新幹線が京都へ向かい始めて数時間経っており、もういつ着いてもおかしくない頃、銀八はネギと一緒に生徒達と穏やかな遊びを過ごしていた「攻撃力3000の『地縛神Ccapac Apu』と攻撃力3500の『セイヴァー・スター・ドラゴン』でまき絵に攻撃~」「先生カードゲームでも私に容赦無いッ!」「おおッ! まき絵のライフが6600から一気に100になったッ!」「まき絵が鉄壁入ったッ!」A組の生徒達がいる車両で銀八とネギは生徒達の数人とカードゲームをして京都までの時間潰しを行っていた。銀八が道側、ネギが窓側に座って向こう側には今大ダメージを受けて双子の風香と史伽が後ろの席で見守っている中泣きそうなまき絵と、チューペットをくわえながら黙々とゲームをしている夕映がいた。そんな二人の方をどちらを攻撃するか迷った後、ネギは生徒の一人を指さして攻撃宣言する「攻撃力5000の『オシリスの天空竜』でまき絵さんに攻撃します」「ひどッ! 残りライフ100に5000ダメージッ!?」「すみません容赦なく責め立てた方がいいのかなって、まき絵さん相手にはそうしなきゃなって」「何で私に容赦なく責めなきゃいけない義務があんのッ!?」「ていうか夕映さんの場はカエルモンスターで一杯なので、がら空きのまき絵さんを先に潰した方がいいでしょ普通?」「でも~5000の神のカードで100の相手を消すって・・・・・・」完膚無きまでにオーバーキルされたまき絵がネギに向かって訴えるも代わりに銀八が鼻を小指でほじりながらめんどくさそうに口を開く「ああもういいから負け犬は黙っとけ、お前は相方の敗北を見届けて懐から万札出す準備しろよな」「ちょっとぉぉぉぉぉ!? 確か負けたら100円だったよッ!? 何で100倍に跳ね上がってんのッ!?」「お前でも計算できるんだな、まあなんつうかアレだ? やっぱり勝負というのは何事もハードにする方が面白いし人生の為にもなるんだよ、という事で今から負けたチームは相手に諭吉を払うってルールで」「酷いよッ! 自分達が優勢だと知ったとたん急にルールを変更したッ!」中学生相手に万札を奪おうとする汚い大人代表の銀八にまき絵が悲痛の叫びをするが銀八は両手を後頭部に回してまったく聞く耳持たない「銀さんスペシャルルールです」「鬼ッ! 悪魔ッ!」「一文無しッ!」「女たらしッ!」「おいなんつったんだ双子コラ、特に後の方」まき絵の叫びに合わせて双子の風香と史伽も悪ノリする、銀八はそちらの方を睨みつけて黙らせる「夕映ッ! どうしよう私修学旅行前に諭吉を手放したくないよッ!」「落ち着くです役立たず」「こっちも酷ッ!」こっちを見ずにチューベットを咥えながら自分を突き飛ばす夕映にまき絵は深くうなだれた「ほらテメェのターンださっさとカード引きやがれデコ、どうせカエルばっか出してくるんだろ? カエルだろ? カエルなんだろ? さっきからカエルしか出してないもんなお前、デッキの中カエルしかいねえんだろ? つうかもうお前それデッキじゃなくてカエルじゃね?」「うるさい人です、まあ口を早く動かすことぐらいが取り柄ですからしょうがないですね」「黙っとけカエル娘、早くカードをドローしてサレンダー(降参)しろ、そして諭吉をよこせバカ」銀八のマシンガントークにだるそうに受け答えする夕映に更に銀八は追撃を止めない。口喧嘩では夕映と互角に渡り合えるのはこの男だけだ。そんな銀八に隣に座っているネギが恐る恐る彼に顔を向ける。「銀さん、教師が生徒相手に諭吉を奪うのはちょっと・・・・・」「わかった、じゃあお前等ネギはいいから負けたら俺の方に一万をよこせ合計で二万だ」「・・・・・・教師としての資格0ですね」「・・・・・・ヤクザとしては資格十分ッスね」ネギと彼の胸ポケットから顔を出しているカモがボソッと生徒達に向かって金を請求する銀八を見ながらつぶやいてると、夕映がデッキからカードを引いて手札に加える。「さっさとターン終了して俺の地縛神に殴り殺されろよ、言っとくけどこいつは直接攻撃が出来るからてめぇの場に出てるカエル軍団は全部無意味なんだぜ」「いえもう“揃いましたから”終わりです」「へ?」「エクゾディアパーツ5枚揃いました、これで私達の勝ちです」「はぁぁぁぁぁぁ!?」銀八が余裕気にカードの解説をしていると夕映が自分の手札を公開したので銀八がそれを驚いた表情でマジマジと見る。隣で一緒に見たネギが彼に向かって解説する「あ~これ僕等負けましたね、手札に5枚揃えば無条件で勝てる『エクゾディア』パーツを揃えてたとは」「マジかよ・・・・・・何だよその小汚い戦法・・・・・・」「小汚くても勝てばいいんです、それを一番わかってるのはあなたでしょう?」ネギの解説を聞いてるかどうかはわからないがその場にがっくりとさっきのまき絵のようにうなだれる銀八。落ち込んでいる彼を置いて夕映のおかげで勝利できたまき絵と、そして何故か双子達も一緒に喜んでいる「やったぁぁぁぁぁ!! 夕映が勝ったァァァァァ!!」「あれッ!? てことは先生達が負けたからネギ先生と銀八先生は夕映とまき絵に諭吉を上げなきゃいけないんじゃないのッ!?」「銀さんスペシャルルールはそうだったよ~」「えッ! 僕もですかッ!?」ツリ目の風香とお団子頭の史伽の言葉にネギが思わず身構える。だが夕映は首を横に振って口を開く。「ネギ先生は例え自分が勝っても生徒から貰わないと言っていたので奪いません、ここは生徒から金を巻き上げようとした堕落した教師から貰うのがセオリーです」夕映の説明を聞いてネギはホッとしたのも束の間、金を請求させられるべきが誰だか理解する「え~てことは・・・・・」「決まってるです」「銀八先生ッ! 私達に諭吉・・・・・・っていないしッ!!」「逃げましたね」「早ッ! 何の気配も無く煙の様に消えたッ!」「逃げ足めっちゃ早いッスね~・・・・・・」まき絵が請求する前に忽然と姿を消した銀八に一同呆れたようにつぶやく。勝てそうになったらつけ上がり、負けたら何の恥じらいもなく逃げる。そんな銀八の駄目っぷりに残されたメンバーはため息を付くしかなかった「まあ別に一万円なんて大金貰うつもりは無かったんですけどね」「え~私貰うつもりだったのに、今まで散々酷い目に会ってるんだからそれぐらい欲しかったな~・・・・・・え?」「どうしたんですかまき絵? 弁当の中に嫌いな物でもあったんですか?」「・・・・・・・・・・・」まき絵はそんな事を言いながら消えた銀八の事を恨めしそうに思った後、さっき女性の店員から貰った弁当箱を食べようと開ける、すると彼女の表情が不思議な物を見る目に変わった。不審に思った夕映が彼女の弁当箱を覗きこむと・・・・・・「ゲコゲコ」「・・・・・・・カエルですね」緑色のファンシーなカエルが一匹入っていた「店員さんはこれを食えと・・・・・・」「ゲコ」「ぎゃあぁぁぁぁ!! 顔に向かって跳んできたァァァァ!! 間一髪で回避ッ!」