※今回は短めです
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「いらっしゃいませ」
パンティYAMADAが開店してから三日が過ぎた。
ゴールデンウィークが終わり、最初の平日。
今日は学校の授業が終了してからすぐの開店となる。
休日は10時から18時まで。
平日、学校のある日は16時半から20時まで。
営業時間は短めだが、結構な反響を呼んでいる。
今日も学生たちは休み明けの授業が終わったばかりだろうに、屋台には結構人が集まっていた。
どうやら、先日ショーで行ったパンティイリュージョンが話題になっているらしい。
某動画サイトに録画動画があげられたらしく、実写かCGかで憶測をよんでいるようだ。
三日で再生回数が20万回を超えているというのだから驚きだ。
そのせいか、当日に見に来ていなかった人も客として来てくれている。
純粋にパンティを買いにではなく、ショーの勧誘としての人もいるのが予想外といえば予想外だが。
勧誘に関しては、今はパンティを売ることに集中いたいということで断っている。
基盤がしっかりするまで、パンティイリュージョンはあくまで麻帆良学園内のみで行う方針にした。
まぁ、いずれ世界を狙うつもりの俺としては麻帆良での基盤ができたら外に進出するつもり満々だけどな。
量産したパンティはどれも1枚300円。
100円ショップに行けばもっと安いのもあるだろうが、俺は品質には妥協していない。
そこらのランジェリーショップよりも明らかに安く、デザインも豊富で品質もいい。
サイズは、量産品ならS・M・L・LLの4種類。
当初の案の一つであるネット通販よりも、直にパンティに触れて確認できるので屋台は高評価だった。
個人のサイズでよりフィット感のあるパンティを望むならオーダーメイド性だ。
その場合は一枚500円である。
こちらも、この安さでデザインも自由、さらに製作時間もハンバーガー並と大好評。
オーダーメイドパンティを穿いたギャルからは、「もう二度と他のパンティは穿けない心地よさ」と感想を得ている。
あまりのフィット感に思わず甘い声が漏れたなどという口コミまで広がっているらしい。
だが、店を開く前に重要なことがあった。
俺はギャルの腰を見ればヒップサイズが一目で解る。
だけどそれだと信用されない――――――俺にそういう技術があるとまだ広まっていないからだ。
だから屋台のそばに簡易試着スペースも作った。
そこで実際に穿いてもらいつつ、サイズを測ってもらっているのだ。
俺としてはパンティに妥協したくないので、測定するなら俺が自ら測定したい。
だが、中には男が測定することを良しとしない女性もいる。
「……」
「ああ、ありがとうレイニーデイ」
だから、こうやって彼女……レイニーデイを雇って測定を頼んでいる。
まぁ、試着室に入る客を一目見ればサイズは解るから意味はないんだけど。
客に「ちゃんと測定してますよ」というのを見せる形式だけのものにすぎない。
レイニーデイから測定結果を受け取ると、屋台の工房スペースで瞬時に作成して客に渡す。
まるでファーストフード並みの速さで出てくるパンティに、客は皆驚愕の顔で帰っていく。
ちなみに、別に俺からレイニーデイにバイトを依頼したわけではない。
当初は手品部の誰かか、クラスメートにでも頼もうかと考えていたのだ。
だが、何を思ったかレイニーデイが俺のところにやってきて一言「……手伝う」と言ってきた。
断る理由もない俺はこうして彼女を雇ったわけだ。
まぁ、彼女が俺に声をかけてきた理由は何となくわかるんだが……
だってなぁ……彼女、バイト代の金を受け取らないんだぜ?
開店して今日で4日目。
ここ毎日手伝いに来てくれているが、一銭も現金を受け取ろうとしない。
その代りに仕事が終わると、俺に両手を突き出してパンティをねだるのである。
ショーまでの合同練習のときにあげたパンティをよっぽど気に入ってくれているらしい。
未だに彼女の表情は読めないが、パンティを渡すとどこかしら嬉しそうな空気を醸し出しているのは解るようになってきた。
5話
閉店時間の20時まであと30分ほど。
ようやく客も少なくなり、今日の分の仕事の終りが見えてきた。
「うん、今日もなかなかの売り上げだ」
屋台の金庫には今日の売上が入っている。
一日の目標は平日で3万円を考えているのだが、開店したばかりのせいかすでに7万近くある。
パンティとは衣類の中でも最も需要の高いものであるので、結構売れるようだ。
実際、上着やズボンに比べて嵩張らないし、消耗品なので数があって困ることなどないだろう。
元手は0なのでうはうはである。
レイニーデイは給与は現金の代わりに、本人の要望でパンティを作ってやるだけでいい。
これから先、彼女以外の人材も雇う必要性はあるだろう。
だがその人材費を考えたとしてもボロ儲けである。
俺は、人の空いてきた屋台の前で商品を眺めるカップルらしき二人組を眺めつつ、次の商品アイデアを考えていた。
うーむ、彼女さんは楽しそうにパンティを手にとって騒いでいる。
しかし彼氏さんはどこか居心地が悪そうだ。
やはり、ギャルのパンティは恥ずかしいものという既成概念にまだ囚われたままだろうしな。
いずれはそこらへんの意識改革も行っていかなければならないか。
男でも気軽にギャルのパンティを閲覧できる店を目指さなければなるまい。
男女どちらでも穿けるような、ジェンダーフリー的なデザインのパンティを開発するとか?
