A組の生徒達が旅館で各々の部屋で休んでいる頃、銀時はと言うと「あ~生き返る」銀時は今、腰にタオルだけを巻いて湯気の立ち起こる何十人でも入れるような広い温泉に肩まで浸かって疲れを癒していた。今日は一日中トラブルに巻き込まれた彼もやっと落ち着ける時がやってきたのだ「これでしずな先生がいれば完璧だったんだけどな・・・・・・次入ってくんのはマヨとガキ、なんで野郎三人で温泉入んなきゃいけねえんだよコンチクショウ」愚痴を呟きながら銀時は一人で温泉の中を顔だけ出して暇なのでふと温泉の中を探索し始めてみる。湯気が立ち起こっていて周りがよく見えないので前に気を付けて軽く泳ぐように移動していた。「湯気で何にも見えねえな・・・・・・ん?」温泉の中を探索していると銀時の視界に人影が二つぼんやりと見えてくる。温泉に入っていたのは彼一人ではなかったと気付いた銀時はすぐに誰がやってきたのか想像できた「んだよもうあいつ等入ってきたのか? 声ぐらいかけろよ、しょうがねえ魚雷戦法でビビらせてやるか、ヘヘヘ」意地悪い笑みを見せた後、温泉の中に顔の下まで沈めて銀時はそっと音を立てずにその人影に近づいて行く。少しずつくっきりと見えてくる二つの人影、銀時はそこで顔を一回沈ませて水の中で息を止めながら移動を開始する。(いきなり近距離から浮上して驚く面を見てやる、あそうだ、ついでにチ○コのデカさでも見てやるか、ネギの奴意外とスゲーモン持ってるかもしれねえし、マヨは・・・・・・あいつ心小さいからチ○コも小せぇんだろうな)そんな事を考えながら銀時はぐんぐんと対象物に近づいて行く。だが近づいて行くたびに妙な違和感が出てきた。目の前に温泉に浸かっている裸体はネギのように小さい体でもなく土方のような屈強な体でもない。銀時は水の中で首を傾げながらその二つの体の目の前に行く。そしてその二人の裸体を見て銀時は心臓が止まりそうになった。(あ、あれぇ・・・・・・もしかして)頬を引きつらせながらその体を見て銀時は少しずつ顔を浮上させる。チャポンと水面から顔の上半身だけを出すと「・・・・・・」「は・・・・・・?」「ひ・・・・・・!」顔を出した瞬間、銀時がさっきまで見ていた体の持ち主達と目が合ってしまった。しかもその人物は「・・・・・・よ、よう・・・・・・お前等も風呂入ってたんだ、ハハ・・・・・・」「お、お、お、お前・・・・・・!」「え・・・・・・何で・・・・・・どうして・・・・・・?」いつも付けてるメガネを頭に乗っけて入浴している長谷川千雨と、お酒のおかげでジンジンする頭を手でおさえている雪広あやかがそこにいた、銀時がその二人を見て固まっていると、あやかは顔を真っ赤にして、千雨はワナワナと恥ずかしさと怒りで震え「こ、こんな所で何してんだァァァァ!!」「ごふッ!」「ああ・・・・・・」「いいんちょッ! しっかりしろッ!」顔だけ水面に出している銀時に向かって千雨は立ち上がり頭に向かってチョップをかます。その衝撃に銀時の顔がまた水面に沈む。同時にあやかが銀時に自分の裸体を見られた恥ずかしさのあまり後ろにある大きな石にもたれかけながら温泉の中で意識を失いかけている。千雨は銀時にかました後、すぐにそちらに顔を向けた。「おいッ! こんな所で気絶すんなッ! ここで気絶させされたら洒落にならねえよッ!」「よ・・・・・・酔い覚ましの為に千雨さんと温泉に入りに来たら・・・・・・銀さんがこんな所に・・・・・・・しかも私の・・・・・・私の・・・・・・あふぅ・・・・・・・」「いいんちょぉぉぉぉぉ!!」何故銀時がここにいるのかとパニック状態になりつつあやかは目を回しながら石に背中を預けガクッと気絶した。千雨が激しく彼女の上体を揺すぶっても一向に目を開けようとしない。「勘弁してくれよ・・・・・・お前のその気絶する習性どうにかしてくれよ、ていうかそもそも・・・・・・」「ぶはッ! アテテテ・・・・・・」「何で男のお前がここにいんだよッ!」水面から再び出てきて頭をさすっている銀時に、千雨はとりあえずあやかをその場に放置した後振り返って思いっきり彼に叫ぶ。すると落ち着きを取り戻したのか銀時は顎に手を当てながら口を開く「そうか、もしかしてここ混浴なんじゃね?」「こ、こ、混浴ぅッ!? 男と女が一緒の温泉に浸かるあの混浴ぅッ!?」「だろうな、男女の着替えは別だが中に入る温泉は一緒ってわけか・・・・・・ますますしずな先生を誘えなかったのがショックだな」「ふざけんなよ何で混浴なんだよッ! 何でお前がここにいんだよッ! 何で私達がここにいんだよッ!」「何言ってるのかわかんねえよお前、まずは落ち着け、あ・・・・・・」「何だよッ!」千雨の方へ顔を向けた瞬間すぐにそっぽを向く銀時に彼女がキレかけていると彼は手を震わせながら指差してくる。「あの千雨ちゃん、早く座って・・・・・立ってるとあの・・・・・・“全部”見えるから・・・・・・」「・・・・・・ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」混浴だと聞かされてパニックを起こしている千雨に向かって銀時は彼女から目をそむけながら顔を引きつらせて指摘する、さっきからずっと彼女の裸体が銀時の視点から丸見え。悲鳴を上げて千雨は慌てて温泉の中に体を沈める「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・銀八・・・・・・・見たかお前・・・・・・・?」「・・・・・・上から下まで全部見た」・・・・・・・・・・・顔を真っ赤にしている千雨に向かって銀時は無表情でぶっちゃけた。「テ、テ、テ、テメェェェェェ!!!」「うぐッ!」「殺してやるッ! ここで殺してやるッ!」すぐに銀時の後ろに回って彼の首に腕を回してクリンチし、そのまま締め殺そうとする千雨。初めて身内以外の異性に自分の裸体を見られた事に彼女はもう完全に錯乱している。