志村新八の行っているバイトはとある小さな飲食店だ。学歴が寺子屋中退の新八にとってはこんな店ぐらいしか雇ってくれる者はおらず、彼は黙々と仕事を行っていた。しかし「だからバカおめえ違うつってんだろうがッ! それじゃねーよッ! それ領収書出す奴だろうがッ!!」「え? じゃあこれですか?」「それも違えよッ! 何でそこで『清算』押すんだよッ! ワザとやってんのッ!? いい加減にしねえと殺すぞコラッ!」「すみません・・・・・・」レジ打ちを教えている店長から罵声を送られながら新八は頭を下げて謝る。雇って二週間ぐらい経つのだが、何やっても一般業務が出来ない新八に日に日に店長のイライラは頂点に達してきた。「オメー今時レジ打ちなんてチンパンジーでもゴリラでも出来るよッ!? オメー人間じゃんッ! 何でこんな簡単な事やれねえんだよッ! 猿以下じゃねえかッ!」「す、すみません・・・・・・昔万事屋とかやってたんですけど・・・・・・」「だったらそのスキル活かせやこのエテ公以下のドブネズミッ!!」「ぐはッ!」ついに完全にブチ切れて新八の顔面を思いっきり殴りつける店長。衝撃で倒れた新八は殴られた頬を片方の手でさすりながら、もう片方の手で飛んでしまったメガネを拾って付け直した。「こちとらテメェみたいな使えねえカスをクビにしても何も困らねえんだぞオイッ! 履歴書に『万事屋やってました』とか『剣術やってました』って真面目に書く奴は本当マシな奴いないのッ!? 剣なんてとっくの昔に滅んでんだよッ! それをまだ侍気どりですかユーはッ!?」「おいもういいだろ店長よ、なあそこのメガネを付けた少年、レジはいいからさお茶持ってきてくんない?」「あ、ヘイただいま」新八と店長のやり取りをさっきまで見ていた客の一人が新八に向かって注文してくるので、彼は慌ててお茶を持って行く準備する。客は男性でかなり豪勢な服装とサングラスと付けていてこんな店に来る客とは思えない姿だ。でかい顔と体にありとあらゆる場所に光り物を付けている所を見て、かなりの成金なのがうかがえる。そんな客に店長はさっきの行いから急変して急にペコペコしだした。「兵藤の坊っちゃん甘やかしちゃダメですよ~最近のガキはこんな風に叩きつけないと何も覚えやしねえんですから~」「なんつーかあの少年があまりにも哀れに見えちゃってな、俺みたいな『勝ち組』と違って『負け組』は日々の生活を生きるのにでさえ必死だ。あんな姿を見ると思わず助けたくなるのが人間の性って奴さ」「いや~さすが『帝愛グループ』のご子息は立派な考えを持ってますな~、それにしてもどうしてあんな大企業の二代目がこんなちっぽけな店に来たんですかぃ?」「クックック・・・・・・決まってんだろ」「お茶持ってきました~」店長の疑問に客が歯を出してニンマリ笑っていると、新八がお盆に一杯の茶碗を乗せて戻ってきた。だがその客は近づいてきた新八に足をスッと出して「うわッ!」その足につまづいた新八が思いっきり転んでしまい別の客のテーブルにそのまま顔面をぶつけてしまう。そんな彼の姿に大富豪の客はゲラゲラ笑う「こうやって小さな店に寄って下々の“可哀想な姿”を見てるとよ、つい“ちょっかい”かけたくなっちゃうんだよね」「ギャハハハッ! 坊っちゃん、さっき『あんな姿を見ると助けたくなるのが人間の性』って言ってませんでしたかいッ!?」「ん~? 助けた後突き飛ばすのが面白いんだろ」「ギャハハハハッ! さすが坊っちゃんだッ! おい新八何やってんだッ! お茶をこぼしたテメェが悪いんだからさっさと坊っちゃんに謝れよッ!!」 店長は倒れている新八の髪を乱暴に引っ張って、大富豪の客の前に座らせて何度も彼の頭を床に叩きつける。そんな新八の姿を見て金持ち息子は一層下品な笑い声を上げる。(クソ・・・・・・これじゃあ昔と同じゃないか・・・・・・!!)頭を床にこすりつけられながら新八は悔しそうに唇を噛む。(今まで僕は銀さんに何を教えてもらってたんだッ! こんな奴の下でコキ使われる為に僕は生きていたのかッ!? こんなボンボンに見下される為に生きていたのかッ!? 僕は銀さんがいないと何もできない人間なのかッ!?)「おい」(え?)「あん? お客さん今こっちは忙・・・・・・ガフゥゥゥゥ!!!」新八をさっきまで床にこすりつけていた店長が叫び声を上げながら思いっきり後ろに吹っ飛ぶ、その光景を見て新八は奇妙なデジャブを感じた。「(まさか・・・・・・)銀さんッ!」「いや銀さんって誰?」「あれ・・・・・・?」あの男がやっと帰って来て、また自分助けに来たのかと思った新八は後ろに振り返るが。そこにいたのはヨレヨレのローブを着た髪の赤い男。どうやらこの男が店長をぶん殴ったらしい。KOされた店長をよくみると顔に思いっきり拳の跡がついている。そんな観察をしていた新八を尻目にその男はツカツカと金持ち息子の方に近寄る。「テメェ等が騒ぎまくったおかげで、俺のストロベリーパフェがまるまるこぼれちまったじゃねえか、どう落とし前つけてくれるんだコラ?」赤髪の男はケンカを売るように空になってしまったコップを金持ち息子の前に突き出す。だが相手はクックックとこんな状況で余裕そうに笑っている。「こいつは悪かったパフェ代は俺が弁償させてもらうよ、いくらだい?」「金はいいからパフェ出せよ」「いやだから金出すからそれで・・・・・・」「“今”パフェ食いてえんだよ、こちとら“長年寝てた”せいで糖分が無くてイライラしてんだ、同情するならパフェを出せ」物凄い剣幕で赤髪の男は金持ち息子を睨んで、糖分切れでかなりイライラが溜まってるのがわかる。新八はその状況を心配そうに見ていたが、金持ち息子は残念そうにハァ~とため息ついた。「惜しいな~あんた見たいな男嫌いじゃないんだが、金で解決出来ないならしょうがない、よっと」金持ち息子が合図するかのように指でパチンと鳴らす。するとゾロゾロとサングラスを付けた黒服の男達が店内に入ってくるのだ、これには新八も慌てて後ずさりする。