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赤松健SS投稿掲示板


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No.7093の一覧
[0] 3年A組 銀八先生!(ネギま!×銀魂) 【完結】[カイバーマン](2012/04/19 12:47)
[1] 第零訓 運命の出逢いは時に最悪[カイバーマン](2010/01/09 22:50)
[2] 第一訓 侍だって教師になれる[カイバーマン](2010/06/27 00:41)
[3] 第二訓 ジャンプを愛するものに悪い奴はいない[カイバーマン](2009/04/07 00:18)
[4] 第三訓 女子というのはだいたい見た目八割で決めるもん[カイバーマン](2009/04/07 00:19)
[5] 第四訓 物語はボケも必要、それを支えるツッコミも大事[カイバーマン](2009/04/07 00:22)
[6] 第五訓 金持ちの奴でも不幸な過去はあるもんだ[カイバーマン](2009/04/07 00:23)
[7] 第六訓 契約は計画的に、いやマジで[カイバーマン](2009/06/13 10:22)
[8] 第七訓 日常はスクープより奇なり[カイバーマン](2009/03/27 02:11)
[9] 第八訓 みんなそれぞれテメーの刀を持っている[カイバーマン](2009/06/08 12:13)
[10] 第九訓 大切なものを守る時は大切なものだけを見ないでその周りを守れるほど強くなれ[カイバーマン](2009/06/08 12:15)
[11] 第十訓 どうしても斬れない絆もある[カイバーマン](2010/03/13 10:56)
[12] 第十一訓 友達は自然になるものだ[カイバーマン](2009/04/09 14:48)
[13] 第十二訓 誕生日はプライスレス[カイバーマン](2010/06/09 00:56)
[14] 第十三訓 本気で戦うのが戦いのマナーじゃァァァ!![カイバーマン](2009/06/08 12:10)
[15] 第十四訓 メンバーは仲良くないと色々大変[カイバーマン](2009/04/25 22:44)
[16] 第十五訓 驚いた事があっても全く動じないのがスパイの基本[カイバーマン](2010/03/13 10:50)
[17] 第十六訓 老人は国の宝[カイバーマン](2010/03/13 10:51)
[18] 第十七訓 喫煙者にとってタバコは何よりも大事 それがわかるのは喫煙者だけ[カイバーマン](2010/05/02 14:00)
[19] 第十八訓 スタンドはスタンドでしか倒せない[カイバーマン](2009/06/28 23:00)
[20] 第十九訓 頼れる年上には憧れる[カイバーマン](2009/07/17 13:29)
[21] 第二十訓 銀と金[カイバーマン](2009/08/27 09:32)
[22] 外伝Ⅰ 国は違えど優しくその文化を受け止めよう・・まあ限度あるけどね[カイバーマン](2009/08/11 23:21)
[23] 外伝Ⅱ 空気の読めない奴は必ずクラスに一人はいる[カイバーマン](2009/08/27 09:31)
[24] 外伝Ⅲ 『ボールは友達恐くない!』って言った奴ちょっとツラ出せや[カイバーマン](2009/09/21 17:22)
[25] 第二十一訓 みんなが考えてるほど世界は広くない[カイバーマン](2009/10/10 12:31)
[26] 第二十二訓 人との交流は新しい扉を開けるチャンスである[カイバーマン](2009/09/04 01:53)
[27] 第二十三訓 アイドルだって喜怒哀楽がある人間なんだよ[カイバーマン](2009/09/27 10:35)
[28] 第二十四訓 拾ったペットに教えられることもある[カイバーマン](2009/09/12 22:22)
[29] 第二十五訓 ペットの責任は飼い主にも責任[カイバーマン](2009/09/27 10:40)
[30] 第二十六訓 ヘラヘラした奴って本当ロクな事考えねえよな・・・・・・[カイバーマン](2009/09/27 10:47)
[31] 第二十七訓 占いは当たるも八卦当たらぬも八卦[カイバーマン](2009/10/02 14:28)
[32] 第二十八訓 バカは死んでも治らない[カイバーマン](2010/03/07 13:58)
[33] 第二十九訓 修学旅行が始める前ってめちゃくちゃテンション上がるよね?[カイバーマン](2009/10/22 15:04)
[34] 第三十訓 主人公のいない世界なんてのりの無いのり弁と同じ[カイバーマン](2009/11/09 00:05)
[35] 第三十一訓 ダメ人間の代わりなんてダメ人間で十分なんじゃね?[カイバーマン](2009/11/15 00:17)
[36] 第三十二訓 誰かと比べられるのってかなり腹立つ[カイバーマン](2009/11/15 00:22)
[37] 第三十三訓 過去の因縁はどうしても消えない[カイバーマン](2009/11/21 11:32)
[38] 第三十四訓 一生隣で笑ってくれる奴等がいる事こそ最高の幸せ[カイバーマン](2009/11/28 12:58)
[39] 第三十五訓 旅は道連れ世は情け[カイバーマン](2009/12/05 23:37)
[40] 第三十六訓 最近の中学生は修学旅行だからってはしゃぎ過ぎなんだよッ![カイバーマン](2009/12/11 15:55)
[41] 第三十七訓 夜中に気を付けるのは見知らぬ女と見知らぬ忍者[カイバーマン](2009/12/18 15:06)
[42] 第三十八訓 転ぶ先に一筋の光[カイバーマン](2009/12/25 13:22)
[43] 第三十九訓 女が心配してるのに男って奴は・・・・・・・[カイバーマン](2010/01/01 00:25)
[44] 第四十訓 子供は早く寝ろ、じゃないと大人が夜更かし出来ないでしょうが[カイバーマン](2010/01/13 20:46)
[45] 第四十一訓 マナーを守らない奴はとりあえずTKO[カイバーマン](2010/01/14 20:59)
[46] 第四十二訓 侍ってのは高倉健の様に不器用な生き物[カイバーマン](2010/03/07 14:05)
[47] 第四十三訓 いつかは生まれるその感情に逃げるべからず[カイバーマン](2010/02/17 11:52)
[48] 第四十四訓 仲間の助けを借りて走っても走り抜けれるかはテメー次第[カイバーマン](2010/02/09 16:48)
[49] 第四十五訓 時には意外な物が武器になる[カイバーマン](2010/02/17 11:54)
[50] 第四十六訓 ドSは決して自重しない[カイバーマン](2010/02/17 11:47)
[51] 第四十七訓 なんだかんだで両想い[カイバーマン](2010/02/20 08:55)
[52] 第四十八訓 三つの愛 一つの運命[カイバーマン](2010/02/24 17:58)
[53] 第四十九訓 人の道それぞれ[カイバーマン](2010/02/28 11:43)
[54] 第五十訓 絡まる糸はほどく気がなければほどけない[カイバーマン](2010/03/01 09:45)
[55] 第五十一訓 隠し事はバレてこそ意味がある[カイバーマン](2010/03/04 13:02)
[56] 第五十二訓  闇と光は表裏一体[カイバーマン](2010/03/07 21:32)
[57] 第五十三訓 バカと役立たずにも五分の魂[カイバーマン](2010/03/10 09:38)
[58] 第五十四訓 人を傷付けたら必ず自分が傷付く事になる[カイバーマン](2010/03/12 22:24)
[59] 第五十五訓 昨日の敵は今日の友[カイバーマン](2010/03/16 21:12)
[60] 第五十六訓 親バカもシスコンも度が過ぎると引くから少しは自分を抑えて[カイバーマン](2010/03/19 11:55)
[61] 第五十七訓 酒は飲むモンであり飲まれるモンではない[カイバーマン](2010/03/22 17:02)
[62] 第五十八訓 時に酔いは人の本性をさらけだす事もあるんです[カイバーマン](2010/03/25 17:26)
[63] 第五十九訓 混沌招く血の宴[カイバーマン](2010/03/29 11:21)
[64] 第六十訓   死[カイバーマン](2010/03/31 12:59)
[65] 第六十一訓 夜王再臨[カイバーマン](2010/04/04 10:56)
[66] 第六十二訓 仲間を信じて顔上げて歩け[カイバーマン](2010/04/07 13:18)
[67] 第六十三訓 ただ愛ゆえに[カイバーマン](2010/04/14 18:26)
[68] 第六十四訓 ただ愛のために[カイバーマン](2010/04/14 17:21)
[69] 第六十五訓 ただ愛こそすべて[カイバーマン](2010/04/19 23:27)
[70] 第六十六訓 戦場を色取るのは忍者とチャイナとストーカー、そしてあんパン[カイバーマン](2010/04/25 16:25)
[71] 第六十七訓 凛と咲く桜の如く美しくありけり[カイバーマン](2010/05/17 01:16)
[72] 第六十八訓 バクチ・ダンサー[カイバーマン](2010/05/16 22:23)
[73] 第六十九訓 鬼が恐くて侍が務まるわけねえだろコノヤロー[カイバーマン](2010/05/16 22:27)
[74] 第七十訓 生半可な覚悟で正義や悪を語るものではない[カイバーマン](2010/05/24 01:12)
[75] 第七十一訓 その長き続く因縁に終止符を下ろせ[カイバーマン](2010/05/30 09:48)
[76] 第七十二訓 宇宙一最強の魔法使いは宇宙一馬鹿な親父[カイバーマン](2010/06/06 14:32)
[77] 第七十三訓 新しい朝[カイバーマン](2010/06/13 09:02)
[78] 第七十四訓 鬼の力 仏の心[カイバーマン](2010/06/27 00:40)
[79] 第七十五訓 その契りは永遠に[カイバーマン](2010/06/27 00:38)
[80] 第七十六訓 出会いもあれば別れもある 経験するたびに人はより成長していく[カイバーマン](2010/07/04 00:17)
[81] 第七十七訓 去る前にドタバタ騒いで最後の最後に別れを惜しめ[カイバーマン](2010/07/04 00:18)
[82] 第七十八訓 さよなら銀八先生[カイバーマン](2010/07/04 00:20)
[83] 最終訓 後悔ない人生を[カイバーマン](2010/07/11 00:11)
[84] 第?訓 銀色の魂を受け継ぐ者[カイバーマン](2010/08/01 07:50)
[86] 番外編 人気投票など死んでくれ・・・・・・[カイバーマン](2010/09/20 10:22)
[87] 番外編 人気投票など死刑だうわぁぁぁぁぁん!![カイバーマン](2010/08/16 13:18)
[88] 番外編 人気投票など・・・・・・あ、さっきからこれ言ってるの全部私だからな[カイバーマン](2010/08/23 00:00)
[89] 番外編 人気投票などに踊らされた哀れな道化共め[カイバーマン](2010/08/30 09:21)
[90] 番外編 人気投票など関係無い! 私達は私達だ![カイバーマン](2010/09/05 17:17)
[91] 山崎編 ZAKINOTE Ⅰ 学籍番号1番~10番[カイバーマン](2011/07/18 13:22)
[92] 山崎編 ZAKINOTE Ⅱ 学籍番号11番~20番[カイバーマン](2011/07/19 17:10)
[93] 山崎編 ZAKINOTE Ⅲ 学籍番号21番~31番[カイバーマン](2011/07/20 22:14)
[94] 山崎編 ZAKINOTE Ⅳ 教職員&学校関係者[カイバーマン](2011/07/21 20:39)
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[7093] 第三十九訓 女が心配してるのに男って奴は・・・・・・・
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/01 00:25


