初出2009/03/09 以後修正
─第7話─
修学旅行準備編その1。新たなる出会い。
──────
……とりあえず。まさか俺の二人部屋一人在住がこんな伏線になっていたとは、正直予測していなかったヨ。
「ふん。狭い部屋だな」
「だったら自分の家に帰れ」
「ったく。なんだ。飲み物くらい用意していないのか」
「勝手に冷蔵庫開けないでください」
「なんだ、いかがわしい本とかないのか」
それはポケットの中にしまってあります。
「殺風景な部屋だな」
「それはお前の従者が暴れまわったせいだ」
本当はもっとボロボロだったんだぞ。『復元光線』で直さなきゃ家具がないレベルで。
まあ。持ち運べる物はポケットに放りこんである。というのもあるけど。
「ふん。知るか!」
冷蔵庫を開け、ベッドの下の本を探し、部屋に文句をつけた金髪の美少年。
今日、俺のクラスに転校してきた転校生。
「今日から私の住む部屋に、文句をつけてなにが悪いというんだ」
うん。転校生のエド・マグダエルと名乗った、魔法で男に変装した幼女が、俺のルームメイトになったんだ。
こんなの予測できるかあぁぁぁぁあ!!
ふー。いやいや。ちょっと待て。
とりあえず頭を冷やそう。
こんな時こそビークール。格言にあるじゃないか。KOOLになれって。
現状でも確認しながら、頭を冷やそう。
冷静に。冷静に。な?
まず。
幼女こと真祖の吸血鬼に『コピーロボット』を渡しました。
ネギに『サウザンドマスター』の情報を聞かせるためです(『タイム風呂敷』は失敗)
いくらなんでもそれでどうにかなるなんて思ってはいなかったのが本音です。
そしたら幼女、見事呪いの身代わりを立てる事に成功。
彼女は『コピーロボット』にほとんどの呪いをおっかぶせて、ロボが学業していれば自由に学園の外に出られるようになったし、ある程度の魔力も取り戻しました。
なので、俺に復讐するため。俺に嫌がらせするため、俺のクラスに転入して、しかも俺の住んでいる男子寮にも入寮してきました。
名前はエド・マグダエル。お前隠す気ないだろって感じな偽名です。
俺への嫌がらせのためにここまでしやがりました。
現状確認終了。
……ありえん。
『自由になった』から『なので』のつながりが理解できません。
幼女よ。そこまで俺が嫌いなのか。
そこまでやるのかお前は。
そこまで俺が嫌いか!
俺もお前なんてきらいだ!
大体自由になったんだからコピーを置いて一人で旅立てばいいじゃねーか!
いや、旅立たれても修学旅行編困るが。
すっげー困るが。
いやむしろコピーが原作再現してくれるかもしれんが。
それならそれでいいが確定してくれないと俺の心が持ちませんが!
……あとで絶対この幼女泣かそうと思います。
「いちいちうるさい奴だな。さすがに夜寝る時は帰るさ。こんな狭いところで貴様なんぞと寝ていられるか」
「ならさっさと帰れ。なんなら俺が送り返すぞ」
『どこでもドア』とかで。
「その点は無用だ。このあたりでいいな」
……うん。簡単に言うと、こいつ俺の部屋と自分の家を『ゲート』とかいうのでつなごうとしやがった。
ちょっ、やめ!
俺の部屋にそういう事するな!
誰が感知するわからねーだろ!
「ふん。バレるようなまねはしない」
そうかもしれないけどよー。
いや、ちょっと待て。
俺様の頭に一つのプランがきらめいた!
「なら、ちょっと待て。お前の家でいいんだな?」
「……なにをする気だ?」
「いいから見てろ」
『ワープペン~』
てけれてってて~。
好きな場所の名前を言いながら壁面などに円を描くと、『どこでもドア』と同じようにその場所と行き来出来るようになる。
一見するとただの落書きのようだが、小さな円なら手を突っ込んで品物のやりとりなどをすることができるし、大きな円なら人がくぐってその場所へ行き来することもできる。
なにより魔力を使ってないから魔法使いにはまずバレないハズ!