「集団に入るのが嫌だったからこうやっていいんちょと二人だけで早めに入りに来たのに、何でお前と一緒に入るハメになるんだよッ!」「うごごごごごッ! 今は教論が入る時間だからお前の方が悪いんだろうがッ!」「知るかァァァァァ!!」「あがががががッ! 何か背中に“色々”当たってるッ! 体の一部が色々当たってるッ! 俺的にはそっちの方がヤバいんだけどッ!?」背中に自分の体をくっつけてくる千雨に銀時は慌てて叫ぶ。これ以上彼女とこんな事していると非常にマズイ「傍から見たら裸のまま二人で抱き合ってる様にしか見えねえからマジでッ! この光景人に見られたらどうすんだテメェッ!」「うるせえなッ! いいんちょは寝てっから大丈夫だよッ!」「その発言なんかヤバいから止めてくんないッ!? アァァァァァ!! もうダメ千雨ッ! もうお前の体全部背中に当たってるッ! 一旦離れてッ! 銀さんからの一生のお願いッ!」「絶対離れねえッ!」銀時の意見も耳に入れずに千雨は彼の背中に自分の体を押し付けたまま離れようとせずにそのまま腕で彼の首を締め付ける。だがふと何かの気配を感じて、千雨と首を絞められた状態の銀時は恐る恐る顔をそちらに向ける、見るとそこには「・・・・・・」「「あ・・・・・・・」」腰にタオルを巻いて立っている土方がタバコを咥えながら無表情で温泉の中で抱き合っている銀時と千雨と、その近くで気絶しながら温泉に肩まで浸かっているあやかを眺めていた。今ちょうど温泉に入りに来たようだ「・・・・・・」「あ、あの土方君・・・・・・これはね・・・・・・」「土方さ~ん、温泉どんな感じですか?」「パンフで見たんスけどここ混浴なんスよね~、やっぱ女の子とかいるんッスかね~? へへへ」何考えているのか分からないが絶対に誤解しているのだと思い、銀時が頬を引きつらせながら説明しようとするのだが、その前に教論のネギが腰にタオルを巻き、頭にオコジョのカモを乗せて元気そうに男子更衣室から出てきた。だが彼がこっちに来る前に土方は彼に近づきガシッと肩を掴む「坊主、帰るぞ」「え? 何でですか? 僕等まだ温泉に入って・・・・・・」「ガキのお前に見せちゃいけないモンが中にいた、ここは一旦出直すぞ」「見せちゃいけないモン・・・・・・ですか?」「なんスかそれ?」「いいから帰るぞ、邪魔しちゃ悪いからな」「「?」」土方の発言にネギとカモが首を傾げるが、そのまま彼に連れられて男子更衣室に連れ戻された。そしてピシャリと障子を閉める音が銀時と千雨の耳に聞こえてくる。抱き合ったまま呆然としている二人と気絶している一人を残して、土方は自分なりに彼等の『フォロー』をしてあげたのであった。第三十七訓 夜中に気を付けるのは見知らぬ女と見知らぬ忍者温泉に入ろうとする寸前で“見てはいけないモン”を見た土方は、入らずに旅館にあった浴衣だけを着て温泉から戻ってきた。「悪いな風呂に入れなくて、だが俺達があそこに行ったら邪魔者になる、ここは空気を読んで消えるのが大人のフォローだ」「あの~土方さんもしかして誰かいたんですか?」「坊主覚えとけ、例え嫌いな野郎でもそいつの色恋の邪魔だけはするな、わかったか?」「なんかよくわかんないけどわかりました・・・・・・」男子更衣室から土方と一緒に出てきた彼と同じく浴衣を着ているネギは、タバコの煙を吐きながら言う彼の教えにイマイチ理解できなかったがとりあえず頷いておく。例え普段から仲の悪い相手でもそいつの恋愛事情には決して邪魔だけはせずに静かに消える。それが土方十四郎の『フォローテクニック』だ。「それにしてもまさか万事屋の奴等があんな所まで進んでるとはな」「ん~? どうかしたのアンタ達?」銀時と千雨の進み具合に土方は眉をひそめていると、廊下から数人の生徒がやってくる。先頭にいたアスナが更衣室の前で止まっていた土方とネギに尋ねてきた。「アスナさん、皆さん揃って温泉入りに来たんですか?」「ハルナと夕映はいないけどね、何か今後のスケジュール考えるとか言ってた、嫌な予感しかしないけど・・・・・・で? アンタ達もう風呂入ったの?」「入ろうとしたんですけど土方さんが入っちゃいけないって・・・・・・」「何よそれ、背中に入れ墨付けた人でもいたの?」アスナの質問に土方は静かに口からタバコの煙を吐き出す。「そっちの方が全然マシだったな、とりあえず今はお前等も入るな、わかったか?」「はぁッ!? 何で私達まで入っちゃいけないのよッ!」「土方さん、何かヤバいモンでもあったん?」「また関西呪術協の者に何かされたんですか?」「お、お化けでも出たんですか・・・・・・?」勝手な言い分を口走る土方にアスナは抗議の目を彼に向けて、後ろにいた木乃香と刹那、のどかも追及してくる(ついでにのどかがいるのでカモは喋れない)。そんな彼女達に言おうか言わまいか迷った挙げ句、土方は遂に重い口を開いた。「ここは混浴だ、それで今は万事屋の野郎がいつも連れて歩いてるメガネと金髪と一緒に温泉入ってる、お前等そこに入れんのか?」「ええッ!?」土方の情報を聞いてのどかが手を口に当てて驚いてると木乃香とアスナも深いため息をつく「それは無理やわ・・・・・・」「え? なんでですか?」「ここ混浴なの・・・・・・あ~あ、天パにとってはイイ事尽くしってわけか・・・・・・」「え? なんで白夜叉にはイイ事尽くしなんですか?」「刹那さんみたいに頭の中お花畑の人にはわからない事よ」よくわかっていない様子の刹那にアスナはしっしっと手で追い払う、生まれてから一度も男と女の恋なんて恐ろしいほど無縁だった彼女は理解できないようだ。そんな彼女はさておき、ようやく土方から教えてもらった事情を隣で聞いていたネギも頷く。「温泉に入れなかったのって銀さんが千雨さんといんいんちょさんと一緒にいたからなんですか・・・・・・」「そうだ、という事でしばらくお前等温泉入ろうと考えるなよ、少しはお前等も空気ぐらい読んでやれ」「あれ? やけに土方さん銀さんに優しくありませんか・・・・・・・?」