場所は京都の関西魔法協会の本部、これは近衛家の屋敷で起こった事件関西呪術協会の長である近衛詠春はいつもの様に自室でローソクの灯で読書をしていると、ドタドタと誰かがこちらに向かって走ってくる音が聞こえてきた。すぐに自室の障子の向こう側から荒い息を吐きながら、この屋敷の使用人の一人だと思われる女性が障子越しに詠春に伝える「長(おさ)ッ! 屋敷の庭にて怪しい男と“変なモノ”がおりましたッ!」「怪しい男と・・・・・・変なモノ・・・・・・?」詠春は彼女の伝令に首を傾げた。侵入者がこんな所に来るなど珍しく無いわけではない、ここは関西呪術協会の本部、何か良からぬ事を考えて入ってくる輩もいないわけではないのだが変なモノ・・・・・・・?「侵入者として厳罰に・・・・・・」「いや待ちなさい」「はい?」「私が見てみよう、一体どんな人物なのか一目見てみたい、あなた達の監視をかいくぐってここの庭までやってきた侵入者をね、特にその変なモノというのを」「わかりました・・・・・・でも本当に変なんですよ・・・・・・?」「ハハ、私は長い間色々な変な人を見てきたから大した物じゃないと驚かないよ、」詠春は心配する使用人をよそに笑いながら自室の部屋から出てきた。彫の深い顔と多くの経験と知識を持ってるかのような風貌で、人目見ただけで誰もが真面目そうな、そして頑固そうな人だと認識してしまう顔だった。「では案内しなさい、その怪しい男と、変なモノにね」「はいこちらです、今は私達によって庭で待機させております」袴姿の使用人が詠春をそそくさと案内を始めるしばらくして屋敷の前にある大きな庭へと着いた。その中央には多くの屋敷の使用人が侵入者を逃がさないよう囲っている。詠春はやれやれと首を横に振った後、その群集の中へと入って行く「どきなさい私だ、中へ入れてくれ」「長ッ! 変なロン毛の男と変なモノが庭に突然降ってきましたッ!」「降ってきた?」「長ッ! 我々はあのような変な生物は見た事がありませんッ!」「それはもうわかってるから早くどきなさい、変、変、変って・・・・・・何がどう変なのか言いなさ・・・・・・」詠春が慌てている使用人達をどかせながら入って行くと、群衆の中央には使用人の一人に手を縄で縛られている着物を着た髪の長い男とそして・・・・・・隣には白い体に黄色いくちばし、アヒルなのだかペンギンだかわからない謎の生物(?)が同じく手を縛られて座っていた。・・・・・・・・「変なモノだ・・・・・・・」「やっぱり変ですよね・・・・・・あの目を見てると吸い込まれそうな気分になります・・・・・・」「・・・・・・とりあえずあっちの髪の長い青年に聞いてみるか・・・・・・」すっかり謎の生物に恐怖を抱いている使用人と喋った後、詠春は侵入者の男の方へと近づいた。「初めまして、手荒な歓迎ですみません、まずはあなた達の名前を教えてくれませんかね?」「フ、人の名前を聞く前にまず自分から名乗るのが礼儀ではないか?・・・・・・・この台詞一度言いたかった」「貴様、侵入者のくせに何だその態度はッ!」「侵入者じゃない桂だッ!」「ああ、桂って言うんですか・・・・・・」「何ッ! 何故俺の名がわかったッ!? さてはエスパーかッ!?」「いや、さっき自分で言ったでしょ」使用人に向かってつい自分の名前を叫んでしまった桂という男性、詠春は彼にツッコんだ後隣にいる珍妙な生物を指さす。「それでこの変な生物は何でしょうか桂君?」「変な生物じゃないエリザベスだッ!」「え・・・・・・す、すみません・・・・・・このエリ・・・・・エリザベスって一体何なんですか・・・・・・? 私も見た事無い生物なのですが」「エリザベスはエリザベスだッ!」「いやだから何なのかって・・・・・・」「それ以外に何があると言うのだッ! なあエリザベスッ!」桂が詠春に向かって叫んだ後、隣にいるエリザベスという生物に話しかけるが、彼(?)は苦しそうに汗を流しながらジタバタする「どうしたァァァァエリザベスッ! ハッ! 手を縛られているからボードが出せないのだなッ!?」「え、ボードって・・・・・・・?」「ボードが無いとエリザベスは会話が出来ないのだッ!」「何ですかそのコミニケーションの方法ッ!?」目を血走らせながらエリザベスが暴れ出す、そんな珍獣にすっかり使用人達はビビってしまっている。もう彼を縛っている女性も正直逃げ出したいと思っていた、そこで桂が慌てて詠春に叫ぶ「早くエリザベスを解放しろッ! そして取り上げたボードを返してやるのだッ! そして俺も解放しろッ! 後、腹がすいたから何か食べ物をくれッ!」「ちゃっかり自分も助かろうとしないで下さい、しかも図々しいし」「好物はそばだッ! そばを持ってこいッ!」「あの、いい加減にしないと警察呼びますよ?」「・・・・・・・それは勘弁願いたい、とりあえず話をすれば長くなる、ここは一度この屋敷の中で茶を飲みながら語り合おう、遠慮するな」「いやここ私の屋敷なのですが・・・・・・」勝手な言い分を要求する桂に詠春は冷静にツッコみながら考える。よく見るとこの男は腰に帯刀している、それに連れているのはこの変な生き物だ、何処から見ても怪しい侵入者、逃がすわけにはいかない。詠春はしばし考えた後、顔を桂の方に戻した。「わかりました・・・・・・では屋敷の中へと案内しましょう、この一人と一匹を宴会席の方へと案内して下さい」「よ、よろしいのですかッ!?」「無論、客としてではなく侵入者としてですがね、話を聞かせてもらいましょうか桂君?」「当たり前だ、ところで・・・・・・・」桂はキョロキョロと周りを見渡した後、詠春の方に顔を戻す。「転送装置をさっきここに降ってきた衝撃で何処かに行ってしまったらしくてな、俺はそれが無いと帰れないのだが」「転送・・・・・・装置?」「長ッ! ここに変な人形が二体落ちてますッ!」「また変なのですか・・・・・・全く今日は一体・・・・・・」使用人の一人が人形といえば人形だが、ゴミといえばゴミに近い明らか変な物を二体見つけたらしく慌てて指さして叫んでると人形の体が真っ赤になり、ピピー、ピピーと警告音を出して・・・・・・ドゴォォォォォォン!!!!とその辺り一体に強烈な爆音が響いた。激しい爆風、吹っ飛ぶ使用人、そんな光景に口を開けて硬直している詠春と無表情で見ている桂とずっと無表情のエリザベス。「あの桂君・・・・・・こんな時どうすればいいんですかね・・・・・・」パラパラと破片や砂埃が舞う中、詠春がボソリと言ってきた質問に桂はフッと笑い「笑えばいいと思うぞ」「君からは“じっくり”話を聞かないといけないようですね」「おっと、強く引っ張らないでくれないか?」