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No.32471の一覧
[0] 魔法の世界の魔術し!(ネギま!×Fate)[泣き虫カエル](2012/03/28 09:21)
[1] 第2話  黄金の少女[泣き虫カエル](2012/03/31 09:21)
[2] 第3話  こんにちは異世界[泣き虫カエル](2012/03/31 09:25)
[3] 第4話  絡繰茶々丸[泣き虫カエル](2012/04/07 11:58)
[4] 第5話  仕事を探そう[泣き虫カエル](2012/04/07 11:59)
[5] 第6話  Shooting star[泣き虫カエル](2012/04/13 20:44)
[6] 第7話  ライラックの花言葉[泣き虫カエル](2012/04/18 06:32)
[7] 第8話  開店準備はドタバタで[泣き虫カエル](2012/04/24 22:22)
[8] 第9話  創作喫茶 『土蔵』[泣き虫カエル](2012/05/08 21:11)
[9] 第10話  桜咲刹那 ~その誓い~[泣き虫カエル](2012/05/11 22:24)
[10] 第11話  答え[泣き虫カエル](2012/05/16 09:13)
[11] 第12話  もう一つの仕事[泣き虫カエル](2012/05/19 15:20)
[12] 第13話  視線の先に見えるモノ[泣き虫カエル](2012/05/21 21:38)
[13] 第14話  友一人、妹二人[泣き虫カエル](2012/05/24 19:03)
[14] 第15話  帰るべき場所[泣き虫カエル](2012/05/28 18:15)
[15] 第16話  ネギま![泣き虫カエル](2013/06/13 21:43)
[16] 第17話  とあるお昼休みの出来事[泣き虫カエル](2013/06/13 21:47)
[17] 第18話  それ行け、僕等の図書館探検隊 ~前編~[泣き虫カエル](2013/06/13 21:50)
[18] 第19話  それ行け、僕等の図書館探検隊 ~後編~[泣き虫カエル](2013/06/13 21:51)
[19] 第20話  その身に秘めたるモノ[泣き虫カエル](2013/06/13 21:53)
[20] 第21話  決別の時[泣き虫カエル](2013/06/13 21:55)
[21] 第22話  停滞の時[泣き虫カエル](2013/06/13 21:57)
[22] 第23話  闇の福音[泣き虫カエル](2013/06/13 21:58)
[23] 第24話  狂気と変わらぬ誓い[泣き虫カエル](2013/06/13 21:59)
[24] 第25話  譲れぬ想い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:01)
[25] 第26話  束の間の平和と新たな厄介事[泣き虫カエル](2013/06/13 22:04)
[26] 第27話  魔の都[泣き虫カエル](2013/06/13 22:06)
[27] 第28話  観光に行こう![泣き虫カエル](2013/06/13 22:07)
[28] 第29話  Party time![泣き虫カエル](2013/06/13 22:11)
[29] 第30話  胎動[泣き虫カエル](2013/06/13 22:14)
[30] 第31話  君の心の在処[泣き虫カエル](2013/06/13 22:15)
[31] 第32話  暗雲[泣き虫カエル](2013/06/13 22:16)
[32] 第33話  奪還[泣き虫カエル](2013/06/13 22:17)
[33] 第34話  それぞれの想いと願い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:19)
[34] 第35話  試練[泣き虫カエル](2013/06/13 22:21)
[36] 第36話  君の想い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:22)
[37] 第37話  買いに行こう![泣き虫カエル](2013/06/13 22:24)
[38] 第38話  紅茶は好きですか?[泣き虫カエル](2013/06/13 22:26)
[39] 第39話  紅い背中[泣き虫カエル](2013/06/13 22:28)
[40] 第40話  茶々丸の衛宮士郎観察日記[泣き虫カエル](2013/06/13 22:29)
[41] 第41話  修練[泣き虫カエル](2013/06/13 22:31)
[42] 第42話  オモイオモイ[泣き虫カエル](2013/06/13 22:32)
[43] 第43話  君のカタチ[泣き虫カエル](2013/06/14 00:14)
[44] 第44話  You And I[泣き虫カエル](2013/06/13 22:44)
[45] 第45話  襲来[泣き虫カエル](2013/08/10 18:45)
[46] 第46話  止まない雨[泣き虫カエル](2013/08/10 18:46)
[47] 第47話  白い闇[泣き虫カエル](2013/08/10 18:48)
[48] 第48話  晴れの日[泣き虫カエル](2013/08/10 18:50)
[49] 第49話  世界樹[泣き虫カエル](2013/08/10 18:51)
[50] 第50話  日常に潜む陰[泣き虫カエル](2013/08/10 18:53)
[51] 第51話  Girls Talk & Walk[泣き虫カエル](2013/08/10 18:55)
[52] 第52話  『    』[泣き虫カエル](2013/08/11 20:34)
[53] 第53話  麻帆良祭 ①[泣き虫カエル](2013/09/02 22:08)
[54] 第54話  麻帆良祭 ②[泣き虫カエル](2013/09/02 22:09)
[55] 第55話  麻帆良祭 ③[泣き虫カエル](2013/09/02 22:10)
[56] 第56話  光と影の分かれ道[泣き虫カエル](2013/09/02 22:12)
[57] 第57話  超鈴音[泣き虫カエル](2013/09/02 22:13)
[58] 第58話  超鈴音 ②[泣き虫カエル](2013/09/02 22:14)
[59] 第59話  Fate[泣き虫カエル](2014/03/09 20:48)
[60] 第60話  告白[泣き虫カエル](2014/03/16 22:56)
[61] 第61話  the Red[泣き虫カエル](2014/06/03 21:38)
[62] 第62話  Pike and Shield[泣き虫カエル](2014/11/19 21:52)
[63] 第63話  Bad Communication [泣き虫カエル](2015/05/16 22:01)
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[32471] 第18話  それ行け、僕等の図書館探検隊 ~前編~
Name: 泣き虫カエル◆92019ed0 ID:4af99eb6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/13 21:50