「さっき言っただろ嫌いな奴でも色恋の邪魔はすんなって」「ああそういう意味だったんですか・・・・・・・」小指で耳をほじりながらあっけらかんと言う土方にネギは苦笑しているといきなり「ヒッ!」という木乃香の小さな叫び声が聞こえる。二人は彼女の方へ顔を向けると彼女が震える指でアスナを指さしていた。「ア、アスナ・・・・・・」「どうしたの木乃香、そんなに顔を引きつらせて?」「お・・・・・・おサル・・・・・・」「おサル? 木乃香いくらアンタでもぶっ飛ばすわよ」「ちゃうちゃうッ! アスナの足元におサルがッ!」「はぁ~? おサル~?」慌てて自分に指を指してくる木乃香に何言ってるんだと眉をひそめた後とりあえずアスナは足元を見てみると・・・・・・「キー」「・・・・・・何コレ?」一匹の小さな子猿がアスナの足元にまとわりついていた。「何で私の足元にこんなおサルがいんのよ」「テメェの弟か?」「とりあえずマヨこっち来なさい、顔面に一発入れたいから」冷静に尋ねてくる土方にアスナがカチンと来ていると、足元にいる子猿が何時の間にか増えてる事に気付く。「「キーキー」」「あれ増えてない? 私の足元にいるサルが増えてない?」「テメェ仲間だと思われてるんじゃねえか?」「おーい、いい加減にしないとアンタ半殺しじゃ済まないわよ~」タバコを携帯灰皿に捨ててる土方に向かってアスナが脅しで拳を振り上げた瞬間「きゃあッ!」「「「「「キーキーキー!」」」」」「「「「「ウキーウキーウッキッキー!!」」」」」」「うわッ! 子ザルの群れがあっちこっちからッ!」いきなり何かに躓いたようにアスナがその場で転んで尻もちを付く。気が付くと周りにはゾロゾロとアスナの周りにいるのと同じ子猿達が群れで押し寄せてきたのだ、ネギは慌てて子猿の群れに一歩引く「すみませんアスナさんって何人家族なんですかッ!?」「修学旅行にこんなに家族連れて来て何様だテメェッ! 少しは常識ってモンをしろッ!」刹那と土方に呼ばれながら子猿に転ばされたと思われるアスナはお尻をさすりながら起き上がる。「アテテテ・・・・・・何抜かしてんのよアホコンビッ! そもそも私は家族いないのよッ! コイツ等とは全く無関係よ私はッ!」「じゃあこの子猿は・・・・・・」「チッ! 敵の仕業か・・・・・・!」彼女の説明にようやく理解した刹那と土方は互いに武器を取り出す、刹那は持っていたお札『死装束』を黒刀に変え、土方は浴衣姿でも腰に差していた刀を鞘から抜く。「「「「「ウキーウキー」」」」」「コイツ等も恐らく式紙です、斬ればただ元の紙に戻るだけです」「そいつは都合がいい、動物愛護団体に怒られなくて済むわけだ」「きゃあッ!」「はッ!」刹那の話を聞いて余裕たっぷりに土方が刀を構えていると、突然女性の悲鳴が二人に飛んでくる。「せっちゃ~んッ!」「お嬢様ッ!?」「「「「「ウキッキー!!!」」」」」咄嗟に刹那がそちらに顔を向けると子猿達が集団で木乃香を胴上げしながら何処かへ攫おうとしている所。それを見た瞬間刹那の目つきが変わる「お嬢様に・・・・・・!!」右手に持つ死装束に力を込めて刹那は悲鳴を上げている木乃香を攫う子猿の集団に一気に近づき「触るなッ!」横一閃、その瞬間子猿の群れは一瞬で大量の紙切れになった。「大丈夫ですかお嬢様ッ!」「ありがとうせっちゃん・・・・・・けどその刀って・・・・・・」子猿が消えてその場に倒れる木乃香に慌てて刹那が近寄り安否を聞いてくる、木乃香はそんな彼女にお礼を言いながら彼女が持っている刀に心配そうに目をやる。『死装束』・高杉から貰った妖刀だ、木乃香も見た事がある「その刀って前に“あの人”から貰った刀やろ・・・・・・」「大丈夫です今はもう葉加瀬さん達のおかげで何もない無力なただの刀になってますので」「ホンマに・・・・・・?」「・・・・・・ホンマです」「そう・・・・・・よかった・・・・・・」ホッとしたように安心している木乃香を見て刹那は複雑そうな顔をする。もし本当の事を言ったらまた彼女に余計な心配をかけてしまうからだ。死装束が危険の無い刀になるわけがない、それは刹那自身が一番知っている事である。刹那が木乃香の救出に成功している頃。土方も刀を両手に持って振りかぶり、乱暴に子猿たちをめった斬りにしていた「チィッ! 数が多いだけかコイツ等ッ! ちっとは骨がねえとこっちは退屈だぜッ!」「土方さんが斬ったおサルさんが紙に・・・・・・一体どうなってるんだろう・・・・・・」「ウキーーーーー!!」「きゃあッ!」斬り刻まれた子猿が次々と紙になっていく光景見て、のどかが呆然としていると一匹の子猿が彼女に飛びかかる。「ボケっとしてんじゃねえッ!」「ひ、土方さんッ!」だがのどかに触れる前にその子猿は土方によって刀で真っ二つに斬られた。「あ、ありがとうございます・・・・・・」「たく・・・・・・」ドギマギしながらも頭を下げてお礼を言ってくるのどかに土方はプイとそっぽを向いて、新しいタバコを取り出し火を付ける「そろそろ片付いて来たな・・・・・・おい坊主、ブツは無事か?」火を付けたタバコを口に咥えながら土方は親書を持っているネギの方へ向いて尋ねると。彼は不思議そうな顔で土方の方へ向く。「ええ、何故かわからないけど僕より木乃香さんの方におサルさん達が行ってたようなきがしたんですが・・・・・・」「あの娘っ子に? どういう事だ?」「親書じゃねえんだよ“俺達”が欲しいのは」「きゃあッ!」「一人でボーっとしてると危険だぜツインテールのお嬢さん」「「!!」」突然見知らぬ声が聞こえ土方とネギはハッとして同時に声のした方へ振り向く。そこにいたのは青いコートを着たのどかと同じぐらい前髪が長い男、しかも彼はあろうことか生徒の一人を拘束している「悪いねぇ、俺も元々こういう仕事は好きじゃねえんだけど、やっとかないと俺の雇い主マジでヤバくなるらしいからさ」「あなたは・・・・・・・! アスナさんッ!」