいっちまったのか」落ち着いた銀時は今、屋敷の外で待っている真撰組やネギや生徒達の所へ行く為にメンバー達と一緒に廊下を歩いていた。そこで彼は桂から高杉はもうここにはいないと聞く。「アリカ殿とお前の所の三人組がそう言っていた、なんでも赤髪の少女を連れていずこへ消えたと・・・・・・全くお前といい高杉といい・・・・・・」「おい、俺はもうロリコンでもなんでもいいけどあいつだけは許してやってくれよ」「む? 俺は何も言っておらんぞ、俺はお前の趣味は頭でちゃんと理解しているつもりだ」「いやだから、俺はロリコンなんだよ、お前等がドン引きするぐらいロリコンなんだよ。もう俺悟ったわ、今度から自認するよロリコンを」髪を掻き毟りながら自暴自棄に陥っている銀時に、隣にいる桂は強い眼差しで訴える。「自分を責めるな銀時、俺はお前を知っているぞ。例えどれだけ見た目が汚れようと、中身は“まごう事なき美しい魂を持った侍”だと」「いいよもう俺は、自分の事は自分が一番わかってるから。中学生三人と三股して、その上その中のロリチビと隠れて変な事してる“まごう事なき変態の侍”なんだ」「大切なのはその者を愛する気持ちだ、そう俺がアリカ殿を愛するように。それだけで十分なのだ」「おいウザったい長髪したバカ、人のカミさんに何考えてんだコラ」どさくさに自分の趣向をバラした桂に、後ろにいたナギが睨みつける。桂は廊下を歩きながら彼の方へ振り返り「夫が前に立ち塞がろうと俺は己の愛の為に斬り伏せるのみだ」「そうか、じゃあここでいっちょやるか? その長髪を全部切ってクリリンにすっぞ?」「やめろナギ、相手にするなコイツは」喧嘩腰に入ったナギに隣にいるアリカがポンと彼の肩をたたく。すると桂はフッと笑って「待っていろ、俺がすぐに新しい愛の形を教えてやる」「・・・・・・攘夷戦争参加者はみな変態になってしまうのか?」「アハハハッ! わしゃぁ普通じゃぞッ!」「貴様は見た目で既に卑猥物じゃ」 後ろで笑いながら話しかけてくる坂本にアリカは振り返らずに冷たく一言。そんな事言われても坂本は自分が言った事に更にゲラゲラ大笑い。「アハハハハッ! そうかわしゃぁチ○コと同列かッ! アハハハハハッ!」「オイコラァァァァ!!! 俺のカミさんの前でチ○コとか下ネタ使うなァァァァァ!! カミさんの前でチ○コ禁止だかんなッ!」「お前も言うてるではないか・・・・・・」軽蔑の眼差しで坂本に怒鳴っているナギにツッコんだ後、アリカは疲れた様にため息を突く。「・・・・・・『赤き翼』の連中に負けないぐらいの馬鹿共じゃな」「アルと“あのゴリラ”はともかく、俺もセットにするな、少なくとも俺は何処ぞの銀髪と違ってこんなロリババァと付き合おうだなんて思った事ハナっからねえ。悪いなエヴァ、俺はあん時からお前に興味なんてゼロだ」そう言ってナギは自分の後ろにいる女子三人組の中で一際小さいエヴァの方へ目をやる。腕を組んで歩いていたエヴァは不機嫌そうに鼻を鳴らして「悪いが私はもう過去に惚れたお前などとうに忘れているぞ、今私が見えているのは銀時だけだ」「そうかいそうかい、そりゃあすげえ良かった。あいつと末長く一生一緒にいろ。大丈夫だよお前等なら、お前が今惚れてる男は俺と違ってロリコンだから」「・・・・・・ふん、あ、そうだ」なんの未練も無さそうに手を振って助言してくるナギにエヴァは少しカチンと頭に来ると同時に一つ大切な事を思い出した。「そういえばナギ、早く私の呪いを解け。