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No.29096の一覧
[0] 魔砲少年サブカルネギま! (ネギま!×リリカルなのは)【改訂版 [みゅう](2012/08/17 01:15)
[1] 第1話  狐との契約【幼少編】[みゅう](2012/07/09 17:57)
[2] 第2話  「とくべつ」な式神【準備編】[みゅう](2012/07/09 17:57)
[3] 第3話  改革派設立[みゅう](2012/05/30 00:33)
[4] 第4話  変わらないものと変わったもの[みゅう](2012/05/30 00:32)
[5] 第5話  学園長[みゅう](2012/04/15 13:34)
[6] 第6話  墜ちる星光[みゅう](2012/05/30 00:23)
[7] 第7話  重なる想い[みゅう](2012/05/30 00:32)
[8] 第8話  領域を超えて[みゅう](2012/04/19 21:48)
[9] 第9話  英雄の息子を巡って[みゅう](2012/05/30 00:50)
[10] 第10話 大戦の予兆[みゅう](2012/05/30 00:50)
[11] 第11話 母が遺したモノたち[みゅう](2012/06/05 21:06)
[12] 第12話 図書館島の秘密[みゅう](2012/06/29 01:33)
[13] 第13話 リリカルサブカル始まります【覚醒編】[みゅう](2012/07/14 23:46)
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[29096] 第4話  変わらないものと変わったもの
Name: みゅう◆777da626 ID:667c48d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/30 00:32
約束の時間。
少女は幼馴染と合流した後移動し、改札口を抜けた先の時計下で待つ。

今日は休日、駅にはいつも以上に多くの人が行きかっている。
気合いの入ったおしゃれをして東京まで繰り出していく学生たち。
子供を訪ねて来たであろう不慣れな様子の中年夫婦。
重そうな紙袋を両手一杯に抱えたOL。

雑多な人で溢れる駅舎に、懐かしい気配二つが急に近づいてきたのが感じられた。
どちらも巧妙に一般人と変わらないように気の大きさを抑え、質も変化させている。
流石は狐とその弟子、まず普通の術者では存在に気づかない。
しかし少女には間違えようがなかった。

僅かながら人間離れした凛と澄んだものが感じられる気配が姉代わりであり彼女。
そして普通の人間が持つ雑多な気配を一人に凝縮したような方が間違いなく彼だ。



高鳴る胸を抑えてしばらく待つ。



先ほど降車したであろう人の群れの奥に、シルバーブロンドの髪を背中まで棚引かせ、サングラスを掛けた女性がやって来た。
大物映画女優かと見間違うほどの風貌だが、両手でスーツケースを引き摺りながら急ごうとする仕草はどこか幼い。

グレーのダッフルコートに身を包んだ少年が彼女の直ぐ後ろに続く。
彼はまだこちらに気付いていないようだが、もう間違えようがない。
女性が改札をくぐり、彼も急ぎ足でくぐる。

「来たえ! せっちゃん行こう」
「うん、このちゃん!」

待ち人の存在に気付いた木乃香が、刹那の左手を引っ張りながら駆け出す。
向こうの二人もこちらの存在に気付いたようだ。

「ユキちゃんお帰りー!」
「ただいまっ、キャー木乃香ちゃん見ないうちにまた可愛くなったね。実は彼氏とかできちゃったりする?」
「ハハハッ、ウチはせっちゃん一筋や。それはないえ。かず君もおかえりなー」

飛び込んできた木乃香を、豊満な胸元で受け止め抱き締めるユキ。
気持ち良さそうに頭を撫でられている彼女は、抱きついたまま和葉に声を掛けた。

「おう、ただいま木乃香。それとただいま刹那」

五年ぶりの再会。
以前より男らしい声が返って来た。
感動の再会にしてはタイミングが悪く、ついでのように掛けられた声だった。

しかし目の前に彼が居る。
ただそれだけ涙腺が緩む理由は十分だった。

「おかえりなさい和君」

目に半分ほど涙を浮かべながら刹那は声をかける。
それを見た和葉は本当にすまなさそうに苦笑いをしながら答えた。

「もっと早く戻って来るつもりだったけど、色々勉強したいことがあって悪い。たくさん心配と迷惑かけたな」
「いえ、とんでもないです。私にも修行もありましたし、何よりこのちゃんのこともありましたので。それより、こちらにはどれくらい滞在の予定なのですか?」
「多分二年くらいは研究で居るかな。あちこち行ったり来たりするだろうけどこっちに居ることの方が多いと思うよ。今後の身の振り方はじっくり考えるさ」
「そうですか……」