「くおらぁッ! 離しなさいよ変態ッ!」突然見知らぬ男が現れてネギは戸惑いを見せるも彼が右手をアスナの首に回して捕まえている事の方に危機を察知した。「なんなんですかあなたはッ! アスナさんを返して下さいッ!」「そうよ今なら100発殴るだけで許してあげるから離しなさいよッ!」「だけじゃねえよ、殺る気満々じゃねえか」腕の中でじたばた暴れながら激しく抵抗を見せるアスナに男はツッコんだ後、気を取り直して再びネギに向かって余裕気に話しかける。「このツインテールのガキを返して欲しかったら近衛木乃香の方を差し出せ」「お、お嬢様をッ!?」「渡さねえとこのガキの命は無いぜ」「く・・・・・・すみませんアスナさん・・・・・・お嬢様の代わりに死んで下さい・・・・・・」「え・・・・・・?」「おいそこのアマァァァァ!! 一秒も考えずに私の命諦めてんじゃないわよッ! そこは何か色々と悩む所でしょうがッ!?」見た目は悔しそうだがあっさりアスナの命より大事な木乃香の方を優先する刹那に、男は戸惑う表情を見せて、アスナは彼の腕に捕まりながら刹那に向かって叫ぶ。だが彼女はしらっとした表情で「『お嬢様が誘拐される』『アスナさんが死ぬ』どうみてもここは後者を選ぶべきでしょ?という事でアスナさん死んで下さい」「せっちゃんアカンってッ!」「正直そいつが死のうがどうでもいい、勝手に殺せ」「土方さんッ!?」「ダ、ダメです~!」「ねえアンタッ! あそこの銃刀法違反者の二人を殺しなさいよッ! 私全力で協力するからッ!」「何でそうなるんだよ・・・・・・・」拘束されながらも刹那と土方を見ながら叫んでくるアスナに男は少々困った表情でつぶやく。まさか速効で人質の命を切り捨てる輩がいるとは思わなかった・・・・・・「まいったなこれ、まさか全く人質に使えねえ奴を人質にするなんてよ」「うるさいわねッ!」「しょうがねえ、お前殺しても後で化けて出てきそうだし・・・・・・」アスナを拘束している右手ではなく左手で顔をおさえてブツブツ呟いた後すぐに顔を上げ「直接お嬢様奪っちゃおうか」「なっ!」「そらよ、返す」そう言った瞬間捕まえていたアスナを刹那めがけて思いっきり投げ飛ばす「きゃあッ!」「うわッ!」飛んで来たアスナに刹那はそのまま彼女の下敷きに、それを見た土方がすぐに男の方へ刀を構えて走りだす。「俺がいるのを忘れてんじゃねえよッ!」「アンタの事は“よく”覚えてる、だからこれを使うんだよ」 「煙玉ッ!?」「よっと」驚いている土方を尻目に男は懐から取り出した紫色の手のひらサイズのボールの様なものを取り出し、それを床に叩きつける。その瞬間辺り一面が紫色の煙に囲まれてそこにいたメンバー全員の視界を失ってしまう。「前が見えねえ・・・・・・! まさか敵に忍びの道具を使う奴がいるとは・・・・・・」「・・・・・・こうみえて俺は元お庭番衆でね“真撰組の鬼の副長殿”・・・・・・・」背後から聞こえた男の声に土方は驚いた表情で振り向く、相手は自分の素姓を知っている。「どうしてそいつを・・・・・・・! 何者だテメェッ! 何であのガキを攫おうとするッ!」「そいつはちょっと言えないねぇ・・・・・・」叫びながら男を探すも周りは煙のおかげで何も見えない。声が聞こえても姿は見えない、完全に八方塞がりだ「テメェ等気を付けろッ! いつ襲われるかわかんねえぞッ!」土方は周りに向かって叫ぶも、男は誰も襲おうと考えていなかった。何故なら「あれ・・・・・・すんませぇぇぇん! 近衛木乃香さんいますかァァァァ!!!」「オメェも見えてねえのかよォォォォォ!!!」彼も自分が作った煙で前が見えないのだから「こうなったら闇雲に探すしかねえッ!」「待てコラァァァァ!! 何処いんだバカ忍者ッ!」「土方さんッ! 怪しい奴捕まえましたッ!」「ドアホッ! 私捕まえてどうすんのよッ!」「なんか妙に二つの柔らかい物がここにッ!」「ネギ・・・・・・私の胸捕まえてどうすんのよぉぉぉぉ!! 」「あだッ!」「コントやってんじゃねえよッ!」煙の中で土方達が見えない中必死に叫びながら探すが何処にも男の姿は無い。しばらくして「ハハッ! テメェ等が遊んでるウチに俺はもう捕まえちまったぜッ!」「何ッ!?」「お嬢様ッ! おのれそこかッ!」「だから私だってつってるでしょうがッ!」「木乃香さんッ!」「安心しろ怪我はさせねえと思うぜ、あばよ」最後に男は言い残した時、煙が消えていきメンバーの視界もようやく見えてくる。だが男の姿は何処にもなかった。「逃げられたか・・・・・・・! クソッタレッ!」逃がした事に土方は悔しそうに思いっきり拳で床を殴る。彼の隣にいたアスナはネギを見つけて慌てて詰め寄る「ネギッ! アンタの持ってるのを奪うのが目的だったんじゃないのッ!? 何で木乃香を攫ったのよあいつッ!」「僕だってわかりませんよッ! まさか修学旅行でこんな事になるなんて・・・・・・銀さんがいれば・・・・・・」「あいつこんな肝心な時にいいんちょ達と温泉なんかに・・・・・・」銀時の不在にアスナが歯ぎしりしながら腹立っていると、ふと近くでブツブツと声が聞こえてきたのでそちらにチラッと目を向ける。「お嬢様を守れなかった・・・・・・私はもう生きてる資格ありません・・・・・・何で今こうやって生きてるんでしょうか私・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・私死ねばいいのに・・・・・・」「何しゃがみ込んで詠唱唱えてるの刹那さん・・・・・・怖いから止めて」体育座りでネガティブ思考に入っている刹那を見てアスナが呆れていると、彼女は突然立ち上がり土方に近づいて今度は彼の近くで正座する「土方さん私もう生きてる価値無いので切腹するんで介錯お願いします・・・・・・・」「おう、綺麗に飛ばしてやるよお前の首」「何バカな事やろうとしてんのよッ! 