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赤松健SS投稿掲示板


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No.4920の一覧
[0] 欠陥人生 拳と刃(ネギま オリ主一般人)[箱庭廻](2010/08/06 20:17)
[1] 一話:それは恐竜のようだった[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[2] 二話:彼女は鳥のように見えた[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[3] 三話:災害としか言いようがない[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[4] 四話:迷う暇なんてこの世にはない[箱庭廻](2009/03/29 12:30)
[5] 閑話:人生とはままならない[箱庭廻](2008/12/15 11:27)
[6] 五話:変わりたくなくても変わることがある[箱庭廻](2009/06/12 22:16)
[7] 六話:大切なものは失ってからようやく気付ける[箱庭廻](2009/03/29 12:31)
[8] 七話:人の痛みなんて結局理解なんて出来ないのだろう[箱庭廻](2009/03/29 12:31)
[9] 八話:祈り、積もらせる[箱庭廻](2009/03/29 12:31)
[10] 九話:悲しみなんて泥のようなものだ[箱庭廻](2009/03/29 12:32)
[11] 十話:夜闇を駆ける[箱庭廻](2009/03/29 12:32)
[12] 十一話:それはどこまでも苛烈な怒りだった[箱庭廻](2009/03/29 12:32)
[13] 十二話:怒りを力に変える[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[14] 十三話:明けない夜はないと信じたい[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[15] 十四話:斬らずにはいられなかった[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[16] 十五話:居直ることも必要だろう[箱庭廻](2009/03/29 12:33)
[17] 十六話:色んな意味でやり直し[箱庭廻](2009/03/29 12:34)
[18] 閑話:願いは叶うことはないのだろうか[箱庭廻](2010/08/06 20:15)
[19] 十七話:ゆっくりと時間は過ぎていく[箱庭廻](2009/03/29 12:34)
[20] 十八話:積み重ねるものがある[箱庭廻](2009/03/29 12:34)
[21] 十九話:解放されるというのは清々しい[箱庭廻](2009/03/29 12:35)
[22] 二十話:それは試練だろうか[箱庭廻](2009/03/29 12:35)
[23] 二十一話:予感ってのはたまに怖くなる[箱庭廻](2009/03/29 12:36)
[24] 二十二話:息する事すらも楽しい[箱庭廻](2009/03/29 12:36)
[25] 二十三話:一分一秒を噛み締める[箱庭廻](2009/03/29 12:37)
[26] 二十四話:同じような日はあっても同じ一日は決してない[箱庭廻](2009/03/29 12:37)
[27] 二十五話:違和感を覚えるほどに馴染んだ[箱庭廻](2009/03/29 12:38)
[28] 二十六話:震えるのは僕が弱いからだろうか[箱庭廻](2009/03/29 12:38)
[29] 二十七話:眠ることも出来ない奴がいる[箱庭廻](2009/03/29 12:39)
[30] 二十八話:結果なんて分かりきっていた[箱庭廻](2009/03/29 12:39)
[31] 二十九話:また騒がしくなる[箱庭廻](2009/03/29 12:40)
[32] 三十話:進むことしか出来ないのだから[箱庭廻](2009/03/29 12:40)
[33] 三十一話:雨が降り出していた[箱庭廻](2009/03/29 12:40)
[34] 三十二話:冷たい雨が降っていた[箱庭廻](2009/03/29 12:41)
[35] 三十三話:雨はただ強くなるだけで[箱庭廻](2009/03/29 12:41)
[36] 三十四話:終わることを知らなかった[箱庭廻](2009/03/29 12:42)
[37] 三十五話:心が冷めていく[箱庭廻](2009/03/29 12:42)
[38] 三十六話:涙は流れない[箱庭廻](2009/03/29 12:42)
[39] 三十七話:悲しみは大地に還らない[箱庭廻](2009/03/29 12:43)
[40] 三十八話:嘆きは天には届かない[箱庭廻](2009/03/29 12:43)
[41] 閑話:僕は子供で[箱庭廻](2009/04/17 20:40)
[42] 三十九話:空は泣き虫だ[箱庭廻](2009/04/12 10:55)
[43] 四十話:一生分の悲しみに哭き叫んでいる[箱庭廻](2009/04/14 12:20)
[44] 四十一話:悲しむ事すらも赦されない[箱庭廻](2009/04/14 20:38)
[45] 閑話:謝ることも赦されないなんて[箱庭廻](2009/04/24 19:30)
[46] 四十二話:さあ、涙を止めよう[箱庭廻](2009/04/24 19:30)
[47] 閑話:大人になりたかった[箱庭廻](2009/04/26 13:51)
[48] 四十三話:幾ら嘆いても明日はやってくる[箱庭廻](2009/04/26 13:52)
[49] 四十四話:後悔なんてしたくない[箱庭廻](2009/04/28 21:25)
[50] 四十五話:日々は続く[箱庭廻](2009/05/21 00:27)
[51] 四十六話:流れるままに受け入れるしかない[箱庭廻](2009/05/21 00:29)
[52] 四十七話:そろそろ前に進もうか[箱庭廻](2009/05/23 01:13)
[53] 四十八話:僕は君と……[箱庭廻](2009/05/24 19:34)
[54] 四十九話:まあこういうことも悪くない[箱庭廻](2009/06/02 21:02)
[55] 閑話:特別ではないから[箱庭廻](2009/06/12 22:14)
[56] 五十話:未来なんて見えやしない[箱庭廻](2009/06/06 15:47)
[57] 少し先に進んだ幕開け:始まりを告げるのも悪くない[箱庭廻](2009/06/13 00:48)
[58] 五十一話:明日を決める問題だ。[箱庭廻](2009/06/14 19:59)
[59] 五十二話:不思議な少女だった[箱庭廻](2009/06/15 19:24)