呆然と見ていたらふいにこちらに向かって跳んできたカエルにまき絵はさっと頭をのけぞらして緊急回避。彼女がそんな事をしていると周りの生徒達も悲鳴を上げている。カエルは一匹では無かったのだ「きゃぁぁぁぁぁ!! カエルが水筒からゾロゾロで出てきたッ!」「カエルが私のバッグの中から大量に出てきたァァァァァ!!!」「きっとスタンド攻撃でござる、この車両の中にジョルノかウェザーが」「マジでッ!? 私サイン貰おうッ!」「アスナおらへんって・・・・・・」「ちょっとぉぉぉぉぉ!! ちづ姉ッ! 弁当箱でカエルが子作りしてるんだけどッ! どうすればいいのこれッ!? どうすればいいのこれっ!?」「黙って見届けなさい夏美、命の生まれる瞬間を」「えぇぇぇぇぇ!!!」「クーフェイはよう私の頭にあるカエル取ってぇぇぇぇ!!」「任せるヨロシ亜子ッ! アチョォォォォッ!」「メメタァッ!」「脳天からカエルをチョップしたのにカエルは無事だッ! 和泉は気絶したのにッ!」「これぞ波紋アルッ!」「変な技使わなくていいからッ! ていうかそれやる意味がわからないからッ! 起きろ亜子ォォォォ!! カエル達に襲われるぞォォォォ!!」そこら中にカエルがゾロゾロ、生徒のみんなは悲鳴をしたり走りまわったりパニック状態である。席から立ち上がったネギがそんなカオスな空間を見渡す「これは・・・・・・!」「もしかして関西呪術協会の仕業じゃねえかッ!? 兄貴の親書を奪う為にこんな真似をッ!」「そんな・・・・・・! ってあそこでのたうち回ってるの・・・・・・」この光景の正体ににいち早く気付いたのがネギの使い魔で知識も豊富なカモ、彼が説明している間にネギは先ほど逃げた銀髪教師が床に倒れてる所を大量のカエル達に襲われているのを見かけた「のわぁぁぁぁぁ!! マジすんませんでしたマジすんませんでしたッ! もう二度と出過ぎた真似はいたしませんッ! だから許してカエル様ァァァァ!!」「千雨さんッ! 銀さんに覆いかぶさっているカエル達を取って下さいッ!」「ムリムリムリムリッ!! 私カエルとか触れないッ! いいんちょが取ってやれよッ!」 「私だって無理ですッ!」「テメェ等俺が必死なのに何揉めてんだァァァァ!! カエル口に突っ込むぞオラァァァァ!!」カエルに向かって懸命に謝って暴れている銀八の周りでは彼と仲の良い生徒のあやかと千雨がどっちが彼のカエルを取ってあげるか揉めていた。見かねたネギが彼等に近づいて銀八に襲いかかっているカエル達を素手で取り除く「何やってんですか銀さんッ!」「あんたカエルぐらいでビビる人なんッスかッ!?」「え・・・・・・? これ俺がデコ助に闇のゲームで負けたから罰ゲームであいつのカエル様が俺に襲いかかって来てるっていうわけじゃないの?」「違いますからッ! 夕映さんは千年アイテムの所持者でも何でもないですからッ!」カエルを払いながら銀八を救出して勘違いしていた彼にツッコんだ後、ネギは一匹のカエルを拾ってジッと観察する。「このカエル達、微量の魔力を・・・・・・銀さん、僕達関西呪術協会の手先に襲われてる可能性があります」「チッ、京都に行く前にもう敵が来たのかよ・・・・・・」「とにかくカエルを捕まえ・・・・・・! あれ?」ようやく立ちあがった銀八と共に生徒達を混乱させるカエル達を捕まえようとしていたら、不意にカエル達の鳴き声が少なくなっている事に気付く。「カエルの数が減ってる・・・・・・?」「てめーら何遊んでんだ、ったくこんなナマモノで必死こいてちゃこの先不安だぜ」「土方さんその袋に入ったカエル達はッ!」ボケっとしているネギと銀八に話しかけてきたのは大量のカエルが入っているビニール袋を持っている土方だった。どうやらこの騒動を早急に対処したのは彼らしい「ほとんどのカエルは俺とコイツで回収しといた、冷静に状況を見渡せばこんな子供だましな芸当すぐに鎮圧出来る」「全く世話のかかる先生達だ」「龍宮さんも・・・・・・・・すみません・・・・・・」「ケッ、テメェらでも役に立つんだな」土方の後ろでカエル達が入ったビニール袋を肩に担いでため息を付いている龍宮にネギはしょんぼりと謝る。銀八は面白くなさそうな顔をするが別段気にせずに土方はカエル入りのビニール袋を床に置いてネギに近づき、彼と一緒に生徒達の目の届かない所まで移動する「大事なモンは取られてねえのか?」「え?」「この混乱の隙を乗じてそいつを奪いに来た可能性があるんだぜ」「あッ! そうか奴等の目的は親書ッ! ん~と・・・・・・大丈夫無事ですッ!」土方の言葉にネギが不安そうに親書が入っている胸ポケットを探り出す。だが別に盗られておらずちゃんとある事を安心するように土方に見せる「いや~良かったこれ奪われたら大変・・・・・・え?」「ネギの兄貴の手から親書がァァァァ!」ホッとしているのも束の間ネギの手にあった親書が急にヒュっと消える。土方はその瞬間を目で捉えていた、親書を奪ったのはツバメ、そのまま生徒達がまだ群がっている車両の奥まで逃げていく「クソッ! カエルの次はツバメかッ!」土方はまだあやかや千雨に「何でさっさと助けねえんだよッ! 銀さんメチャクチャ焦ってたんだかんなッ!」と説教しながら車両の真ん中に立っている銀八に向かって「万事屋ッ! その鳥捕まえろッ!」「あ? 何だよニコチ・・・・・・うおっとッ! 間一髪で回避ッ!」「いや何やってんだお前ッ!」状態を後ろにのけぞらして間一髪に跳んできたツバメの突進に緊急回避する銀八に土方の怒声が飛ぶ「バカかお前はッ! 避けんじゃねえッ! 受け止めろよッ!」「無茶言ってんじゃねえよッ! あんなド級のストレートが飛んできたらそりゃ避けるに決まってんだろッ!」「とにかく追わないとッ! 見失っちゃいますよッ!」「ありゃあ式紙だな、日本式の魔法ッスね、早く行かないとヤバいッスよッ!」「元はといえばテメェ等がボサっとしてるから取られたんだろうがッ!」「すみません・・・・・・」「面目ないッス・・・・・」口論している土方と銀八にネギとカモが止めに入るが、逆に土方に怒られる。考えてみれば確かにそうだ三人と一匹がそんな事をしている間に親書をくわえたツバメはどんどん先に進んでしまう。それを追う為に銀八を先頭に土方とネギが必死に追う「おい早く追わねえとどっかに行っちまうぞッ! どっかの天然パーマが捕らなかったせいでよッ!」「知るかボケッ! カエルばっか捕まえてねえでああいう奴警戒しとけよタコッ!」「うるせえわかるわけねえだろッ! 何もやってない上にカエルに襲われてたバカよりはマシだッ!」「んだとてめぇカエル様の恐ろしさわかってねえのかッ!? カエル様はなッ! ヌルヌルしてスッゲー気持ち悪いんだぞッ!」「二人共走ってるのはいいんですけどケンカしながら走るのは止めてくれませんかッ!?」走りながらも口喧嘩を止めない銀八と土方にネギがツッコミをいれていると、ツバメが生徒達の車両から逃げて奥まで飛んで行く。