関西呪術協会の長の近衛詠春によってアーニャから無事に逃げれたネギ一行は、綺麗な川が流れているのが見える場所にある大きな岩の上で詠春を待つ為休憩をしていた。「いやはや大変でしたねぇ」一緒に休んでいるアスナと小太郎、尻尾を持って号泣しているカモにアルはニコッと笑う。「でもこれからもっと死にかけたり、トラウマが芽生える様な悲惨な事があるかもしれませんけど、一人も欠けずに無事に生き残りましょう」「不吉な事言わないでよ・・・・・・」爽やかスマイルで話しかけてくるアルにアスナは嫌そうな顔をする、この状況だと冗談には聞こえない。そんな彼にネギ達と同行していた小太郎が被っていた帽子を取って、髪を掻き毟りながら気になった事を尋ねた。「つうか何でお前がこんな所に来たんや? ヅラの奴はどうしたん?」「桂さんは近衛木乃香さんの護衛に行っています。私はというと元々本部で暇を持て余してたんですけど、近くでやけにおかしな魔力が発生していたので詠春と共にここに駆け付けたんです。すみません私じゃなくて桂さんが良かったですよね小太郎君は」「川に投げ込むぞアホンダラ・・・・・・」ボサボサになっている黒髪をかき乱しながら小太郎は、茶化してくるアルにしかめっ面を向ける。だが、ふと彼の方を向いていたアスナは目に入った“ある物”に気付いて、小太郎の頭部をジッと見た。犬の様な耳が二つぴょこんと出ている・・・・・・「何その耳・・・・・・? 犬耳のコスプレ?」「はい、これは私が小太郎君がの萌え度をより上昇させる為に画策した・・・・・・」「ちゃうわボケェッ! 生まれつき俺の耳やッ! 俺は『狗族』の血が流れてるからお前等普通の人間とは色々違うだけやッ!」アスナの問いかけに目を光らせてデマカセを口走るアルに小太郎はその耳を引っ張りながら吠える。それを聞くとアスナは「またか」と言っている様な目で彼の犬耳を眺める。「ウサギ(夜兎族)の次は犬(狗族)? なんかまどろこっしい種族が一杯いるのねぇ」「この世界や異世界では私達人間とは違う様々な種族がいますよ、特に魔法世界とか、ね? アスナさん?」「は? 私が行った事も無い世界の事を知ってるわけないでしょ、ていうか何で私の名前知ってるのよアンタ」「ははは、それにしても昔と違って随分とおてんぱ娘になられましたねぇ」「私はアンタみたいなホモと会った事無いわよ、変な奴・・・・・・・」意味深なセリフを吐くアルにアスナが不審者を見る目つきで視線をぶつける。だがアルはニコニコ笑いながら全く気にしていないようだ(・・・・・・星海坊主さんが今の彼女を見たらビックリするでしょうね)「それよりネエちゃん、あそこでボーっとしている子供先生を一人にさせといて平気なんか?」「別に飛びこもうとしてるわけんじゃないんだから大丈夫よきっと」小太郎の唐突な質問にアスナは頬杖を突きながらだるそうに答える。アスナ達の輪に入らず、一人で川辺に立って色々な事を思いつめているネギ。彼を遠くから眺めながらアスナはハァ~とため息をついた。「幼馴染と師匠が敵になってたんだもん、そりゃあの腹黒のガキだって悩むに決まってるでしょ・・・・・・」「姐さん、俺っちも今悩みに悩みまくってるんすよ・・・・・・」「あら、アンタ生きてたの?」「生きてるっすよッ! 勝手に死亡者として登録しないでくだせぇッ!」 今初めてその存在を知ったような口ぶりに、アスナの足元にいたカモは必死に叫ぶ。そして彼はおもむろに持っていた自分の尻尾を彼女に見せつける。アスナのせいで取れてしまったカモの大事な尻尾だ「それより姐さんこの尻尾ッ! どう責任取ってくれるんすかコレッ!? 俺っちの萌えアイテムが姉さんのせいでブチ切れたんッスよッ! 俺っち自身も姐さんにブチギレてるッスからねッ!?」「んなちっぽけな事で私に怒らないでよ、どうせ生えるでしょ」「いやトカゲじゃないんすからッ!」「しょうがないわね今度のりでくっつけて上げるわよ」「なんでのりッ!? せめてボンドとか接着剤にして下さいよッ!」