[60] 閑話:正しいことを見つけるのはとても難しいです[箱庭廻](2009/06/19 14:36)
[61] 五十三話:想いを叩きつける[箱庭廻](2009/06/21 16:03)
[62] 五十四話:ただ待ち構えるばかり[箱庭廻](2009/06/23 12:00)
[63] 五十五話:俺たちは幸福だ[箱庭廻](2009/06/24 23:54)
[64] 閑話:さあ本番だ[箱庭廻](2009/06/28 08:23)
[65] 五十六話:騒がしいのも楽しいから[箱庭廻](2009/07/02 08:39)
[66] 五十七話:それは眩しいから[箱庭廻](2009/07/07 19:01)
[67] 五十八話:言葉を交わすばかりで[箱庭廻](2009/07/08 15:35)
[68] 五十九話:知らない物語は語れない[箱庭廻](2009/07/10 20:05)
[69] 六十話:想像もしなかった[箱庭廻](2009/07/12 15:37)
[70] 六十一話:何を考えている?[箱庭廻](2009/07/14 23:15)
[71] 六十二話:騒がしく仲良くやろう[箱庭廻](2009/07/17 00:29)
[72] 六十三話:壊していいよな?[箱庭廻](2010/08/06 20:16)
[73] 六十四話:君たちは強いよ[箱庭廻](2009/07/22 21:40)
[74] 六十五話:明日を掴みたいから[箱庭廻](2009/07/26 14:45)
[75] 閑話:誰か、小人さん呼んで来い[箱庭廻](2009/08/02 15:52)
[76] 六十六話:何の因果だろうね[箱庭廻](2009/08/04 17:50)
[77] 六十七話:さあ始まるぞ。騒がしい戦いが[箱庭廻](2009/08/09 11:35)
[78] 六十八話:ふざけるな、と僕は言う[箱庭廻](2009/08/10 10:33)
[79] 六十九話:勝て、と俺は言う[箱庭廻](2009/08/11 18:32)
[80] 七十話:斬り込んで[箱庭廻](2009/08/11 18:30)
[81] 七十一話:一刀一足の間合いで[箱庭廻](2009/08/12 20:02)
[82] 七十ニ話:蹴り潰す[箱庭廻](2009/08/14 01:13)
[83] 七十三話:荒々しく駆け抜けろ[箱庭廻](2009/08/16 21:52)
[84] 七十四話:ありえない夢は幻想ですらない[箱庭廻](2009/08/17 20:33)
[85] 七十五話:手は抜かないってことか[箱庭廻](2009/08/18 19:14)
[86] 七十六話:君を殺すと決めた[箱庭廻](2009/08/19 15:46)
[87] 七十七話:殴りあうということは[箱庭廻](2009/08/22 18:14)
[88] 七十八話:詫びるな、僕の選択だ[箱庭廻](2009/08/23 18:59)
[89] 閑話:憧れていた一人だったから[箱庭廻](2009/08/29 23:07)
[90] 閑話:私の常識を返しやがれ[箱庭廻](2009/08/28 00:47)
[91] 七十九話:どれだけ踏み込めばいい[箱庭廻](2009/08/29 23:09)
[92] 八十話:意地って奴だね[箱庭廻](2009/09/07 08:08)
[93] 八十一話:あいつはただ勝ちたいだけだ[箱庭廻](2009/09/10 08:15)
[94] 八十二話:努力が無駄なわけがない[箱庭廻](2009/09/27 19:34)
[95] 八十三話:人間は――[箱庭廻](2009/12/29 17:34)
[96] 八十四話:彼は負けない[箱庭廻](2010/01/01 21:20)
[97] 八十五話:トラックにも勝てるのだから[箱庭廻](2010/01/14 22:57)
[98] 八十六話:ああ、これが僕らの[箱庭廻](2010/08/04 00:31)
[99] 八十七話:決着は終わらない[箱庭廻](2010/08/05 00:41)
[100] 八十八話:決着の始まりだ(8/6 タイトル変更)[箱庭廻](2010/08/06 23:40)
[101] 八十九話:悔いなく戦い抜け[箱庭廻](2010/08/08 00:47)
[102] 九十話:斬りたいよ[箱庭廻](2010/08/13 00:05)
[103] 閑話:大人の責任というものがあってね[箱庭廻](2010/09/07 15:06)
[104] 閑話:それが過ちならば[箱庭廻](2011/01/16 01:47)
[105] 九十一話:届くのが当然だ[箱庭廻](2011/01/19 23:41)
[106] 閑話:こうも憧がれて/こうも焦がれて[箱庭廻](2011/01/17 08:30)
[107] 九十二話:意地の決闘だ[箱庭廻](2011/01/20 01:45)
[108] 九十三話:意地のぶつかりあいだ[箱庭廻](2012/07/04 00:21)
[109] 九十四話:決着はつけるしかない[箱庭廻](2012/11/06 21:30)
[110] 九十五話:勝ちたいから願うんだ[箱庭廻](2012/11/06 21:33)
[111] 九十六話:ぶっ飛ばすと彼は決めた。[箱庭廻](2012/11/23 21:05)
[112] 九十七話:それならしょうがない[箱庭廻](2012/12/18 19:49)
[113] 九十八話:激情でもまだ足りないのか[箱庭廻](2013/04/12 23:15)
[114] 九十九話:刃はいつか折れるのだろうさ[箱庭廻](2013/11/22 23:42)
[115] 百話:無駄だと否定されようとも[箱庭廻](2014/03/02 23:10)
[116] 閑話:何一つ届かないなんて[箱庭廻](2014/03/08 22:51)
[117] 外伝/京都呪術編:やれやれ面倒やね[箱庭廻](2009/07/11 21:37)
[118] 外伝/京都呪術編:はぁ、むかつくわ[箱庭廻](2009/07/26 17:10)
[119] 4月馬鹿でした/異説:世界は虚言に満ちている[箱庭廻](2009/04/26 21:31)
[120] 馬鹿は自重しない/異説:望んだものはこんなものじゃなかった[箱庭廻](2009/04/27 19:01)
[121] 馬鹿は明日を見ない/異説:零れていくものは取り戻せない[箱庭廻](2009/06/07 16:24)
[122] (投下話数百話記念)偽話:もしも彼が――[箱庭廻](2009/09/10 08:17)
[123] 嘘だ!!:予告[箱庭廻](2011/04/02 00:47)
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[4920] 六十一話:何を考えている?
Name: 箱庭廻◆1e40c5d7 ID:ee732ead 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/14 23:15