「ちょいとこの赤髪の男にヤキ入れてくんねえかな? ヒヒ・・・・・・強気な態度のあんたが俺の前で血まみれになりながら土下座して許しを乞うのは何秒後かな?」(なんていうサディストだ・・・・・・)ゆっくり見物かのように椅子から立ち上がらずにニカニカ笑っている男に新八は恐怖を感じる。あの男の周りには常に用意できるボディーガードが何十人もいたのだ、しかも全員かなりの腕を持っているのは見た目で分かる。だが新八はそんな事よりもっと異様なものを見た。そんな男達にあっという間に周り囲まれたにも関わらず、赤髪の男はニヤリと笑っているのだ。「こっちは糖分切れてムカついてんだから、テメェ等どうなっても知らねえぞ」「へ~こんな状況でもそんな事言えちゃうんだ、まあいいや・・・・・・・殺っちゃえ」「ちょッ!」男の非情な命令に新八が何か言おうとするが、その前に黒服の男達が一斉に赤髪の男に襲いかかる。あんな集団にリンチにされたら一巻の終わりだ、新八が息を呑んだその瞬間突然雷でも降って来たかのような轟音と目も開けられないほどの閃光が黒服が囲んでいた場所から発生した。「うわッ!」「な、なんだッ!?」新八と余裕気に座っていた男も思わずその一瞬の光に目をつぶって顔を手で覆い隠す。光が消えたので新八は恐る恐る目を開けてみると「なんだ・・・・・・コレ・・・・・・」目を開けてみるとそこには大量の黒服の男達が全員コゲて倒れている。しかもまるで全身に電気でも帯びたかのようにビリビリと小さな電流が走っている。ふと見ると倒れた男達の中央には襲われる前と何も変わって無いあの赤髪の男がダルそうに欠伸をしていた。「やっぱ久々にヤルと疲れるわ・・・・・・」まさかこの現象を一瞬でやったのはあの赤髪の男だというのか・・・・・・・?「あんたさっき何を・・・・・・・」「すげぇ・・・・・・こいつはたまげた・・・・・・・こんな事が出来る人間がいるなんて、本当にすげぇ・・・・・・おいアンタッ!」新八が赤髪の方に質問する前にさっきまで腰を抜かしていた金持ち息子が椅子から立ち上がって彼の方に走り寄って行く。その男の目はサングラスを付けていてもかなりランランと輝いているのがわかる、まるで欲しかったおもちゃを見つけた子供の様だ。「今のどうやったッ!? もう一度やってくんねえかッ!?」「・・・・・・」近づいてきた男に赤髪の男は無言でただ不機嫌そうに睨む。だが男はそれを気にせずにコートからバッと小切手を出して彼に突き出す「俺の所に来ないかッ!? 金ならたんまりあるこの小切手に好きな金額を書けッ! 俺の所に来れば毎日パフェ食い放題だぜッ!!」「・・・・・・ふん」男のいきなりの催促に赤髪の男は全く動じず彼が持っている小切手の方にスッと手を差しだす。一瞬、彼の催促を受け取るのかと新八は思ったのだがバキボキッ! と何が折れる鈍い音が店内に響いた。「あ・・・・・・が・・・・・・」「金じゃなくてパフェ出せつってんだろ、それと」「お・・・・・・・お前・・・・・・・」「俺はテメェみたいに金をビラビラ見せつける腐った野郎は・・・・・・ムカつくほど嫌いなんだよッ!!」「ごほぉぉぉぉぉぉ!!!!」赤髪の男の拳が思いっきり男の顔面にヒット。男の付けていたサングラスは空中で粉々になりそのまま後ろにある店のガラスの壁に頭から突っ込んで店の外に吹っ飛ぶ。それを見た新八が慌てて店の外に出た男の方を見たが、さっきまで高らかに笑っていた男とは思えないほどの醜態で気絶していた、よくみると彼の左手は小切手を持ったまま指を何本か折られている。さっきの何かが折れる音は赤髪の男がこの男の指を折った音だったのだ「おい」「!!」さっきから何人もの負傷者を出してるにも関わらず、赤髪の男はいたって普通な態度で新八の方に口を開く、それに頬を引きつらせながら新八はゆっくりと後ろに振り返る。「な、なんでしょうか・・・・・・?」「お前ここの店員だろ? パフェもう一個作ってくんね?」「・・・・・・はい?」一瞬新八は我が耳を疑った。この男はこんな状況でもまだ糖分摂取しようと考えているのか・・・・・・? しばらく新八がキョトンとしていると、店の外から悲鳴の声やざわざわと賑やかになっている事に気が付いた「やばッ! 一般人の人達が集まって来たッ! あんたが暴れたおかげでマズイ事になっちゃたじゃないですかッ!」「いや俺が悪いんじゃねえよ、俺の一時の幸せを奪ったこいつ等が悪いんだ、そして元々の原因はお前が俺のテーブルに突っ込んだせいだ、よってお前が悪い、俺は悪くない、OK?」「全然OKじゃねえよッ! 100%アンタが悪いだろッ! とにかくここは一旦裏口から逃げましょうッ!」責任転嫁して自分に指さしてくる赤髪の男に新八はツッコんだ後、彼の手を引っ張って自分の元から来ている服をロッカーから持って店の裏に回る、ヤジ馬達が騒いで来る前にさっさとここから逃げ出さなければ「なんだって僕のバイト先にはアクシデントばかり起こす輩が毎回来るんだよチクショウッ!!」「気にすんなよ、人間ってのはいい奴ばっかじゃねえんだ、ああいう奴だってこの世にいる、それが人生さ」「アクシデント起こしたのはほとんど“アンタ”だろうがッ!」店の裏口に出た新八は一緒にいる赤髪の男に向かってキレながら逃走を開始した。「これでまた僕プータローに逆戻りだよッ! どうしてくれるんですかコレッ!? ていうか何者なんですかアンタッ!?」「さっきからうるせえメガネだなその辺は言えねえんだよめんどくせえから、とりあえずさっさと逃げるぞ」「ちょ、ちょっと待って下さいよッ!」まるで滑るように走って行く赤髪の男に追いつこうと新八は必死に走る。「せめて名前だけでも教えて下さいよッ!」「ナギだよ」「え?」「ナギ・スプリングフィールド、最近ここで昔やってた『万事屋』を再開する予定、今後ともよろしくッ!」「よ、万事屋って・・・・・・!!」ナギと名乗った男が自分に笑いかけながら言った事に新八は一瞬唖然とした。何故ならこのかぶき町で万事屋をやっていたのは他でもない自分達だからだ。