修学旅行それは日頃から学校に来るのもめんどくさがりやな生徒もこの日はハイテンションになって参加する中学での伝統行事。大体、中学三年生は京都に行くと何処の学校でも決まっており、目的地に行く前に新幹線の中でテンション上がり、目的地に着いたら更にテンション上がり、宿屋に泊ったらもっとテンション上がり、夜中になったら生徒達のテンションは最高にハイになる、正しく中学生活最高のイベント。無論、この麻帆良学園も例外ではなく修学旅行は存在し、ネギと銀八率いる三年A組も京都に行く筈だったのだが・・・・・・「修学旅行の京都行きが中止ッ!?」「う~んまだ中止とは決まってないんじゃが、関西呪術協会が超嫌がってての・・・・・・」「関西呪術協会?」「うむ」修学旅行までもう少しと来ている頃、夕方に突然学園長に呼び出された三年A組の担任の教師ネギは、いきなり京都行きは無しと言われ激しく戸惑いを見せる。日本の歴史が数多くそのまま残されている京都、英国生まれのネギにとっては一度は行ってみたい場所だったののだが・・・・・・だがそうと決まったわけではないと学園長が首を横に振る。「実はワシってスゲー偉いから関東魔法協会の理事もやってるんじゃが」「スゲー偉いのに何で銀さん達にナメられてるんですか?」「うるせえよ、それはともかく関東魔法協会と関西呪術協会って昔から犬猿の中でさぁ、今年は一人魔法先生がいるって向こうに言ったら、向こうが嫌がってのぉ・・・・・・」「じ、じゃあ僕のせいなんですか・・・・・・?」「うん、そう言う事なんだけどさ」「何のフォローも無しに即決ですか」「まあ聞きなさい、ワシとしてはもう東も西も関係なく仲良くやっていきたいんじゃ、その為に君を『特使』として京都に行ってもらいたい、そうすれば京都行きをワシが許そう」「特使?」学園長はそう言うと机の上に置いてある、一枚の封書を差し出す。それを受け取ってネギはまじまじと見る。「何ですかコレ?」「その親書を向こうの長に渡してくれるだけでいいじゃ」「ああ、それだけで京都に行けるんですか?」「いやそれだけって・・・・・・この親書を持って行く道中それを快く思わない連中からの妨害があるかも知れないんじゃぞ? 銀八もいるし、奴等は魔法使いじゃから一般人の生徒には危害を加えない筈じゃが・・・・・」「それはちょっと危ないですね・・・・・」「そうじゃろ? まあ念のため腕の立つ護衛を付けておこうと思い彼に同行頼んでみた」「護衛?」学園長の言う護衛にネギが首を傾げていると、突然ドアを開けて誰かが部屋に入って来る。タバコをくわえながらふてぶてしい態度で腰に帯刀している男。ここの警備員を務めている土方だ。「邪魔するぜ」「土方さん? え、てことはッ!」「このじいさんにお前の道中見守るように言われてな、どうせここにいても退屈だし買って出たわけだ、よろしく頼む」「じゃあ土方さんも京都に来るんですか?」「京都名物の八つ橋にマヨネーズ塗ったらどうなるのか試して見てえと思ってたからな」「京都まで行って何やろうとしてんですか?」真剣な顔で言う土方にネギはツッコんでいると学園長が話を続ける。「昨日修学旅行の説明をしている時に土方君の事は銀八から色々と聞いてるんじゃ、実は向こうの世界の出身者でしかも中々腕のいい侍じゃと、ていうかその時初めてここで働いてるって聞かされたんだよね・・・・・・本当新田先生どうにかせねばの・・・・・・」「僕は前々から銀さんに教えてもらっていましたよ」「そうなの? じゃあ知らなかったのワシだけだったんだ、何この疎外感? ワシここで一番偉い存在なんだけど?」土方の事を“一番最後”に教えられた事に気付いて学園長は少し落ち込み始めていると、吸っていたタバコを携帯灰皿に入れて土方はネギと学園長に背中を見せる「じゃあもう何も無えなら俺は帰るぜ、最近俺の周りのガキ共がうるせえんだよ」「わかりました、修学旅行の時はお願いします」「あんま俺に頼りきるんじゃねえぞ、こっちにも限度があるからな」「大丈夫です、自分で出来る事は自分でやります」「ガキのくせにわかってるじゃねえか、まあお互い気を付けようぜ」土方はネギに振り返って喋った後、ドアを開けて出て行く。残されたのはネギと学園長だけになった。しばらくして学園長はハァ~とため息をついた後ネギに向き直る「まあとりあえず頑張っておくれ、修学旅行は予定通り行うから、これも立派な魔法使いになる為じゃ、無事に責務を果たしてくるんじゃぞ」「わかりました、土方さんや銀さんに余計な手間かけさせないよう、もし親書を奪われそうになったら僕が全員皆殺しにしてやりますよ」「・・・・・・ごめん今なんつった?」「じゃあ僕も帰ります、親書は任して下さいね」「おいちょっと待てェェェェェ!!!」 まだ小学生ぐらいの年齢のネギが笑顔なのにその口から物騒なモンが聞こえたので、耳を疑う学園長を置いてネギは元気そうに手を振り、部屋のドアを開け出て行く。残された学園長はボソリと呟いていた「最近の子供おっかねえなぁ~・・・・・・」話は進み女子寮のとある一室「なるへそ~関東と関西を和睦させる為の親書ッスか、大変なモン任されましたねぇ兄貴」「確かに大変だろうけど、銀さんや土方さんもいるし大丈夫だと思うだんけどね・・・・・・」「そうですけどねぇ・・・・・・・兄貴自身も京都では警戒を怠らない方がいいッスよ、自ら敵の本部に突っ込んで行くようなもんスからね」「わかってるよ、僕だって色々鍛えてるんだからなんとか足を引っ張らないようにしなきゃ・・・・・・」ちゃぶ台に肘かけて一枚の封書を持っているネギと、ちゃぶ台の上で彼が持っている封書を眺めている使い魔であるカモ。二人は今後の事について話しているのだが、他の同居人はドタドタと騒いで、とても集中出来やしない「木乃香~!! 私修学旅行用の着替え何処置いたっけ~ッ!?」「もうバッグに入れてたで~アスナまだ一週間ぐらいあるのにはしゃぎ過ぎや~」「そういえばそうだったわね、じゃあ私の修学旅行用の下着は~? 見当たらないんだけど?」部屋を徘徊しながら歩き回っているのはネギの同居人のアスナ、腰かけて本を読んでいる親友の木乃香と喋りながら彼女は色々な場所を探っているとカモがポンと自分の胸を叩く「大丈夫ッスッ! 俺っちが既に懐に収めてるんでッ! 姐さんの下着は誰にも盗られないよう俺っちが護ってやしたッ!」「わざわざありがとう、じゃあ死んで」「おごッ!!」