「千雨ー! おきなさーい!」
私は誰かに大声で名前を呼ばれ目を覚ます。部屋の中を見渡すとテレビの前には電源が切られたゲーム機が置かれ、部屋の隅には撮影機材なんて置いていない。そして私の身長はガキの頃のそれだ。クローゼットの中味までは閉まっているからわからないが。
あー、なんだ。普通に見れたよ続き。あれか、前回が寝て終わったから今回は起きたところからってことか? それできっと寝ると夢から醒めるんだろ?
「千雨ー! まだ寝てるのー!?」
「いま行くー!」
しかも今回は行動まで自由に出来る明晰夢、と。まるで胡蝶の夢だな。
っと、とりあえずパジャマから着替えるか。このパジャマもガキの頃着てたのと一緒だな。別に感慨深くもなんとも無いが、しっかり覚えてる自分にちょっと苦笑してしまう。これを着てたころはまだ自分の言うことを聞いてもらおうと一生懸命で、周りから変な目で見られてたっけ。
この夢は家そのものは実家と一緒で、ただ通ってる小学校が違う設あ定らしい。海鳴市という街に住み、私立聖祥大附属小学校の2年生。麻帆良のまの字も周りには無く、非常識の気配もどこにも無い。あ、いや、昨日のアリサとすずかはお嬢様らしいが、まぁその程度だ。
こんな設定もすらすらと思い出せるのは、夢ならではのご都合主義というやつか。
「朝ごはんさめるわよー!」
「はーい!」
おっと、こっちの母親が呼んでる、怒り出さないうちにさっさと着替えて食べるとするか。夢の中で食事するのも妙な気分だぜ。
私は着替え終わった後眼鏡を掛けていることを確認し、部屋を出て居間へと移動していった。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃーい。」
朝飯を食べたあと、いつものように、というのも変な気分だけど、まぁいつものようにバス停まで歩いて向かう。上級生か下級生か知らないが、バス停には既に数人の小学生が並んでいたが、特に挨拶することも無く列の後ろへと続く。
バスを待つ間、小学2年生ってどんな授業やってたかを思い出してみるけど、さっぱり思い出せない。九九は小学2年生っつーことはしっかり覚えてたんだけどな。他は果たして何をやっている所だったか……まぁ、どうにでもなるだろ。伊達に中学2年生をやっているわけじゃない。
お、ひょっとしてこれって強くてニューゲームってやつか? 全学生の憧れだな、うん。
なんてことを考えているうちにバスが到着し、適当に空いてる場所へ座ろうとしたときに――
「千雨ちゃん! こっちこっちー!!」
バスの一番後ろ、5人掛けの席を占領してる昨日の3人組の一人、なのはが大声で呼んできた。
「恥ずかしいからそんな大声で呼ぶな!」
「にゃはは、ごめんごめん。」
そう文句を言いつつ3人組の元へ向かう。なのはは大きく、すずかは小さく手を振り、アリサは腕を組んで不敵な笑みを浮かべていた。こんな小さなことでもそれぞれ性格の違いが出るもんだ。そしてアリサ、お前はどこの王女様だ。
「あれ? あんたこの時間のバスに乗ってたんだ。」
「おう、こういう後ろの席は不良の指定席だからな、目合わせないようにしてた。」
「だ、だれが不良よ!」
「クラスメイトが心配で保健室と教室を行ったり来たりするいい子だもんな。誤解してた、ごめん。」
「……っ!」
素直に謝って頭を下げる。するとアリサは二の句を継げずに押し黙った。
おーおーアリサのやつ顔真っ赤。ちょっとしたジャブを打ってきたから、お返ししただけなんだけどな。その隣ではすずかが「長谷川さんの勝ち~」なんか言ってるし。なのはは何か知らんがニコニコと嬉しそうだ。
そしてアリサ、やっぱりこいつ典型的なツンデレか。ツンデレお嬢様ってテンプレすぎじゃないか?
