人気のない場所にある大きな橋。そこに一人の男が二人の少女に見守られながら一人の女とお互い牙をむいて戦っていた。「くおらぁぁぁぁ!!」「・・・・・・」銀時の木刀による乱舞攻撃もフードで顔を隠す謎の女は無言のまま持っている金色の剣で華麗に受け流し、銀時の攻撃の隙を付いて女は剣を前に突き出す。「チッ!」女性とは思えない早さに不意をつかれたのか銀時はその突きを肩に掠めてしまい一歩下がる、それを後ろから見ていた千雨は彼の肩に出来た傷を見て体が震える。「ぎ、銀八・・・・・・血が・・・・・・」「・・・・・・こんなモン唾つければ治る」「で、でも・・・・・・!」「お前はそこでジッとしてろよ、すぐに片付けっから」後ろにいる千雨に振り返らずに話し終えた後、銀時は肩から流れる血を気にせずに女に向かって走り、持ってる木刀を横薙ぎに振るう。だが女はその剣撃を受ける前に上に飛翔「なッ!」ゆえに3Mぐらいの跳力を見せる女に銀時が唖然としてると、そのまま彼女は空中で前宙して回転力を入れ銀時に剣を振り下ろす。「へッ! 曲芸師ですかコノヤローッ!」「・・・・・・」「ぐッ! 重てぇ・・・・・・! この力・・・・・・本当に女か・・・・・・!?」剣を振り下ろしながら落ちてきた女の攻撃に銀時は木刀の両端を持って受け止める。その威力に彼の体が若干沈みそうになり、思わず顔に苦しそうな表情を浮かべていく。「銀さん・・・・・・!」銀時の持つ木刀が女の金色の剣によってミシミシと悲鳴を上げているのに、千雨の隣で一緒に見守っていたあやかは考える、何とかしなければ「警察に・・・・・・千雨さん警察を呼びにッ!・・・・・・千雨さん?」「・・・・・・」あやかが話しかけても千雨は体を震わせながら銀時と女を瞬きも忘れて凝視している。今まで彼女は本気で戦っている銀時の姿を見た事が無い、いつもふざけた調子の彼があんな顔になって敵と対峙している事に千雨の体の震えは止まらない。「銀八が・・・・・・銀八が・・・・・・」「千雨さん・・・・・・」「いいんちょ・・・・・・あいつ大丈夫だよな・・・・・・大丈夫だよな・・・・・・」「・・・・・・大丈夫に決まってますわ」銀時が殺されるのではないかという不安に押し潰されになっている千雨にあやかは安心させるように頷く。今までこんなに震えて不安と恐怖に駆られている千雨の姿を見るのは彼女も初めてだった。木刀が折れる前になんとか体をずらして横っ飛びし、そのまま女をギョロリと睨んで攻撃に転じる銀時を見ながら千雨の息はだんだん荒くなってきた。あやかも警察の所へ行くなど忘れて彼の安否を心の中で必死に祈る。これが彼女達が初めて見た銀時のもう一つの姿であった第三十八訓 転ぶ先に一筋の光銀時が謎の女と刃を合わせている頃、京都にある本能寺ではまだ戦いが繰り広げられていた。「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・」「オイオイもう終わりか? 俺はまだピンピンしてるぜ、せめて一撃ぐらい俺に当ててみろって」疲労と苦痛に耐えかね四つん這いになって息を荒げている刹那の姿に、彼女の敵である服部全蔵は持ってるクナイを振り回しながら嘲笑っている。刹那の両太ももと左腕にはクナイが刺さり、立つ事も辛いし刀を持つのも辛い。だが彼女はそれでもなんとか立ち上がろうと顔を上げる。「お前みたいな奴には・・・・・・絶対に負けない・・・・・・!」「そうかい、ホレ」「うぐッ!」「せっちゃんッ!」歯を食いしばってこちらを睨みながらなんとか立ち上がった刹那に、全蔵は振りまわしていたクナイを投げ彼女の右腕に突き刺す。両足の次は両手の自由も奪われ、再び倒れてしまう刹那に見てられなかった木乃香が泣きそうな顔で走り寄る。「せっちゃんしっかりッ!」「お嬢様・・・・・・お逃げ下さい・・・・・・」「さてさて姫様を守る騎士も倒した事だし、そろそろお宝を頂くとするか」目の前で刹那を抱きかかえている木乃香を見て全蔵はまるで終わったようにツカツカと二人に近寄って行く。「悪いが俺もこうみえて結構必死でね、あんたを連れて行かないと俺の雇い主が殺されちまうし、そいつの命だけは助けてやるからこっちに来い」「何で・・・・・・何でウチを・・・・・・」「さあな、俺はただの腕を買われた忍びだ、俺も月詠も雇兵みたいなモンだからな、ただ命令に従うのみなんだ、俺が思う限り知ってるのはあそこにいる女と・・・・・・」全蔵はネギと対峙している千草に目をやった後、すぐに目に涙を溜めている木乃香の方に顔を戻す「過激派攘夷志士の高杉ぐらいじゃねえか?」「た、高杉って・・・・・・!」