 何を考えている?



 辿り付いた会場は人ごみに溢れていた。

「どうなってんだ?」

 取り出した携帯を握り締めながら、予想を超えた混み具合に首を捻る。
 場所は龍宮神社。
 時刻は五時半過ぎ。
 会場予定地だった場所で変更予定となっていた掲示板を見て、それと小太郎から入った携帯メールを見てやってきたのだが。

「宣伝でもあったのか?」

 周りを見渡し、ちらほらと見える参加者希望らしい格闘衣装を着た男たちの数に俺はそう考えた。
 高々十万円の大会に参加する数じゃない。
 というか、事前に調べた大会の規模から考えてこの人数はどう考えても許容数を超えている。
 ――まほら武道大会。
 歴史は古いが、総合格闘技系の大会や、秋のウルティマホラの人気に押されて縮小している大会だ。
 予算は少なく、だからこその賞金十万円程度。
 これほどの集客が出来るわけがない。

「にいちゃーん!」

「ん?」

 とりあえずチラシを貰うか、とチラシを配っているバイトの学生を見つけたところだった。
 知った声がして、目を向けると駆け寄ってくる学生服姿の小太郎が見えた。

「よっ、着いたぞ」

「よく来たな、長渡の兄ちゃん。迷ったと思ったで?」

「迷子になる歳じゃねえよ。ところでこの人だかりどうなってんだ?」

 なんか事情を知っているか? と訊ねると。

「――ある人物が他の大会をM&Aして、まとめたらしいです。なので、他の大会参加予定だった人も集まっているのかと」

「だとさ」

 すっと小太郎の斜め後ろから一人の少女が歩み出て、解説してくれた。
 中学生ぐらいか、給仕服にも似たフリルの付いた格好に、腰近くまである青みのかかった黒髪の少女。
 その肩には見覚えのあるオコジョを乗せている、ていうか喋っていいのか?