修学旅行一日目の夜、長期に渡っている戦いに銀時は謎の女に苦戦を用いられていた。

「ぬおッ!」
「銀さんッ!」

戦いが長引くにつれ銀時の顔にも疲れが見えてきた、そこを女は見逃さずに無言のまま静かに猛攻で襲ってくる。疲弊しながらもかろうじて木刀で女の剣を受け止めている銀時を見て見守っているあやかも気が気でならない。

「・・・・・・なあちょっと休憩しねえか・・・・・・? 銀さんここらでハーフタイム希望したいんだけど・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・つうかアンタ本当に人間? もしかしてサイボーグか何かですか? ショッカーにでも改造されたんですか?」
「・・・・・・」
「だんまり決め込んでないで・・・・・・なんか喋ろってッ!」

体もそろそろ疲れのおかげで鈍くなってきているにも関わらず、銀時は女に向かって跳びかかる、跳んだ状態で持っている木刀を女に向かって片手で振り下ろすが瞬時に女はそれをちょっと後ろに動いただけで避け、振り下ろした木刀は戦っている場所である橋を少し破壊しただけだ、その時、女の持っていた金色の剣が光り、そして・・・・・・

「ぐふッ!」
「そんな・・・・・!」
「ぎ、銀八ィィィィ!!」

金色の剣が遂に銀時の左肩を貫いた。刺した箇所から肉を貫く生々しい音と、そこから流れる大量の血に、あやかも目の色を変え、さっきまでずっと黙って見ていた千雨も銀時に向かって叫ぶ。

「ぐ・・・・・・! クソッタレ・・・・・・!」
「・・・・・・」
「俺をマジで殺す気でいやがる・・・・・・何が目的だ・・・・・・何で高杉のヤローを知ってる・・・・・・てめえあいつとどんな関係・・・・・がはぁッ!」
「銀・・・・・・八・・・・・・・」

銀時が喋り終える前に女は右手で彼の肩を貫いてる剣を持ったまま左手の拳を彼の腹に思いっきり入れた、女性とは思えないその力に銀時は口から吐血する。
千雨は生まれて初めて見る“本物の“命の取り合いに恐怖で体の震えが止まらなかった

「銀八ぃ・・・・・・!」
「ごほッ! ごほッ!・・・・・・千雨・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「さっきから何不安そうに見てんだよ・・・・・・」

銀時は後ろにいる千雨の方に振り向かずに口から出る血を右腕で拭いながら話しかけてきた。彼女もそれに泣きそうな顔で答える

「だってお前・・・・・・そんなに血が・・・・・・怪我もしてるし・・・・・」
「こんなモン全然屁でもねえ・・・・・・お前は何も心配すんな、俺は死なねえよ・・・・・・」
「銀八・・・・・・」

右肩にも切り傷、左肩は貫かれ出血多量、口からも吐血をしているにも関わらず銀時は少し笑ってるような声で千雨に話しかける。彼女の瞳には傷だらけの男が負け惜しみを言っているのではなく、まだ勝機はあると諦めていない真の侍が見えた。

「こんな所で死ねるかよ・・・・・・」
「・・・・・・」

銀時は息を荒くして傷と疲れに倒れそうになっても、まだ目は生きた状態で女を睨む。
女はやはりそれも無言で睨み返すだけだ、フードから見える氷の様な冷たい目。
左肩を剣で貫かれた状態で銀時は女と見つめ合ったままある事に気付いた

「オメー・・・・・・」
「・・・・・・・」

銀時はそこでクスリと口に笑みを作った。

「・・・・・・よく見たらおっかなく見えんのは表だけじゃねえか」
「・・・・・・!」
「どれぐらい泣けば・・・・・・そんなに辛そうな目が出来んだ」
「貴様・・・・・・!」
「うごッ!」
「銀八ッ!」
「銀さんッ!」

銀時が放った一言に初めて動揺の様な物見せた女は、彼の左肩に突き刺さっている剣を抜いて、右足に力を込めた回し蹴りを彼の横っ腹に当てる。銀時はそのまま橋の手すりに大きな音を立てて背中からぶつかる。