「高杉晋助・・・・・・前に私達の学校に現れた左目に包帯を巻いた男です・・・・・・」「あの人が・・・・・・またあの人が何かやってるん・・・・・・・」全蔵と自分の腕に抱かれている刹那が言った名前に木乃香は息を呑む。彼女は一度だけ彼に会った事がある。女物の着物を着て口元に常に笑みを作り、その目は今まで見た事のないほどの深い闇に覆われている様だった。言葉巧みに自分の幼馴染の刹那を操って銀時と戦わせた張本人。高杉晋助、彼はまた自分達に何かしようと企んでいるのだろうか。「俺は千草に同行した時にあいつと何度か会ったことあるが・・・・・・いけすかねえ目をした男だったぜ・・・・・・何をやるつもりか知らねえが、イイ事じゃねえのは確かだな」「そんな・・・・・・またあの人アカン事しようと・・・・・・」「まあもっと詳しく知りたいなら本人に聞いてみればいい・・・・・・俺が連れてって会わしてやるよ・・・・・・」「い、いやや・・・・・・!」歩み寄ってくる全蔵に木乃香は涙を流しながら首を横に振る。だが全蔵は情を捨て近づいてくるのを止めない、彼にも雇い主の命がかかっているのだから。するとこっちに来る全蔵に刹那の妖刀死装束に一瞬禍々しい輝きが映り出した。「高杉の犬の分際でお嬢様に・・・・・・・!」「ん?」「近寄るなァァァァッ!!」「おっと」「せっちゃんッ!」「お嬢様は渡さないッ!」残った力を限界まで振り絞って刹那は持っていた死装束を近づいてきた全蔵に振り上げる。咄嗟に反応して後ろに下がった彼を睨みながらかろうじて立ち上がり、刀をまた構え直す。「お嬢様・・・・・・私の後ろに隠れて下さい・・・・・・」「せっちゃんもう無理せえへんでええよッ! ウチ土方さん呼んで・・・・・!」「ダメです・・・・・・・あの人だって戦ってるんです・・・・・・ネギ先生だって・・・・・・この男は私だけで・・・・・・」刹那は疲れた表情で後ろにチラッと振り返る。土方が二刀流の月詠と一瞬で何十回も刃を会わせながら戦っている。彼の戦闘を見るのはコレで二度目だが、本当に強い。「私も・・・・・・あの人や白夜叉の様に強ければ・・・・・・」「あ~らら~無理しちゃって、そういう生き方してる奴は長生きしねえんだぜ?」「黙れッ! お前や高杉の好き勝手にはさせないッ!」「しょうがない・・・・・・お前みたいなガキ嫌いじゃねえんだけどな・・・・・・」噛みつくように叫んでくる刹那に全蔵は頭を手でおさえてやれやれと首を横に振った後コートの下から再び大量のクナイ手裏剣を取り出す。「ここらで大人の怖さって奴をその身に叩きこんでやるよ・・・・・・」「来い・・・・・・例えこの身が塵になろうが木乃香お嬢様だけはお守りする・・・・・・!」「いいねぇ、いい顔になって来たじゃねえか、俺もなんかゾクゾクして来たぜ・・・・・・!」決意を決めた刹那の表情に全蔵は楽しそうに笑みを作り長い前髪の間から目を光らせる。互いの得物を取り出した今、間もなく戦いの火蓋が再び切って落とされる。「せっちゃん・・・・・・」両手で祈り合わせ木乃香は必死に幼馴染の無事を祈る事しか出来なかった。刹那と全蔵が戦っている頃、彼女達の後ろでは土方が月詠相手に奮戦していた。「ちょこまかしやがって・・・・・・」「ハハハ、こっちどす~お兄さん」茶化すようにそう言うと月詠はピョンピョン跳ねながら二本の刀を振るってまだ口にタバコを咥えている土方に斬撃を行ってくる。彼はそれを一本の刀で防いで弾き飛ばして、状態を崩した月詠に攻撃を当てようとするも、またピョンと跳ねてバックステップを取り土方から距離を取る。「めんどくせえ相手だ、カエルみたいに跳びやがって」「はう~ウチ女の子やからもっとカワイイので例えて下さ~い」「モウドクフキヤガエルでいいか? 黄色くて可愛いぞ」「結局カエルじゃないですか~~しかも猛毒ってワード付いてます~~」冷静な土方に月詠は刀を握っている両手をブンブン振りまわして抗議する。そんな彼女を見て土方はハァ~とため息とタバコの煙を同時に口から吐く。「お前腕はいいのは確かだがやっぱガキだな・・・・・・やりずれぇ」「ガキだからってあんまり舐めない方がいいですよ~」「おっと」今度はこちらに向かって跳んでくる月詠に土方は体を捻って避ける、だが彼女はすぐに振り返って脇差で心臓めがけて突いてくる、彼はそれを刀で受け止める。(攻撃のテンポが上手く読めねえ・・・・・・こんなガキだが油断してるとすぐに命持ってかれるな・・・・・)「お兄さん本当にお強いどすな~でもあそこで戦ってるお兄さんのお連れさんは全然です~~」「何? なッ!」脇差しと刀でつばぜり合いをしている中、月詠が呑気そうに話しかけて後ろの方に振り返る。