「オイィィィィィ!! あいつ逃げちゃうよッ! 時空のかなたに飛んでっちゃうよッ!ネギッ! 魔法かなんかでどうにかしろよッ! お前この作品始まってからロクに魔法使うシーンなんてねえじゃねえかッ!」「この作品でその発言はタブーですよッ! 駄目ですここだと生徒達に見られますッ!」「よしチンピラ警察ッ! お前等周りのガキ共1秒で全員に目潰ししろッ!」「出来るわけねえだろうがァァァァ!!」まだ漫才を繰り返しながら銀八と土方は必死に追う。生徒達の車両に出てそのまま一番奥の車両まで走るとツバメを見つけた瞬間そこにいたのは「挟み撃ちするためにここまで誘導していただきありがとうございました」「せ、刹那さんッ!?」「てめぇこんな所にいたのかッ!」新幹線の一番奥の誰もいない車両の奥に立っていたのは土方の付添い役の桜咲刹那。ツバメがこちらに飛んでくるのをわざわざ待ち構えていたのだ。そんな彼女に土方が唾を飛ばしながら叫ぶ「おいガキッ! 早くそいつを止めろッ!」「言われるまでも・・・・・・!」刹那はそう呟きながら制服のシャツからある物を取り出す。取り出したのは黒色のお札・・・・・・・それを見た銀八は一瞬我が目を疑う。「ありゃあ・・・・・・!」「こんな低級の式神・・・・・・」そのお札を振りかざすとその札は姿を変え「なッ!」「この刀で斬るのに造作も無い・・・・・・!」黒い札は刀身が黒い刀へと変貌した事に銀八は口を開けて驚く向かって飛んできたツバメを刹那はその黒刀を持ってスパンと真っ二つに横一閃、その瞬間ツバメは紙になってしまいその場にヒラヒラと落ちていった。慌ててネギがその場に走り寄り、親書がその場に一緒に落ちていた事に安心してすぐに懐に戻す「良かった親書は無事だ・・・・・・ありがとうございます刹那さんッ!」 ネギは刹那に深々とお辞儀をしてお礼を言った後、彼女が持っている黒い刀を指さす「そんな刀、刹那さん持ってたんですか・・・・・・?」「これはその・・・・・・『夕凪』が無いと何かと不便だと思ったので代わりとして使ってるんです、こっちの方が持ち運びに便利ですし」「そんなモンがあるのをどうして今まで俺に言わなかった」「すみません別に隠すつもりは無かったんですが・・・・・・」土方はしかめっ面で彼女に注意した後、フンと謝って来た刹那に鼻を鳴らす「まあ役に立ったからよしとするか、俺はもう戻るぞ、ガキ共とトランプやってたからな」「いや刹那さんのおかげで助かりました~本当にありがとうございます」「良かったッスね~ネギの兄貴~」ポケットに手を突っこんだまま土方は生徒達の車両へ戻って行く。最後にネギがもう一度刹那にお礼を言ってカモを肩に置いたまま土方の後を追う。残されたのは真顔で刹那を見据える銀八と彼女のみ「おい、テメェ・・・・・・そりゃあ“あいつ”から貰った・・・・・・」「『死装束』・・・・・・お前と戦った時に使った妖刀だ」土方達がいなくなったのを確認した後、銀八に向かってその刀をよく見せる。かつて刹那が出会った攘夷志士、高杉晋助からの貰い刀だ。銀八はそれを見て刹那に歩み寄る。「何でその刀を持ってやがる、あの時俺が確かに折った筈・・・・・・」銀八の確かな記憶だと数ヶ月前、暴走した刹那との戦いで最後に彼女が持っていた死装束は折れてその力を失った筈、だが何故彼女がまだその刀を持っているのか「・・・・・・この刀を私は捨てなかったんだ、最初は自分の戒めと思って取っておいたんだが、葉加瀬さんと超に直して貰った、私がお嬢様を護る為にはやはり剣が必要だと思ってな」「チッ、そこまでバカだとは思わなかったわ・・・・・・寄こせその刀」刹那が持っている死装束を銀八が無理矢理奪おうとするが彼女はそれを拒み首を横に振る「超が言っていた、この刀にはいくつもの怨霊が宿っていると」「怨霊だと?」「怨霊による呪い、その呪いにより持った者の人格を少しずつ奪い最終的には私の様に暴走する・・・・・・それがこの刀の力の源、だが葉加瀬さんと超が何とかその力を抑制してくれた、今じゃ“ただの刀”だ」「危険はねえのか」伊達メガネ越しから銀八の目が鋭くなる。彼の問いに刹那はボソリと答える「長く刀化を持続させると何が起こるかわからないと言っていた・・・・・・あくまで抑制だからな、時間が過ぎていけば、やがて眠っていた怨霊達が目覚めてしまう」「だからそういう所がバカなんだよお前・・・・・・それが危険なんだよ・・・・・・!」銀八の口調は明らかに呆れと怒りが混じっていた。刹那が言うには札の状態では危険は無いが長い間刀に変化させていると、暴走化の可能性もゼロではないと。銀八は背中に差している元々刹那の愛刀の『夕凪』を鞘ごと抜いて彼女に突き付ける。「この刀返してやる、そんな刀さっさと捨てちまえ」「その刀はお前が使え、関西呪術協会の連中がいる京都に木刀だけで行くのは危険だ」「何言ってんだテメェ、俺よりそれ持ってるお前の方が危険だろ」銀八は刹那に向かって冷静な表情のまま睨む。だが刹那も変に頑固な所があった。「私はお前や龍宮、エヴァンジェリンを殺そうとした・・・・・・」「それは高杉がお前を口車で踊らさせたからだろうが、お前じゃなくて悪いのはあいつだ」「そうだあの男に踊らされた・・・・・・そんな未熟な私がその刀を使う権利なんて無い」「だからあいつから貰った妖刀で戦うってか? いつ自分の意識が呑まれるかわかんねえ刀であいつを護るってか?」「今度はもう力に溺れない、私はもう絶対にこの刀に負けない」「その根拠が何処にあんだ、いい加減にしねえとテメェをぶん殴ってでもその刀奪い取るぞ・・・・・・!」夕凪を床に捨てて刹那の胸倉を掴み、彼女をそのまま壁に叩きつけた銀八は至近距離から睨みつける。彼の付けている伊達メガネが鋭く光る、明らかに彼の表情は怒っているのだ。刹那はその顔を真正面から目を逸らさずに見据え続けたまま口を開く「私は誓う・・・・・・この刀の力に屈せずに、逆に飲み込むほどの強さを自分で手に入れると・・・・・・・」「・・・・・・」「もうお前や他のみんなを傷付けはしない・・・・・・二度と妖刀の力は借りない、信じてくれ白夜叉・・・・・・」「・・・・・・もういい・・・・・・」刹那の悲痛な訴えに銀八は言葉を吐き捨てるように吐いた後、掴んでいた彼女の胸倉を乱暴に離した後、床に捨てた夕凪を背中に戻しそのまま背を向ける「好きにしろ、もう面倒見切れねえんだよ、お前の世話はあのニコチンに任せる」「白夜叉・・・・・・」「さっきの誓い忘れんじゃねぞ、もう“あん時”のお前と戦うのは俺はゴメンだからな」「ああ、絶対に忘れない・・・・・・」背を向けたまま喋りかけてくる銀八に刹那は固く決心するように強く頷く。そのまま長い沈黙が二人の間に流れる。二人の沈黙を破ったのは遂に京都へ着いたという車内アナウンスが流れた時だった第三十六訓 最近の中学生は修学旅行だからってはしゃぎ過ぎなんだよッ!A組一行が京都に降り立って数時間後場所は京都での有名な観光地の一つ『清水寺』。