カモの抗議にめんどくさそうにアスナが対応する。彼女はいい加減な態度を取るが、カモにとっては重要な大事件の様だ。一人と一匹でそんな事をしているとアーニャの足止め役をやっていた詠春がようやく戻って来た。「やあ、遅くなったね、あの子は意外にあっけなく引いたから問題ないよ。また来るかもしないが・・・・・・」「オジ様ッ!」若干疲れている様な顔をしながらやってきた詠春にアスナはキャラが変わったように明るく黄色い声を上げる。余談だが彼女の好みのタイプはカッコ良くて渋いおじさん系だ。「さて、これからどうしようか。まずは本部に戻ってそれから・・・・・・」「私と二人で京都をデートしましょうオジ様ッ!」「いやいやいや・・・・・・その選択肢は色々とマズイから遠慮させてもらうよ」いきなりすっ飛んだ事を言うアスナに詠春は困った顔で手を横に振る。その時、改めてアスナの姿を詠春は拝見した(しばらく見ない内に随分と大きくなられたな・・・・・・)「姐さんッ! デートより俺の尻尾・・・・・・・!」「・・・・・・あ?」「・・・・・・いえ今度のりでお願いします・・・・・・」(そして随分とキャラが変わられたな・・・・・・・)泣きそうなカモに思いっきりメンチを切っているアスナを見て詠春は心なしか寂しくなる。もう彼の知っている彼女は何処を探してもいないのだから「・・・・・・コホン、それよりアル、ネギ先生は何処にいるんだ?」「常盤台中学じゃないですか? もしくは上条君の所」「小太郎君」「あっちの川辺に立って考え事しとるで、俺が呼んでこようか?」「ああ、頼むよ」「私は自分のボケをスル―されるのが一番傷付くんですけど・・・・・・」自然に自分のボケを流された事に詠春に向けてアルは珍しくショックを受けた様な顔をする。無論、詠春はそれも無視したが川辺に立ってボーっとしているネギに小太郎が近づいてポンと彼の肩を叩いた。「ほら、行くで子供先生」「え? ああ・・・・・・うん」ぎこちない反応をして振り返るネギに小太郎は両手を後頭部に回しながらポツリと呟く。「・・・・・・やっぱ幼馴染と師匠が敵ちゅうのはツラいモンなんか?」「そうだね、それもあるけど・・・・・・」「・・・・・・母ちゃんの事か?」小太郎の問いかけに図星だと言う風にネギは小さく頷く。「母さんの事は顔も覚えていないんだけど、やっぱり一度でいいから会いたいと思ってた人だから・・・・・・」「会いたいねぇ・・・・・・・ならウジウジ悩む前にさっさと問題事全部終わらせて、母ちゃん探しに行った方がええんちゃう?」「ハハ・・・・・・そうだよね」「ほな、行こか」「・・・・・・うん」まだ半ば納得してない表情でネギは小太郎の背中についていく。(アーニャ、神威さん、母さん・・・・・・僕の知らない所で三人は何をしているんだろう・・・・・・ん?)暗い表情でネギが歩きながら考えているといきなり頭の中に知らない声が聞こえる。『悩む必要など無いだろ・・・・・・貴様はもう・・・・・・闇に囚われている者ではないか・・・・・・』「!!」聞いた事のない男性のしわがれた声が頭の中に入って来て、ネギはハッとした表情で頭をおさえて立ち止まる。声はすぐに聞こえなくなった。彼が立ち止まった事に気付いた小太郎はすぐに後ろに振り返る。「どうしたんや?」「いや・・・・・・ねえ、さっき変な声聞こえなかった?」「声? いや別に何も聞こえてへんけど?」「気のせいだったのかな・・・・・・ううん、ごめん気にしなくていいよ、多分僕疲れてるんだ」今日だけで色々と驚く出来事が一杯あったのでそのせいで疲れが溜まり、幻聴でも聞こえたのだとネギはそう解釈しながら小太郎と一緒にアスナ達の元へ向かう。体の奥底に眠る力の源と共に第五十二訓 闇と光は表裏一体ネギ達が本部の前で色々やっている頃、木乃香の護衛役をしている土方や刹那達、千雨と和美がシネマ村の中を必死に走っていた。