「また、出鱈目な物を……」
説明を聞いた幼女があきれているが無視。
これを使って、幼女の家と俺の部屋をつなぐ。ちなみに出入り口はポスター。不要な時は片づけておけるし、いざとなったら侵入不可能にしやすいから。
ふふ。真の目的が一番最後の幼女宅からの無断侵入を防ぐため。とは奴も思うまい。
「これは便利だな。はがれないようにちゃんと固定しておかねばなるまい」
バレテーラー。
「ちっ」
「貴様の考えなどお見通しだ」
観念したのでおとなしく空間をつなぐ。魔法とか使って入ってくんなよ。来るならこれ使えよ。来る時はノックしろよ。
「きゅきゅっと完成。そんなわけだ。さ、帰れ。そして二度と来るな」
「うわ、腹の立つ笑顔だ」
お前だって同じ笑顔を教室でしてたよ。
しぶしぶながらも、幼女。いや、今は幼女じゃない。ええいややこしい。中身幼女をポスターに押しこもうとする。
「ああ、そうだ」
「なんだよ」
「明日エド用の物を買いに行く。つきあえ」
ぴきっ。
なんかむかつく。
「お子様だから荷物持ちに案内役に保護者が必要なんですね。わかります」
ぴきっ。
相手も同だ。
「ふん。ありがたく思えよ。この私をエスコートできるなんて、100年に一人いるかどうかだ」
他に見物している者がいたら、この瞬間周囲の空気がゆがんでいるようにも見えただろう。
「ま、しゃーないな」
だが、俺はその空気をあっさりと放棄する。
「む?」
怒りの空気が霧散したからか、拍子抜けしたような表情をエドは見せる。
「その姿じゃ茶々丸さん連れて行くわけにも行かないだろうし、魔法も使うわけにもいかないんだろ? せっかく外に出られるようになったんだもんな。案内くらいはしてやるよ。よろこべ?」
本音は喧嘩はしたくありません。許してください吸血鬼様。なんだが。魔力が戻ったこいつに不意打ちなんてされたらひとたまりもありませんよ。
「なっ!? ば、馬鹿! このバーカ!」
なんか知らないが、馬鹿呼ばわりされました。
さっさと引っ込んでいきました。
引っ込んだ後、待ち合わせ場所と書かれた紙がこっちに放り込まれてきました。
「……なんやねん」
ホントに幼女の考えはようわからんわ~。
……あ、誤って誰か入ってしまわないようにクリアケースかぶせとこ(パカパカ開くように上だけ固定)
──────
……なんでだ?
一応だが、ルームメイトであるはずなのに。
一応だが、直通の通路が作ってあるはずなのに。
なんで、わざわざ外に出て、他の場所で待ち合わせなんてしているんでしょうね。
面倒なので直接迎えに行こうとしたら向こう側の入り口をバリケードでふさがれてましたよ。
「ココハ通行止メダゼ」
ってチャチャゼロに言われた。
なんでやん。
『どこでもドア』とかで襲撃かけてもいいけど、大人げないから、素直に待ち合わせの場所で待っている事にしましたヨ。
機嫌を損ねるのが怖いわけじゃないからね! 幼女の事を立ててやっただけだからね!
勘違いしないでよ!
……
うん。まあ、予想通り、遅刻ですねあの中身幼女。
やっぱりいつか泣かすしかないね。
俺心優しい(ヘタレ)からやらないけど。
突然だが。彼が『本気』で彼女と関わらないようにしたいのなら、それはすでに実現が可能だろう。
だが、すでに何度か関わってしまい、少し彼女に対し情が出てきている。
それにより、彼が『本気』の手段をとりにくくなっているのである。
これは、育ててもらった覚えもない両親を敬っている事と同じ。
『ネギま』という物語と無関係ならば、悲劇を背負った彼女に対し、もっと親身になっていただろう。
結局、関わりはじめたら、見捨てる事は出来ないのだ。
つまり彼はそんな損する性格なのであった。
あの遅刻中身幼女を待っていると、ガラの悪い数人の男が、嫌がる女の子を路地裏に連れこむのが見えた。
……なんか、漫画でしか見た事ないような状況を発見しましたヨ。
分析かーいし!
女の子は原作キャラ。というかネギのクラスの子じゃない。
見た感じモブ!
つまり、原作と関係のない子!
しかし、意外とかわいかった。
なにより、原作キャラじゃなかった!!
大事な事なので、2回言いました。
なら、遠慮なく助けに行こう。
『ネギま』ストーリーと関係ないなら、ハッスルできるしな。
一般人相手ならば、助けて、ひょっとすると、LOVEなんかが目覚めちゃったりしちゃったりして!