もう十分だろ」「あ~、登校地獄の呪いか・・・・・・」ナギはチラッと後ろに振り返る。エヴァを挟んであやかと千雨の三人で会話を始めていた。「さっきからエヴァさん、ナギさんと何かあったんですか?」「私は昔、アイツに惚れてた。そしてアイツに呪いをかけられた。それだけの関係だ」「あ~そういえばあの人、銀八と少し雰囲気似てるかもな」並行しながらあやかとエヴァと千雨がそんな会話をしていると、あやかは「ふ~ん」とエヴァを観察するように目をやる。「普段はぶっきらぼうなのにいざという時には優しくしてくれる、そんな殿方が好みのタイプなのですね、エヴァさんは」「人の好きなタイプを特定するな雪広あやか、ていうかお前と長谷川千雨だって銀時に惚れたんだからお前等もそういう事になるんだぞ」「私が好きなタイプは『銀さん』ですから。なんせ初めて恋をしたのは銀さんだけなので、それ以外の男に尻尾を振った事がありませんからわかりませんわ」ただ単に恋愛経験が無いだけのクセに自慢げに言うあやかにエヴァはキッと睨みつける。「銀時に会うまでは恋愛のれの字も知らなかったクセに・・・・・・」「でももう大体恋愛のコツは掴んでますから、実は私、銀さんとこの修学旅行中に二回キスしてますの」「フ、勝った。私はさっきのを入れて三回目だ」「なッ!」「フハハハハッ! 正直貴様の様なウブな女が銀時と二回もチュー出来たのは驚きだが、私に比べればお前などそんなモンよッ!」歩きながらガッツポーズを取るエヴァにあやかは物すごく悔しそうに拳を強く握りしめる。「くッ! こんなちっちゃくて子供思考でヘタレな泣き虫エヴァさんに負けるなんて・・・・・・人生最大の屈辱・・・・・・!」「ってどんだけ私の事を下に見ているのだ貴様ッ!」「いいだろうがよそんな事、誰が何回キスしただとかそんなモン」悔しがるあやかにエヴァが食ってかかろうとすると、千雨が冷静に彼女の肩を掴んで引きとめる。「くだらねえ事で勝負してんじゃねえよ」「くだらないとはなんだッ! 私があいつとチューするのにどれだけ覚悟を用いたか・・・・・・ん? そういえばお前は銀時とチューした事あるのか?」「ひゃッ!?」いきなりこっちの方に話を向けて来たエヴァに千雨は思わず声が裏返る。あやかも興味津津の様子で彼女の方へ振り向いた。「私も聞きたいですわねそれ、千雨さんっていつもは銀さんとガミガミ言い合いしてますけど。実は銀さんと二人っきりの時は物凄く深い関係になっていて・・・・・・」「もう腹に子供でもいるんじゃないか? 二人目が」「なわけねえだろッ! 己の妄想をフルパワーで駆け巡らせて勝手な事言うんじゃねえッ! お前等が考えてる関係に陥ってないし腹に子供もいねえよバカッ! つうか二人目ってもう一人生んでるって事じゃねえかッ! あるかそんなのッ!」ムキになった様な感じで二人の構想を即座に否定する千雨。恥ずかしくてこんな話さっさと終わらせたい。千雨はそんな事考えているがこのぐらいの年頃の女の子はこういう話は大好きだ。「へ~、でもキスぐらいはしてるんじゃないですか? 私とエヴァさんが出来たんですから千雨ならもうとっくにしててもおかしくないですわよね?」「へぁッ!? キ、キスッ!?」「・・・・・・さっきからなんですのその声・・・・・・・」「べ、別にッ!」変な声が出てしまった事に思わず顔を赤らめてそっぽを向く千雨。だがエヴァはニヤニヤしながら彼女を観察。「照れてるぞコイツ、ハハハ、意外と女の子みたいな所があるんだなお前」「うるせえよッ!」