<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

赤松健SS投稿掲示板


[広告]


No.29096の一覧
[0] 魔砲少年サブカルネギま! (ネギま!×リリカルなのは)【改訂版 [みゅう](2012/08/17 01:15)
[1] 第1話  狐との契約【幼少編】[みゅう](2012/07/09 17:57)
[2] 第2話  「とくべつ」な式神【準備編】[みゅう](2012/07/09 17:57)
[3] 第3話  改革派設立[みゅう](2012/05/30 00:33)
[4] 第4話  変わらないものと変わったもの[みゅう](2012/05/30 00:32)
[5] 第5話  学園長[みゅう](2012/04/15 13:34)
[6] 第6話  墜ちる星光[みゅう](2012/05/30 00:23)
[7] 第7話  重なる想い[みゅう](2012/05/30 00:32)
[8] 第8話  領域を超えて[みゅう](2012/04/19 21:48)
[9] 第9話  英雄の息子を巡って[みゅう](2012/05/30 00:50)
[10] 第10話 大戦の予兆[みゅう](2012/05/30 00:50)
[11] 第11話 母が遺したモノたち[みゅう](2012/06/05 21:06)
[12] 第12話 図書館島の秘密[みゅう](2012/06/29 01:33)
[13] 第13話 リリカルサブカル始まります【覚醒編】[みゅう](2012/07/14 23:46)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[29096] 第9話  英雄の息子を巡って
Name: みゅう◆777da626 ID:667c48d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/30 00:50
模擬戦の翌日、日曜日。

とある喫茶店内にて人を待つ、和葉と刹那の二人。
刹那は白のワイシャツとアーガイル柄の黒いセーターにGパンといった装いだ。

一方、左隣に座っている和葉は、昨晩と同じような白衣を着こんでいる。
目に痛いほど白い光沢が、ぬいぐるみやピンク色のカーテンで彩られた店の雰囲気に馴染まず、かなりの違和感を醸し出している。
そのためか待ち人の方も、すぐに彼らを発見することができたようだった。

「久しぶりだね。和葉、まだ殺されてなくて何よりだ」
「よっ、フェイト、焔。お先してるぜ」

チャック式の学ランを着こんだ白髪の少年は、彼を一瞥した後、抑揚のない声を投げかける。
隣の少女も目線を合わせただけだ。

「そう簡単に死ねるかって。とりあえず座って注文しろよ」

つれない態度に慣れているのか、白い歯を見せて屈託なく笑う和葉。
小学生高学年ぐらいにしか見えないその少年は「失礼するよ」と一言、和葉の向かい側に座る。
ツインテールの小柄な少女も刹那に会釈した後、その向かいの席に座った。

「ご主人様、お嬢様、お水とおしぼりをどうぞ。こちらがメニューになりますニャン」

猫耳付きのカチューシャとメイド服を着た女性店員が一礼した後、グラスとおしぼりを二人の前に置く。
彼女はテーブル端のメニュー表を指し示して二人に注文を促す。

「コーヒーを1つ」
「私も同じのを」

メニューを開きもせず注文する二人。
店員は二人の注文を復唱して確認した後、奥のキッチンへと戻って行った。

「せっかくだから何か食べていけばいいのに。オムライスはイマイチらしいけど、パフェは結構いけるぞ?」

零れそうなほどにチョコレートで装飾されたパフェを、半分ほど二人で食べ進んでいる。
アイスが乗せられたスプーンを小柄な少年に差し出すが、斜向かいの少女に一睨みされたため、和葉は目を逸らして自分で食べる。

おしぼりで手を拭いながら白髪の少年が口を開いた。

「甘いものは遠慮しておくよ。彼女が噂の式神かい?」
「はい、京都神鳴流剣士の桜咲刹那です。和くんがお世話になっています」
「フェイト・アーウェルンクス。完全なる世界に所属している。和葉とは懇意にさせて貰っているよ。それから彼女が……」