ポケットから一本の黒いベルト。『ブラックベルト』を取り出し、気合を入れてベルトの上からまく。
ちなみにベルトは出したシャツに隠れるから見えないのでヨロシクだ。
そして、路地に入っていった。
「数人で女の子囲むなんて恥ずかしいと思わないか?」
「んだとテメェ! ヒーロー気取りかよ!」
「さあ。ここは俺に任せて、君は逃げなさい」
「は、はい! すぐに、助けを呼んできますから!!」
「あ、テメェ! いきなりなにしやがんだ!」
「ふっ、クズが吼えよるわ」
2度目だけど、相手が弱いと思うと、俺、強気になるんだ。
ガラの悪い男達は全員がいっせいに襲い掛かってきた。
その数はなんと1ダース!!
……いすぎだろ。
うおー。ちょっとこえー。だが、信じているぜ未来道具!
『ブラックベルト』
こいつは身につけると柔道の達人になれるベルトだ。ただし、触れたもの全員をぶん投げてしまう欠点付きだが。
つまりは、投げたくない人には触れなければいいだけの話。
少女はすでに逃がした。よってここにいる彼等は、全部ぶん投げOK!
俺は、一瞬で全員を投げ飛ばした。
身近にいたものをそのまま投げ。
殴ってきたものはその腕をつかんで。
蹴ってきたものはその足をつかんで。
同時に来てもなんのその。
俺に触れようとするものはすべてをその威力そのままに投げ飛ばす。
俺に触れようとしたものすべてが、俺に触れる前に投げられ、すっ飛んでゆく。
ナイフを取り出した奴なんてもうセガールばりに激しく投げ飛ばしたよ。
ぐるんぐるん回ってたよ。
ちなみに触れられても投げるから、拳が俺に当たった瞬間相手が吹っ飛んでるなんて事もある。俺ノーダメージ。
崩れた体勢からも、平然と投げるとかとんでもないよ。
一陣の風が吹いて、立っているのは俺一人。
お……
俺。
俺TUEEEEEEE!
背中を激しく打ちつけ、悶える男達。
なにが起きたのかもわからず、マトモに息も出来ず、激しく苦しそう。
全員しばらくは動く事も出来ないようだ。
そんなにおびえたような目で見るなよ。
俺が強いんじゃない。未来道具がスゲェんだぜ!!
「相手が悪かったな。これに懲りたら大人しくしていろよ」
去る時のポーズは響鬼のポーズ! しゅっ!
長くいて顔を覚えられても困るしね。
さっさとスタコラサッサだぜ。
しかしすげーなこの『ブラックベルト』。もうなんというか、柔道というかスーパー柔道って感じ。
殴ろうとした相手の力そのまま利用して放り投げるとかさ。本当にこれ柔道か? むしろ合気とか投げ技版セガールと言っても差し支えない。
絶対設計思想間違ってる。
まいっか。
さーて、ベルトをはずして……はずして……あれ? 気合入れてきつく結びすぎたかな。
「あっちです!」
おや、どうやら助けたお嬢さんが駆け寄ってきているようだヨ。
でも駄目だよお嬢さん。今の俺に飛びついたりしたらぶん投げちまう。もうちょーっと待ってなヨ。
「お願いします。助けてください!」
「「「おう!!」」」
……は?
なんか、すげー野太い男達の声が聞こえたよ。しかもたくさん。
ふとベルトに注目するのをやめて、そっちを見る。
そこには……
なんかすげーごつい男達が100人くらい走ってきているのが見えました。
ちょっ! 知ってる! こいつら知ってるヨ!!
カンフー少女と100人抜きされる男達だよぉー!?
「女性を助けるために単身残った少年を助けるのだー!」
ああ。そっか。俺を助けに来てくれたのね。
本当に助けを呼んで来てくれたのね。
男津波には驚いたけど、俺への援軍なのね。
「あ……」
あ、少女が俺に気づいた。
うん。そうね。あんなに人数いたのに、こんな短時間で倒してるとは思わないよね。
もう大丈夫さー。そう思い、手を上げるんだけど……
「まずはお前からだぁぁぁあ!」
「ちょっ! まぁ!?」
一刻を争う事態に、見張りのごとく裏路地前に立っていた俺。
ゴロツッキーの仲間と勘違いされたようです。
問答無用で襲い掛かってきやがりました。
101人バトルマニアが現れた!
まてぇぇぇぇぇぇぇ!!!
───クーフェイ───
アイヤー。
すごい人がいたものアル。
人が紙ふぶきのように吹き飛んでいくアルヨ。
瞬く間に、人数が半分になたネ。
「くそっ! こんなに強いのにいたいけな少女を手篭めにしようとは、なんという不届きな奴!」
「待っていろ路地裏のしょうねーん!」
「なんでこんなシロートにいぃぃぃぃ!!」
シロート。いや、違うネ。
ワザと隙を見せているだけアル。
そこを攻撃させて、その力で投げる。
投げ方も綺麗で、しばらく息が出来なくて動けなくなるだけで、実質ダメージのない優しい投げネ。
受身を取らせないところは辛辣アルが。
柔術や合気に似てるアルが、ベースは柔道アルカ?