死んで逃げようなんてそうはいかないんだからッ!」死装束を持って自分の腹に突き刺そうとする刹那にアスナが彼女の後ろ襟を掴んで止める。「離してくださいアスナさんッ! お嬢様を守れなかった私なんて便所に吐いたタンカスのような存在なんですッ!」「どんだけ卑屈になってんのよッ!」「だって・・・・・・」後ろ襟を掴まれアスナに宙ぶらりんされてる状態で刹那はうなだれる「本来なら私はお嬢様を護る為の存在なのに、あんな男に・・・・・・」「どうしたんせっちゃん?」「何言ってんですかお嬢様・・・・・・お嬢様があの男に攫われ・・・・・・え?」「ウチがどうかしたん?」・・・・・・・・・・・・・・・・・攫われた筈の木乃香がキョトンとしながら立っている事にそこにいたメンバー全員は表情が固まった。「何でお嬢様いるんですか? さっきあの男が攫ったって・・・・・・」「そうよ、得意げにあの変態忍者アンタを手に入れたって・・・・・・」「え? ウチ何もされてへんよ? 煙がモワモワしてた時もしゃがみ込んでじっとしてただけやで?」ジト目で聞いてくる刹那とアスナに木乃香は首を傾げながら答える。それを聞いて土方は口にタバコを咥えながら疑問に頭を悩ます。「ちょっと待ておい、じゃああいつ何かっさらったんだ?」「あの~土方さん・・・・・・」「どうした坊主、何かわかったか?」ネギが非常に言いずらそうな顔をしていると彼の肩にずっと乗っかっていたカモが代わりに緊張しながら土方に向かってゆっくりと口を開いた「トシの兄貴と仲の良い宮崎のどかっていう女の子が・・・・・・いないんすけど・・・・・・」土方は絶句の表情を浮かべたままポロリと口からタバコを落とした。それから数分後元お庭番衆『服部全蔵』は大きな布袋を背中に担いである場所に到着していた。『本能寺』ここが彼とその雇い主の秘密のアジトだ「お~い連れて来たぜ」本能寺の中へ入り全蔵は誰かに呼び掛けるように叫ぶ。すると暗闇の中から足音が聞こえてくる。「いつまで待たせる気やと思うとったらやっと戻ってきおったわ・・・・・・忍びのクセに何してんねん全蔵」現れたのはメガネを付けて肩まではだけている着物を着た京都弁を使う黒髪の女性。彼女を見て全蔵は頭をポリポリと掻く「連中の邪魔が入ってな、まあこうやっておたくが欲しいモン持ってきたんだから文句言うな」そう言って全蔵は担いでいた大きな布袋を床に置く。その瞬間布袋が激しく動き出す。「俺はこういう仕事嫌いなんでね、出来ればもう御免こうむりたい」「安心しなはれもう無いわ、この娘っ子がいればウチの策は成り立つんや・・・・・・それじゃあ“木乃香お嬢様”とのご対面でもするかえ」女は口元に笑みを浮かべながらまるで『クリスマスに貰ったプレゼントを楽しそうに開ける子供』の様に全蔵が持ってきた布袋の紐を解く。すると「ぶはッ!」「こんにちは木乃香お嬢・・・・・・ん?」「こ、ここ何処・・・・・・?」「・・・・・・は?」・・・・・・・・・・・・・袋の中から出てきた前髪の長い少女を見て女はまるで『クリスマスに貰ったプレゼントの中にDSが入ってると考えていたのにワクワクしながら開けてみたらワンダースワンカラーが入ってた子供』の様に固まった。「な、何で私・・・・・・こんな所に・・・・・・」「・・・・・・全蔵」布袋から顔を出して周りをキョロキョロしながら怯えているのどかを見て女は全蔵に向かってポツリと呟く。すると彼はバツの悪そうに笑いながら「い、いや~・・・・・・間違えちゃった」「あ~間違えちゃったんかい、それなら仕方あらへんな~・・・・・・ってそれで済むと思ってんのかボケェェェェ!!」「ヒッ!」女の怒鳴りにのどかは身を縮こませる。「何で近衛木乃香じゃない娘っ子を連れてくんねんッ!」 「悪い悪いなんせ煙玉使ったからあんま見えなくてよ」「忍者が煙玉で何も見えないってどういう事やドアホッ!」悪びれる様子も無い全蔵に女はツッコんだ後「ハァ~」っと深いため息をつく「どうすんねんコレ・・・・・・ただでさえウチら『あの人』に下っ端扱いされてるのにこんなミスしたらホンマ殺されるで・・・・・・」「ミスしたってどうしたんや千草は~ん」「うげッ!」突然本能寺の入り口からひょっこり顔を出してきた少女に千草と呼ばれた女は思わず一歩後ずさりする。現れたのは一見ゴスロリ衣装を着た可愛いメガネっ娘、だがその手には刀と脇差の二本の得物を持っているのでかなり不気味な印象がある。「月詠・・・・・・」「あの人に千草はんの応援と“監視”をしろと命令されたのでここに来たんどす~、あともう一人いたんやけどその人はどっか行ってしもうたわ~」鞘から刀を抜いて刀身を見せる少女に、女は冷や汗を流す。この月詠と呼ばれる少女は本来は『天ヶ崎千草』こと自分が護衛として雇ったのだが、今ではすっかり“あの男”ともう二人の方に懐いてしまっている。「そんでミスというのは~?」「あ~悪い俺がやっちまった、近衛木乃香を捕まえたと思ったら別のガキを連れて来ちまった」「奇遇稀に見ないミスの仕方どすな~全蔵はん」腕を組みながら事の説明をする全蔵に月詠はケラケラと笑った後、また口を開く。「ところでウチ全蔵はんの声聞くとなんかどっかで会った様な気がするんやけど」「俺もアンタの声聞いてると妙に江戸にいたチャイナ娘を思い出すんだけどなんでだろうな?」月詠と全蔵の話がおかしな方向に進んでると思った千草はズイっと二人の間に入って口を挟む「んな事はどうでもいいんや、まずこれをどうにかせんと・・・・・・」「あとお前の『千草』って名前も前にどっかで聞いた事あるような気がすんだけどなんで?」「それウチも思ってました~」「これ以上世界を崩壊させかねん発言は控えんかいッ! 今はこの娘っ子をどうするか考えるのが先やッ!」首を傾げている全蔵と月詠にツッコんだ後、千草はまだ布袋に入っているのどかを指さす。指を指されたのどかはまだ自体の成り行きを理解していない表情だ。