 
 
「――はあ、最終課題ね」
 
 いつもの様に店を開けていると、何やら深刻そうな表情をしたネギ君がやって来た。
 ネギ君が言うには、なんでも正式に先生として採用される為の最終課題なるものが学園長から出されたらしい。
 
「で、その内容って何なんだ?」
「ええ、それなんですけど……、今度の期末試験で2−Aの皆さんを学年最下位から脱出させればいいんですけど……」
「ふーん……?」
 
 まあ、妥当って言ったら妥当なのかもしれない。
 あくまで先生としての資質を見るのだから、学業成績で評価するのは当たり前だと思う。
 実際に頑張るのは学生自身ではあるのだけど、やる気を上手い具合に引き出してやるのも先生として大事な仕事だろう。
 ……って言うか最下位だったのかよ。
 
「まあ、俺には頑張れってしか言えないけど……なんだってそんなに落ち込んでんだ? そんなに大事か? それって」
 
 クラス別の成績って言うのは結構運によっても左右されやすいし、そんなに深刻になる事でもないと思うのだが……。
 
「大事ですよぉ~、2−Aはなんと言っても今までずっと最下位なんですから!」
「あー……、それは……――」
 
 ずっとかよ。
 それはそれで凄いけど、微塵も自慢にならんな。
 
「そうか、それで落ち込んでたのか」
「あ、いえ。それもあるんですけど……それだけじゃなくて……」
「なんだ、まだ何か問題あるのか」
「……問題は僕自身で……。僕が安易に魔法を使って皆さんの頭を良くしようとしたら、アスナさんに怒られてしまって」
「…………………」
 
 待て。
 なんだよその頭の良くなる魔法って……。
 滅茶苦茶怪し過ぎるんだが。
 つーか正体バレたくないないなら使うなよ、魔法!
 