「ん?」

 不意にオデコの広い彼女の顔に、どこかで見覚えがあるような気がした。

「どっかであったか?」

「――ナンパですか?」

 俺の質問に、つんと澄ました顔で即答してくる少女。
 まあ定番のナンパ台詞っぽいけどな。

「ちげえよ」

 んなつもりは毛頭ない。
 顔の前で手を振りながら否定すると、少女が何故かクスリと口元を緩めて。

「冗談でした。それと一度会ってますよ、長渡 光世さん……でしたよね?」

「会ってる? んー、あぁっ」

 記憶を探ると、不意に思い出した。
 かなりうろ覚えだが、確かに会っている。

「朝倉と一緒に居たっけ?」

「そうです。綾瀬夕映といいます、よろしくです」

「兄貴の仲間だから、魔法のことも知ってるぜー」

 ペコリと頭を下げた綾瀬に、肩の上で何故か爪楊枝みたいなサイズの煙草を加えているカモという名のオコジョ。
 頭が痛くなるような光景だった。

「黙れ、ファンタジー生物。人が多いんだから喋るな」

 ていうか、お前その体でニコチンとって平気なのか?
 体の小さい生物は毒物少し取るだけでも死ぬ気がするんだが。

「そやそや。それはどうでもええけど、兄ちゃんも気合入ってるな。かっこええで」

 小太郎が俺の格好を見て、そう言ってくれた。
 結構自信のあるコーディネイトだったから、嬉しくなる。

「そか。ところで、小太郎はそのままでいいのか? 学生服だろ?」

 試合においては格好も重要なファクターだ。
 動きやすさもそうだけど、手の内を隠すためのフェイントに裾を使ったり、或いは目隠しに脱ぎやすい上着などを投げつけることもある。
 俺は精々動きやすさと、この革ジャケットがあればなんとかなる。

「これが俺の戦闘服や! ……ま、今日は予選だけやしなー。これで十分事足りるわ」

 格好の重要性は小太郎も理解しているようだった。
 予選からはそんなに念入りにする必要は無いと思ったらしい、が。

「油断して足元掬われるなよ? ま、予選からお互いに当たった場合は容赦なく足元掬うけどな」

 運が悪ければ、予選から短崎やあの桜咲などとぶつかる可能性もある。

「それならそれでええわ。手加減はなしやで!」

「当たり前だ」

 パンッと掲げた手を軽く叩いて、互いに笑ってみせる。
 悔いはないように。

「漢のやりとりだぜー」

「暑苦しいだけかと」

 ええい、外野うるさいぞ。
 綾瀬とカモの方に目を向けた時だった。
 その後ろの方から見覚えのある赤毛の少年――ネギ少年と、なにやら仮装した少女……こっちも見覚えのある子を連れて歩いてくるのが見えた。

「みなさーん、チラシ貰ってきましたよー」

「って、ネギ! なんで夏見姉ちゃん連れてきてるん!?」

 ネギ少年の後ろ。
 演劇かそれともパレードか、妖精のような格好に、頭にぶらぶらと揺れる小さな触角の小道具を付けた村上 夏美が立っていた。

「ひどいな~。せっかく応援に来たのに」

「呼んでへんで!? ていうか、出ることも教えてなかったやのに!」

 小太郎があわあわしている。
 ていうか、こっちのことは彼女は憶えているのだろうか? 目を向けられてないが、うーむ。

「あとでちづ姉も来るよー」

「マジでか!?」

 那波さんも来るらしい、よかったな。

「よくないで!?」

 ニヤニヤしていたら考えていることが見透かされたらしい。
 きしゃーと殴りかかってきた小太郎の頭を押さえて、即座に脚払いに移った攻撃を跳躍して躱した。
 すたんっと後ろに着地したが、そのまま小太郎は間髪要れずに飛び込んでくる。