土方も見てみるとそこには彼の連れである刹那が敵の一人のあの忍者に追い込まれている所で会った。「クソッ! あのバカあんなになるまでやられてんのかよッ! どけッ! テメェの相手は後だッ!」「あ~ん」刀を思いっきり横に振るって月詠を一気に吹き飛ばし、冷静さを忘れて土方は刹那の方へ走る。だが瞬時に来る後ろからの殺気「チィッ! 素直に行かしてくれるわけねえかッ!」「いけず~ウチともっと遊んで~」「めんどくせえの相手にしちまったぜ・・・・・・」今度は脇差しではなく刀の方で襲ってくる月詠に土方は舌打ちしながら迎え撃つ、どうやら彼女を倒さない限り刹那への応援は出来ないらしい。「あっちはあっちで遊んでるんやから、ウチらはウチらで楽しみましょ~~」「・・・・・・そうか俺とそんなに遊びてえか?」「え?」「だが俺がやりたいのは遊びじゃねえ・・・・・・」刀と刀をぶつけ合わせた状態の時に、土方は口に咥えていたタバコをプッと捨てた後、足場を固め月詠み向かって横薙ぎに振るう。あまりにも突然の早さに月詠は思わず一歩退く、だがそれを見逃さず土方は彼女に向かって突っ込む。「俺がやりてえのは・・・・・・喧嘩だ・・・・・・!」「うわ~瞳孔めっちゃ開きおった~~、やっと本気になってくれたんどすか~嬉しいわ~~」「派手なパーティをお始める・・・・・・・!」「わ~い」瞳孔が完全に開いた土方による度重なる連続攻撃を月詠は笑いながら二刀の刃で受け止める、だが彼女と同じく口に笑みを浮かべている土方は攻撃を止める気配を一切見せない「ショータイムだ・・・・・・!」「お付き合いしま~す」のほほんと笑いながら月詠は土方の斬撃を軽く受け流していく。どうやら刹那と違ってこちらはまだどちらが優勢かわからないようだ。一方ネギと千草の所はというと「喰らえなはれッ! 三枚符術・京都大文字焼きッ!」「ぎゃぁぁぁぁ!! 火出た火ィィィィィ!!」「兄貴ィィィィ!! 俺達このままだと死ぬッスゥゥゥゥッ!」人質に使えるのどかを一旦後ろに置いた千草は、懐から出した札をネギ達に向かって放つ、その瞬間彼等の頭上に向かって大の字の形をした炎が落ちてくる、ネギの使う西洋魔術とは違う関西呪術だ。後ろについて眺めていたアスナとネギの肩に乗っかっているカモがパニくっていたが彼は落ち着いて上に向かって杖を突きだし「風化・風塵乱舞ッ!」ネギの叫び声と共に突然暴風が彼の周り起き上がり、飛んでくる炎をあっという間に吹き飛ばして消滅。「これぐらいの魔法どうって事ないです」「呪布使いのウチの炎がこんな簡単に・・・・・・・」「助かったッス・・・・・・」「ちょっと危ないでしょッ! 女子供になんちゅうもんやってくるのよッ!」術が効かなかった事に苦々しい表情を浮かべている千草にアスナがカンカンになって怒っるが彼女は悪びれる様子もなくしかめっ面をするだけ。「神威の弟子なんやから殺す気でいかんとアカンやろ、けど本当に殺さへんから安心せい」「・・・・・・」「もしアンタを殺したらこっちがアイツに殺されるわ」意味ありげな笑みをこちらに向かって浮かべてくる千草にネギは黙ったまま杖を構える。一方千草の話に全くついていけない様子のアスナとカモは頭がこんがらがる「神威? 誰ッスかそれ?」「松山ケンイチ主演の奴?」「姐さん、それ『カムイ外伝』」とんちんかんな事を言うアスナにカモがツッコんでいるとネギがボソリと二人に向かって呟く。「神威さんは僕に戦い方を教えてくれたお師匠さんです・・・・・・麻帆良で会ってそれからずっと色々と戦術を学ばさせてもらいました」「しッ!?」「師匠ッ!?」ネギの思わぬカミングアウトにカモとアスナが同時に驚く。そんな事全く予想だにしていなかったのだ。「師匠ってアンタそんなのいたのッ!? しかも麻帆良で戦い方教えてもらってたッ!? 意味わかんない何でアンタがそんな事必要なわけッ!? つうかそもそも何で私に一言も言ってないのよッ!?」「すみませんアスナさん、神威さんに絶対に他言無用だって言われていたので・・・・・・」「他言無用って・・・・・・アンタその神威って人何者なの?」「俺っちも気になるッス、どうみてもそいつ怪しいッスよッ! 他人同然の兄貴に戦い方なんて教えるなんてッ!」「それは・・・・・・」「そこのナマモノとお嬢さんは知らないようやな、あの神威って奴の事」アスナとカモが心配そうに追及してくるのでネギはどう言えばいいのか困っていると不意に千草が彼等に向かって話しかけてきた。「神威って奴は人間やない、『夜兎』や」「・・・・・・」「夜兎? 何それ?」『夜兎』その名前を千草から聞いた三人の反応はそれぞれだった。ネギは下唇を噛み、アスナは「は?」と目を細めて首を傾げる。