その場所からの高い景色は絶景なのだが、そういう事に全く無頓着な銀八はボーっと千雨やあやか達と共に清水寺の下を眺めていた。「おいまき絵ちょっとここから・・・・・・あれ? あの野郎、身の危険を察知して逃げたか・・・・・・」「あの人はもう別の場所に移動しましたわよ」いつものようにまき絵で“何か”しようとしたが銀八の目の前から彼女が忽然と消えていた。どうやら銀八に無茶な事やらされる前に逃げ出したらしい。「しょうがねえ代わりに千雨、気張って行け気張って、飛べ」「気張って行ける問題じゃねえッ! そこから飛べるのは人生にフライトしたい奴だけだッ!」まき絵がいない代わりとして銀八は千雨に向かってここから落ちろと顎でしゃくる。勿論出来るわけないので千雨がそれを激しく拒否「まあ千雨さんなら最悪死ぬぐらいですし大丈夫ですわ」「最悪がもう死ぬって時点でもう大丈夫じゃないよなッ!?」「やってみなきゃわかんねえだろう、昔、諦めたらそこで試合終了だってケンタッキーのおっさんが言ってたぞ」「ケンタッキーのおっさんじゃなくて安西先生じゃボケッ! ケンタッキーのおっさんが何の試合すんだよッ!」「バスケですわきっと」「何でそこだけケンタッキーから安西先生に変換するんだよッ!」一通りツッコミ終わった後、千雨は疲れた調子でその場から立ち去ろうとする。「もう行こうぜここにいても景色ぐらいしか見るものないし、ていうかみんなとっくに行っちまってるしよ」「マジで? 何だよアイツ等俺放置して勝手に行っちまったのか」「銀さんがずっと呆けてるせいでしょ、何かあったんですか?」「ちょっとな、大したことじゃ・・・・・・ねえんだといいんだけどな・・・・・・」「?」顎に手を当て考え事をする銀八に隣にいたあやかは首を傾げる。しばらくして銀八がすぐに顔を上げた「まあこのまま何事も起きなければ問題ねえだろ・・・・・・行くぞお前等」「だから行くってさっきから言ってるだろうが」「うるせえ、おいあやか行くぞ」「あ、はい」仏頂面で返してくる千雨に返した後、銀八はあやかを呼んで千雨と一緒にネギ達がいる所を探しに行くのであった一方銀八達がA組のクラスの所を探している頃、ネギが率いるA組は何処にいるのかというと、銀八が歩いている地点からそんなに遠くない『地主神社』という所を観光していた。「ネギ先生見て~ッ! これが恋占いの石だってッ!」「へー目をつむってこの石から歩いてあの石まで着いたら恋が実るって奴ですか、パンフで読みましたよ」ハルナが指さす方向には二つの自分の膝辺りまでの大きさの石が20M間ぐらいで置いてある。ネギが眺めているとハルナは隣にいたのどかをバンバンと背中を叩いた。「という事でのどかゴーッ! 実らせろ初恋ッ!」「わ、私・・・・・・!?」「今恋してる人がやらなくてどうすんのよッ!」「うん・・・・・・やってみる」言われるがままのどかは実行しようと片方の石の近くに立ってどうすれば向こうの石に辿り着けるか考えていた。「女性ってこういうの好きなんですねぇ」「そ~じゃない? 私はあんまり興味とかないけど」「あれ? アスナさん何処行ってたんですか?」「近くの団子屋、腹減ってたから」「アスナがどうしても食べたいいうてわざわざ買うてきたんよ・・・・・・」近くに寄って来たアスナにネギが質問するとアスナが短絡的に木乃香が苦笑しながら返す。よく見るとアスナの口には団子の串が一本くわえられている。「そういえば土方さんもいたで あれ? せっちゃん、何であの人と一緒に行かなかったん?」「いえちょっと考え事をしていたのでしばらく一人にしてくれって頼んでいたんです・・・・・・それにしても、お嬢様みたいにもうちょっと女の子らしく出来ないんですかアスナさんは・・・・・・」「それ刹那さんに一番言われたくないんだけど」「いやまあ確かにそうですけど・・・・・・」「せっちゃん、土方さん帰って来たで」一人ポツンと立っていた刹那がネギ達に近寄りアスナと他愛も無い話をしていると、木乃香が急に彼女の腕を掴んで指を差す。見ると修学旅行の同行者の土方が片手に紙袋を持って口にはタバコと団子の串の両方を咥えているという姿で歩いて来た。「ちょっくら団子食いに行ってた、ん? 宮崎の奴フラフラ歩いて何やってんだ?」「恋占いの石とかいう奴ですよ、目をつぶって向こう側の石に辿り着ければ恋が実るとか」「ふ~ん、ガキが好きそうな遊びだな」刹那の説明に土方は生徒の声援を貰ってフラフラ歩いてるのどかを見ていると「それよりホレ」「え?」「団子だ、一本やる、土方特製マヨ団子だ」おもむろに紙袋から一本のマヨネーズがテンコ盛りの団子を取り出して、刹那の方へ顔を向けずに押しつけるようにそれを渡す。受け取った刹那は何故こんな物を? と言いたげな表情を浮かべた「お前ここに来てからやけに考えこんでただろ、何考えてるか知らねえがそういう時は胃にマヨネーズ入れとけ、マヨネーズは悩みをスッキリ解消させる事も出来る」「そんな効力ありましたっけ・・・・・・?」「あるんだよ、何十年もマヨネーズを愛する俺が言ってんだぞ、その土方特製マヨ団子は俺のオゴリだ、食っとけ」「あ、ありがとうございます・・・・・・・」土方のマヨネーズ論を聞いても未だ納得の出来ない表情のまま刹那は彼から貰ったマヨ団子を一口食べてみると、すぐに彼女はしかめっ面を浮かべる「うえ・・・・・・」「食のIT革命だろ」「革命しまくりですコレ・・・・・・」食べた瞬間思わず舌を出して不味そうにする刹那の隣で、土方はのどか達の方を眺めながら更に口を開く。「こいつを食って少しは悩むの止めろ、一緒にいる奴がシケたツラしてるとこっちはイライラすんだよ」「・・・・・・」咥えていた団子の串を紙袋に戻しながらぶっきらぼうに土方は刹那の方へは向かずに告げた。そんな彼の態度に刹那はふと彼から貰ったマヨ団子に目をやる(もしかしてこの人なりの優しさなのだろうか・・・・・・『死装束』の事で悩んでいた私の為に・・・・・・食べないわけにはいかないな)そんな事を考えると思わず刹那は少し笑ってしまう、土方も“誰かと同じで”他人と接するのがかなり不器用なのだ。「ありがとうございます、土方さんのおかげで悩んでる自分がアホらしくなってきました」「ああ? 俺のおかげじゃねえマヨネーズのおかげだ、つうかお前は元からアホだ」「はいはい」素直じゃない態度の土方に思わずまた笑ってしまいながら彼から貰ったマヨ団子を一口ほうばる刹那。味はやはり酷かった刹那がなんとかマヨ団子を食べ終えて数分後、彼女の離れた所にいる生徒達の群衆が歓声が起こしている何故なら「ゴ、ゴール出来た・・・・・・」「よっしゃぁぁぁ!! のどかがゴールしたッ! まっすぐ進まずに色んな所歩き回ったけど何故かゴールに辿り着けたッ!」