フェイトが名乗った途端、気の出力を上げて警戒態勢を取ろうとする刹那だったが、和葉に左手を掴まれて動きを止める。

「フェイト様の従者の焔だ」

刹那の変化にも関わらず、気にかけた様子がフェイトにはない。
しかし焔の方は鋭い眼光を光らせ、明らかな敵意を刹那に向けていた。
そんな彼女を刹那も睨み返す。

「刹那、そう殺気立つなって」
「君もだ。焔」

それぞれの主が彼女らを諌める。

「フェイトは俺の大事な連れだ。表だって仲良くはできないけどな。それに2度も命の借りがある」
「えっ、命の!? 大変無礼な態度をとってしまい申し訳ありません! その、完全なる世界と聞いて誤解してしまいました。何か色々と事情がおありなのですね?」

“命の借り”という予想外の言葉に、思わず動揺した刹那は何度も頭を下げる。

「僕らの組織が大戦を煽動したのは事実だからね。実際僕らも追われて仕方がないようなことをしている。だから君の認識が間違っていないから気にすることはないよ」
「何も伝えてなくて悪いな刹那、おいおい話してやるよ」

顔色を変えず淡々と述べるフェイトと、気まずそうに刹那に謝る和葉。

「それじゃフェイト。お互い時間もないことだし、そろそろ……」
「お待たせニャン。ご主人様、お嬢様、こちらがコーヒーになりますニャン。お砂糖とミルクは如何なさいますかニャン?」

切り出そうとしたところで先程のメイドが現れ、コーヒーを並べる。

「ブラックで構わないよ」
「私も」
「かしこまりましたニャン。それでは私のご主人さまとお嬢様への愛を込めますニャ。私の真似をして、リピートアフターミーですニャン!」

木製の丸いトレーをテーブルに置き、メイドは手を組んでハートの形を胸の前で作る。

「えっと、こうか?」
「せーのっ、萌え・萌え・ニャン!」
「もえ、もえ、にゃん?」
「お嬢様お上手ですニャン。それではごゆっくりなさいませニャン」

戸惑いながらも律儀にメイドの真似をして、ハート型の手をコーヒーの上で回転させる焔。
フェイトは既にコーヒーに口を付けている。
和葉と刹那の生温い目線に耐えられず、彼女は一気に半分ほどコーヒーを煽った。

「……近衛」
「なんだ焔?」
「なんでこんな場所なんだ? こんなやりとりは必要あったのか? もっと他に良い場所はなかったのか!?」

声量は抑えつつも、力強く抗議する焔。
秋葉原でも指折り人気のメイドカフェ、わざわざそこで落ち合うことの意義を彼女は問う。

「ここなら外国人も多いし、多少変な格好でも目立たない。俺が出向いても自然な場所だ。
こっそり落ち合うには最適だろ?」
「実に合理的な建前だ。本音はともかくね」

皮肉を交えながらも和葉の主張を認めるフェイト。
主が認めたなら仕方ないと、焔も諦めてコーヒーを啜る。
フェイトがコーヒーカップをソーサーに戻し、テーブルの上で手を組み、和葉に問いかける。

「そろそろ話を進めよう。君たちの状況はどうなんだい?」
「結論から言うぞ。更に時間がなくなった」
「どの位?」

パフェを突いていたスプーンを戻して、和葉もフェイトと同じように手を組む。
眉間に皺を寄せ、深刻そうな顔で彼は続けた。

「落ち着いて聞けよ。存在が辛うじて維持できるのが消失率50%時点。ただ実際このレベルになると他の問題で完全にアウト。せいぜい20%を限界ラインとすると……後42年だ」
「バカなっ! よ、42年だと!? この前より悪化してるなんて、そんなっ!?」
「落ち着いて焔。和葉、君の顔色から察するに、もっと早まる可能性が高い。そう捉えて良いのかな?」

席を立ちあがって声を荒げる焔。
結界によって周りが違和感を抱かないようにしてあるが、落ち着くようにフェイトが促す。

「頭が痛いがその通りだ。これが調からのレポートの要約だ。とりあえず表紙を読んでくれ」

事情が分からない刹那であったが、他の三人の顔色が明らかに悪いことぐらいは察することができた。
特に和葉が差し出した英語の書類を読んでからは顕著だ。
感情がないと思えるような印象だったフェイトでさえ、下唇を噛みしめている。



