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赤松健SS投稿掲示板


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No.4920の一覧
[0] 欠陥人生 拳と刃(ネギま オリ主一般人)[箱庭廻](2010/08/06 20:17)
[1] 一話:それは恐竜のようだった[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[2] 二話:彼女は鳥のように見えた[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[3] 三話:災害としか言いようがない[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[4] 四話:迷う暇なんてこの世にはない[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[5] 閑話:人生とはままならない[箱庭廻](2008/12/15 11:27)
[6] 五話:変わりたくなくても変わることがある[箱庭廻](2009/06/12 22:16)
[7] 六話:大切なものは失ってからようやく気付ける[箱庭廻](2009/03/29 12:31)
[8] 七話:人の痛みなんて結局理解なんて出来ないのだろう[箱庭廻](2009/03/29 12:31)
[9] 八話:祈り、積もらせる[箱庭廻](2009/03/29 12:31)
[10] 九話:悲しみなんて泥のようなものだ[箱庭廻](2009/03/29 12:32)
[11] 十話:夜闇を駆ける[箱庭廻](2009/03/29 12:32)
[12] 十一話:それはどこまでも苛烈な怒りだった[箱庭廻](2009/03/29 12:32)
[13] 十二話:怒りを力に変える[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[14] 十三話:明けない夜はないと信じたい[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[15] 十四話:斬らずにはいられなかった[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[16] 十五話:居直ることも必要だろう[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[17] 十六話:色んな意味でやり直し[箱庭廻](2009/03/29 12:34)
[18] 閑話:願いは叶うことはないのだろうか[箱庭廻](2010/08/06 20:15)
[19] 十七話:ゆっくりと時間は過ぎていく[箱庭廻](2009/03/29 12:34)
[20] 十八話:積み重ねるものがある[箱庭廻](2009/03/29 12:34)
[21] 十九話:解放されるというのは清々しい[箱庭廻](2009/03/29 12:35)
[22] 二十話:それは試練だろうか[箱庭廻](2009/03/29 12:35)
[23] 二十一話:予感ってのはたまに怖くなる[箱庭廻](2009/03/29 12:36)
[24] 二十二話:息する事すらも楽しい[箱庭廻](2009/03/29 12:36)
[25] 二十三話:一分一秒を噛み締める[箱庭廻](2009/03/29 12:37)
[26] 二十四話:同じような日はあっても同じ一日は決してない[箱庭廻](2009/03/29 12:37)
[27] 二十五話:違和感を覚えるほどに馴染んだ[箱庭廻](2009/03/29 12:38)
[28] 二十六話:震えるのは僕が弱いからだろうか[箱庭廻](2009/03/29 12:38)
[29] 二十七話:眠ることも出来ない奴がいる[箱庭廻](2009/03/29 12:39)
[30] 二十八話:結果なんて分かりきっていた[箱庭廻](2009/03/29 12:39)
[31] 二十九話:また騒がしくなる[箱庭廻](2009/03/29 12:40)
[32] 三十話:進むことしか出来ないのだから[箱庭廻](2009/03/29 12:40)
[33] 三十一話:雨が降り出していた[箱庭廻](2009/03/29 12:40)
[34] 三十二話:冷たい雨が降っていた[箱庭廻](2009/03/29 12:41)
[35] 三十三話:雨はただ強くなるだけで[箱庭廻](2009/03/29 12:41)
[36] 三十四話:終わることを知らなかった[箱庭廻](2009/03/29 12:42)