一方ネギの肩に乗っているカモはその名を聞いて震えだす「や、や、やや、ややややや・・・・・・!」「どうしたのよアンタそんなに慌てて」「夜兎ォォォォォォ!? ちょッ! 夜兎ってマジっすかッ!? 兄貴そいつただのヤバい奴じゃありやせんッ! 危険中の危険ッ! 超デンジャラスな化け物じゃないっすかぁぁぁぁぁ!!!」「えッ! カモ君、夜兎を知ってるのッ!?」「当たり前ッスよッ! あらゆる場所を旅してきた俺っちにとって夜兎ってのは一番関わっちゃいけないモンでトップ3に入ってるんスからッ!」ワタワタと両手を振りながら慌てているカモが知っている事にネギは驚く、カモは再び話を続ける。「夜兎っつうのは昔かつて魔法界に突然宇宙から殴りこみにきた謎の種族の名前ッスッ! 兄貴知らなかったんスかッ!?」「ええッ! そうなのッ!?」聞いた事無かった情報にネギが驚いているがアスナがまた首を傾げている。「ネギ、魔法界って何?」「あ、そういえばアスナさん達にはまだ言ってませんでしたね・・・・・・」ネギは頭を掻き毟りながら質問してきたアスナに意を決して答える。魔法も知っている彼女なら別に話してもOKだろう「実は魔法使いだけが住んでいる『魔法世界』というのががこの世界の裏側にあるんです」「へ~・・・・・・はッ!?」「僕みたいに修業で来たり普通の人間を装って生活する為にこの世界に来る魔法使いもいますが、基本は魔法使いは魔法界にいるのが主流だって言われてますね」「天パの世界以外にも異世界ってあんの・・・・・・なんかどんどん頭痛くなってきた・・・・・」銀時のいる世界とはまた別の世界の存在をネギから知り、アスナは頭を手でおさえながらため息を付く。一体この世にはどれぐらい別の世界があるのだろうか・・・・・・そんな事を考えているアスナをよそにカモは話を続行する 「魔力が無いにも関わらず戦闘能力は並の魔法使いだと一瞬で屍に変えちまうほどの圧倒的強さ・・・・・・しかもその一族を率いていた首領は一人だけで魔法界の国を何個も滅ぼしたもう魔王どころか大魔王・・・・・・いや超魔王に君臨出来る程の野郎だったという話ッス・・・・・・!」「ちょっと待ってよ一人だけで国を潰すッ!? 何よその化け物ッ!?」「だから化け物だっつってるっしょッ! 幸いその時はネギの兄貴の親父さんの『サウザンドマスター』とその仲間達がなんとか首領含め、夜兎族全員を魔法界から追い出す事に成功したらしいんスけど・・・・・・まさかまだここに夜兎が残ってるなんて・・・・・・・」カモはそこで話を終えてため息を付く。魔法使いでもないただのオコジョ妖精の彼でも余程ショックな出来事らしい、しかも知り合いが関わっている事に更に落ち込む。だがそんな不安で一杯一杯のカモをよそにネギは一人で考えに没頭していた。「父さんが夜兎族を追い出した・・・・・・僕の恩人の星海坊主さんは夜兎族・・・・・あの人確か父さんの古い知り合いだって言ってたけどまさか・・・・・・」ブツブツとネギがつぶやいている姿を見て千草はようやくカモの話が終わったのかと三人に向かってだるそうに話しかける「もう夜兎族と魔法使いの歴史の話は終わったんかえ?」「あ、ゴメン、そういえばアンタがいる事忘れてたわ」「腹立つ小娘やなぁ~・・・・・・」自分の存在に今さっき気付いたようにこちらをみるアスナに、千草はカチンと来たような顔をして睨む「まあええわ・・・・・・・それでわかったやろ、この先生の師匠さんはとんでもなくヤバい奴やって」「・・・・・・」「戦闘本能の塊のような種族『夜兎』、ウチの知る限り神威って男は正に夜兎族を代表する様な戦闘狂や、ホンマそんなのと付き合ってよう生きてるな」呆れたようにこっちを見る千草にネギは黙ったままうつむいていると、アスナも彼に向かって心配そうに話しかける、「アンタねぇもうちょっと付き合う相手考えた方がいいわよ・・・・・・あの女が言ってるのが本当だったら危険人物ってモンじゃないわよ」「ええまあ確かにちょっと怖い所もあるんですけど悪人ってわけじゃないんです・・・・・・僕が悩んでる時も相談に乗ってくれましたし・・・・・・・」「どんな相談持ちかけたのよ?」そんな奴によく相談なんてしたなとアスナが呆れたようにネギに目を向けると、彼は色々会った事を思い出すように口を開いた。「えと「アスナさんがワガママで手がつけられない」とか「アスナさんが銀さんといつも揉めてて困ってる」とか「アスナさんが絶望的なほど成績が低くて困ってる」とか」「ちょっと全部私の事じゃないのッ! アンタいつもそんな事考えてたのッ!?」「それを聞いた神威さんはの答えは大体全部「殺しちゃえばいいじゃん」でしたね」「根本的な所から問題を解消させようとしてるじゃないッ! 