怪我をした仲間を使用人達が応急手当てしている中、詠春は桂とエリザベスを縛っている縄を持って屋敷の中へと入って行くのであった。「別世界? しかも天人という輩が徘徊する『江戸』という所から来た『侍』ですか?」「うむ、前々からここの世界の事は知っていたので色々と情報を探ろうと思ったのだが、あの通り幕府から盗んだ転送装置があの通り吹っ飛んでしまった」『やれやれだぜ』「ああそうやって会話するんですか彼・・・・・・」詠春は桂とエリザベスを連れて、普段は団体様がお見えになった時に使っている宴会席へ入れて二人の話を聞いていた(正確にはエリザベスは右手に持っているボードに書いて会話をしてくる)詠春自身も軽い自己紹介を済ませて二人の話を聞くのだが、桂の言う『天人』という言葉には聞き覚えがあった「天人がいる世界・・・・・・まさかまたそこの世界から来た人に会えるとは思いませんでしたね」「何? てことは俺達の様にこの世界に来た奴がおるのか近衛殿?」「ええ随分昔にちょっと色々と、そちらの世界からきた天人にも会いましたよ、あの時は本当に疲れました・・・・・・」「まさか俺達の様に別世界へと行けた者がいたとはな・・・・・・」「江戸も知ってますよ、ちょうど別世界から来た“その人”を返す為に転送装置を作りましてね、それを利用して私の知り合いがそちらの世界で旅をしておりました、その世界では彼の一番のお気に入りの場所だったんですよ江戸は・・・・・・」疲れたようにため息をついて詠春を見て桂はふと一つの疑問を抱く「という事はこちらからでも俺達の世界に来れるのか?」「いえ今はその装置はとっくに壊れてしまっています、最後に使ったのはあの人ですから随分前になりますね・・・・・・」「てことは俺とエリザベスは帰る手段が見つからんという事か・・・・・・」『マズい事になりましたね桂さん』「全くだ、これでは幕府の思うツボだな、俺達が使った転送装置もここに来た瞬間爆発する仕掛けだったのであろう、してやれたな、どうやらこの世界に閉じ込められたらしい・・・・・・」顎に手を当て桂は額に眉を寄せながら考える。思えばあの転送装置は極秘中の極秘器具であるのにも関わらず簡単に入手する事が出来た。そこで警戒を怠った自分が甘かった、全ては幕府の上層部の罠だったのだ、この世界に閉じ込めれば自分達は江戸の天人を排除するための攘夷活動が出来ない。さしずめこの世界は彼等にとって自分達を入れる為の檻の中なのだ「とにかくこの世界から一刻も脱出する方法を探さなければならんな・・・・・・しかし今日はもう疲れた。何処かで休まねば、なにせここに降って来た瞬間、大勢の女子(おなご)に羽交い絞めにされて大変だったしな」『そうっスよね、いきなり襲いかかってくるなんてマジパネェっス』「話も聞かないでいきなり侵入者だとか変質者だとか・・・・・・ここの教育がなっていないぞ近衛殿」「どっからどう見ても変質者のあなた達がどの口を言うんですか?」悪いのはこっちではなくそっちだとさりげなく主張している桂とエリザベスに詠春はメガネをカチッと上げて冷静にツッコんだ。「・・・・・・しょうがないですね、とりあえず今日はここで一泊してもらって今後の事は後日話しましょう」「かたじけない、出来れば後で飯を持ってきてくれまいか? 江戸で何も食わずにこっちに来てしまったものでな」「遠慮する気ゼロですか?」『いやぁサーセンwww』「あなたは随分若者言葉にハマってますね?」詠春の提案に桂とエリザベスはお構いなく承諾、そんな一人と一匹にこんな態度で侍と名乗っている事にいささか驚きながらため息をついて、使用人のほとんどがさっきの爆破事件で色々と騒いでいるので二人を寝かせる為に自分が寝室へと案内した。場所変わって屋敷の中の客室、部屋は二人分寝るだけでは大きすぎな、豪華な家具が並ぶ大層立派な和室だ「とりあえず今日はここでお休みください、ああ食事は使用人達の手当てが終わったら持ってこさせますので」「ほほう、悪くない部屋だな、なあエリザベス」『これで食事が寿司だったら文句ないですね』「客の身分で贅沢な事を言うなエリザベスッ! それでも日本の夜明けを切り開く攘夷志士かッ! 全く・・・・・・ついでに近衛殿、俺は寿司では穴子が好きだ」「それ以上ふざけると本当に追い出しますよ?」「すいません」調子に乗ったエリザベスに桂が一喝したのかと思いきや、するりと自分の好きな寿司の種類を言う桂に詠春は微かな殺意を持って来た頃、部屋に入った桂は奥にあった少し小さな本棚の上に置いてある様々な置物を物色し始める。「ほう木彫りの熊と王将・・・・・・こんなありがちな物をいまどき飾っている所があるとは」「悪かったですねありがちで」「うん? この黒い筒は何だ?」「ああ、それはさっき話してたあなたと同じ別世界の人から貰った者ですよ、多分あなたの世界の物だと思います」桂が興味を持ったのはフタが付いてる細長い黒い筒、傍から見れば卒業証書を入れる時に使うような筒だ。彼が持っている物に詠春が軽く説明する、どうやらここにきたある天人からの贈り物らしい。「これには何が入っておるのだ近衛殿?」「それが・・・・・・それの送り主に『何かマズイ事態が起こってない時以外開けるな、開けたらアレだ、すげぇめんどくせえぞ』と言われたので貰った時から一回も開けてないんですよ」「ほう・・・・・・あ、開いた」「いやちょっとッ!! 人の話聞いてましたッ!?」つい普段冷静な詠春が口調を荒げてしまうほど人の話を全く聞いていなかった桂、彼は詠春が言った直後にはパコっと上に付いてるフタを取ってしまったのだ。その筒を右手で持ってゆさゆさとフタが無くなった筒を下に向かって降ってみる。「何も入っておらんぞ、一体何なのだこれ・・・・・・」筒の底をパンパンと叩きながら中身を確認するのだが何も入っていない、桂が首をひねっているとしばらくして・・・・・・「何も出ないではないか、せっかく期待しておった・・・・・・ぐほぉッ!!」『桂さんッ!』「何天井に向かって発射されてるんですかッ! ロケットですかあなたはッ!」「ロケットじゃない桂・・・・・・だ・・・・・・・」桂がため息をついた直後天井に向かって彼は筒から何かが勢いよく出てきた衝撃で思いっきり跳ね上がる、天井に思いっきり背中から当たり桂はボトッと大の字で落ちてくる。「く・・・・・今の衝撃は一体・・・・・・」「あのすみません」「ん?」「“封印”を解いてくれた事には感謝するんですが・・・・・・ちょっと重いんでどいてくれませんかね?」