新八の中で止まっていた歯車が少しずつ動き始める第三十一訓 ダメ人間の代わりなんてダメ人間で十分なんじゃね?かぶき町四天王が一人『スナックお登勢』のオーナーお登勢は旦那の墓参りに行った後店にまっすぐ戻っていた。時刻はそろそろ夜なので店は開けており、お登勢はタバコを吸いながら客を待っていると、ガララと店の入口を開けて店内に誰かが入ってきた。誰かとお登勢がそちらを見ると、すぐにしかめっ面になる。「また何かやらかしたのかい?」「悪ぃ、ちょっといざこざ起こしちまったからここでかくまってくんね?」「ったく、帰ってきて早々トラブル起こすって、あんたもそこぐらい改善しなよ」「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・何でここに来たんですか?」入ってきたのは涼しげな顔で入ってきたナギと、その後ろで彼とは対照的にゼーゼー息を荒げている飲食店の服装を着ている新八が後に続いた。お登勢はそんな新八の方を見て軽く驚いた顔をする「おや新八が何でコイツと一緒にいるんだい?」「え・・・・・・? お登勢さんこの人知ってるんですか?」「昔ここの上で住んでた奴でね、さっきフラリと帰って来たらしいんだよ」「ここの上? ここの上に住んでたのって銀さんですよね?」「あいつがここに来る前にはこいつが住んでたんだよ、銀時が住み始めたのはその後すぐさね」「へ~あそこって銀さんの前にこの人が住んでたんですか」「あ? 銀さん?」バイト用の制服からいつもの和服に着替えながらお登勢と会話している新八の台詞に、勝手に店の裏にある冷蔵庫を物色していたナギが顔を上げた。「おいメガネ、銀さんって誰だ?」「“ナギさん”の後に住んでる人です、今は行方不明ですが万事屋をしながら生活していた江戸っ子のヒーローみたいな侍なんですよ、僕もその人の下で日夜侍道を学んでました」新八が懐かしげに銀時の事を説明するが、冷蔵庫からいちご牛乳を取り出してそれを一気に飲み干した後、ナギはしかめっ面を彼に向ける。「ふ~ん万事屋ねぇ・・・・・・俺の職と家奪って随分勝手な野郎だな」「いきなり消えちまったアンタが悪いんだろ、まあ今はそいつもどっかに行っちまったから、あの家はまたアンタに貸してやるよ」「当たり前だろ、あそこは元々俺とカミさんの家だ」「今回はちゃんと家賃払うんだね」「気が向いたらな」「え、ちょっと待って下さいッ!!」お登勢と淡々と話を進めながら冷蔵庫から持ってきたプリンを持ってカウンターに座り、気だるそうにプリンをスプーンで食すナギに新八が慌てて身を乗り出す。「あそこに住むってどういう事ですかッ!? あの家はまだ銀さんの家なんですよッ!?」「お前、名前は?」「志村新八です、さっき説明したように銀さんの所で働いていた万事屋のメンバーです」「新八っていうのかお前、なあ新八よぉ、その『銀さん』ってのはあの家に現在進行形で住んでるわけ?」「いえ、今はちょっとどっか行ってて、ここしばらくずっと帰って来てません・・・・・・」「それじゃあもうあそこ空家みたいなモンだろ、俺が住んでも別に問題無いって、なあババァちょっとご飯くんね?」「何言ってんですかッ!? あの家はまだ銀さんの家ですよッ! お登勢さんしばらく待ってて下さいッ! 絶対に銀さんを連れて帰ってきますからッ!」ナギをあの家に住ませる事は非常にヤバい、あの家を失ってしまったら銀時の住む家が無くなってしまう、新八は必死に家の提供者のお登勢に懇願するが、彼女はナギにご飯を渡しながら首を横に振る。「あいつがいなくなってもうかなり時間が経ってんだ、こちとらボランティア感覚であいつを住ましてやってたわけじゃないんだよ、いいじゃないか“こっち”もあいつと同じダメ人間だし、仲良くやっていけるんじゃないかい?」「いやいくらダメ人間だからって銀さんとこの人って・・・・・・・」「誰がダメ人間だ、俺のどの辺がダメ人間か言ってみろババァ」「ご飯とプリンをかき混ぜた物体を普通に食うとか、その時点でアウトだよ」「うわ・・・・・・アンタなんちゅうモン食ってるんですか・・・・・・・?」ご飯の上に普通にさっきまで食べていたプリンを入れてかき混ぜ、それを平然とした表情で食べるナギに、新八は唖然とした表情を浮かべる。「銀さんもそんなの食ってましたね・・・・・・そういえばナギさんって銀さんと性格似てるかも・・・・・・・」「ますます気にくわねえな、ちょっと呼んで来い体育館の裏でシメる」「いやだから行方不明だって言ってるでしょ」ご飯と宇治金時を混ぜ合わせた物体を美味そうに食う銀時を思い出した新八が、目の前でご飯とプリンを混ぜ合わせた物体を美味そうに食うナギを見て奇妙なデジャブを再び感じていると、ナギが突然ご飯を食べるのを止めて新八の方に向いた「そういえばこの辺で金髪美人で気の強そうなネエちゃん見てねえか?」「金髪美人? いえそんな人見た事ありませんよ、ナギさんの知り合いですか」「いや知り合いっつうか俺の嫁」「え? ナギさんって結婚してんですかッ!?」目の前のふしだらな男が結婚している事に思わず彼の隣の席についた新八は意外そうに驚いた。その反応にナギは少し目を細める。「何そのリアクション、俺にカミさんがいるのそんなにおかしいか?」「ああすみません、銀さんみたいに一生そういうのに縁が無い人なのかと思ってまして、見た目どうみても遊び人ですし」「誰が遊び人だ、ダーマの神殿で賢者に転職しろってかコラ?」「それでどうしたんですか? まさか奥さんに逃げられたとか?」「逃げられてねえからッ! ちょっと込み入った事情で離ればなれになってるだけだからッ!」「まあ夫婦仲が悪くなるのも仕方ないさね、なんせこんな旦那とずっと暮らしてるとさすがに疲れてきたんだろ」「うるせえババァッ! 俺とカミさんの仲は一生円満だッ! 俺のカミサンはな・・・・・・!!」新八やらタバコを吸いながら話しかけてくるお登勢にナギが叫んで行方知らずの妻の事情を話そうとした時店の入り口からまた誰かが入ってくる。