「がはぁッ!!」
「お前も・・・・・・! 高杉と同じ事を言おって・・・・・・!」
「フゥ・・・・・・・マジでヤベえなコレ・・・・・・」
「死ね・・・・・・!」

口から大量の血を吐き出し、体もいうこときかなくなった銀時は手すりに持たれかけながらため息を付く。
そんな彼にコツコツと足音を立てながら女は銀時の血で塗られた金色の剣を持って近づく。
銀時を斬れる間合いに置いた女は剣を静かに振り上げ、彼をそのままたたっ斬ろうとしているその瞬間、彼女の前に一人の少女が立ち塞がった。

「何の真似じゃ・・・・・・」
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・!!」
「銀さん大丈夫ですかッ!」

銀時を庇うように目の前に現れた千雨に女は冷徹な視線を飛ばす。視線だけで人を畏怖させる眼差しに、千雨は膝をガクガクと笑わせながらも怯えた表情で見返す。その隙にあやかが銀時に近づいて体の安否を調べる

「貴様等も殺すぞ・・・・・・女子供だからって容赦はせぬ・・・・・・」
「コイツだけは・・・・・・殺さないでくれ・・・・・・」
「千雨・・・・・・」
「もっと一緒にいてえんだよ・・・・・・だから・・・・・・だから・・・・・・・」
「千雨さん・・・・・・」
「殺さないでくれよッ! 私の大切な人なんだよッ!」
「・・・・・・」

一人の少女の必死の訴えに女と、後ろで銀時を介抱しているあやかも、そして銀時もただ静かに聞いていた。
しばらくして女は千雨に近づいていく。

「貴様にとってその男が何よりも大事なのはわかった・・・・・・」
「・・・・・・」
「だからといってその男を殺す事に変わりは無い・・・・・・」
「何で・・・・・・何でそんなに殺したいんだよッ! こいつに恨みでもあんのかよッ!」

千雨の訴えも通じずに女は未だ銀時に向かって殺意を放つ。そんな彼女に千雨は噛みつくように叫んだ。
すると女は千雨とは対照的に冷静に

「命令された」
「命令って・・・・・・」
「それだけじゃ、私はただそれを実行するだけ」
「ふざけんなッ! そんな事でこいつを殺す事なんてさせねえッ!」

銀時に歩み寄ろうとする女に千雨は彼女の腰に抱きついて止めようとする。
あやかも倒れている銀時を守るように抱き締めて自分の身で彼を庇う。

「この人は私にとっても大切な人なんですッ!」
「絶対に・・・・・銀八は・・・・・・死なせやしない・・・・・・・!」
「おめぇ等・・・・・・」
「どけ貴様等・・・・・・さもないと・・・・・・!」

抵抗するあやかと千雨を見て銀時は真顔で彼女達を見る。女は少し躊躇しながらもそんな二人に向かって剣を光らせる。
その時だった

「しばらく見ない内に随分とイメージチェンジしましたね」
「・・・・・・!」
「お久しぶりです」
「貴様・・・・・! 何故ここに・・・・・・!」

今にも銀時達が殺されそうになっていた時、足音を立てながらローブを着た一人の男が近づいてきた。女はそんな男を見て驚いているように目を見開く。

「貴様“も”夜王にやられた筈じゃ・・・・・・!」
「ああ、私あの時偶然“あの人“に助けてもらってたらしいんですよ、けどそれから封印を解いてもらえずこの京都で6年間も詠春の所で眠りにつかされてたんです、いや~酷い話ですよねホントに」
「6年経っても変わらんようじゃな貴様は・・・・・・」
「6年経ったら随分と変わりましたね貴女は」

女に対してかなり軽い口調で話す中性的な顔をした男を銀時は目を丸めて見つめる。

(なんだコイツ・・・・・・この女と知り合いか・・・・・・? それにこの女はさっき確かに『夜王』って・・・・・・)

男の方から女の方へ銀時は視線を移す。『夜王』という名前には覚えがあるのだ。
銀時がその事について疑問を思っていると女が持っている剣が急にフッと消える。そして腰に抱きついている千雨を片手で掴んで引き離し突き飛ばすと、急に男と銀時達の方にそっぽを向き

「興ざめじゃ」
「おや帰っちゃうんですか? もっと色々と話したかったのに」
「貴様と話す事など無い、私はもう春雨の幹部じゃ、昔の私はとっくのとうに死んでいる」
「春雨だと・・・・・・!」

女の言葉に銀時は力を振り絞って立ち上がろうとするが、あやかがそれを慌てて制止する。

「銀さんまだ体がッ!」
「春雨ってどういう事だ・・・・・・・! 何で俺の世界にいる連中がここにいんだよ・・・・・・! それにお前さっき夜王がどうのこうのって言ってただろ、お前あいつとどんな関係だ・・・・・・!」

あやかに抱き締められながらも女に向かって懸命に叫ぶ銀時、すると彼女は彼に振り返って考える様な仕草をした後、口をゆっくりと開いた。

「夜王は・・・・・・私の夫を殺した張本人じゃ・・・・・・」
「な・・・・・・・!」
「殺されたんですか・・・・・・・あの人が?」

女の突然の告白に驚いているのは銀時だけではない、フード姿の男も夫の事を知っているかのように彼女に向かって質問する。すると女は男の方へ顔を向けた、

「吉原へ行った春雨の幹部の一人から聞いた、夫を封印しているマジックアイテムは何処にもなかったと・・・・・・つまり殺されたのじゃろ・・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」

聞いた事にショックを受けたように男がうつむいてると、女は一瞬悲しみに暮れる様な表情をした後、すぐにまた無表情に戻り銀時の方へ冷たい目を向ける。

「貴様が夜王を殺したおかげで本当の所、真実はわからんのじゃがな」
「・・・・・・そこまで俺の事知ってんのか」
「春雨の幹部の中にお前に“惚れてる”男がいるんじゃ、お前の話はよく聞いている」
「・・・・・・・」

女と銀時はしばらく見つめ合った後、踵を返して女は去ろうとする。

「次会ったら今度こそ貴様を殺す」

去り際にそう残して女は夜の闇にまぎれて去って行く。
女がいなくなって数秒後、急にぐらっと銀時は座ってる状態からバタッと横に倒れた。

「銀八ッ!」
「銀さんしっかりしてッ!」
「やべぇな思ったより出血が・・・・・・」

銀時の左肩からドクドクと血が流れている。右肩も負傷してるし恐らく女に腹を思いっきり殴られたことでアバラ骨もやられているようだ。よく見たらあやかの来ている浴衣にも彼の血がベットリ付いている。

「お前等どっちでもいいから救急車呼んできてくんねえか・・・・・・?」
「千雨さん急いで救急車をッ!」
「言われなくてもわかってるよッ!」
「別に救急車呼ばなくて結構ですよ」
「え?」

あやかに言われる前に慌てて携帯を取り出して救急車を呼ぼうとする千雨に、さっき現れた男が笑いかけてくる。男のセリフに一瞬千雨は我が耳を疑った。

「救急車呼ばなくていいって・・・・・・・?」
「お金もかかりますしもったいないでしょ、その人この世界の保険証なんて持ってないでしょうし」
「何言ってんだよアンタッ! このままだと銀八が死んじまうんだよッ!」
「死なせませんよ、私が治療して上げますから」
「・・・・・・は?」

思わず彼を見てポカンと口を開ける千雨、この男何言ってるのだろうか・・・・・・
千雨がそんな事を考えていると、男は倒れている銀時の方に近づいていく

「時間はかかりますが全快には出来ると思います」
「さっきの女と言いオメエも何モンだ・・・・・・?」
「ただのしがない魔法使いですよ」
「まほ・・・・・・! いづッ!」