よくわからないアルネ。
でも、一つだけいえるネ。
この人、強いアル!
ワタシはこの人に勝負を挑んだヨ!
「フェイ部長だ! フェイ部長直々に出てきたぞ!」
ワタシ以外の全員が彼の周りから去り、ワタシが彼の前に立つ。
正面に立ってみると、よくわかたアル。
立つ姿は本当に隙だらけすぎるアル。
本当にシロートにしか見えないアルよ。
少しでも武道を学んだものなら、即攻撃したくなるほど隙だらけ。
これが呼び水となってみんな飛びこんだアルな。
でも、どこへ打ちこんでもそれが当たる気がしないネ。
カウンターを効率よく行うには理想的な姿アル。
参たネ。攻め口が見当たらないヨ。
警戒していたら、あっちの方から動いてきたアル。
しまたアル。
今までずっと受けに徹していたから、攻めてくる事は意識から外していたヨ。
──────
毎度毎度毎度毎度毎度!!
なんでこうなるんだ。どうしてこうなるんだぁぁぁぁぁ!!!
押し寄せてくる漢(おとこ)達の津波を次々と空へ放り投げながら俺は思う。
俺はただ、女の子を助けただけなのに!
そりゃちょっとは下心はあったよ。
でも、そのご褒美に男の子100人プレゼントとかはねーだろうがよぉ!
なにこの100倍返し! 倍は倍でもどんなレベルの倍返しだー!!
つーか一人相手に100人とかで囲むんじゃねー!!
俺を無視して俺を助けに行けよ!
全員で来るなよ!
いや、100人相手に戦えてるから囲むのか?
強い奴に向かって行くのがバトルマニアってやつですか?
くそっ、助けた少女はどうにかして止めようと男達の後ろでなにか言っているようだけど、こいつらまったく聞いてねえ。
お前等頭に血が上りすぎだ。
どうにかして、一度こいつ等を静かにしないと。
そうすれば、少女の話をこいつらも聞いてくれるだろう!
そんな事を考えつつ、来るものを放り投げていたら(つか『ブラックベルト』の恩恵で体が勝手に動くからね)
「ヤアァァァァ!!!」
そんな声と共に、一人の少女が飛び蹴りで突撃してきたあるヨ。
「アナタ、強いアルネ。一つ勝負アルよ!」
げっ……
よりにもよって原作キャラ登場。
原作キャラじゃないから助けたのにそれが呼び水ってなんやねん。
「フェイ部長だ! フェイ部長直々に出てきたぞ!」
「わあぁぁぁぁぁぁぁ!」
しかも歓声がすげぇ。
もう真打登場って感じですよ。
俺様圧倒的悪役って感じですよ。
だが、今がチャンスかもしれない。
さっきのように男達が問答無用に襲い掛かって来ているわけじゃない。
全員が俺とカンフー少女に注目をしている。
ここで、誤解を一気に解く!!
今がチャンスだ!
そう周囲を観察し、考え、俺は行動へ移した!
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!」
両手を広げ。突然妙な構えをはじめる。
例えるならば、キグナスの星座を描くような動き!
カンフー少女も俺のいきなりの動きに戸惑っているようだ。
勝ったな。俺は心の中で確信し、跳躍した。
「跳んだ!?」
ギャラリーがさらに驚く。
カンフー少女も俺を迎撃するために構える!
だが、俺は相手の目前に着地!
両膝を地面につけ、そのまま腕を振り下ろす!
「まっいりましたぁぁぁぁ!!」
でたぁぁぁぁ!
オレサマーさんのジャンピング土下座だぁー!
この時俺は、生身で時を止める事に、成功した。
これで見事相手側の戦意を喪失させる事に成功。
助けたお嬢さんの話もやっと聞いてもらえ、俺も無事解放。
ふう。危機は去った。
俺の心の色々なナニカも去っていったが。
だが、誤解は解けた!!
こうして、ギャラリーも襲撃してきた男達も、助けた女の子も、去ってゆきました。
さすがに「ごめんなさい」や「ありがとうございました」とかはちゃんと言われたよ。
でもみんなさ、そんな俺を生暖かく見ないで。
そそくさと去らないで。
ほら、一応俺、自分の中じゃ勝者だから……
おかしいな。丸く治めたはずなのに、なぜか心は晴れないよ。
「大丈夫アルか?」
……なんでこのカンフー娘はまだいるんでしょう?