「お登勢サン、買イ物行ッテキマシタ、オイ小娘ッ! サッサト荷物持ッテコイヤッ!」「ただいま帰りましたお登勢様」「ババァ、お前の為にこいつらの荷物持ち手伝ったヨ~だから銀ちゃんの家売っ払うなヨ~」入ってきたのはこの店でお登勢の下で働いている二人の従業員、キャサリンとたま、そしてスーパーの袋を何個も両手で抱えている新八と同じ万事屋メンバーの神楽。どうやら何とか銀時の家を売りに出させない為にお登勢に恩を着せる魂胆らしいが、いささかパンチに欠ける恩である「おかえり、チャイナ娘が手伝ってる理由はわかんないけど御苦労さまだね」「ババァ~銀ちゃんの家売ったら老い先短い人生を今ここで終わらせるぞコラァ」「神楽ちゃん神楽ちゃん、その事なんだけどさ・・・・・・」「あれ新八、お前バイトどうしたネ? またクビになったアルか?」「まあ確実にそうなったと思うけど・・・・・・それよりこの人がさ」「ん? 誰アルかそのトリ頭?」新八はやってきた神楽に隣でまたプリンを乗せたごはんにがっついてるナギを指さす。そして少し間をおいて新八は口火を切った。「実はこの人ここの上で住む事になるらしいんだよ・・・・・・」「ここの上って何処アルか? 天国アルか? 勝手に行けヨ」「そこまで上じゃないから・・・・・・・だからこの人が銀さんの代わりに、僕等の万事屋に住むらしいんだよ」「マジアルかッ!? おいババァ何銀ちゃんの家勝手に売ってんだゴラァ!!」突然の報告神楽は持っていたスーパーの袋を床に落としてお登勢に向かって拳を向ける。だが向けられた本人はため息をついた後、彼女に向かって口を開く「しょうがないだろ、数カ月も銀時は帰ってこないんだ、こいつも“あそこ”しか住む家が無いだろうし、住ませてやるのが賢明だろ」「ふざけんなよコラァァァァ!! 銀ちゃんの家は絶対に渡さねェェェェェ!! おいそこのトリ頭ッ!」「あ? 何か用?」お登勢に向かって怒鳴った後、神楽はまだ食事中のナギを呼ぶ。ナギはそれを聞いてめんどくさそうに椅子をクルっと回して、まだご飯が残ってるどんぶりを持って神楽の方を見る。そんな彼に向かって神楽はビシッ!と中指を立てた「今ここで粛清されたくなかったら銀ちゃんの家で住む事を諦めろやッ!」「何このチャイナ娘? いきなり初対面の人脅して来たんだけど?」「僕と同じ銀さんの所で働いていた万事屋メンバーの神楽ちゃんです」「神楽? その名前どっかで聞いたような・・・・・・・」「死ねコラァァァァァ!!! 銀ちゃんの居場所は誰にも渡さねぇぇぇぇぇ!!」「ちょっとォォォォッ! 神楽ちゃんッ!!」ナギは彼女の名前を何処で聞いたか思い出そうとしていると、神楽が突然拳を振り上げて襲いかかってくる、降りかかってくる神楽の拳にナギは舌打ちした瞬間、彼女の拳が獲物に近距離に迫りそして・・・・・・・「オラァァァァァァ!!!」「ナギさぁぁぁぁぁぁん!!!」神楽の咆哮により新八の声はすぐにかき消され店のカウンターが壊れる音が聞こえてくる。周りで破片が飛び散る中、新八は神楽の鉄拳を受けたはずのナギの安否を心配する。だが彼の姿は見当たらない「あぶねぇ~最近のガキは血の気が多いのかよ、いや昔もそんなモンか・・・・・・」「!!」「な、何で私の後ろにッ!?」「相手したいのは山々だけどこっちは色々会って疲れててさ、家で休ませてくんない?」新八はナギが不思議な力を使った時のように表情をこわばらせる。さっきまでいたカウンターの席に彼の姿が無いと思ったその瞬間には、既に神楽の後ろに立ってあぐらを掻いているのだ。攻撃した本人の神楽も驚愕しているのを表情から見てわかる。そのすばしっこさはかつての銀時の様に早くて見えなかった「じゃあババァ俺は上に戻るぜ、俺の前に住んでた野郎は何かいらん事やってねえだろうな?」「一回全壊にした事あったけどすぐに建て直したからね、別に何も変わって無いと思うよ」「一回全壊にしたって何があったんだよ・・・・・・? まあいいか元通りになってるなら」「コノヤロォォォォォ!!」「よっと」「ほら家の鍵だ、ていうかチャイナ娘店の中壊れるから暴れんなァァァァ!!」ナギがお登勢に家の確認を取りながら、未だにとび蹴りをかまそうと飛んでくる神楽の攻撃を軽く避けながら(彼女が攻撃するたびにナギにはダメージは無いが店が徐々に崩壊していく)お登勢が投げてきた家の鍵を受け取った後店の入り口を開ける「久しぶりの我が家に戻るかねぇ~」「あ、待って下さいよッ!」「逃げんな腐れトリ頭ァァァァ!!」「テメェはウチの店の壊した分弁償しろチャイナ娘ェェェェ!!」ナギの後に続いて行く新八と神楽にお登勢が神楽の方を向いて怒声を叫ぶが、頭に血が上ってる彼女は無視してそのままナギを追いに行った。「ブレーキ役の銀時がいなくなったらすぐこれだよあの子は」「お登勢様、あの赤髪の一見不審者のような御方は誰なのですか?」「何ダカ頭の悪ソウナトリ頭デスネ、坂田サンノ『バーター』カナンカデスカ?」「まあ古い知り合いだよ・・・・・・それはともかくあんた達、店を開ける前にチャイナ娘がぶっ壊した所を急いで修繕するよ」店の中でお登勢達が神楽が暴れた惨状を埋めようと躍起になっている頃、ナギは慣れたように階段を二段飛ばししながらあっという間に銀時の家“だった”場所の前についていた「お~何も変わってねえや懐かし~」「ナギさん本当にここに住むんですか・・・・・・?」「当たり前だろ、ここじゃなかったら何処に住めばいいんだよ?」「テメェはマダオと一緒に公園でホームレスやってろやァァァァ!!」「いやその選択は無理、つかマダオって誰だよ」そう言ってナギはまだとび蹴りをしてくる神楽の攻撃を頭をかがめて避けて、家の障子をガララと開ける。「お邪魔しま~す」「ここを失ったら僕等万事屋再開出来ないんですけど・・・・・・」「心配すんな俺の所で働かしてやるから、上司が転勤して新しい上司になりましたという心境で頑張ればいいじゃねえか」「いや・・・・・・そういう問題じゃないと思います」「そういう問題なの、どうだチャイナ娘お前も・・・・・・・」「天誅ッ!!」