二年という長くもあり、短くもある期間。
ただ彼の言から確実にわかるのは、彼がまたどこかへ旅立つということだった。
一緒にいられる安堵と共に、また再び置いていかれてしまう不安感に彼女は襲われた。

それを和葉は察したのか、右拳の甲で軽く彼女の左肩を叩く。

「今は刹那の実力もついたんだろ。俺も目的通りあっちで人脈や立場を得た。西の事をどうにかすれば木乃香を任せられる人間も選べるだろうし、木乃香が選択するなら一緒に連れて行くこともできるさ」

俯き加減だった彼女の顔が再び上がり、自然と視線が重なった。

「それにやっぱり、俺自身が一緒に居たいしな」

満面の笑みを刹那に向ける和葉。
言葉を受けた彼女は眼を見開き、唇を震わせながらも言葉を発そうとする。しかし、

「あーかず君がせっちゃん口説いとる」

今だユキと抱き合ったままの木乃香が指差して冷やかし、ユキは手を口元に当ててにやけていた。

「んだよ二人とも。悪いかよ」
「いやいや。良いことだと思うよー。むしろお姉ちゃんとしては安心したかな」
「せやな。かず君ならウチのせっちゃん上げてもええな」

和葉は二人をじと目で睨むが、完全に逆効果のようで更ににやけ顔になった。
刹那も慌てて背中を向けるが、三人の態度にため息を一つ。

「二人して何だよ。刹那も黙り込むなって。ここ寒いしどっかで場所移すぞ」
「もしかして照れてる?」
「もういいってユキ姉」

誰にも目線を合わせずぶっきらぼうに答えるが、その顔は耳元まで紅潮し満更でもなさそうだった。



先ほどの和葉の提案により、一行はケーキが手頃で美味しいと木乃香イチ押しのカフェに移動した。
もちろん提案者の和葉のおごりである。

テーブルや壁などがブラウンオークで統一された店内。
若干薄暗いが各テーブルにある暖色系の照明と、窓際に飾られた白バラを主とした花瓶が隠れ家的な雰囲気を醸し出していた。

「へぇ、落ち着いてて良い感じの店だな。木乃香もこんな店覚えるようになったか」
「お花も綺麗だし私も好きだよ」
「せやろー。最近友達に教えてもろたんよ」

ランチタイム前だからかまだ人は少ない。
デート中であろうカップルが二組が談笑し、カウンターには休憩中と思われる営業マンが書類の束を次々めくっては苦い顔をして格闘していた。

「いらっしゃいませ。四名様ですね。こちらの席へどうぞ」

初老の男性店員に窓際の席へと案内され、ユキが窓際の奥の席に腰掛ける。
その隣に和葉が腰掛け、ユキと対面するように木乃香、その隣に刹那が続いた。

「それでこのケーキセットが安いんよ。でな、せっかく四人おるし分け合いっこしよー」

窓際のメニューを開いてケーキセットを指差す木乃香。
ケーキ1つとコーヒーか紅茶がついて550円。
ケーキが10種にコーヒー6種、紅茶5種から選べるようになっているようだった。

「おう。このメンバーなら気兼ねしなくていいしな。じゃあ一番上のとダージリンで」
「早いよ和葉! みんなで食べるんだからそんな簡単に決めちゃダメ!」
「せや。季節限定メニューもあるんやし、ここはもっと慎重に決めな」

