「唐突だが、今日はこの刀、散花との出会いについて語ろうと思う」
「……」
「……」
<本当に唐突ですっ!でもそんなところも素敵!……それにしても、散花ちゃんとの出会いですか……。私は知らないので楽しみですっ>
<……zzz>
「むかし、むかし俺が各地の遺物を探し回っていた頃のことです……」
<マスターの秘められし過去が、今!>
俺は常に眠そうな刀、ちーこに目を向ける。
……っていうか寝てる。
まあいい。
そう、こいつとの出会いは……
番外編 ~出会い・おぼえてますか?~
ファールベウト王国・地下迷宮「竜園」地下55階
「……もうゴールしていいかな?」
「駄目です」
俺は座りこむ。
……疲れた。
何、ここ?
罠だらけだし、モンスター強いし、セーブ出来ないし……セーブ?
「回復頼むー」
「いたいのいたいのとんでいけー」
「なめてんの?」
「……っ」
顔が赤くなるシルフ。
恥ずかしいならやるなよ……
「ここが最下層の様です」
「着いたのか!?」
そう、俺たちはこの迷宮に遺物があると聞き、この国にやって来たのだ
目の前には何かが置いてある祭壇がある
「はい、あれが一級指定遺物<散花>です」
「あれが……。あと、呼び方はAランクで」
「……はい?」
「そっちの方が、何ていうか……スペシャライズって感じじゃん?」
「……。……あれがAランク遺物<散花>です>
「あれが……。よし」
「……マスター!? いきなり近寄るのは危険です!」
珍しく慌てるシルフ。
大丈夫だろ。
祭壇に奉られている刀に近づく。
こちらに気づいたのか一人でに浮いた。
<……こんなところに何のようだ、にんげん。……ふああ>
……えらく眠そうだな。
「……マスターっ」
シルフが追いついてくる。
「力を貸してもらう為に来た。俺の目的のため力を貸してくれ……ちーこ」
「また勝手にあだ名を!? 怒らせたらそこまでなんですよ!?」
<……ちーこ?>
「ああ、散花だからちーこ……我ながら恐ろしいネーミングセンスだ」
<……ちーこ>
ちーこが興味をこちらに向ける。
俺のことをじっと見ている。
……刀に見られるって変な気分だな。
「俺と来てくれ」
「マスター、なんでそんなに偉そうなんです!? 相手は一級指定遺物なんですよ!? 私たちなんか、一瞬でバラバラにされるんですよ!」
<……うん、いく。あなたは……?>
「ナナシだ」
<……うん。ナナシといく>
「ええぇ!? そんな簡単に!? 一級遺物の精霊がそんな簡単に!?」
「お前キャラ崩れてるぞ」
「……。馬鹿な」
瞬時に無表情に戻るシルフ。
……面白いな。
「これが精霊眼(グラムアイ)の力だ!」
「変な設定つけないで下さい!」
キャラ崩れが激しいな……
「……それでは契約の言葉を」
「契約? そんなの知らないんだが」
「……なんでもいいんです。マスターが相手に自分に従う言葉をかけ、相手が了解したなら」
「成るほど。それっぽい言葉ならいいんだな」
……むむむ
これでいいか。
「…………汝は健やかなる時も、病める時も生涯、俺に従うことを誓いますか?」
「アホですか!?」
<……ちかいます>
「えぇー!? ……こんなんでいいんですか」
なにやら、呆然としているシルフ。
なにはともあれ無事に契約できたようだ。
<……ちゅー>
ぐさり
「痛い!? なにすんじゃい!?」
<……誓いのキス>
「キス!? 誓いのブスッの間違いだろ!?」
「……なんで、ちょっとうまい事言えた、みたいな顔なんですか……」
<散花>を腰にさす。
「行くか」
「はい」
<……うん」
「……」
「……?」
<……?>
「……お前ら」
……これ
「……どうしたんですか、マスター」
「……かぶってる」
「……はい?」
怪訝そうな顔でこちらを見る
「キャラが被ってんだよ!」
「……はあ?」
<……はー>
「無口っぽい、キャラが、被ってんだよ!」
「……そんな事ですか」
「そんなこと!? 死活問題だぞ!?」
世界に対する冒涜だ!
「……そんなこと言われても、どうすれば?」
<……すればー>
「シルフ、お前のキャラ変更で。なんかアホみたいに明るいキャラで」
「……変更って。そんなの無理ですよ」
「お前には素質がある」
俺の眼に間違いはあまり無い!
「……そんなこと……」
「やる前からあきらめるなよ!」
「……」
「お前には素質がある。お前には素質があるんだ!」
<……2回言った>
「お前にはっ、素質がっ、あるんだっっーーー!」
<……3回>
俺の言葉に感銘を受けたのかシルフは、
「……はい。マスターがそこまで言うなら、努力します……」
「パーフェクト!」
なんで俺、こんなにテンション高いんだ……
エヴァの家 リビング
「……と言うことがあったのさ」
<はー、そんなことがあったんですか……>
「……」
「……」
<マスターと散花ちゃんは、その時からの付き合いなんですね>
「まあな」
<……まあなー>
「あっ、肉が焼けてる。……うまい。やっぱり茶々丸さんのご飯はおいしいなあ」
「……ありがとうございます」
うまうま
「……あの、ちょっといいでござるか、エヴァ殿?」
「なんだ」
「いきなり、師匠が立ち上がって昔話を始めたんでござるが……なんでみんな普通に食事をしてるんでござるか?」
「……もう慣れたんだよ……」
「……そうでござるか……」
「今日はエヴァの家で焼肉をしている。友達になった忍者も一緒だ」
<……誰に言ってるんですか?>
エヴァがそういえばという顔で
「何でその刀は喋るんだ?」
「時計もしゃべってるが?」
「それは……もう、なんか……どうでもいい」
<む。どうでもいいってなんですか!「どうか、お願いします。でも、いいや」の略ですか?>
どっちだよ……
「……ふむ。説明!」
<はい。調べたところ、日本でも同じような伝承がありますが、長く存在したモノには魂が宿ります>
「……九十九神、ですね」
<はい。私たちの世界でも同じことが起きます。長く存在した武器には精霊が宿り、長く存在すれば、するほど強い精霊となります。強い精霊=強い武器ですね>
「ふむふむ」
楓がこくこく頷く
<ちかちゃんはAランクですから……軽く3000年以上は存在してますね>
<……はずかしー>
「ババアじゃん」
ぐさり
べきり
「痛い!? 冗談だよ! あとなんでエヴァも殴るんだ!?」
「……うるさい」
明日も、学校か……
先生も大変だぜ!