自らが下着を盗んだ犯人と自首した生物の横っ腹にアスナは回し蹴り、カモはそのまま壁に激突してその場に落ちてピクピク痙攣している。そんな彼を見ながらアスナはしかめっ面でやれやれと首を横に振る「アンタも行くって事はあのナマモノもついて来るってわけよね・・・・・・せっかくの修学旅行が台無しよ・・・・・・」「すみません、以後気を付けさせます・・・・・・」白目をむいて動かないカモの代わりにネギはアスナに謝った。未だあの小動物には下着専門の盗み癖が抜けて無いらしい。「カモ君はともかく、なんかアスナさん修学旅行前なのに随分はりきってますね?」「バカね、修学旅行の前は異常なほどテンションが上がるのが生徒の習性なのよッ!」「アスナの場合は上がり過ぎと早過ぎやで、ずっと前から修学旅行の準備をして・・・・・・普通準備っちゅうのは二日前とか前日にやるもんやろ?」「学校は何のために存在するかわかる木乃香? それはこの修学旅行というイベントの為に存在するのよッ!」「違います、勉強する所です」声高らかに宣言するアスナに後ろから冷静にツッコむネギ、彼女はそれを無視してネギと木乃香に向かって叫ぶ「私はこのイベントに命賭けてんだからねッ! ネギッ! あんたも変な事に巻き込まれるんじゃないわよッ! それに木乃香もッ!」「いやウチは別に大丈夫やて、向こうに行くの慣れとるし」「う~ん僕は学園長に重大な任務を任されまして・・・・・・」「じいちゃんから何かやれって言われたん?」「ええ、この親書を関西呪術協会の長に渡しに行けって頼まれたんですよ」「そんなんどうせジイちゃんのモンやから破いて捨てれば何の問題も無いで、ウチが代わりにやろか?」「何笑顔で恐ろしい事言ってるんですかッ!」「いやそのツッコミアンタがやっても全然説得力無いんだけど?」最近は随分と性格が変わっているネギに目を細めてアスナはツッコんだ。彼女から見れば木乃香もネギも腹黒さは大差ない。まあその事は置いといてとアスナは髪を掻き毟りながら、ネギが持っている親書をひったくる。「めんどくさそうなモン引き受けたわねアンタも、せっかくの修学旅行なのにおつかいなんて」「しょうがないですよ、これもマギステル・マギになる為の試練ですから」「マギステル・マギ? 何それ食えんの?」「食い物じゃないですよ・・・・・・一人前の魔法使いの事をマギステル・マギっていうんです、この前教えましたよね・・・・・・・?」「私って興味無いのは数秒で忘れる性質だから」「便利な頭ですね本当・・・・・・」随分と単純な構造なんだなとネギが呆れていると、アスナはネギに持っていた親書を返した後再び口を開いた。「マギステルなんとかで思い出したけどあんた確か『パートナー探し』とかあったわよね? あんたの姉ちゃんが言ってた奴、そっちはどうなのよ?」「仮契約の方ですか、それがまだ全然決まってないんですよ・・・・・・・もう最近はピンでいいかなと思ってきました」「諦めるんじゃないわよ、ショタコンの人なんていくらでもいるわよきっと、ほらいいんちょも・・・・・・あ、今は違うか・・・・・・・鈍感な天パがいるし」頭の中に出てきた幼馴染と同時に銀髪天然パーマの男が出てきたので、アスナは頭を横にブンブン振りながら座っているネギの隣に座る「・・・・・・まあ頑張んなさいよ、ついでに私はパス、ガキンチョのパートナーとかそんなの絶対無理」「大丈夫です、アスナさんにはお願いする気は毛ほども無かったので」「は?」「だってアスナさんワガママだし暴力的だし食い意地悪いし・・・・・・おごッ!」「何処が暴力的だって・・・・・・?」「今です今・・・・・・現在進行形で暴力的です・・・・・・」話している時に腹に思いっきり右ストレートを入れるアスナにネギが顔に苦痛を滲ませながら反論していると、さっきまで気絶していたカモがよろよろと起き上がってアスナに駆け寄る。「姐さん本当頼みますよ・・・・・・兄貴の奴かなりの奥手で全然パートナー探しに積極的じゃないんですよ、ここは姐さんが兄貴とブチューとやって仮契約頼みますわ」「ブチュー?」「魔法使いとパートナーが仮契約する為の儀式、いわゆる『キス』ッスよ」「・・・・・・はぁッ!?」「それさえすれば姐さんも立派な兄貴のパートナーに・・・・・あごッ!!」カモが言い終わる前にちゃぶ台に置いてあった新聞紙を丸めて思いっきり彼の頭に叩きつけるアスナ。ペシャンコに潰れて再び重傷を負うカモを睨みながらアスナは叫ぶ「な、何で私がガキンチョとそんな事しなきゃいけないのよッ!」「いや・・・・・・仮契約で一番てっとり早い方法はキスなんスよ・・・・・・口と口でブチューって・・・・・・」「まだ誰にも上げていないこの清潔な唇を、何処ぞのお子ちゃまに上げるわけないでしょうがッ!!」「そこをなんとか頼みますよ・・・・・パートナーがいない魔法使いって何かと不便なんスよ・・・・・・?」「しつこいわよナマモノッ! 今度また変な事言ったら根性焼きの上に木乃香にアンタで鍋作ってくれって頼むわよッ!!」「いやウチはそんなかわいそうな事出来へんから・・・・・・」「ていうか誰が食べるんですかそんなの・・・・・・」カモがしつこく頼んでくるのでアスナは止めの一言を発した後、彼女は困り顔を浮かべているネギをジト目で睨んで指を差す「私は絶対お断りだからねッ!」「わかってますから大丈夫ですよ・・・・・・」はっきりした物言いのアスナに苦笑しながらネギは後ろ髪を掻き毟る。しかしながら二人の運命が急変するのはさほど時間のかかる事ではなかったのだ第二十九訓 修学旅行が始める前ってめちゃくちゃテンション上がるよね?翌日の月曜日、今日一日の授業を終えた三年A組の生徒達は帰りのホームルームではほとんどの生徒が浮足立っていた、理由は担任のネギがある物をクラスに配った物。クラスの全員が今手にしているのは京都へ行く修学旅行の為に作られたしおり、班や寝泊まりする部屋の番号、観光名所、スケジュール、その他多くの説明がビッシリ書いてある、修学旅行へ行く為にはかかせない物だ。それを受け取り元からイベント好きの生徒達はすっかりお祭り気分でワイワイと活気づいていた。「ええッ! 刹那さんそれ本当ッ!? 土方さんも私達の修学旅行に同行するのッ!?」「はい、色々と事情がありまして・・・・・・ハルナさん何でそんなに嬉しそうなんですか?」「決まってんでしょこの娘の絶好のチャンスだからよッ! のどかッ! この修学旅行で一肌脱ぐのよッ! いやむしろ全部脱いだ方が一気に進めるかも・・・・・・」「な、何考えてるのハルナッ!?」