「よりにもよってこんな時に来るんじゃねえよアイツ等・・・・・・・! さっきからずっと後ろから殺気を感じる」「お嬢様、大丈夫ですか?」「う、うんちょっと疲れてるけど大丈夫・・・・・・」メンバーの先頭を走っているのは真撰組ならぬ新撰組の格好をしている土方と刹那、そして着物姿の木乃香が刹那の手に引っ張られて何かに逃げるように走っている。そしてその少し後方は「なになにッ!? いきなりマラソン大会ッ!?」「はひゅ~・・・・・・! はひゅ~・・・・・・!」「ハ、ハルナッ! 夕映が今まで聞いたことない様な息吐いてるッ!」「げぇッ!」 土方達の後をついて行っているハルナ、夕映、のどかだが。夕映の方が苦しそうに変な息を吐いている。肉体系に自信のない彼女にとって慣れない格好で走り回る事は苦行に近い。「土方さん夕映が死にかけてるッ!」「そいつはいいニュースだ、安心しろ、葬式には行ってやる」「と、十四郎さんッ!」「はひゃ~・・・・・・あのマヨネーズバカは絶対近藤さんに頼んで島流しにしてやるです・・・・・・」友人がピンチなのにクールな表情で振り返って縁起でも無い事を言う土方にのどかがビックリして叫んでる中、隣で必死に走っている夕映は恨めしそうにつぶやいた。一方夕映達の後方にはまだ別の生徒と男が追走している。「なんで私達銀八といいんちょの後をつけようとしてたのに、着物姿でシネマ村を走ってるんだ・・・・・・?」透き通った銀色の着物を着ている千雨が荒い息を吐きながら走っている。隣には江戸時代の賭場で見かける様な着物を着た和美がニンマリと彼女に笑いかけて「千雨ちゃん似合ってるよ着物姿、きっと銀さんイチコロ、いやニコロはいくよ」「こんな時にわけのわかんねえボケ入れるな、ツッコミきれん・・・・・・」「オラオラさっさと速く走れよ万事屋二代目メガネ、早くしねえと敵に追いつかれるだろうが」「イタッ! ったくなんなんだよアンタはッ!」二人が喋っていると後ろから沖田が千雨の背中に向かって鞘に収まった刀でしつこく突いてくる。彼女が振りかえって抗議すると沖田はしれっとした表情で「敵さんがやって来てんだよ、奴さんの狙いはあの小娘、その周りの戦力になる連中は当然駆除対象・・・・・・旦那のほうは大丈夫かねぇ」「はぁ? 何が何だかサッパリわかんないんだけど?」沖田の説明を聞いても理解できていないような反応をする和美。だが彼女と一緒にその話を聞いていた千雨はハッと思い出す銀時をつけ狙っていた金髪の女・・・・・・・「銀八が危ねえ・・・・・・!」「ちょッ! 千雨ちゃん待ってよッ!」「銀八ッ!」「あ~もうッ! 私の知らない所で何があったんだか・・・・・・落ち着いたら全部教えてよねッ!」慌てて土方達のパーティーから抜けて横へと走り、銀時を探しに行ってしまう。和美も驚きながらも彼女について行く。。「騒がしいガキ共だぜ、全く・・・・・・ん?」走って行く千雨達の方に顔を向けながらだるそうに沖田が走っていると、突然誰かに当たった感触がする。ふと前を見ると前方で困ったようにしているハルナが立っていた。「おい、何止まってんだよ、ケツに刀ぶっ刺されてえのかコラ」「いや進むも何も・・・・・・・土方さん達が急に橋の前で立ち止まって・・・・・・」「あん?」ハルナが指差した方向に沖田は視線を泳がすと、そこには神妙な面持ちで橋の真ん中につっ立ている人物を睨んでいる土方と刹那の姿が。木乃香はというと彼等を心配そうに後ろから見守っている。三人の態度を見て何かあったのかと沖田は土方の方へ駆けて行く。「ミッ○ーさん何かあったんですかぃ? もしかしてサン○オのキテ○の野郎が喧嘩を売りに?」「ミッ○ー言うな・・・・・・総悟、刀をいつでも出せるよう準備しとけ」「・・・・・・敵です」「ん?」土方と刹那が見てる先には橋の上で楽しげにこちらに手を振るメガネをかけた女の子が「こんちにわ~木乃香お嬢様を奪いに来ました月詠どす~~、おおきに~~」「あの小っこいガキが敵ですかぃ・・・・・・」「そうだ」手を振ってくる敵の一人である月詠に沖田はしかめっ面を浮かべる。