「ど、どうして私をこんな所に連れてきたんですか・・・・・・・?」「別にわてらもアンタをここに連れてく気は無かったんや、わてらが欲しいのは近衛木乃香、アンタやない」「何で木乃香を・・・・・・」何故自分の友達を攫おうとしているのか、のどかはわけがわからない様子だが千草は全蔵をジロッと見ながら話を続ける「それはこの痔持ちの忍者が間違えてアンタをここに連れて来たからや、全く・・・・・・」「痔持ちの忍者ってなんだよ、まるで忍者に痔になっちゃいけない見たいじゃねえか」「うっさいわ当たり前やろ、忍者で痔ってもうその時点で忍者やなくてただの痔持ちのアホや」「痔になった事無えからそんな事言えんだよ、想像してみろ自分のケツの穴に灼熱の様な痛みが走る事を・・・・・・もう死ぬほど痛えんだよ・・・・・・ウ○コすんのもつれぇんだよ・・・・・・」「女三人を目の前にしてケツの穴とかウ○コとか言うなボケェッ!」辛そうな表情をして訴えかけてくる全蔵の頭をパカン!っと勢いよく叩く千草。会話の通り服部全蔵は重度の痔持ちだ。「もうアンタの肛門の事なんかどうでもええ、とにかくこの娘をどうするかや」「さすがに殺すのは後見が悪いしな、今日は暗いし明日の早朝に宿にまた送り返すか、そうするしかねえだろ」「わてらの顔思いっきりこの娘っ子にバレたけど・・・・・・まあ仕方あらへんか・・・・・・」全蔵の意見に千草は頭を手でおさえながら承諾する。顔がのどかに見られてしまったが、さすがに子供相手に口封じする事なんて出来ない。「そう言う事や月詠、娘を捕まえるのはこちらの不手際で明日や、あの人に伝えといておいてくれやす」「あいあい~、はようお二人さんはお嬢様捕まえといて下さいね~、でないとあの人に殺されちゃいますよ~」笑いながらゾッとする言葉を残した後、月詠は楽しげに本能寺から去ろうとする。千草はそんな彼女を見送った後、全蔵に向かって手違いで捕まえてしまったのどかの事を指示する。「その娘っ子の世話はアンタに任せたさかい、ほな」「おい待てよ、普通そういうのは同姓のお前だろ、何で俺がそんな事しなきゃらならねえんだよ」「二人共前髪が長いキャラやないか、頼むで」「ちょッ! 何だよその理由ッ!」全蔵の声も虚しく千草は手を振りながら月詠の様に何処かへ行こうとする。残された彼と布袋から出ようとしないのどかはどうしていいのか困ってしまう。「・・・・・・まあお互いBASARA出てる身だし仲良くしようぜ」「あの・・・・・・どうして皆さん木乃香を捕まえようと・・・・・・・」「それは話せねえな、ぶっちゃけ俺もそこん所詳しくねえんだよ、あいつなら知ってると思うぜ」「忍びクセにペラペラと喋るなドアホ・・・・・・ったく・・・・・・」全蔵の態度に千草はだるそうに本能寺の戸を開ける。すると目の前にさっき帰った筈の月詠が立っていた。「まだ行ってなかったんかい?」「いや~帰ろうと思うたんですけど、“この人達”が絶対通してくれへんやろうな~と思って」「この人達・・・・・・? げッ!」にこやかに説明する月詠に千草が頭に「?」を浮かべながら、外を見るとすぐに驚いた表情を浮かべる。「真撰組、土方十四郎・・・・・・少女誘拐の罪でテメェ等全員俺が粛清してやる・・・・・・!」「僕の生徒を返して貰います・・・・・・!」「悪党ども神妙にお縄につけやがれぃッ! 今の俺っちのセリフ超カッケ~・・・・・・」本能寺の前にある広場にいたのは口にタバコを咥えて鬼の様な形相を浮かべ既に抜刀している土方の姿が、その隣にはカモを肩に乗せて杖を持つネギの姿もある。「本屋ちゃんッ! 生きてるなら返事して~ッ!」「お嬢様私の背中についてて下さい、絶対に離れないように」「うん・・・・・・」土方達の後ろにはアスナや刹那、それに木乃香もいるではないか、何故彼等が自分達の居場所を特定できたのか千草は慌てる「何でここがわかったんやッ!」「俺と宮崎が買った携帯だ、宮崎の携帯にはGPS機能が搭載されてるんだよ、あいつが何処にいようが俺にはすぐわかる」「はぁぁぁぁぁ誰がどこにいるかすぐ特定できるあのGPSッ!? まさかお前等デキとるんかッ!?」「違えよバカッ! ハルナに携帯買うの手伝ってたもらってたらあいつが勝手にオプション付けてたんだよッ! つうかお前誰だッ! さっさとアイツ攫った忍者出しやがれッ!」「ふんッ! 全蔵ッ! アンタ指名されてるでッ! ついでにあの娘っ子も持ってこいッ!」「へいへいっと」千草に呼ばれた全蔵はめんどくさそうにのどかをようやく布袋から出して表に出る。姿を現した全蔵と彼に後ろ襟を掴まれているのどかに土方は額に青筋を浮かべる「てめぇそいつに何もしてねえだろうな・・・・・・!」「安心しろい、おたくの娘さんは怪我ひとつねえよ」「土方さんッ!」「待ってろ宮崎ッ! すぐにそいつ等血祭りにして助けてやるッ! その上そいつ等を晒し首にするッ! そして閻魔に頼んでそいつ等地獄に叩き落とすッ!」「いやそこまでしなくても・・・・・・」刀を持って今にも暴れそうな土方にのどかの頬が引きつっていると、全蔵は思慮深げに広場にいるメンバーを確認する「千草、こいつはチャンスじゃねえか?」「敵に囲まれてそんな事が言えるんか、頭おかしくなったんか?」「バカかお前、向こうの連中を見てみろ、俺達が欲しがってたお嬢さんがわざわざ俺達の所にやって来たんだぜ」「そうやけど・・・・・・」土方達が木乃香を連れて来たのは恐らく一人にさせるより一緒に連れて行った方がいいと思ったからだろう。更に全蔵は話を続ける「それに見る限りあの銀髪のヤローはいない、いるのは神鳴流のガキと鬼の副長殿だけだ、俺と月詠でなんとかなるだろ」「ウチの出番ですか~?」隣にいた月詠がはしゃぐように全蔵の方へ向く。彼から見ると彼女の腕はかなり高いようだ。千草もなるほどと頷く「そういえば『坂田銀時』の姿は何処にもないな・・・・・・・戦力は黒髪の男と神鳴流のガキ、それにあの子供先生・・・・・・ある意味一番危険やな・・・・・・」「そうなのか?」