「脱ぐのはともかく、ここであの人とデートぐらい済ませた方が、修学旅行で良い思い出が作れるかもしれませんよのどか」「夕映まで・・・・・・・」すっかり舞い上がっているハルナがのどかの背中をバシバシと叩く、それに夕映も持っているしおりを読みながら乗っかって彼女の応援をするのだが、のどか自身は顔を赤らめて黙りこくる。そんな三人の会話をさっきまで聞いていた刹那は少し喋りにくそうに口を開く。「あ、あの・・・・・・悪いんですけど土方さんはずっと私と行動するので二人だけでその・・・・・・・デ、デートとか無理だと思いますよ・・・・・・・?」「はいぃぃぃ!? 何で土方さんが刹那さんとずっと一緒に行動するのッ!?」「それはまあ・・・・・・ある都合で私は土方さんの下で色々と・・・・・・・」土方が京都に行く事になったのは関西呪術協会へ渡す為の親書を持つネギの護衛の為であり、その協会の本部までの道案内を神鳴流剣士の刹那が買って出ていたのだ、だがこんな事一般人のハルナ達に教える事は出来ないので刹那は途中で口ごもる、しかし彼女のその反応を不審に思ったハルナは疑惑の目を向ける「色々・・・・・・? ハッ! まさか刹那さんって既に土方さんと・・・・・・・デキてる?」「え、ええッ!?」「あらら、何時の間にヒロイン替えですか、残念ですねのどか」「違いますからッ! 私と土方さんはそういう関係じゃありませんッ! のどかさんも夕映さんもそんなリアクション取らないで下さいッ!」三人の勘違いに慌てて否定している刹那。それを一番後ろの席から眺めているのはダルそうに机に頬杖を付いてエヴァが欠伸をしている「うるさい連中だな全く・・・・・・あんな目つきの悪い狂犬をどう惚れろというのだ?」「お前が好きな相手も似たようなレベルじゃねえか? 銀髪の死んだ魚の目をした奴」エヴァの独り言に反応して口を挟んできたのは彼女の左前から一つ飛んで座っている長谷川千雨、ちなみに彼女もエヴァ同様他の女子と話しもせず貰ったしおりも読まずにさっさと帰る準備をして時間を過ごしているだけだった。そんな彼女にエヴァはフンと鼻を鳴らした後口を開く「“お前が”じゃなくて“私達が”じゃないのか長谷川千雨?」「お前やいいんちょと一緒にすんじゃねえよ、私とアイツはそんなんじゃねえ・・・・・・・」うんざりした表情で千雨が何処か遠くを見つめていると、ガララッと教室のドアが開いた。入って来たのはジャンプを脇に挟んでに土方同様学校の中にも関わらずタバコをくわえているA組の副担任、坂田銀八だ。教室に入ってきて早々不機嫌そうな顔をしているのは明白であった。「うるせえよお前等、廊下中にピーピー響き渡ってんだよ、一人残らず永久に静かにしてやろうか?」「でも先生ッ! 修学旅行まであと一週間だよッ! これはテンション上がるでしょッ!? 先生は上がらないのッ!?」「まき絵のクセに調子乗ってんじゃねえよ、火あぶりにされてえのかコラ」「ごめんなさい・・・・・・」最前列にいるまき絵を軽く脅した後、銀八は教壇に立っているネギに近づく。「おいこのやかましい騒ぎどうにかしてくんねえか? 担任だろお前、仕事しろよ」「すみませんすぐにおさめますから・・・・・・まあしょうがないですよ、もうすぐ修学旅行ですので、僕も生徒の皆さんと同じ気持ちですし、銀さんはどうですか?」笑いかけてくるネギに銀八は相変わらず死んだ目をしながら口からタバコの煙を撒き散らしている。「全然テンション上がんない、むしろ冷めるわ、何でガキ共と旅行なんかしなきゃいけねえんだよ、しずな先生と二人だけで旅行行くなら別だけどよ」「しずな先生とだったらテンション上がるんですか・・・・・・?」「上がるね、夜なんか特にここが・・・・・・」「いやそれ以上言わなくていいですからッ!!」いきなり自分のある部位を指さして下ネタトークを始めようとする銀八にネギが慌てて止めに入る。銀八に注意した後、ネギは生徒の方に向き直り騒いでいる生徒の声に負けないように声を張り上げる「皆さん自分の席について下さいッ! これから修学旅行の段取りを簡単に説明しますッ!!」「ねえ夏美、修学旅行で行く京都に鹿がいっぱい住んでる『奈良公園』ってあるわよね?」「あるよ、それがどうかしたの?」「この前テレビで見たんだけど奈良公園ではその場所限定のお煎餅が売ってるらしいのよ、私一度でいいから食べてみたいわ~」「ちづ姉、それ人間は食べれないからッ!!」ネギが叫んでいるにも関わらず生徒は騒ぎまくって全く話を聞いていない、その反応に少々困った顔を見せた後ネギは再び口を開いた「皆さんにお知らせがありますッ! 席について下さいッ!!」「だから私と土方さんには何も無いってさっきから言ってるでしょッ!!」「だってよくよく考えたら土方さんって刹那さんの所に住んでるんだよね? 男と女が一つ屋根の下に住んでると言う事は・・・・・・」「ズバリ同棲です」「同棲・・・・・・よく考えればそうだよね・・・・・・土方さんと刹那さんか・・・・・・お似合いかもしれませんね・・・・・・・」「あ~もう誤解しないでくださいのどかさん・・・・・・住んでると言っても何も無いんです本当・・・・・・名前だって呼んでくれた事ないし・・・・・・」色々な所でペチャクチャと騒いでいるので誰も聞いてはくれない、(若干二名落ち込んでいるが)そんな生徒達に思わずネギは項垂れるも思考を巡らせるこんな騒ぎ程度もおさめられなくてこの先教師なんてやって行けるわけない・・・・・・・!?心にそう固く決意したネギは机をバンッ!と叩いて思いっきり叫ぶ「皆さんッ!! 大事なお知らせがあるので席に座って下さいッ!!!」「いいんちょッ! あんた修学旅行中に天パと進んでみなさいよッ! こんなチャンス滅多に無いのよッ!?」「チャンスって何ですかッ!? 私の事はほっといて下さいッ! アスナさんのクセに人の恋愛事情に口出して・・・・・・」「ほっとけないわよこんな面白いのッ! だっていいんちょの相手があの天パ・・・・・・ギャハハハハッ!!」 「こ、このおサル風情が・・・・・・!! もう許しませんわッ!!」「アスナもっと素直になったらええのに・・・・・・ちゃんと応援してるって言ってあげればええやん・・・・・・」「おおッ! アスナといいんちょが取っ組み合い始めたッ!」「あぶッ!!」「その揉み合いに巻き込まれてまき絵がいいんちょに殴られたッ!」「トゥースッ!!」