「そうですわよね、千雨さんが銀さんに告白した時の姿は本当に可愛くて可愛くて・・・・・・」「ほう、その時を話を詳しく知りたいな」「ふ、ふざけんなぁッ! いいんちょ絶対に言うんじゃねえぞッ! 言ったら絶交だからなッ!」必死に押し隠そうとする千雨の話に、エヴァはどんどん興味が湧いていく。「いいだろ減るモンじゃないし、私とお前の仲であろう?」「どうせこの先一緒にいたらこの人ずっと話を聞こうとしてきますわよ」「お前にしちゃあ話が分かってるではないか」「最悪・・・・・・」あやかが教えて上げると言いエヴァがそれにニヤリと笑っているのを見て、千雨はもはや泣きそうなレベルで落ち込み、うなだれた。そんな三人の姿を見た後、ナギは前に向き直る。「ああやって笑ってられるなら・・・・・・・」「問題ねえよあいつは」「ん?」ボソッと呟くナギに、前を歩いていた銀時が振り返らずに相槌を打った。「アイツは何が大事なのか何を護るべきなのかもうわかってる、アイツはもう二度と悪さなんかしねえさ」「・・・・・・そうか」「アイツにはダチもいるし俺もいる・・・・・・」前を向きながら銀時はフッと笑った。「お前がアイツに呪いをかけた理由はアイツに“大切な仲間って奴”を作ってやりたかったんだろ? なら安心しろ、この命続くまでアイツと一緒にいてやる、例えこの身が死んでも、俺のガキがチビの面倒を見てやるさ」エヴァを麻帆良学園に封じ込めた理由をなんとなく察していた銀時は手を振って大丈夫だとナギに言ってやる。するとナギは頭を掻き毟りながらため息を突く「・・・・・・信じていいのか?」最後の問いかけに銀時は口元に笑みを浮かべてナギの方に振り返った。「わかりきった事聞いてんじゃねえよバカ」「・・・・・・だな」「なんだお前ッ! てことは結局銀時とチューしていないのかッ!? 告白はしたのにかッ!?」「しつけえなッ! 物事には色々と順序があるんだよッ!」「多分お願いしてくれたらやってくれるんじゃないですか? あの人案外押されると弱いんですわよ?」「ハハハッ! じゃあ行って来い長谷川千雨ッ! さっさと銀時と初チューしてこいッ!」「で、出来るかァァァァァァ!! もうほっといてくれよ私の事はッ!」「そう言われると余計ほっとけなくなるな、いつか無理矢理にでもお前を銀時に前突き出してチューさせてやる」「ふざけんなぁッ!」後ろでまだ仲良くあやかと千雨と会話しているエヴァを見てナギは安心するように微笑んだ。「綺麗な光に巡り合えてよかったじゃねえか・・・・・・おいエヴァ」「あ? なんだナギ? 今取り込み中だ後にしろ」「まあそう言うなよ」嫌がる千雨の服の袖を引っ張っているエヴァにナギは突然その場に立ち止まり笑みを浮かべながら口を開いた。「お前の登校地獄の呪い、今から解いてやろうと思ってよ、どうせあっち行ったら別れの時間があるんだから今やっといた方がいいだろ?」「本当かッ!? ではさっさとやれッ! ほら早くッ! 」 「そう急かすなよ、え~と・・・・・・」呪いを解いてやると聞いてエヴァはその場でピョンピョン跳ね上がってはしゃいでいる。ナギはローブのポケットから小さな本、様々な術が書かれているアンチョコを取り出した。「解呪の仕方どこに書いてあんだ?」「ってお前、自分で呪いをかけたクセに治し方は覚えてねえのかよ」ペラペラとアンチョコをめくりながら解呪の方法をまさぐるナギに銀時がしかめっ面を浮かべると、彼は申し訳なさそうに頭をポリポリと掻き毟りる。