「わてから見れば『坂田銀時』より危険になる可能性が高いのはあのボウズや・・・・・・」苦々しい表情で千草は全蔵と会話しながら広場にいるネギを見る。千草にとってはなるべく彼を敵に回して直接戦いたくない理由があるらしい「まあ今はそんな事言ってられへんか・・・・・・全蔵ッ! 月詠ッ! 奴等を倒して近衛家の娘っ子を奪い取るんやッ!」「はい~」「あいよ」千草が手を振り上げた瞬間、月詠は土方達の方に疾走し、全蔵ものどかを千草に預けて走り出す。それを見た土方達も戦闘態勢に入った。「野郎遂に来たか・・・・・・坊主、あの二人は俺とこのガキに任せろ、お前はあの女の所に行って宮崎を取り返してくれ、こんな緊急事態だ、魔法とかバンバン使え」「わかりました」「了解ッスッ!」土方の指示にネギは頷いて肩にいるカモもビシッと敬礼する。次に土方はアスナの方に振り返る。「それとツインテールの小娘、お前は狙われてる娘っ子の盾になれ、お前が死んでもその娘っ子を守れれば俺達の勝ちだ」「は?」「お嬢様の代わりに死んでくれたらお葬式に行きますんで」「なんかもう私絶対こいつ等と仲良く出来ないって自信が湧いてきたんだけど」「い、いやふざけてるだけやから・・・・・・多分」 振り返りながら縁起でもない事を言う土方と刹那を見てアスナはジト目で彼等の事で木乃香に相談するが彼女は苦笑するしかなかった。のどか奪取の作戦指示が終わった途端、全蔵と月詠が同時に反対方向から襲いかかって来る。戦闘開始「月詠ッ! お前はどっちを狙うッ!?」「ウチは黒髪のお兄さんで~異世界の人は強い人ばっかやから期待してるんです~」「じゃあ俺は・・・・・・神鳴流のガキか・・・・・・!」「くッ!」全蔵は走りながら向こう側にいる月詠と会話した後、すぐさま刹那に向かって襲いかかる、彼の手には一本のクナイ、刹那はすかさず黒刀になった死装束を取り出して応戦する。鈍い音が聞こえ全蔵のクナイと刹那の死装束がぶつかる。「お互いまだ自己紹介してないよな・・・・・・俺の名は服部全蔵、元お庭番衆だ・・・・・・」「桜咲刹那・・・・・・神鳴流剣士のお嬢様を守る刀だ・・・・・・!」「『刹那』・・・・・・いい名前じゃねえか、楽しくやろうぜ」「お前等と楽しくやる気など・・・・・・無いッ!」余裕気に笑みを見せている全蔵を刹那は死装束に力を込めて弾き飛ばす。だが全蔵は全く怯む様子も無くコートの下からすぐさま大量のクナイを指に挟んで取り出す「まさか忍びが一本のクナイだけで戦うと思ってたのか?」「そんなにクナイをもつ忍びの方が珍しいと思うがな・・・・・・」「まあな、俺はどっちかつうと誘拐より・・・・・・殺しの方が生業でね・・・・・・!」「!!」ニヤリと笑った後全蔵は指に挟んでいた大量のクナイを投げる、刹那がそれに驚くがすぐに刀を構え戻す「はぁぁぁぁぁぁ!!」次々に飛んでくる全蔵のクナイを刹那は時には避けて時には刀で弾き飛ばしながら全蔵に向かって突っ込んでいく。「こんな攻撃で私に勝てると思うなッ!!」「へ~ガキの割には結構歯ごたえありそうだな」突っ込んできた刹那に全蔵は再びクナイを手に持って斬りかかってくる彼女の刀を受け止める。「いい刀だな、何処で買ったんだそれ?」「お前には関係ない・・・・・・!」「つれねえな・・・・・・素直に攘夷志士の一人から貰ったって言えばいいのによ・・・・・・」「なッ!!」小声で耳元に呟いてきた全蔵に刹那は目をカッと開く「何でお前・・・・・・その事を・・・・・・・」「聞きたかったら俺を倒してろよ、“刹那”」「言われ・・・・・・なくても・・・・・・! ぐッ!」「腹が“お留守”だぜ」全蔵のクナイに刀が若干押され始めてきたので刹那が焦り始めている時、更に追い打ちのように全蔵は余ってる方の手で彼女の腹に思いっきり拳を入れる、刹那はそれに短く呻き声を上げた後、状態を立て直そうとつばぜり合いを止めて数歩下がる。「くそ・・・・・・!」「さて温まって来たしそろそろ全力で行かしてもらうか・・・・・・!」「何でお前があの男の事を知っているのか・・・・・・教えてもらわない限り私は絶対に倒れない・・・・・・!」再びコートの下から大量のクナイを取り出す全蔵に刹那は挑戦するかのように刀を構える。全蔵と刹那の戦いはなおも続く全蔵と刹那が戦っている頃、土方の方は木乃香とアスナを後ろに置いてもう一人の敵と戦っていた。「アハハ~お強いんどすな~本当は銀髪のお兄さんと戦いたかったんやけど、黒髪のお兄さんも十分強いどす~」「あんな今頃ハーレム決め込んでる奴と一緒にすんじゃねえ」月詠は笑いながら土方に刀を振るう、しかも一本では無い、右手には普通の刀、左手には脇差を持って攻撃してくるのだ。土方はタバコを口に咥えながら襲ってくる二本の刃を一本の刀で受け止める。「二本の刀を両手に持つ二刀流を自分の物にするのには時間と経験が必要、その若さで習得するとは対したもんだ」「お褒めの言葉ありがとうございます~」「マヨッ! 敵に感心してる場合じゃないでしょッ! 早く倒しなさいよッ!」「うるせえッ! 俺は女が相手だと苦手なんだよッ!」後ろから飛んでくるアスナの野次に答えながら土方は月詠と何度も刀をぶつけ合う。刀のぶつかり合いが止む事が無い光景をアスナと木乃香はその戦いの末を見守るしかない「木乃香、刹那さんの方は?」「押されとる・・・・・・あの忍者の人メチャクチャ強い・・・・・・」「一体何なのよコイツ等・・・・・・何で木乃香を狙ってくんのよ・・・・・・」「わからへん・・・・・・・何でこんな事になってるのかも・・・・・・ところでネギ君は大丈夫なん?」「ネギは・・・・・・」心配そうにつぶやく木乃香を見てアスナはふとネギのいる方向に目をやる。刃物がぶつかり合う音がしている中、ネギは杖を持って本能寺に立つ千草を静かに見上げていた。