早朝。チュンチュンと小鳥達がまるで挨拶をするように鳴き声が上げている中、森の中に佇む家で一人の男が少女と一緒に朝食にありついている。修学旅行当日、鼻にかけた伊達メガネ、白衣とスーツ、履いてるのはサンダルという意外性200%の破天荒教師、坂田銀八モードの銀時が眠そうな瞼をこじ開けながらボーっとテーブルに出されたパンといちご牛乳を黙々と食べていた。「・・・・・・眠ぃ・・・・・・」「なんだ寝れなかったのか貴様? 私はグッスリ寝てたぞ」「どっかのガキに抱きつかれてこっちは全然寝付けなかったんだよ・・・・・・!」隣の席に座って同じ朝食を食べている少女、エヴァに向かって銀時は眠たい目をしながら睨む。どうやら昨日の夜は『あの騒動』の後、遂に彼が根負けしてエヴァと一緒に寝ていたらしい。「ゴ主人ニ興奮シテ寝レナカッタノカ? ケケケ」「こいつが俺の貞操に襲ってこないか不安で寝れなかったんだよチビ人形、燃えないゴミにほおり投げるぞコラ」「銀時様、姉さんは頑張れば燃えます、よって燃えるゴミに」「オイ殺スゾテメェ」テーブルに置かれているエヴァの従者のチビ人形ことチャチャゼロと同じく従者の一人の茶々丸が話している中、銀時がコップに入っていたいちご牛乳を飲み干す。すると隣に座るエヴァがトーストにジャムを塗りながら彼の方へ話しかけてきた。「今日から修学旅行か、呪いで行けない私の為にちゃんとお土産買ってくるのだぞ」「ジャンプでも買って来てやるよ」「京都で買う意味全く無いだろそれ、何処で買おうが全国共通だろジャンプは」「実はちょっと違えんだ、京都のジャンプはな、ページの間に八つ橋挟んでるんだよ」「嘘つけ不衛生極まりないわ・・・・・・京都のチビッ子全員泣くぞ」眠そうに適当な事言っているのにエヴァがツッコんでいると、銀時はふとテーブルに置かれた時計をみる。それを見て彼のテンションが下がる「もうこんな時間か・・・・・・眠いから全然行く気しねえな・・・・・・」そろそろ行かなければいけない場所があるのに銀時のテンションは低い、誰かのおかげで全然目覚めが悪かったのでまだ眠い。しかしその誰かことエヴァはそんな彼にニヤリと笑っている。明らかに良からぬ事を考えている表情だ「じゃあその前に貴様の目覚めが良くなるまじないでもやってやろうか?」「なんだよ、お前また変な事考え・・・・・・」「ほれ」「!!!!!」銀時が彼女の方へ顔を向けた瞬間、口を何かで塞がれて思わず目を真開く。こっちに顔を向けてきた銀時に、エヴァは不意を突いて自分の唇を彼の唇に合わせてきたのだ。それからしばらくしてエヴァは彼との接吻を終えた後フフンと笑う。「目は覚めたか?」「・・・・・・テメェ何してんだコラァァァァ!! ちょっと一緒に寝てやっただけで調子乗ってんんじゃねえよボケッ!」「イダッ!」「ゴ主人ニ“チュー”サレテ目ガ覚メタカ~銀時? ソレトモ何カニ“目覚メタ”カ? ケケケ」「これ以上おちょくるとマジでバラバラにすんぞコラ・・・・・・!!」我に返った銀時がエヴァの頭に思いっきり手でバシンと叩きこんで、茶化してくるチャチャゼロには額に青筋を浮かべて噛みつく。「さっさとあいつ等の所に行ってくるわ、まだ感触が残ってやがる気持ちワリィ・・・・・・おい茶々丸、俺の荷物持ってこい」「わかりました」エヴァのおかげですっかり目が覚めた銀時はそのままイライラした表情で席から立ち上がり、傍に立っていた茶々丸に指示しながら外出の準備をする。「どうしよう、こんなちんちくりんなガキに唇二回奪われましたなんて江戸の奴等に知られたら俺もうあっちに帰っても生きていけねえ・・・・・・ていうかここでも生きていけない、バカレッドに知られたらあいつ一生軽蔑の眼差し向けてくるよ」「案ずるな、元からあいつはお前の事軽蔑してる」顔を手でおさえて落ち込んでいる銀時に、エヴァは席から立ち上がって彼に近づきながらツッコむ。アスナと銀時という二人は出会った当初から“ずっと”折り合いが悪い「修学旅行でこれ以上評価を落とさないよう気を付けるんだな」「お前にそんな事言われる筋合いはねえよ」「あうッ!」「銀時様、持ってきました」「おう」エヴァの眉間にパチンとデコピンしている銀時に、茶々丸が彼の私服の着物が入っている風呂敷と愛刀の『洞爺湖』と書かれた木刀、そして「さっき物干し竿に使ってました桜咲さんの刀です」「マジで? それバレたらアイツどころか木乃香にも怒られそうだな」「最近出る幕ないと思ってたらウチの物干し竿になってたんだなそれ」「丁度良かったので」刹那から預かり受けた彼女の愛刀、『夕凪』。だが茶々丸によりその名刀はあっという間に物干し竿にジョブチェンジするハメになっていたらしい。もし刹那がそれを聞けば大変な騒ぎになる。とりあえず銀時はそれらを受け取り、腰には木刀、背中には野太刀の夕凪を差し、着替えが入った風呂敷をヒョイと持ち上げ出発する準備を完了させる。「あそうだ、俺がいない隙に和室の押し入れ開けるんじゃねえぞ」「どういう意味だ・・・・・・まさかお前変なモン隠してるんじゃあるまいな?」家のドアを開けて出て行こうとする前に、こちらに振り返って意味深なセリフを吐く事にエヴァは疑惑の目を彼に向けた。だが銀時は口元に笑みを広げて首を横に振る。「変なモン? 違う『男の美学』だ、ガキの目に入ると悪影響だから見るなって事だ」「茶々丸、和室の押し入れにある『男の美学』という物を全て燃えないゴミに出せ」「了解しました」「待て待て待てッ! 止めて俺の美学を捨てないでッ! ていうかアレどちらかというと燃えるモンだからッ! 見てると凄く燃えるモンだからッ! 俺がッ!」エヴァが冷酷に茶々丸に命令した途端、銀時が必死に彼女に懇願する。そんな彼にエヴァは振り返って微笑を浮かべる。笑ってはいるが目は怒っている「安心しろ、修学旅行から帰って来たらお前自体を燃やしてやる・・・・・・」「わかった銀さんは燃やされてもいいッ! けど俺のナースと女教師達はそっとしといてッ! 押し入れの底でそっと暮らさせてあげてッ!」「私がナースやら女教師やらにコスプレしてやるから問題ない、思う存分私で発情しろ」「出来るかァァァァァ!! 色々な意味で出来るかァァァァ!!!」「私の唇を二回も奪っといてよく言うわ」「二回ともてめぇが奪って来たんだろうがッ! 主人公の大事なモンを二回も奪ったのお前だろうがッ!」