「アスナさんに言われたんです。中途半端な気持ちで担任やられると生徒も迷惑だって……本当にそうですよね。皆さん自身の力を信じられないなんて担任失格です……」
 
 どーん、と言う効果音でも付きそうな感じでカウンターに突っ伏すネギ君。
 しかしアスナの奴も結構いい事言うなあ。
 
「まあ、確かにアスナの言う事には頷けるな。先生をやるんだったら生徒自身を信じてやるもんだろ、先生だったらそれをサポートする立場なんだしな」
「……やっぱり衛宮さんもそう思いますか?」
「そりゃな」
「――うん、そうですよねっ! よし、僕、決めました!」
「決めたって……何を?」
「僕、期末テストまでの間魔法を封印します!」
「”封印”って……って、言う事は実際に使えなくするのか? 使わないようにするんじゃなくて?」
「はい、これは僕の決意と戒めの証です! 魔法に頼らずに正々堂々と皆さんに向かい合うための!!」
 
 ぐっ、と力強く拳を握る。
 その瞳に迷いは無い。
 ……いい目だ。
 
「そうか、今回の件は俺には応援しか出来ないけど……頑張れ」
「はい! ありがとうございます!! じゃあ僕は魔法を封印して、明日の授業のカリキュラム作って来ますので、失礼します!」
 
 来た時とは正反対にキャッホー、と小踊りしだしそうな勢いで帰って行く。
 
「――なんとも元気の良い事で」
 
 それを暖かく見送る。
 まあ、落ち込んでいる顔よりは、ああして、はしゃいでいる位があの年頃には似合ってる。
 
 
◆◇――――◇◆
 
 
 夕日も落ちて、そろそろ空も暗くなってくる時間。
 座席もあらかた埋まってくる時間に、よく見知った顔がやって来た。
 
「士郎、食事を出せ」
「マスター、流石にいきなりそれはどうかと……」
 
 聞き様によっては、押し込み強盗のそれと変わらない横暴な言い方をするエヴァと、それを控えめに嗜める茶々丸だ。
 今日は若干来るのが遅い感じだが、恐らく部活に行っていたのだろう。
 エヴァと茶々丸は、こう見えて茶道部なんかに所属しているのだ。
 
「よう、二人とも。飯か?」
 
 エヴァの発言は聞き流し、返事をする。
 二人はいつもの様に指定席へと座った。
 
「ああ、今日はこってり気分だ」
「……なんだよ、その気分は。……トンカツ定食でいいか?」
 
 エヴァの不明発言に笑いながら答えると、それに「うむ」と鷹揚に頷くエヴァ。
 
「茶々丸もそれでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
 
 了解、と答えながら準備を始める。
 
「そう言えばそろそろ期末試験なんだってな?」
 
 手を休める事無く、先ほど聞いた話を聞いてみる。
 
「ん? そんなものもあったか……」
「なんだ、随分余裕なんだな? もしかして二人とも成績良いのか?」
 
 考えてみればエヴァはずっと中学生をやっている訳だし、試験程度なら簡単にこなしてしまえるのかもしれない。
 茶々丸はロボットだし、イメージ的にどんな問題も一瞬で答えれそうだ。
 
「私も茶々丸も中の下位だ」
「え? そんなもんなのか? てっきり二人とも滅茶苦茶良いと思ってたのに」
「ふん、そんものが何の役に立つと言うのだ? 私はやろうと思えば幾らでも点数なぞ採れるがどうでもいいことだ。赤点にならない程度に回答を埋めた後は寝ている」
「寝てるって……できるならやればいいのに」
「馬鹿者、思い出してもみろ。私はどんなに良い成績を取ろうが、ここから出る事は叶わんのだぞ? そんな物、馬鹿馬鹿しくて真面目にやってられるか……」
「そんなもんかね……、ま、成績とか俺もどうでもいいとは思うけど。茶々丸は? お前だったら間違いなくトップでも取れそうなんだけど」
「私は理数系ならば良い結果を出せるのですが……、文系となるとどうにも難しく……」
「あ、そっか……」
 
 考えてみれば文系とかの問題だと『この時筆者は何を言いたかったのでしょう』とかの曖昧な問題も多く出題される。
 人間でもそんな事は当事者じゃないのと分からないのに、仮にもロボットである茶々丸には難しいのかもしれない。
 