「ああ、ケンカは駄目ですよ!」

「じゃれあいや!」

「かかってこい、小太郎! 俺は一撃で倒れるぞぉお!!」

「弱いよー!?」

 ネギ少年の制止を無視して、俺と小太郎が手加減した状態で手合いして、村上のツッコミを受けた。

「ん?」

 綾瀬が、誰かに気付いたようにふらふらと歩いていく。
 あれ、あれは。

「もろたで!」

「って、卑怯だぞ!」

 跳び上がりのフック。
 それを俺は仰け反りながら、伸ばした左腕で受け止めて、ビリビリと痺れる痛みに耐える。
 衝撃を受け流すために数歩後ろに下がって、俺は目を向けていた方角に体を回した。

「っと、小太郎。知り合いがいるぞ」

「ん?」

 小太郎が着地し、俺が目を向けた方角に振り返る。
 そこには綾瀬に話しかけている見覚えのある女子三名に――作務衣姿の友人が一名。

「あれ? 長渡」

「よぅ、お前も来てたか」

 短崎翔がそこにいる。
 履いているスポーツシューズに、藍色の作務衣を身に付けて、右肩にはいつもの竹刀袋を背負っている。
 傍にいるのは神楽坂に、確か桜咲と以前お嬢様と呼ばれていた子だったか。

「ちびっ子だらけだけど、どうしたの?」

 小声で不思議そうに訊ねてくる短崎。
 好きにちびっ子ばっかり集めたわけじゃないんだが。

「阿呆。お前だって傍にいるのは全員年下じゃねえか、しかも女だし」

 女子三名とどうしたんだろうか?
 こいつそこそこイケメンだからな、女子と仲良くしていてもおかしくないが。

「まあ、たまたまここで会っただけだけど」

 さらりと短崎がそう言った。
 その目は嘘付いている気配は無い、ていうか単純に告げたという感じがした。

「そうか、俺もだ」

 小太郎以外は偶々で間違いない。
 まあ出会ったのは偶然でも、丁度いい。
 入れる時間はわからないし、暇潰しにはなるだろう。







 その後、小太郎と一緒にネギ少年が取ってきたチラシに乗っていた金額に驚いていたり。
 俺たちの様子を見ていた村上に小太郎と仲がいいのか訪ねられて、軽く差し当たりの無い日常を話して時間を潰していた。

『準備が終わりました。見学者と参加希望者は入り口より、お入り下さい』

 そんな時だった。
 拡声器の声と共に神社の扉が開かれて、ぞろぞろと扉の前で並んでいた参加者希望らしき奴らが進んでいく。

「んじゃ、行くかね」

 軽く肩を回して、気合をいれようとしたのだが。
 それよりも早く待ちきれないとばかりに走り出した人物が二人いた。

「あ、行きましょうか。皆さん!」

「せやな。まずは説明聞かんと」

 ネギ少年と小太郎が慌しく進んでいき、すぐに中に入ってしまう。
 俺は苦笑して、同じように笑っている短崎に肩を竦めた。

「若いなぁ」

「僕らも若いけどね」

「じゃ、行きましょ!」

 神楽坂の声と共に、先に入っていたネギ少年と小太郎の後を追って俺たちも門を潜った。
 門を潜った先、そこには軽く数えても百人を超えた参加者がうぞうぞしていた。

「凄い数ね」

 同感だった。
 俺はそれを見渡しながら、もしかしたら知り合いもいるかもしれないと目線を動かして。

『ようこそ! 麻帆良生徒及び学生及び部外者の皆様!! 復活した「まほら武道会」へ!! 突然の告知に関わらずこれほどの人数が集まってくれたことを感謝します!』

 聞き覚えのある声に、目線を上げた。
 神社の奥、マイクを持って幅広く見渡せるような高台に立つ女がいた。
 見覚えのある紅い髪をした女――いや、女子中学生。
 あれは、まさか。

『優勝賞金一千万円! 伝統ある大会優勝の栄誉とこの賞金、見事その手に掴んでください!』

 間違いない。
 歓声が上がる最中、俺は確信する。
 あれは、朝倉だ。

「あれ? 朝倉じゃない? なんであんなところで司会を」

「確かに、朝倉だな」

 神楽坂の言葉に同意する。
 多少化粧をしているみたいだが、殆どノーメイク同然だ。
 知っている奴ならすぐに分かる。

「知り合い?」

 俺の呟きが耳に入ったのか、短崎が横目を向けて訊ねてくる。
 俺は頷きながら、説明した。

「顔見知り程度だけどな。麻帆良報道部の奴だ、ちなみに3-Aだ」

 ネギ少年の生徒だということを付け加えておく。
 しかし、なんであんなところで司会やってるんだ?