ドアを開けた手はそのままで銀時はもう片方の手で指さしながらニヤニヤ笑ってるエヴァに向かって叫んだ後、舌打ちをして家から出ようとする、そしてもう一度去り際に「いいかッ! 俺の大事なモンこれ以上手ぇ出すんじゃねえぞッ!」「銀時」「んだよ何か文句あんのかコラッ!? しょうがねえだろ男は・・・・・・!!」「・・・・・・気を付けてな」「・・・・・・」まだ話しかけてくるエヴァに銀時が噛みつくように振り返ると彼女の表情は穏やかに笑っていた。「ジジィに色々と厄介事押しつけられたらしいからなお前」「・・・・・・俺じゃなくてネギだけどな」「お前の事だから大丈夫だと思うが、無茶な事はするなよ、お前に死んでもらっては困る」「ガキに心配されるほど俺はやわじゃねえよ、お前は家で大人しく俺が八つ橋持って帰ってくるの待ってろ」「相変わらず素直じゃないなお前は、ククク」「何笑ってんだよチビのくせに」性格は根の底からへそ曲がり。そんな銀時にエヴァはケラケラと笑ってしまう。笑われた本人は不満そうに鼻を鳴らす。「俺はもう行くぞ、あっちのガキのお守りもしなきゃいけねえんだよこっちは」「ああそうだったな、思いっきり京都で暴れてやれ」「行ってらっしゃいませ銀時様、命だけは大事にして下さい」ドアを開けて家から出ていく時にエヴァと茶々丸に見送りの言葉を貰った銀時は彼女達に振り返らずに歩きながら手を振る「じゃあちょっくら行ってくるわ」これからどんな苦難が前に立ち塞がるのも知らず第三十五訓 旅は道連れ世は情け修学旅行先の京都へ行く為に新幹線に乗る為の集合場所の大宮駅。教員として坂田銀八は普通の生徒達よりも早めにここに来なければ行けないのだが、彼は時間ギリギリのタイミングでペタペタとサンダルの足音を出しながらいつものだるそうなスタイルでやってきた。「は~い銀さんのお通りだよ~」「お、銀の兄貴が来やしたぜ兄貴」「あッ! 銀さん遅いですよッ!」「いや~途中でスタンド使いに襲われて大変だったわ」「誰でもわかる嘘は止めて下さい・・・・・・」集合場所にやってきて最初に出迎えてきたのは背中にリュックサックと杖を背負って、肩には使い魔のオコジョ『カモ』を乗っけているA組の担任のネギ。普通の授業時間にも遅刻するのに今日までギリギリの時間でやってきた銀八に彼は呆れながら注意する。「教師なんだから遅刻しないで下さいよ・・・・・・」「安心しろ“チビのおかげ”で目覚めはバッチリだ、お前が持ってる大事なモンは奪われないようにきっちり守ってやるよ、俺の大事なモンはもう奪われたけど・・・・・・」「エヴァさんに何かされたんですか?」「・・・・・・」「銀の兄貴? なんでこっち見ないんスか?」ネギの質問に銀八は無言で顔をそむける、本当の事は死んでも言えない。銀八とカモを連れたネギがそんな事をしていると、修学旅行に参加する生徒の一人のアスナが意外そうに銀八を見ながら近づいて来た「あ~アンタ来たの? どうせアンタの事だから来ないと思ってたのに」「うわバカレッドが出た、あっちにいる木乃香の所に行けよ」ネギの同僚の生徒の一人のアスナがやって来た途端、銀八がめんどくさそうにあっち行けと手で払うが彼の一言に彼女はムッとした表情を浮かべる。「出たってどういう意味よッ! ていうかその呼び名止めろって何回も言ってるでしょッ!」「バカをバカって呼んで何がワリィんだよこのバカ、毎回テスト赤点バカ、早くあっち行けバカ」「この学校一の最低教師が・・・・・・!!」シッシッと手で邪見に追い払いながらアスナをバカにする銀八。ついでにいつも銀八がアスナの呼び名に使っている『バカレッド』とは、アスナと他四人組で編成されている成績ワーストトップ5集団、『バカレンジャー』というグループに付けられたそれぞれのあだ名である。ちなみにアスナはワーストトップのナンバーワンに長年君臨している。それを知った銀八が彼女を呼ぶ時はずっとバカレッドと呼ぶ事にしているのだが、さすがにアスナも我慢の限界なのか遂に沸々と溜まっていた怒りが爆発した。「毎回毎回バカバカバカって・・・・・・・!! アンタにバカって言われたくないわよッ! このバカシルバーッ!!」「オイィィィィ!! 何だよバカシルバーってッ!? テメェ等バカ軍団に勝手に入隊させるんじゃねえよッ!!!!」「『腰に木刀背中に真剣、サンダル履いてる白衣の男』ってどうみてもバカで変な奴にしか見えないわよッ! はいバカシルバー決定ッ!」「人のファッションにケリつけてんじゃねえよこのエテ公風情がッ! 人間様に向かって口開ける身分だと思ってんのかコラッ!?」「うるさいわね誰が猿よッ! アンタなんか腐れ天然パーマじゃないッ!」「ああッ!? 誰の頭が腐った天然パーマだぁッ!! オメーに天然パーマの苦しみがわかんのかッ!? そろそろ頭かち割るぞモンキーガールッ!!」「望む所よジゴロ天パッ!!! いいんちょの所に泣きついて逃げるまでボッコボコにシメてやるわよッ!! それとも長谷川さんの方に行くのかしらッ!? もしかしてここにいないエヴァちゃんの所ッ!?」「何で俺がガキ共の所にエスケープしなきゃいけねぇんだよぉぉぉぉ!!!」「いや待って下さいよ二人共ッ! 修学旅行が始まる前に教師と生徒で血を出さないで下さいッ!」「そうですぜお二方ッ! せっかくの楽しい修学旅行なんスからここは仲良くやっていきましょうよッ!」お互いのオデコがくっついてるかくっついてないのかぐらいの微妙な距離のまま銀八とアスナが目を血走らせながら相手を睨みつける。明らかにヤバい雰囲気が漂っている事にずっと眺めるしかなかったネギとカモが慌てて二人を止めようとするがこの二人からして一筋縄では行きそうになさそうだ。そこでネギは閃いて銀八の方に向かって口を開く「銀さんッ! そういえばいいんちょさんが銀さんの事探してましたよッ! 早く行った方がいいんじゃないですかッ!?」「大体テメェは前々から・・・・・・・! ん? あやかが何だって?」「兄貴ナイス・・・・・・!!」「さっき僕に聞いて来てたんですよ銀さんの事ッ! ほらあっちですよいいんちょさんッ!」ネギが慌てて指さす方向にいいんちょこと雪広あやかの姿がある、銀八はそれをみて仕方なそうに舌打ちする「しょうがねえな・・・・・てめぇ絶対後でシメるから覚えとけよ」「それはこっちのセリフよ、精々背後に気を付けなさい」アスナに向かって中指をつき立てた後、銀八はあやかの方へ去って行く。