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No.29096の一覧
[0] 魔砲少年サブカルネギま! (ネギま!×リリカルなのは)【改訂版 [みゅう](2012/08/17 01:15)
[1] 第1話  狐との契約【幼少編】[みゅう](2012/07/09 17:57)
[2] 第2話  「とくべつ」な式神【準備編】[みゅう](2012/07/09 17:57)
[3] 第3話  改革派設立[みゅう](2012/05/30 00:33)
[4] 第4話  変わらないものと変わったもの[みゅう](2012/05/30 00:32)
[5] 第5話  学園長[みゅう](2012/04/15 13:34)
[6] 第6話  墜ちる星光[みゅう](2012/05/30 00:23)
[7] 第7話  重なる想い[みゅう](2012/05/30 00:32)
[8] 第8話  領域を超えて[みゅう](2012/04/19 21:48)
[9] 第9話  英雄の息子を巡って[みゅう](2012/05/30 00:50)
[10] 第10話 大戦の予兆[みゅう](2012/05/30 00:50)
[11] 第11話 母が遺したモノたち[みゅう](2012/06/05 21:06)
[12] 第12話 図書館島の秘密[みゅう](2012/06/29 01:33)
[13] 第13話 リリカルサブカル始まります【覚醒編】[みゅう](2012/07/14 23:46)
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[29096] 第3話  改革派設立
Name: みゅう◆777da626 ID:667c48d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/30 00:33
「調の奴、こんなに押し付けやがって。せめてもう少し簡潔にまとめてくれよ」

ロンドンから東京へ向かう旅客機の中。
A4サイズのノートパソコンを弄りながら、黒ぶち眼鏡を掛けた黒髪の少年は弱った声を出した。

「しばらくはあっちに戻れないんだから、和葉のために配慮したんだと思うよ。もうせっかくの空の旅なんだから、グチグチ言わないの」

その左隣りに座る白髪の美女が嗜めた。
膝元には4cm程の分厚い洋書を開かれている。

「はいはい、ユキ姉。調はよくやってるよ。一応有意義なデータは撮れてるみたいだ。まぁ検定しっかりしているあたりの几帳面さは助かるけどな――――って、マズイぞこれ!」

画面をスクロールさせていた手の動きがピタリと止まる。

「早いの?」
「龍山山脈でもプラス約0.716%みたいだ」

和葉の気まずそうな声に。ユキも眉をハの字に変える。

「ざっとこれの3乗に今の係数を掛けたら、この前までとの差は4年と9カ月と15日」
「5年、余裕を見て10年は前倒ししないと不味いか、こりゃ」
「……だねぇ」

しばしの沈黙。
想定より悪い事態に瞳を閉じたまま天井を仰ぐ2人。
幼い頃より共に過ごした姉弟は、頭を抱える仕草までもが見事にシンクロしていた。

「問題は資料が早く見つかるかどうかだよね。頑張ろうか和葉」
「それもだけど質的に適応できるかどうか検証実験を進めないと。それから今は確かニャンドマだっけ。次の報告次第でもだいぶん変わるし……こりゃ毎日退屈しそうにないな」

真上に両手を上げて間延びした後、眼鏡のズレを直してタスクバー上のアイコンを開く。
そんな様子を見てユキは質問を投げかけた。

「逆に気合い入った?」
「まぁね。爺さんへの挨拶に、明石教授たちとの打ち合わせ。鶴子姉に連絡とって西への様子見に。結構殺人的なスケジュールになってるけど、木乃香と刹那、それに――――――アキバが俺を待ってる!」
「じゃあ私良いお店探しとくね。あっ、ここのお洋服可愛いなぁ」

洋書を閉じて、カバンから取り出した東京の観光ガイドを開くユキ。

「ちょっと資料の要約手伝ってよユキ姉!」
「もう日本海の上だし、少しぐらい息抜きしても良いんじゃない? あっちに着いたら人でも増えるんだよ?」

単なるわがままにも聞こえるが、ユキがデコピンをするときは決まって和葉を嗜める時だ。
休めということなのだろう。

「確かに息抜きした方がいいかな。今すぐどうにかなる量じゃないし、わかった。全然寝れなかったし、もう少し寝とく」

パソコンを閉じて、眼鏡も外してユキに預ける。
ブランケットを頭から被るようにして掛け直し、その瞳を閉じた。
そして眠りに着くまで、これからのことを少しだけ考える。





