初出2009/03/07 以後修正
最初に言っておこう。これは、身も蓋もない話だ。
逃げ腰ヘタレばかり書いていたので、たまには違う子も書いてみたくなりました。
『ネギま』の場合は基本日常に命の危険がないのでヘタレですが、『マブラヴ』はいるだけで死亡確定の世界なので、自力で動く事をはじめましたとさ。
マジ身も蓋もないので心を強く持ってお読みください。
───とある博士───
2001年10月18日。
その報告を聞いたとき、私は耳を疑った。
火星が、10時間前に消滅し、その5分後、何事もなかったかのように、復活したというのだ。
なにかの観測ミスかと思った。だが、その後入る観測結果から、それは事実であった事を思い知らされる。
その観測結果は、火星にいたBATAが、すべて消えているというものだったのだから。
最古に観測された、かつて生物のいなかったと言われた火星。昔観測されていた赤い星。その時にタイムスリップでもしたかのように。
次いで月が一度消滅し、復活するという報告が入ってきた。
結果は、火星の時と同じ。
火星の場合は、地球から遠かったゆえ、気づくのは10時間ほどかかった。
だが、月の場合は違う。
昼間、月が白く見える時がある。その時に、大勢の人々の目の前で、月の消滅する様が、目撃されたのだ。
破壊の光が収まり、空に空白が生まれて数分。それは、時を戻したかのように、また、天にのぼった。
誰もが呆然と、それを見ているしかなかった。
一体なにが起きたのか。世界は一時大混乱となった。
BETAと敵対する存在が現れたとか、救世主が現れたとか。
はたまた、世界が終わる前の予兆だとか。
様々な憶測が成されたが、誰もその真実にたどりつけるものはいなかった。
……私を、除いて。
その二日後、2001年10月20日。
その男は現れた。
年の程は、20にも満たない男。207部隊の訓練兵である彼女達と同じくらいの年齢。
それが、突然私の研究室に現れたのだ。
セキュリティをすべてを突破して。
基地の警備や、扉のセキュリティなど、ものともせず、入りこんできたのだ。
警報も、警告も、一切発せられず、いつもと代わらぬ日常の延長のように、平然と。
その男は、青と白という、奇抜なカラーリングの制服を着ていた。
いや、ただ、制服というだけで、どこにも属してはいない。
ただ、制服に見える青の上下と白のシャツを着ている。と言った方がいいかもしれない。
明らかに不審。
だが、その男は、そのような事なに一つ問題にせず、私の研究室へと現れた。
愕然とする私を前にして、奴は口を開いた。
「火星と月。あの虫達が一掃されたのは聞いてるな?」
この男は、信じられない事を、口にする。
「それをやってきたのは、俺だ」
この私でも、その時こいつの言っている事を理解するのが、精一杯だった。
「も、もしそれが本当だとして、なぜわざわざ私のところへ?」
そうだ。ソレがわからない。
もし、それが本当だとして、あれほどの事が出来るのならば、こんなところに来ないで、オリジナルハイヴを消すなり、この星を消して、もう一度蘇らせるなりすればいい。
「なんというか、このままゲームを無視して進めたら、アレかなーと思ってな。だから、どうしようか聞くために、あんたのところへ来た」
「ゲーム……?」
なにを言っているんだこいつは。
ゲーム? この状態をゲームだと? なにを言っているんだ。
こいつは、人類が絶望的な状況におちいっている今を、この現状を、楽しいゲームとでも言っているのか?
「まず、この星。俺がいなかった場合、ここ。いや、人類か。人類を救える可能性があるのは、あんた以外にはいない」
!? この男、オルタネイティヴ4の事も知っている!?
「それが、あんたのところに来た理由」
理由? それが、理由!? じゃあ、なにが目的なのよ!
火星と月のBETAを駆逐したお前が、それを出来ていない私に会いにきた!?
私を、笑いにでも来たの!?
「あんたは、あんたはなにをしたいの!? 何様のつもりなの!?」
「何様でもいいんだけど。とりあえず今、三つのルートが見えてる。一つ。このまま、俺が手を出さないルート。二つ。俺が、君の邪魔をしない程度に手を貸すルート。そして最後。俺が一人で、すべてを終わらせるルート」
なん、ですって……?
「最初の二つの場合、俺は君達ががんばるのを適当に冷やかしながら、オリジナルハイヴが落ちるのを見てる」
指を一本ずつ立てながら、こいつは言い放った。
「あ、でもあれか。彼が1回目か2回目にもよるのか。まあ、そのへんはどうでもいいや。君が失敗しても、第5計画の前に俺が人類は救うから」
なんという腹の立つ笑顔。
しかも、第5計画。こいつは4の方も知っている事もほのめかした。
なんなんだこいつは!