『では、今大会の主催者より開会の挨拶を!』

「ん?」

 主催者?
 買収をした奴かと、思って俺は奥に目を向けて。

「ニーハオ」

「あ?」

 出て来た奴に、目を疑った。
 それは紅い中華風ドレスを着た――超。

『学園人気No1屋台超包子オーナー、超 鈴音!』

「ええ!?」

「超さん!?」

「なん、だと?!」

 予想しなかったことに、思わず声を洩らした。
 何で主催者なんかやってるんだ? という疑問。
 さらに付け加えると、一つだけ納得がいった。

(なるほどな)

 この間の謎めいた発言。
 俺と短崎が参加することを知っていた理由。
 ――主催者だから、既に申し込んでいた奴のことは知っていたのか。
 そんな納得をしながらも、超は少しだけ大げさに横に手を上げて、視線を集めた。

「私が……この大会を買収して復活させた理由はただひとつネ」

 言葉の韻を踏む。
 注目が集まったところで、超はニコリと微笑み。

「“表の世界、裏の世界を問わずこの学園最強を見たい”。ただそれだけネ」

 パチンッとウインクをしながら告げられた言葉に、ざわめきが起きた。

「裏の世界?」

「裏って?」

 短崎と顔を合わせる。
 周りの連中も意味が分からずに首をかしげている。
 小太郎たちが不審そうに超に目を向けて、言葉を待っていた。

「20数年前まで――この大会は元々裏の世界の者たちが力を競う伝統的大会だたヨ」 

 超の言葉は止まらない。
 大仰に両手を震わせ、胸を張りながら声を響かせる。
 誰にも届くように。

「しかし、主に個人用ビデオカメラなど記録機材の発展と普及により使い手たちは技の自粛。大会の自体も形骸化、規模は縮小の一途をたどた……」

「?」

「どういう意味だ?」

 いっきにきな臭くなってきた。
 意味が分からない、それもあるが――嫌な予感が湧き上がってきてくる。

「だが、私はここに最盛期の『まほら武道会』を復活させるネ! 飛び道具及び刃物の禁止! ――そして“呪文詠唱の禁止”!! この二点を守れば如何なる技を使用してもOKネ!」

「なっ!?」

「エェエエ!?」

「チョ、いいの!?」

「アイツ、一般人の前でなんてことを!」

 ネギ少年たちがうろたえて、その横で。

「ヒュウ♪」

 何故か小太郎が感心していた。
 とりあえず殴っておく。

「あいた!? なにすんねん!」

「感心している場合か、ボケ」

「つまり、どういうこと?」

 短崎が小声でネギ少年たちに話しかける、が。

「そうそう案ずることはないヨ。今のこの時代、映像記録がなければ誰も信じないネ。大会中、この龍宮神社では完全な電子的措置により、携帯カメラも含む映像機器は一切使用出来なくするネ」

 まるでこちらの懸念を読み取ったように。
 いや、完全にネギ少年たちを見ながら超は告げていた。

「裏の世界の者は存分に力を奮うがヨロシ! 表の世界の者は“真の力”を目撃して、見聞を広めてもらえればこれ幸いネ! 以上!!!」

 超は手を上げて、ドレスの裾を揺らしながら言葉を切った。

『それでは詳細の説明に移させて頂きます!!』

 朝倉がマイクを握り締め、言葉を重ね始める。
 しかし、俺たちはそれどころじゃなかった。

「なんか分からんが、ルール無用ってことだろ!」

「どっちにしろぶちのめしてやるよ!」

「裏が何ぼのもんじゃーい!!

 盛り上がる参加者たち。
 不審を感じるどころか、多分裏というのはなんらかのパフォーマンスか何かだと判断したのだろう。
 俺だって事情が知らなければ、変に感じてもそう判断するしかなかっただろうし。
 だが。

「つまり、どういうことだ?」

「さあな? 多分大会を盛り上げてくれっちゅうことやないか?」

 小太郎に尋ねるが、軽く肩を竦めて思考放棄していた。
 楽観的というか、考えるのを捨ててやがる。

「そんな単純ならいいけど。桜咲はどう思う?」

「私にもちょっと分かりません……魔法などのことをばらすにしても、こんな大会だけで広まるわけではありませんし」

「んー、ただの裏人間使っての大会盛り上げ、ていうわけでもなさそうだしな」

「超包子の売り上げを考えれば、一千万円はそれほど痛手というわけでもないでしょうが……」

 あーだ、こーだと推測は立ち並ぶ。
 しかし、答えは出ない。
 だけど、一つだけ言えることがある。

「……怪我人を続出させるか、アイツ?」

 悔しいが、小太郎やこの間戦ったヘルマンという爺。
 あれらのように普通の奴と関係者ではスペック差が歴然だ。
 防御しても骨が砕ける、肉が裂ける、それだけの地力差がある。
 それを混ぜてやる、ということはただの参加者だけを目的にしたわけじゃないだろう。
 何人混ざるか分からないが。