「まぁ、これからも宜しく頼むよ『アリサ』、『すずか』」
そう言って二人に笑いかける。そうすると二人は軽く目を見開いて、ちょっと間が空いた後。
「当然じゃない、千雨!」
「うん、千雨ちゃん。」
「あ、ねぇねぇ私は? 千雨ちゃん? ねぇ!?」
ああ、やっぱいいな、こういうの。
そして時間は昼休み。私たち4人は一緒に屋上で弁当を食べている。午前中の授業は道徳、国語、算数、体育だった。私はやはりというか当然というか、なんの問題も無く終わるように思ったんだけど――
「ちょっとなによ千雨! 因数分解が分かるってどういうこと!?」
そう、算数があまりにも暇なため外をみてぼーっとしていたら、また教師に当てられた。問題自体は1桁の掛け算なのでぱっと答えたのだが、その折教師からきちんと授業を聞けと小言をもらっちまった。そこで売り言葉に買い言葉というか、うん、たぶん浮かれていたんだろう。いつもの私なら適当に返事をして流すところなんだけど、つい……
「因数分解までなら分かるから大丈夫です。」
って答えてしまい、そのまま教師の出す因数分解(中1レベル)をパパっと答えちまった。ぬああ、現実では常識外れの連中に嫌気がさしていたはずなのに、こっちで私が羽目をはずしてどうすんだ! しかも大丈夫って、なにが大丈夫なんだよ! 完璧痛い子じゃねーか……!
「千雨ちゃんって頭良かったんだね。塾とか行ってるの?」
「うがぁぁ……! って、ん? 塾は行ってねーよ。」
「じゃあなんで因数分解なんて知ってるのよ?」
「あー、家庭教師? みたいなもんだ。」
うん、嘘は言ってない? 微妙だな。まさかこれは夢の中で、現実では中学2年生ですなんて言えるわけないし。
その後もずるいとか教えろとか言ってくるアリサを適当にあしらいつつ食事を続け、そろそろ昼休みも終わろうかというころ。
「ねぇ、今日放課後千雨ちゃんの家に遊びに行っていい?」
と、なのはがこんなことを言い出した。
私の家に? 遊びに? 別に見られて困るものは、向こうの寮の自室と違って何もないし、特別断る理由もない、か。
でも私の家に来て何するんだろうな。アリサ、すずかと違って極々一般的な庶民だぜ、家は。
そう思い一言断わっておくかと口を開くも――
「いいけど、ゲームくらいしかないよ? 普通の家だし。」
「いいね、ゲームしたい!」
「勉強教えなさいよ!」
「私も行ってみたい!」
と、満場一致で可決され、放課後私の家に案内することになった。
そして午後の授業は今度こそ何事もなく終わり、放課後。校門まで迎えにきたアリサの家の車で(リムジンだった)私の家まで案内し、部屋に上がらせた。思えば何気に初じゃねーか? 友達を部屋に上げるのって。
……って、いかん、これは夢だ。なに普通にカウントしようとしてるんだ私は。それに麻帆良の連中を部屋に上げることは絶対ない!
「あー! このカメラ最新のやつだ!? 千雨ちゃん撮っていい!?」
と、そんなことを思っていると意外にもなのはがカメラに興味を示した。
部屋の中のものはある程度向こうと同じものがあるらしい。カメラやパソコン、あと小物だな。撮影機材とコスプレ衣装は無いが、これはきっと私が隠したいと思っているからなんだろう。
「ああ、適当に撮っていいぞ。メモリーもまだ空きがあるはずだし。」
「やったー! ありがとう!」
それじゃ飲み物とってくるから、適当にしててくれー。と、聞いてるかどうかは知らないが3人に声をかけ、私は飲み物を取りに台所へと移動した。何があるかなー、麦茶でいいかなー、と思いながら冷蔵庫を開ける。
すると、そこには。
「こ、これは……!」
「またせたなー」
「あ、お、おか、おかえり!?」
「あん? どうした?」
コップ4つに麦茶が入ったポット、あと黒い液体が入ったコップを1個お盆に載せて、私は部屋へと戻ってきた。
てっきりカメラで適当に部屋の中を取りまわってるか、ゲームか本棚でも漁ってるとばかり思っていたが、予想は外れ3人してカメラのディスプレイを覗き込んでいた。お互いを写真に撮って写り具合を見てるのか? とも思ったけど、それにしては慌てすぎだ。
一体何してるのかと思い私もカメラのディスプレイを見ようと覗き込むも――
「だめ!?」
隠されてしまった。
「おいおい、それは私のカメラだぜ? 何撮ったんだ?」
「え、えーと、千雨ちゃん怒らない?」
「言ってみな。」
「あ、あのね、撮った写真を見ようとしたら、こんな写真が出てきて……」
そう言い、ディスプレイを私の方へ向けるなのは。そこに写っていたものは。
「ぬああぁぁぁぁ!? 見るな!!」
モリ○ンのコスプレをした私(中学生ver)だった。
「ご、ごめんね!? わざとじゃないんだよ!?」
「あははは!! 似合ってるじゃない! なんで隠すのよ!」
「うん、ホント可愛いよね。これって千雨ちゃんのお姉さん?」
お、おね? そうか! いま私は小学生だから……!