何考えんてんのよそいつッ!」「さすがに僕も一分ぐらい悩んで無理ですって答えましたね」「何で一分もシンキングタイムがあんのよッ! 即決で答えなさいよそこはッ!」 苦笑しながら神威との思い出話を語るネギにアスナが飛びつくように叫ぶ。自分の知らない所でそんな物騒な事を話していたとは・・・・・・アスナはまだ顔も見た事ない神威という男にいささか嫌悪感を持ってきた。「やっぱりアンタがそんなのと付き合うのは絶対間違ってるわね・・・・・・」「い、いえアスナさんが考えてるほど怖い人じゃないんですよッ! ちゃんと僕が食料を持って行ってもお礼を言ってくれますし、僕が戦術の一つをマスターしたら頭撫でて褒めてくれますしッ!(その後「まだ俺に瞬殺されるぐらい弱いけどね」って言いますけど・・・・・・)」慌てて否定してくるネギにアスナはハァ~と深いため息を付く。「アンタその他人をすぐに信用しちゃう性格直した方がいいわよ・・・・・・」「子供ってのホンマ怖いモン知らずや」アスナの意見に同意するように頷いた後、千草もポツリと呟く。そんな彼女にネギは振り返ってそちらを見る「それにしても神威さんの事をそんなに知っているあなた達は一体・・・・・・・?」「ホホホ、知りたかったらウチを倒して見る事どすな、それじゃあ長話もここまでにしてそろそろこちらも動きましょか」千草は笑いながらそう言うと再び胸元からお札を二枚取り出す。どうやら魔力のこもったお札を使って様々な戦法を使うのが彼女の戦い方の様だ。「今度はさっきの炎とは違いますえ、それッ! 神威の弟子をボッコボコにするんやッ!」「兄貴ッ! あの女は符術使いだッ! どんな事が起きるのかわかんねえぞッ!」二枚のお札をこちらに向かって投げてきた千草に警戒するカモにネギは大丈夫だと頷く「どんな事が起きても僕は負けないよッ! 蛇が出ようが竜が出ようがッ!」二枚のお札が地面に突き刺さり姿を変えていく。ネギは目つきを変えて杖を背中に差し、拳を出してジリっと構える。姿を変えていくお札はどんどん形を変え大きくなりそして「ウキーッ!」「クマ~ッ!」・・・・・・・・・・・・・二メートル近くある巨大なファンシーな猿と熊が二体ネギ達の前に立ち塞がる。だが三人はそれを見て少々複雑な顔をした。なんか想像していたのと180度違う「蛇でも竜でも無いッスけど可愛くてデカイ猿と熊の二体出て来たッスね」「またおサルさんですか・・・・・クマも微妙におサルさんと見た目被ってますし・・・・・・」「芸が無いわね、一発屋の芸人みたいだわ」「うっさいわッ! 言っとくが見た目で騙されたら痛い目にあうでッ! 『猿鬼(エンキ)』ッ! 『熊鬼(ユウキ)』ッ! アイツ等に見せてやりなはれッ!」「名前を無駄にカッコよくしてるのが逆にサブいわね」「黙っとれ小娘ッ! ウチが徹夜で考えた名前にケチ付けんなッ! やれッ!」「ウッキーッ!!」「クマーッ!」「うわッ!」「ちょっとネギッ!」いちいちダメ出ししてくるアスナに千草は怒鳴った後、猿の猿鬼と熊の熊鬼に向かって命令する。すると二体は叫び声を上げながらネギに向かって跳び、そのまま拳を振り下ろして来たので、慌ててネギはアスナの腰を抱いて横っとびし攻撃をかろうじて避けた。猿鬼と熊鬼の拳はそのまま地面にぶつかり大きな穴を二つほど開けてしまう。「見た目では考えられないほど早いし力もある・・・・・・!」「何よアレッ! 見た目に反してメチャクチャ強そうじゃないのッ!」「兄貴ッ! ありゃあ符術使いがよく使う魔力で動かす『善鬼護鬼』って奴だッ! 術者を守る為の使い魔みたいなもんで中々手ごわいですぜこれはッ!」「てことはさっきからずっとヤムチャ見たいに解説しかしてない僕の使い魔のカモ君より全然凄いって事ッ!?」「どういう意味ッスかそれッ!? 俺っちの繊細なハートにグサリとグングニルの槍を突き刺さないでくだせえッ!」アスナを地面に置いて状態を立て直しながら肩に乗ってるカモに彼の気にしている所にダメージを与えた後、猿鬼と熊鬼を睨む。「二対一か・・・・・・・カモ君、アスナさんの所に行って・・・・・・僕が終わらせる」「え? ちょッ!」「ネギッ! アンタ一体何考えてんのよッ!」肩に乗っているカモを後ろにいるアスナに向かってほおり投げるとネギは杖も持たずに素手の状態で二体の敵に向かって歩いて行く。そんな彼の後姿を見てアスナとカモが慌てて叫ぶ。「相手が二人がかりなのよッ! お子ちゃまのアンタが勝てるわけないでしょッ!」「そうッスよ兄貴無茶言わんで下さいッ! あんな奴等と戦ったら兄貴殺されるかもしれねえんですぜッ!」「アハハ、心配しないで下さい猿でも熊でも僕の邪魔をするなら・・・・・・」ネギはそこで言葉を切ってアスナ達の方に振り返る。