見た目はまだ小さな少女、あれが敵だとういうのか・・・・・・・?「・・・・・・なんか拍子抜けですぜ、もうちっと歯ごたえのありそうな奴が相手だと思ってたんですけど」「見かけに騙されるな総悟、あのガキの剣の腕は確かだ、俺でもてこずる相手だ」タバコに火を付けながら説明する土方に沖田は少し意外だと言う風に頷く「へ~ミッ○ーさんがそこまで言いますかい」「・・・・・・お前どんだけ『DR』に喧嘩売りてえんだ?」「土方さん、ここは私が出ましょうか?」沖田に向かってタバコの煙を吐きながら土方がツッコんでいると、刹那が真剣な表情で彼の前に出る。だが土方はフ~と口から煙を吐いた後。「お前はこのガキ守っとけ、あいつは俺がやる」「わかりました、私はお嬢様と一緒に何処隠れる事が出来る場所へ」刹那に自分が行くと主張した後、土方は腰に差す刀を握って橋の真ん中に待つ月詠の所へ行こうとする。だが「待ってくだせえミッ○ーマウス」「どうした総悟ていうか止めろそれ、そろそろマジで恐くなってきた」「ここは俺にやらして貰えませんかね?」「何?」仏頂面で自分を親指で差す沖田に土方は意外そうに振り返る。「昨日“色々会って”こっちはストレス溜まってるんですよ」「あの女(千鶴)のせいでな」「ええ、考えただけで胸焼けするぜチクショウ・・・・・・だから“ウサ晴らし”にちょいとあの娘狩らして下せぇ」「ウサ晴らしってな・・・・・・」「大丈夫でさぁ、殺しはしないんで・・・・・・」「・・・・・・お前、あのガキに何かする気だろ?」ニヤリと笑う沖田に土方が不審そうに問いかけるが、彼は無視して橋の方へ一歩一歩しっかりと歩いて行く。そんな部下の後姿を見て土方はため息を突いた後、タバコを携帯灰皿に入れる。「逃げるぞ、ああなった総悟はもう止まらねえ、おいガキ、その娘っ子連れて何処か逃げるぞ」「え? あの人を一人で置いていいんですか?」刹那は心配そうに沖田に目をやるが土方は全く問題なさそうに「奴は頭は空だが剣の腕は真撰組随一って言われてるんだ、ガキ相手に死ぬタマじゃねえ」「そ、そうなんですか・・・・・・?」まだ自分ともそんなに年の差は無い筈の沖田が土方よりも強い可能性を持っていると言う事に刹那が少し驚いていると、土方はのどか達三人娘に指示をしている。「お前等もここからは別行動だ、こっからは俺とコイツとこの娘で三人だけで行く、お前等の事を狙う様な真似をする連中じゃねえから安心しろ」「なんか・・・・・・色々と厄介事が起きてる様だね・・・・・・」「あなたは本当にトラブルに巻き込まれるのが好きですね」現状を理解できていないハルナと悪態を突く夕映。そしてのどかは心配そうに顔を上げて「十四郎さん・・・・・・」「・・・・・・すぐ戻る、ちょっと小蠅を潰さなきゃいけねえからな」「・・・・・・気を付けて下さいね・・・・・・」「ああ、安心して待ってろ」心配そうだがそれを隠す様に笑ってくれるのどかに土方はまっすぐな目で頷いた。そんな二人を見て木乃香とハルナは邪魔しないよう注意してはしゃぎだす「おお・・・・・・! ここでまさかのラブシーン・・・・・・!」「ウチこういうのドラマでした見た事無いから生で見るの初めてやわ・・・・・・!」「・・・・・・」テンションが上がっているハルナと木乃香を尻目に刹那はイライラしたように歯ぎしりしながら土方とのどかを睨んでいる。「こんな時に何やってるんですか全く・・・・・・」「負け組嫉妬乙ですぅ」隣で土方とのどかの二人を写メで撮りまくっている夕映に言われた事に刹那はしかめっ面をする。「どうしてあなた達と白夜叉はそういう変な誤解をして・・・・・・」「おいガキ、そろそろ行くぞ」「あ、はい・・・・・・」のどか達に別れを告げて来た土方に呼ばれたので刹那は少し寂しそうに頷いた後、黙って木乃香と一緒に彼の後ろについて行く。