「いや俺術とか覚えるの苦手だからさ、コイツないと基本攻撃呪文しか使えねえんだわ。まあ最悪ここに書いてあるもん全部エヴァにかけてみれば・・・・・・」「何考えてるんだ貴様ァァァァァ!!!」ボソッと危険な匂いを漂わせたナギにエヴァは両手を上げて怒鳴りつけていると桂と坂本、アリカはその場を後にして屋敷の外へ向かう為にまた歩き出す。「俺達は先へ行っている、用事が終わったらすぐに来るんだぞ」「陸奥とネカネさんを待たせ取るんじゃ、じゃあな銀時」「チビの呪いが解けたのを確認したら行くわ」「わらわもネギが待っておるんでな、ナギ、はよ終わらせるんじゃぞ」「あいあい、ちょっとぐらい手伝ってくれよ・・・・・・」立ち去る桂と坂本に手をブラブラと振った後、銀時は壁にもたれて腕を組み、ナギがエヴァの呪いを解いてくれるのを待つ姿勢に入った。そしてふと、残っているのは自分とナギとエヴァだけではなく、千雨やあやかもいる事に気付いた。「別にお前等はここに残らなくてもいいんだよ、終わったらすぐチビとコイツと一緒に行くから先に行って他のガキ共に会ってこい」「いえ、私は銀さんと一緒にここでエヴァさんの用事が済むのを待ちますわ」「私も、どうせお前ら以外の奴等と私が喋れる連中なんて朝倉ぐらいしかいねえし」自分と同じの様に壁にもたれて待機するらしいあやかと千雨。銀時はそんな二人に目をキリッとさせて厳しめな口調で喋る。「おいおい何悠長なこと言ってんだよ、もしかしたらチビがいきなり爆発するかもしれねえんだぞ? 目の前でダチがこっぱみじんになる光景なんて見たかねえだろ?」「エヴァさんなら体が四散しても再生すると私は信じてますわ」「そこから再生する光景だったら見たくねえな・・・・・・」「誰が爆発するかッ! 誰がッ! 私の爆発前提に語り合うのを止めろッ!」「虚無の魔法・・・・・・? かつて伝説のツンデレヒロインが覚えていたという必殺の・・・・・・・」「そしてお前は何を読んでるんだッ! 本当に爆破する気かッ!? それだけは私にやるなよッ! 絶対にやるなよッ!」不吉な話を始める三人に、何やら聞き覚えのある呪文を見つけて興味を持っているナギにエヴァは大声を上げてツッコむ。「お前等普段から私の事ナメ過ぎだろッ! 呪いが解けたら承知しないからなッ!」カンカンに怒っている様子のエヴァ、そんな彼女に近づいてポンと頭を撫でて上げながら銀時はだるそうに話しかける。「大丈夫だって、こいつ等も本心では一応お前の事を心配してるからここに残ってくれてんだよ」「・・・・・・本当か?」「「いや全然」」「オイッ!」ちょっと期待の込めた目を壁にもたれているあやかと千雨にエヴァは目を向けるが二人は同時に即答。これにはエヴァも少し傷付いた。「なんなんだアイツ等は・・・・・・この私を一体誰だと思っているのだ・・・・・・」「いいじゃねえかよ、本音で言い合えるダチなんてそう簡単に手に入るモンじゃねえぜ?」「・・・・・フン」頭を撫でてくれる銀時にそう言われて、エヴァは恥ずかしそうに顔をうつむきながら。彼だけに聞こえるぐらいの小さな声でボソッと呟いた。「お前と同様アイツ等も絶対に離さないからな・・・・・・」「・・・・・・あいよ」「呪いが解けたら・・・・・・もう悪さをするのはもう飽きたな、これからは私の力はお前に全部やる」そう呟くとエヴァは自分を撫でている銀時の手を両手で掴み、振り返って彼に向かって無邪気に子供っぽく笑いかける。「何があろうとも、私の力も心も愛も、全部お前のモノだからな銀時」