目指すのは麻帆良学園。

大学から幼稚園まで様々な教育機関が集まる世界でも有数の学園都市。
その街は世界樹と呼ばれる樹を中心として広大な範囲で広がっている。
しかし、その樹は世界でも有数の霊樹である「神木・蟠桃」であり、この学園都市の実態はその調査のために作られた魔法使いの住む都市である。

そして和葉の祖父である近右衛門が経営し、木乃香と刹那が麻帆良学園女子中等部に通っているため、和葉とは縁が深い土地でもある。

きっと麻帆良では色々厄介事に巻き込まれるんだろうなと、和葉は覚悟していた。

和葉は関西呪術協会の次期当主なのだ。
敵対とは言わずとも険悪な中である関東魔法協会の本拠地でもある麻帆良学園都市。
そこへ乗り込むことで厄介事が巡ってくるのは必然。
あまり面識はないものの、様々な方面で悪名高い祖父が仕掛けてこないはずがない。
しかし一方でチャンスでもあると、和葉はそう考えていた。

西と東との軋轢の清算――――それは和葉が幼いころに誓ったこと。
幾つも抱えている目標の内でも、最も自身の根源に関わって来るものだ。



「西洋の先の魔法の国に行って、勉強がしたい。そんで帰ってきたら父様の跡を継ぐ。もっと賢くなって、絶対僕らのこと認めさせてやるんや」

アリアドネーへの留学の希望と次期当主への名乗りを神鳴流も交えた総会において、6歳の和葉は行なってしまったのだ。

和葉のこの一言で総会は大騒ぎになった。
二十年前の魔法世界での大戦に無理やり召集されたこともあり、関西呪術協会で西洋魔術を習いたいということは前代未聞の裏切り行為。

賛成する人間はもちろん皆無のはずだった。
詠春のポストを狙う人間は多い。
それだけに勝手な次期当主への名乗りをされて憤る面々もいたが、たった6歳児が反対派を説得する理由を提示してきたのだった。



①6歳にして和葉が関西の長を継ぐ決意を表明すること。

②陰陽術の師として既にユキという高位の術者が存在しており、他の者による指導の必要性が少ないこと。

③アリアドネーは魔法世界でも中立の立場であり、大戦に大きく関わった連合や帝国よりは批判的な感情が協会内でも小さいこと。

④関東魔法協会は連合の下部組織であり、関東および連合に対抗できる人脈づくりがアリアドネーでは望めること。

⑤関西呪術協会の魔法世界進出への足掛かりとして、西洋魔術中心の魔法世界には珍しい、東方呪術の導入や教導という学問からの進出が望める。またそれは平和的な手段でありながらも、他の組織には真似ができず、また勢力拡大において最も必要な要素の一つである人材を、広く学生や弟子という形で確保のできる長期的に見て堅実的な手段であること。



和葉はアリアドネーへの留学のメリットをこれだけ提示したのだ。
和葉が次期当主になる正当性については巧妙に議論がすり替えられていたが、関心はそれだけ真剣な発言をしてきた和葉の存在そのものに集まっていた。

アイディアの欠片は持っていても6歳児に流石にこれだけの理由を用意することはできるわけがない。
和葉はユキや周りの大人たちを上手く使ってここに至ったのだ。
事前に相談を受けていた詠春も全面的に賛成というわけではなかった。
しかし息子が自分で選んだことは尊重したいと、長としての立場とは別であったが、親としては相談に乗ってくれた。
またアリアドネーで最高クラスの権力を持つセラスを紹介したのも詠春だ。

そしてこれらの根拠と、そこに思い至った理由を和葉は語る。

「僕は戦争を知らへんけど、結局西はええように使われてもうたから巻き込まれたんやろ」

良いように使われて来た。
痛烈な言葉であったがまさに事実であった。
東に唆され、あるいは押し付けられたために、多くの術師が日本とは離れた土地で命を落としたのだ。

「『嫌や!』って言うとればこないなことにはならへんかったはずや。ちゃんと言いたいこと言えるように、昔と違うて『嫌なことは嫌や』ってと言えるように僕はしたい。今のままやったらただ拗ねてるだけやんか――――――僕らには『発言力』が必要なんや」

異例の決意表明に続いたのは、“西には力がない“という侮辱とも挑発ともとれる言葉。
現在は長やユキの強い保護があるものの、以前は忌み子と呼ばれていた子の言葉であり、癇に障るのは当然である。