・・・・・・・・・・・・・不意に聞こえた聞きなれない男の声、桂は自分が落ちた所をよく見てみると「誰だお主?」「まあとりあえずどいてください」「まさか・・・・・・」「ああ、お久しぶりです詠春、私が封じられてる間にまた一段と老けました?」女性の様な顔立ちと変わったローブを着て桂の下敷きになっている男性を見て詠春はハッとする「アル・・・・・・なのか?」「当たり前でしょ、ちょっと“向こう”でヘマをしてしまいましてね・・・・・」「ヘマ?」「それより上の人もそろそろ・・・・・・」「ん? すまんちょっと腹がすいてきたなと考えてた、近衛殿もう俺の腹は限界になって来たのだが」「ああ、私も6年振りに起きてみると腹が減ってきましたね詠春、何か食べ物持ってきてくれません?」「相変わらずだな君も・・・・・・・」『つか両方ともさっさと立てよ』二段重ねで倒れている桂とかつての友に詠春はため息をついて、隣にいたエリザベスはボードで二人に向かって普通にツッコんだこれが狂乱の貴公子と呼ばれ、かつて銀時、坂本、高杉と攘夷戦争に参加した攘夷志士、桂小太郎とサウザンドマスターの下で数多の戦を行ってきた元神鳴流剣士、近衛詠春と最強クラスの魔法使い、アルビレオ・イマとの初コンタクトだった第二十八訓 バカは死んでも治らない時は過ぎ数ヵ月後、早朝の満天の快晴に桂はもうすっかり居付いてしまった近衛家の屋敷でいつも通り朝食の時間前に起きて布団からモソっと寝巻の着物で起き上がり障子を開けて屋敷の庭に出て空を見る。「今日は一段といい天気だ、日本の夜明けは近いぞ」「朝なんですから“夜明け”なんてとっくに過ぎてますよ」「む、お主も起きたのか、珍しいなこんな朝早く」庭からふと桂は自室に振り向くと同じ部屋で寝ているアルがだるそうに起き上がって髪を掻き毟っている「起きたんじゃなくて起こされたようなもんですね、眩しいんで閉めてくれません?」「そう言ってまた眠る気であろう、俺の様に日頃早寝早起きを習慣にしていないと立派な攘夷志士になれんぞアル殿」「いつから私が攘夷志士になったのかを聞きたいですね、それとその名前で呼ぶの止めてくれます? 『クウネル・サンダース』という名前で呼んでくれっていつも言ってますよね?」アルの本名は『アルビレオ・イマ』、偽名は『クウネル・サンダース』。魔法使いではあの『サウザンドマスター』とも並ぶ程とも呼ばれる事もある彼は、復活してからは日頃から偽名で名乗っている。どうやら何かと正体を隠さないと色々と敵を呼んでしまうらしい、かつての大戦で多くの敵を討ち倒した彼には多くの敵が存在して、その為のカモフラージュで偽名を使っているのだが、目の前の男はお構いなしに本名の方で呼ぶ時が多い。「フ、名前ぐらい構わんだろ、それに俺と同じ部屋に住んでいる時点でアル殿も俺と同じ志を持つ攘夷志士の一人だ」「何とも素晴らしい解釈ですね、その微笑んでいる顔に一発上級魔法をぶち込んでやりたくなりました」微笑んでいる桂に同じく笑顔で殺気めいた事を言いながらアルは布団から起き上がって、それを丁寧に畳む。「誰かさんのおかげですっかり目が覚めましたよ・・・・・・ところでエリザベスさんはどうしたんですか?」「俺が起きた時にはいなかったな、まあエリザベスの事だ、大方この京都で江戸へ帰れるための情報収集に回っているに違いない、さすがは俺の心の友、誰かとは大違いだ」「それは無いと思いますけどねぇ・・・・・・」桂とエリザベスとも付き合いは結構あるが、アルが見る限りではあの生物は桂が見ていない所で時々粗暴の点を行っている所をアルは時々目撃している。そしてそのエリザベスはというと・・・・・・京都にある開店前のパチンコ店でおっさん達が並ぶ行列にタバコをくわえて新聞を読みながら自然に並んでいるのであった。『新台はチェックしとかなきゃな』そんな事露知れず、桂は部屋に戻っていつもの着物に着替えている「アル殿も早く着替えんか、早くせんと朝食が来るぞ」「アル殿じゃなくてクウネルです、ヅラさん」「ヅラさんじゃない桂だ」着替え始めるアルに、桂がツッコんでいると、いつも朝食を持ってくる使用人ではなく別の訪問者が部屋にやって来た。「桂君おはようございます、それにアルも」「おはよう近衛殿」「アルじゃなくてクウネルです、詠春」「いやせめて昔からの友人なのだから本名ぐらい呼ばせてくれ・・・・・・」昔からの馴染みなのだからせめて自分は本名で呼んでもいいだろと詠春はいつも使う敬語ではなくタメ口で要求するが、ローブを服の上に着ながら首を横に振るアル「“私が”入ってる封印箱をあの人に託されたのに、ずっと放置する人を友人とは呼べませんねぇ」「『開けたらめんどくせぇ事になる』ってあの人が言ってたのでね、悪いが私は面倒な目には御免なのでずっと放置させてもらったまでだ」「あの人もあなたも私の事何だと思ってるんですか? こっちは6年間放置プレイされたんですよ?」「まあ面倒臭い奴だな、あの人も日頃からそう言ってたし」「ハハハハ、それじゃあ私がまるでこの人と同じタイプみたいじゃないですか」「私から見るに両方とも一緒にいて疲れるタイプだよ、君と桂君は・・・・・・」詠春から見れば桂もアルも両方とも何を考えているかさっぱりわからない、空気も読めないし、会話する時も何か少しズレている二人に、詠春は彼等がいなかった時より数倍疲れる事が増えていたのだった。「全く君達はいつも私を・・・・・・」「ところで近衛殿、今日はどのような用事でここに来たのだ? そして朝食はどうしたのだ?」「ああ、朝食は後から持ってこさせますから、相変わらず図々しいですね・・・・・・それより朝早くから桂君に尋ねて来たお客さんが来てますよ」「お客? 誰だその者は?」「小学生ぐらいの子供でしたね、何か用かと使用人が聞いてみたらあなたに用があって来たらしいですよ、それにしても子供の友人とはあなたやっぱり変わってますね・・・・・・屋敷の別の客室で待たせているので早く行ってあげた方がいいですよ」 そう言い残して立ち去って行く詠春を見送った桂は腕を組みながら「ふむ」と縦に頷く「俺と親しい子供と言えばあの少年しかおるまい」「あの子ですか随分と懐かれちゃいましたねぇ、初対面は最悪だったのに」「拳を交えれば友情が生まれるというのはお約束だからな」「どこの熱血ジャンプ漫画のキャラですか、あなた達は」「すいませーん、朝食持ってきました」「おお御苦労であった」「・・・・・・」アルが親指を立ててこちらに決めポーズする桂にツッコんでると二人の使用人が朝食を持ってきた。