(せめて名前で呼んでもいいのに・・・・・・・一緒に住んでる私との方が付き合い長いのに・・・・・・)「せっちゃん目が恐いで・・・・・・」「・・・・・・敵が何処にいるか探ってるんです」隣で走りながら尋ねてくる木乃香に向かって適当にごまかした後、刹那はムスッとした表情のまま前を走る土方に黙ってついていく。土方に対して日に日に不満が募っていく刹那であった土方達が何処かへ逃走した後、月詠との相手として残った沖田は、橋の上で彼女と静かに対峙していた。「沖田さ~んッ! よくわかんないけど頑張れ~ッ!」「相討ちになってください」「夕映・・・・・・」後ろからハルナ、夕映、のどかの声を受けながら沖田は月詠に対してすました顔で近づいて行く。「お前みたいな奴ミッ○ーの手を煩わせる程でもねえ、この新撰組の沖田総司が刀の錆にしてやらぁ」「ん~本当は黒髪のお兄さんの方がウチは嬉しかったんですけどね~~~、でもお兄さんもかなり強そうやからエエか~」のほほんとしながら喋る月詠に沖田は真顔で剣を構え、彼女が両手に持っている刀を抜こうとするのを待っている。「いいから早く得物抜けよガキンチョ、こっちは昨日からストレス溜まりまくってるんでぃ、さっきからあの女のツラが頭にチラついてどんどん溜まってくんだよ、テメェで解消させてもらうからな」「ウチも前に何か良く知らん車に轢かれてストレス溜まってるんですよ~~、そちらさんが戦いたいなら喜んで戦います~、けどその前に・・・・・・」月詠はパッと両手から物凄く大量のお札を突然取り出し、バッと投げる。そして・・・・・・「ひゃっきやこぉ~~!!」「!!」札が突然奇抜な姿をした今まで見た事のない生物、妖怪に様変わりして、規制を上げながら沖田の方に大量に突っ込んできた。これには沖田も驚き、後ろの方にいるハルナ達も飛んできた妖怪達に声を上げる、「ぎゃぁぁぁ!! なんか変なナマモノ一杯出て来たァァァァ!」「写メに撮って今度近藤さんに見せましょう」「そんな事やってないで早く逃げ・・・・・・!」 「カッパァァァァ!!!」「おぐすッ!!」 「ハ、ハルナッ! 夕映ッ! ハルナがカッパにアッパーされて倒れちゃったッ!」「傑作ですぅ」友人が謎の妖怪に攻撃された事を聞いても夕映は問題なさそうに妖怪達を携帯で撮っている。末恐ろしい少女である。だが妖怪達はハルナだけではなくその後ろの一般客達にも襲い始めた。その中にはA組の生徒も多く混じっており・・・・・・「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」「まき絵がヒトデマンみたいな生き物に体当たりされてもうたッ!」「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」「まき絵が凄くちっちゃい女の子達に着物の下めくられてもうたッ!」「退けぃ虫けらがぁッ!!」「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」「まき絵が呂布奉先が乗る赤兎馬に轢かれてもうたッ!」「ジャイロォォォォォッ!!」「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」「まき絵がジョニィ・ジョースターの乗る馬に轢かれてもうたッ!」「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」「まき絵が・・・・・・!」「もうええわぁぁぁぁぁ!! 何で他に生徒が一杯いるのに私をピンポイント爆撃ッ!? ていうか馬二回出てきてるしッ!」生徒の中には何故か他の生徒より集中的に狙われてるまき絵やそれを実況する亜子。そしてもうひと組「ちづ姉、なんか変なの一杯出て来たよッ! うわッ! 傘お化け飛んできたッ!」「あら夏美、あなたのお友達? 私、お茶でも持ってこようかしら?」「激しく違うよッ! 私は友達もっと選ぶ方だよッ!」全く物事に動じずに落ち着いている千鶴に一緒に行動している夏美が叫ぶ。