「最初は不安でしたけどおめでとうですのどか・・・・・・私もやっといた方が良かったですかね・・・・・・」「やったーッ! のどかがちょっと一回トイレに突っ込んだ時は駄目かと思ったけど気合いでゴールしたッ!」「のどかがまき絵の首を絞めつけて、「え?コレが石」って言った時はもう駄目かと思ったけどゴールしたッ!」「私もあの時死んだかと思ったけど(私が)、のどかがゴールした・・・・・・」どうやらのどかは無事に恋占いの石に辿り着いてゴール出来たらしい、彼女がその場でヘロヘロになって目を開けて安堵している中、ハルナを始め多くの生徒達が歓声を彼女に送っている、まき絵は虚ろな表情で首をおさえているが急いでのどかの元にハルナと夕映が近づく「これであの人との恋が実るかもよッ!」「いやこんな事で土方さんと・・・・・・・」「俺がどうした?」「ひ、土方しゃんッ! いつからここにッ!?」「しゃん? 何テンパってんだお前? さっきからずっとお前の事見てたぞ」突然現れて彼女達に近づいて来たのは、訝しげにタバコを咥えながらこちらを見る土方、のどかは急にオドオドし始めて軽いパニックになるが夕映はそんな彼に視線を向ける「何持ってんですか?」「団子屋でトッピングしてもらった土方特製マヨ団子だ、テメェにはあげねえからな」「いえ死んでも結構ですから」タバコを携帯灰皿に捨てている土方に夕映は手を振っていらないいらないと仕種をする。(なんでのどかはこんな人に惚れたんでしょうか? ・・・・・・まあ私も人の事言えませんが)そんな事を夕映が考えていると階段をあの男がサンダルの足音をたてながら生徒を二人連れてやってきた「あ、いたいた」「皆さんここにいたんですか」「銀八が団子屋寄ってたから余計時間かかちまったじゃねえか」銀八とあやかと千雨もようやくネギ一行と合流出来た、どうやらアスナや土方同様にここに来る途中で団子屋に寄ってたらしく、銀八は口に団子の串が挟んでいる「よう、テメェ等先行き過ぎ、俺等迷っちまったじゃねえか」「迷った割には口に団子の串咥えてますね・・・・・・」「迷った挙げ句に見つけた団子屋でちょっと糖分補給してた」「そうですか・・・・・・」団子の串をその辺にペッと吐いて捨てる銀八に、ネギがいつもの事かと後ろ髪を掻き毟っていると、千雨の隣であやかが何かを指さして興奮している「あ、あれはまさか恋占いの石ッ!? よしッ!」「おい、いいんちょまさかやる気じゃねえだろうな・・・・・・」「当然やりますわ、じゃあ行ってきます」「オイオイオイ、あんなのやっても効力なんてねえだろ・・・・・・」恋占いの石を見つけてテンションの上がったあやかはズンズンと出発地点にある石の方まで歩いて行ってしまう、それを見送るように眺めている千雨はやれやれと頭を横に振る「まあいいんちょはこの修学旅行中が勝負らしいから、縁起担ぎでやるのもいいかもな・・・・・・」「あれ? あやかの奴何やろうとしてんだ?」「恋占いの石だとよ、パンフによると今いいんちょがいる所から目をつぶってそこにある石に辿り着ければ恋が実るとかどうとか」「・・・・・・マジ?」貰ったパンフを読みながら説明する千雨に、不思議と感じていた銀八は目をパチクリさせる。興味を示しているらしい「まあ私はそういうの無縁だしそういうのも信じないタチ・・・・・・ってオイッ!」「しずな先生ィィィィィィ!!!」「行っちまった・・・・・・・バカがバカな願望叶える為に行っちまった・・・・・・」銀八が想い人の名を叫びながらあやかのいるスタート地点に所に疾走。そんな駄目教師の姿に千雨は呆れた表情でため息をつく一方あやかはというとスタート地点の石からどうやって目をつぶってあそこまで辿り着けるか計算していた「ここからゴール地点は20Mぐらいの距離・・・・・・まっすぐ進めればなんて事無いですが果たしてそうするには・・・・・・」「何ブツブツ言ってんだめんどくせえ、こういうのはパパッと行っちまえばいいんだよ」「ってあれ銀さんッ!?」「目をつぶって・・・・・・だっしゃぁぁぁぁ!!」「ま、待って下さいッ!」突然現れた銀八にあやかは一瞬戸惑いを見せるも彼はそんな彼女を尻目に目をつぶったまま向こう側の石に向かって全力疾走、慌ててあやかも目をつぶって追いかける。 「何で銀さんが恋占いの石に挑戦するんですかッ!?」「しずな先生のハートは俺が貰ったァァァァ!!」「やっぱりそれが目的ですかッ! いい加減諦めてくださいッ!」「あんッ!? テメェなんか惚れた相手なんていないって前に一緒にファミレス行った時に言ってただろうがッ!」「そ、それは・・・・・・」走りながら返してくる銀八にあやかは思わず動揺する。惚れた相手にそんな事言われたらあの時はそう答えるしかなかったのだ。「相手もいねえのに俺の邪魔すんじゃねえッ!」「ああもうそれは・・・・・・・!! とにかく銀さん待って・・・・・・!」「うぉりゃぁぁぁぁ!!!」何か言いたげだったがすぐに顔を赤くして押し黙るあやか、銀八はそんな彼女をほっといて一気にゴールへ・・・・・・の筈だったのが・・・・・・・「ん?」「イタッ! どうしたんですか急に止ま・・・・・・」突然ズボッと何か変な物を踏んだ感覚があった銀八は思わずその場に足を止めたので、後ろから目をつぶって走っていたあやかは彼の背中にそのままぶつかってしまう。何事かと彼女が思っていると「きゃあッ!」「おわッ!・・・・・・のふッ!」突然音を立てて二人がいた地面から穴が開いて、銀八とあやかはそのまま一緒に穴に落下する。「何だよこの穴・・・・・・がふッ!」2M半ぐらい落下した穴の中で銀八が何事かと思っているとすぐにあやかも彼の腹の上に落ちてきた。「す、すみません銀さん・・・・・・」「謝る前にさっさと俺の上から降りろコラ・・・・・・!ってアレ? あの緑色の物体の御方はもしかして・・・・・・」「「「「「ゲロゲロ」」」」」「ギャァァァァァ!!!」「きゃぁぁぁぁぁ!!!」 あやかに銀八が怒鳴ろうとするがその前に穴の中のいた大量のカエル達に驚く方が早かった。あやかも驚いて思わず銀八に泣きそうな表情で抱きつく。「銀さん助けてッ!」「「「「「ゲロゲロ、ゲロゲロ」」」」」「こっちくんじゃねえよカエル様ッ! さっき新幹線で会ったばかりなのにどんだけ俺に対して積極的なんだよッ! 俺はこういう積極的な愛情は嫌いなんだよッ!」首に手を回して抱きついているあやかを両手で抱えた銀八は、襲いかかってくるカエル達を蹴飛ばしながら悪態をつく。しばらくして上から慌てた表情で千雨が顔を覗かせてきた「おい銀八ッ! いいんちょッ! うわッ! 第二次カエルフェスティバルッ!!」「千雨早く助けろォォォォ!! なんか先住民の皆さんのおかげでこの穴ヌルヌルしてスッゲー気持ち悪いんだよッ!」「千雨さん早くして下さいッ! いやでもしばらくこのまま銀さんと一緒に・・・・・・」銀八に抱き抱えられたまま頬を染めているあやかが変な事考えている事に気付いた千雨は「いいんちょさっさと手を伸ばせ、早く助けて欲しいんだろ」「・・・・・・もう」いち早く彼女に仏頂面で手を差し伸べる。