そそくさとそれを置いて使用人の二人のうち一人は桂を人睨みした後去って行った、恐らく前に桂のせいで爆弾被害にあった使用人の一人だと思われる・・・・・・だがそんな事全く気にせずに桂は朝食の前に座り「いただきます」と丁寧にお辞儀した後、箸を取って食事を開始していた「やはり朝飯は白米と鮭、そして味噌汁に限るな」「しみじみと感想言ってないで待たせて良いんですかあの子?」「まずは飯を食べる事が人間として必要不可決な事だ、少年には悪いがしばらく待っててもらおう、朝からエネルギー補給せんとどうにも頭が働かん」「元から働いてないと思いますけどねその頭、私も食べますか、どちらかというと私はパン派なんですが」口の中に白米と鮭を入れながら器用に喋る桂をしばらく眺めていた後、アルは彼と同じく箸を持って食事を開始して、別の部屋で人を待たせているのにも関わらず二人は呑気に朝食を開始するのであった。食事をやっと終えた桂とアルは、ようやくある場所へ向かう事にした。廊下ですれ違った使用人の一人から聞いて知り合いの少年が待ってる部屋へと歩いて行く。「一体何の用で来たのだろうな、あの少年?」「一人で寂しいから遊びに来たんですよきっと」「なるほど、だが遊びに来るのなら先に連絡をして欲しいと俺は思うぞ、おかげで朝食をゆっくり食べれなかったしな」「そう言ってちゃっかりおかわりしてましたよね、桂さん」「それはお主もだろ」何気ない話をしながら桂とアルが廊下を歩いていると、ようやく少年の待つ部屋の前へと着く。部屋に前に立った桂は障子を開けようと手で取っ手を掴もうとした瞬間。「待たせたな小・・・・・・」「遅いわボケェェェェェェ!!!」「ぐふッ!」いきなり障子を突き破って学校の制服を着たような格好の獣耳の少年がドロップキックで飛んできて桂はその攻撃を顔面にヒット、そのまま後ろに回転しながら壁に頭から当たる。それを普通に避けて何事もなかったように立っているアル「朝から元気ですね小太郎君は」「おのれら何分待たせるねんッ! あまりにも長い間待たされ続けて屋敷の姉ちゃんから貰った和菓子全部食ってもうたやんけッ! おいヅラッ! さっさと起きんかいアホッ!」「ヅラじゃない桂だ・・・・・・少しぐらい遅れただけで腹を立てては立派な侍になれんぞ」「誰が侍になるかッ!」アルに小太郎と呼ばれた随分と乱暴な口調を使う屋敷の中にも関わらず帽子を被っている少年は桂に向かって叫んだ後、部屋へと戻って行く。桂は蹴られた頭を撫でながらゆっくりと立ち上がって部屋に入って行き、それにアルも同乗して一緒に入る。「また断られましたね」「今から頑張れば俺の様に立派な攘夷志士になれるというのに」「攘夷志士の勧誘はお断りって前に言うたやろ」「今なら攘夷志士に入ると特典でエリザベスストラップをプレゼント、更にプレミア会員で入った場合、何とエリザベスの写真がプリントされたTシャツを」「いるかボケェッ!」バナナの叩き売りのように押してくる桂に小太郎はツッコんだ後ドカっと敷かれたサブトンに座り、桂とアルも畳の上で正座する。「それで少年、今日は何しに来たのだ?」「少年じゃなくて俺は犬上小太郎や、名前で呼ばんかい」「俺も名前は小太郎だ」「それがどうかしたんかい・・・・・・?」「自分の名を自分で言うのは恥ずかしいだろ」「そんなん知るかッ! いいから名前で呼べやッ!目の前の結構親しい間柄になっている男が自分の名前を呼ばない理由がそんなどうでもいい事だとわかり、小太郎が大声で怒鳴っているのをアルは涼しい顔で傍観している。アルから見ればこの小太郎という少年はいつも桂とはこんな感じで付き合っているので、別に珍しい風景では無い。「相変わらず仲が良いですね~」「仲良しなわけないやろうが・・・・・・」「じゃあ何でわざわざ自分からここへ来たのですかね小太郎君は」「えと、そりゃあまあ・・・・・・今日はヒマやったからちょっと・・・・・・」「なるほど私の読み通り寂しかったから桂さんに構って欲しかったんですか、小太郎君は可愛いですね~」「こ、こ、こ殺すぞボケコラカスゥゥゥゥ!!」「アハハハ、顔を赤らめる姿もこれまた一段と」「むぐぐぐ・・・・・・・もういいわアホッ!」図星なのか勝手なアルの推測なのかはともかく、小太郎は顔を赤らめて立ち上がり、すぐにでもアルに飛びかかろうとするが、彼の口から出てくる巧みな話術に小太郎は悔しそうに再び座布団に座る。「何でヅラはこんな奴と付き合ってんねん・・・・・・」「ヅラじゃない桂だ、そりゃまあ色々と教えてもらう為にな、“魔法”や“魔法使い”やなどの事はそれで大体わかったのだ、この世界の仕組みも大体近衛殿やアル殿のおかげでわかってきた」「魔法とかそんなんは俺が教えるっちゅーねん・・・・・・」「おやおや私に妬いているんですか小太郎君?」「・・・・・・ええ加減にせんとそのニヤケ面にサマーソルトかますぞコラ」「ハハハハ、すみません思った事をすぐ口に出すタイプでして」笑いながら茶化してくるアルに小太郎はジト目で睨みながら脅すが彼は全然懲りていない様子だ。そんなアルに小太郎はため息をついた後周りを桂の方へと目を戻す。「ところであの珍獣はどこいったんや? いつもお前の傍にくっついとるあの珍獣」「珍獣じゃないエリザベスだ、今頃“俺達”攘夷志士の為に京都の街を探索にいているに違いない、本当に頼りになる男だ」「おい俺達の攘夷志士ってもしかしてそれ俺もカウントされてるんやないやろな・・・・・・?」自分の膝に頬杖をつきながら小太郎が桂に質問すると、彼は自信満々に頷く「当たり前だろ、お主もアル殿も俺の中では同志と既に登録している」「そうか、ならはよう俺の登録抹消させてくれ、誰かさんのおかげで頭痛めてこりゃあ復帰できんわ」「私も心の病のせいで一軍どころか二軍でも活躍できませんので抹消してください後片も無く」「そこまで嫌か攘夷志士になるのに、武士道の欠片もない奴らだな・・・・・・」勝手に一緒に攘夷志士にされてはたまらんと小太郎とアルに拒否られて、桂は面白くなさそうな表情を浮かべながら、着物の懐からいつも持ち歩いているスナック菓子『んまい棒』を取り出してボリボリと食べ始める「お主たちもエリザベスのように働いてくれればな、このんまい棒もエリザベスが俺の為に持ってきてくれたんだぞ、少しは見習えエリザベスを、そして超えてみるのだエリザベスを」「何でアヒルだかペンギンだかわからん生物を見習わなきゃいけないんねん、つかそのんまい棒もどうせあいつがいつも行ってるパチンコ店で貰って来た景品やろ」「パチンコだとッ! エリザベスが俺を置いてそんな所に行くわけないだろうがッ!」