戦いに行こうとする顔ではなく、まるでおもちゃを与えられた子供の様な笑みを浮かべていえるネギがそこにいた。「全部潰します」「ネ、ネギ・・・・・・・?」「兄貴ッ! 後ろッ!」「ウキッキーッ!!」「クマクマーッ!!」こんな状況でも笑っているネギにアスナは背中にゾクッと悪寒を走らせる、だがそんな彼女と違い彼女の肩に乗っているカモが慌ててネギに向かって叫ぶ。後ろから猿鬼と熊鬼の二体がネギに向かって襲いかかって来た「ウキーッ!」「クマーッ!」「・・・・・・30%解放」ネギはそう呟いた瞬間、体が少し赤く光った。アスナとカモがそれに首を傾げているとそのまま襲いかかってくる二体の敵に瞬時に振り返って対峙し、そして「ウキッ!?」「クマッ!?」「それでは“準備も出来ましたので”始めましょうか」襲いかかって来た猿鬼と熊鬼の飛んできた拳をネギは口に若干笑みを作りながら受け止めた。二体の使い魔が予想外の事態に驚いているような様子を見せているとネギはそのまま二体の手を弾いてまずは熊鬼の懐に突っ込み「ク・・・・・・マ・・・・・・!?」「まずは一体・・・・・・・」「なッ!」手をナイフの様に突き出したネギの一撃は熊鬼の腹を貫通、そのまま熊鬼は苦しそうにパン!とはじけて消滅。その一瞬の出来事に眺めていた千草が驚愕した。「くッ! “例の禁術”をもうあんなに扱えるようになってるんかいッ!」「ウキィィィィィ!!!」千草が驚いているのも束の間、もう一体の相手猿鬼が仲間をやられたのを怒ったようにネギに殴りかかってくる。だがネギはそれをジャンプして避け、そのまま手刀を猿鬼の頭上に向かって「もう二体目ッ!」「キィィィィィッ!!」ネギは叫びながらの手刀はそのまま猿鬼と頭から体を縦に真っ二つに斬り下ろす、半分には割れた猿鬼も熊鬼同様破裂して消滅する。熊鬼どころか猿鬼も一瞬で消滅させたネギに、千草は悔しそうに舌打ちする「熊鬼と猿鬼が瞬殺やと・・・・・・!」「ネ、ネギ先生って・・・・・・あんなに強かったんだ・・・・・・!」千草の後ろにずっと隠れていたのどかもネギの戦闘能力を見て目を見開く。普段は優しい子供先生(時々怖いが)だった彼が目の前で二体の敵を素手のみで倒した事に驚きを隠せないようだ、無論それはアスナとカモも同様だ「何よアレ・・・・・・あんなに強そうだったおサルとクマをあんな簡単に・・・・・・」「肉体強化の呪文・・・・・・いやちげぇ、そんなレベルじゃないぐらいの戦闘能力だぜ・・・・・・」二体の敵を倒しても何事も無かったように首を鳴らしているネギを見てアスナとカモは呆然と眺めるだけだ。いつもの彼とは全然違う姿と目つきに恐怖すら感じる。獣を狩るときの目をした狩人、アスナが感じた印象は正にそれだった。「もう終わりですか? それとも今度は“あなた”が来ますか・・・・・・・?」「アンタ・・・・・・一体どれぐらいその術を解放出来るようになったんや・・・・・・」千草の質問にネギはより一層目つきが鋭くなる「神威さんから聞いたんですか? あの人は30%以上いくと“リスク”がデカクなると言っていたので僕は30%が限界です」「フン、あいつも優しい所あるんねんなそんな忠告言うなんて、“高杉のガキ”にも妙に優しい所あるし案外子供好きか?」「高杉のガキ・・・・・・・?」「だがそんな力も弱みを握ってるこっちのモンや、これ以上こっち来たら・・・・・」「きゃッ!」「のどかさんッ!」千草はしばらく独り言を言った後、後ろにいるのどかを乱暴に引っ張って腕で拘束する。突然の事にのどかもビックリしてそのままされるがままに前に突き出された「この娘っ子どうなっても知らんで・・・・・・?」「ネ、ネギ先生・・・・・・!」「僕の生徒を離して下さいッ! 卑怯ですよッ!」のどかが人質にされたのを見てネギの目つきがいつもの状態に戻り、慌てて千草に叫ぶ。だが彼女は鼻で笑っただけでなんの効果も生まれない。「卑怯? 神威の奴に何も教わらなかったんかえ? 世の中勝つか負けるが一番大事なんや」「く・・・・・・!」「ずるいわよアンタッ! 正々堂々と戦いなさいよッ!」「そうだぞコラァッ! 人質にするならそんなか弱いレディーじゃなくてこっちの姐さんを使えぃッ!」「ナマモノ殺すッ!」「ぎゃぁぁぁぁぁ!! すんません美人でカワイイレディィィィィ!!!」悔しそうにしているネギの後ろに移動したアスナがカモをとっちめていると千草は勝利を確信したかのように微笑む。「月詠はまだ決着着いてないようやけど・・・・・・全蔵はもう終わるようやな」「え? せ、刹那さんッ!」「ちょっとネギッ! あのままだと刹那さんが死んじゃうわよッ!」