「んで、最後の一つは、俺が一人でがんばるルート。これ俺無双ルートね。これをやると、BETAが駆逐された後、今度は戦力の残った人類同士の戦いが勃発する可能性が高いだろうけど」
男は、やれやれと、わざとらしく肩をすくめる。
「ま。俺がやらなくてもソレ(戦争)の起きる可能性は変わらないからいいか。俺が平穏に過ごせるならどこが戦争していても気にしない。俺が住んでいる所が安全ならさ」
いざとなったら俺が一つくらい国を作るし。とのたまわった。
「というわけで、どれがいいですか? ゆーこ先生?」
……な、なにを、言っているんだこいつは。
頭がおかしいとしか、言いようがない。
だが、霞に確認させたところ、この男は、本気だった。
この男は本気で、自分が火星と月のBETAを駆逐し、オリジナルハイヴをつぶせると思っている!
たった一人で、そのような事を、考えている!
実際に、火星と月が消滅するのを知っていなければ、笑っていたところだ。
ここで、くびり殺していたところだ。
生身でBETAのところへ放りこんだところだ。
だがこの男は、自分ひとりで、本気で、この星を。人類を救えると考えているのだ!!
「……な、なら、一人でやってみなさい。世界を、救ってみなさいよ!」
出来るものならやってみろ。
半分、自棄だった。
こいつの存在を認める事は、私の今までの努力や、そのすべてを、無に帰す事になる。
それは、あまりに腹立たしかった。
だが、本当に、それが実現するのならば、見てみたかった。
誰一人の犠牲も出さず、あの怪物共を駆逐する。そんな、『奇跡』を。
出来るはずなどない。
だが見てみたい。
願いと、否定が、同時に出た結果が、この答えだった。
「OK。じゃあ、いっちょやってきますか」
彼はそう言い、敬礼に良く似たが、その後手首を返すという独特の動きをし、研究室を出て行った。
──地球 オリジナルハイヴ前──
「どらら~」
彼と共に歩む、たくさんの赤や黄色の丸いたぬきのような存在。
それらがいっせいに、おなかにあるポケットへ、手を入れた。
「それじゃ、ちょっとダンジョンアタックを敢行しようか」
彼のその言葉と共に、たぬき達はポケットから、道具を取り出した。
──────
2001年10月22日。
三度この地にやってきた白銀武は、驚愕する。
一階に降りてみれば、そこには夕呼がおり、自分を待っていたのだから。
しかも、突きつけられた言葉が。
「あんたの仕事、ないわよ」
だからだ。
混乱した彼に伝えられる、世界の情勢。
すでにオリジナルハイヴは落ち、日本のハイヴは一掃。これからゆっくりと、掃討作戦が開始される状態なのだという。
しかも、それを行うのは、たった一人の男。
この男がいなければ、人類はハイヴに入る事すら叶わない。
彼にお願いし救われるか、BETAと戦い続け、滅ぼされるか。
すでに日本はとても平和だ。
『彼』が、自らの平穏のため、守っているから。
いずれ、この男にこの世界は統治されるだろう。
悪い言い方をすれば、支配。
それはただ、彼が平穏に暮らせる世界であるために。
「ああ。でも、やる事はあるから安心しなさい」
「へ?」
「鑑純夏のケアよ。体は再生したけど、心は……っと、ああ、その前に、あんた何周目? はじめて? 2回? ちょっと、聞いてるの?」
もう彼には、なにがなんだかわからなかった。
本当に、なにがなんだかわからなかった。
とりあえず、これで締めくくっておこう。
こうして、人類は救われた。
めでたしめでたし。
─あとがき─
外伝第1弾。身も蓋もないマブラヴでした。
……うん。全力全壊だと、ホント、身も蓋もない。
ちなみに最初に火星と月を襲ったのは、どれだけ道具が通用するかの実験。それと、夕呼のところへ顔を出すまでに間があったのは、ミニドラを増やしたりとかした準備期間でしょう。
戦力整ったー。でもこれであぼーんさせたら『話』にならないなー。よし一応聞きに行こう。→出来るものならやってみろ! →オリジナルハイヴあぼーん。
こんなノリ。
人類は救われたのに、なんか釈然としないのはなぜだろう?
あとやってきたのは2回目じゃなくて三周目以降のウルトラスーパーデラックス白銀。
ウルトラスーパーデラックス白銀。
ウルトラでスーパーでデラックスな白銀です。
─追記─ 2009/03/09 追加
そのうち機会があれば、夕呼が選択1とか2を選んだ話を書きたいな。
「誰があんたの力なんて借りるもんですか!」ってつっぱねて、微妙な妨害(チャチャ)を入れたり、彼が彼女を馬鹿にしながら、それに巻きこまれたスーパー白銀が余計に苦労して進む話。
「よーし、じゃあお兄さんコメリカ側についちゃうぞー」「やめてー」とか「どっちが多くのBETAを狩れるか勝負よ! ちょっと行ってきなさいシロガネ!」「無茶なー」とか。
魔女と魔王にはさまれた、ウルトラタケルちゃんの明日はどっちだ!
※これでも被害はタケル以外出ませんのでご安心ください。むしろデラックスタケルちゃんがどうにかします。……身と蓋ができてもどうしようもない気がしてきた。