一分ほど無言の時間が続く。
必死でレポートの字面を追っているようだ。

「私たちの出番が早まるかもしれない……そういうことか、近衛?」

概要を掴んだらしい彼女が口を開き、か細い声を出した。

「あぁ。だからそっちの準備も頼んだ。もちろん俺たちも最善を尽くす。が、万が一のために“リライト”は必要だ。二つでも三つでも保険は多い方がいい」

若干トーンが落ちた声で、しかしハッキリとした口調で言葉を発する。
それに頷いてフェイトも続けた。

「実はその事だけど、ある程度の準備はもうほとんど整った。後は戦力の増強と、他の組織の動向に注意しておくことぐらいかな。図書館島といったかい? あそこの禁書で役に立ちそうな内容のものがあったら教えて欲しいかな」
「もうそんな言い切れる段階まで来てるのか。仕事が早いな。禁書については任せておいてくれ。今日はユキ姉が先に様子見に入ってもらっている。明日からチームを本格的に立ち上げて、世界樹の調査と禁書の捜索にあたる予定だ」

フェイトの言葉に少し顔を綻ばせ、安堵の表情を見せる和葉。

「そうか。期待しているよ。僕に協力できることは少ないけれど、そうだね。また死にかけたら呼ぶと良い」
「あのときトドメを刺しかけたくせに」
「それぐらいしないと周りを欺けないだろう? マスターの悲願のためだ。僕は手段を選ばないよ。君ほどの逸材は稀だ。最悪でも無駄死にだけはさせないさ」

何かを思い出したのか、肩を落として不貞腐れる和葉。
刹那も突然出だ不謹慎な言葉に目を見開いて皆の顔を見渡す。
そんな二人の様子を焔は鼻で笑い、フェイトも表情こそ澄ましたままだが、声には愉悦の色が僅かに覗いている。

「最悪でもって何だよ。もっと手段を選べ」
「だったらもっと強くなることだね」
「このチート野郎。嫌味な奴め」
「近衛、お前がそれを言うか?」

舌打ちする和葉に対し、焔は半眼で冷めた視線を送る。

「ところで話が変わるけど、このタイミングで麻帆良に来たんだ。“彼”の来日については当然知っているよね?」

コーヒーをもう一口付けた後、フェイトが話を切り出す。
和葉も真剣な表情に再び戻って答える。

「ネギ君のことか。当然だ。ウェールズの校長とウチの爺さんが随分頑張ったみたいだな」
「らしいね。メガロメセンブリアの息がかかっていながらも、いざというとき守れるのは麻帆良ぐらいだろう。君みたいにアリアドネーというわけにもいかないし、帝国は論外だ。上手くやったものだよ。それで君はどう動くつもりだい?」

三人の視線が和葉に集まる。
言葉を選ぶように、少し間を置いてから和葉は答えた。

「俺たちが彼を護る。いや、違うな。育てる」
「やはり境遇が似た者同士、彼を放っておけないのかい?」
「そりゃな。俺だってユキ姉がいなかったら、状況に流されるままに生きていただろうし」

視線をテーブルの上に落として和葉は語る。

「確かに研究において、麻帆良の世界樹と図書館島を調べる必要性があったけれど、別に調たちに任せても良かったんだ。でもまぁこっちに来た理由の一割ぐらいはネギ君のことが心配だったってのがある」
「君がユキの代わりになるつもりなのかい?」
「彼が望むならな」
「こいつの事だ。望むように誘導するんだろう?」

焔はジト目で非難交じりに口を尖らせる。

「君のプロジェクトの中に彼を引き入れるつもりなのかい?」
「あぁ。すぐに、とは行かないけれど協力を要請するつもりだ。幸いにもサウザンドマスターと違って成績優秀らしいからな」
「飛び級で卒業とあったな。近衛と同じくらいできるのか?」
「同じくらいじゃダメだね。それより上を行ってもらわないと」
「そうだな。学園に元老院、はてや完全なる世界にまでモテモテとは。凄いなネギ君は。俺が一人占めしたら世界中から嫉妬で殺されそうだ」