あやかは不満げに千雨を見ながらその手を取って穴から脱出した。「お~い次は俺だ、さっさと助けろガキ共~」「それが助けを求める態度かよ・・・・・・・ほら」「銀さん、私の手も」「おう、ったく何でこんな所にカエルの溜まった落とし穴があんだよ・・・・・・」千雨とあやかの差し伸べてきた手を二つ持ち、悪態をつきながら銀八もようやく落とし穴から脱出した。「一体誰がこんな事手の込んだイタズラを・・・・・・」「よくもまあこんなに掘ったもんだな・・・・・・やった奴はよっぽど暇なんだろうな」銀八を助けた後あやかと千雨は落とし穴を覗きながら誰がこんな事やったのかと考えているが、その後ろでしゃがみ込みながら銀八は誰がやったのか大体予想はしていた「やっぱコレもネギが持ってるモンを狙っている連中の仕業・・・・・・だろうな」そんな事を考えながらようやく立ち上がった銀八にさっきまで姿を現さなかったネギがカモを連れて歩いて近づいて来る「銀さんさっき何か凄い音しましたけど何かあったんですか?」「お前がどっか行ってる間に俺とあやかがカエル地獄に遭ってたんだよ」「え? てことは関西呪術協会の連中がまた来たんスかッ!?」「ただの落とし穴だ、カエル入りのな」「すみません・・・・・・ちょっと新田先生達と生徒の皆さんの移動の手続きをやっている隙にまさかそんな事になるとは・・・・・・」「お前が悪いわけじゃねえんだから気にすんなよ」頭をこっちに下げて謝ってくるネギに銀八は別段気にせずに頭を掻く。元々悪いのは関西呪術協会の連中だ、狙われてるネギに非はない。二人がそんなやり取りをかましていると少し離れた場所でA組の生徒がまだ騒いでいた。「ねえゆえゆえッ! あれは何ッ!?」ハルナが興奮したように指差す方向には三つの小さな滝が流れている何とも不思議な建築物。夕映は空になった水筒のフタを開けながら説明する「『音羽の滝』、飲めば右から『健康』・『学業』・『縁結び』の効果が貰える1000年以上前から存在する水です」「マジンガーッ!?」「Zです」「よしッ! のどか、恋占いの石だけじゃ心元無いから飲みまくるわよッ! 無論一番左の縁結びだからねッ!?」「う、うん・・・・・・」夕映の説明を聞いたハルナはのどかの手を引っ張って縁結びの滝の方に連れて行く。すると他の生徒達ものどか達がいる所になだれこんでくる。「私も一番左ッ! 恋愛運上昇ッ!」「柿崎・・・・・・アンタ彼氏いるじゃん・・・・・・」「まき絵は学業の方飲んだ方がええやろ?」「亜子、それはもう諦めてるから平気、むしろ私の不憫さを気遣ってくれる男の人が欲しいんだよ・・・・・・」「どれどれ千雨ちゃんの為に縁結びの水を水筒に入れておくか・・・・・・うごッ!」「あらごめんなさい、思わず横っ腹に肘打ちかましちゃったわ」「ちづ姉何で朝倉に・・・・・・」A組の生徒でワイワイと一番右の縁結びの滝から流れる水を飲んでいるのを見て銀八達も近づいて来た「オイオイ何はしゃいで滝の水飲んでるのあいつ等?」「『音羽の滝』だってよ、一番左の滝を飲めば『縁結び』の効力があるとか書いてあるぞ、いいんちょ飲みに行ってこいよ」「当然です、恋占いの石に失敗したならばここでなんとか運気上昇をしなければ」「あっそ・・・・・・・」張り切って一番左の滝に向かうあやかを見て、持っていたパンフをしまいながら千雨は彼女に少し哀れみを感じていた。「必死だなあいつ・・・・・・まあ相手が相手だからな」「何処行ってもはしゃぐ事しか脳みそにインプットされてないのかねぇあいつ等・・・・・・」「お前は行かないのかよ? しずな先生の為に縁結びでも飲めばいいじゃねえか」皮肉交じりに話しかける千雨に銀八はあやか達の方を眺めながら首を横に振った「いややっぱ縁担ぎなんかしても肝心なのはテメーの度胸次第だし、あんまり意味ねえなって気付いてよ」「必死に恋占いの石にやった奴が言ってるとは思えないセリフだな」銀八に向かってツッコんだ後千雨もあやか達の方へ目をやる。のどか達や色々な生徒がガブガブ飲んでる光景を見て若干引いている視線を送った「何であいつ等貪るように飲んでんだ・・・・・・? たかが水だろ?」「男に飢えてんじゃねえか?」興味なさげに銀八が言っていると、後ろから来たアスナと木乃香を連れたネギが突然彼の手を引っ張る「銀さん」「ん? ネギどうした?」「あの・・・・・・生徒さんの様子おかしくありませんか?」「いつもおかしいだろ、むしろ正常な頃のあいつ等を知りたい、特にそいつとか」「私も正常なアンタを知りたいわよこの万年異常者」「はいはいその辺にしといてな二人共」腕を組んで突っ張ってくるアスナに銀八が睨みをきかせているのを木乃香が二人の間に入って喧嘩する前に止める。ネギの肩に乗っかっているカモはそんな光景を見ながらため息をつく「気を抜くとすぐ喧嘩するから疲れるッスねこの二人・・・・・・」「僕はもう慣れたけどね・・・・・・そんな事より銀さん、やっぱり生徒の皆さん様子おかしいですよ、僕ちょっと見てきま・・・・・・ってッ!!」銀八とアスナから生徒達の方へ視点を変えた瞬間ネギが驚いた様子のリアクションをとる「銀さん大変ですッ!」「どうした? まき絵の首が吹っ飛んでたか? 気にすんなすぐに新しい顔が生える」「いや生えねえよ、いつ佐々木はエイリアン張りの再生能力手にしたんだよ」「生徒の皆さんが顔真っ赤にして倒れてますッ!」「「は?」」ネギの叫び声に銀八と千雨が同時に生徒達の方へ目をやる。見るとそこには「のどか起きるです」「起きてまひゅ~」「ねえ夕映、のどかもしかして酔ってる・・・・・・?」「柿崎ッ! こんな所で倒れてたらヤバいってッ!」「御主人様~もっと罵ってくだひゃ~い」「何この子気持ち悪ッ! 誰か頭専門のお医者さん呼んでッ!」「まき絵大丈夫か~?」「無理・・・・・・吐きそう・・・・・・」「ちづ姉は何で平気なの・・・・・・?」「何でかしら?」顔を真っ赤にしたA組の生徒達がゴロゴロと屍の様にその場に横たわっていた。銀八達は勿論我が目を疑う「こいつは・・・・・・」「何であいつ等顔真っ赤にして倒れてんの・・・・・・?」千雨が唖然と見てると後ろから土方と刹那が慌ててこちらにやってくる。「万事屋ッ! 何があったッ!?」「生徒の皆さんがどうしてあんな事に・・・・・・」銀八はしばらく目を細めて生徒達を観察した後、土方と刹那の方に振り返る「あのツラから見てわかんだろ、酒だよ酒、水じゃなくてあいつ等酒飲んだんだ」「酒ッ!? ここから流れる滝は酒なんか出ないぞッ!」「じゃあどうせネギの持ってるモンを奪いに来た連中だろ」「まさか関西呪術協会か・・・・・・!?」「まるで俺等をおちょくってるようなやり方だぜ・・・・・・」刹那と推測しながら銀八はふと思い出す。そういえば“彼女”もあそこの水を飲みに行って・・・・・・「千雨ッ! あやかはどうしたッ!」