「っ」

 上等だ、と思う。
 怯えるつもりはなかった。
 小太郎ともしっかりと戦うつもりだったし、闘志は翳ることは無い。
 拳を握り締めた。強く、ひたすらに。

「フフ、中々面白そうだな」

 その時だった。
 見知らぬ声が、後ろからこちらにかけられたのは。

「え? み、皆さん!?」

「ちあー、なのだ!」

 振り返った先に、ネギ少年が声を上げた。
 そこにいたのは五人の女子。
 一番目立つのは長身の大学生らしき巫女服姿の女性が一人。褐色色の肌に、黒髪。ラテン人か?
 もう一人はいつか見たことがあるような高校生らしき女性が一人。糸目で――何故か女子中学の制服を着ている。コスプレ、か?
 後の二人は小学生らしき少女が二人。浴衣姿で、糸目の女性に肩車されているし、もう一人でなんか小太郎に襲い掛かっている。
 そして、その最後の一人。
 そいつのことは俺はよく知っていた。ていうか、2時間ほど前に別れたばかりの。

「中々面白そうアル、長渡も参加するネ?」

「古菲。お前はウルティマホラあるんだから、帰れ」

 シッシと手を振ったが、古菲はニコリと笑って、人差し指を顔の横に立てた。

「水臭いアル。どうせなら大会で戦うアルネ! 参加するネ!!」

「うへ」

「一千万円なら私も出るかな? 参加は禁止されていないし、楓もどうだ?」

「そうでござるな。まあばれない程度になら、やってみるのも一興でござる」

 そういって長身の女性二人と、古菲が参加すると告げた。

「で、でで、で出るんですかぁ!?」

 ネギ少年。
 気持ちは一名だけ分かるが、落ち着け。

「あれ? 龍宮さん、参加していいんですか? ここ貴方の神社だけど」

「場所を貸しただけだ、参加自粛はされてない」

 短崎はどうやらラテン系っぽい巫女の顔を知っていたらしい。
 その疑念の顔を理解したのか、二人がこちらに顔を向けて。

「長瀬 楓でござる。いつぞやは失礼した」

「龍宮真名だ。初詣と神頼みならウチでやっていくといい」

「長渡 光世だ。よろしく」

「あ、僕は短崎 翔です。ども」

 ペコリと互いに挨拶をした。
 ついでに名前交換である。

「やばいよ。僕ら勝てそうにないし!」

「阿呆! 希望を捨てるな! たつみー姉ちゃんは拳銃使いや、少なくとも素手ならいけるわ!」

 その間にも何故か後ろの方で、ネギ少年と小太郎が会議していた。
 拳銃とか嫌な言葉を聞いたが。

「なーんか、ネギ先生に釣られてねえか?」

「言えてる」

 全員知り合いじゃないか、と短崎と同時に呟いた。
 その時だった。

「おや? 皆も出るのかい?」

「!?」

 男の声が聞こえて、振り向く。
 そこにいたのは一人の男。煙草を咥えて、灰色の短く切りそろえたオールバックの髪型のビジネススーツ姿。
 背筋の嫌な予感が湧き上がる、見覚えのある顔。

「た、高畑先生?」

 タカミチ・T・高畑。
 特別指導員の教師がそこにいた。

「やあ」

 一年の頃に、一度生活補導でぶっ飛ばされた経験のある通称デスメガネだった。
 何故に教師がここに!? と思ったが。

「ふん。面白そうな宴だな」

 その後ろから出て来た一人の――いや、一人と一体の影に俺は息を飲んだ。

「っ!」

 短崎が構える。竹刀袋に手をかけて。

「やめておけ。今は敵対する理由もないだろう? 餓鬼共」

 俺と短崎の警戒を一笑するように、笑う奴。
 可愛らしい帽子を被り、白い洋服。白ゴスと呼ばれる衣装を纏った苦い思い出のある吸血鬼が、そこに立っていた。
 いつかのあの雨の夜以来の遭遇だった。

『ケケケ、ダゼダゼ』

 横には黒い仮装を施された人形が――二足歩行して笑っていた。
 茶々丸にも似たデザイン、何故か腰後ろに腰ほどもある大バサミをホルスターに入れて止め、球体関節の手足で歩いている。
 明らかな異常。
 だけど、この場にいる全員以外には目を向けていない。