何も考えず即答する和葉に対し、ユキは身を乗り出して非難し、木乃香は頬を膨らませて顔をメニューに近づける。

「なら任せるよ。みんなでつつくんだろ?」
「ホンマにええの? ありがとう。ユキちゃん、これはウチらの選択がますます重要になって来たえ。ほらせっちゃんも選ばな」

木乃香の表情が膨れっ面から笑顔に変わり、また目を細めて真剣な表情に一変する。
三人が食い入るようにメニューを覗き込み、そのやりとりの様子を和葉は頬笑みながら見守る。



女性陣の葛藤は続き10分近く相談し合って悩んだ結果、クリームの乗ったプレーンのシフォン、イチゴのショート、ティラミス、ババロア入りのロールを注文することになった。

ずらりと並んだケーキに木乃香とユキは目を輝かせ、刹那もどのケーキにフォークを伸ばそうかと迷っている。

「うーん、美味しい! バニラビーンズがいっぱいだよこれ」
「せっちゃんコレ食べてみ! この染み込んだコーヒーが最高や」
「そうですか。では私も」

刹那が木乃香の正面にあるティラミスに手を伸ばそうとすると、皿ごと木乃香は手にとりフォークで一口分すくう。

「ウチがアーンしたる。ホラせっちゃん!」
「こ、このちゃん!? そんなええよウチ」

半ば強引ながらも律儀に口を開ける刹那。

「…………美味しいです」
「せやろ?」

目を見開いて刹那は呟き、木乃香もその言葉に満足したように微笑んだ。

「へへーっ。ウチとせっちゃんはラブラブやねんで。ええやろ」
「はいはい。仲がいいのはわかったから」

適当に受け流したが和葉はケーキに手を付けることなく、頬を緩ませる女性陣を見守る。
ウェッジウッドのイチゴ柄のカップに口を付け、ダージリンの芳醇な香りを味わう。



結局和葉はケーキを一口もつけることなかったが、それで満足のようだった。
飲み物は二杯目まで無料とのことで、それぞれおかわりをもらいながら話を弾ませる。

「木乃香の京都弁聞くとなんか落ち着くなぁ。帰って来たって感じがするや」

無糖のダージリンを一口含んだ後、和葉がふと漏らした。

「だねぇ。私も帰って来たなって感じがするよ」
「ゆきちゃんは元から標準語っぽかってんけど、かずくんは何で言葉普通になっとるん? 前会ったときはあんまり変わってへんかったんに」

ユキが和葉の意見に同調するが、逆に木乃香は素朴な疑問をぶつけてきた。

「何でって関西弁の帰国子女ってキャラが濃すぎるからなぁ」

軽いノリで和葉は言葉にするが、

「え?」
「キャラ、ですか?」

意味が理解できず固まる二人。
そして「やってしまった」という気まずい表情をする和葉。
しどろもどろになりながら左手を振って答える。

「あっちでも日本語教えてることが多くてさ。他の国の人に教えるのが関西弁だと困るから、自然と共通語になったって感じかな」
「なるほどですね」
「イギリスの人も日本語勉強するんやなー」

いかにもな理由に木乃香と刹那は感心して頷いている。

「まぁ主にアニメと漫画を使ってだけどな」

この一言が余計だった。

「は?」
「ふぇ?」

返って来たのは間の抜けた声。
一気に場の空気が気まずくなる。

「いやいやいや。何もそんなに呆けなくてもいいだろ。日本のアニメは世界に誇る文化だぞ」
「そうだよ。これは日本を出てから最大の発見だったね。和葉と二人で日本のアニメを見ていたらねー。子供も大人もテレビにみんな寄って来るの。だって向こうのアニメ全然面白くないんだもん。それに全然可愛くないし」

必死に横目で助け船を求めたところ、ユキは意図を組んでくれたようだ。

「それで皆で日本語の台詞の意味を教えてくれとか、逆に吹き替え版が放送されていたら日本語に翻訳しなおしてくれとか頼まれてな。でもおかげで皆と交流が持てたのは良かったよ」