「アダダダダダッ!!」「いや何でそこで銀さんがまき絵に四の字固めをやるのッ!?」今ネギの目の前ではアスナといいんちょこと銀八の所の一人、雪広あやかがあの手この手と大乱闘をおっ始め、何故か銀八はまき絵にプロレス技をかけている、実況している和美のおかげでクラスメイト達はやんわやんわと騒いで(一部、まき絵を応援する声が混じっている)、既にホームルームという存在を忘れていた。そんな自分の生徒達と悪ノリが激しい同僚の光景を目にしてしばらくネギは顔に影を出して一人静かになり・・・・・・・「あ~うるせえなあいつ等・・・・・・・銀八なんか今度はまき絵をジャイアントスイングしてんじゃねえか、あれいつか殺すな」「お前はああいうクラスで騒ぐのは参加せんのか?」「私は元々あんな風なテンションが嫌いなんだよ、生徒のみんなでワイワイと楽しむのわよ、私は銀八がいるから・・・・・・のわぁッ!」騒いでる生徒達を後ろから見ながらエヴァと喋っていた千雨は突然驚いて椅子から転げ落ちる。彼女が思わず転げ落ちた理由は突然何か固い物が思いっきり壊れたような衝撃音、その音に生徒全員が一気に静まる。銀八でさえまき絵を持ったまま固まってる、生徒達と銀八の視線は教壇にいるネギ、何故なら彼の後ろには見事に大きくヒビ割れた黒板、恐らくさっきの衝撃音は“コレ”のせいであろう。思いっきり裏拳をした跡がくっきりと残って、パラパラと破片が落ちて行く。そしてそれをやったと思われる張本人は・・・・・・「駄目ですよ~皆さん・・・・・・・先生の言ってる事はちゃんと聞かないと・・・・・・でないと・・・・・・」影で顔が見えてなったネギが顔を上げる、表情は笑っているが、何か多大な恐怖を感じる、右手に残っていた黒板の破片を左手で払いながらゆっくりと彼は口を開いた。「もし今度僕の言ってる事を聞かずに騒いだりしたら、修学旅行の京都行きを変更して黄泉の国へと全員送り飛ばしちゃいますよ」「「「「「・・・・・・すみません・・・・・・」」」」」アスナやあやかも初め、銀八も含めさっきまで騒いでいた生徒達数十名が、笑顔を見せている少年に向かって丁寧にお辞儀して謝った「じゃあ修学旅行への簡単な説明は終わりです、何か質問ありますか?」「ネギ先生、黒板が壊れてるんですが・・・・・・・」「随分と古い物だったので“ちょっと”殴ったら壊れちゃいました」「それ結構新品だったと思いますわネギ先生・・・・・・・」修学旅行の説明を終えたネギに恐る恐る手を上げて質問してきたあやかにネギは笑顔で答えるが本来“ちょっと”殴るだけで壊れる物ではないのだが・・・・・・そんなネギの耳元で隣にいた銀八がこそっと囁く「・・・・・お前ってどんだけ力あるの?」「いえ、日頃から魔法の力で少しだけ身体強化されてるんですよ僕」「これ少しだけか・・・・・・?」「アハハハ、まあいいじゃないですか」笑いながら簡単にごまかすネギに銀八は何処か納得いかない表情をするが素直に引き下がり、ネギの方は再び生徒達に質問は無いかと呼びかけている「修学旅行で分からない事があったら何でも言っていいですよ」「ねえねえ修学旅行に持って行くおやつは何円分ならいいのッ!?」「向こうでおやつ買うってのはアリなのッ!?」「いやそういうの無いので大丈夫ですよ・・・・・・小学生じゃないんですから」「普段から思ってんだけどお前等双子って本当に中三?」同時に挙手した双子姉妹の風香と史伽に銀八が軽く疑問を抱いてると、今度は一番前にいる和美が手を上げてくる「先生ッ! 生徒達の行動時間に先生達も一緒について来れるんですか?」「僕達は基本的に皆さんと一緒に回りますので、ねえ銀さん?」「銀さんはずっと京都でパチンコやってます」「やらないで下さい、一応教師なんだからちゃんと生徒の皆さんと行動して下さいよ・・・・・・」何考えてるんだとネギが銀八にツッコんでいると、和美が身を乗り上げて再び質問してくる「じゃあ修学旅行の自由時間に私達の班で銀さんと一緒に回れるって事ですかッ!?」「自由時間ですか・・・・・・まあその時に予定が無ければ大丈夫ですよね? 銀さんも色々行きたい所あるでしょうし」「いや俺が行きたい所は基本的にガキ連れて行っちゃいけない所だから、子連れと思われるのも嫌だし」「修学旅行に行く教師がどんなアウェーな所に行こうとしてるんですか・・・・・・?生徒達をそんな所に連れて行くのは止めて下さいね・・・・・・?」修学旅行の時間帯に何処に行く気なのかわからないが間違いなく子供に悪影響をもたらす場所であろう、そんな銀八をネギが疎めていると和美がまたひと押ししてくる「じゃあ銀さん自由時間は私達と一緒に行動しようよッ! 千雨ちゃんもいいんちょもいるよッ!」「めんどくせえよ、何で日頃から見飽きてるお前等と京都回んなきゃいけねえんだよ、断る」「却下しますッ!」「俺の意見笑顔で却下ッ!?」あっという間に自分の意見を潰されて「絶対一緒に行動しようねッ!」っと和美達の班に強制的に連れて行かされるハメになってしまった銀八がダルそうな呻き声を出しながらタバコをくわえて火を付けて、煙を吸ってため息と煙を同時にはいていると、生徒の一人が突然立ち上がる「ネギ先生ッ! 銀八先生がアリなら修学旅行に一緒に来る予定の土方さんも大丈夫なんですかッ!?」「え~あの人が良ければ大丈夫だと思いますけど・・・・・・」「連れてけ連れてけあんな奴、近くにいるとマヨネーズ臭くてやってらんねえんだよ」「よぉぉぉぉしッ! のどか修学旅行はいっちょかましなさいッ!!」「う、うん・・・・・・・」ネギと銀八の了承を得たハルナは来て欲しいと思っている本人より喜んでのどかを応援するのだが、彼女の隣に座っている刹那はめんどくさそうな表情でハルナの方へ首だけ振り返る「無理だって言ったでしょハルナさん、あの人はほとんど私と一緒に・・・・・・」「のどかッ! 隣に座ってる子の言う事なんて聞かずに突っ走るのよッ!」「だから無理なんですってッ! 私と土方さんは常に一緒にいなきゃ駄目なんですッ!」「せっちゃんそんなにあの人の事が・・・・・・ええ人にあえて良かったな~」「い、いや違いますお嬢様ッ! そ、そういうのじゃないんですよッ!」ついハルナに対して大声で口を滑らせてしまった刹那に木乃香が心から嬉しそうに笑みを見せてきたので、刹那は少し顔を赤らめながら訂正するも、すでに生徒達はざわざわと喋っている「同居人だったにも関わらず気がつかなかったな、まあ私は家より先生の寝てる部屋の屋根裏の方がいる時間は長いし、しょうがないな」「ねえ夏美、土方さんって誰?」