男が魔法使いだと聞いて銀時は驚いて身を起こそうとするが肩の激痛にまた横に倒れる。
慌ててあやかが彼に近寄って、彼の一番出血している左肩の方を手でおさえる

「銀さんはもう体を動かさないで下さいッ!」
「アハハハ、このままだと出血多量で死にそうなのでさっさと治癒呪文かけてあげますね」

男はこんな状況でも呑気にローブの下から手を出す、そんな彼をまだ信用していないのか銀時はあやかに支えられながら上体を起こして目を細める。

「名前は何て言うんだよ魔法使いさんよ?」
「クウネル・サンダースと呼んで下さい」

クウネルと名乗った男は銀時にニコッと笑い後付けをつける。

「桂さんから色々と聞いてますよ、“白夜叉の銀時さん”」
「!!」

温泉の中に千雨とあやかがいた時よりも、夜中に謎の女に襲撃された時よりも銀時は驚いた


何故なら男の口から聞かされた人物の名が何よりも一番衝撃的だったのだ。

































第三十九訓 女が心配してるのに男って奴は・・・・・・・

銀時がクウネルから桂の名を聞いたその頃、その桂はというと今本能寺で木乃香を狙う敵の一人である千草に刃を向けて対峙していた。

「さて、お主達には色々と喋ってもらわねば、大筋の事は少年から聞いたがお主はもっと詳しそうだしな」
「くッ!」

刀を向けながら一歩一歩迫ってくる桂に千草が万事休すかと思っていると彼女でも予想にしない出来事が起こった。

「かぁぁぁぁつらぁぁぁぁぁ!!!」
「む?」
「死ねェェェェェェ!!!」

いきなり桂に刀を持って突っ込んだのは本来千草にとっては敵である筈の土方、何故彼が桂に襲いかかったのか千草はわけもわからず首を傾げる。

「どういう意味やコレ?」
「まさかこんな所でテメェと会えるとはなぁ・・・・・・!」
「ふん、幕府の犬か、俺もよもやこんな所で会えるとは思わなかったぞ」

刃をぶつけながら土方の表情が鬼の形相に変わる。対して桂の方は涼しげな表情で彼の刀を同じく刀で受け止めている。
土方の理解不能な行動に全蔵との戦いで負傷をしている刹那が、ネギ達よりいち早く土方に向かって叫ぶ

「土方さん何やってるんですかッ! その人は私を助けた・・・・・・」
「うるせえお前は黙ってろッ! こいつは俺達真撰組がずっとマークしてた奴だッ!」
「え・・・・・?」

土方に怒鳴られて刹那がどういう事かと考えていると。
桂と土方がやり合ってそこにいるメンバー全員がそれを眺めている隙に千草は逃げる準備を始めていた。

「月詠の奴気絶しとる・・・・・・・全蔵ッ! こいつ持って逃げるでッ!」
「ちょいタンマァァァァ!! ケツが爆発するんだよこのままじゃッ!」
「爆発してもええから行くでッ! 何か知らんが仲間割れみたいなの起こしとるからこの隙にエスケープやッ!」
「千草ちょっと俺のケツ見てくれないッ!? 火出てるッ! コレ絶対ケツの穴から火出てるッ!」
「誰が見るかボケェェェェ!! ほら月詠持って走って逃げるでッ!」

痔持ちの全蔵が千草に向かって悲痛な叫びをもらした後、倒れている月詠の方に近づいてなんとか肩に担ぐ事が出来た。そのまま千草と共に本能寺から脱出する為にお尻を押えながらヨタヨタと走る、そんな彼等の行動に土方と桂に気を取られていたネギがやっと気付いた。

「あッ! 敵が逃げちゃいますッ!」
「次会ったらこうは行かんでッ! 覚えてなはれやッ!」
「千草マジでヤバい・・・・・・! 俺の肛門から大文字焼きが撃てるかもしんない・・・・・・!」
「ケツ穴からウチの呪文と同じ技放ったらシメるでッ! ほなさいならッ!」
「ま、待って下さいッ!」

ネギの叫びも聞かず、千草と月詠を肩に担ぎならお尻を手でおさえている全蔵はスタコラサッサっと本能寺から去って行った。敵を逃がした事にネギは深くため息をつく。

「逃がしちゃった・・・・・・」
「兄貴、そんなに落ち込まなくてもいいッスよ、どうせアイツ等また来るらしいしそん時に捕まえましょうや」

彼の肩に乗っかっているカモが優しくフォローしている頃、敵がもう去ったにも関わらずまだ土方は桂相手と苛烈な戦いを行っていた。

「こんの腐れロン毛ッ! 大人しくその首寄こしやがれッ!」
「腐れロン毛じゃない桂だ」
「チィッ!!」

土方の連続斬撃に桂は優雅に土方を刀で吹き飛ばす。刀ごと飛んだ土方だが空中で立て直して地面に着地し、再び桂に猛攻を仕掛けようとするが、その前に刹那とのどかの叫び声が彼の耳に届いた。

「土方さん待って下さいッ!」
「その人達は私達を助けてくれたんですよッ! なのにどうしてッ!」

二人の声を聞いても土方は刀を抜いたまま鋭い眼光で桂を睨む。引く気は毛頭ないらしい。
土方の放つ殺意に桂の後ろにいる獣の耳を頭に付けた少年は、両手を後頭部に回しながらしかめっ面で彼を眺める。

「なんや助けてやったのに斬りかかってくるなんて、恩知らずにも限度っちゅうモンがあるんやで兄ちゃん」
「そうですよ土方さんッ!」
「さすがにそれは無いッスよトシの旦那ッ!」
「謝りなさいよマヨッ!」
『地面を舐めるように頭下げて土下座しろ、つうか舐めろよ』
「うるせえよテメェ等ッ! つうかボードに書いてるのなんだそれ殺すぞコラッ!」

少年だけではなくネギやカモ、アスナや謎の生物エリザベスにさえ文句を言われ完全に四面楚歌状態の土方は全員に怒鳴った後、ため息を付く

「そいつの名は桂小太郎、『狂乱の貴公子』と呼ばれている俺達真撰組の敵だ」
「敵? どういう意味ですか?」

何を言っているのかと問いただしてくる刹那に土方はポケットからタバコを一本取り出しながら答える。

「その男は攘夷志士だ」
「攘夷志士・・・・・・それってッ!?」
「俺達の世界の凶悪犯と恐れられる攘夷志士の中でも最も危険なテロリスト、『高杉晋助』と並ぶぐらいの男だ、そいつも過去に何度もテロ活動をおっ始めてる」
「高杉と同じ・・・・・・!」

桂があの高杉と同等に危険人物と称されると聞かされて、刹那は瞬時に死装束の札を取り出して桂を睨みつける。

「あなたもあの男と同じ攘夷志士なんですか・・・・・・・?」
「ほう、あの男とはもしや高杉か? アイツの事を知っているのか?」
「あの男の様に・・・・・・あなたも罪のない人々を利用したり傷付けたりするんですか・・・・・・?」
「せっちゃんッ!」

刹那の桂への質問に木乃香が諭すように叫ぶ。だが刹那の耳には届いていない、もしこの男が高杉と同じだとしたら・・・・・・

「俺は奴とは違う」
「違う? 同じ攘夷志士なのにですか・・・・・・?」
「確かに昔は奴と似たような過ちを行っていたが、今は古い友人のおかげで過激派から穏健派になった、つまり一滴の血を流さずに俺は世界を変えたいのだ」
「・・・・・・」

高杉と自分の思想は違うと説明する桂に、刹那は信じていいのかどうか無言のまま頭を悩ます。そんな彼女を尻目に桂は土方の方へ目を戻す

「だがしかし、あの男の様な輩には俺が過激派だろうが穏健派だろうが関係ないのだがな」
「当たり前だコラァッ! さっさとお縄頂戴しやがれッ!」
「土方さん止めてくださ~いッ!」
「どけ宮崎ッ! 何でお前を助けたのかは知らねえがッ! それに免じて逃がすなんて真似出来るかッ!」