すると一緒にいた同じ反応ザジはスケッチブックを取り出し高速で何かを書いて夏美に見せた。『お前、友達選ぶ権利あると思ってるの? 超ーウケるんですけどwww』「ザジてんめぇぇぇぇ!!!」「大丈夫よ夏美、知り合いから聞いたんだけど私達の学校の高等部に高音さんって人がいるんだけど、その人って中等部の子とよく一緒にいるんだけど、その人実は同級生の友達は一人もいないらしいの。だから夏美、あなたはまだ全然マシよ」「何そのどうでもいい情報ッ!? 何で今したのッ!? それに哀しくなるから止めてくんないッ!? 私いるからッ! そんな人と違って私友達いるからッ!」千鶴はきっと夏美を励まして上げようと思って言ったんだと思うが、正直意味不明。夏美は即座にツッコミを入れる中、その高等部の先輩に哀れみを感じる。他の生徒達もドタバタと騒ぎながら妖怪達と戯れているのを見て、橋の上で眺めている沖田は「へ~」と面白そうに声を出す。「ガキ共イジメるのに使えそうだな、今度やり方教えてくれよ」「ウフフ~羨ましいでしょウチのお友達です~~~、周りのヤジ馬はあの子達に任せて・・・・・・ウチ等も楽しみましょうか・・・・・・」呑気な口調で喋っていた月詠が一転して目を赤く光らせ沖田に近づいて行く。両手に持っていた刀は既に抜かれている。「ルールはどちらかが倒れるまで斬り合う・・・・・・フフフ、あんさんは何分まで持ち堪えれるんかな~・・・・・・」殺気を放ちながら歩み寄ってくる月詠。戦闘狂の彼女は常に血と血で争う戦いを求めているのだ。だがそんな彼女に対して沖田はまだ生徒達と暴れている妖怪達の群れを眺めている。「面白えな~あのナマモノ軍団、俺一匹しか持ってないから欲しいわ本当」「一匹?」首を傾げる月詠に沖田はやっと彼女の方に振り返り「お前の後ろにいるそいつが俺の下僕」「え?」無表情で後ろの方に指差すして沖田が言うので、月詠はつい足を止めて後ろを振り返ると・・・・・・「こ~の~ア~マ~・・・・・・・!! ご主人様と何仲良く喋ってんのよウジ虫が~~!!」「ヒィィィィィ!! 本物の妖怪ィィィィィ!!」自分の長い髪を逆立て月詠に対して嫉妬心を爆発させている美砂がすぐ後ろに立っていた。沖田の忠実な下僕、柿崎美砂。月詠が思わず彼女見て悲鳴を上げるが、美砂はすかさず彼女に飛びかかって後ろから羽交い締めにする。「ご主人様ッ! 今の内にこの女をギッタギタに殺って下さいッ!」「デカしたメス豚、今度、土方特製犬のエサスペシャルを食わしてやる」「ちょっと~~! 二人がかりって卑怯ですよ~~、正々堂々とウチとタイマンでやってくださ~いッ!」「え? タイマン? 何それ? そんなルール聞いた事ねえや」「そんな~~~!!」最初からまともに月詠と戦うつもりがなかった沖田は、事前にいつでもあらゆる場所に出現できる美砂を彼女の背後に配置していたのだ。美砂に羽交い締めにされた月詠はじたばた暴れるが美砂は絶対に離さず、沖田は腰に差してある刀を抜いて彼女達に近づいてく。だが彼が抜いたのは真剣ではない。衣装用の為に差してある木製の偽刀の方だ「これだったら死なねえからな・・・・・・」「あら? 真剣じゃないんどすか? フフ、やっぱりウチを殺す気なんておたくら無いんですね~~~、例え女子供でも敵であったら問答無用で斬るのがあなた達の役目なんじゃないどすか~~~?」「へへ・・・・・・バカだなオメェ・・・・・・」拘束されながらも挑発的な笑みを浮かべる月詠に対して、沖田はどす黒い笑みを浮かべて彼女めがけて偽刀を振り上げる。そう彼は真正の・・・・・・「すぐ殺したらつまんねえだろうがよぉ・・・・・・」「・・・・・・へ?」「トゥゥゥゥゥス!!!」「のがぁぁぁぁぁ!!!」月詠の顔に一切手加減もせず全力で偽刀を横に振り抜く沖田。その時彼の目が妖しく光る。ドSモード・ON「もういっぱぁぁぁぁぁつッ!!」「ほぐぅぅぅッ!!」「もういっちょぉぉぉぉぉッ!!」「あごぉぉぉぉッ!!」「次行ってみよぉぉぉぉぉ!!」「おげぇぇぇぇぇ!!」