「そ、そう! いや、従姉妹だ! いやーうちに来てカメラで撮っていくんだよ! あはは!」
ああ、くそ、恥ずかしいな! なんでこんなのに限って一緒にくるんだよ!? コスプレ衣装がなくて安心してたのに! 油断も隙も無いな!
「ああくそ、アリサ! 思いっきり笑いやがって! お前はこれを飲め!」
「ん? なにこれ、コーラ?」
そう言い、アリサには麦茶じゃなくて冷蔵庫に入っていた『アレ』を渡す。ああ、コーラみたいなもんだ、そう言うとアリサは特に警戒もせず一口飲む。
そう、もちろんその正体は!
「んぐ!? ッカハ、ゴホッ、ま、不味い!? なによこれ!?」
「ははは、炭酸コーヒートマト味だ。」
「どこから買ってきたのよこんなもん!?」
「ハハハ、写真の従姉妹が持ってきたけど不味くて飲めなかった。」
「そんなもん飲ませるんじゃないわよー!?」
「そ、そんなに不味いの? 私も少し飲んでみたい……」
「や、やめておきなさい!? なのは!?」
お、今度はアリサとなのはが漫才を始めたな。今のうちにカメラ隠すか……。っと、すずかが寄ってきた?
「ねぇ、千雨ちゃん、吸血鬼とか好きなの?」
「あ、あ? いや、吸血鬼物か? んー、結構好きだぜ?」
「ふーん、そっかぁ……。」
一体なんだ? すずかのやつ、なんか変だったけど。
「あ、私も飲んでみたい!」
それだけ聞くと、振り返って漫才をしている二人の元へ駆け寄るすずか。「まずーい!」 って言って麦茶を飲んでるなのはから、コーヒーを受け取り飲む。そうして、「あ、案外飲めなくもないかも……?」 なんていって二人からすごい目でみられている。
「あはは、いいよな、やっぱ。」
うん、楽しいな、やっぱり。
「ちょっと千雨! のこりはあんたが飲みなさいよ!」
「げ!? すずか、頼む!!」
その後もみんなで騒ぎ、ゲームし、パソコンの中にあった別のコスプレ写真も見つかってまた一騒ぎし。空が赤くなり始めたところで解散となった。
「お邪魔しましたー!」
「また明日ね、千雨ちゃん!」
「ばいばーい!」
「元気な子達だったわねー。昨日言ってたお友達?」
「……うん!」
ピピピピ……ピピピピ……
「んー……晩飯の時間か。」
その後、やはりというかなんと言うか、夜になりベットに入って、しばらくしたところで目がさめた。
部屋の中は薄暗く、廊下からはキャーキャーと騒ぎ声が聞こえるが、部屋の中からは物音一つせず。部屋の扉が、廊下の外、クラスメイト達の世界(非常識)と私の世界(常識)を隔てる境のようで。
いま見たものは所詮夢だ、夢ではあるんだけど。
「たのしかった、なぁ……。」
そうつぶやくと、起き上がり冷蔵庫から水を取り出し一口飲む。
そして、何も入っていない冷蔵庫へ水を戻し。私は食堂へと向かっていった。
みんなーーおハローーp(・▽・)q 今日は大・大・大ニュースがあるんだよー!
なんと! ちうはさっき解析夢を見ちゃいました!!