刹那が高杉について桂に聞いている頃から、目の前でワタワタ手を振りながら止めさせようとするのどかに土方が吠えている、桂はやれやれと首を横に振った後少年の方に顔を向ける

「少年逃げるぞ、幕府の犬にこれ以上付き合うのも面倒だ」
「なあいい加減少年って呼ぶの止めろや」
『じゃあクソガキでいいか?』
「なんやとッ! お前なんかQ太郎やないかッ!」
『あ? やんのかコラ? お前最近桂さんにベタベタくっついて生意気なんだよ』
「喧嘩をするんじゃない、さっさと退くぞ」

エリザベスと少年がお互いケンカ腰になっている所をすかさず桂が叱り、懐からある物を取り出した。棒状の小さな菓子、『んまい棒』だ。
桂はそれを取り出した後、急にネギ達の方へ顔を向ける。

「そういえばお主達に忠告しとかなければな、木乃香殿を絶対に一人にするな、奴等はきっとまた彼女を狙ってくる」
「え? あ、はい」
「ちょっと待ってアンタ等何か知ってるのッ!? アイツ等が木乃香狙ってくる理由とかッ!」

ネギの隣にいたアスナが身を乗り上げて桂を問いただす。彼は首を横に振り、土方がまだのどかと揉めているのを確認した後、彼女に向かって口を開く。

「詳しくは俺も知らん、だが恐らく目的は木乃香殿の膨大な魔力だ、奴等はその魔力を利用してとんでもない事をしようとしているに違いない」
「木乃香の魔力・・・・・・?」
「ウチの魔力?」

狙っている理由は自分の魔力、その事に木乃香はあまり分かってないようだ。前に刹那を自分の魔力で治癒した事あるが、あの様な事普通の魔法使いも出来るのではないか・・・・・?
そんな事を木乃香が考えていると桂はんまい棒を上にかかげながら彼女の方へ向く。

「用心しておくといい木乃香殿、連中はあれだけではない、宇宙海賊『春雨』の幹部とあの高杉の奴もいる、お主やその周りに何をするかはわからんぞ」
(春雨ッ!)
「どうしたのよネギ? 急に驚いたような顔して」
「い、いえ・・・・・・」

桂の言った言葉にすぐに反応したネギにアスナがキョトンとするが彼はごまかすように手を振った後顎に手を当てる。

(春雨・・・・・・僕とネカネお姉ちゃん、アーニャの村を悪魔と一緒に襲った連中だ・・・・・・奴等がここに・・・・・・)

過去に自分の村を悪魔と共に襲い、多くの知人達を殺して行った宇宙海賊『春雨』、そこの連中の幹部が今ここにいる、そのニュースにネギは深い衝撃を受けた。
そんな彼の心境を知らずに桂はネギを始め周りの生徒に聞こえるように口を開いていた。

「それではお主達、ここでさらばだ、まあ時が来ればまた会えるであろう、それでは・・・・・・」
「ま、待って下さいッ!」
「逃がすかテメェェェェェ!!!」
「土方さぁぁぁぁん!!」

んまい棒を掲げて別れの言葉を残す桂にまだ彼の事を信用できない刹那と腰に抱きついているのどかを引きずったまま走ってくる土方を残して

「んまい棒、蛇弧夜姫(タコヤキ)ッ!!」
「うおッ! また煙幕かッ!」

叫び声とともに桂がんまい棒を地面に叩きつけた瞬間、その場に立ち起こる煙、土方は思わず腕で目を隠す。

「何かほのかにタコ焼きの匂いがするのがスゲェムカつくッ!」
「ハ~ハッハッ! さらばだ諸君ッ!!」
「またな~」
『歯磨いて寝ろよ』
「くそッ! 待ちやがれ桂ッ!」 

土方の声空しく桂と少年、エリザベスの三人が煙によって姿を消す。
煙が消えて視界が良好になる頃には三人は何処にもいなかった。

「逃げられたか・・・・・・んにゃろ~テメェ等のせいだぞッ! 何でさっさとあいつを取り押さえなかったッ!?」

桂一行にまんまと逃げられた事に土方がタバコの煙を黙々と吐きながらネギ達に向かって怒鳴る。だがネギ達から見れば彼等は自分達のピンチを救ってくれた恩人だ

「土方さんには悪いですけどあの人が悪人なんて思えません」
「ウチも思ったわ、あの人せっちゃんやみんなを助けてくれたエエ人やって」
「わ、私もそう思いますッ! あのペンギンさんはちょっと怖かったけど・・・・・・」
「お前等なんでそうやって初めて会った他人を簡単に信用できるんだ? しかもよりにもよってあの桂を・・・・・・」

ネギ、木乃香、のどかが口を揃えて桂を庇う光景に土方は手で頭をおさえる。
江戸の世界で桂小太郎と言えば、知らぬ人はいない程の超有名な攘夷志士なのだが、そんな事を全く知らない三人には桂はただ窮地を救ってくれた恩人なのだ。
このお人好し三人組では話にならないと思った土方は、神妙な表情で固まっている刹那の方へ目を向ける。

「お前はどうなんだ?」
「私は・・・・・・まだ信用できません・・・・・・いくら助けてもらっとはいえ攘夷志士は攘夷志士、私達を脅かす可能性はゼロでは無いと思います」
「お前にしちゃ上出来な意見だ、それじゃツインテール娘、てめぇは?」

刹那の意見に感心したように土方は頷いた後、眠そうに欠伸をしているアスナの方に話を伺う。

「さあ? ウザい長髪たらしたアホみたいな男だとは思ったけど危険人物だとは思わないね、だってガキと変な生物連れたテロリストなんて聞いた事無いわよ」

あまり深く考えていない楽観的な意見を言うアスナの肩に乗っかっていたカモも賛成するように腕を組みながら頷く

「俺っちも大丈夫だと思いますよあの連中は、敵だったら俺達の事なんてほっとく筈ですぜきっと、トシの旦那の大事な娘っ子も助けてくれたんですしここは大目に・・・・・・うげッ!」
「俺がいつそんな事言ったんだ、ああんッ!!」
「す、すんませんでした・・・・・・!」

話の後半からカモがニヤつき始めた瞬間、土方はアスナの肩にいる彼をむんずと鷲掴みにして額に青筋を浮かべる。締めつけてくる手の中でカモはジタバタしながら苦しそうに彼に謝った。

土方はカモを地面に叩きつけた後、難しい表情を浮かべながら腕を組む。咥えていたタバコをプッと捨てた後、土方は深いため息をついた

「よりにもよってこんな時に桂と会うとは・・・・・・坊主、帰って作戦会議だ、話の整理を付けねえと頭が痛え」
「わかりました」

土方の意見にネギはコクリと頷く、今夜だけで驚く事が膨大な数で押し寄せてきた。ここは一旦全員で話を整理して色々と対策を練るのが一番だろうというのが土方の意見だ。
それに彼が一番問題にしている事に解決しなくては、それは

「あ、あの土方さん私、何がなんだかわかんないんですけど・・・・・・いきなり忍者に攫われたり、火とかおサルさんとかを出す女の人が現れたり、ネギ先生が怖くなったり、変なペンギンが出てきたり・・・・・・」
「・・・・・・」

今一番最も混乱している少女、のどかが土方に向かってオロオロしながら話しかける。
ただの一般人のだった彼女が今夜体験した事はまさに非日常のファンタジー尽くし、現実ではありえないハプニングの連続で驚かない筈がない。
土方はそんな彼女に疲れた調子で頭を掻き毟りながら