「いや結構な量で行く所を見てますよ桂さんがいない所で、私もあの人から貰いましたし、んまい棒」「俺も貰ったな、歩いてたら偶然パチンコ店から出てくる所とバッタリ出会って『食うか?』って貰ったわ、んまい棒」「デタラメ言うな貴様等ァァァァ!! エリザベスが俺の目を盗んでパチンコでフィーバーしているわけなかろうがァァァァ!! 俺はエリザベスを信じるぞッ! あいつは俺と同じ信念をもった侍なのだからなッ!」アルと小太郎が言っているエリザベスの情報に桂は激怒した様子で立ち上がり叫ぶ。桂にとってエリザベスは彼らより遥かに長い付き合いで行動している仲間だ、そんな彼が自分の目を盗んでギャンブルに手を染めているなど考えられるわけが無い所で桂がエリザベスの事を心から信じている頃、当の本人のエリザベスはというと・・・・・・「10番の台に座ってるお客様『CR 花の慶次』の新台で10000個突破~!!」『まだまだ・・・・・・骨の髄まで絞り取ってやるぜ・・・・・・』パチンコ店で見事フィーバーしたのか男の店員にメガホンで祝福されながら、エリザベスはタバコを吸いながらクールにパチンコのレバーを指の無い手で器用に握っていた。そんな事も知らずに桂は呑気にんまい棒を食べながら「エリザベスはパチンコなど行かん」の一点張りでアルと小太郎の言葉にも耳を貸さなかった。頑固な彼に小太郎はハァ~と膝に頬づえを突きながらため息を吐く。「お前ってホンマに変わり者やな~・・・・・・」「何を言う俺より銀時の奴がもっと変わり者だぞ、あそこまでちゃらんぽらんな奴などそうはいまい」「銀時? あ~前に言うとった天然パーマで甘い物が好きで喧嘩好きのヅラの幼馴染か」「ヅラじゃない桂だ」「甘い物好きならウチのナギも負けてませんがね、喧嘩も好きですし」「フッフッフ、銀時の糖分節をナメるなよアル殿、そんじょそこらの甘党とは格が違うのだ」「アルじゃなくてクウネルです」不敵に笑う桂にアルはツッコんでいると彼は静かに幼馴染でありかつての戦友を語り出した「あいつと共に行動していた時は今でも思い出せる・・・・・・・銀時の奴はな、何と白米の上に宇治金時を漬けて食べるのだ」「何やそれキモチ悪ッ! 食えるかいそんなモンッ!」「正直見てるこっちは気持ち悪いのだが、奴はなんの違和感もなくその食い物とは思えないシロモノを平然と食えるのだ」「ああナギも昔白米の上にプリンを入れてかき混ぜて普通に食ってました」「こっちもキモッ!」「ええ、その後詠春に「それは日本の米に対する冒涜だぁぁぁぁ!!」って言われながら彼にパイルドライバーされてましたが」「そんな気持ち悪い物食ってる時点で甘党以前に人としてアウトやろがそいつ等・・・・・・」小太郎は気持ち悪そうな顔をして口で手をおさえる。まさかそんな物を食える悪食が二つの世界に一人ずついるとは思わなかった「そんな奴等が戦争に出て活躍してたなんて信じられんわ・・・・・・確か銀時の方が『白夜叉』で、ナギが『サウザンドマスター』って呼ばれてたんやろ?」「銀時の場合は昔の話だがな、俺達は戦に負けた、その名を覚える者も極少数だし扱いも反逆者扱いであろう、それに引き替えそっちの男は民衆から英雄扱いだからな」「今なお語り継がれてますからね、まあ当の本人は何処行ったかみんなわかりませんが・・・・・・」それを聞いて小太郎は鼻の頭を掻きながらサウザンドマスターの最後の経歴を思い出した「ああ、確かずっと前に死んだって聞いたで俺は」「死ぬわけないでしょあのナギですよ?」「あのナギって言われてもわからんわ・・・・・・俺会った事無いんやで・・・・・・」「『バカは死んでも治らない』を自分自身で提唱した天才ですよ」「それやったらお前等も天才に入るやないか、凄いわホンマ」「何言ってるんですか私はナギほどバカではありません、ねえ桂さん」「俺も銀時ほどバカではない、常識と言う物を持ち合わせているからな俺達は」「いやいや安心せい、両方とも俺が見る限り逸材のバカやから、銀時だかナギだかに十分匹敵するでホンマ」自分自身のバカさに気付いていない様子で桂とアルは自分達は正常だと断言するが、小太郎から見れば彼等が話す友も“話してる本人”も少なくともまともな人種では無い事が確かだった。「お前等みたいなバカと会って結構経ってるんやな・・・・・・俺もよくお前等に付き合えたわ」「最初は色々会ったが今ではこうやって世間話出来る仲だ、これからも人生の先輩である俺に色々と話を聞くがいい」「何が人生の先輩・・・・・・・あ」小太郎は急に思い出したように口をポカンと開けたのでアルがそれに気付いて顔を向ける。「どうしたんですか? そんなアホ顔して」「年中アホ面のお前に言われとうないわい・・・・・・悪いけど用事思い出したわ」「何だもう帰るのか?」「いや“知り合いの人”の話聞きに行くだけや、数時間後にはすぐ戻ってくるさかい」「ふむ、ではお主が帰ってきたら近衛殿にもう一人分昼飯か晩飯の用意をしてもらうとするか」「べ、別にええってッ! 何でお前等と仲良くメシ食わなあかんねんッ!」「とか言って本当は嬉しいんじゃないですか? フフフ」面白そうな表情でアルが再び小太郎を茶化してくる、そんな彼に小太郎は顔を少し赤らめてキッと睨む「ヅ、ヅラはともかくお前とは絶対メシ食わんからなッ!」「邪魔者の私がいなければ桂さんとゆっくり出来ますものね」「そういう意味やないわッ! もうええわッ!! お前はホンマ死ねッ!」茶化してくるアルに小太郎は顔を赤らめながら立ち上がって部屋から逃げるように走り去って行った。その後ろ姿を桂は眺めながら隣にいるアルに喋り出す「あの少年は随分と忙しいのだな」「そうですね、まあすぐ戻ってくるらしいですからいいじゃないですか、からかいがいのある子供は好きです、フフフ」「そういえば前から聞きたかったのだが」「何です急に突然?」「お主やあの少年は何で俺やエリザベスみたいな別世界から来た余所者と付き合うのだ? 何の得があるわけでもないのに」「ハハハ、そんな事ですか」急に桂からの質問にアルは思わず笑ってしまう、彼は桂に向かって口元に笑みを浮かべながら答える「小太郎君も私もあなたといると楽しいからに決まってるでしょ」「それだけか?」「それだけで十分ですよ、私もあなたの昔の友人の話を聞くと・・・・・・つい彼といた時期を思い出しましてね・・・・・・」かつて共に行動していた仲間を思い浮かべながら少しアルは懐かしさを感じる。窓から見える空を眺めながらアルは随分と昔の筈なのに昨日の用に覚えてる彼との数多くのバカ騒ぎの一つを思い出していた。