そんな彼にアスナも中指をつき立てているが少なくともここでケンカをする事は無いだろうとネギはホッと一安心した。「よかった、アスナさんと銀さんってケンカばっかしそうになるから気を付けなきゃ・・・・・・」「ネギの兄貴、さっきいいんちょとかいう姉ちゃんが銀の兄貴を呼んでたのって本当ですかい?」「うん嘘は言ってないよ、銀さんがここにくるまでずっと5分毎にいいんちょさんと千雨さんに銀さんの事聞かれてたから」「へ~・・・・・・・」万事屋メンバーのあやかどころか千雨もネギにしつこく銀八の事を聞いていた事にカモは複雑な表情を浮かべる。「アンタねえ余計な事すんじゃないわよ、私そろそろアイツの事マジで殴らないと気が済まないのよ、人の事散々バカにして・・・・・・」「しょうがないじゃないですか、あそこで止めなかったら修学旅行に二人共行けなくなっちゃいますよこちらに向かってブツブツと文句を言って来るアスナにネギはアハハと笑う。「でもまだ銀さんには勝てそうにないよな・・・・・・いやでも奥の手使えば・・・・・・」「アンタ何やろうと考えてんのよ・・・・・・」「『同僚の教師一人と同居人の生徒一人を“静かにさせる”方法』です」「笑顔で拳鳴すの止めなさい拳をッ! 最近アンタが笑うと殺気がすんごいこっちに向かってくるのよッ!」笑ったまま不気味な事を言い、なおかつ自分の拳をポキポキと鳴らすネギにアスナが激しく叱る。注意されたネギはしょうがなさそうに後頭部を掻きながら彼女に謝った。「すみません今度からなるべく隠すようにします、殺気」「いや元から殺気なんか出すなッ!」「ああ・・・・・・昔の優しくて可愛い兄貴は今何処に・・・・・・」自分の主人が数年足らずでこんなにも変わるのかと、ネギの肩に乗っかっているカモは一人心寂しく感じるのであった。一方銀八はというと既に集合している生徒達の方に歩いて行ってとある生徒を探しに行っていた。しばらくしてその生徒がクラスに何かを伝えているのを見えたので銀八は彼女に近づく。「おはようさん」「あら銀さんッ! 遅いですわよッ!」「いや~途中でバッファローマンと決闘申し込まれて大変だったわ、ハリケーンミキサーの連打は銀さん避けるの大変だった」「悪魔超人にケンカ売られるってどんな事したんですか・・・・・」銀八はヘラヘラ笑いながら遅刻した理由を言い訳してくるのであやかは呆れた顔をする。だがそんな彼女を尻目に銀八は彼女の格好をジーっとチェックしていた(今日は制服か・・・・・・)昨日の“目のやり場に困る服装”ではなく彼女が制服を着ている事に銀八は少しホッとした。よくよく思えば学校行事に生徒の彼女が私服を着る機会はあまり無い銀八がそんな事を考えているのも束の間に、後ろからもう一人の万事屋メンバーが彼に話しかけてきた「遅刻ギリギリじゃねえか・・・・・・教師のクセに生徒より遅いってお前・・・・・・」「お前も来たんだ、どうせ千雨の事だから来ねえと少し思ってたが結局来たんだな」「来ちゃ悪いかよ、私から見ればお前が来る方が意外だよ」仏頂面でやってきた千雨と銀八がお互い皮肉を交えながら会話しているとあやかが銀八に向かって彼女の事を話す。「千雨さん私より来るの早かったんですよ」「い、いやそれはッ!」「え~お前はしゃぎ過ぎだろ、何? 意外とこういうイベントにテンション上がっちゃうタイプなの? いるよね~普段は地味で目立たないのに修学旅行だけ無駄に空回りする奴、大体そういう奴って送迎バスでゲロって自滅するんだよな」「はしゃいでねえよッ! 起きたのが早かったから少し早めに来ただけだっつーのッ!! ていうか誰が吐くかッ!」あやかにバラされて思わず顔を赤らめている時にニタニタ笑っている銀八に勝手な推測を言われたので慌てて叫んで否定する千雨。実は本当のところ彼女が一番ここに早く来ていたのだが・・・・・・・「ったく・・・・・ところで修学旅行は私達と一緒に行動できるのかよ」「まあな、めんどくせえけど一緒に歩いて回るハメになりそうだな」「アハハハ、良かったね千雨ちゃん」「うおッ!」「うわッ! いきなり出てくんな朝倉ッ!」「俺等の心臓が早鐘の様に鳴ってるぞコラッ!」「ハハハ、ごめんごめん」喋っている途中にいきなり二人の間にニュッと神出鬼没に出てきた朝倉和美に銀八と千雨は驚きの声を上げるも、和美自身は全く悪気を感じてない様に謝る。「いいんちょと千雨ちゃんも私達の班だから、銀さんも一緒に行動しようね」「あ~そういえばお前等同じ班だったな、他に誰かいたっけ?」「千鶴さんと夏美ちゃんだよ」メンバー説明を和美から聞いて銀八は一瞬イヤな顔をする。夏美は別に問題ないがもう一人はある意味問題児だ。「あいつか、俺苦手なんだよな~」「千鶴さんの事ですか? あの人は勝手に行動すると思うのでご心配なく」「私達がそのフリーダムさに巻き込まれたらどうするんだよ」「まあその時はその時ですわ、別に悪い人じゃないんですから、ただの天然です」「天然っつうレベルじゃ済まねえと思うけどな、あれ?」同居人の千鶴にあやかが「どうしようもない」と銀八と千雨に肩をすくめて話していると、銀八が彼女を見てある事に気付いた「お前髪型変えた?」「あッ! き、気付いてくれたんですかッ!?」「そういえばいいんちょポニーテールにしてたのか・・・・・・いいよな~どんな髪型でも合う女って・・・・・・」よく見てみるとあやかの髪型がいつものロングヘアーではなくポニーテールに変わってる事に改めて銀八が気付き、千雨はボソッとつぶやく。観察してくる彼に思わずあやかは髪をいじりながら目を逸らす「ポニーテールねぇ・・・・・・」「似合わないですか・・・・・・?」「いんや、俺はどっちかつうと好みの髪型に入るから嫌いじゃねえよポニーテール」「あ、ありがとうございますッ!」「何でお礼?」銀八に好感触を貰ったのであやかは顔を赤くしながら彼にお辞儀する。だが何故そんな事されなければいけないのかと銀八が首を傾げる『乙女心』というのを彼の頭の中では理解できないようだ。そんなこんなで銀八が万事屋メンバーと合流している頃、“もう一人”の異世界の住人は楽しそうにはしゃいでいる生徒達がいる中で一人だけ鬼のような形相をしている。その人物の名は鬼の副長こと土方十四郎。