「・・・・・・帰ったら全部話してやる」
「土方さん・・・・・・」

自分の事情をのどかに全部説明する事を決めた土方に負傷した体を引きずりながら刹那が不安そうに見つめるが彼は仕方なそうに舌打ちをする

「ここまで突っ込んでおいて教えねえわけにはいかねえだろ」
「そうですけど・・・・・・うわッ!」
「よし、帰るぞテメェ等」
「ちょッ! ちょっと土方さんッ!」

まだ何か言いたげな刹那だったが土方はそんな彼女を急に持ちあげて背中に担ぐ。突然の出来事に刹那は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「わ、私は大丈夫ですからッ!」
「黙って俺の背中に掴まっとけ、軽い傷でもねえだろオメーの体はよ」
「ですけど・・・・・・」
「なんだよ」
「のどかさんがいますし・・・・・・」

全蔵戦でかなりの深手を負った刹那の事を案じて土方はおんぶしてくれているであろう。だが彼女から思えば彼とこうゆう事をするとのどかに悪い気が・・・・・・

「すみませんのどかさん・・・・・・」
「わ、私は平気ですからッ!」
「・・・・・・」

土方におぶられながら謝る刹那にのどかは手を横に振りながら気にしてないとアピールする、彼女のそんな姿に土方は少し居心地が悪くなってスタスタと帰路に着く事にした。

「・・・・・・モタモタしてると置いてくぞテメェ等」
「せっちゃん、土方さんにおんぶされてどう?」
「何か恥ずかしいやら罪悪感やらで一杯です・・・・・・」

土方におんぶされている刹那を見て木乃香が楽しげに彼女に質問するが、刹那にとっては何処か浮かばれない気分だ。
土方と刹那、それに木乃香の後ろからはカモを肩に乗せたネギとまだ欠伸をしながら眠り瞼をこすっているアスナと慌てながら土方を追いかけるようにのどかが早足で歩いてくる。

「のどかさん何処か怪我とかしてませんか?」
「何もされなかった本屋ちゃん?」
「いえ大丈夫です、色々とご心配かけてすみません・・・・・・それと助けてくれてありがとうございます」
「私は何もしてないんだけどね、それより私達にお礼言う前にマヨにお礼言ったら? アイツ凄く本屋ちゃんの事心配してたんだから」
「そうなんですか・・・・・・?」

まぶたを重そうにフラフラと歩いてるアスナから土方の事を聞いたのどかはほんのり顔を赤らめる。彼女のそんな態度を見てアスナは一段と大きな欠伸をした。

「帰ったらあいつにお礼言っときなさいよ・・・・・・」
「はい・・・・・・」
「ネギ~私もう眠いんだけど・・・・・・あんた力あるんだから私おぶりなさいよ」
「え~アスナさんは別に何処も怪我してないじゃないですか・・・・・・」
「今日は色々あって疲れてんのよ、忍者が出るわおサルは出るわ、変な生物は出るわウザったい長髪は出るわで、ヘトヘトよ・・・・・・」
「しょうがないですね・・・・・・よいしょっと」

浴衣の裾をグイグイと引っ張っておぶってくれと命令してくるアスナに、ネギは渋々と彼女を背中にヒョイっとおぶる。そのまま土方達の後を追うネギ

「あんたさっきの術使わなくても力あるのね・・・・・・」
「日常の時でも5%ぐらい自然に発動してるんですよこの術は、アスナさんぐらいの体重なら余裕で持てます、神威さんだったら楽勝で100kgぐらいの大岩も指一本で持ちあげちゃいますが」
「へ~」
「それに神威さんってアスナさんより大食いなんですよ? それも朝飯程度で牛一頭軽く食べれるぐらいな、見た目は普通の人なのにバクバク食べるから最初ビックリしました~」
「ふ~ん」

なんか楽しそうに自分の師匠の喋るネギの話にアスナは不機嫌そうに相槌を打つだけだ。
自分の知らない所で彼はそんなにも神威と一緒の時間を作っていたのか・・・・・・

「随分とそいつに懐いてるのねアンタ・・・・・・」
「まあちょっと怖い人ですけど僕にとっては“お兄さん”みたいな人でしたから」
「お兄さんねぇ・・・・・・」
「ヘヘヘ、もしかして嫉妬してるんすか姐さん?」

アスナがネギの背中におぶられていると彼の肩に乗っかってやらしい笑みを浮かべているカモが話しかけてくる。アスナはそんな彼をジト目で睨みつける

「なわけないでしょ、ナマモノのクセに何言ってんのよ・・・・・・」

本当はカモを掴んでぶん投げてやりたいのだが眠気と神威に対する不思議な苛立ちのおかげで元気がないアスナは、そのままネギの背中でだるそうに目をつぶる。

(神威か・・・・・・一度会ってみたいわねそいつと)

そんな事を考えながらアスナはネギの背中で眠りにつく。今日は本当に色々会ったのだ

こうして銀時を除くメンバー達は修学旅行初日のハプニングを無事に乗り切り、やっと『嵐山』の宿屋に帰ることとなったのであった。


































一方、銀時はその頃、謎の男クウネルの治癒魔法で、千雨とあやかが不安そうに見守る中体の傷を治してもらっていた。

「終わりましたよ」
「すげぇなお前、傷口どころか折れた骨まで治せるのか」
「ハハハ、全盛期はもっと酷い傷も一瞬で治せたんですけどねぇ、どうにも眠ってたおかげで力が戻ってこない」

肩の傷も塞がり折れたアバラ骨までも治してくれたクウネルに銀時は感心しながら自分の体の状態を見直す。
さっきまで死ぬかも知れないほどの重症だったのにあっという間に回復してしまった。だがクウネルからみれば昔はもっと早く出来たらしいのだが

「まあアレだ、あんがとよ」
「いえいえ」
「銀さん大丈夫なんですか・・・・・・?」
「おう、この通り銀さん完全復活だ」
「よかった・・・・・・」

まだ心配そうに見つめてくるあやかに銀時はピョンと立ち上がって完全に治った事をアピールする。それを見てあやかはホッとしたように一安心するが、千雨の方はまだ不安そうだ

「本当に大丈夫なのかお前・・・・・・」
「大丈夫だっつってんだろ、お前今日はやけに心配性だな、いつもは俺が何されても平気なツラしてたクセに」

千雨の態度に銀時はヘラヘラ笑いながら冗談を言うが彼女は怒ったようにカッと目を見開いて

「当たり前だろッ! マジで殺されかけたんだぞお前ッ!」
「千雨さん・・・・・」
「殺されかけても結局生きてんだからいいだろ、そんな急に怖い顔すんなよ、な?」
「うるせえッ! こっちがどんだけ心配してたのかわかってんのかッ!」
「・・・・・・・」

どうやら千雨は本気で怒ってるらしく銀時はバツの悪そうに表情から笑みを消して頬をボリボリと掻く。千雨が銀時に怒っているのを見たあやかも辛気そうな顔をして大丈夫かと二人を交互に見る。
そんな気まずそうな雰囲気を出す三人に明らか空気を読んでいない男が笑いかけながら銀時に向かって話しかけてきた。

「あの~すみません、ちょっと空気が悪い中でこんな事も言うのもアレですが、ちょっとお話いいですか?」
「ん? ああそういえばお前の事聞くの忘れてたわ、で? 何でヅラの野郎の事も知ってたよ」
「ええあの人と会ったのは数か月前です、どうやらここに意図的に幕府の連中に飛ばされたらしくて、それで桂さんはしょうがなくここで生活を余儀なくされてるんですよ」
「山崎が言ってた江戸の神隠しに巻き込まれたのかアイツ・・・・・・・あれ、てことはつまり・・・・・・」

桂がこの世界にいるとクウネルから聞いて銀時は口をへの字に曲げる

「ヅラの奴この世界に来てるってわけだよな?」
「来てますよ、それにいる場所はこの京都、離ればなれになった幼馴染に会えるなんて嬉しいでしょ~」
「全然嬉しくない、俺があんな奴がここに来ても全然嬉しくない、つうか殺してやりたい、高杉の次はヅラか・・・・・・勘弁してくれよ全く・・・・・・」