[37] 三十五話:心が冷めていく[箱庭廻](2009/03/29 12:42)
[38] 三十六話:涙は流れない[箱庭廻](2009/03/29 12:42)
[39] 三十七話:悲しみは大地に還らない[箱庭廻](2009/03/29 12:43)
[40] 三十八話:嘆きは天には届かない[箱庭廻](2009/03/29 12:43)
[41] 閑話:僕は子供で[箱庭廻](2009/04/17 20:40)
[42] 三十九話:空は泣き虫だ[箱庭廻](2009/04/12 10:55)
[43] 四十話:一生分の悲しみに哭き叫んでいる[箱庭廻](2009/04/14 12:20)
[44] 四十一話:悲しむ事すらも赦されない[箱庭廻](2009/04/14 20:38)
[45] 閑話:謝ることも赦されないなんて[箱庭廻](2009/04/24 19:30)
[46] 四十二話:さあ、涙を止めよう[箱庭廻](2009/04/24 19:30)
[47] 閑話:大人になりたかった[箱庭廻](2009/04/26 13:51)
[48] 四十三話:幾ら嘆いても明日はやってくる[箱庭廻](2009/04/26 13:52)
[49] 四十四話:後悔なんてしたくない[箱庭廻](2009/04/28 21:25)
[50] 四十五話:日々は続く[箱庭廻](2009/05/21 00:27)
[51] 四十六話:流れるままに受け入れるしかない[箱庭廻](2009/05/21 00:29)
[52] 四十七話:そろそろ前に進もうか[箱庭廻](2009/05/23 01:13)
[53] 四十八話:僕は君と……[箱庭廻](2009/05/24 19:34)
[54] 四十九話:まあこういうことも悪くない[箱庭廻](2009/06/02 21:02)
[55] 閑話:特別ではないから[箱庭廻](2009/06/12 22:14)
[56] 五十話:未来なんて見えやしない[箱庭廻](2009/06/06 15:47)
[57] 少し先に進んだ幕開け:始まりを告げるのも悪くない[箱庭廻](2009/06/13 00:48)
[58] 五十一話:明日を決める問題だ。[箱庭廻](2009/06/14 19:59)
[59] 五十二話:不思議な少女だった[箱庭廻](2009/06/15 19:24)
[60] 閑話:正しいことを見つけるのはとても難しいです[箱庭廻](2009/06/19 14:36)
[61] 五十三話:想いを叩きつける[箱庭廻](2009/06/21 16:03)
[62] 五十四話:ただ待ち構えるばかり[箱庭廻](2009/06/23 12:00)
[63] 五十五話:俺たちは幸福だ[箱庭廻](2009/06/24 23:54)
[64] 閑話:さあ本番だ[箱庭廻](2009/06/28 08:23)
[65] 五十六話:騒がしいのも楽しいから[箱庭廻](2009/07/02 08:39)
[66] 五十七話:それは眩しいから[箱庭廻](2009/07/07 19:01)
[67] 五十八話:言葉を交わすばかりで[箱庭廻](2009/07/08 15:35)
[68] 五十九話:知らない物語は語れない[箱庭廻](2009/07/10 20:05)
[69] 六十話:想像もしなかった[箱庭廻](2009/07/12 15:37)
[70] 六十一話:何を考えている?[箱庭廻](2009/07/14 23:15)
[71] 六十二話:騒がしく仲良くやろう[箱庭廻](2009/07/17 00:29)
[72] 六十三話:壊していいよな?[箱庭廻](2010/08/06 20:16)
[73] 六十四話:君たちは強いよ[箱庭廻](2009/07/22 21:40)
[74] 六十五話:明日を掴みたいから[箱庭廻](2009/07/26 14:45)
[75] 閑話:誰か、小人さん呼んで来い[箱庭廻](2009/08/02 15:52)
[76] 六十六話:何の因果だろうね[箱庭廻](2009/08/04 17:50)
[77] 六十七話:さあ始まるぞ。騒がしい戦いが[箱庭廻](2009/08/09 11:35)
[78] 六十八話:ふざけるな、と僕は言う[箱庭廻](2009/08/10 10:33)
[79] 六十九話:勝て、と俺は言う[箱庭廻](2009/08/11 18:32)
[80] 七十話:斬り込んで[箱庭廻](2009/08/11 18:30)
[81] 七十一話:一刀一足の間合いで[箱庭廻](2009/08/12 20:02)
[82] 七十ニ話:蹴り潰す[箱庭廻](2009/08/14 01:13)