「おふッ!」ナギが新八と話してると、つい油断していたのか神楽のドロップキックがついにナギの後頭部を捕えた。そのまま彼は家の中に吹っ飛ばされる。「くおらぁぁぁぁ!! 銀ちゃんの家に土足で入ってんじゃねぇぇぇぇ!!!」「いやお前が入れたんだろうがッ!」後ろから神楽が怒鳴ってるのが聞こえるがナギはとりあえず彼女に言葉を返した後、立ち上がって自分の靴を玄関にほおり投げて家の中を進んで行く、それに新八と神楽も慌てて靴を脱いで中に入って行った「中もあんまり変わってねえな、お前等の所の上司は俺とカミさんが残してた物全部使ってのうのうと暮らしてたらしいぜ」「そうなんですか?」居間にあるテレビやらソファやらを眺めながらナギが新八達に説明していると、ふと飾ってある額縁を指さす「だってあそこに『糖分』って書いてある額縁、あれ俺が書いたんだよ」「えッ!? あれ銀さんが書いたんじゃないですかッ!?」「違えよ俺が書いたの、俺があまりにも“ここの国”の字を覚えないからカミさんに「寺子屋行って子供達と一緒に勉強するか?」って脅されて必死に覚えて書いたのがあの『糖分』ってわけだよ」「完璧に奥さんの尻にしかれてるじゃないですか・・・・・・ていうかナギさんってやっぱ外国生まれだったんですか」髪を掻きむしながら少し考えるも「そんなモンだ」と答えてナギはそのまま家の中の状況を見渡す。「ちょっと埃っぽいな、まあ掃除すればなんとかなるよね新八君」「何でそこで僕に聞くんですか? やれってか? 掃除やれってか?」「見た感じ雑用向いてそうだし、そこん所よろしく頼むわ」「まだアンタの下で働くなんて決めてないんですけど・・・・・・」勝手にナギが新八を雑用担当に指名していると、それを聞いていた神楽が身を乗り出す「新八ッ! この偽銀ちゃんの所で働くってどういう意味アルかッ!? 裏切りかコラァッ!?」「そんな早く決めつけないでよ、神楽ちゃんにはまだ言ってなかったけど、この人も昔は僕達みたいに万事屋やってたんだよ、それで同じ万事屋のよしみとして僕等を雇ってもいいって言ってるんだよ」「そうそう、どうせお前等今は何もやってねえんだろ、だから俺のカミさん探すの手伝え」「カミさん探すのは自分でやって下さい」どさくさに頷きながら付け足すワードに新八がツッコんでいると、二人の話を聞いても神楽が素直に承諾するわけがない「ふざけんなぁッ! 私達を買収しようとかいい度胸じゃねえかッ! 私達のリーダーは銀ちゃんだけネッ!! 銀ちゃんと私と定春、三人そろって万事屋アルッ!」「神楽ちゃん僕が入ってないんだけどッ!?」新八が自分の存在意義を彼女に叫んでいると、言われた本人のナギはというと神楽の話を聞かずに勝手に銀時の机の中を探りながら机の中から一冊の本を取り出す「あ、エロ本あった」「人の話聞いてないでエロ本なんか読んでんじゃねえぞコラァッ!!」「聞いてる聞いてる、お前は何処へだって羽ばたけるさ、うん」「完璧に聞いてなかったですよね?」適当に流すナギに新八がツッコむが彼はそれを無視しながらエロ本を読みふける「懐かしな~ナース物、俺カミさんに持ってたエロ本全部燃やされたから全く読めなかったんだよね」「当たり前でしょ、結婚してる相手がエロ本持ってたらそりゃ誰でもキレますって」「俺のエロ本を焼きながら「今度こんな物を隠してたらお前もこれと一緒に燃やしてやろう」って睨まれながら言われた」「カミさん恐ッ!!」「あの時はまさか本当に燃やされるとは思わなかったな、死ぬかと思ったぜ」「結局またやったのかよアンタッ! どんだけエロ本に執着してんですかッ!?」「男って生き物は結婚したってそういうモンに興味出ちゃんだよ、まあそんな事カミさんに言ったら東京湾に沈められそうになった・・・・・・」「ヤクザ見たいな仕打ちですね・・・・・」その時の事を思い出していたのかナギが若干青ざめながら話す女房の話を聞いて新八はソファに座ってため息をつく「何かナギさんの奥さん凄く恐いんですけど・・・・・・」「見た目は美人だしスタイルも良かったんだけど、性格がかなりキツくてよ・・・・・・俺何回死にかけたんだっけ? ああダメだ指の数が足りねえ・・・・・・」何処か虚ろな目で自分の指を折って数えているナギを見て、こんなちゃらんぽらんでも恐がるモノあるのかと考えながら新八はポツリと呟いた「一体どんな人なのか見たくなりました僕・・・・・・」「目を合わせると危険だぞ、ガーってくるぞガーって」「熊かよ」短めにナギにツッコんでいると新八はふと気付いた事があった。さっきから神楽の気配が無い「あれ?神楽ちゃん何処行ったのかな」「大好きな銀ちゃん探しに行ったんじゃねえの~?」めんどくさそうに銀時が使っていた椅子にもたれながらナギが返していると、ガララッと障子が開いた。先ほどまでいなかった神楽がジト目で入ってくる。「神楽ちゃん何処行ってたの?」「ちょっと定春連れてきただけアル」「ワン」「え? 何そのデカイの?」ナギに会ってからずっと不機嫌そうな表情を浮かべている神楽の後ろから入ってきたのは、ヒグマほどの大きさはある巨大な白い犬。犬の名は定春 神楽が昔拾ってきた巨大犬で万事屋のマスコット的な存在である。見た目はチャーミングだが凶暴性が高く、人をかむ癖があって神楽以外に懐かない。特に銀時に対してはかなり凶暴な面をよく見せていた「ワン」「ワンじゃねえよ、何だよこの犬、何でここに入れんだよ?」「定春は昔からずっとここに住んでるアル、定春~銀髪天パはいないけど今度から代わりにあそこのトリ頭噛んで大丈夫ヨ~」「犬に変なの吹きこむんじゃねえよッ!! ったくどういう真似だコノヤロー」定春の頭を撫でながら命令する神楽にナギが口を出すと彼女はダンッ!と床に根付くように座る「新八、私はここにまた住むアル」「へ?」「はぁッ!? ここは俺の家なんすけどッ!?」「銀ちゃんの家は私が守るネ」「神楽ちゃんちょっと強引すぎない・・・・・・?」