「大丈夫大丈夫。大丈夫だからもうあっち行きなさい?」
「うん。わかたアル!」
「よーし。わかってくれたか」
「それじゃあ改めて勝負アル!」
「するかぁぁぁぁぁぁ!!」
あんな情けない姿見せたのになんでさ!
「しないアルか?」
「しないアル。そもそも俺用事があるの」
「仕方ないアルね!」
「ああ」
「その用事につきあった後戦ってもらうアル!」
「だからそういう事じゃなあぁぁぁぁぁい!」
「おい」
背後から声をかけられました。
……なんかこれ、3回目だね。
「なんで貴様は待ち合わせの場所にいないで、そんなところで遊んでいるんだ?」
これにはな。深そうで深くないわけがあるんだ。
「つーか、まさか見ていなかった。なんてオチはないだろうな?」
「ああ。残念だが見ていた。無様だな」
「うるせえ」
「誰アルかこの人?」
……こういう遭遇って平気なのかな。まあ、正体がばれなければ、きっと平気だろ。
「ああ。俺のルームメイトでね。ついでに転校生。彼の日常品の買い物が今日の用事」
「そうアルか~」
「……どーやらお前の正体には気づかないみたいだな」
小声で耳打ち。
「当たり前だ。じじい(学園長)にさえ気づかれん自信があるぞ」
「そうなのか。そりゃすげえ。安心した」
「……」
「どした?」
「いや、なんでもない」
(……お前は自分のすごさに気づいていないのか、それともそれは演技なのか)
当然偶然なのだが、それは彼女も気づかない。
「どしたネ?」
「なんでもないアルよ」
聞こえても困るので、この話題はここまでにしておこう。失礼な言い方だが、バカの勘はバカに出来ないからね。
「というわけで、もう行かなきゃならないから、これでお別れな?」
「わかたアル! 荷物持ちなら任せるアルネ! そしたら戦うアルよ!」
「いや、だから……」
戦わねーって。
なんのために俺土下座をしたと思ってんのよ。
「つか、俺君より弱いんだけど。確実に」
「そんな事ないネ。ワタシ騙されないアル! それに無益な戦いを収めるためにああいう行動は中々出来ないアルよ。むしろあのまま戦っていたら後味悪かたネ。今度は心おきなく戦えるアル!」
……そうですか。あの土下座は逆効果でしたか。
いて。なんで中身幼女が蹴ってきますか?
なんでそんな不機嫌な顔してますか?
そりゃ買い物で案内するって言ってまだ出発できないんじゃ不機嫌にもなるかもしれないけどさ。俺だけのせいじゃないんだぜ?
つかお前が遅刻したのが悪いんだろうが。
「おい。いい加減にしろ。こんなくだらない事をしている場合ではないだろう」
「くだらなくはないアルよ!」
なんか、びしっと電撃が二人の間に走ったように見えましたよ。
「ほう、私に喧嘩を売る気か?」
「アナタも強いアルネ。負けないアルよ!」
「いい度胸だ」
なにこのにらみ合い。
ざわざわ。
なんかまたギャラリーが集まってきてるぅ!
今度は修羅場とか言われてるぅ!
新しい噂のネタは男の子をふくめた三角関係ですかそうですか。
って、オマエラァァァァァ!!
このままここで二人が戦いかねなかったので間に入って仲裁に入りました。
カンフー少女とは後で一回戦うと約束し、中身幼女の背中を押してさっさと撤退。
「まあ、男を選んだわ」
「ウホ、いいガチホモ」
……あれ? なんかデジャブを覚えるよ。
なにこれ。
なにこの目から変な汁出るフラグ。
この後、昼と夕食となぜか幼女用の服を奢らされました。
というかエド用の買い物した覚えなかとです。
当然次の日から再びクラスのみんなから距離を取られるようになりました。
中身幼女のエドが普通に話しかけてくるのが逆に致命的であります。
めでたしめでたし。
そろそろ言っていいかな。
全然めでたくねぇんだよおぉぉぉ!!
ピコーン。
『まほら武道会参加フラグが立ちました』
─あとがき─
今回は修学旅行までのつなぎの話。
この出会いはわざわざここでやらんでも。と思った人は術中にはまっている!
……といいな。
どこか2話に似ている展開。
一度回復したと思ったらまた失墜する。
それが彼!
エヴァンジェリンがエヴァンジェリン(大)とかで来ると期待した人は残念だったなぁ!
案外やってきたけどあの騒ぎを見て変身しなおした可能性あるけどさ。