[83] 七十三話:荒々しく駆け抜けろ[箱庭廻](2009/08/16 21:52)
[84] 七十四話:ありえない夢は幻想ですらない[箱庭廻](2009/08/17 20:33)
[85] 七十五話:手は抜かないってことか[箱庭廻](2009/08/18 19:14)
[86] 七十六話:君を殺すと決めた[箱庭廻](2009/08/19 15:46)
[87] 七十七話:殴りあうということは[箱庭廻](2009/08/22 18:14)
[88] 七十八話:詫びるな、僕の選択だ[箱庭廻](2009/08/23 18:59)
[89] 閑話:憧れていた一人だったから[箱庭廻](2009/08/29 23:07)
[90] 閑話:私の常識を返しやがれ[箱庭廻](2009/08/28 00:47)
[91] 七十九話:どれだけ踏み込めばいい[箱庭廻](2009/08/29 23:09)
[92] 八十話:意地って奴だね[箱庭廻](2009/09/07 08:08)
[93] 八十一話:あいつはただ勝ちたいだけだ[箱庭廻](2009/09/10 08:15)
[94] 八十二話:努力が無駄なわけがない[箱庭廻](2009/09/27 19:34)
[95] 八十三話:人間は――[箱庭廻](2009/12/29 17:34)
[96] 八十四話:彼は負けない[箱庭廻](2010/01/01 21:20)
[97] 八十五話:トラックにも勝てるのだから[箱庭廻](2010/01/14 22:57)
[98] 八十六話:ああ、これが僕らの[箱庭廻](2010/08/04 00:31)
[99] 八十七話:決着は終わらない[箱庭廻](2010/08/05 00:41)
[100] 八十八話:決着の始まりだ(8/6 タイトル変更)[箱庭廻](2010/08/06 23:40)
[101] 八十九話:悔いなく戦い抜け[箱庭廻](2010/08/08 00:47)
[102] 九十話:斬りたいよ[箱庭廻](2010/08/13 00:05)
[103] 閑話:大人の責任というものがあってね[箱庭廻](2010/09/07 15:06)
[104] 閑話:それが過ちならば[箱庭廻](2011/01/16 01:47)
[105] 九十一話:届くのが当然だ[箱庭廻](2011/01/19 23:41)
[106] 閑話:こうも憧がれて/こうも焦がれて[箱庭廻](2011/01/17 08:30)
[107] 九十二話:意地の決闘だ[箱庭廻](2011/01/20 01:45)
[108] 九十三話:意地のぶつかりあいだ[箱庭廻](2012/07/04 00:21)
[109] 九十四話:決着はつけるしかない[箱庭廻](2012/11/06 21:30)
[110] 九十五話:勝ちたいから願うんだ[箱庭廻](2012/11/06 21:33)
[111] 九十六話:ぶっ飛ばすと彼は決めた。[箱庭廻](2012/11/23 21:05)
[112] 九十七話:それならしょうがない[箱庭廻](2012/12/18 19:49)
[113] 九十八話:激情でもまだ足りないのか[箱庭廻](2013/04/12 23:15)
[114] 九十九話:刃はいつか折れるのだろうさ[箱庭廻](2013/11/22 23:42)
[115] 百話:無駄だと否定されようとも[箱庭廻](2014/03/02 23:10)
[116] 閑話:何一つ届かないなんて[箱庭廻](2014/03/08 22:51)
[117] 外伝/京都呪術編:やれやれ面倒やね[箱庭廻](2009/07/11 21:37)
[118] 外伝/京都呪術編:はぁ、むかつくわ[箱庭廻](2009/07/26 17:10)
[119] 4月馬鹿でした/異説:世界は虚言に満ちている[箱庭廻](2009/04/26 21:31)
[120] 馬鹿は自重しない/異説:望んだものはこんなものじゃなかった[箱庭廻](2009/04/27 19:01)
[121] 馬鹿は明日を見ない/異説:零れていくものは取り戻せない[箱庭廻](2009/06/07 16:24)
[122] (投下話数百話記念)偽話:もしも彼が――[箱庭廻](2009/09/10 08:17)
[123] 嘘だ!!:予告[箱庭廻](2011/04/02 00:47)
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[4920] 八十話:意地って奴だね
Name: 箱庭廻◆1e40c5d7 ID:ee732ead 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/07 08:08
 意地って奴だね。