「ま、どちらにしても私達には意味の無い事だ。そんな事より食事はまだか?」
「……はいはい、今出来ましたよ。――はい、お待たせ。熱いから気を付けろよ」
 
 出来立てのトンカツ定食を二人の前に並べる。
 ちなみに衣はパン粉を粗めに挽いた、サクサク感アップの一品だ。
 それを前に二人はパン、と両手を合わせて「いただきます」と言う。
 二人がカツを口に頬張るとサクサク、と子気味いい音が聞こえる。
 
「む……これはなかなか……。そうだ士郎。お前、今日は早く店を閉めて帰って来い」
「え、なんでさ?」
 
 ――いきなりそんな断言口調で言われても、意味分からんのだが。
 
「以前から頼まれていた『こちらの世界』の魔法技術形態の本が漸く手に入ったのでな」
 
 言われて思い出した。
 そういえばソレは、少し前にエヴァに言って頼んだ物だ。
 こちらの世界と俺がいた世界の『神秘』が違うのはなんとなく分かっていたが、あくまで感覚的なもので、実際にどのような差異があるかイマイチ分かっていなかったため、詳しい情報源を探して貰ったんだった。
 
「ああ、それか。サンキューな。……でも、なんでそんなに急ぐ必要があるんだ? 手に入ったんだろ?」
 
 早く帰ったからと言って、そんなにすぐ読破できる内容じゃないだろうに。
 
「……それなんだがな。本を持っていたのがジジィでな」
「ジジィって……学園長か?」
「ああ、そうだ。なんでも貴重な書物である上に、現在使っているらしかったんだが……」
「――え?」
 
 現在……ツカッテル――?
 まて、なんで使ってるものが手に入ったりするんだ。
 な、何だろう……、非常ーに嫌な予感がバシバシするんだが……?
 
「無理矢理毟り取って来た」
「来るなーーっ!!」
 
 な、なんて事してんだ!?
 そんな強盗紛いの真似しなくても、俺は待てるってば!!
 
「っ!? ど、怒鳴るな士郎、私はお前の為にだな……。それにジジィにも泣きつかれたんでな、取り合えず明日まで一度借りて内容を確認して、必要ならまた後日借りると言う事で話が着いている」
「……なんか学園長に悪い事したな」
「ああ、結構本気で泣かれてな――正直、気持ち悪かった」
「………………俺が原因なんだからとやかく言えないけど。お前も辛辣だね、エヴァ」
「事実だろうよ。で、どうするんだ? 私としては貸し出し期間なんぞ気にもしないんだが」
「そこは気にしてくれ、頼むから。はあ……、分かった、そう言う事なら早く帰る。学園長の涙を無駄には出来ないし」
「そんな物こそどうでもいいんだがな……ま、いいさ。では今日は早めに帰ってくるのだな?」
「ああ」
 
 俺の肯定の返事に「そうか、そうか」と上機嫌で頷いて再び食事をパクパク食べる。
 まさか学園長をやり込めたのがそんなに嬉しいのだろうか?
 
「……茶々丸、エヴァの奴何をそんなに喜んでんだ?」
 
 エヴァに聞こえない様にボソボソと聞いてみる。
 
「単純に嬉しいのではないかと」
「嬉しいって……なんでさ?」
「士郎さんが早く帰ってくるのが、ですが……」
「……読めないな。俺、休むの日とかは結構家にいるし……会いたければここにくればいつでも会えるのに、そんなもんが嬉しいのか?」
「恐らく突発的に士郎さんが早く帰宅されるのがマスター的に”ツボ”だったのではないかと考えられます」
「…………そんなもんか?」
「ええ、そんなものです」
 