この修学旅行にとある理由で学園長から一緒に行くよう任命されて生徒達と一緒に京都に行くハメになり、生徒達と同様駅の中で京都行きの新幹線が来るのを待っているのだが腰に刺す刀がガタガタ震えているほどイライラしていた。「タ、タ、タバコ吸いてぇ~・・・・・・」「駅の中でタバコなんて吸ったらまた水ぶっかけますよニコ中」「誰がニコ中だ殺すぞクソガキ・・・・・・! つうかお前それ飲むの止めろ、見てると吐き気がすんだよ、何だよ『抹茶コーラ』って、てめぇどんな味覚してんだ・・・・・・!?」「一日中マヨネーズ吸ってるあなたに私の味覚をとやかく言う資格はありません」タバコが吸えずにニコチン切れで苛立っている土方の隣で、毒舌を吐きながら『抹茶コーラ』というなんとも恐ろしげなモノを普通に飲んでいるのは綾瀬夕映、土方の天敵だ。「宮崎、ここら辺の近くに喫煙所はねえのか・・・・・・?」 「でも土方さん、もう新幹線の時間が来ちゃうんですけど・・・・・・」夕映の反対方向の隣に立っている土方が唯一名前で呼ぶ生徒、宮崎のどかが自分の腕時計を彼に見せる。それを見て土方は短く舌打ちする「クソッタレもうそんな時間か・・・・・・しょうがねえ新幹線の中に喫煙席があるのを願うか・・・・・・」「あの~そんなに辛いならもうタバコ止めたらどうですか?」「んなこと出来るか、俺にとってタバコとマヨネーズは生きる為に必要なカテゴリーとして永久登録されている、この二つが欠けるとすれば俺はもう土方十四郎じゃねえ、別のモンになる」「そうなんですか・・・・・・」土方に言い分に納得できるかどうかはわからないがとりあえず苦笑して頷くのどか、だが彼女の友人である夕映は「ニコ中とマヨ中が無くなったら少しはまともに・・・・・・ああすみませんなるわけないですね、元からの性格が人として既に終わってますし」「どういう意味だコラ・・・・・・これ以上俺にナメた口聞いてるとたたっ斬るぞ・・・・・・!」「あなたは二言目にはすぐ斬るって言いますね、そんな短気だと早死にしますよ」「こんのクソガキィィィィィ!! 最近少しはまともになったかと思ってたがやっぱりテメェはここで殺すッ!!」「や、止めて下さい土方さ~んッ!」抹茶コーラを口に付けながらも淡々と毒を吐いてくる夕映に、遂にキレた土方が腰の刀を抜いて斬りかかろうとするのでのどかが間に入って必死に彼を止める。土方達も銀八とアスナがケンカしていた時の様な光景になっていると、そんな騒動を目にして生徒が二人近づいて来た。「朝っぱらから白夜叉といいアスナさんといい、土方さんまで何やってるんですか・・・・・・?」「おう丁度いい時に来たッ! お前そこの胸糞悪いモン飲んでるガキを押えろッ! 真撰組副長として俺が粛清するッ!」「お嬢様の前で生徒の一人の首を取ろうとしないで下さい」「土方さん朝から元気やな~でも夕映はウチの大事な友達やから斬らんといてや」「・・・・・・チッ!」ジト目で話しかけてきた同居人の桜咲刹那に早速土方が夕映を取り押さえるよう命令するが拒否して、土方を見て呑気そうに注意する幼馴染の近衛木乃香。彼女の声に土方は渋々刀を鞘に戻した、夕映やアスナみたいなタイプなら遠慮ないのだがのどかや木乃香みたいな女性には彼は弱い。「すみませんお嬢様、こんなチンピラみたいな人で」「ええよ賑やかな方が好きやし、“ずっと大人しいせっちゃんといるよりも”こうやってみんなで騒いでるの見てる方がウチ楽しいわ」「・・・・・・あの、お嬢様の口から私の心を深くえぐる様な言葉が聞こえたのは気のせいでしょうか? なんか「お前といても全然つまんねえだよ」的な・・・・・・」「気のせいやない?」「そうですよね・・・・・・お嬢様に限ってそれは無・・・・・」「うらぁぁぁぁ!!」「ゴウフッ!!」「ああッ! うっかり刹那さんの頭に飛び膝蹴りかましちゃったァァァァ!! ごめんねごめんねぇぇぇぇ!!!」笑顔の木乃香の口からキツイ事言われたような気がしたがすぐにそれは無いだろと自分に言い聞かせるように刹那がつぶやいていたら、突然後頭部に何者かの攻撃を思いっきり受けてそのまま前に倒れ込む。何者にやられたのか刹那が考えながら上半身だけ起こして顔だけ振り返るとそこにいたのはやはりというか見知った顔だった「何するんですかハルナさん・・・・・・」「あ~締め切り近くてムシャクシャしてたら、ちょうど蹴りたい頭があったからつい」中学生でありながらR-18の同人誌(女性向き)を執筆する事と友達の初恋に命をかけている早乙女ハルナは刹那に蹴りを入れたせいでズレたメガネを不機嫌そうにクイッと持ち上げる。「いやムシャクシャするからって人の頭に蹴りいれていいと思ってるんですか・・・・・・私だから良かったものの、もしお嬢様だったらただじゃすませんよ」「木乃香を蹴るわけないでしょ、あんただから私も思いっきり蹴れるんだから」「あ~そうですか、じゃあ私も蹴りいれていいですかハルナさんのツラに一発?」シレっとした口調で返してくるハルナに刹那は頬を引きつらせながら立ちあがり脅しにかかると、ハルナは急に隣にいる木乃香に甘えるような口調に切り替わって抱きつく「木乃香~刹那さんが私に蹴り入れるとか言っててコワ~イ」「せっちゃんそんな事しちゃいけへんって、暴力で解決しちゃダメやで」「エェェェェェ!? ハルナさんはOKで私はダメなんですかッ!?」「人の恋路を邪魔するオジャマ虫に権限なんかありませ~ん」「それ勝手にあなた達が誤解してるだけでしょうがッ!」人の恋路というのは恐らく親友ののどかの事であり彼女が想いを寄せているのは土方、ハルナはこの二人をなんとか結ばせようとしているのだが、その前にこの刹那という四六中土方と一緒にいる少女のおかげで思いのほか進まないのだ。和美同様他人の恋愛事が大好きなハルナにとって刹那は邪魔以外のに何者でもない「二人っきりにさせたいのにこのデコ出た小娘のせいでいつものどかは土方さんに近寄れないのよ、あの人が食堂で一人マヨネーズ吸ってる時しか二人だけになれないのよ、もう何なの刹那さん? どんだけ邪魔したいの? 暇なの? 他にやる事無いの?」「ってあなたにそこまで言われる筋合いありませんよッ! それに私からじゃなくて土方さんから私を誘ってくるんですッ! 時々私から土方さんの所に行きますけど・・・・・」「誘われたらすぐホイホイついていくんだ尻の軽い小娘ですね~」「お尻が軽い? どういう意味なんハルナ?」