 会場に戻ってみると、既に高畑先生とネギ先生の試合は終わっているようだった。
 しかし、何故あんなに舞台が壊れているんだろう?
 どんな試合があったのだろうか。

『皆様、お待たせしています! あの大破壊を僅か十数分で迅速に修復する見事な手際をご覧ください! 学園内のサークル活動、イベント施設などの設営建築は麻帆良大土木建築研まで!!』

 というアナウンスと共に作業員な格好をした人たちが板を張替え、壊れた石土台に速乾セメントを流し込み、修復作業をしていた。
 凄い速度である。
 なんていうか、急ピッチにも程がある修復作業だった。

「激しかったみたいやなー」

 近衛さんがそんな感想を呟いた。
 とはいえ、激しいで済んでいいレベルなのだろうか。
 人間同士が戦った後には思えない。
 銃火器持ち込んでも、ここまで破壊されるのは稀だと思うのだけど。
 近衛さんの感覚もおかしいと思う。

「高畑先生とネギ先生ですから……と、皆さんいますよ」

 桜咲が軽く流して、選手席のベンチに目を向けた。
 其処には高畑先生と、ネギ先生の生徒たちを除いた全員が揃っていた。
 具体的には長渡と高音さんと佐倉さんと山下さんぐらいである。

「お、短崎戻ったか」

 長渡が目を向けて、僕に気付いて手を上げる。
 僕は痛む身体を押しながらも手を上げ返し、視線を周りに散らした。

「ネギ先生は? どっちが勝ったの?」

「ネギ少年が勝った、辛勝にも程があったけどな」

 と、どこか複雑そうに嬉しそうな、或いは困ったような顔で長渡が呟いた。
 おや? と少し思ったけど、僕は嬉しくなる。
 長渡はあまりネギ先生に好感情を抱いてなかったと思ったけど、彼は自覚してないけど結構子供好きだ。
 不仲よりはマシだと思える。
 人を憎み続けるのも疲れるから、それはいい兆候だった。

「なるほど」

「しかし、すげーな怪我。試合出来るのか?」

 僕の状態を見て、長渡が呆れたような口調で呟いた。
 確かに全身が馬鹿みたいに熱いけど、鎮痛剤が効いてる。

「大丈夫だよ」

 だから、平然と笑顔すら浮かべられる。
 全身から滲み出る汗は気持ち悪かったけど、痩せ我慢が出来る程度なら大したことは無い。
 まだ頑張れる。

「で、えーと……そっちのはなに?」

 あえて視界にいれなかった、きしゃーと声を上げる少女と女性に目を向けた。
 赤いジャージ姿の高音さんにしがみ付き、ぶんぶんと手を振って威嚇している佐倉さんが一人。
 凄い目つきだった。

「お、お姉様に近寄っちゃ駄目ですからね!」

「め、愛衣落ち着きなさい……あ」

 佐倉さんを宥めていた高音さんがこちらを見て、すぐに目線を退けた。
 ん? と思ったが、すぐに思い出す。
 ああ、そういえば。

(彼女の裸を見たんだっけ――)

 なんとなくその時の事を思い出そうとして、次の瞬間足から激痛が走った。

「あいたぁ!?」

 桜咲につま先を踏まれていた。
 思わず足を押さえて、呻きながら目を向けると。

「鼻の下が伸びていましたよ」

 ふんっと何故か怒ったような態度でそっぽを向かれた。
 え? なんで分かったんだろうか。別にまだ欲情してないんだけど。
 とはいえ、ナチュラルにその時の光景を多少思い出しつつ、バツの悪さを実感する。
 高音さんは恥ずかしいのか、顔が赤いし、目線が下を向いている。
 佐倉さんは警戒したように睨んでいるし、僕は話しかける方法も分からないので。

(時間を置くしかないか)

 そう決断して、ズカズカと席に座った桜咲に続いて、空いている長渡の横に座った。

「あっちーあっちー」

「あ、なにが?」

 長渡の言葉に、僕は首を傾げる。
 何故かにやにやしている様が、妙にむかついた。

「あー、別にー、なんか暑いなーと思ってね」

「初夏だしねぇ」

 含むような言い回し。
 気になったが、まあ議論してもしょうがないと前を向いた。
 背中から高音さんらしき視線とか感じるけれど、振り向くのも躊躇われし、なんか桜咲はさっきの月詠を引きずってるのか機嫌が悪いし。
 さっさと試合始まらないかなぁ。
 て、そういえば。

「ネギ先生たちどこいったの?」

「医務室だな。ちょっと前に出て行ったけど、入れ違いか?」

 長渡が首を傾げる。
 こっちに戻るまでに鉢合わせなかったのだけど、使う廊下が違ったのかな。

「まあ、そろそろ戻ってくるとは思うが……試合もあるしな」

 そういう長渡が見たのは舞台の上。
 そろそろ修復が終わりそうだった。

「次は……小太郎君の試合だっけ?」

「ああ、長瀬との試合だな」

 長瀬っていうと、あの糸目の子だったかな?
 そんな風に思い出していると、ぞろぞろと戻ってくる一団の姿が見えた。
 噂をすれば、ていう奴だね。

「ただいまやー、って面子揃ってるなぁ」

「おかえりー、ってネギ先生顔大丈夫?」

 小太郎君に声をかけつつ、僕はネギ先生の顔に驚いた。
 酷く腫れたのか、シップなどが貼られている。
 両手にも軽く包帯が巻きつけられていて、その激戦のあとが伺えた。