 ふーん、と返事だけする。
 まあ、喜んでいる分にはそれでいいか。
 二人は食事を終えると、最後に「さっさと帰ってこいよ」とエヴァが念押しして帰っていった。
 
「ありがとうございましたーっ」
 
 そんな事もあってか、早めにオーダーストップをかけて最後のお客さんを見送る。
 異例の早さで『CLOSE』の札をかけて、閉店の準備。
 
「……しかし、いいんだろうか」
 
 休みが多いし急遽時間を早めて店を閉めるとか。
 お客さんも困りそうなもんだが……。
 少なくとも、良いってことはないだろうな。
 
「ま、今更言っても仕方ないか」
 
 自分の中で適当に折り合いを付け、扉をくぐり店に鍵をかける。
 
「7時……まあ、こんなもんだろ」
 
 流石にこの時間帯ならエヴァも文句を言わないだろう。
 夕食は時間がなかったので、簡単にサンドウィッチを作って家で食べる事にした。
 それでも早いほうがいいだろうと思い、少し早歩きで帰宅の道を急ぐ。
 すると道中、奇妙な光景に出くわした。
 
「……なんだ、あれ」
 
 なんだってこんな時間に。
 こんな場所で。
 あんな、今にでも登山に行きそうな格好をしている一団とエンカウントしてしまうのだろうか?
 
「…………あ、怪しい」
 
 服装こそ学園指定の制服ではある物の、頭にはヘッドライトを装着し、その背中にはごついバックパックを背負っている姿が異様さを際立たせていた。よくよく見てみると、その一団にはなんとも見知った顔が含まれている。
 
「アスナにこのか……それにネギ君まで……」
 
 ネギ君に至っては何故かパジャマ姿である。
 ――うん、ますますもって訳が分からない。あんまり分かりたくもないが。
 そんなカオスのような一団に声を掛けられる訳も無く、ひたすら見送る。
 向こうも呆然と立ち尽くす俺に気が付く事はなかった。
 
 ――――サッ……。
 
 で。
 今度はその後ろを尾行するように隠れ進む、これまた怪しい影一つ。
 闇に紛れるような黒いローブを被り、物陰から物陰へと高速で移動を続ける。
 その動きは洗練されていて、それだけで只者ではないと連想させた。
 普通ならそこで俺も警戒するのだが、一瞬だけローブから覗いた横顔には見覚えがあった。いや、あり過ぎた。
 今度は刹那だった。
 でも、これがまた、
 
「…………怪しい」
 
 余りにも意味不明すぎる。
 あれではまるっきり不審人物だ。
 これは取り合えず本人をとっ捕まえて聞き出した方が早いだろう。
 早速尾行している方に狙いを定め、近寄る。
 無音で気配を殺し、素早く近距離まで寄る。
 刹那はまさか自分も尾行されているとは思いもしないのだろう。俺がすぐ近くまで寄っても気が付かないまま、木の影に隠れて前を歩く一団を見守っている。
 
「お嬢様……こんな時間に何を……」
「――その台詞、そっくりそのまま俺もお前に言いたいんだけど」
「っっっっっっ!!?? ……し、士郎さんっ!?」
 
 刹那は飛び上がりそうな程驚いたが、咄嗟に声を潜めたのは流石と言える。
 とりあえず驚く刹那を横目に「よっ」と手を上げて挨拶をする。
 
「し、し、士郎さんっ!? こんな所で何を……」
 
 前を行く集団に知られたくないのだろう、声を抑えボソボソとした声で話す刹那。
 
「俺は店から帰る途中。それよりそっちはなにやってんだ? そんな奇妙な格好で」
「き、奇妙な格好とは……、これは穏行に適した装束で……。い、いえ、そうではないですね。私はお嬢様の御身をお守りする為にここにいるのですが……」
 
 ちらり、と前を一瞥する。
 
「お嬢様って……このかか?」
「……ご存知だったのですか? 私がこのかお嬢様の身辺を御守りしていることを」
「いや、単なる消去法だよ。あの中で知ってるのはアスナとこのかとネギ君くらいだし。で、お嬢様ってイメージが似合うのはこのかだと思っただけさ」
「そうですか……お嬢様とは以前から知り合いで?」
「まあ、店に来るようになってからだけどな……。そんなことよりアレは何してるんだ?」
「それが私にもさっぱり……なにやら慌しく色々準備していたので、訝しく思い後を付けていたのですが……」
「ふーん……でも、なんで後を付けるなんてメンドクサイ事やってんだ? 一緒に行けばいいのに」
「……そ、それは」
 