「欲しいのはこの娘っ子どすか?」「ネギ先生この人達危険ですッ! 逃げて下さいッ!」「心配しないで下さいのどかさん、僕は大丈夫なので」「でも先生子供ですし・・・・・・」「アハハ、子供でも生徒を守るのが僕の義務です」笑いかけてくる千草の腕にはのどかが捕まっている。のどかは必死にネギに逃げるよう促すがネギは笑いながら大丈夫だと諭す。それを見ていた千草は「ふーん」と興味深そうに眺める。「こんな状況でも笑ってられるなんてやっぱ“師匠”の影響を受け取るんやな~」「え・・・・・・?」「わてはアンタの事色々知ってるんやで子供先生、幼少期に宇宙海賊『春雨』に村を襲われた過去を持つサウザンドマスターの息子、そして・・・・・・」千草はそこでニヤリと笑って「あの夜兎族の神威の唯一の弟子なんやろ? ネギ・スプリングフィールド、神威に色々と教えてもらったで」「!!」肩に乗っかっているカモはちんぷんかんぷんな表情をしているがネギは口を開いて驚いている。目の前の女性が神威に会った事があるという事実に「どうしてあなたが神威さんと・・・・・・!」「それは直接本人に聞いた方がよろしゅうと思いますで、それじゃあ始めましょうか神威のお弟子はん・・・・・・」そう言って千草は懐からお札を何枚か取り出す。「舞台は盛り上げないとつまらへんからな、ネギ先生・・・・・・」「く・・・・・・!!」ネギと千草の戦いも遂に始まろうとしていた。ネギ一行が本能寺で乱戦を行っている頃、銀時はというと千雨とあやかを連れて夜の京都を散歩しながら土方達を探していた。念のため腰には木刀を差しているが、夕凪は旅館の部屋に置いたままだ。「アイツ等何処行ったんだよ、ザジの奴が「急ぐように旅館から出て行った」って言ってたけど・・・・・・本当さっきの誤解を解かねえと後々ひ孫まで語り継がれる事になるぞコラ」「お前と関わるとロクな事にならねえな本当・・・・・・」「そんな事言ってる割にはいつも一緒にいますわよね千雨さん」「・・・・・・」隣にいるあやかの意見に千雨が黙っていると銀時は大きな橋を渡ってる所でピタッと止まる。「ん? どうしたんだよ急に止まって」「あの女・・・・・・」「あの人がどうかしたんですか?」不審な物を見るような目で銀時はこちらに歩いてくる女性を見る。フードで顔をすっぽり隠してそこからはみ出ている長い金髪を揺らし、ローブの下から見える女の体をくっきりと見せる美しい金色のドレス。地元人どころか観光客でもあんな恰好をする筈、しかもこんな夜中を一人で歩いてるとは。だが銀時はそれよりも別な事に気になっている事がある。「千雨、あやか・・・・・・・」「なんだよ?」「はい?」「下がってろ、あの女はヤベェ・・・・・・」「何言ってんだよお前・・・・・・確かに見た目怪しいけどよ」「銀さん?」「・・・・・・・」銀時の指示に千雨とあやかが首を傾げている間に向こう側から歩いてくる女はどんどんこちらに近づいてくる。一歩一歩近づいてくるたびに銀時の目つきは変わって行く。「半端ねえんだよ・・・・・・」「は? あ~確かに半端なく美人かもしんねえな、お前が夢中のしずな先生見たいにスタイルも良さそうだし」「“殺気”をガンガン俺にぶつけてくんだよあの女」「・・・・・・え?」思わぬ銀時の一言にしかめっ面をしていた千雨が一瞬呆気にとられていると女はユラ~と手を水平に上げる。次の瞬間「剣・・・・・・!?」「西洋のつるぎ・・・・・・何故あんなものが突然・・・・・・!」「お前等逃げろ、マジで」「銀さんはッ!?」「ここからは大人の男と女の時間だ、ガキは帰れ」女の目の前に突然空中に現れる日本刀とは形が違う金色の刀身を持つ剣。それを手に持って女は構える。そして「銀八ッ! あの女急にこっちに走ってッ!」「言われなくてもわかってるつうのッ!」剣を片手で持って肩に担ぎながら女はこっちに走ってくる。慌てる千雨をよそに銀時は瞬時に木刀を抜き、そしてガシィンッ!っと女と銀時が剣と木刀でつばぜり合いを開始する。「銀八ッ!」「銀さんッ!」「オイオイ、マジで何様ですかあなた・・・・・・! この世界で女の怨みなんか買った覚えねえぞ・・・・・・!」「・・・・・・」千雨とあやかが銀時に向かって叫ぶ中、彼は辛そうに笑みを作りながら女に話しかけるが彼女は無言のまま剣に力を込めて行く。「千雨ッ! あやかッ! とりあえずもっと後ろに逃げろッ!」「は、はいッ!」「銀八ッ! そいつ一体何なんだよッ!」「んなもん俺が・・・・・・知りてえよッ!」「銀八ッ!」千雨とあやかが心配そうに銀時と女性から5Mぐらい離れると、彼は力を込め女の剣を弾き、つばぜり合いを止め一気に攻めかかる。だが女性は何の支障も無さそうに銀時の剣撃を余裕で金色の剣で受け止める。木刀と剣のぶつかり合いが数分経った頃、また銀時と女は木刀と剣でつばぜり合いを始める。「テメェ・・・・・! 何で俺を狙いに来たんだよ・・・・・・!」「・・・・・・」「何とか言えよ・・・・・・! 無口な女は嫌われるんだぞコノヤロー・・・・・・!」「・・・・・・これが・・・・・・」「あんッ!?」何も喋らない女に銀時はつばぜり合いの途中イライラしながら彼女を見る。するとフードの下からちらりと見えた彼女の口がボソリと動いた。「これが高杉晋助のかつての同志の力か・・・・・・・」「な・・・・・・! 高杉だとッ!?」女の言葉に銀時は表情に驚きを隠さなかった。高杉晋助、銀時にとってある意味縁の深い人物の一人だ「なんでアイツを知ってんだテメェッ! 答えろッ!」「・・・・・・ここで死ぬ奴に教える必要などない・・・・・・」「ぐッ!」「銀さんッ!」「ぎ、銀八ッ!」急に女が力を剣に込め始め銀時の体は徐々に後ろに下がって行く。押されている彼を見てあやかと千雨が悲鳴のように叫ぶ。銀時は苦しそうな顔で後退させられながら女性のフードの下からうっすら出ている顔を見る。女の目は氷の様に冷たい目だった