「あ、はい。大丈夫ですっ!」

 だけど、ネギ先生は明るく笑った。
 それが誇らしいみたいに。

「ならいいけど。で、あれ? 高畑先生は?」

「あ、高畑先生なら……ちょっと煙草を吸ってくるって」

 神楽坂さんが僕の疑問に答えてくれた。

「その内戻ってくるだろう、さっさと座れ。前が見えん」

 そして、ただ一人さっさとベンチに座っていたエヴァンジェリンが冷たい声音でそう告げた。
 少しイラついたが、言っていることはもっともである。
 僕たちはベンチに座った。
 のだが、後ろからずざざという後ずさる気配がした。

(嫌われてるなぁ、当たり前だけど)

 高音さんの気配と行動にため息。
 僕が悪いとは全く思えないのだが、何故か脱げてしまった以上非は僕にあるし、受け入れるしかない。
 まあ目の保養にはなったが、望んだものでもなければ得になるわけでもないし。
 やれやれだ。

『お待たせしました。修復が完了しましたので、これより第六試合! 犬上 小太郎選手 対 長瀬 楓選手を始めます!!』

 その時だった。
 朝倉さんの放送が響き渡り、観客席からどよめきが上がった。

「うし、俺の出番や!」

 小太郎君がベンチから飛び降りて、手の平に拳を叩きつける。

「拙者もでござるな」

 糸目の彼女が音も無く歩み出て、ネギ先生に手を振った。

「では、いってくるでござるな」

「ネギ! 俺の戦いをちゃんと見とけや!!」

「うん! 二人共頑張って!!」

 教師として、友達として、矛盾しそうで矛盾しない応援をネギ先生は発した。
 共に頑張ってほしいのが心情だろう。
 片方に肩入れも難しいだろうけど、共に頑張れればいいと思う。
 そして。

「小太郎」

 次々に応援の言葉が掛けられる中で、長渡が告げた。
 親指を立てて。

「しっかりやれよ、全力で」

「――おう!」

 少しだけ戸惑ったあと、小太郎君はにかりと笑みを浮かべて舞台へと歩き出した。

「お手柔らかに頼むでござるよ、小太郎」

「手加減すんなよ、姉ちゃん」

 そんな言葉と共に二人は舞台へと上がった。






『さあ皆様お待たせしました!! どれもこれも高いレベルで繰り広げられるまほら武道会! ついに第六試合となりました!!』

 歓声が上がる。
 津波のような声が響き渡り、僕は全身の皮膚が疼くのを感じた。
 痛いほどの声だった。
 舞台の中心で対峙する二人。
 革ジャケット姿の小太郎君に、何故かバーテン服姿の長瀬さん。
 小太郎君はまあ何度か長渡と遣り合っているのを見たことがあるけど、長瀬さんは全く不明だ。
 その実力も。

「長渡、どっちが勝つと思う?」

「さあな。あのニンニン忍者モドキのことは詳しく知らんから分からん」

 長渡は肩を竦めながらも、真剣な目つきで試合を睨んでいた。
 心配なんだろうね。
 仲がいい弟分みたいな彼だから。

「楓は強いアル」

 古菲さんが呟いた。
 汗を額に滲ませながら、手を握り締めて。

「そうですね、数ヶ月前の時点では楓が小太郎相手に完勝したと聞きました。その差を、どこまで埋められているか……」

 桜咲が押さえ目の声音で告げる。
 小太郎の敗北の予感を滲ませて。
 だが、それに。

「馬鹿いうな」

 長渡が嗤った。
 歯を剥き出しに、犬歯を見せて。

「あいつはやるさ。俺よりも真っ直ぐだからな」

 自信ありげに、期待と信頼を篭めた声で。

「いけよ、小太郎! しっかりと殴りこんでやれ!!」


『第六試合――ファイト!!!』


 声が鳴り響いた。
 爆発的なサイレンが鳴り響き、小太郎君が、長瀬さんが跳ねた。
 互いに疾走、掻き消えるような俊足。

 ――次の刹那には、激突していた。

「っ!」

「おらぁああああああ!!」

 小太郎の拳を受け止めていた長瀬さんが粉塵を散らしながらブレーキ。
 その瞬間、小太郎君が跳ね上がった。
 床を蹴り飛ばし、ロケットのように蹴り上げる。しなやかな蹴打、射抜くような一撃。
 彼女がそれに翻り、流れるように避けた。
 側転するように飛び込んだ腕で跳ね上がり、宙返りを見せながら床に着地する。