「俺っちも死んじゃいそうです・・・・・・」千草が顎でしゃくった方向をネギとアスナが見ると、全蔵とずっと戦っていた刹那が刀で体を支えて膝をついている所だった。既に満身創痍の彼女に全蔵は余裕綽々の態度で一歩一歩近づいて行く。「フゥ・・・・・・フゥ・・・・・・」「いやいやマジで驚いた、両手両足にクナイを打ち込まれてもそこまで戦えるとは思わなかったぜ、ま、もう終わりの様だけどな、楽しかったぜ神鳴流のガキ」「ま・・・・・だ・・・・・・!」「ん?」「終わって・・・・・・ない・・・・・・!」一瞬“黒い霧の様なモノ”が刹那の周りを囲ったように見えた事に全蔵が不思議に思っていると、木乃香が彼女の後ろから必死に泣き叫んでいる「せっちゃんもう止めてッ!」「お嬢様だけは・・・・・・どんな事をしても絶対に守ります・・・・・・!」「せっちゃん・・・・・・お願い誰か・・・・・・誰かぁ・・・・・・」刹那の周りから出る黒い霧を見て木乃香はイヤな気配を感じる。彼女の持つ死装束はやはりまだ死んでないのだ。「誰かお願い・・・・・・せっちゃんが・・・・・・あのままだとせっちゃんがまた・・・・・・誰でもええからお願い・・・・・・」四つん這いになりながら嗚咽を繰り返しながら、誰かに助けを求めるかのようにつぶやく木乃香、そしてありったけの力を振り絞って「せっちゃんを助けてぇぇぇぇぇ!!!」「・・・・・・承知した木乃香殿」「・・・・・・え・・・・・・?」叫んだ後、後ろから聞こえた見知らぬ声に木乃香が涙を流しながら後ろに振り返る。見るとそこには「遅れて済まなかったな、少年が場所を突きとめるのに時間がかかった」「誰・・・・・・?」「案ずるな敵ではない、お主の父君に色々と借りを作っている者だ」草鞋を履いて着物姿、腰には一本の刀を差している長い髪をした男。木乃香はその見知らぬ男を見て泣きながらもキョトンとする。だが彼に気付いた全蔵はハッと見て驚いている「お前は・・・・・・・!」「久しぶりだな、、前に会ったのは確か奉行所で戦った時だな、随分と前だったが俺はお主の事を色々と覚えてるぞ、確か・・・・・・」「なッ!」長髪の男は言葉を切った後、すぐに全蔵に向かって走る。いきなりの突進に慌てたのか全蔵も懐のクナイを投げるのが一瞬遅れてしまう、その遅れの隙を付いて長髪の男はあっという間に全蔵の背後につき腰に差してる刀を鞘ごと引っこ抜く、そしてそのまま「闘魂注入ッ!!」「お・・・・・・!」「確かお主は“痔持ち”だったな、俺みたいに日頃の鍛錬が怠っているからそんな病気になるのだ」男は鞘ごと全蔵の痔を患っているお尻に向かって注入、その瞬間、全蔵はとたんに体全身に痙攣を起こした後・・・・・・「おがぁぁぁぁぁぁ!!! 痔がッ! 痔がァァァァァァ!!」さっきまで余裕の表情をしていた全蔵が人選最大の苦痛だと言わんばかりの表情でお尻をおさえながら地面をのたうち回っている。そんな彼をよそに長髪の男は倒れている刹那の方に近づいた「お主は大丈夫か?」「あ、あなたは一体・・・・・・!」「せっちゃんッ!」「お嬢様・・・・・・」腰に刀を戻して立っている男に刹那は目を見開かしていると、そんな彼女に木乃香が泣きながら抱きつく。その時刹那の周りにある黒い霧がフッと消えた「あのままやったらまたその刀でおかしくなる所やったんやろッ! もうそんなに自分を追い込むのアカンでッ!」「すみません・・・・・・あなたもどなたかご存知ありませんが、ありがとうございます・・・・・・」泣きついてくる木乃香に刹那は申し訳なさそうに謝った後、長髪の男に向かってお礼を言う。だが男は首を横に振り「礼などいらん、俺は侍としての行動を取ったまでだ」「侍・・・・・・・?」男の言葉に刹那が「?」と首を傾げていると、月詠と交戦中の土方が刹那たちの方が静かになったので、戦いの最中ちょっとだけ様子を見ようと後ろに振り向いていた。するとそこにいた長髪の男を見て我が目を疑う。「あ、あいつはッ! あのウザったい長い髪の男はッ!」「ふふふ~、戦ってる時によそ見しちゃアカンよお兄さ~ん」「しま・・・・・・!」長髪の男を見て思わず驚いている土方に月詠は背後から容赦なく二本の刀で挟むように彼を襲う。土方はそのまま腰から真っ二つに斬られるのかと思いきや突然ガシッと彼女の両腕が何者かに掴まれる。「へへ、兄ちゃん、油断してると“こいつ”簡単にタマ(命)持っていくんやで、あっちのネエちゃんよりこっちの方を心配せんと」「あんれ~? なんであんさんがここに・・・・・・あ」自分と土方の間に現れた学生の制服を着て、頭には犬の耳の様なモノがぴょこんと出ている少年、彼を見て月詠が口を開けてビックリしているのも束の間、彼女に向かって土方の一閃が入る。