「銀八ッ! いいんちょが死んでるッ!」「オイィィィィ!!」倒れている生徒達の群れの中に入っていた千雨が銀八に向かってあやかが倒れている所を指さして叫ぶ。慌てて銀八はその場に向かって、倒れているあやかを見つけた。「すみませんお客様ァァァァ!! 終電ですから起きて下さぁぁぁぁいッ!!」「はひ~?」「おいあやか起きろォォォォ!! 酔っ払ってるのバレたらお前停学になるよきっとッ! 俺も責任取るハメになるんだから勘弁しろよッ!!」「ふにゃ~?」倒れた彼女の上体を掴んでユサユサと激しく揺さぶるが完全に酔っているのか顔を真っ赤にして銀八に向かってヘラヘラ笑っている。こんな彼女の姿今まで見た事がない「うにゅ~」「うにゅ~じゃねえよッ!」「銀八ッ! いいんちょ大丈夫かッ!?」「コレ見てみろッ! 完璧に酒に飲まれてる状態の人間だろうがッ! 飲まれまくってうにゅ~言ってんだぞッ!」「うにゅ~」「うにゅ~って何?」「知るかボケェェェェ!!」ヘラヘラ笑っているあやかを揺さぶりながら銀八が千雨に吠えている頃、ネギや土方達も他の生徒達の安否を調べていた。「亜子さん大丈夫ですかッ!?」「ウチはあんまり飲んでなかったらなんとか大丈夫やけどまき絵が・・・・・・・」フラフラしながら亜子が指さすとそこには吐きそうな様子で横たわっているまき絵の姿が「気持ち悪いよ~・・・・・・」ネギはそんな彼女を見てすぐに近寄り上体を起こし「僕に任せて下さいッ! ふんッ!」「ごふッ! おろろろろろッ!」「ネギ先生任せるって何でまき絵にボディブローッ!? めっちゃ吐いとるッ! まき絵がめっちゃゲロ吐いとるッ! 滝の様に吐いとるッ!」思いっきり腹に向かってネギに拳を入れられたまき絵は滝が出る所の隣で口から吐瀉物を吐きだす。驚いてる亜子に向かってネギは笑顔で「いや~全部吐いちゃった方が楽になると思いまして」「無理・・・・・・・私もう死ぬ・・・・・・・」「楽どころかそのまま昇天しそうな勢いなんやけどッ!? 」全て吐きだした後のまき絵の死んだような表情を見て亜子がネギに向かってツッコんでいる頃、土方と刹那も倒れているのどかの容態を調べていた。「おい宮崎、しっかりしろ」「ハハハハ、土方しゃんが一杯います~」「のどかぁぁぁぁ!! しっかりしてぇぇぇぇ!!」「完璧にベロンベロンですね・・・・・」上体を起こしてのどかの意識を確認する土方だが、彼女は目を回しながらろれつが乱れている、完璧に酔ってる状態だ、付添いのハルナと夕映も心配そうに見る。のどかの状態を土方の隣で見ていた刹那は彼の方へ顔を向ける「どうしますか土方さん」「決まってんだろこういう時は・・・・・・」「え?」こんな状態になっているのどかにも土方は冷静にある物を懐から取り出す。それは彼が常に持ち歩いている地上最強の調味料「マヨネーズだ、こいつを飲めば何事も万事解決だ、どんな状態でも治せる、それがマヨネーズだ」「はいッ!?」懐からマヨネーズの入ったボトルを取り出してフタを取ってのどかの口に直接突っ込ませようとする土方に刹那が驚きの声を上げる。当然夕映もそんな彼を制止させようとする。「それだけで万事解決するのはあなただけですから、そんな物をのどかに・・・・・・」「待って夕映・・・・・・!」「何ですか友達がマヨラーの餌食になりそうな時に」夕映が土方を止める前にハルナが彼女の肩をガシっと掴む。何事かと夕映が振り返るとハルナはそっと彼女に耳打ちする。「アレって土方さんが常に持ち歩いてるマイマヨボトルだよね・・・・・・?」「そうですね、いつもあの人は持って吸ってますね、気持ち悪くてしょうがないです」「って事はもしかしたらこれ・・・・・・土方さんのマイマヨをのどかが口につけたらそれ関節キスになるんじゃないの・・・・・・!?」「いやハルナ確かにそうですけど・・・・・・」ハルナが言うにはこのままいけば土方が常に吸ったり使用しているマイマヨをのどかの口に当てることで関節キスになるだとか、だが夕映はそれを聞いても複雑な表情を浮かべる「ここはのどかの為に大人しく見守ろう・・・・・・!」「ハルナ、ジュースとかならそういう展開もアリですけどマヨネーズでそういうシチュエーションは・・・・・・」「イケる・・・・・・! これで刹那さんに勝てる・・・・・・!」「はぁ・・・・・・」かなり興奮状態のハルナに何言ってるんだコイツ?と夕映がため息を付いてると、土方は持っているマイマヨを酔っているのどかの口につけようとしていた「土方しゃ~ん」「待ってろ、いますぐこのマヨネーズをテメェの胃に届けてやる」「あの~やっぱり土方さん止めた方が・・・・・・」「黙ってなさいこのスカポンタンッ! マヨネーズは万物に対応できるオールマイティの調味料なのよッ! 何もわかんない奴がシャリシャリ出てくんじゃないわよッ!」土方の行動を止めようとした刹那に向かってハルナが怒鳴りつける。だが彼女の言葉に土方がピクっと反応した、「おい触角メガネ、もしかしてお前・・・・・・」「え?」「俺と同じ・・・・・・マヨラー戦士か?」(・・・・・・何マヨラー戦士って? 何処の神殿で手に入る職業なのそれ?)頬を引きつらせて混乱しているハルナをよそに土方はフッと笑った。どうやら彼女が咄嗟に言った事に何か通じるモノを感じたらしい「まさかこんな所で俺と同じマヨネーズを愛する者に出会うとはな・・・・・・」「・・・・・・どうしよう夕映、なんか同志だと思われてみたい私・・・・・・」「しょうがないです、のどかの為にここはそのままつっ走って下さい、マヨナ」「張り倒すわよ夕映・・・・・・!!」思わず親友に向かってワナワナと握り拳を振り上げているハルナに対して土方は好印象を覚えた後、のどかの口に自分のマイマヨを付けて注ぎ込んだ「おお・・・・・・! 遂にのどかが土方さんと関節キス出来た・・・・・・!」小声で呟きながら興奮してその瞬間を見ているハルナ、すると土方は彼女に口元に笑みを浮かべながら口を開く。「一本丸々注入すればすぐに回復する、だよな?」「(なんかお前もわかってるよなって感じになってるんだけどッ!?)そ、そうですねッ! マヨネーズ飲めば大概の人間はヒットポイントMAXになりますよねッ!」「何言ってんですかハルナさん・・・・・」「うっさいわねッ! マヨラーの常識なのよッ!」ジト目でこっちを見てくる刹那にハルナは泣きそうになりながらも自分の存在を捨てて叫んでいる頃、土方のマヨネーズを丸々一本飲まされたのどかはというと・・・・・・「ひ、土方さん・・・・・・」「のどかが蘇ったァァァァ!!」「何か口の中凄く気持ち悪いんですけど・・・・・・」「でも人生最悪の表情をしてますが?」意識を回復させたはいいが、物凄く気分が悪そうに起き上がるのどか。だが彼女の酔いが覚めている事がわかった土方は既に同志と思い込んでいるハルナに顔を向ける。「酔いが覚めたようだな、やっぱマヨネーズは最強だな」「そうですねッ! マヨネーズ無双ですよねッ!」