「本屋から貰った弁当にいっぱいマヨネーズ塗って食べてる人だよちづ姉・・・・・・・」「土方さんって刹那さんと一緒に住んでるカッコいい人だよね? まあ私は彼氏持ちだからどうでもいいけど、勝ち組の私には無縁ね」「彼氏って言っても一カ月しか経ってないじゃん美砂、確かキスも未経験でしょ? それにしても男の人と一緒に住んでみる環境って面白そうだな~私お父さんしかいなかったし「それ何処の乙女ゲー?」みたいなのやってみたいよ、まあ刹那さんや本屋見たいに一人の男を取り合う修羅場はイヤだけど・・・・・・」「修羅場って何アルか? 強いアルか、祐奈?」「ねえクーフェイ、このやり取り結構やってるんだから、いい加減何でも強さ基準に考えるの止めない?」生徒達がヒソヒソと話しているのを見て慌てて刹那が立ち上がって「違いますッ! 違うんですよ皆さんッ!」と必死に連呼するも全く聞いてくれない、しばらくして諦めたのか刹那は席に座ってため息をついた後机に顔を伏してしまったが、生徒達に向かって銀八が不機嫌そうな声を上げて、「こっちはさっさと終わりてえんだ、ガキの恋愛論は後にしろ」と言ったので生徒達はしだいに静かになってくれた「んじゃもう質問無えのか? 無えなら終わるぞ」「・・・・・・・・・」「はいお前」「いつも不思議に思うんですけど何でザジさんの声が聞こえるんですか銀さん・・・・・・・?」いきなり生徒の一人のザジに向かって指さす銀八にネギが唖然とする。何故かはわからないが彼女の声は銀八とあやかにしか聞こえない「・・・・・・・・・」「ああ、それがどうした?」「・・・・・・・・・」「まあ宿にテレビ置いてあると思うから見れんじゃね? 」「・・・・・・・・・」「バカヤロー、あれはガキには早すぎるだよ」「・・・・・・・・・」「いやまあ確かに銀さんも好きだよ、ああいうネタは俺も結構好きだし」「・・・・・・・・・」「ギャハハハハッ! あのネタ最高ッ!!」「お二人共、本当下ネタ系好きですわね・・・・・・・」「すみませんッ! 全然わからないのでもういいですかッ!?」銀八とザジに対してあやかがしかめっ面をしているのだが、ザジの声が聞こえないネギや生徒達にとっては謎が深まるばかり、ついにネギが強制ストップをかけA組のホームルームはやっと終わりの時を迎えるのであった。ホームルームを済ませて帰りの挨拶をした後、次々と生徒達は教室から去っていき、ほとんど誰もいなくなった教室で銀八も学校内にある万事屋に行こうと教室から出ようとするが、途中で誰かに白衣の先をグイっと引っ張られた。「ん?」振り向くとそこにいたのは自分よりずっと小さいエヴァ「何だよチビ」「銀時、ジジィから聞いたが関西呪術協会と和睦する為に親書を本部に持って行くらしいな」「俺じゃなくてネギだけどな、俺はあいつのお守り役担当だ、まあ暇さえあればお前等と・・・・・・あれ、お前って確か・・・・・・・」「私は忌々しいこの呪いでここから出られん・・・・・・」かつてサウザンドマスターがエヴァにかけた魔法は『登校地獄』。この呪いにより彼女はこの麻帆良学園の敷地内から出る事は出来ない、つまり彼女は敷地外から出る修学旅行には参加できないのだ。銀八がいない時は修学旅行に行けないなどどうでも良かったのだが、今年は修学旅行に行けない事に少し未練があるようだ「お前とはしばらく会えんな・・・・・・」「・・・・・・まあ土産ぐらい買って来てやるよ、八つ橋とか木刀とか」「いや土産はいらん」「へ? 何で?」「その代わり修学旅行の日まで私のベッドで一緒に寝るのはどうだ?」「・・・・・・・海の底で永遠に寝かしてやろうかドチビ?」正直、最初は修学旅行に行けなくてここに残るエヴァに少しだけ同情したが、彼女がニヤつきながら言った提案を聞いて、そんな同情は銀八の中から塵も残さず消えて行った。「イイだろ修学旅行が始まれば私とは長い間お別れなんだぞ、せめて私のぬくもりを覚えてから京都に行け」「ふざけんな誰が覚えるかそんなモン、何でテメェみたいなクソガキと同じベッドで寝なきゃいけねえんだよ」「何話してんだ銀八?」「またエヴァさんに絡まれてるんですか?」エヴァの意見に銀八が真っ向から拒否していると、千雨とあやかが鞄を持って近づいくる。そんな二人に銀八は振り返り、親指でエヴァの方を指さす「こいつが修学旅行に行けないから俺に危ない橋渡ってくれだとよ」「ああ、お前まだ渡ってなかったのか」「埋めるぞコラ」「まあエヴァさん修学旅行に行けないなんてショックです、喧嘩友達がいないと私とっても寂しいですわ」「棒読みで言われても全然嬉しくない、いい加減死にたいのか貴様?」目を細めて意外だなという様な視線で見てくる千雨と、無表情で感情移入ゼロのあやかの言葉に、銀八とエヴァは目の前の二人に軽く殺意を抱いているとその4人の間をすり抜けるようにネギが教室から出る為に通って来た。「じゃあ皆さんさようなら、銀さん修学旅行には遅れないで下さいよ」「わ~ってるよ、そう言うテメェも“持ってるモン”奪われないように気を付けるんだな」「はい」教室から出るネギに向かって銀八がぶっきらぼうに言葉を送ってネギはそれを聞いて振り向いて頷き、その後去って行った。残されたのは四人だけとなった筈だが・・・・・・「じゃあ万事屋に行くか、そういえばお前も来るか?」「ん? 誰に話しかけてんだお前?」突然自分達以外誰もいない教室にある端っこの机の方に向かって話しかける銀八に、千雨が首を傾げると、彼ははくわえてるタバコに火を付けながら答えた「スタンドだよスタンド」「何だ女子生徒の幽霊・・・・・・イデッ!」「幽霊なんて存在するわけねえって言ってんだろお前は、『ぬ~べ~』の読み過ぎなんだよバカ」「イタ~・・・・・・ったくいい加減認めろよ幽霊ってよッ! その年で幽霊怖いなんて恥ずかしくないのかよッ!」「は? 全然恐くないですけど? いつから俺が幽霊怖いって言ったんですか? 勝手に俺の設定を捏造しないでくれませんかね?」 急に敬語を使ってタバコの煙を吐き散らしてくる銀八に、千雨は彼にポカンと殴られた頭を右手でさすりながらため息をつく。「いつも妙な所が頑固なんだよなお前・・・・・・・」「それあなたが言えますか?」「どういう意味だよ」「そういう意味ですわ」「?」隣に立っているあやかに言われた事に千雨が一人で混乱していると、銀八はツカツカと教室の端っこにある机の方に近づく。