 俺の言葉に、下を向き悔しそうな表情を滲ませる。
 まるで過去を悔いるようにぎゅっ、と目を閉じた。
 
「私には、あの御方の側に立つ資格はありません。私にはお嬢様を守りきれなかった過去があるのです。原因は私が未熟であったと言う一点のみ。――だから誓ったのです。もっと強くなってお嬢様を守って見せると……その為には影になり続け、全ての障害を排除してみせると……!」
 
 決意。
 それはまさに己に課した強い決意を表すような声だった。
 
「……そっか、それで前、エヴァにちょっかい出された時あんなに必死になってたんだな」
「――その節はご迷惑をおかけしました……」
「あ、いやいや。気にしてるとかそんなんじゃないから。むしろ、刹那がなんでそんなに必死なのかわかって良かった」
「……ありがとうございます」
「――でもさ」
 
 少し、何かが気に掛かる。
 何が気になったかすら分からないが……思うのだ。
 すると、俺は無意識のうちに言っていた。
 
「? なんでしょう?」
「――それでいいのかな?」
「え……それはどう言う……」
 
 思わず口をついた俺の言葉に刹那が首を傾げる。
 
「もしかしてさ、刹那って……このかと仲良かったんじゃないか?」
「え、ええ……小さな頃はお嬢様の遊び相手を務めさせて貰った時期もありました」
「そうか……でも刹那が今このかの横にいないって事は――なにかがあったんだろ?」
 
 俺の言葉に刹那が「それは……」とバツの悪い顔をする。
 しまった……無神経なことを言ってしまっただろうか。
 
「……悪い。気を悪くしたか?」
「いえ……事実ですから謝らないでください」
「助かる……。俺は二人の過去に何があったかとかは分からないし、聞きもしない。刹那にもこのかにも知り合って大して時間も経っちゃいないんだ、お前達のコトだって分からないことは沢山ある。――でもさ、このかのヤツがそんな事望むのか?」
「っ! しかし、私にはお嬢様を守ると言う誓いが――!」
「うん、刹那がこのかを大事にしたいって事は分かってるつもりだ。だからこそ、その気持ちがこのかに伝わって無いなんて事はないって思う。昔から仲良かったからこそ、このかだったらそう言うのを抜きにしても側にいて欲しいと思うんじゃないか? このかの奴……いつもニコニコ、ポワポワしてるけど……きっと、寂しがってると思う」
「…………」
 
 刹那が押し黙ってしまう。
 部外者の俺にそこまで言う資格は無いけれど、刹那がこのかを想う気持ちが本物だと分かるからこそ、なんとか仲良くしてもらいたいのが俺の本心だ。
 
「すまん、なんか偉そうに説教しちまったな。先を急ごう。このままじゃあいつ等見失っちまう」
「――え、あ……は、はい……」
 
 適当にごまかす俺に、刹那は曖昧に頷いた。
 出来る事なら刹那にも笑っていて欲しい。年頃の女の子がいつまでも思いつめた表情なのは見ていて心苦しい。
 そんな事を思うのは、俺の身勝手な思いなんだろうけど。
 それでも、感じずにはいられない。
 そうきっと、なにか切欠さえあれば仲良くなれると思うんだけど……。
 俺はそうやって考えながら暗闇に姿を掻き消した。
 
 で。
 
「あ、あの……士郎さん?」
「ん、なんだ?」
「どうして士郎さんまで着いてくるんですか?」
「あいつ等、何するつもりか知れないけど、こんな時間だし色々危ないかもしれないだろ? 女の子だらけだし。それに実際、あの格好で行く場所にも興味がある。も……しかして迷惑だったりするか?」
「い、いえ、そんな事はありません。士郎さんが居てくれれば心強い事に違いはありませんから……。しかし、行く場所は兎も角として、護衛だけなら私で十分だと思いますが……」
「え……? 何言ってるんだ刹那。お前だって女の子だろ?」
「――は? 確かに私も女ですが……私はこれでも剣士なのですが」
「馬鹿、なに言ってんだ。剣士だとかそんなの関係ない。刹那は綺麗な女の子なんだからな、夜道が危ないのは変わらないだろうが。そういう奴に護衛とかそんな危ない事させられるか。危ないのは刹那だって同じなんだからな」
 