和葉は人差し指で黒ぶち眼鏡の中心を持ちあげ、ズレをさりげなく直す。
良い話に纏めようとする和葉に、木乃香と刹那はうんうんと頷いた。

「そうそう。でもお友達はいっぱいできたけど、見事二人してオタクになっちゃった。流石クルトん策略家。やられたよ!」
「オチはつけなくていいから! いや確かに俺は日本のアニメを愛してることを誇りに思ってるけどな」

胸の前で手を叩いた後頭を掻きながら大笑いするユキと、突っ込みを入れながらも堂々と胸を張る和葉。
そんな様子に木乃香と刹那はクスッと笑みを漏らす。

「もうこの前から五年経つんやね。人って変わるもんやねんなぁ。声も大人らしゅうなったし、顔つきも父様に段々似てきたんちゃう?」
「それはよくユキ姉にも言われるなぁ。一応それは褒め言葉として受け取っておいていいのか?」
「もちろん褒め言葉やえ。せっちゃんの次に今のかず君ぐらいがタイプやもん」
「刹那の次かよ。おい兄として色々不安になって来たんだが。刹那、実際どうなんだ?」
「ウ、ウチ? いえっ、私とこのちゃんは確かに仲良くさせてもらっていますが。その誤解を招くような関係では決してですね!」
「もーせっちゃんのイケず―。ウチらクラス公認のラブラブやんか」

刹那の腕にしがみつき寄り添う木乃香。
刹那の視線は木乃香と和葉の両方に行ったり来たりして落ち着かない。

「ありゃりゃ。離れている間に強力なライバル登場だねぇ。ガンバレ」
「頑張ってな。かず君!」
「え、えっとその」

ガッツポーズをとる二人と、語尾が消えながらも首を縦に振る刹那。
負けましたとばかりに和葉は両手をテーブルに付けて頭を下げる。

「近衛和葉、妹に負けなよいう精進させて頂きます。ってどういう羞恥プレイだこれ」

頭を上げた後、カップを煽って残りを一気に飲み干す。
カップを置いて黒革ベルトの腕時計を確認した。

「あっ、こっちの時計まだ修正してなかった。木乃香、時計持ってる?」
「うん。これ見て合わせてな。って、そろそろええ時間やな。お爺ちゃんのところ案内せなアカンな。そろそろ出よか」

喫茶店内もランチタイムが近づいていつのまにか半分ほどの席が埋まっている。
和葉が時刻修正している間、木乃香は辺りを見回して退席を促した。

「爺さんのいる場所は遠いのか?」
「ここから10分くらいですね」
「あっ、一応ウチらの女子中学内やから他の女の子に手ぇ出したらアカンえ!」
「マジで? 女子中に入れるの?」

女子中という響きに口角が緩む和葉。
しかしユキの一言で一気に不安が増した。

「ふーん。女子中ね。まさかだけど女装して通わされたりしたら面白いよね」
「なんだよそれ。どんな生殺し? ユキ姉の占いと勘はシャレにならないから思っても口にしないでくれるかな。フラグは勘弁だって」
「かず君の女装、絶対似合わへんな。でも見てみたいかも」
「和君と一緒に? いやでもそれは。むしろ私がここは」

冗談を飛ばすユキだが、ユキは占いに優れた天狐だ。
あまりにも不吉なことを口にされ、軽口を返しながらも和葉の顔が青くなる。

木乃香も木乃香で悪ノリというわけでもなく空を仰ぐ仕草をとる。
そして何を想像したのか一人頷く。
隣の刹那はというと独り言を呟きつつ、頭を抱えて唸っている。

そんな様子を見て止めてくれとばかりに和葉は魂の叫びを喫茶店中に響かせた。

「誰得だよそれは。そんな需要どこにもないから! 俺は普通に男子中に行って、それぞれのお宝を交換しあったり、刀子さんに説教受けたり、普通の学生生活を送りたいんだ!!」

周囲の時が止まった。
むしろ空気が固まったと表現する方が適切かもしれない。

「はい?」
「へ?」
「馬鹿。うるさいって」






「すいませんでした。もう出ます」


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