5番目の白鳥 > 夢のなかで夢とわかるやつですね? 私も見てみたいものです。
通りすがりB > ちうタンどんな夢みたの?(w
え~っとね、結構忘れちゃったんだけど~(> <)i
友達と遊んでる夢だったの! 楽しかったよ~♪
学園長 > もしかして:明晰夢
アイスワールド > 俺も解析夢見てみたいな!それでちうタンと(以下略
ちうファンHIRO > でも解析夢って危ないって聞いたことあるようなー?
え~~、ちう怖い(>_<) ただの夢じゃないの~?
アイスワールド > ちうタンの夢を見れるなら本望!むしろご褒美!
5番目の白鳥 > 夢そのものじゃなく、それをどう捉えるかですよ。
通りすがりB > 二度寝して遅刻の危機だね(w
う~ん、どう捉える?覚えてないもんよくわかんないや。
でもでも遅刻はとっても危険かも~!
5番目の白鳥 > 休めばいいのです。
アイスワールド > 俺も休んで夢を見続けるぜ!
学園長 > ず、ずるはいかん!
通りすがりB > しかたないね(w
ちうはちゃんと毎日学校に行ってるよ!
あ~、でも来週から期末テストなんだよ!勉強しなきゃー!p(>_<)q
ちうファンHIRO > 実力を見るためのテストなんだから勉強しなくていいよ!
アイスワールド > 俺も俺も。でも俺は夢でちうタンに教えてもらう!
というわけで今日はもう落ちるね~♪ばいばーい!
晩飯を食べて食堂から帰って来た私は、いつもの習慣でパソコンを開きチャットルームに顔を出した。
チャットルームには常連連中ばかりがいたが、その中には私が何か発言しない限り何もしゃべらん奴もいる。でも私が何か言うと真っ先に反応してくるんだよな。そして取りあえず夢の事を話題にしてちょっと喋ったが、テストも間近なので返事を待たずにチャットルームを閉じる。
期末テストで最下位だったら小学生からやりなおし……別にその噂を本気で信じているわけではないが、好き好んで悪い点数を取りたいわけでもない。いつも通りテスト範囲の教科書問題を一通りやる程度で良いだろう。それでいつも平均点より少し下くらいの結果になる。まぁ、まじめに勉強する気も無いしな。
だが、なんか担任のガキが妙に張り切っていたのが気になるな。初めてのテストなら張り切るのも当然かもしんねーけど、それにしても……。ま、相変わらずクラスの連中は騒げれば何でも良いという感じだったけどよ。
そんなことを思いつつカバンから教科書とノートを取り出そうとし――
「ちっ、持ってくるの忘れたか。」
私は教室の机の中に教科書とノートを入れっぱなしで、持って帰って来ていないことに気づく。
さて、そうすると一気に手持ち無沙汰になっちまった。またチャットでもするか? そう思うも、既に勉強するといって落ちている手前、なかなか戻り辛いものがある。じゃあコスプレ写真でも撮るか? そう思いカメラを手にとるも。
『千雨ちゃん撮っていい!?』
『あはは! 似合ってるじゃない!』
『可愛いよね~』
家の部屋での光景が急に頭をよぎる。結局あいつら何撮ったんだろうな? そう思いカメラのメモリーを参照しようと電源をオンするが、どうやらバッテリー切れなのか画面は黒いままだ。
「ああ、電源いれたまま隠したしな。」
コスプレしていることをリアルの友人にふれて回るほどオープンじゃない。あいつら3人、特にアリサは笑いはするだろうが、決して馬鹿にしたり受け入れなかったりすることは無いだろう。そうは思うが、いまいち踏ん切りがつかないのがオタク心というものだ。
など考えつつ、メモリをカメラから外し、カメラを充電器にセットする。すると充電中を示すオレンジのランプが光る、やはりバッテリー切れだったらしい。
それじゃあと、メモリをパソコンにセットしようとし――
「……まてまてまてまて!? なにナチュラルに確認しようとしてるんだ私は!?」
ありゃ夢じゃねーか!! なんだよリアルの友人って!? これじゃ危ない奴じゃねーか! メモリを開いたところであいつらの写真があるわけ無い! しっかりしろ私!?