おちょっくてるのか素ではしゃいでいるのかわからないが楽しげに話すクウネルに銀時はだるそうに言葉を返す。二人が話しているのを傍で見ていたあやかは銀時の方に恐る恐る尋ねる

「あの何かあったんですか・・・・・・?」
「どうしたもこうしたもねえよ、前にお前に話しただろ、俺の世界にいるヅラとかいうバカ。あいつこっちの世界に来てるんだとよ」
「ヅラ・・・・・・銀さんの幼馴染で一緒に戦争に参加した人ですか?」
「そうですよお嬢さん、桂さんはこの人、あと高杉さんと一緒に攘夷戦争で活躍した侍です」

銀時の代わりにクウネルがあやかに簡単に桂について説明すると、それを聞いた彼女が静かに頷く、しかし後ろから千雨がまだイライラしたような表情で身を出して来た。

「で? 銀八の幼馴染だとかいう奴とアンタはどういう関係なんだよ」
「ん~と・・・・・・仲間みたいなもんですかねぇ、私は攘夷とかそういうのには興味ありませんが、結構ここでは随分といいお付き合いをさせてもらってます、一緒にいると退屈しないんですよあの人」
「・・・・・・じゃあ何でそんなアンタが銀八の所に来たんだよ」
「そりゃ決まってるでしょ、桂さんのお知り合いをこの目で見る為です、あの人からよくあなたの話を聞いていたので、まあ来てみたらいきなり“あの人”と戦ってたのは予想外でしたが・・・・・・」

千雨から視線を変えてクウネルは銀時の方へ目を向ける。そしておもむろに彼に向かって顔を近づけていく。

「ふ~む・・・・・・」
「近い近い、顔近づけ過ぎ、離れろよバカ」
「アハハ、すみません」

物凄く自分に顔を近づけてくるクウネルに銀時が嫌そうな顔をして片手で突き放す。観察されるのもいい感じしないのに、あそこまで顔を近づけられると少し恐怖感が湧く。

「・・・・・・で? 本当に俺に会いに来ただけなのか?」
「ああそうでした、あなたに言い忘れていた事が一つ」
「んだよ?」

まだ話があるのかと銀時はふと眉をピクっと上げる。

「明日のお昼時に奈良公園で待ってて欲しいんです、色々と話をする事があるので、高杉さんの事やさっきあなたを襲った人についても知りたいでしょ?」
「高杉の奴もここに来てんのか?」

さっきの女といい目の前の男といいやけに高杉について何か知っている匂いがする。銀時がそんな事を思っていると案の定、彼も何か知っているらしい。

「ええ詳しくは明日話します、あと桂さんの所まで案内しましょうか、久しぶりにお会いしたいですよね」
「それは別にいいから、なんで異世界にまで来てヅラなんかと会わなきゃいけねえんだよ」
「そんな事言わずに、あの人はあなたとの再会を心待ちにしているんですよ? それに来てくれないとお話しませんよ?」

こちらに向かってニコニコ笑いながら話してくるクウネルに銀時はしかめっ面を浮かべる。
何故かはよくわからないがこういう男は苦手だ。

「・・・・・・言っとくけど俺はヒマじゃねえんだぞ、空きがあったら行ってやる、ヅラにそう伝えておけ」
「ありがとうございます、桂さんにも伝えて置きますね、ご友人が是非あなたに会う事を心待ちにしていると」
「こっから川に叩き落とすぞコラ」
「ハハハハ、それではまた明日」

銀時に悪態をつかれた後、クウネルは一度彼に頭を下げてそそくさと帰って行った。桂の所へ向かったのだろうか。
銀時は去って行くクウネルを見えなくなるまで見送った後、ポリポリと頭を掻いてため息を付く。

「次から次へとわけわかんねえ連中が押し寄せてきやがって・・・・・・とりあえずさっきの女の事はネギ達にも話した方が言いな、アイツ等も襲われるかもしれねえんだし」
「私達も帰りましょうか・・・・・・」
「そうだな・・・・・・もう眠いわ俺・・・・・・」
「待てよ」
「あん?」

大きな欠伸をした後、あやかの言う通り銀時は旅館に帰ろうと思い歩き出した。だがその前に着物の裾を突然千雨に引っ張られたので、立ち止まって振り返る。

「さっきの男の話信用するのかよ・・・・・・お前の幼馴染と知り合いだとか、前にお前と会った『高杉』とかいう奴の事も話すとか、敵の正体を教えてやるとか」
「嘘付く必要もねえだろ、それにあいつが敵だったら俺の傷を治す必要なんかねえよ」
「じゃあ明日、あいつの言ってる事が本当だったら会いに行くのか、桂って奴と・・・・・・」
「う~ん、しずな先生とデート出来なかったら行くかもしれねえな」
「真面目に答えろよッ!」
「千雨さんどうしたんですか・・・・・・!?」

千雨がまた銀時に怒鳴った事にあやかが不安そうに彼女を見つめる。今まで千雨が本気で怒っているのを見た事はあやかや銀時でさえ見た事がない。

「さっきの男、敵の話をするだとかどうだとか、まるでお前も一緒に戦ってくれみたいな事言ってたじゃねえか・・・・・・」
「・・・・・・」
「もし一緒に戦おうとか言われたらお前どうするんだよ・・・・・・?」

銀時と千雨はしばらくお互い見つめ合っていると、彼は突然クルリと後ろに振り返って歩いて行ってしまう。

「さあな」
「おいッ! ちゃんと答えろよッ!」
「落ち着いて下さい千雨さんッ!」

適当に流しただけでそのまま行ってしまう銀時に千雨が食ってかかるように飛びかかろうとするが、その前にあやかが彼女を必死に止める。だが完全に怒っている彼女はそんなあやかを振り払って走って銀時の前に出て仁王立ちする。

「私はお前が戦うのは反対だからなッ! さっき死にかけたのにまた死ぬような事になるかもしれねんだッ! そんな事絶対にイヤなんだよッ!」
「・・・・・・」

千雨からみれば彼が戦う事だけは絶対にして欲しくない、さっきの命の取り合いの戦いを見てわかった。さっきの“彼を”見るのは二度とゴメンだ。
銀時はしばらく前に立ち塞がって睨みつけてくる千雨を見つめた後、ポンと彼女の頭に手を置く。

「心配してくれてありがとよ」
「・・・・・・」
「行こうぜ、お前等とっくに就寝時間なのにこんな所にいたらマズイしよ」
「銀八ッ! まだ話が・・・・・・!」
「千雨さん帰りましょう、班のみんなが心配してしまいますわ・・・・・・」

頭から手を離して去って行く銀時を呼びとめようと千雨が彼に手を伸ばそうとするがすぐにあやかがその手を掴んで諭す。そんな彼女に千雨はキッと睨んで

「いいんちょお前はいいのかよッ! 銀八が死ぬかもしれねえんだぞッ!」
「私だって本当は戦って欲しくありませんわ、けど・・・・・・」

あやかの本音も銀時には戦って欲しくない。本気で命をかけた戦いなんて彼女だって千雨同様絶対にしてほしくない、だが

「あの人が何かの為に戦いたいと望むなら、私達に止める権利はないと思っています」
「・・・・・・もしそれであいつが死んでもいいのかよ」
「いいわけありませんわよ、でも私はあの人の納得のいくまま進んで欲しいんですの・・・・・・生き方を変えずにまっすぐに・・・・・・」
「・・・・・・」

思いつめた表情であやかが前に進んでいく銀時の背中を見つめている姿に千雨は少し羨ましく感じた。今の自分ではそんな考え絶対に出来ないからだ
彼女がそんな事を考えていると急にあやかがこちらに向かってニコッと笑いかける