「ま、師匠ー!?」

 慌てふためいているのはネギ少年だった。
 他の全員も慌てているが、一番慌てていて。

「黙れ」

 ゲシッと初動すら見えなかった前蹴りに、ネギ少年が頬から蹴り飛ばされた。
 あ~、といいつつ倒れ伏すそれを受け止める神楽坂。

「あうー、痛い」

「ちょ、ちょっとエヴァちゃん!? 問答無用すぎるわよ!!」

「知るか」

 冷たく言い放すと、髪を掻き上げて。
 こちらをエヴァンジェリンが見た。

「久しいな、餓鬼共。無事に生き延びてはいるようだな」

「おかげさまでね」

 こちらをヒドイ目にあわせながらも、かつては助けられた。
 その事実に苦々しく答える。

「一応ね。で、何の用?」

 短崎が睨む。
 腰を軽く下げて、警戒はしている。
 その間に高畑が不思議そうに目を緩めて。


「ふむ。楽しそうだね、僕も出てみるかな?」


 そう呟いた。

『え!?』

 思わず声を上げてしまう。
 ほぼ全員が殆ど声を上げて。

「ほう?」

 唯一、エヴァンジェリンだけが楽しそうに口元を歪めていた。

「どういう用件だ?」

「なにちょっと覗くつもりだったんだけど、楽しそうだからね」

 教師から見ればお遊びだろうに、参加するつもりか。

「それに、ネギ君が小さい頃、ある程度力が付いたら腕試ししようって約束したからね」

 ちょうどいい、と言い切った。
 それに、俺たちの目がネギ少年に集中する。
 ――お前の所為かよ。
 ブンブンと左右に必死に首を振るネギ少年が泣きそうに叫んだ。

「いやいやいや!? 僕まだ修行中だし!!」

「あれ、そうかい?」

「あ、私出ます! 出ますから!!」

「ああ、アスナ君もかい。お手柔らかに頼むよ」

「は、はい!」

「……アスナ、脊髄反射で喋ってへん?」

 怒涛の勢いでの会話だった。
 俺たちが割り込む余裕は無く、短崎と肩を竦めて。

「あ、そうそう。私も出るぞ」

「え?」

「少し興味がある、ではな」

 そういってエヴァンジェリンが立ち去った。
 ……敵が増えた。

「あ、そうそう。一つ言い忘れたネ」

 不意に声が鳴り響いた。
 目を向ければ、超が扉の前でこちらに、いや、ネギ少年に目を向けて笑っていた。

「この大会が形骸化する前、二十五年前の最後の優勝者。その名前は――“ナギ・スプリングフィールド”っていうヨ」

 ナギ?

「え!?」

 そう告げて超は立ち去り、ネギ少年は呆然として。

『さて、只今より予選会の始めます』

 朝倉の言葉と共に開始の声が鳴り響いた。
 歓声に何もかも埋め尽くされた。






 そして。

「Aグループか」

 予選の組み分けに、俺はステージに立っていた。 
 各グループ二十名、A~Hまでの合計百六十人までの予選会。
 Aグループにクジで引き当てた俺は、他の面子とは誰とも被らずに、ただステージの少し端の方に立っている。
 真ん中は一番狙われることぐらいは分かる。
 開始の声を待ちながら、周りを見渡す。
 強そうな奴には警戒をするべきだ。
 同じような革ジャケットを着た肉厚の男、見覚えのある中武研の部員、空手部らしい道着姿の男、仮装の類だろうか全身に甲冑を付けた奴もいる。
 何名か武道系の部活でも有名な奴を見かけた。

「ん?」

 その中で、一人だけ気になる奴がいた。
 ピンピンに長い髪を逆立てた男、目にはサングラスを嵌めて、上には革のジャケット、下にはシンプルなデザインのズボン。
 そして、足元からはなんかケーブルが繋がっていて、地肌にはボルトがあって。
 ……ちょっとまて。

「あれ、ロボじゃね?」

 思わず呟く。
 まさかのロボコップとかそういうオチじゃないよな。

 そんな疑念を抱きながらも。

『続いては、Aグループ!』

 開始の言葉に、俺は身構えた。
 殺気立つ気配。
 そして。

『開始っ!』


 戦いが始まった。






***********************
次回より殴り合い開始です!
予選から大乱闘! 色々やります、色々出ます。


7/14 誤字修正と少しだけ加筆修正しました。


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