「ここは私の家でもあるネ」テコでも動かないという風に腕を組み床に座ってナギを睨みつける神楽。その姿に新八は大きなため息をついた「こうなった神楽ちゃんは何言っても無駄ですよ、どうするんですか?」「どうするって・・・・・・新八このチャイナ娘どうにかなんないの」「う~ん・・・・・・神楽ちゃんここにいても銀さんが帰ってくる保障があるわけじゃないんだよ? ここで待つのと僕達の所で待つのも変わらないんだからここは一旦家に帰ろうよ」「嫌アル、私はここから動かないアル、定春と一緒に私はここに住むネ」「あ~これ無理です、すみません神楽ちゃんよろしくお願いします」「いやあきらめるの早すぎだろッ!」「ここまで頑固になったら銀さん呼ぶぐらいしか対策はありません」キッパリと断固拒否する神楽に新八がすぐほおり投げたのでナギが机から身を乗り出してツッコむ。だが新八本人は既に帰る準備だ「じゃあ僕姉上に色々と話さなきゃならないので、バイトの事とかナギさんの事も」「いやお前がいなくなったらこっちどうすんだよッ! 俺この娘とやっていける自信無いんだけどッ!?」「神楽ちゃんナギさんって別に悪い人じゃないからさ、まあほとんど銀さんみたいな人だしそんなに嫌いにならないでね」「・・・・・・」「オイィィィィ!! 待てやメガネェェェェェ!!!」ナギの叫びも虚しく新八は家の障子を開けて「明日また来ま~す」と言い残して帰ってしまった「・・・・・・・」「・・・・・・・」「ワン」残された神楽とナギの間に気まずい雰囲気が流れる。ナギは銀時の使ってた椅子に座りながら頬杖を突いてため息をつき、そんな彼を神楽は床に座りながらジト目で睨む。定春はというと勝手に家の中をウロウロしだした(どうすっかな~? 力づくで追い出すのも後味悪いし・・・・・・だからってこのままずっとこの娘っ子と住んでるのもな~・・・・・・・)「おい」「ん? どうしたんですかお嬢さん?」ふいに不機嫌そうに神楽に呼ばれたナギは何事かと一旦考えるのを止める。「新八が言ってたけどお前ってナギって言うアルか?」「そうだよ、お前は確か神楽だっけ?」「気安く私の名を呼ぶんじゃねえヨ、変な名前のクセに」「このガキ・・・・・・一回親の顔が見てみたいぜ・・・・・・ていうかお前が俺の名前否定すると少し問題だろうが・・・・・・」年上の自分に対して生意気な口振りの神楽にナギは悪態をつくと彼女に向かって口を開く「こちとら色々とトラブル起こってんだ、妙な事すんじゃねえぜ」「お前の命令なんか絶対に聞かないアル」「ハァ~・・・・・・・」メンチを切ってすっかりケンカ腰の神楽、ナギは疲れた様子で髪を掻き毟った「・・・・・・まあなんとかなるだろ、賑やかの方が好きだしな」フッと笑いながら楽観的な答えを出し、ナギは頬を掻きながら自分にそう言い聞かせるように頷いたそんな彼に神楽がやっと立ち上がってある事を催促する「おいトリ頭、さっさとメシ作れヨ」「それが人に頼む態度? ていうか俺料理とかそういうの出来ねえから」「使えねえな~銀ちゃんはお前と違って器用だから何でも出来たアル」「本当銀ちゃん銀ちゃんうるせえ奴だな・・・・・・知らねえよそんな奴・・・・・・」さすがに神楽の『銀ちゃん』という男の名前にはいい加減飽き飽きしてきているのだ。新八やお登勢も彼の事ばっかり話す、もうウンザリだ。そんな男よりもっと重要な人がいる「姫さん今頃どうしてるのかね~・・・・・・」窓から見える月を眺めながらナギはポツリと呟くのであった舞台が変わってここはナギの住んでる江戸から別次元の世界、つまり銀時が今いる世界だ。銀時がいる麻帆良から遠く離れた場所にある京都。そこで広々とした宿屋の部屋にある青年が鼻歌を歌いながら楽しそうに月を見ていた「ここに来てから上機嫌ですなぁ団長殿は」「いや~あと少しで楽しいイベントがあると思うとワクワクして来て夜も眠れなくてさ」「子供ですかあんたは・・・・・・」窓辺から体を半分出しながら月を見ているのはネギの師である神威。どうやら京都に辿り着きこの和風造りの宿屋で時期が来るのを待っている様だ。そんな彼にお茶を飲みながら話しかけたのは部下である阿伏兎、坂本による銃撃は既に回復しており、今は完全な健康体だ。そんな彼の隣には一人の少女の姿があった。「阿伏兎はんは楽しく無いんどすか~?」「“あんた等”見たいにはしゃげねえよ、こっちはいい年なんだよ」「もうオッサンだからね阿伏兎は」「オッサンでも俺はまだ現役ですから、団長やあんたみたいな若いモンにはまだまだ遅れは取りませんからね」「じゃあ一回ちょっと俺と戦って見る?」「神威はんだけずるいどす~、ウチと一回どうどすか?」「勘弁してくんない?」こちらを向きながら吹っかけてくる神威と京都弁を使う少女に阿伏兎は疲れた表情で断る。神威とこの少女がかなりの戦闘狂なのを阿伏兎は知っているのだ。「月詠はともかく団長だと下手すりゃ死にますから・・・・・・ん?」「あ、帰って来た」阿伏兎の話の途中でスーッと音と共に誰かが襖を開けてきたの。入ってきたのはフードで頭をスッポリ隠している一人の女性、無言でそのまま阿伏兎の向かいに座り、そのままジッと動かないそんな彼女に神威は楽しげに窓辺から話しかける「久しぶりだね、元気にしてた?」「・・・・・・」「アハハハ、相変わらず嫌われてるようだね俺は」「神威はん嫌われとるんですか~?」「そうそう酷いんだよこの人、“同僚”なのに昔から俺の事嫌ってるんだよ、俺は仲良くしようとしてるのに」神威は立ち上がって女性の隣に座り少女に向かってわざとらしく肩をすくめると、女性はフードの下から彼を睨みつける「・・・・・・貴様等の同僚になった覚えはない・・・・・・この忌々しい首輪が無ければとっくの昔に貴様等はたたっ斬るつもりじゃ」「お~怖い怖いさすが英雄さんの女だ、未だに俺達の喉に噛みつこうとする牙が残ってるらしい」「英雄さんの女? どういう意味どすか阿伏兎はん?」「ん~? お前さんにはまだ話してなかったか」神威が女性に対して言った事に少女が首を傾げていると阿伏兎が顎を撫でながら話し始めた。