「早く行きましょう千雨さん」
「ああ・・・・・・」

あやかに手を引っ張られてまだ何処か納得のいかない表情を浮かべていた千雨だったが、彼女に手を引っ張られたまま銀時に追いつく為に早足で歩きだす。















この先、もっと過酷な激しい戦い繰り広げられていく事も知らずに・・・・・・







































年越し記念・短編・「銀さんからのお年玉」

場所は麻帆良学園の万事屋。すっかり真冬になった外を窓から眺めながら、銀時は千雨とあやかと一緒に部屋の中央に用意したこたつの中に入ってみかんをほおぼっていた。

「は~紅白とかK-1とかガキ使スペシャルも終わってようやく年越せたなと実感湧いてくるよ、やっぱ正月はこうやってるこたつでみかん食うのが一番だわ」
「そうですわね、でも本編がシリアスになってきてるのに私達はこんな所で何しているんでしょうか?」
「そういう話はいいから・・・・・・・ところで銀八よぉ、なんで私達ここに呼んだわけ?」

こたつの真ん中に置いてあるみかんを拝借して皮をむきながら銀時に向かって千雨が話しかける。すると彼は軽く舌打ちした後しかめっ面で

「お前さぁ今日は何の日かわかってる? 正月だよ? ハッピーニューイヤーだよ? こういうめでたい日は人呼んでとわいわい楽しむのが普通だろうが、本当常識わかってねえなお前」
「千雨さんは普段こういうイベントでも家でゴロゴロしてそうですから仕方ありませんわ」
「うっせえな余計なお世話・・・・・・・おいッ! 私が皮むいたみかん勝手に取るなよッ!」

言いたい放題の銀時とあやかに千雨がイライラした調子で返していると、勝手にあやかが彼女がむいたばかりのみかんをヒョイと持ってって食べてしまう。千雨はそんな彼女に叫ぶがあやかはしらっとした表情で

「あら? 私の為にむいてくれていたんじゃないですか?」
「何でそうなるんだよ・・・・・・たく」

遠慮なくみかんを食べるあやかに千雨は一睨みした後、またみかんを取って皮をむく作業をする。

「そういえば銀八、お前こういう日は私達に渡すモンあるんじゃねえのか?」
「何だよ渡すモンって? ひょっとして俺が録画してた亀田選手と内藤選手の試合のビデオ? あれ興奮したよな、だってあんな気持ちの良い試合は初めてみたもん俺」
「違えよッ! なんで正月始まって早々中学生の女子が「亀田戦貸して」なんて言うんだよッ! 普通正月と言ったら・・・・・・・おいッ! だからいいんちょ私のみかん勝手に食うなってッ!」

銀時と千雨が話している隙にまたしても皮をむき終わったみかんをこたつの上に置いた瞬間すぐに取り上げて食べるあやか、さすがに二度もやられて千雨も段々腹立ってくる。

「なんで自分でむかないんだよッ! 自分でむいて食べればいいじゃねえかッ!」
「だって千雨さんがむいたみかんの方が美味しいんですもの」
「誰がむいたって同じ味だよッ! 大貧民がむこうが大富豪がむこうが味は絶対に変わらねえんだよみかんはッ! 誰にだって平等で接するんだよみかんはッ!」
「銀さんも千雨さんに皮むいてもらったらどうですか?」
「いや俺もうとっくの前に皮むけてるからね、もうずっと前から脱いでるから」
「お前は正月早々下ネタに走ってんじゃねえよッ!」

あやかと銀時に正月早々ツッコまされるハメになった千雨はため息をついた後、またみかんを取ってむく作業を行う事にした。

「正月って言ったら普通お年玉とかなんかあるんじゃねえのかお前・・・・・・? まあ期待なんて元からゼロだったけどよ」

正月といったらやはりお年玉、万年金欠の銀時にとってはそんなこと死んでもしない筈だ。
そう千雨がぼやいているのを聞いた銀時はいつもの死んだような目で「ふ~ん」と頷く

「お前お年玉欲しかったんならさっさとそう言えよ、ちゃんと用意してるよ銀さん」
「えッ! マジッ!?」
「本当ですか銀さんッ!?」
「いつも顔を合わせているお前等に俺がなんのねぎらいもしねえわけねえだろ」

銀時はそう言って千雨とあやかが唖然とする中、自分の傍に置いていた紙袋をゴソゴソと探り出す。まさかこの男が自分達にお年玉を用意しているとは・・・・・・
二人が少し銀時に感心していると彼は紙袋からある物を取り出して、まずはあやかの目の前にポンと置いた。
彼女はそれを見て思わず目が点になってしまった

「はいお年玉、金じゃなくて物だけどよ」
「・・・・・・なんですかコレ・・・・・・?」
「何ってアレだよ、『ホームレス中学』と『ホームレス大学生』、お前みたいなお嬢様とはかけ離れた生活をした兄弟の熱いヒューマン小説だ、こういうの読んでいかに自分が恵まれているのか考えろ」
「正月になんちゅう事考えさせようとしてんだよッ!」

目の前に置かれた二冊の本にあやかが頬を引きつらせていると銀時が腕を組んで頷きながら説明する。どう見てもお年玉に渡す様な物では断じて無い

「ブックオフで大量に安く売ってたから買って来た」
「生々しい事言ってんじゃねえよ・・・・・・つうか中古の本をお年玉にするな」

銀時の付け足しに千雨がツッコむと今度は彼女の方に向きながら彼は紙袋をゴソゴソと探り出す。

「まああやかにもある事だし、当然お前にもあるわけで」
「いやもういいから、私その本もう読んだ事あるしいらないから・・・・・」
「ちげえよ、お前には田村兄弟の本じゃなくてもっと別のモン用意してんだよ、お前にはコレを常に仏壇に置いて日々ツッコミに精進して欲しいと思ってな、ホレ」

銀時は取り出したお年玉をカチャと千雨の目の前に置く。
出て来たのは地味な感じのメガネだった。

「・・・・・・なんでメガネ? 私持ってんだけどもう」
「バカ野郎ただのメガネじゃねえんだよ、これはなんと江戸一番のツッコミと言われたあの有名な志村新・・・・・・ってオイィィィィ!!」

銀時が説明する前に千雨は目の前に置かれたメガネを無表情のまま拳を下ろして叩き壊した。バキッ! と鈍い音を立ててメガネは粉々で見るも無残な姿に

「何してんだお前ッ! 新八が粉々になっちまったじゃねえかッ! おい新八しっかりしろッ! 新八ィィィィィィ!!!」
「うるせえよ知るかよ新八なんて、つうかそれ新八じゃなくてただのメガネじゃねえか」

完全なるゴミへと変わってしまったメガネに銀時が悲痛な叫びを上げるが千雨は小指で耳をほじりながらポツリとつぶやく。

「やっぱお前にお年玉なんて期待なんてするもんじゃねえな、なあいいんちょ」
「読んでみて思ったんでけど、なすびの方が文才ありましたわね」
「読んでるのかよッ! ホームレス中学生読んでるのかよッ! ていうかお前結構マニアックだなおいッ!」

千雨がむいたみかんを勝手にほおばりながら黙々と「ホームレス中学生」の読書に勤しんでいたあやかに千雨が叫んでいると、銀時は新八もとい壊れたメガネを部屋の隅に置いてあるゴミ箱にほおり投げて、ハァ~と深いため息を付く。

「人がせっかく上げたモンをスクラップにしやがって・・・・・・」
「何でお前さっきあんなに必死に叫んでたのにあっさりポイしてるの? 新八ポイしていいの?」

千雨のツッコミを無視して銀時はパンと自分の膝を叩いた後、急にキリッと顔を上げる。

「しょうがねえ死んだ新八は忘れて俺達は前を向いて歩こう」
「いや新八死んでないから、別サイドで頑張ってるからね?」
「という事で読者のみなさん今年も最終回までよろしく」
「もう最終回が見えて来てますけど今年もよろしくお願いしますわ」
「え? こんな感じの締め方でいいのコレ?」







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