容赦なんてしない。沖田の一発一発の攻撃がそれを語っている。偽刀による往復ビンタ。そのキツイ一撃に月詠は何度も悲鳴を上げる。4発目を終えた沖田は一旦攻撃を止めて美砂に羽交い締めにされている彼女の状態をチェックする。死んでいる様にグッタリしていた。「おいメス豚ァ・・・・・・こいつがさっき言っていたルールによるとどちらかが倒れたら終わりらしいからなぁ・・・・・・“絶対に倒れないように”はなすんじゃねえぞ・・・・・・」「そ、そ、そ、そ、そんなぁ・・・・・・!」「イエッサー、マイマスターッ!」「よぉぉぉぉぉしッ!」「「うぎぃぃぃぃぃ!!!」」美砂がはっきり返事をすると沖田は月詠どころか彼女にも勢いよく偽刀を縦に振り下ろす。いくら偽刀とはいえ、頭部めがけて落ちて来たその威力は当たり所によれば死ぬ可能性もあると思うのだが・・・・・・「まだ終わんねえぞコラァ・・・・・・!!」「ひぃぃぃぃぃ!! 誰か助けてぇぇぇぇぇ!!」自分をここまで恐怖を感じさせた人間はいない。月詠は泣きながら慌てて誰かいないかと後ろに振り返る。だがそこにいるのは一人の少女だけ、しかも「ああ、もっと殴って下さい・・・・・・」「えぇぇぇぇぇ!! なんなんこの人ッ!?」「へいらっしゃいッ!!」「「おごぉぉぉぉぉ!!!」」この状況でヘブン状態に入っている美砂に月詠は心の底から驚く。しかし彼女が驚いている隙にまた彼女達の横っツラ目掛けて沖田は偽刀を横一閃。周りに妖怪達が渦巻いているカオスな状況の中。気絶しようが白目をむこうが、月詠に対して一切攻撃を止める気は無いサド王子であった。沖田がドSモードを展開している頃、攘夷戦争時代の衣装を着た銀時と着物を着ているあやかは、土方やネギ達の方でトラブルが起きてるのを知らずに呑気にシネマ村を歩いていた。「ファ~・・・・・・やっぱ寝不足だな・・・・・・ねみぃ」「何かあったんですか?」大きな欠伸をして瞼をこすりながら歩いている銀時に普通にあやかが質問するので、彼はそんな彼女に皮肉交じりに「いや聞いてくれよあやかちゃん、昨日の夜、いきなり部屋に押し込んで来たガキに告白された上、そこから今度は別のガキに唇奪われてさぁ、いや~大変だったよ本当」「す、すみません・・・・・・」あやかは気付いたのか、縮こまって頭を下げる。いくら銀時といえどあの状況で簡単に寝付けれるわけがない。「あの時は私もどうかしてましたわ・・・・・・」「別に悪いとは思ってねえって」「本当ですか・・・・・・?」「当たり前だろバカ・・・・・・だからこうやってお前と一緒にいるんだろ・・・・・・」「・・・・・・!」そっぽを向きながら言う銀時にあやかは体の体温が急激に上がる。自分の心臓の鼓動音が聞こえてきて、彼女は思わず胸をおさえる。「あ・・・・・・」「どうした?」「い、いえ大丈夫ですわ、それより・・・・・・」「あん?」「手・・・・・・繋いでいいですか?」「・・・・・・はい?」顔を赤らめ、上目をウルウルさせながらお願いしてくるあやかに銀時は頬を引きつらせる。彼女が言った事に若干動揺しているらしい。銀時がどう答えればいいのか汗を掻きながら困っていると「銀八ッ!」「俺とお前で手繋ぐの・・・・・・? いや別にいいんだけど・・・・・・ん?」「銀八ッ!」「銀さんッ!」突然自分を呼ぶ声が聞こえたので銀時はそちらに顔を向ける。見ると着物姿の千雨と和美がこちらに走り寄ってくるではないか「・・・・・・何でアイツ等ここに来てんの?」「千雨さんと和美さん・・・・・・!」千雨と和美の出現に驚いているあやかを尻目に千雨は慌てた様子で銀時に駆け寄る。「銀八ッ! 前に来た金髪の女はここに来てねえのかッ!?」「いいんちょなら銀さんの隣にいるじゃん」「いいんちょの事言ってんじゃねえよッ! 前に銀八を襲った奴の事を言ったんだよッ!」「襲われた?」言ってる事がさっぱりわからず、きょとんとしながら和美は首を傾げる。しかし話の意味を知っている銀時は千雨の話を聞いた途端、目つきが鋭くなっていた。