「ま~あれだよ最近の若いモンの特徴的な奴ですぐ男に股を開いて・・・・・・」「止めろォォォォ!! 汚れなき清楚なお嬢様にけがわらしい事教えるの止めろォォォォォ!! それ以上言うとたたっ斬るぞッ!」 不思議そうに聞いて来た木乃香にハルナが淡々と説明しようとする所に刹那が慌てて止めに入る。刹那がハルナの胸倉を掴んで土方の様に怒鳴っていると、生徒達全員にある教師の声が響き渡ってきた「A組さっさと集合しろォォォォォ!! 私の命令を聞けんと全員叩きのめすぞッ! つかもう叩きのめすぞッ! ふうんッ!」「おふッ!」「まき絵が鬼の新田にいきなり殴られたッ!」怒り狂ったようにスピーカーで生徒のほかに一般人がいるにも関わらず怒鳴り散らす教師は鬼の新田こと新田先生、銀八と仲の良い教師の一人で学園広域生活指導員でもある。彼が理不尽に偶然近くにいた生徒の一人の頭をグーで殴っていると、そんな教師に同じく修学旅行を共にする教師が近づいてくる、銀八が何かと気にしてる女性教師の源しずな先生だ。「ウフフ、新田先生、今日はいつになく機嫌が悪いですね、学園長がいないのに」「うむ、修学旅行とかいう反吐が出るほどどうでもいいイベントに無理矢理駆り出された上に、私が楽しみにしていたミニ四駆の全国大会に行けなくなってしまったせいでな」「いい年してミニ四駆なんかやってるんですか新田先生?」「私のサイクロンマグナムは恐らく世界一速い」「フフ、サイクロンでもシンクロンでもどっちでもいいですから教師の仕事はちゃんとやって下さいね」しずな先生が笑いながらサラリと新田先生を注意していると二人に向かって優しそうな顔をしたスーツ姿の青年が話しかけに来た「新田先生、A組以外のクラスは全員新幹線へと移動したようです」「誰だ君は?」「いや瀬流彦です・・・・・・あなた達と同じ麻帆良学園の教師です・・・・・・」「そんな人ウチの学園にいたかしら?」「いますよッ! 確かに影薄いですけどずっといましたからッ!」まだキャリアの浅い瀬流彦を見て新田先生としずな先生がイマイチ思い出せないと眺めていると生徒達と話していたネギと銀八が教師陣の所に戻ってきた。「A組の生徒はみんな集まってます、これから移動して・・・・・その人誰です?」「あの~しずな先生? 京都で俺と一緒にガキ共置いて大人の場所にしゃれこみ・・・・・・誰だお前?」「麻帆良の教師の瀬流彦ですッ! てかネギ君まで覚えてないのッ!?」「ん~すみません記憶に無いですねセルピコ先生」「瀬流彦ッ!」「まあ完全にどう見てもモブキャラだから覚えなくていいだろ」「殴って良いですか坂田先生・・・・・・」覚える気が全く無いネギと銀八に瀬流彦はジト目で視線を送るが、銀八はそんな彼をほっといてしずな先生に近づいて行く。「しずな先生、ガキ共なんか適当にどっかに捨てて俺と京都でランデブーしませんか?」「ランデブー? もしかしてデートのお誘いですか?」しずな先生の尋ねに銀八はヘラヘラ笑いながら下心の見える表情を浮かべる銀八。彼にとって修学旅行で生徒達と絡むよりこっちの方がずっと嬉しいのだ「あ~わかっちゃいました? やっぱ話が分かりますねしずな先生は、俺と一緒に京都の街を練り歩いて最後は俺とフュージョンとかしません?」「フフフ、ダメですよ坂田先生、先生には三人も女の人がいるんですから」「三人? あ~万事屋のバカトリオはそういうのじゃないんで、小さい方は留守番だし、後のメガネと世間知らずのお嬢様はしずな先生が邪魔だと思うなら清水寺とか華厳の滝にでも突き落とすんで大丈夫ですよアハハハ」「坂田先生」「いや待てよ、あいつ等を新幹線に乗せずにここに置いてくのも手だな・・・・・・それで行きましょうかしずな先生」「後ろで“その二人”が怖い顔でこっち見てますよ」「え?」調子に乗ってきて自分の部下二人をどうしようかと笑いながら言っている銀八にしずな先生が彼の後ろの方に指差して笑いかける。それと共に銀八の後ろから禍々しい殺気を二人分感じ、表情が一変する「後ろに振り返ったらどうです? すんごい睨んでますよ先生の事?」「・・・・・・ハハ、ハハハハ・・・・・・・」銀八は振り返る事が出来ずに顔から焦ったように大量に汗を流して小刻みに震えるだけだった。間もなくしてその彼に自業自得の悲劇が訪れたのは言うまでもない数分後、三年A組は無事に新幹線の中に入る事が出来た。「いやぁなんとかクラスのみんな新幹線に全員乗れましたね」「そうだね、やっぱみんな一緒が一番いいよね」「これから京都にみんなで行くの楽しみですね」「そうだね、大勢で一緒に色んな所回る方が楽しいね」「ところで銀さん・・・・・・大丈夫ですか?」「・・・・・・全然大丈夫じゃないですよね~・・・・・・・」三人分の席の中の窓際に座ってはしゃいでいたネギが隣で腕組んで座っている銀八を心配そうに尋ねる。よく見ると顔面には引っかき傷や殴られた跡が数か所見受けられる、服もボロボロで髪の毛もバッサバサだ。「・・・・・・いいんちょさんとか千雨さん凄かったですね」「あいつ等だけじゃないよな? ドサクサに紛れて関係ねえ奴も何人かいたよな? 俺ボコボコにされながらもちょっと見えてたよ」「アスナさんと土方さんと刹那さん、あと夕映さんですね何か銀さん殴ってる時四人とも楽しそうでした、あとまき絵さんもクラスのみんなに押されて銀さんに一発決めようと思ったんですけど条件反射なのか銀さん思いっきりカウンター決めてました、顔面に」「バカレンジャー隊員とその候補共か・・・・・・京都で覚えてろよあいつ等・・・・・・」心身共にボロボロになりながら銀八は怨むようにブツブツとつぶやいている。数分前にしずな先生を口説いているとあやかと千雨に現場目撃され、その場で天誅、そのリンチに紛れ込んで仲の悪い土方達と言いたい放題されていたアスナが乱入してきたらしい、ついでにまき絵も来たらしいが銀八はその時だけは避けて顔面カウンターを決めた、彼自身は記憶に無いが「ったくよ、何で俺がしずな先生口説いちゃいけねえんだよ、何も悪くねえじゃん、ガキ共のアイツ等には関係ないじゃん、恋愛とかした事の無いガキ共のくせに人の恋路を・・・・・・ぶふッ!」銀八がネギに文句を言おうとしたその時座っていた椅子の後ろにドンッ!と蹴られた感じがし、その衝撃で前のりにぶっ飛び前方の壁に顔面を強打する。