フェイトに苦笑交じりの相槌を返す和葉。
頬を掻きながら苦労を語る。

「とにかく彼が敵に回らないように、それだけは頼んでおくよ。何せあの男の息子だ。潜在能力は確かだろうからね。君の報告通りだと、今度邪魔をされたら後がない。それと厄介なのはクルト派や旧マクギル派だけじゃない。帝国やアリアドネー、消える可能性のある彼らの方が必死だよ。勿論麻帆良の動きにも気を配っておくことだね」
「忠告どうも。加えて、実家の奴等が何をやらかすか分からないからな。どれだけ俺に仕事をさせる気なんだよ。神って奴は」

和葉は付かれたような顔をした後、溶けかけたパフェを再びつつく。

「自分で勝手に請け負っているように見えるけどね。あちこち顔色を伺うからそんなに大変なのさ」
「はいはい。志の高いテロリストさんは言うことが違いますね」
「それで和葉。ネギ少年に関して何か手を打ったのかい?」
「贈り物を少々しといた。あと実家に帰るときにもう一つ用意するつもりだ」
「モノで釣れるのか近衛? 調べた限りだとコイツ、父親以外は全く興味なさそうだぞ」

大丈夫かと焔は呆れ顔で問う。

「甘いな。だからこそ彼には色々と飢えているものがあるんだよ。その欲求を満たしてやればいいのさ」
「焔、彼はそれで何人も口説き落として来たんだ。やり方は任せるよ」
「おい、人聞きの悪い言い方をするな。刹那!? 違うからな。人脈的な意味でだぞ」

ずっと壁の花と化していた刹那であったが、一瞬だけ和葉を視線で威圧する。
コーンフレークと溶けたクリームだけになった残りのパフェをすくうと、和葉は無理やり彼女の口に押し入れた。

誤魔化す和葉と、動揺する刹那。
挙動不審な二人を差し置いて、フェイトはどこからか書類の束を一冊取り出すとそれをテーブルの上に置いた。

「京都には直ぐに帰るのかい? 後で読んでおくと良い。栞からだ。きっと役に立つだろう」
「ん、栞から? げっ、1ページ目から色々ヤバいんだけどマジで。ウチの情報と結構違うぞ」

スプーンを空になったパフェの容器に突っ込んで、書類を手に取る和葉。
その次の瞬間には顔色が曇る。

「そんなにかい? ならもっと気を付けるといい」
「助かった。栞にも礼を伝えてくれ」
「今も潜入中だからね。こちらからは連絡が取れないけれど、そのときは伝えておくよ」
「ありがとな。あと何か用件あるか? 俺からはこんなものだが」
「僕も特にないよ。僕からも彼女たちによろしく伝えておいてくれ」

感謝の言葉を述べる二人。
彼らは互いに交換した書類を仕舞いこんだ。

「オッケー。あっ、フェイト。悪いけど最期に一つ頼みがあるんだけど・・・・・・頼めるか?」
「何だい、その目は。一応聞いておこうか?」
「京都あたりまで転送してくれないか? コーヒー奢るから」

ゴメン、と気軽に手を合わせて頼み込む和葉に対して、焔が遺憾の意を示す。

「貴様、フェイト様を一体何だと思っている!?」
「何って、俺らダチだろ?」
「そうだね。君がそう言うのならそうなんだろう」

平然と答える和葉と、それに同調するフェイト。

「くっ、フェイト様までこの男の毒牙に。もういい、メニューを貸せ」

焔は悔しそうに歯噛みした後、ヤケクソ気味に和葉の手からメニューをひったくった。
デザートのページを見開きながら、値段を指先で追っている。

「この際です。フェイト様、今までの分も奢らせてやりましょう!」

一番高いフルーツパフェの所で指を止める彼女を見て、フェイトはため息を洩らす。
残りのコーヒーを一口で飲み干して、彼は通路を通りかかったメイドを呼び止めた。

「この薄い味もたまには悪くない。おかわりをもらうとするよ」


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.029874086380005