「千雨、何かあったのか?」「真撰組の方の奴等が敵が来たとかなんとか言ってて・・・・・・」「んだと? あの女がアイツ等の所に来たって事か・・・・・・・?」「それはわかんねえ・・・・・・・けどあの女、また銀八を襲いに来たんじゃないかと私、不安になって・・・・・・」「その不安は的中だよ」「「!!」」千雨と銀時の会話をしてる中に飛んできた男の声に二人は同時に反応して声がした方向へ振り向く。こんな晴れた日に傘をさし、しかも体を覆う様なマントを着たボサボサ頭の無精髭の男が平然と立っていた。銀時はそんな男を見て誰かと気付く。「お前、吉原の時の・・・・・・こっちに来てやがったのか」「覚えてくれていて嬉しいね、春雨の幹部を務める“神威殿”の部下であり同じ夜兎である阿伏兎だ、以後お見知り置きを」かつて江戸にある吉原という夜王が支配するその地で、敵味方として戦った事がある阿布兎。彼の出現に銀時は睨みつけながら腰に差す木刀に手を置く。「テメェ等は早く離れろ・・・・・・ワリィなあやか、デートは一時中止だ・・・・・・」「何がどうなってるんだか・・・・・・」「銀さん気を付けて下さい、あの人なんかヤバそうですわ・・・・・・」阿伏兎を見てもどういう事なのか混乱している和美をよそに、あやかは現れた男から発する異様な気配に気付いて銀時に警告して和美を連れて一緒に後ろに離れる。だが銀時が戦って欲しくないと思っている千雨は「銀八・・・・・・」「“あの夜”の時に言ったろ、お前みたいなイイ女残して死ねるかって・・・・・・」不安そうに裾を掴んで来る千雨に銀時は彼女の肩に手を置きながら話しかける。「こちとら何度も修羅場くぐり抜けて来てんだ、あんな奴どうって事ねえよ」「絶対だからな・・・・・・」「おうよ」銀時が腰の木刀を抜いて目の前の阿伏兎と対峙する形になった時、千雨は泣きそうな顔で彼から離れてあやか達の元へ移動する。彼女達が離れた事を確認した銀時はジッと目の前の敵を見据える。「待たせたな、いつでもかかってこいやコラ」「フ・・・・・・何か勘違いしてる様だなおたく」「何?」「戦うのは俺じゃねえよ、こんな天気だしな」傘の下から阿伏兎は日の光を見上げる。夜兎族の彼にとって太陽は一番の天敵。長く日に当たってれば死ぬ可能性もある種族なのだ。「じゃあ何でテメェが来たんだ」「実はな、アンタ達の戦いの見届け人として俺はやってきたんだ。戦うのは・・・・・・」「なッ!」不敵に笑いかけてくる阿伏兎は話している途中に銀時は頭上から何かが降ってくる気配を感じる。慌てて横っ跳びすると、彼がいた地点に一瞬で轟音を立てて何かが降って来た。降って来た所から大量の砂埃が舞う・・・・・銀時がその中心に立っているのが何かと目を凝らす。金色の髪と着ている者のボディラインを強調するかのようになっている純白のドレス、そして手に持つのは髪色と同じ色の西洋の剣。「わらわじゃ・・・・・・」「アンタか・・・・・・!」誰もが美女と称するであろう誠に美しい女性。アリカ・スプリングフィールドがあの氷の眼で再び銀時に対して剣を構える。「坂田銀時・・・・・・貴様にはここで死んでもらう・・・・・・」「そいつはゴメンだな、俺はアイツ等と約束してるんだ」口元に笑みを浮かべながら背中に差してある夕凪を抜き、右手に洞爺湖、左手に夕凪の二刀の構えを持ってアリカと対峙する。「アイツ等残して、俺は死ねねぇんだよ」「出来もしない約束などするとはな・・・・・・お前はここで死ぬ・・・・・・私に狙われた時点でそれは決まっているのじゃ・・・・・・」「へ、殺れるもんなら殺ってみろよ」互いに悪態を突きながら構える銀時とアリカ。心配そうに見守る三人の少女、面白い物を見る様な目で眺めている阿伏兎。そして「うおらぁぁぁぁ!!!」銀時の叫び声と同時に二人は対峙する相手に向かって突っ込む。アリカは無言のまま一本の剣を持って、銀時は二本の野太刀と木刀を持って。二人の二度目の戦いが始まる。