「アテテテテ・・・・・・」「後ろの席いいんちょさん達だったんですね・・・・・・」「あの金髪の姉ちゃんが銀の兄貴に暴力的になるなんて珍しいッスね」「俺がああいう事するといつも“ああ”なんだよ・・・・・・時間を置いて冷ますのが一番だ」「フン・・・・・」「確かに今は近寄りがたいですね・・・・・・」ネギがそっと後ろを座席の間から覗いてみると、やはり銀八の座席に蹴りを叩きこんだのは後ろにいた不機嫌そうに鼻を鳴らすあやかだった。千雨も彼女の隣の窓際の方に座り、耳にイヤホンを付けて音楽を聴きながらそっぽを向いている。あやかの左隣に座っている和美も苦笑を浮かべるしかないようだ「駄目ッスよ銀の兄貴、いくらあんたハーレム主人公だからって、ヒロインじゃない人に手え出そうとしたらボコボコにされるって何処の世界でも常識ッスよ」「うるせえよ誰がハーレムだコラ、“悟空”だからって他人にとやかく言う資格なんてあると思ってのかナマモノ?」「あまり知られてないネタでついてくるんスね・・・・・・」ネギの肩に乗っかってるカモに言われても銀八はしかめっ面をしながら腕を組んで適当に返すだけだ。「これであのチビがいたらもっとめんどくせえ事になってたな・・・・・・良かったわあいつがいなくて」「ほう、エヴァがいたらどんな目に合っていたのかな先生は? 凄く興味深いな」「・・・・・・」何時の間にか土方が座る筈の席に座っているストーカー二号(一号は江戸にいる)の龍宮真名に一瞬銀八の動きが止まり、そして「お前は俺の半径3M以内に入んなッ!!」「どぅふッ!!」「銀さぁぁぁぁんッ! さっきまき絵さんをノシたばかりなんだからこれ以上生徒を傷付けないでッ!」龍宮の後頭部を鷲掴みにして思いっきり顔面を前方の壁に叩きつける銀八。容赦をする気は全く無いだが顔面から叩きつけられたおかげで鼻血をポタポタと流すもそれを手で隠しながら立ち上がり龍宮は座っている銀八を見下ろしながらフフっと変な笑みを浮かべる「さすがは先生・・・・・・可愛い自分の生徒にも一切ためらいもせずに壁に顔面を叩きつけるとはさすがだ」「オメーはただのストーカーだろ、それ以上でもそれ以下でも無い立派なストーカーだろ、マジで警察呼ぶぞ、ていうかゴルゴ呼ぶぞ」「だが私は自らの体で先生の攻撃を受けてその力の源を探っているんだよ・・・・・・さあもっと殴ってみろ先生ッ! 私はなんの迷いもなくそれを全て受けようッ!」「おいコイツどんどん気持ち悪くなってねえかッ!? しばらく出ない内にレベルアップしてるよ変態度がッ! 誰かこの子を助けてあげてッ! このまま進むとこの子間違いなくヤバいからッ! 今でも十分ヤバいけどッ!」「・・・・・・もう手遅れだと思います」両手を開いて殴ってみろと大声で叫んでくる龍宮に銀八がツッコむ。傍にいるネギはどうする事も出来ないだろと頭を手でおさえるだけだ。完全にもう『行ってはいけない世界』に足を突っ込んでる「喫煙室から帰ってみたら何やってんだテメェ等」「土方く~んッ! 君の所の同居人が変態クラスにランクインしちゃってるからどうにかしてッ! お前上司も部下も変態なんだから変態の相手慣れてるだろッ!」「人を変態専用のプロフェッショナルにするんじゃねえッ! チッ・・・・・・おい色黒そこにいると俺が座れねえ、さっさと退け」「まだ先生に木刀で殴られるという経験をしていないんだが」「・・・・・・とりあえず万事屋とそういうプレイするのは後にしろ、XXX版にでも行って思う存分コイツとやってくれ」何考えてるんだコイツ?と土方がめんどくさそうにおっ払おうとすると龍宮が別の事に興味を示した「XXX版? そこなら何やっても構わないのか? 先生に○○○されるとか×××とか、はたまた△△△、□□□、○○○○○○○とかも」「おいコイツと班の一緒の奴誰だッ! 連れて帰ってリュックの中にでもブチ込めッ! そして二度と喋らせんなッ!」立ちあがって龍宮の襟首を掴み生徒達全員に響き渡るように叫ぶ銀八。しばらくして龍宮と同じ班の和泉亜子がやってきて彼女を連れて帰った。「ったく・・・・・・まともなのがいやしねえよここのガキ共は、つうかお前デコ那とデコ助と一緒に俺の事蹴ってただろ、見てんだぞコラ」「天罰だ、それよりテメェと同じ意見になるのはムカつくが同感だな、特に抹茶コーラとかいう訳のわからんモンを飲むような奴が一番異常だ、あれは一生結婚できないタイプだ」「そう言わないで下さいよ・・・・・・・皆さん元気で楽しい生徒さんじゃないですか?」「その一言で済む問題じゃねえだろここの連中は」席に戻った銀八と土方が同意見で頷いて、ネギが生徒のフォローするが銀八がすぐにそれを潰す。彼の故郷の江戸のキャラの濃い連中と何ら変わりない生徒達だ。銀八にとってはこれはかなりめんどくさい「京都に着くまで何も問題起こらなきゃいいんだけどな・・・・・・」「あの~ネギ先生・・・・・・・」「あれ刹那さんとザジさんどうしたんですか?」銀八が不安そうにつぶやいていると三人の所に刹那とその後ろに小鳥を肩やら頭やらに立たせている不思議な生徒ザジ・レイニーディがやってきた。それを見たネギはすぐに反応して、同時に土方も刹那の方に顔を向ける。「何しに来たんだお前、さっさと席に戻れ」「土方さんの席ってここなんですか、それはさておきネギ先生ちょっと問題が・・・・・・」「何ですか?」「実はエヴァンジェリンと茶々丸さんが修学旅行に来てないので6班は私達二人だけに・・・・・・」「あ~そういえばエヴァさんは来れないんですよね、困ったな・・・・・・」「どうするんスか兄貴?」どうしたものかとネギが考えていると銀八がおもむろに刹那の後ろにいるザジに話しかける。「ザジよぉ、お前はこいつと二人だけでいいのか?」「・・・・・・・・・・・・・・・」「死ぬほどイヤか、ネギ、コイツ等バラして別の班に入れてやろうぜ、こいつが可哀想だ」「あ~その手がありましたね、じゃあそうしましょうか」「いやちょっと待て白夜叉ッ! 本当にこの人そんな事言ったのかッ!?」「言ってるね、ていうか現在進行形でお前の悪口言ってるよ、へ~そんなにイヤなのかお前」「うえええええッ!! こんな無表情でどんな事をッ!?」ザジの言葉は聞けるのは何故か銀八とあやかのみ、他の生徒達やネギにはわからないので大体この二人が通訳をしている。