しかしユキによる教育によって精神的に大きく成長した和葉の指摘は、あまりにも正論過ぎた。
それが派閥に関わらず、大人たちの胸を締め付けた。


そして和葉が提示した「発言力の向上」という着眼点。

ただ今の在り方を否定する穏健派とは異なり、この考え方は中立派や穏健派よりも、むしろ強硬派の者たちの心に響くものがあった。

関東とただ仲良くしようとしていた詠春とは決定的に違う。
たった6歳が色々な人間から話を聞いて自ら考えた、和葉なりの答えであった。


「復讐のため武力やない。今みたいにチマチマ東の下っ端叩いて、それでみんなのためになったんか? 先代たちは褒めてくれるんか? なぁ……ちゃうやろ?」

強硬派の取る東への工作を非難する和葉。
指摘された彼らの表情は憤りから、驚愕、反省の色へと変わる。
こんな子供に避難された彼らの立場はどこにもなかった。
しかもこの子供はもっと平和的でかつ、穏健派よりも明確なビジョンを持っている。

「東とすぐに仲良うなるんは無理やってことはわかっとる。東のじいちゃんたちはようわからへんけど、僕らを見下しとるやつらがおったからこんななんたんやろ。仲良うなるにしたって、ちゃんと西を見てもらえるようにならなアカンと僕は思う」

これは穏健派への向けてのメッセージ。
さらに和葉は自分の考えを語る。

「人が必要や。西は単純にまず人が少ない。みんなが凄いのは僕はよう知っとる。でも西以外の人はみんな知らへんのや。せやから他の組織に与える影響も少ないんは当たり前やろ。でも西には東と違って連合みたいな後ろ盾もあらへんし、人材も日本の大体半分からしか集まらへん」

西の各個人の技量を認めた上で、知名度の低さを指摘する。

「だから僕は魔法の国のアリアドネーって国へ行って勉強しながら、連合の奴らに文句言えるぐらいの人脈を作る。力がないならまずは取り込めばええ」

この場に居た者たちはそれぞれの立場や持っている意見に関わらず、この時点で既に呑まれていた。
誰もが和葉の意見に耳を傾けている。
子供の戯言だと思って聞いている人間はいない。
新たな指導者候補、やっかいな政敵、それぞれの受け取り方は違えども、たった数分で和葉は既に西の中心に立っていた。

一呼吸して胸を叩く和葉。
その動作にも一つにも一同の眼差しが集中する。

「そんで新しく人を育てればええねん。アリアドネーってところは学問の国や。いろんな魔法や技を勉強しとる。あっちで僕がこれ見よがしに陰陽術を使っとれば、絶対興味もって来るはずや。それに父様はあっちで有名やから僕に近づきたい人間はいっぱいいる。そんな人らに術を教えたり、弟子をとれば僕らの理解者は、味方は確実に増えていくはずや。上手くいったらいくつかの拠点をあっちの世界におけるかもしれへん。どやろか? こっちのほうがおもろいと思わへんか?」

長年の伝統による技術を餌に人脈を形成し、味方を増やす。
予想以上に練られていた内容に誰も言葉を発せない。



沈黙が続く。



「若様、お見事です」



意外にも初めに口を開いたのは、ユキが和葉を拾って連れ帰ってきた日、道を塞ぐように出迎えたあの男であった。
和葉の隣にいるユキに目を合わせて笑っている。

「もちろん若様だけが考えたわけではないでしょうが、その歳にしてその言葉確かに私の胸に響きましたぞ。これは先が楽しみですな。是非私は一族を代表して若様の留学だけではなくその理想のための全てを支援しましょう。いやはや、ユキ殿の教育の賜物ですかな」

小童にしてやられた――そんな顔をしながらも豪快な拍手をする男。
それに続き控えめに拍手をする者が数人現れた。

そして直接関西呪術協会には所属していなくとも、神鳴流若手の中で最強と名高い青山宗家の長女、鶴子が続いて賛成の意を示す。

「ウチが長から聞いた話やと、アリアドネーちゅー国やったら余計な干渉も多分せーへんやろし、ウチらの気に入らん東の後ろについとる連合とは独立しとる。しかもその国は学問の前ではあらゆる差別意識はないと聞いとります。犯罪者かて学ぶ人間を保護する変な国らしいどすなぁ。大事な弟分が遠くに行くんは心配やけどウチは応援しますえ」

そこからの流れは完全に和葉のものだった。
次々に賛成を唱えるものが出てき、反対を唱える声は上がらなくなった。

そしてこの日、大戦の遺族を中心とした強硬派、詠春をはじめとする穏健派、神鳴流が後ろ盾になる中立派に続き、各派閥から引き抜く形で和葉を中心とした改革派と呼ばれる派閥が始まったのだ。