「にしても最初は邪魔くせえムカつく奴だと思ってたが、まさかお前が俺と同じマヨを求める狩人だったとはな・・・・・・確かお前の名、『ハルナ』とか言ってたな、覚えておくぜ」「あ、ありがとうございます・・・・・・」「・・・・・・」自分に向かって今まで見た事無い輝きを見せて笑ってくる土方に、もう否定も出来なくなったハルナはつまらなさそうに見てくる刹那をよそにそのまま彼に頭を下げる。そんなハルナの隣で夕映がボソッと「ハルナ、あなたがあの人の評価を上げてどうするんですか」「ごめん・・・・・・」土方とのどかの関節キスは成功したが、その代わりに彼の自分に対する評価が上がったのはなるべく彼女にはバレたくないと思うハルナで会った数時間後、銀八達はどうにか生徒達を無理矢理バスに入れて両館まで運びこみ、新田先生達には酔っている生徒達の事は「はしゃぎ過ぎて疲れてしまい、今は部屋で休ませてる」と言って真実を言わなかった。「いや~まいったまいった」「もし生徒さん達がお酒飲んでたのバレたら僕等のクビが飛ぶ上に生徒さん達も停学ですよ・・・・・・」旅館の中にある自動販売機が置いてある待合席で銀八とネギが談話しながら腰かけており、さっきまで二人は酔った生徒達を部屋に押し込むのに奮闘していたのだ(部屋に向かって酔った生徒をぶん投げるだけだが)。二人がため息ついてる頃、銀八の背中にもたれかかっている千雨が彼に話しかけてきた「そういえば銀八、いいんちょどうした?」「ちっとはマシになったけどまだ「うにゅ~」とか「はひゃ~」とか「あう~ん」とか時々口に出すからまだ酔いが覚めてるとは言えねえな」「のどかさんも土方さんに酔い覚めとしてマヨネーズ一本飲まされてずっとグッタリしてる様ですね・・・・・・」「何で酔い覚めでマヨネーズなんだよ、そんなマヨネーズ王国でしか通用しない事をここでやるんじゃねえよ、銀八、あの土方って奴なんなの?」「決まってんだろバカだバカ、マヨネーズバカ」千雨に土方の事を尋ねられたので銀八は短絡的に返す。彼の事を説明するにはそれで十分事足りるのだ「ところでよぉ千雨、ちょっとあやかの容態見て来てくんねえか? 同じ部屋だろ」「何で私が・・・・・・私なんかよりお前が行った方があいつ喜ぶぞ」「いいから行け、行かねえとお前のメガネかち割るぞコラ」「しょうがねえな・・・・・・」銀八に言われて千雨は不満げな表情をするも、仕方なくブツブツ文句を言いながらあやかのいる自分の部屋へと戻って行った。千雨がいなくなったのを確認した銀八はネギの方へ振り向く「連中・・・・・・俺達どころか生徒の奴等にも危害くわえてくるな」「そうですね、まさか生徒の皆さんにも色々と工作してくるなんて・・・・・・」「カタギに手出すなんざゲスがやる事ッスッ! ネギの兄貴ッ! 何としてでも親書を本部に持って行きましょうやッ!」「わかってるよ、こんな酷い事されて更に親書まで奪われるワケにはいかないよ」自分の肩で怒りながら話しかけてくるカモにネギは縦に頷く。そんな彼に思い深げに銀八が口を開いた。「にしても連中、カエル地獄とかガキ共に酒飲ませるとか俺等をバカにしてるとしか思えねえな」「僕等完璧にナメられてるって事ですね・・・・・・」「うぉぉぉぉ!! マジムカつくッスねッ! コレやった奴よっぽど性格悪いッスよ絶対ッ!」カエル騒動や落とし穴、更に滝から出る水を酒に変えるなど関西呪術協会の連中は余程タチが悪いようだ。うなだれているネギの肩でカモが怒り狂っていると銀八も不機嫌そうに髪を掻き毟る「ま、好きにバカにさせてりゃいいさ、そんな事やってる内に俺達はブツを送り届けちまえばいいんだ」「その為には生徒さんの目の裏をかいくぐって僕達だけで本部に行かないといけないですね、銀さん時間あります?」「あるっちゃあるけどよ、あやかと千雨がな・・・・・・あいつ等基本俺にくっついてくんだよ、別にあいつら連れても問題ねえが、連中になんかされそうだからあんま連れて行きたくないんだよな・・・・・・」「そうですか・・・・・・」個人の考えとしてはあやかと千雨はあまり連れて行きたくない。彼女達は魔法使いと戦う程の戦力も持ってないし出来れば何も知らずに修学旅行を楽しんで欲しいのだが・・・・・・銀八がそんな事を考えていると廊下から誰かがこちらにツカツカと歩いてくる音がする。「あら坂田先生とネギ先生、こんな所で何してるんですか?」「すみませんしずな先生、男同士で猥談してました」「ちょッ!」「フフ、ネギ先生に変な事教えないで下さいね」あらぬ事を言われてネギは慌てて銀八に目をやるが、浴衣姿のしずな先生は楽しそうに微笑む。「ところで坂田先生とネギ先生、猥談は結構ですけどそろそろお風呂に入ってはどうですか? 教師は早めにお風呂済まして下さいな」「わかりました、じゃあ俺と一緒に入りませんかしずな先生、背中洗いますよ、俺背中洗いの達人ですから、免許皆伝ですから」「どんな達人ですか」親指を立てながら言う銀八の誘い文句にネギがツッコんでいるとしずな先生が笑顔で「すみません私はさっき入ったので」と言って去ってしまった。残された銀八は残念そうにため息を付く「ダメか・・・・・・しょうがねえさっさと風呂に入るか・・・・・・」「じゃあ銀さん先に行ってて下さい、僕は土方さん呼んでくるんで」「ヘイヘイ、ったくしずな先生とじゃなくて野郎共と一緒かよ・・・・・・」しかめっ面で文句を言っている銀八をよそにネギは立ちあがって土方を呼びに行く。一人ポツンと残された銀八もだるそうに腰を上げた「部屋戻って着物取りに行くか・・・・・・あ~めんどくせえな本当」まだブツブツと文句を言いながら銀八は自分の着替えを取る為に教師用の個人部屋に戻って行く。その足取りは重い「少しぐらいさぁしずな先生とTOLOVEるみたいなイベントやりてえよ、もうカエルイベントとかたくさんだよチクショウ・・・・・・」そんな事をタラタラ言いながら銀八は待合席から去って行った。そして誰もいなくなった待合席、辺り一帯が無音と化して自動販売機の機械音のみが聞こえる、しかし数分後「よっと、何だよ用心しとけって言われたけど全然じゃねえか」突然待合席のある天井裏からシュッと足音を立てずに男が降りてきた。彼の顔は前髪が長くてよく見えない、忍び装束の上に青いコートという特殊な服装の持ち主だ「まあいいやさっさと仕事終わらせてジャンプの読書タイムに洒落込むか、確かコレだな・・・・・・」男はそんな事言いながらコートのポケットからお札を数枚取り出して中から一枚選ぶ。「さあてやっと本格的に作戦開始だ、俺が敵に回っちまったのを後悔するんだなジャンプ侍」一枚だけ手にしたお札をプラプラさせながら男は堂々と廊下を歩いて行く。もはや用心する必要は無いと察したらしい「摩利支天・服部全蔵、参る」かつて江戸でお庭番衆史上最も恐れられた忍びが遂に動きだすのであった