それはナナシさんと不思議な時計シルフちゃんが、エヴァンジェリンの家に来てまだ一年も経って無い、ある夏の日の事でした
それはお昼、みんなでざるそばを食べていた時に起こりました
話は変わるが、これナレーションとかじゃなくて、俺が思ってる事だから。一応。
<そうだったんですか……どうでもいいですけど>
番外編 ナナシとシルフの夏の午後
つるつるとそばを啜る音が聞こえるリビング
俺は唐突に立ち上がった!
「……?」
エヴァが怪訝な目でこちらを見る
「いきなりだが、今日俺は、どんな質問にも答えようと思う!」
「……」
「そう、何でもだ!どんな赤裸々な質問にも命がけで答えると誓う!」
「……」
「……それは今すぐにするべき事なのですか?」
「ああ、出来るだけ早い方がいい」
「……では食事の後にしませんか?」
「そうだね」
俺は再びイスに座り、ざるそばを啜るのだった……
……食事終わり
「さあ!どんな質問でも来い!」
「何でこんなに元気なんだ……このクソ暑いなかで……それに急過ぎて意味が分からんのだが……」
エヴァは非常にげんなりしている
<……もしかして?茶々丸、今日は何日ですか?>
「……今日は21日ですが?>
<やっぱり>
「何か知っているのか?」
<はい。21日は、マスターがどんな質問にも積極的に答えてくれる日なんです!>
「……そのままじゃないか。……別にかまわんが……」
<あれぇ?妙にあっさり納得しましたね?いつもなら凄い剣幕で突っ込みを入れるのに?>
「……もう慣れた。コイツが変な事を言い出すのも、変なのも……」
エヴァは本当にげんなりしている
この暑さに相当きているようだ
あと、さりげなく変人扱いされてるな……俺
「……いや、やはりおかしい!今まで21日にそんな事無かったじゃないか!?」
<まあ、私が適当に合わせただけですからね。本当はマスターのいつものきまぐれだと思いますよ>
「なあ、コイツ壊してもいいか?」
「いいよ~」
<駄目ですよ!何でそんなに軽いノリなんですか!?>
まあ、壊せないと分かってるからな
<じゃあ、私の質問から>
「……お前からなんだ。別にいいけど」
<私の名前ってやっぱり精霊の名前から取ったんですか?精霊の様にカワイイからですか、えへへ>
「常識的に考えてそれはないだろ」
エヴァが突っ込む
俺もそう思う
……というか
「俺がつけたんじゃ無いから知らんよ」
<……え?それじゃあ誰が?>
「そりゃ、お前の両親じゃね?はい次の質問」
<何気に凄いこと言いませんでした!?え……え、両親って。>
「……好きな食べ物は何ですか」
<茶々丸!普通に流さないで下さい!>
「基本的に雑食だし、何でも好きだよ。雑草や雑魚も好きだし」
<マスターもスルーしないで下さい!あと雑食は雑草や雑魚が好きという意味じゃないです!多分!>
「……そうですか。今度、雑草料理を作れるようにしておきます」
「ありがとう……茶々丸さん」
<もう……いいです>
次はエヴァか
「前々からお前に聞きたい事は、山ほどあったからな」
「バストのサイズは内緒だ」
「聞くか!聞きたいのはお前が使っている力のことだ」
「……これか?」
そう言って門からラムネを取り出す
「門と呼んでいたが、具体的にどんな力なんだ?」
「説明が難しいんだが……ふわって感じかな?」
「貴様、答える気ないだろ?」
睨むエヴァ
……ほんとに難しいんだよ
「説明!」
<……はい。簡単に説明すると、マスターが使う力は一応、空間魔法に分類されます。空間魔法とは、文字通り周囲の空間を操作する魔法です>
「……ほう」
<普通は空間を歪めて相手の攻撃を逸らす防御などに使用されますが、マスターのそれは通常の物とはかけ離れています>
「……ふむ」
<マスターの力は強すぎて空間を歪めるどころか、空間に穴を開けてしまうのです!その穴を門と呼んでます>