また騒ぎが落ち着いた後、和葉に関西呪術協会を継ぐ意思があるのなら、尚更手元に和葉を置いておくべきだという声も再度上がったが、流れは完全に改革派よりになり認めざるを得ないということになった。

こういう経緯があって、本来なら和葉が小学校に上がる歳に、和葉とユキは魔法世界に渡り、アリアドネーの魔法学院の一つに入学したのだ。

こうして和葉はアリアドネーに渡ることが決まったが、問題は木乃香であった。
魔法を知らず、後継者にもなることのない木乃香はせめて普通の女の子として暮らしてほしいと詠春は考え、刹那と共に麻帆良に預けることになった。

そして和葉はアリアドネーに渡り、6年生の魔法学院を3年で卒業すると言う偉業を成し遂げた。
基本的な力や言霊の使い方を既に会得しており、精神的にもユキによって教育されていたため当然と言えば当然であった。

その後、和葉は嘱託講師としてユキと共に陰陽術の基礎を教えつつも、研究員としての活動を行った。
父のような英雄ではなく、学者としての道を選びながら、同時に西の次期当主としての下地を積み重ねていった。

専門は「魔力総論」という魔力そのものを取り巻く要素についての学問。
魔力に幼いころから触れて育ってきており、また気という魔法世界ではマイナーな概念も扱うために和葉はこの学問を選択した。

その中でも「魔力と肉体、精神および魂の相互関係について」という最も根源的で、古くより研究されているものの、非常にマイナーな分野の研究であった。
ユキによる指導によって本来狐しか持ち得ない、精神や魂に関わる能力を身に付けたことも相まって、馴染みの深かったこの分野を和葉は選んだ。

どういった仕組みで魔法が使えるのか?
そもそも魔力とは何か?
魔力と気はなぜ反発するのか?
魔力をどうやったら精神力で扱えるようになるのか?
その土地の力を行使するにはどういった契約が必要か?

どれも漠然としており誰もが経験的や感覚的に処理してしまうことを解明しようという学問なのだ。

現実世界であったらノーベル物理学賞に匹敵する魔力の基礎研究の論文を出しており、若き天才として研究者の間において、和葉は有名な存在になった。

研究のためユキと2人で、魔法世界や現実世界の各地を卒業後5年回った。
そして西の次期当主としてだけではない、自分の人生について考えるようになった。
この世界のだれもが憧れる父や偉大なる魔法使いたちのこと、国を治める政治家や王族などを知り、本当に自分がどうしたいのかを模索する旅でもあった。

魔法世界では紛争に遭遇したり、戦災跡を訪れることが多々あった。
戦いはこの世界において避けられないものであったが、きれいごとではなく殺さねば自分を含めた他の誰かが死ぬと痛感した時、実のところ臆病なだけかもしれないが、武力だけではダメだと思った。

和葉がサムライマスターの息子だと知れると、英雄や偉大な魔法使いにならないのかと聞かれるのは常であったがそんな気などサラサラなかった。
偉大な魔法使いの中には、戦いに秀でたものだけではなく、戦災者の治癒に尽力した人物などもいた。
尊敬はするものの自分が目指すものではないと感じていた。

着実に本来の目的である人脈を増やしつつも、そんなことを悩みながら研究していた和葉であったが、ある恐ろしい事実を掴んでしまった。

それを解決するための研究材料や資料がこれから向かう先にはある。
そのための帰郷であり、麻帆良への来訪だ。

回想を終えると同時に覚悟を新たに固めた和葉は、ブランケットの中で短い眠りについた。





木乃香と刹那とは学園の案内をしてもらうため駅前で待ち合わせていた。
いつの間にか駅に到着していた和葉はユキに左手を引っ張られてホームに出る。

「こら~難しいこと考えてぼお~っとしてたでしょ! ほら女の子を待たせてるんだからサッサと行くよっ!」

ユキは背中を叩いて走り出す。
引きずったスーツケースがガラガラとうるさい。

「あぁ。5年も待たせたんだ。もうこれ以上待たせらんないな!!」

追いかけるように和葉も走り出し改札を抜ける。
これからのことに不安はいっぱいあった。

しかしこれからは置き去りにする形で長い間離れることとなった、木乃香や刹那と一緒に過ごすことができるのだ。
置いて言ったことに恨みごと1つ言うどころか、いつまでも待ってくれていた大事な存在。
2人のことを考えると、自然と和葉の心は躍っていた。



さぁ行こう。
愛しい人たちが待っている。


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