あれはとある昔のとある世界の小さなスナックの出来事「おいアル、お前もっと飲めって、んなチョビチョビ飲んでたら見てるこっちが酔いが醒めるわ」「私は結構ですよ、それにしてもここお客さん私達しかいませんね」「潰れるんじゃねえかこの店? まあこんなババァしかいねえ店なんて俺達ぐらいしか来ねえよ」「誰がババァだい殺すよトリ頭、戦争中の時に夜中ノコノコ飲みに来るバカなんてお前等しかいないんだよ」小さなスナックの中で、今の見た目と変わらないアルと一緒にいるのは、『サウザンドマスター』と呼ばれ世界を救った英雄ナギ・スプリングフィールド、そして店のママだと思われる中年の女性がタバコを吸いながら店の者とは思えない口振りで話しかけてきた「攘夷志士と天人が戦争おっ始めてる時に、あんた等はこんな所で呑気に酒飲んで何やってんだかねぇ」「私達“余所者”がここの戦争に首突っ込めませんよ、ねえナギ」「おいババァ、パフェくれ、糖分無えとイライラすんだよ」「人の話無視して糖分補給ですかあなたは」アルの話を無視してナギはスナックのママに注文する。だが彼女は口からタバコの煙を吐きながら不機嫌そうな顔を浮かべる「あんた私がパフェ出す前にあんたも何か私に出すモン無いのかい?」「え、何?」「とぼけるんじゃないよ、二階に住ませてやってるのに溜まった家賃持ってこないってどういう事だいこりゃあ」「あ~その話・・・・・・・」「身分証もないあんた達をこのかぶき町で住む事が出来るのは誰のおかげだい?」「い、いや待ってくれよッ! 俺だって頑張って稼いでんだよッ!? だけど収入がさ~」ずいと身を乗り出して威圧感を漂わすスナックのママにナギは気まずそうに頬を引きつらせながら言い訳を言う、だが彼女には全く通用しない。「腎臓とキンタマなら二つあるんだから一個ぐらい売ってくるんだね、そしたら金が出来るじゃないか」「おいッ! 腎臓はともかくキンタマは売れるわけねえだろッ! キンタマは男の象徴だぞッ!」「大丈夫ですよ一個だけになったら私の一個上げますから」「お前は気持ち悪い事言ってんじゃねえよッ!」笑顔で何言ってるんだコイツとナギがアルにツッコんでいるとスナックのママがギロっとナギを睨みつける。その目からでる威圧に思わずサウザンドマスターと呼ばれる彼も血の気が引いてしまった「で? 家賃を払う手段は見つかったのかい・・・・・・?」「んにゃろ~しょうがねえな~・・・・・・お、良い事思いついたッ!」「なんだい、まあどうせロクな事じゃないだろうがね」「いやこれは我ながら良いアイディアだと思うよ、ババァちょっと聞け」名案を閃いたらしくナギは身を乗り出してしかめっ面のスナックのママに口を開いた。「俺のカミさんここで働かすってのはどうよ?」「・・・・・・あんた何考えてるんだい?」「いいかババァ、こんなさびれたスナックに来る客なんてたかがしれてるだろ? だったら俺のカミさんここで働かせればいいじゃねえか、言っとくけどウチのカミさん結構な上物だよ? もう客バンバン来るよ? あ、お触りは無しだから」「・・・・・・じゃあ直接本人に聞いてみようじゃないか」「へ?」「そこにいるんだろ、入ってきな」スナックのママが言う事にキョトンとするナギを尻目に、店の入り口からガラガラと戸が開く音が聞こえた。彼がそちらに振り向くとそこには「・・・・・・い、いつからそこにおられたのですか姫さま・・・・・・」思わず頬を引きつらして敬語を使ってしまうナギ、そこにいたのはこの世界の女性のほとんどが着る着物を身にまとって、このかぶき町でも珍しい長い金髪の美女の姿が腕を組んで立っていたのだが、体中から何やら黒いオーラを発している。「お主が何処にいるか聞こうとここに入ろうと思った時にちょうど聞こえてきての、お主がわらわを身売りしようとしている所をここで聞かせてもらったのじゃ」「あらら~一番タイミングの悪い時に来られちゃいましたねナギ」「嬉しそうだなアル君~、『バイオ3』でいきなり追跡者が窓から飛び出してきたぐらい俺の心臓がバックンバックンいってるのによ~・・・・・・・」「ナギの災難を見るのが私の好きな物の一つなので」「それどういう意味だコラ・・・・・・イデッ!」アルが言った事にナギがジト目で睨んでいると後ろから急に髪の毛を引っ張られた。無論引っ張っているのはさっき来た女性だ。「このたわけが、一国の元王女を家賃払えぬからと身売りするとは何事じゃ」「イデデデッ! 別に良いだろうがッ! 旦那が仕事してるならカミさんも仕事するってのも新しい夫婦の形だと思うよ俺はッ!」「何が仕事してるじゃ、万事屋と言ってもロクに仕事も来ないではないか、お主などその辺のプータローとそんな変わらんぞ」「それ言いすぎじゃねッ!? 一応俺頑張ってるんだよッ! なあアルッ!」「三日前にパチンコ行ってましたね」「オイィィィィィ!!」 「いい心がけじゃな」「アダダダダダダダッ!! 抜ける抜けるッ! それ以上引っ張ると俺禿げるッ! この年でまだ禿げたくないッ!」余計な事言ってしまったアルによって彼女が髪を引っ張る力が増しナギが悲鳴のような叫び声を上げる、英雄とは程遠い姿だ。しばらくしてやっと髪を引っ張るのを彼女が止めてくれて、ナギが頭をおさえながらフゥ~とため息をついてると、さっきまで黙って見ていたスナックのママが彼等の方に目を向ける「それで溜まった家賃はどうするんだい?」「安心しろお登勢、ここで働いて返す」「え、てことは姫さんここで働いてくれるの? いや~助かるわ本当」「勘違いするな、ここで働くのはお主じゃナギ」「・・・・・・へ?」突然の事にナギは目をパチクリさせてると彼女はスナックのママと話を進め始める「どうせこ奴は仕事が来ない日はヒマなのじゃ、ここで女装でもさせて働かせればいいじゃろ」「はッ!? 女装ッ!?」「まあ確かにこいつはツラ“だけ”はマシだからねぇ、案外似合うかもしれないね」「ふざけんじゃねえよッ! 俺が女装ッ!? 女装させるならコイツの方が適任だろッ!」「私は別にあなた達と一緒に生活してるわけじゃないのでここで働く必要無いでしょ」「決まりじゃな、家賃の滞納分ここでキッチリと働くのじゃぞナギ。お登勢、こ奴をヒーヒー言わせるぐらいコキ使ってやってくれ」 「言われなくてもそうするつもりさね」「話し進めてんじゃねえよッ! 嫌だァァァァァ!!! 女装とか絶対やりたくねぇぇぇぇ!!」「たまに遊びに来ますよナギ子」「変な名前で呼ぶんじゃねえよボケェェェェェ!!!!」何やら楽しくなってきたとアルが頭をおさえて懸命に女性二人に訴えてるナギに止めの一言。