 全く、この子はそこら辺分かっているんだろうか?
 ……いや、分かってないだろうなあ……刹那って、タイプ的にセイバーに近い感じするし。
 
「き、綺麗っ!? わ、私がですかっ!?」
 
 刹那は隠れている事を忘れているかのごとく、ワタワタと慌てだしてしまう。
 
「なに驚いてるのさ? まさか刹那も女である前に私は剣士だー、みたいな事言うんじゃないだろうな」
 
 それは勘弁して貰いたい。
 セイバーみたいに人生経験を積んだヤツが言うならまだしも、刹那みたいに見たままの年齢の子にそこまで達観されるのは悲しい気がする。
 
「い、いえ……そんな事は言いませんが……。だからと言ってその様なお言葉を頂くとは思っても見ませんでしたので……」
「そっか? 刹那を見れば誰だってそう思うと思うけどな」
「っ! ま、またそのような世辞を…………っ」
 
 世辞とかじゃないんだけどな……。
 まあ、それを言うとまた慌てそうだから言わないでおく。
 しかし、考えてみれば刹那とかは女子校通いだからそこら辺、共学に比べると疎いのかもしれない。
 ――まあ、だからと言って、俺が別段聡いとかでは全く無いわけなのではあるが……。
 
「まあいいか。それよりホラ。連中、行っちまうぞ」
「あ、……は、はいっ」
 
 反応の遅い刹那を置いて俺が先を歩く。
 後ろの方からは「き、綺麗などとは……」とか「私にはお嬢様を守る使命がっ」とかボソボソ聞こえる。
 真っ黒なローブと合わさって、正直――怖い。
 
「おーい、刹那。いい加減帰ってきちゃくれないかー?」
「ふぇっ!? は、はい、どうかしましたか!?」
「……変な事言って悪かった、謝る。だからそろそろ元の刹那に戻ってくれ」
「…………いえ、謝れるのも私としては非常に複雑なのですが……どうかしましたか?」
「この道って何処に向かってるか分かるか?」
「そうですね……ここは既に橋まで来ていますし、お嬢様達の目的地は、図書館島で間違いないかと思われます」
「図書館島? なんだそれ?」
「ご存知ありませんでしたか? ……とは言っても、私もそこまで詳しい訳ではないのですが……。図書館島は学園創立と共に設立された、世界でも最大規模を誇る図書館だと言われています。特徴としては増築などが上ではなく下、……つまり地下に向けて拡張され続け、今ではその全貌を知る者はいない程、広大だとまで言われています」
「へえー、そりゃ凄い。――で、そんなトコに何の用事があるんだ?」
「さ、さあ? 私に聞かれましても……」
「それもそうか」
 
 疑問は疑問のままひたすら尾行を続ける。
 そうして一行は目的地に到着したのか、大きな扉を潜って行く。
 
「――入って行ったな。図書館に」
「ええ、そうですね……」
「刹那、図書館と言って何を連想する?」
「図書館ですか? ……そうですね、やはり読書や調べ物、勉強と言った物しか思い浮かびませんが……」
「だよな。俺もそんなモンだし……って事は読書……って言うのはあり得ないか、そんなの大勢で行くモンじゃないし。て事は勉強か? 試験が近いとか聞いたし」
「なるほど……、それはあり得ますね。確かにあのメンバーを見るに、その可能性は否定できないかもしれません」
「そうなのか?」
「ええ、クラスでもなにやら『バカレンジャー』と言って、今日も騒がれていたメンバーが揃っていますし」
「ば、バカレンジャーとはこれまた直球な……。でも、このかのヤツもか? イメージ的にアイツは結構出来そうなイメージなんだけど」
「ええ、お嬢様の成績は上の中と非常に優秀ですので、そのメンバーは他の方です」
「そっか。あ、全員中に入ったな。尾行続けるか?」
「もちろんです」
 