「俺達『春雨』にはその辺の並大抵の団員には言えないある重要な『秘密』がある」阿伏兎は話し始めると同時に、女性はスッと立ち上がって部屋の窓辺の方に歩いて行った。「数年前、春雨は一人の女を捕まえた。その女の正体はかつて自分達に煮え湯を飲ませた男の妻、本来なら捕まえた時点で即刻処刑する筈なのだが、春雨の上層部の考えは違った」「春雨はその女の力を有効に活用したかったんだ、魔力もあるし、頭もいい、それにもしかしたら夫の方を呼び寄せる気がしないと思ってね、春雨はその夫の方を死ぬほど憎んでいたから」「そこで上層部は女を拘束するだけはなく、自分達に従わせるようにほどこして団員の幹部の枠に潜り込ませた、女はそのまま操り人形の如く春雨の命令に従い春雨に“与えられた力を借り”そのまま幹部にまで上り詰めた」「ほ~凄いどすなその人~それでその女の人が・・・・・・・」阿伏兎と神威の話を聞いて少女は感心したかのように頷くと、窓辺に立っている女性を見る「あの人どすか?」「ああ見えて結構強いんだよ」「英雄の妻でありながら春雨の幹部にまで上り詰めた実力を持ち、時が経っても未だその美しさは変わらない女」女性はそっとフードを脱いで空に浮かぶ自分のロングヘアーと同じ色の金色の月を見た。満月の光が一層彼女の美貌を引きたてる。「宇宙海賊春雨の幹部、アリカ・スプリングフィールド、かつて『サウザンド・マスター』と呼ばれた一人の英雄ナギ・スプリングフィールドが愛した女性だ」月に照らされながら寂しげな目で空を見上げるナギの妻アリカは今何を思うのだろうか教えて銀八先生の銀八「とりあえず一通目風凪五月さんの質問」学園長は一体、何類ですか? 嘘偽り無く、お願いします★学園長「人類ッ!」銀八「嘘付くなつってんだろうがお前エイリアンだろ」学園長「ねえたまには優しくしてよマジで」銀八「気持ち悪い事言ってんじゃねえよッ!」銀八「二通目テレフォンさんの質問」修学旅行編が最終話みたいですけど、文化祭編が最終章中編、魔法世界編が最終章後編なんですよね?そうなんですよね?銀八「いやそんなにダラダラと続きたくないんで、キリの良い所で終わりたいんですよ本当」千雨「このままだと最後まで高畑先生出そうにないな・・・・・・」銀八「誰それ?」千雨「何でもない・・・・・・」銀八「三通目q-tureさんの質問」学園長に質問です。どうも最近arcadiaに業者の書き込みが多いですね。おかげで舞さんは対応で忙しく、利用者はイラつき、CSS版が消えた事で一部読者は涙目です。学園長はこの責任をどのようにとるのでしょうか?切腹するんでしょうか? 切腹しますよね? 切腹しろよ!?学園長「ワシ関係無くね?」銀八「じゃあ明日ぐらいに腹斬るか」学園長「誰がやるかッ!」刹那「介錯なら私がやりましょうか?」学園長「だからやらねえってッ! ワシに対する質問ってこんなのばっかだよね・・・・・・」銀八「もはや質問でも何でもねえからな」銀八「四通目エンジンさんの質問」銀八先生(もしくはカイバーマンさん)に質問です。この作品は本家銀魂(アニメ含む)とほとんど同じ足跡(不人気スタート→テコ入れで少しずつ人気上昇→ギャグが際どいパロディに→不動の地位を確立→それでもパロまみれで苦情がwwww終わる終わる詐欺もどきとか。)ですけど、その辺のシンクロ率についてどうおもいますか?銀八「時々それ言われるんですが正直複雑なんだけど、何もそこまで同じにならなくても・・・・・・って思いました」千雨「未だにアンバランスだしな」銀八「他のSS小説みたいにバランス良くなりてえよな」千雨「それはこの作品に一番無理なモノだろ」銀八「・・・・・・だよね」銀八「五通目ペケペケさんの質問」学園長に質問なんですが、・・・・幻〇郷にて何やら破廉恥な行為を行ったらしいですね?具体的に「誰」に「何」をしたのかな?かな? 具体的に示したのち然るべき場所で然るべき「モノ」を捩じり切ってくださいませんか?主に下の部分を徹底的に。学園長「モノを取るのは関係ねえだろうが・・・・・・・え~とあるメイドに出会ってちょっと尻を触ろうとしただんだけど」銀八「その時点でお前死亡フラグじゃねえか」学園長「触ろうとした瞬間、いきなり目の前に大量のナイフが現れて飛んで来おった・・・・・・死ぬかと思った」千雨「それってもしかして十六夜・・・・・・・」銀八「アキ?」千雨「いや咲夜の方だから」銀八「六通目サハリンさんの質問」早く死んでほしい糞ジジィに質問いつも銀ちゃんにボコボコにされているのにどうしてクビにしないんですか?学園長「本当はクビ所か抹殺したいんだけど、8話で龍宮君が言ってるように」「銀八先生にはエヴァンジェリンがバックにいる。だから容易に手を出せないんだとか、彼をクビにしてしまうと自分の首を飛ばされるとか言ってたな・・・・・・」学園長「というようにあの吸血鬼のおかげでワシは忌々しいあの男をクビに出来んのじゃ・・・・・・」銀八「あ? チビがいなくてもお前に俺をクビにする権限なんか無えよ、だってジジィだもん」学園長「うっせえよジジィなめんなッ! 最近みんなからナメられてるけど本当はめちゃくちゃ強・・・・・・・イダダダダッ! 髭引っ張らんといてッ!!」銀八「七通目蛙さんの質問」まき絵に質問。何故、万事屋入りを拒むのですか?入ればエヴァは追い出せるし、ドM度アップの為に沖田がスタンバイしてますよ。土方と刹那を罵れますよ。まき絵「別にエヴァちゃんの事嫌ってるわけでもないし、ドMでもないし、沖田さんなんて人も知らないし、土方さん達には恨みがあるわけもないし・・・・・・」銀八「あのマヨネーズバカいつか殺してやるとか言ってなかったけ?」土方「ほう、誰だか知らねえが俺にケンカを売るとはいい度胸だ、買ってやるよ・・・・・・」まき絵「言ってないですッ! 全部その人の狂言・・・・・・ギャァァァァ!!」千雨「とことんそういう役柄なんだなお前は」銀八「八通目Citrineさんの質問」ナギに質問質問オカマバーで働いて仕事にハマった所為で嫁さんに逃げられたんじゃないんですか?