「お前もチビと同じ修学旅行に行けないんだろ、地縛スタンドだから、もうすぐしばらく会えなくなるからUNOでもやろうぜ」「あ、はいッ! うう・・・・・・地縛霊の私が見える先生がいて本当に良かったです・・・・・・」「地縛霊じゃなくて地縛スタンドだ」「すみません・・・・・・・」「霊って言葉に本当に敏感だなお前は」「黙っとけチビ、ほら行くぞ」銀八の見ている先には席に座っている状態の薄い姿をした女子生徒がいた相坂さよ、一応A組所属でこの麻帆良学園の地縛霊である。彼女の姿が見えるのはこの学園では銀八とエヴァにしか見えないのだ。ちなみにネギは気配だけは感じ取れるらしい。そんな彼女だが何かと気軽に話せる仲である(土方や刹那、のどかとも交流があるのだが、残念ながら霊感の少ない彼等にはさよの姿は見えない)銀八の誘いに快く承諾してすぐに彼の後ろにフワフワと浮きながら歩いて行く銀八にくっついていく。「スタンド連れてUNOやるぞ、UNO、どうせ生徒の奴等は修学旅行でフィーバータイムだから依頼なんて持ってこねえよ」「そうだな、修学旅行があっても無くてもいつもと変わらねえと思うけどな」「お前って本当一言多いよな」「コイツは根元までひねくれ者だからな」「私から見れば三人ともかなりのひねくれ者ですが?」千雨に向かってしかめっ面を見せる銀八と、口を挟んでいるエヴァに向かってあやかはツッコミを入れる。彼女から見ればこのメンツは自分に正直になれないひねくれ者揃いだ。あやかにそう言われても銀八は無視してさよを連れて教室から出て行く、それに千雨とエヴァも続いて最後にあやかが出て教室のドアを閉めた。廊下を歩きながら銀八はふとあやかに向かって話しかけてきた。「所でさぁ? 映画のバトロワでよく流れてるBGMって何だっけ?」「確かジュゼッペ・ヴェルディが作曲した『レクイエム』って奴だと思いますわ」「ああそれだ、その曲いつかこのスタンドに聴かせようと思ってんだけど、何処で手に入るか知ってる?」「ぎ、銀さん? それはちょっと・・・・・・」凄い事をぶっちゃける銀八にあやかは頬を引きつらせる、それを聞いていた千雨とエヴァは視線を合わさずに会話する「なあ、レクイエムってどういう意味だったっけ?」「鎮魂歌と読んでレクイエムと言われるケースが多い、つまり死者を安息に眠らせるための曲だ」「なるほどね・・・・・・」「何か恐そうな歌ですね~」「お前にとっては心地よい音楽になるんじゃないか相坂さよ?」こちらに振り向いて感想を言ってくるさよにエヴァは半ばあきれながら彼女に返す。死者である彼女がそんな曲を聞いたらどうなるのであろうか・・・・・・そんな事をエヴァが歩きながら腕を組んで考えていると、千雨がふと思い出したように彼女の方へ顔を向ける「所で茶々丸どうしたんだよお前?」「知らん、最近私に許可も無くどっか行ってしまうんだよアイツは、どうせサツキと超の店でも手伝いに行ったんじゃないか?」不機嫌そうに言うエヴァに対して千雨は「ふ~ん」と特に気にもせずまた顔を前に戻す。「修学旅行ももうすぐなのにあいつ等まだ店やってるのか」「モノ好きな客が多いからなあそこは、サツキが言ってたが最近面白い客がたまに来てるらしい」「面白い客?」「まあ私にはどうでもいいがな」そう言ってエヴァは少し小走りになって銀八の方へ歩み寄って彼に話しかけている。そして千雨もエヴァが言っていた事も忘れて銀八の方へと歩み寄っていくのであった。彼女達がその“面白い客”に会える時はいつであろうか・・・・・・麻帆良学園の敷地内には『超包子』という三年A組の四葉五月と超鈴音が経営する店が存在する。来る客は様々だが放課後には生徒達がよくおり、夜中になると教師達が飲みに来る事も多い。こういう何処の層でも受け入れられているのは、五月の作る料理の腕とその性格がもたらしているのかもしれない。そして学校を終えた五月と鈴音はいつも通りお店を開いて、今日は茶々丸にお店の手伝いをしてもらいながら商売に励んでいた。「ハァ~、あのジジィ早く死んでくんないかな~」「教師の口から出るとは思えない発言ネ、新田先生」「さっちゃん、今度あのジジィが店に来たら料理の中に軽く毒でもトッピングしといてくれ、無理だと思うが死ぬ可能性はある」「五月に変なの吹きこまないで欲しいネ、新田先生」店にあるカウンターで酒を飲みながら愚痴を言う新田先生に応対するクーフェイと同じ中国人と思われる少女の超鈴音と、彼女の隣ではなごやかに微笑んでいる五月の姿があった。新田先生がそんな彼女に一人でカウンターで愚痴っていると、彼の隣に一人の青年が座った。しかしその青年を見た鈴音は少し嫌な顔をする。「また来たネ、暴飲暴食魔・・・・・・いつもは夜に来るのにこんな時間に珍しいネ」「アハハハ、ちょっと小腹が空いて来たしもう“コッソリ”来る必要も無くなったから食べに来ちゃった、ここ美味いし」「小腹が空いたレベルでも間違いなくここの店のほとんどを食い散らす気ネ、誰かさんが来るようになってから店にある食料が物凄い勢いで消えて行くヨ」「儲かるから良いじゃん、金は払ってるよ俺、その辺の弱いチンピラから巻き上げた金で、あ、中華まん30個で」「最近この辺ででやたらと救急車が鳴ってるのはキミの仕業だったネ・・・・・・」笑いながら言う青年に鈴音は相手が客にも関わらずしかめっ面を見せる。最近やたらとチンピラの数が減っているのはある意味彼のおかげなのかもしれないが、病院送りにさせるほど重症にするのはどうだなのだろうか(本人曰く、知り合いに“キツく”言われているので殺す程はしないらしいが・・・・・・)「そうそう、この前のさつまいもありがとね、俺と知り合いの子で食べさして貰ったよ」青年が五月に向かって笑いかけながらお礼を言って来たので、彼女も「困ってる時はお互い様です」と笑って返した。随分前の話だが、五月が夜中にいつも通り在庫チェックをしている時、残り過ぎた賞味期限切れ寸前のさつまいもをどうにか処理しようと悩んでいた時、客として来ていた青年が全部自分で食べるからおくれと要求してきたのだ。それを聞いて五月はどうせ売り物にならないならと彼に全て渡してあげていたのだ。「にしても随分今日は客少ないんだネ、どうしたの? 潰れるのココ? 俺が手っ取り早く潰してあげようか?」「潰れるわけないネッ!! 今からが客やってくる時間帯ヨッ!」