「……そうだったのか」
「貴様、知らんで使っていたのか!」
いや、フィーリングで使ってたからなぁ
<そしてその穴の先は、世界と世界をつなぐ異次元になっているのです>
「貴様、何気にすごかったんだな……」
「ああ、俺も驚いているよ……」
<異次元は理論上は無限に広がっているので、マスターはそこに武器やら、お菓子やらを収納しているのです>
「武器とお菓子を同列に扱うなよ……」
なんかしょぼく感じるだろ……
「……という事は、その異次元を門でくぐってこの世界に来たというワケか?」
<……まあ、そうとも言えないような、言えるような……>
「……?」
「まあ、いいじゃないかそれは。説明を続けろ」
<はい。説明といってもこれでおしまいなんですが……基本的にマスターは適当に物をつっこむので私が整頓しています>
「……む」
<それに、そこら辺で拾った綺麗な小石やら、アレな本も入っているので、正直扱いに困ります。あとマスターが貯めているお金も金庫に入っています。パスワードは3396、散々苦労すると覚えています>
「待て待て!いらんこと言うなよ!てめぇの秘密もばらすぞ!?」
<別に秘密とか……>
「お前の自爆コード、<今日は死ぬには良い日だ>ってのをばらす」
<自爆!?そんなのあったんですか!?何かタイマー出てるんですけど!?>
しまった……
声に反応するんだっけ
<止めて下さいマスターっ!>
「どうしようかなぁ?」
<止めないとマスターの秘密をさらにばらしますよ!?>
……いい度胸じゃないか
あと何でエヴァと茶々丸さんは興味深々なんだ……
「はっ、そんなんでビビると思ってんのか?」
<……いいんですかマスター?この前、エヴァさんの大福を勝手に食べたことをばらしますよ!?>
「アホか!?ばらすなよ!殺されるだろ!?」
「……貴様の中で私はどんな腹ぺこキャラになっているんだ。……後で部屋に来い」
怒ってるじゃん!
「てめえ!俺もお前の充電の電気代が、地味の酷いことになってるのばらすぞ!?」
<……それはマスターが怒られるのでは?ああ!タイマーが一桁に!>
「……そろそろ解除してやれ。よく考えたら一番被害を受けるのは貴様だぞ?それから後でさっきのを詳しく聞かせてもらうぞ」
……そうじゃん
考えてなかったよ
解除、解除と……
…………
「茶々丸さん、解除ってどうするんだっけ?」
「申し訳御座いません。私は知らないのですが……」
「だよね」
「……貴様……まさか?」
「貴様まさかって回文になるよな?」
「ならんわ!……解除の方法を忘れたと言うんじゃないだろうな?」
「人は常に何かを忘れて生きていく……」
「死ね!本気でどうするんだ!?爆破の範囲は!?」
……ふむ
「この館は完全に吹っ飛ぶな……ははは」
「笑うな!」
「ちゃんと、立て直すから。忍者屋敷にしようと思うんだが、どうだ?」
「どうだじゃない!その前に、私たちも木っ端微塵になるだろ!」
「みんなで仲良くアフロになろうぜ!」
「ギャグ漫画か!」
親指をグッとたてる
ボキリと折られる
……マジでやりやがった
「……仲良くじゃれているところ悪いのですが。タイマーが……」
「「え」」
<…………ごーる>
その台詞のすぐ後、視界は白く染まった
どうなったかって?
……みんなアフロになったよ
エヴァに「……その髪型も似合ってるぞ」と出来るだけ恥ずかしそうに言ったら普通に死にかけた
……何故だろう
俺の予想では「……ばか」と俯いて呟く予定だったんだが……
シルフ?
ぴんぴんしてるよ
というか、物理的に壊すことは出来ないからな、誰にもな
俺たちはそんな夏を過ごしたんだ……
「……家、直せよ」
「……うん」
本気で怒ったエヴァは怖かった
館は俺の魔法で直しました……正確には魔法じゃないけど
ついでに隠し扉も少々
まだばれてません
そんな夏だった