 こそこそと一定の距離を保ちながら、怪しい集団を尾行する怪しい二人組み。
 怪しさが二乗倍である。
 もし、第三者がこの場面を見ようモンなら一発通報されてもおかしくはあるまい。
 少なくとも俺はそうする自信がある。
 外側で待機しているらしい二人の目を掻い潜り、アスナ達の跡を追跡して図書館の内部に入り込む。
 
「――って、広っ!」
 
 思わず驚いてしまう。
 入ったら目の前に、広大な空間が現れた。
 全貌が把握できないほどに乱立する超大な本棚が並び立つ様は、正に圧巻の一言に尽きる。
 背の高い本棚にびっちりと詰め込まれた書物の量は、それこそ膨大だろう事を容易に連想させた。
 
「流石に驚きましたか? 仕方ないと思いますけど……」
 
 少し苦笑気味に刹那が俺を見やる。
 
「これは驚かない方が変だろう……。なに考えてんだ、これ作ったヤツ」
 
 思わず呆れたように言ってしまう。
 
「それには深く同意しますが……。それより気を付けて下さい、ここには世界各地から貴重書が集められていますので盗掘者対策が成されているらしいです。そこかしこに罠がありますので行動には慎重を期して下さい」
 
 ………………や、罠って。
 なにやら迷宮や遺跡じみた話になってきたな、おい。
 それってもはや図書館って言わないよね?
 もしかしてこれがこの世界の標準なんでしょうか?
 
「――いよいよ魔窟じみて来たな……。でも良かったのか? そんな所にあいつ等行かせて?」
 
 刹那の立場からすると、そんな所にこのかを向かわせるのは不安だろうに。
 
「本来ならお止めしたいのは山々なのですが……。この学園には元々図書館を調査する為に発足されたサークルもあり、そこにお嬢様も所属しております。ですからお嬢様も無茶はしないと思われるのですが……。それに……あそこには楓や古(クー)がおりますので……」
「楓やクー?」
「ええ、あそこにいる背の高いのが楓で、拳法着を着ているのが古です」
 
 刹那はそう言うと前を行く二人を指差した。
 
「なんだ? あの二人はこういうのに慣れてるのか?」
「……慣れているというかなんと言うか……。古は中国拳法の達人ですし、楓はあれでも忍者です」
「へー、拳法の達人と忍者か………………………忍者?」
 
 待て、なんだそれは。
 忍者ってなんだ忍者って!
 刹那が余りにも普通に言うので、思わず聞き流してしまう所だった。
 
「ええ、甲賀忍術のかなりの実力者です。いざと言う時も頼りになる筈です」
「ちょ、ちょっと待とうか! ……忍者ってあの忍者か?」
「え、ええ。そうですが……」
 
 や、そんな、それがなにか? って感じで首を傾げられても……。
 って本当にいるんだ忍者って。
 まあ、それはこっちの世界の事情って事で納得して置くしかあるまい。
 
「まあ、”百聞は一見に如かず”です。しばらく様子を伺いましょう」
 
 と、視線を前に向ける。
 すると、大量の本を前にネギ君がはしゃいでいるのが見える。
 そして本の一つを抜き取ろうとすると――。
 
 カチリ、と言う音と共に矢が飛び出してきた。
 
「危っ……!」
 
 思わず身体が動く。届くわけが無いと分かっていながらも動いてしまった。
 が、それより前に、ガシっとその矢を掴み取る手があった。
 
「……と、まあ、あの程度なら楓には造作もありません」
「…………な、なるほど」
 
 確かにあの程度のトラブルになら冷静に対処できる程の腕はあったようだ。
 いや、しかしまあ魔術師である俺が言うのもアレだけど、女子中学生の忍者って言うのもスゴイな……。
 
「――先に進むようです。行きましょう士郎さん」
「あ、ああ……」
 
 驚く俺を横目に、先を行く刹那。
 とりあえず暫くは見てろって事なんだろうか。



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