「――む、手加減がなくなったでござるな」

 僅かに目を開き、注視する様に長瀬さんが喋る。
 腰を曲げた姿勢で、ダラリと手を下げながら、鮮やかな唇が震えた。

「ああ、堪忍な」

 小太郎君が構える。
 腰を落とし、鉤爪にも似た手の構えを見せながら、前のめりに犬歯を剥き出しに嗤った。

「……姉ちゃんは戦士や」

「む?」

「だから、手加減はせえへん」

 吼える。
 大気が震えて、全身から活力を引きずりだし、悶えるように踏み込んで。

「それが漢の、戦うものの礼儀や!!!」

 瞬動。という技術だっただろうか。
 小太郎君が前に、長瀬さんが横に、残像を残して消えた。
 あまりにも圧倒的な速度。
 理不尽な移動手段。
 目の前でやられたら認識する術があるのか。

「早いっ!!」

 桜咲が叫んだ。
 小太郎君が辿り付くよりも早く、長瀬さんは位置を変えている。
 小太郎君は舞台に着地した瞬間、その背後に姿を現し、手を振り上げていた。

「当たる!?」

 思わずそう思う。
 けれど、彼が回転した。
 背後に回るよりも早く、ただしなやかに、“足を踏み変えての旋回”。
 ――見覚えがある動きだった。

(今のは!?)

 舞踊のような、或いは練達の人体駆動技術。
 長渡の笑みの意味を知る。
 あれは、“長渡の動き”だった。

「むっ!?」

 予想外の挙動に長瀬さんの声が上がるも、動きは止まらない。
 空気を裂くように叩き込まれる手刀、それに斜め上に掲げた小太郎君の腕が受け止める。
 轟音。

「がっ!」

 小太郎君の足元が罅割れ、めり込んだ。
 どれほどの威力か、彼が咄嗟に膝を曲げて衝撃を逃がす。そこに、さらに小太郎君は繰り出された長瀬さんの蹴りを膝でガードした。
 吹き飛ばされる、後ろに。
 ゴムボールのように。

「鋭いわぁ」

 だけど、楽しげに嗤っている。
 吹き飛ばされた状態から空中で回転、振り下ろしたつま先で床を踏み締めて、粉塵散らしながらも停止。
 ばんっと四肢を床に叩き付けて、獣のような構えを取る。

「来いや、姉ちゃん。この程度じゃ、俺は負けへんで」

「そうでござるなぁ」

 長瀬さんが飄々とした口調でそう呟き、両手を前に組むと。

「ならば」

「――これで」

「――――どうでござる?」

 次の瞬間、“長瀬さんが三人になっていた”。

『は?』

 一人から三人に。
 何故か長瀬さんが、瞬いた瞬間に三人の群れになっていた。
 同じ顔、同じ格好、同じ背丈、同じ声。
 それが三人、仲良さそうに肩を組んでいて、微笑んでいた。

『で、デター!? ついに噂の分身の術だー!!』

『こ、これは一体?』

 朝倉さんと豪徳寺さんの戸惑いと驚きの声が上がる。
 観客たちが騒ぎ出す。
 当たり前のように不可思議な現象に驚いて。

「ええわっ! それぐらいやないと、超える意味があらへん!!」

 ただ一人驚かなかった小太郎君が跳ねた。
 床を手で叩き、前に跳び出す、風を裂くような速度で駆け抜ける。
 舞台の一歩、二歩、三歩目で罅割れそうなほどに力強く踏み込み、低い姿勢でトップスピードに乗る。
 クラウチングスタートにも似た走行術。
 ただひたすらに速く、疾駆するための走り方。

『参る』

 それに対し、三人の楓さんが掻き消えた。
 一瞬でも目を閉じれば見失いそうな速度で。
 それでも目は乾くから反射的に、僕は瞬きをして。


 “四人と三人の激突を目撃した”。









******************

少し間がありましたが、小太郎VS楓戦開始です!
多分、次回で戦闘終了(予定)

もうすぐ投稿話数100話達成。
本編は八十話達成。
投稿100に付き、ちょっとしたスペシャルなお話を予定していますので、どうぞよろしくお願いします!


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