その言葉にキレたナギは席に座ってるアルに飛び膝蹴りをかました「いや~あの時は本当面白かったですね~フフフ」「どうかしたのかアル殿」「アルじゃなくてクウネルです、いえ少し思い出し笑いをね・・・・・・」かつての仲間を思い出していたアルは思わず口から笑いが漏れてしまう。もう何年も彼とは会っていない、今頃何処で何をしているのだろうか・・・・・・(まああの人の事だからいつもの様にヘラヘラしながらひょっこり出てくるかもしれませんね・・・・・・)「アル殿、お主にんまい棒を分けてやろう、エリザベスからの餞別をプレゼント」「アルじゃなくてクウ・・・・・・・もうめんどくさいからあなたは特別に名前で呼んでいいですよ・・・・・・いただきます」何回訂正しても言う気が無い桂に、アルは呆れながら仕方なく彼が自分の本名で言う事を承諾して、彼が持ってるんまい棒を受け取って二人で黙々と食っていた「あなたが言っていた銀時って人も話を聞く限りナギの様にどうしようもないダメ人間だったんでしょうね」「普段から俺以上に掴みどころのない奴でな、性格も悪いし無鉄砲なひねくれ者のあまのじゃく、やる事なす事めちゃくちゃな男だ、だが・・・・・・」そこで一旦桂は話しを止め、んまい棒を食べるのも止めて、アルに微笑んだ表情を見せる「俺はあいつと共に戦えたのを誇りに思う」「フフ、私がナギの事を思ってる感情と同じですね」太陽が昇ってくる空を背に桂とアルは、口に笑みを浮かべたまま持っているんまい棒を同時のタイミングでほおばり始めた。一方エリザベスはと言うと『桂さんのお土産いっぱい手に入れたな』右手にボードを持って、左手には大きな紙袋を持ちながらズンズンと京都の中を歩いて行く。どうやらあのままパチンコで大勝ちしてしまったようだ。意気揚々と帰路に付いているとドンとエリザベスの右手に通行人の一人がぶつかった。「あ、すんませんジャンプに夢中になってました」『気にすんなや』ジャンプで顔を隠すようにペコリと一礼する男にエリザベスは全く気にせずにそのまま歩き去ろうとする。だが後ろからボソリとその男の声「へ~あんた攘夷志士の桂小太郎の所のペットだよな?」『何・・・・・・?』「いやはやこんな所で会えるとは思わなんだ、もしかして例の転送装置でここに飛ばされちまったのか? じつは俺もそうなんだよね、まあ俺は「もしかして別世界ってジャンプの世界なんじゃね?」と興味本位で盗んでこんな所に飛ばされちまってな、お互い苦労するよなこんな所で」男は振り向かずにジャンプのページをめくりながら立ち話をする、そんな彼にエリザベスは警戒態勢に入っている、こんな身なりでも彼も桂を慕う立派な攘夷志士の一人だ。だが男はゆったりとした口調でこちらに顔を見せずに喋る「近々この京都で俺の雇い主が色々と派手なイベント起こすらしい、あんた等はここから逃げた方が良いぜ、関係無えんだからよこの世界とは」『派手なイベント?』「同じ世界のよしみとして忠告はしたぜ、じゃあちょいと雇い主に呼ばれてるんで失敬、ハァ~雇い主が醜女だったらよかったのにな・・・・・・・よりにもよってべっぴんさんってのが辛いんだよな・・・・・・・」男はため息をつきながらジャンプを読みながら京都の群衆の中へと消えて行く、それを呆然とエリザベスは目で追うもすぐに見えなくなってしまった。しばらくそこでつっ立っていたエリザベスはすぐにクルッと回って急いで桂達のいる屋敷へと走って行く『コレは桂さんに伝えた方がいいな』ただ普通にパチンコやりにきただけだったのに、思いもよらぬ情報を手に入れたエリザベスは桂に教える為に駆けていく。これで桂小太郎、坂本辰馬、高杉晋助、そしてもう一人・・・・・・・四つの絆が繋がるのも遠い事では無い教えて銀八先生銀八「一通目q-tureさんの質問」銀さんに質問です。秋と言えば芸術の秋ですが、GSの皆さんは学園長でどんなリンt…もといアートをしていますか?ちなみに自分の最新作は『吊るされた学園長』です銀八「え~『ゴミ箱に頭からダストシュートされてるジジィ』みたいな?」学園長「それアートじゃなくて実話じゃね?」千雨「そんな事まだされてるんだアンタ・・・・・・」銀八「二通目剣聖さんの質問」質問。ネギがアスナの布団に潜り込んでるのは、アスナがおねぇちゃんに似てる(姿やにおい)ためなんですか?ネギ「まあ“見た目”は似てるのでついうっかり・・・・・・」アスナ「何で見た目の所を強調すんのよ」ネギ「あくまで見た目だけですから、中身は全くの別物ですので、格が違います」アスナ「それどういう意味かじっくり教えてくれませんネギ先生・・・・・・?」ネギ「なんでいきなり敬語なんですか・・・・・・恐いんですけど・・・・・・」銀八「三通目ウィルさんの質問」今回は茶々丸にです。何気に銀さん達と一緒に行動してると思いますが、茶々丸から見てエヴァ、千雨、いいんちょの3名は楽しそうですか?本人達からの証言は色々と出揃ってるので、第三者から見た意見を聞いてみたいと思いました。茶々丸「仲が悪いわけではなさそうですが、良いわけでもありません、マスターとあやかさんも喧嘩ばっかしてますし、千雨さんと銀時様も時々口喧嘩します」銀八「初代ツッコミメガネの新八はパシリ的な存在だったのに、ここのツッコミメガネはやたらと口出しするのが多いんだよな~」エヴァ「そんな奴さっさとクビにしてしまえ」新八「はいは~いッ! 後釜は是非僕にッ!」エヴァ「・・・・・・消えろ・・・・・・」新八「あれ・・・・・・何で僕ってこんなにネギまキャラにめちゃくちゃ嫌われてるんでしょうか・・・・・・・この子に関してはもう僕の事ゴミを見るような目なんですけど・・・・・・・何か泣きたくなるんですけど・・・・・・」銀八「まあ頑張れよとしか俺は言えないね」銀八「四通目サハリンさんからの質問」木乃香に質問どうして、GS組織を設立したんですか?木乃香「面白そうやったから~」銀八「最近お前が恐くなってきた」刹那「お嬢様の何処か恐いというんだ白夜叉、こんな純粋無垢な笑顔に何処から恐怖が湧いてくるというのだ、むしろ・・・・・・・も、萌え的な何かが・・・・・・・」千雨「お前もう本当ダメダメだな」銀八「五通目とびかげさんの質問」ぬらりひょんよ、そろそろ正体見せてもいいんじゃないか?学園長「へ? どういう意味?」銀八「え、それ以上気持ち悪い物に変形できるのお前?」学園長「どういう意味じゃそれッ!?」エヴァ「汚物以下の存在からどこまで下に変形できるか見てみたいな」学園長「しかもパワーダウン・・・・・・・ていうかわし汚物以下ッ!?」銀八「おいおい、ウ○コと対極の存在になれると思ってたのかジジィ?」学園長「ワシウ○コ以下ッ!?」