俺が作るのはあくまでギャルのパンティではあるが、イメージしだいでは可能だろう。
もしくは別の方向性……男がランジェリーショップにいても不思議じゃない環境を作る?
例えば、彼氏が彼女にパンティをプレゼントすることが流行になるようにしむけるとか……
うん、いいかもしれない。
誕生日などの記念日には、彼女へのプレゼントはパンティを送る。
花束というのは気持ちが伝わりやすいが、それも時代遅れではあるともいえる。
かといって、個人にあった品物を最初から考えていては難しい。
しかも学生には指輪などの貴金属を買うのは資金的に難しいだろう。
ならばこちらで意識誘導をして彼女にはパンティを、と思わせればいいのか。
俺の店のパンティなら手頃な値段だし、何よりデザインも豊富にそろえている……これからもっと増やすしな。
デザインによって相手に送る気持ちも現れるだろう。
セックスアピールならセクシー系、純情ならおとなしめ。
あぁ、その場合感謝の気持ちを表せるデザインも考えないとな。
閉店まであと3分。
外もすっかり暗くなっているからか、客足はほとんどなくなっていた、そんな時。
色々と試行錯誤していると、向こうから一人の老人がこちらに歩いてくるのが見えた。
「……マスター、例の物を頼む」
ふむ、昨日の夜に同じようにして屋台にきて注文をしていった客だ。
長そでのTシャツの上に半袖のアロハシャツを重ね着しているサングラスの爺さん。
後頭部が異様に伸びているうえに、その後頭部のみに生えている髪は異様に長い。
眉毛も相応にながく、その容貌からタダものではないと感じていた。
これだけ特徴的な外見をしているのである。
おそらく外見的に、確実に原作に出てくるキャラの一人だとは思うのだがこんな爺さんいたっけか?
もはや元々あってないような原作知識など忘我の彼方である。
とりあえず、どんな人物かは知らないが年をとっているだけのことはある。
パンティストとしての実力の高さも十分に感じられる、かなりの実力者だ。
さすがは年の功といったところか。
「ああ、出来てるぜ……これだ」
カウンターに腕を乗せて、サングラスの向こうからぎらつく眼を見せる爺さんに二つの紙袋を渡す。
袋の中には昨晩注文された品が入っている。
ちなみに俺が敬語を使っていないのは、昨日に必要ないと言われたからだ。
パンティスト同士の間にそのような隔たりは必要ない。
なかなかどうして男前な爺さんである。
無言で爺さんは頷くと紙袋を手にし、その場で口を開いて中を覗き確認した。
「サイズは問題ない。デザインもそれで大丈夫か?」
「ふぉっふぉっふぉ、問題ないわい。
しかしさすがじゃのぉ、いい仕事をしよるわ」
彼の称賛に、素直に嬉しくなる。
爺さんは昨晩、俺に写真を二枚手渡してきてパンティの注文をしてきたのだ。
写真の1枚には妙齢の眼鏡をかけた、いい腰つきの美人の女性。
もう1枚には俺と同じくらいの年齢の、こちらは未来に期待な腰つきの美少女。
二人にそれぞれセクシーなパンティとキュートなパンティをセットで、との依頼だ。
おそらくは爺さんの娘と孫と思われる。
娘さんと思われる女性用には黒のTバックと、白をベースに薄い水色の糸で刺繍を施したパンティ。
片方は大人の色気を最大限に引き出せる露出度を、もう1枚は大人らしいデザインの中にもちょっぴり子供心を見せる出来栄え。
孫と思われる少女には、少女の冒険心をくすぐるピンクのローレグと、ふんだんにフリルを使った可愛らしい清楚なパンティ。
こちらも、中学生には際どいがクロッチ部分を広めに作っているので防御力はそれなりにあるローレグに。
清楚なパンティは可愛らしく、かつ派手にならないようにして子供っぽさをなくせるように。
本人を直に見ていなくとも身長は聞いている。
だから写真で会ってもヒップサイズは間違えていないはずだ。
「いや、こちらも写真の被写体を見てパンティを作るのは初めてだった。
なかなかに面白い仕事だったさ」
「うむ。また今度注文をするときもよろしく頼むぞい」
「ああ、あんたの持ってくる仕事ならやりがいがありそうだ」
「金は例の口座に振り込んでおくからの」
「了解だ」
ご機嫌で去っていく爺さん。
俺も、別に銀行口座を彼に教えたりはしていない。
なんとなくノリで了承してしまった。
だが、まあいい。
仮に爺さんが金を払わずにトンズラしたとしても、俺としても彼の注文は有意義な仕事だった。
パンティストとしての眼力がまた1段階成長できたと自負している。
爺さんにオーダーメイドパンティの値段も説明していないことだし、金は勉強させてもらったと思って無しでも構わない。
……そう思っていたんだが。
「あの爺さん、やっぱり大物だったのか」
後日、銀行口座を調べるとあの日の翌日にある人物から入金がされていた。
振り込み人は「コノエ コノエモン」……近衛近衛門か。
まさかの学園長だったとはな。
しかも振込金額が20万円になっていた。
この瞬間、あの爺さんが俺の顧客リストないの上客ナンバーワンに輝いたのはいうまでもない。