ナギ「いやまさかそれで・・・・・? いやだってアレってカミさんが俺を無理矢理・・・・・・」新八「オカマバーでも働いた経験あるんですかアンタ・・・・・・」銀八「・・・・・・そういえば俺も・・・・・・」アル「ほう、話を詳しく聞かせてもらえませんかね?」銀八「目を輝かせながらこっちくんなッ!」桂「その時の話は俺がしてやろうッ!」アル「是非」銀八「とっとと帰れダブルバカッ!!」銀八「九通目ノリさんの質問」原作では地味にフラグもヘッタクレも無い癖に、こっちでは地味に幼女×2やけしからん女忍者と相部屋で地味に『どこのギャルゲ主人公?ちょっと後で便所に来いよ。』な山z…ゲフンゲフン!!ジミーに聞きたい事があります。31巻でめでたく背表紙に載りましたがこれを機に(まぁ可能性は欠片ほどでしょうが)自身がメインの話を今後一話でも良いから出して欲しいと思ったことはありますか?どのくらいの数値かをJ(ジミライド)で表してください。K(コンブ)でも可山崎「長いからもうちょっと短くまとめようね~、まあ出来ればもうちょっと出番が欲しいかな・・・・・・副長は出番多いのに俺脇役ばっかだし・・・・・・ていうか数値の規模を教えてくんない?」まき絵「出番があってもただ酷い目に合わされるだけの人よりはマシじゃん・・・・・・」山崎「いや俺も対して変わらないから・・・・・・」土方「おい山崎、マガジン買ってこい、あとマヨネーズもな」銀八「おいまき絵、ジャンプ買ってこい、あとたけのこの里もな」山崎・まき絵「「・・・・・・イエッサー・・・・・・」」銀八「十通目風の都さんの質問」夏美ちゃんへ夏美ちゃんは万事屋に相談とか行かないのですか?例えば「ちづ姉をどうにかして」「もっと出番が欲しいなー」「新八って私より地味じゃね?」とか、あると思うのですが夏美「ちづ姉は先生でも対処不可だってわかってるから・・・・・・」銀八「無理無理、あれは俺絶対無理、なんつうか何考えてるかわかんないのが怖い」夏美「出番は別にそれほど興味は無いし・・・・・・ていうか新八って誰?」銀八「今は亡き地味ツッコミメガネだよ」夏美「へ~」新八「生きてるゥゥゥゥ!!! 江戸で健在ですよ銀さぁぁぁぁんッ!!!」銀八「十一通目Kanataさんの質問」ゆえっちへ質問です近藤さんのお妙さんへの警護(ストーカー)についてどう思ってますか?夕映「別に何も無いですよ」銀八「お前はあのゴリラの異常なストーカー振りを知らないんだな~」近藤「ストーカーじゃないッ! 恋のスナイパーだッ! 愛しのお妙さんのハートをゲットだぜッ!」千雨「お前こんなのでいいのか・・・・・?」夕映「面白いですから」銀八「十二通目ゼミルさんの質問」銀さんを除く攘夷の皆さんに質問。戦友がツルペタロリババア吸血鬼・ちょっとツンデレ突っ込み担当美乳メガネっ子・巨乳お嬢様・同じく巨乳系女性記者と今や4人もの美少女を侍らせて爛れた日常を送ってる事に対して何か一言お願いします。坂本「ええの~わしなんか美人じゃけど凶暴なおネエちゃんしかおらんぜよ」銀八「そういうのじゃねえよバカチン」桂「貴様等ッ! 侍のクセになんという堕落した生活を送っているのだッ! 俺なんか周り男だけだぞッ! くそッ! 人妻キャラを仲間にしたい・・・・・・!」銀八「お前の欲望は生々しいんだよヅラ」坂本「そういえば高杉は何処じゃ~?」銀八「お前はもうちょっと空気を読め・・・・・・・」銀八「十三通目正宗の胃袋さんの質問」変態ぬらりひょんに質問前回の質問でもしも仙人だと思ったって言ってましたよね?仙人は妖怪の大好物であり、仙人の肉を食らうと妖怪の各が上がり、普通の獣でさえも肉を食らうと妖獣になるんですよ。しかも数多くの妖怪に狙われたり、地獄から刺客が来たりそれまでに少しでも修行を怠ったら追い返すことが出来なくて地獄へ堕ちるんですよ。そいつらに相手して勝てるんですか?学園長「マジでッ!? ワシって超偉いから、仙人かな?と思ってたがまさか本当に仙人だったとは・・・・・・」銀八「何でそうなるんだよ」学園長「だってワシメチャクチャ妖怪共に襲われたもんねッ! 何回も死にかけたんじゃぞッ!!」銀八「その生命力は本当に尊敬するわ・・・・・・」銀八「十四通目ウィルさんの質問」今回も千雨に。いったいいつになったら眼鏡を外して素顔で素直に銀さんと向き合うんですか?確か貴女の眼鏡は伊達のはず。伊達ということは別に眼鏡無しの生活も全く問題ないということ。つまり眼鏡が本体って不遇な扱いも本来なら受けないのです!眼鏡が本体として扱われるのは視力が悪くて眼鏡などの恩恵無くしては生きられないキャラにこそ相応しいのですから。例えばそう、Gことパルとかw千雨「別にメガネ付けてても素直に銀八とは接してるつもりなんだけど・・・・・・」銀八「アレだよな、キャラ付けで必要だもんなメガネは」千雨「そういう意味で付けてんじゃねえよ・・・・・・」エヴァ「ちなみに銀時にメガネ属性は無いぞ、残念だったな」千雨「いや気にしてないから・・・・・・」ハルナ「ていうかドサクサに私の扱いが不遇にされてない・・・・・・?」銀八「うわ出た、誰か~丸めた新聞紙持ってねえか~?」千鶴「先生、私偶然持ってました」銀八「よし」ハルナ「アダッ! アダッ! イダッ!」銀八「中々潰れねえな」ハルナ「だからゴキじゃないってッ! イダイッ!」銀八「十五通目とびかげさんの質問」マヨラ侍に質問もし沖田が副長してたらあなたはどう思います?一度でいいので「レッツパーリィー!!」って言ってくださいお願いします土方「あいつが副長? あいつはそういうタイプじゃないからなれたとしても無理だ、だがもしなっちまったら俺の立場が危ういな・・・・・・」銀八「ところでレッツパーリィーって何? それ流行ってんの? ちょっと叫んでみ?」土方「そんな恥ずかしいの言えるか」夕映「向こうの世界ではガンガン言ってるくせに」次回・第三十二訓・江戸編「誰かと比べられるのはかなり腹立つわ」に続く。