「そうだぞ少年、ここが潰れたら誰が私の愚痴を聞いてくれると言うのだ、この店が無かったら私はキャバクラでしか愚痴を語れないんだぞ」「そろそろ新田先生は教師辞めた方がいいネ」五月が出した大量の中華まんをヒョイヒョイ食べている青年の隣に座って、まだ飲んでいる新田先生に教師と生徒の立場を超えて鈴音が毒を吐いていると、青年は中華まんを食べながら彼女に話しかける。「あ、外にいる客と応対してる店員って誰? 俺見た事無いんだけど」「彼女はアルバイトで時々忙しくなる時に手伝ってくれる絡操茶々丸、誰かさんが来るのはいつも夜中だから彼女に会えるわけないネ」「ふ~ん、そう」青年は中華まんを口に挟みながら後ろに振り返り、お客である女子生徒のグループがいるテーブルで注文を受けている茶々丸を数秒見た後すぐに体を戻す。「アレが“あの子”の言ってたカラクリか・・・・・・見た目は弱そうだけどなぁ・・・・・・」「何ブツブツ言ってるネ?」「ああこっちの話だから気にしなくていいって」そう言って青年は最後の中華まんを食して席からガタッと腰を上げた。「ごちそうさん、金はここに置いとくから」「早ッ! 相変わらず食うスピードが半端ないネ・・・・・・」「美味いもん程早く食えちゃうモンだよ」青年は爪楊枝で歯に詰まった物を取りながらポケットからグシャグシャの万札を数枚出して、いつも持ち歩いてる大きな日傘を肩にかける。「釣りはいらない、もう俺には当分必要のないモノだし、ここにまた来るのは当分先になるしネ」「何ヨ? 何処かへ行く気ネ?」「ハハハ“あの人”と“あの子”が先に来る前にちょっと“舞台”の下準備に行って来る」超音の方に振り向かず青年はのれんをくぐり日傘を差して外に出る。その後ろ姿に彼女は少し口元に笑みを浮かべながら喋りかけた「その“あの子”の生き方を決めるのは今後のキミ次第、『光』か『闇』、彼に選択肢を与えるのはキミの役目ネ、精々頑張るヨロシ」「・・・・・・キミ何者? 随分と変な事言うね」「アハハハ、ただのここの生徒兼料理人ネ」自分の方に振り向いて来た青年に超音は笑い飛ばしてごまかす。しばらく青年は彼女をジッと目を開いて見ていたが、すぐにいつもの“取って付けた”ような笑顔で「まあいいや」と言って背中を見せた。「何者だろうが俺の邪魔はしないほうがいいよ俺は邪魔する奴には容赦しないから、じゃあね」超音にそう言葉を残して手を振りながら青年は歩いて行く。ふと彼が歩きながら横を見ると、段々と増えてきた客の対応に追われている茶々丸の姿があった、彼女と目が合うと青年はニコニコしながらいつもの笑顔で彼女に手を振る、一方茶々丸は彼とは初対面なので首を傾げるだけだった。青年はそのまま傘を差して生徒達の間をすり抜けるように歩いて店を後にする。(『光』と『闇』、そんな“どうでもいい”選択を俺はあの子には選ばせない、この世には『強い者』と『弱い者』の二種類しかいない、あの子がどっちに転ぶかはあの子が決める事だ、俺が決める事じゃない)麻帆良学園の校舎を見つめながら青年は目を開いて口元にニヤっと笑みを作った。「しばらくお別れだ、次会う時はキミがもっと強くなってる事を願ってるよ」そう言うと青年は再び歩き出す、もうすぐ始まる“舞台”の為に教え子の成長と“ある男”の戦いの為に夜兎・神威は麻帆良から姿を消した。教えて銀八先生銀八「一通目クルトさんの質問」木乃香さんに質問学園長殿(笑)の骨格って医学的に価値有りますよ?解剖したいんですが有りですかね?木乃香「ええけど何か変な液体が飛んできても知らんよ」銀八「紫色の血が出てきそうだしな」エヴァ「それに口から卵を吐き出しそうだ」学園長「ワシはピッコロ大魔王か」銀八「二通目エンジンさんの質問」千雨さんに質問。ライバル(銀さん争奪戦)が増えてきましたが、眼鏡を変えるなどのイメチェンはしないんですか?千雨「いや必要ねえよ・・・・・・メガネ返る必要なんかねえよ・・・・・・・」銀八「グラサンでもかけてみる?」千雨「何でグラサンなんだよ」銀八「俺の知り合いの人に『長谷川さん』っていうグラサンかけた人がいたから」千雨「同姓繋がりで私にもかけろと・・・・・・?」銀八「三通目q-tureさんの質問」銀さんに質問です。秋と言えば読書の秋ですが、GSの皆さんは学園長でリンt…もといコミュニケーションをする為にどんな本を読んでいますか?自分が最近読んだのは『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』です。銀八「俺は本は読みませんが最近ジジィは「ハリポタ」読んでますね」学園長「ダンブルドアかっけ~な~、ワシもこんぐらいバシッと決めれば支持率上がるかもしれんのぉ・・・・・・」銀八「確かそのジィさんの最期って部下の教師の一人に殺されちゃうんだよな」学園長「へ~、そういえばワシもある教師に殺されちゃうんじゃないかと毎日考えてるんだよね~」銀八「良かったじゃねえか、死ぬ原因がカブりそうで」学園長「いや嬉しくねえよっ!!」銀八「四通目蛙さんの質問」まき絵に質問。「万事屋さん所のエヴァンジェリンと一対一のトレードがさっき成立したから、明日からは万事屋の一員として頑張りなさい」と部活終了後に顧問から告げられたら、どうしますか?まき絵「荷物まとめて逃げます」銀八「それを俺が捕まえます」沖田「そして俺が旦那用に調教します」銀八「おいしいパシリの出来あがり」まき絵「おいしいってどういう意味ッ!?」銀八「五通目ウィルさんの質問」今回は銀さんに。事あるごとに年下の女の子(子供)に興味が無いって公言してますが、銀さんが彼女達(千雨、いいんちょ、エヴァ)を一人の女性として扱うのは何歳からですか?女達も成長すれば当然素敵な女性になるわけですからね。それに江戸にいる銀さんに近しい女性って月詠以外はアウト気味ですし…。彼女達の好意をあまり無碍にしないことを私は勧めます。歳だけでダメっていうのは何だか逃げる口実にしか聞こえないです銀八「さあな~会った時からガキだしそう言う目で見れねえしな俺、俺ぐらいの歳で中学生なんかと付き合ったら周りからしたら相当引くよ?」エヴァ「で? いくつぐらいならいいんだ?」銀八「最低でも俺が女として見るのは高校生かな・・・・・・?」エヴァ「なら私はセーフだな、600年以上生きてるんだぞ」銀八「お前が一生かかってもそのままなら、俺とお前は一生無い」エヴァ「ハァ~やはり男とは乳がデカいのが好きな動物なのだな・・・・・・ナギの奴もそうだったよ」銀八「乳じゃなくて俺は身長の事言ったんだよッ!」