銀八「六通目正宗の胃袋さんの質問」変態ぬらりひょんに質問第二十六訓の質問コーナーで幻想郷にいる楽園の巫女である博麗霊夢の事よく知ってましたね。もしかして幻想郷に迷い込んで妖怪と間違われて殺されかけたんですか?学園長「・・・・・・」銀八「おい珍しく何で何も言わねえんだ?」学園長「だってあいつ等容赦無いんだもん・・・・・・」銀八「事実かよッ!」銀八「七通目星さんの質問」銀さんに質問です。学園長を始末することになった場合はどう処理しますか?以前海に捨てると海が汚れるとか言ってたので海に捨てるのは駄目ですし燃やすと大気汚染されそうですからやっぱり埋め立てとかですか?埋めても影響が出そうですね・・・・・・銀八「う~ん・・・・・・・どうっすっかな~・・・・・・・」ザジ「・・・・・・・・・・」銀八「あ~カーズ見たいに宇宙にぶっ飛ばせばいいのか、そうすれば地球にはなんも支障は無えな、相変わらず名案を思いつくなお前」ザジ「・・・・・・・・・・」銀八「おい、いくらあのジジィでもさすがにそれは酷過ぎじゃねえか・・・・・・・?」学園長「その子何て言ったのッ!?」銀八「八通目蜻蛉さんの質問」最大のモテ期な近藤さんに質問です。せっかくリアル告白があったのだからもちろん受けるんですよね?近藤「はぁぁぁぁいッ! どうもモテ期の近藤勲でぇぇぇぇすッ!! 予定としては万事屋ぐらいヒロイン欲しいでぇぇぇぇすッ! いや~あれは多分あの子の冗談だからさ、それを真に受ける程さすがに俺はバカではないよ、なあ?」夕映「・・・・・・・・・・・」近藤「あれ・・・・・・・何で否定しないのかな・・・・・・・・?」夕映「子供は何人欲しいですか?」近藤「あれェェェェェェ!? 何か一人の無垢な乙女の脳内で恐ろしいビジョンがッ! 違うよねッ! あれ冗談で言ったんだよねッ!? 答えて夕映っちィィィィィィ!!!」銀八「次の質問行ってみよ~」近藤「待って万事屋ァァァァァ!! この問題は早急に対処しないと何かマズイ気がするってェェェェェ!!!」銀八「ゴリラはほっといて、九通目風の都さんの質問」まき絵ちゃんへ「学校に行くのが嫌だ」と思ったことはありますか?特に銀さんが来てから以降まき絵「毎日です・・・・・・」銀八「どういう事だ? もしかしてアレか? いつもジャンプ買いにパシらせてる事か? 答えを言う所を八割の確率でお前を指名する事か? それとも毎朝校門で俺がクーフェイに勝負仕掛けられるからお前を身代りにする事か?」まき絵「全部だよ先生・・・・・・」山崎「大丈夫だよ、俺も上司に大体そんな扱いされてるから、最近なんか自分よりずっと年下の女子生徒にもパシられてるから・・・・・・・・」まき絵「そんな哀しい励まし方止めてッ! こっちも泣きたくなるからッ!」銀八「十通目オレの「自動追尾弾」さんの質問」銀さんに質問千雨→金丸くんエヴァ→定春いいんちょ→神楽龍宮→さっちゃんチャチャゼロ→キャサリンというポジションですが、茶々丸、ネギ、明日菜、カモ、このかはどのポジションですか?銀八「茶々丸はたまです、ネギはまだですが最終的にはこのキャラみたいな感じに近づくんじゃね?っていうのが決まってます、バカレッドも同様です、木乃香は志村妙を七割削った感じです、あくまで作者のイメージですので読者は気にしなくて大丈夫です」カモ「銀の旦那、銀の旦那、俺っちは?」銀八「お前はお前その者だよ、つうか作者が決めてない」カモ「それはそれで悲しいんすけど・・・・・」新八「ていうか何であそこ金丸君ポジになってるんですかッ!? あそこ絶対僕ですよねッ!? そうですよねッ!?」銀八「まあ頑張れよとしか俺は言えないね」新八「それさっき聞いたわボケェェェェェ!!!」銀八「十一通目白夜叉さんの質問」銀さんに質問。最近、小説を書いているときに、大体の話の流れは決めているのですがキャラのセリフが思いつきません。そんな時、カイバーマンさんはどのようにセリフを思いつくのでしょうか?銀さん、ご存知でしたらお教え下さい。ご本人に直接お伺いを立てるのは気が引けるものですから銀八「セリフが出なかったら、諦めて展開を変えて書き直す、これが作者の手口です」千雨「そのせいでここまで来るのにめちゃくちゃ展開変わったよな・・・・・・」銀八「まき絵は初登場した瞬間死ぬ予定だったからな」まき絵「ウソォォォォォォォ!?」千雨「そんな展開なわけねえだろうがッ! お前も真に受けんなッ!」銀八「十二通目はきさんの質問」ネカネさんに質問モジャ頭はどのように処刑するか考えてますか?具体的に教えてください。ジャンプ作品の1シーンとかで例えたりもありでお願いします。ネカネ「ナルトの大玉螺旋丸で塵残さず消し飛んで欲しいわ」ネギ「僕はジョルノのゴールド・E・レクイエムの能力で無限の死に追いやった方が良いと思うよお姉ちゃん」ネカネ「そうね、楽に死なせずに永遠に死んでもらうのもいいかもしれないわね」坂本「アハハハ・・・・・・今考えれば死亡フラグが一番立ってるのってもしかしてわし・・・・・・?」銀八「十三通目エンジンさんの質問」ネギと明日菜に質問。ジャンプのトップ3(ワンパーク・ベルト・プリーチ)の中でどれが「誰にでも勧められる」面白い漫画だと思いますか?アスナ「プリーチ」ネギ「いや普通に考えてワンパークでしょ? 王道の中の王道ですし、それにプリーチって無駄に大ゴマばっか使うからワンパークやベルトより全然話し進まないんですよ?」アスナ「うっさいわね、迫力ある大ゴマの魅力がわからないガキは打ち切りになりそうなジャンプ漫画読んでなさい、話しめっちゃ進むから」ネギ「いやそういう事言っちゃダメですってッ!」銀八「十四通目一揆さんの質問」3-Aと銀時に質問近右衛門は人類として認めれないが、いったいあれは何類に属するのでしょうか?銀八「地球には存在しない筈の生き物なのでわかりませんが、恐らくエイリアン系の種類に属すると思われます」学園長「エイリアンじゃねえつってんだろッ! お前も本当しつこいのッ! もうすぐ最終章なんじゃから少しはわしに優しくしろッ!」銀八「ジジィよく考えてみろ、もうすぐ最終章なのに原作ではサブレギュラー的な男が一話も出てないんだぞ、向こうとお前どっちの扱いがマシだ?」学園長「あ・・・・・・・そうじゃった・・・・・・彼よりワシはまだマシか・・・・・・」銀八「いくら酷い事言われようがな、読者に忘れ去られてるアイツよりはお前はまだマシだよ」学園長「そうじゃな・・・・・・あの男の・・・・・・・あれ誰じゃったけ?」銀八「・・・・・・俺も忘れちゃった」次回、第二十九訓『修学旅行が始める前ってめちゃくちゃテンション上がるよね?』へ続く