一体自分の事をどう思っているのかと刹那がザジをジト目で見つめていると、銀八の提案を貰ったネギが彼女達に報告する「じゃあ刹那さんはアスナさん達5班の所に行って下さい、木乃香さんも嬉しい筈なので」「お嬢様の所の班ですね、わかりました」「お前と仲の悪いメガネもいる所だな」「それは元々土方さんのせいなんですけどね・・・・・・」土方が言ったのはもちろんハルナの事、根本の原因は彼だろうと刹那は小さくつぶやいた後、5班がいる席に向かって行った。そしてもう一人ザジが残っているのだが「じゃあザジさんは何処の班がいいですか?」「・・・・・・・・・・」「銀さん何言ってるか聞こえますか・・・・・・?」「あ~はいはい、それでいいんだな、じゃあ俺が検討してやるよ」「毎度思うんですけど何で銀さんザジさんの声聞こえるんだろ・・・・・・・」「唇も動かして無いッスよねあの娘っ子・・・・・・」普通の人から見ればただ口を開いているだけで何も聞こえないのに何故聞こえるのかとネギとカモが疑問に思っていると、銀八は立ちあがって彼女の手を引っ張って後ろの席に連れて行く。そこにいるのは無論、ヤンジャン(ヤングジャンプ)読んでいる和美と音楽を聞いてこっちを見ずに窓をボーっと眺めている千雨、そしてご機嫌ななめ一直線のあやかが真ん中に座って腕を組みこっちを細い目で睨んでる。「・・・・・・銀さん何かようですか?」「あのさ、こいつもお前等と同じ班に入れてくんねえかな? 一人ぼっちで困ってんだよこいつも、なあ?」「・・・・・・・・・・・・・・」「ほらな」「全然構いませんわザジさん」「・・・・・・お前等テレパシーかなんかで交信でもしてんのか?」ザジが何を言ったのかはわからないがあやかは彼女をニコッと笑って受け入れているのに、彼女の隣で音楽を聴いていた千雨がイヤホンを方耳だけに付けたままツッコミを入れた。かくして生徒達の配置が無事に終わった頃、新幹線の発車する音が聞こえてきた「やっと京都へ行けるんですね僕等、楽しみだな~」「おい、京都の名物とマヨネーズが合うのかまだわかんねえけど多分イケるよな?」「いやわかりませんから・・・・・・」「何処へでも勝手に行けよマヨネーズ野郎」はしゃいでいるネギと席に戻ってきた銀八に土方は懐からマヨネーズを取り出して質問してくるが彼等は知らないし興味も無い。至高のマヨラーの土方にとってマヨネーズに合わない食材はこの世に存在せず、オールマイティの調味料だというのが彼の考えだ。当然銀八とネギには理解できない事である。そんな事は置いといて銀八はふと京都での問題ごとを思い出した「そういえば向こうに行ったらお前が持ってるモンを奪いに来る連中がいるかもしれねえんだよな」「はい学園長は妨害してくる輩が京都に潜んでいる可能性があると言ってました、何としても関西呪術協会の長に親書を渡さなきゃいけません」「京都では気が抜けねえな・・・・・・」大切な親書をネギが懐から見せて銀八はそれを見ながら顎に手を当て考えていると背後から気配を感じる「銀さん・・・・・・」「・・・・・・お前まだ怒ってんのか? 清水寺に突き落とすなんて冗談に決まってんだろ」「修学旅行では私達から離れないように行動して下さいね、そうしないと許しませんわよ・・・・・・」「いやちょっとネギと寄る所があんだけど?」「じゃあ私達も連れてって下さい」「お前等関係ねえからついて来なくていいって・・・・・・・」「銀さん・・・・・・」「あ~もうわかったから機嫌治せ、気分が滅入る、よくわかんねえけど俺が悪かったよ」後ろの席から話しかけてくる機嫌の悪いあやかに銀八はだるそうに振り返らずに会話する。しばらくして後ろの方から小さな笑い声が「フフ、じゃあ修学旅行を楽しみましょうね」「そうだな・・・・・・」銀八はあやかの機嫌が治ったのかわからないが、笑っているので大丈夫だろうとひと安心して座席にもたれかかる。間もなくして新幹線が動き始めた「やっと動いたな」「京都では色んな所回りましょうね銀さん、そして・・・・・・」あやかがそこで口ごもるので銀八は思わず後ろに振り返って隙間から顔をのぞかせる「そして?」「いや、何でもありません・・・・・・すぐに分かると思いますわ・・・・・・」「?」あやかの声が若干トーンが下がった後に顔をうつむかせるので銀八は首を傾げていると、新幹線がスピードに乗り始め、窓から見える景色がどんどん速くなる。窓際でそれを眺めていたネギは静かに決意を表す「もし関西呪術協会の連中が襲ってきても、あの人の元で教わった僕は絶対に負けられない、いや負けるわけにはいかないんだ僕はもっと強くならなきゃ・・・・・・」誰にも聞こえないようにつぶやいた時のネギの目は師匠の目と同じ色をしていた遂に舞台の幕が開かれる一方その頃、銀八達がいないおかげで静かになっている麻帆良学園では「今頃楓さんや風香ちゃんや史伽ちゃんも新幹線に乗ってんだろうな~、ああちりとり使う?」「ありがとうございます、山崎さんは銀時様や土方さんとご一緒に京都に行こうとしなかったのですか?」学園内にある大きな広場で地味であまり目立つ印象が無い真撰組の密偵を務める山崎と茶々丸が一緒に掃除をしている。何とも意外性な組み合わせだ「いや俺は学園長に何も言われなかったからね、何か色々と揉め事が起こりそうとか言ってたけど、戦力だったら旦那や副長だけで十分だし生徒の中にも何かやたらと強い連中もいるし、楓さんとか」「一緒に行けなくて残念でしたか?」「ハハハハ、逆に嬉しいぐらいだよしばらく一人で羽を伸ばせるしね、同居人がいると何かと気を使わないといけないから、家事とかもしなくていいし」茶々丸の質問に笑い飛ばしながらちりとりで彼女が箒ではらっているゴミや落ち葉をすくう山崎、色々と彼も苦労しているのだ「そういえば何で君は京都行かなかったの? 確か旦那とネギ君の所の生徒だよね?」「私はマスターと共にいなければならないので」「マスター? ああ旦那によくくっ付いてる金髪の小さい女の子か、確か旦那をここに魔法使って呼んだ子だっけ?」「はい」ゴミで一杯になったちりとりの中をを一回ゴミ箱に入れた後、もう一度しゃがんでゴミを茶々丸にはらってもらう山崎。銀時の事情は結構聞いているので大体の彼の人間関係は知っている「旦那もまさかこんな所に来るハメになるとは思わなかっただろうな、まあ周りに一杯女の子囲ってるから旦那にとってはイイ事だったのかもね」「山崎さんも楓さん達に囲まれてますよね?」