「戦ってる時によそ見してんじゃねえよ」「うう・・・・・・一対一で戦いたかったのに~・・・・・・」土方は後ろで月詠がバタッと倒れた音を聞いて後ろに振り返った。「安心しろ峰打ちだ、女子供は殺したくねえ」「そんな甘い考えやとこの先地獄どすえ、ふふふ・・・・・・」不吉な言葉を残した後、月詠はその場で意識を失った。そんな彼女をしばらく見つめていた後、土方は助けてもらった見知らぬ少年の方へ視線を移す。「テメェ何モンだ・・・・・・? さっきこいつと知り合いみたいに話してたように見えたが・・・・・」「まあ知り合いや、俺は最初コイツと仲間やった時があってそん時に何度か会ってたんや、今は俺仲間やないけどな、やっぱあいつと一緒の方がずっとええわ」「あいつだと・・・・・・?」明らかに年上であろう自分に向かって気さくに笑いかけてきた少年が長髪の男の方に顔だけ振り返る。その姿を見て土方は眉をひそめた。何故ならあの男は・・・・・・土方が少年に警戒しているその頃、千草は口を開けてさっきまでの余裕とかけ離れた表情で呆然と場の状況を眺めていた。「なんやコレ・・・・・・ロン毛の男が突然現れ、全蔵が一瞬で弱点のケツをやられてKO負け・・・・・・月詠も・・・・・・あのガキやっぱ裏切りおった・・・・・・! 前々からずっと怪しいと思ってたんや・・・・・・! ん?」千草が二人の刺客がやられた事にイライラした様子でのどかを人質にしながら地団駄を踏んでいると、ふと自分の横に何かの気配を感じてそちらに顔を向ける「・・・・・・・え?」『助っ人参上』ペンギンの様なアヒルの様な・・・・・・とにかくデカイ変な生物が文字が書いてある手持ちのボードを持ってつっ立っていた。「いや助っ人って? え? どういう意味・・・・・・ぶはぁぁぁぁぁ!!」『こういう意味じゃボケェェェェェ!!!』混乱している千草に向かってその生物は一切容赦せずに黄色い足で蹴りを入れる。千草はそのまま吹っ飛びその拍子にのどかがバサッと謎の生物の両腕に落ちた。『大丈夫か?』「え、えとその・・・・・・・あ、ありがとうございます・・・・・・」『惚れるなよ』「そ、それは大丈夫なのでご心配なく・・・・・・」『惚れろよ』「えッ!? ど、どっちなんですか・・・・・・!?」手持ちのボードに文字を書きながら会話している事になんの違和感もなさそうにのどかがツッコんでいると、ネギ達が慌てて彼女に近寄る。「のどかさん怪我してませんかッ!?」「ネギ先生・・・・・・あのこの人誰ですか?」「知りませんしていうかコレ人ですかッ!? コレが人類だったら冷蔵庫も人類にカウントされるんじゃないですかッ!?」『通りすがりの仮面ライダーだ』「100%分かるウソこいてんじゃないわよッ! ペンギンだかアヒルだかよくわかんない生物のクセにッ! なんなのよこの気持ち悪いのッ!?」変な生物に向かってアスナがツッコんでいるとネギ達の方にさっき刹那を助けた長髪の男が近づいてきた。「気持ち悪くない、エリザベスだ」「うわさっきのッ! いきなり現れてあの変態忍者をやっつけて・・・・・・アンタ達一体誰なのよ?」「通りすがりのコーディネイターだ」「アンタまでウソついてんじゃないわよ」「いやウソじゃないんだけど・・・・・・・」冷たく突き飛ばすアスナに長髪の男は少し残念そうな顔をしていると、アスナの隣にいたネギが彼に向かって話しかける「あなた達は僕達の味方なんですか・・・・・・?」「うむ、今夜は近衛詠春殿の一人娘の近衛木乃香殿を守る為にやってきてな、あそこの少年とそこにいるエリザベスも俺の仲間だ、他にもう一人いるんだがそっちとは別行動をしている」「そうなんですか・・・・・・けどどうして・・・・・・」「そうやどうしてウチらの邪魔するんやッ!」ネギの言葉をさえぎって謎の生物ことエリザベスに蹴られて吹っ飛ばされていた千草が数M飛ばされた所で勢いよく起き上がる。着物についた砂を払いながら彼女は長髪の男を睨む。「もしかしてアンタがあのガキにいらん事言って裏切らせたんかッ!?」「俺は別に何も言っていない、お主らを裏切ったのはあの少年が自分で考えてやった事だ」「悪いな千草のネエちゃん」「チッ! アンタウチ等裏切ってこのロン毛男につくんかいッ!」桂とネギの間からひょっこり顔を出してきた少年に千草が恨めしそうに叫ぶと彼は頭を掻き毟りながら彼女に向かって笑いかける「いや~俺はアンタ等とツラを合わせるよりやっぱヅラと一緒の方が好きや」「ヅラ?」「ヅラじゃない」少年と千草に向かって男は否定した後、千草の方へ刀を抜いて突き出す。「桂だ」『狂乱の貴公子』と呼ばれた桂小太郎が遂に舞台へと上がった。