「あー、もう! 寝る!」
すっかり何もする気も起きなくなった私は、まだいつも寝る時間からするとかなり早いが寝ることにした。やってらんねー、そういう思いと、また夢が見れるのかなという仄かな思いがあることは自覚している。
馬鹿馬鹿しい、夢に何期待してるんだ私は。そう思いつつも、見れたらいいな、1日で終わるのは勿体無いなと、思いながら……。
翌朝。
「結局見れたよ。なんだ、いつまで続くんだ?」
小学2年生の夢はまた見る事が出来た。あいつらと一緒のバスで学校に行き、つまらない授業を聞き流し、屋上で一緒に弁当を食べ。アリサに数学を教える代わりに英語を教えてもらうことを約束し。ネイティブな英語と教科書英語とはまた違うだろうが、あのガキなら意味さえ通じれば正解にするだろう。
そして午後の授業のあと、今日は塾があると言うアリサ、すずかと別れ、途中までなのはと一緒に帰り。家についたあとは家族としゃべり一緒に料理をして、作った料理をお父さんに褒められ幸せな気分のまま1日が終了した。
現実の小学生のときにはありえなかった1日だ。決して家族と仲が悪いわけじゃねーんだけど……。
「いっそあっちが現実ならいいのに。」
つい、そんなことを呟いた。なのは達の他にも教室にいるやつらと友達になり、週に何度も遊び、家では家族と和やかに過ごす。すこし想像しただけでもそれはとても楽しい毎日になりそうだ。
「はぁ……。学校いこ。」
そんな現実味のないことを言ってもしかたない。それこそ『夢』だっつの。
なんて考えなら、夢の中身を反芻しつつ登校の準備を始めるのだった。
「私たちが最下位脱出しないとネギ先生がクビですって~~~!?」
教室に入ったとたん、いいんちょのそんな叫び声が聞こえてきた。
おう、そりゃいい。最下位といわず今すぐクビにしろ、大人になってから出直せってんだ。だいたい免許なんて持ってないだろ? 後に生まれた「先生」なんて何の冗談だ。
そう思いながら自分の席につく。隣の席の綾瀬がまだ来てないな、珍しい。いつも私より早く来てるのに。
っと、やっぱり机の中に教科書置いたままだったか。とりあえず全部出して、5教科だけカバンに入れて持って帰るか。後は整理して持って帰らないものをロッカーに移動するか……。
そんな事をしていると、叫びながら廊下を走る音に気づく。どこの馬鹿だ? と思い廊下のほうを見ると――
「みんなー大変大変!! バカレンジャーがネギ先生連れて行方不明になっちゃった!!」
……なんだよ行方不明って? 聞けば図書館島で遭難したらしい。
知らんけど遭難するようなサイズの島かよ! 本当になんなんだここの奴らは! おかしいだろ!? だれか突っ込めよ!? なんでそんな遭難する場所が街の中にあんだよ!?
それにテストが近いってのに先生までそろってみんなで探検かよ!? 挙句遭難しましただぁ!? 授業どうするんだよ!!
「とにかく! みなさん、テストまでしっかり勉強して、今回だけは最下位脱出ですわよ! その辺の本気でやってない方々も!」
「置き勉なんてしないでテスト勉強しないとネギ先生いなくなっちゃうよー!?」
イライラしながら教科書を整理してると、クラスのやつらが私達に……正確には、教科書を整理している『私を見て』そんなことを言いやがった。
くそ、なんであのガキのために勉強しなきゃなんねーんだ!!
「……知ったこっちゃねーな。」
「は、長谷川さん?」
なんであんなガキのために勉強するのが当然みたいな空気なんだ!?
なんで探検なんてバカなことしてる奴らの尻拭いを私もするんだよ!?
ああ、もうやだ、ついていけない。クラス解散でもネギ先生クビでも好きにしやがれ!!
「いいんちょ。わりーけど早退する、宜しく言っといてくれ。」
「は、長谷川さん!? 待って下さい!」
いいんちょが引き止めてくるけど知ったことか。5教科が入ったカバンを引っ掴み、それ以外を机の中へと突っ込んで。そのまま振り返らずに学校を出て、寮の自室へと帰り。
私はベットに直行した。