「ああ俺の場合は旦那とは全然違うから、あの三人は完璧便利屋としてか見てないからね俺の事、副長も時々コキ使ってくるし」茶々丸に向かって愚痴を吐きながらため息も吐く山崎。再びゴミが溜まったので立ち上がってゴミ箱に捨てに行く。「そういえば副長と仲の良い女の子がいたよなぁ前髪で顔があんまり見えない子、もしかすると俺の姐さんになる可能性があるんだよな・・・・・・どうしよう俺、年下に向かって姐さんって言わなきゃいけなくなんのかな・・・・・・」「俺は歓迎だけどなぁあのマヨネーズバカの女に俺がキッチリと真撰組の隊士の女房としての心得を教えたいしねぇ」「・・・・・・え?」ちりとりのゴミを捨てていると江戸にいた時と同じあの声が・・・・・・目の前には自分と同じ真撰組の服装と腰に刀を差すあの男がチューベットくわえて立っていた「お、お、お、おッ!!」「久しぶりだなぁ山崎、何お前女と一緒に掃除なんかしてんだ、密偵の仕事しろよ仕事」「沖田隊長ォォォォォォ!!!」山崎は大声を上げて後ろに跳び上がる。何せ目の前の男は山崎がよく知っている、今は江戸にいる筈の沖田総悟、別名サディスティック星の王子「な、何でこの世界にいるんすかァァァァ!? あッ! もしかして俺を助けにっ!?」山崎はもしやと近藤が来た時と同じ淡い期待を持ったが、沖田は吸い終わって空になったチューベットをポイッと茶々丸の前に捨てて彼の方へ顔を向ける「なわけねえだろ俺はとっつぁんに頼まれた仕事をしに来ただけだ、ここに来たのも10分ぐらい前だな、おい女、俺の捨てたチューベットさっさとゴミ箱に拾って捨てろよ、口で拾え口で」「口?」「中学生の女の子にでさえその態度ッ!? いいよ茶々丸さんッ! こんな人の言葉聞いちゃいけないからッ!」茶々丸に向かって目を細めて命令する沖田に山崎はツッコんだ後、颯爽と沖田が捨てたゴミを拾ってゴミ箱にスローイン、中学生の女の子にも一切の手加減はしない、むしろ上がっているドS行為、それが沖田総悟だ「ハァ~・・・・・・それでとっつぁんに頼まれた仕事って何ですか・・・・・・?」「あ? とっくに終わらせてるつーの、誰かと違って俺は仕事速えからな」「え、そんな簡単な事だったんですか? ここに来たの10分ぐらいしか経ってないんですよね?」「俺がここに来るだけでミッションコンプリートなんだよ、ちょっとしたテスト実験でね」「へ~そりゃあ一体どんな実験を・・・・・・ぶふッ!」「んな事はどうでもいいんだよ、おい山崎、あいつ何処だ? 俺はそいつに会うのが本当の目的なんだよ・・・・・・!!」山崎が質問を言い終える前に沖田の手が彼の顔に伸び、両頬を鷲掴みした後すぐに話して血走った目で沖田が山崎に質問する。「山崎ィ・・・・・・あいつ何処だ・・・・・・?」「ふ、ふ、副長の事ですかッ!? あの人ならここの学校の生徒達と訳ありで修学旅行に行ってますッ!」「土方のアホなんかどうでもいいんだよ、ガキはどうしたガキは?」「ガ、ガキ?」探してるのが土方ではなく子供だと知って山崎は汗をかきながら首を傾げる。やがて沖田は顔をニンマリとして答えた「土方に惚れてるガキ何処にいるかって聞いてんだよコノヤロー・・・・・・!!」(ヒエェェェェェ!! 完璧にドSの目になってるよこの人ォォォォォ!!)二枚目の腹黒い笑みは尋常じゃない怖さを持っている、山崎はそんな沖田を見て身を持って知った。彼が心の中で悲鳴を上げていると、それを見ていた茶々丸が口を挟んできた「宮崎のどかさんの事ですか?」「ああ?」「だ、駄目ですよ茶々丸さんッ! この人に名前を教えちゃッ! 絶対この人あの子を獲物に・・・・・・あごッ!」山崎が慌てて茶々丸を止めようとする前に沖田のアッパーが彼の顎に直撃、そのまま後ろに倒れる「おい、さっき名前言った奴、何処にいんだ? 教えねえと殺すぞ」「土方さんと同じ修学旅行に言った筈です、この時刻だと京都行きの新幹線に乗っている辺りです」「なるほどねぇ2人で仲良く旅行かなんか行ってんのか・・・・・・・・おい山崎」「は、はい・・・・・・?」 素直に教える茶々丸の話を聞いて沖田は地面に倒れている山崎を呼ぶ。山崎は殴られた顎をおさえながらかろうじて立つ、すると沖田がまたあの邪悪な笑みで「追うぞ・・・・・・!」「ま、ま、まさか隊長・・・・・・?」「そうだ・・・・・京都へ行こう」「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」「まずはアイツ等を追う為の“足”が必要だな、行くぞ山崎、京都で可愛い生徒が俺を待ってるぜ」「駄目ですよ隊長ッ! アンタが行ったら色々とヤバい事が目に見えてますってッ! ぐッ!」計画を練りながら何処かへ歩きだす沖田に山崎が必死に彼の京都行きを止めるが、彼に今度は頭を鷲掴みされる「おい山崎・・・・・・さっきからお前何で俺の事『隊長』って呼んでんだ・・・・・?」「あ、あががが・・・・・・」「今度から俺の事は『副長』と呼ばねえと殺すぞ・・・・・・!」「へ? 何で・・・・・・アダダダダッ! すんませんでした副長殿ォォォォォ!! 副長の沖田様お許し下さいアダダダダダッ!」鷲掴みにしている手に力をこめてくる沖田、必死に謝ってなんとか離して貰った瞬間、山崎はその場に倒れ込む。「わかりゃあいいんだよ、ついでに今度から土方を呼ぶ時も「チンカス」にしろ、アイツはもう江戸では副長でもなんでもねえ、ただのチンカスだ覚えとけ」「イ、 イエッサー・・・・・・」倒れた山崎に土方の呼び名を変更させてそのまま倒れた彼の後ろ襟を掴んで引っ張って行く沖田。山崎は意識がもうろうする中、視界に入った茶々丸に目をやる「い、逝ってきま~す・・・・・・」「お気を付けて」茶々丸に最後に挨拶を交わしてしてそのまま引きずられていく邪悪に笑う沖田によって「どんなガキ共がいるか楽しみだぜ・・・・・・」「ヒッ!」「どうしたんですかのどか?」「いや・・・・・・何かわかんないけど悪寒が・・・・・・」「?」「ハッ!」「どしたの柿崎?」「今私の中の神が舞い降りてきた感覚がッ!」「先生、柿崎の頭のネジが飛びました~」「よ~し誰かそいつのネジ見つけてやれ~床に落ちてるかもしんねえぞ~」ついにサドスティック星の王子が異世界に降臨したのだ