銀八「六通目サハリンさんの質問」ヅラに質問犬神小太郎には、んまい棒よりドックフードや骨っこ元気をあげたほうがいいのでは?桂「バカ者ッ! ドックフードや骨っこよりんまい棒の方が安いであろうッ! だがまあ月に一回与えてやるのも悪くはないなドックフード」小太郎「お前俺の事『犬』だと思って見てるんかい・・・・・・」桂「安心しろ、俺は猫も好きだが犬も好きだ、ちゃんと可愛がって育ててやろう」小太郎「そういう意味じゃないわボケコラカスッ!」銀八「七通目白夜叉さんの質問」銀さんに質問。えー、次回より京都編ということですが、銀さんは京都平気なんですか?京都は平安京ができて以来、疫病やら戦やらでガンガン人が死んでるいわゆる魔都と呼ばれているところです。安倍晴明や蘆屋道満、賀茂忠行といった陰陽師が活躍したのも、京の都が魔の住む都であったからです。そんな所に銀さんが行って本当に大丈夫なんですか?そこんとこ詳しくお願いします。銀八「時代を勘違いしてません? 今はTHE・平成ですよ? 疫病とか戦とかとっくの昔に終わってますからね?」千雨「それに修学旅行編はまだ先だろ、次回は・・・・・・むぐッ!」銀八「はいネタばれ禁止~」銀八「八通目正宗の胃袋さんの質問」変態ぬらりひょんに質問第二十八訓の質問コーナーで「あいつ等」って霊夢以外に誰に殺されかけたんですか?学園長「基本血の気が多い奴全部」銀八「お前って本当襲われそうな生き物だもんな」学園長「うん、可愛かったからちょっと尻触ろうとしただけなんだけどね」銀八「10割お前のせいじゃねえか」銀八「九通目はきさんの質問」お登勢さんに質問です。ナギとの出会いまたはナギ子の時とかのエピソードでどんなことあったか教えてください。それがダメならナギにどんな仕事をさせたかでもいいですお登勢「やれやれ最近の若いのは話しの展開を待てないのかい? まあちょっとだけなら話してやろうか、普段はカミさんに頼りきりのダメ亭主って感じだけどいざとなったら筋は通す、そんな奴だったよ」アル「まあ滅多にありませんがね、万事屋として働く回数とスナックで働く回数もそんな差がありませんでしたし」お登勢「基本ダメ人間だね、誰かと同じで」銀八「ババァさっきからこっち見て何ブツブツ喋ってんだ?」銀八「十通目とびかげさんの質問」銀八へ万事屋の主な依頼内容は何ですか?あと、報酬はいかほどですか?銀八「基本的に江戸での依頼とそんな大差ありません、まあ江戸のメンツとは違って周りが周りなので武力行使の依頼は来ませんがね、報酬は江戸の時より少なめです」千雨「まあ来るのは大体学生だしな」あやか「毎回猫に逃げられてる生徒もいますしね、『ドリームジャンボ三億円ちゃん』は飼い主の事を相当嫌っているんでしょうか・・・・・・」千雨「あ~まだ逃げてるのあの猫・・・・・・・?」銀八「十一通目Koiさんの初質問」質問コーナーで言ってた「最終章」ってなんの最終章ですか???銀八「修学旅行編の事です、それがこの作品の終点」千雨「うまくまとまんの?」銀八「さあ? 無理なんじゃない?」千雨「何かまたグダグダと引き延ばしそうだな・・・・・・」銀八「十二通目風の都さんの質問」銀さんへ何故、まき絵ちゃんをイジメるのですか?彼女、いつも独りで泣いてますよ。可哀相ですよ銀八「あいつ『ドM』なんで」まき絵「Mじゃないよッ!」あやか「てことは千雨さんもM?」千雨「何でそうなるんだよッ! 私は佐々木みたいに責められる事に喜びを感じる変態じゃねえよッ!」まき絵「ちょっとォォォォ!! 勝手に変態扱いしないでよッ!」銀八「十三通目Citrineさんの質問」今はナギどこにいるんでしょうか?銀八「知りません」エヴァ「知ってたら苦労せんわ」銀八「とりあえず死んでる事を願ってます」エヴァ「私の呪いはどうするんだ銀時・・・・・・?」銀八「十四通目、風凪五月の初質問」質問です。龍宮は銀さんの事をどれぐらい気になっているのですか? もしもさっちゃんがネギま世界に現れたら、彼女はどんな反応をするのか聞いてみてくれませんか龍宮「さっちゃん?」銀八「お前と同じ俺専用のストーカーだよ」龍宮「何だ同業者か、別に私は先生の行動を知りたいから一緒にストーキングしても構わない、向こうはわからないけどな」銀八「そろそろお前も完全体に近づいてきてるな・・・・・・・」銀八「十五通目、Namelessさんの初質問」信者に染まりつつあるネカネさんに質問なのですがジャンプネタが豊富なのにファミコンジャンプネタが一度も出ないのは何故でしょう?ネカネさん的に2009年までのジャンプ作品内でファミコンジャンプに参戦させるとしたらどんな作品群になりますか?ネカネ「ファミコンジャンプって何ですか?」銀八「1980年代にあったゲーム、今でいう『ジャンプアルティメットスターズ』みたいな奴だよ」ネカネ「そのアルティメットなんとかもわからないんですけど・・・・・・」銀八「あ~ジャンプのキャラが一杯出てきて戦うゲームだよ、ジャンプ初心者はこれだから・・・・・・」ネカネ「そうなんですか、じゃあ『めだかボックス』で」銀八「まさかのバトル漫画じゃない方から持って来たよこの人・・・・・・」銀八「十六通目Kickさんの初質問」土方さんにフラグがもう一つ立つとしたら誰でしょうか?僕的にはなんやかんやでよく一緒にいる真名あたりがいいんですが……龍宮「無理だな、刹那に悪い」刹那「何が私に悪いのかわからないんだが・・・・・・」龍宮「ほほう、この娘は先生や長谷川並に己の鈍感さに気付いてないらしい」千雨「何で私がそこに出てくるんだよ、銀八はともかく」銀八「いや俺がいるのもおかしいだろ、よくバカレッドに言われるけどよ」エヴァ「お前等は『マジ』だろ・・・・・・・」銀八「ラスト十七通目、自爆心さんの初質問」屁怒絽様はこの小説ではださないんですか?またでるとしたらどのへんでだしますか銀八「へ、屁怒絽くんはこの世界には来ないかもしれないな~・・・・・・それにしても長谷川さんとか屁怒絽とか松平のとっつぁんとかやたらと本編入りしてくれって読者のメッセージが多いな・・・・・・」沖田「俺も時々来てましたね」銀八「最近の読者は本当考える事がデンジャラス過ぎるぜ」沖田「という事でそういう読者の期待に応えて俺を本編入りさせましょうか」銀八「何でそこで一番“デンジャラス”なお前が出てくるんだよッ!」第三十訓・『主人公のいない世界なんてのりの無いのり弁と同じ』へ続く。