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No.29095の一覧
[0] 不死の子猫に祝福を(エヴァ主人公・本編再構成)[ランブル](2011/07/31 22:59)
[1] 1話「憂い」[ランブル](2011/07/31 00:19)
[2] 2話「裏切り」[ランブル](2011/08/09 01:56)
[3] 3話「嘆き」[ランブル](2011/08/17 23:56)
[4] 4話「可能性」[ランブル](2011/09/07 16:25)
[5] 5話「彷徨」[ランブル](2011/09/25 00:31)
[6] 6話「迷人」[ランブル](2011/10/07 14:53)
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[29095] 不死の子猫に祝福を(エヴァ主人公・本編再構成)
Name: ランブル◆b9dfffe8 ID:6aeaada3 次を表示する
Date: 2011/07/31 22:59
この物語はもしもナギとエヴァの関係が生々しいところまで進んでいたらという本編の設定改変ものです。
尚、以下のことに気を付けていただけると幸いです。

1.オリ主、オリキャラは一切登場しません。

2.原作におけるラブコメ的な雰囲気はおよそ皆無です。

3.エヴァの経歴が変わったことで、細かな設定の変更や登場しない原作キャラクターなどが何人かいます。

それでは、よろしくお願いします。





あの日、奴は私に誓った。

「まあ、心配すんなって。お前が卒業するころにはまた帰ってくるからさ」

奴は確かにそう言った。
あのいけ好かない顔にニヤけた笑みを浮かべながら、さも当然のように。
奴は言ったのだ、迎えに来ると。
絶対に私の元に帰ってくると。
だから、私も信じたのだ。
他ならぬ奴の言葉だったから。
この世で私が最もいけ好かなくて、この世で私が最も愛したあの男の言葉だったからこそ、私はもう一度『人の言葉』を信じたのだ。
それなのに……。

「光に生きてみろ。そしたらその時お前の呪いも解いてやる」

奴はこの言葉を最期に永劫私の元に戻ってくることはなかった。
幾日も幾日も奴が私を迎えに来ることを頑なに信じ、卒業を過ぎ、期日を過ぎようともひたすらに待ち焦がれていたというのに。
奴は……ナギは二度と私に姿を見せることなく、この世を去った。
死因は分からない。
誰に聞いても答えてはくれず、また誰もその答えを持ち得はしなかったから。
だが、そんなことはもはや私にとってはどうでもよかった。
ナギに裏切られた。
そんな一念ばかりが私の心の中で暴れ狂い、奴へと向かう感情が現実に対する私の眼をひたすらに盲目にしていったからだ。

初めは何かの戯言なのだと思った。
恐らく無意識の内に私自身ナギの奴が死ぬはずがないと心の中で思い込んでしまっていたのだろう。
だが、奴は戻らなかった。
約束の期日から一年が経ち、二年が経ち、やがてそうした月日が幾重と積み上げられようとナギは私の元に帰ってきてはくれなかった。
約束したというのに。
迎えに来てくれると信じて待っていたというのに。
ナギは……奴はあっさりと私の心を踏みにじり、死んでいったのだ。

初めに沸いた感情は怒りだった。
幾年も人のことを待たせておいて何を勝手に一人で死んでしまうのだ、というのが半分。
そしてもう半分は迎えに来るという約束を違えたのが許せないというやり場のないものだった。
登校地獄のことはまだいい。
卒業を迎えた当日に来なかったこともまだ致し方ないと思えもする。
だが、私に淡い期待と夢を持たせて尚、その想いを踏みにじられる事だけはどうしても許容することは出来なかった。

私は奴に身も心も……私の持てるすべてを奉げた。
だが奴は私に何も応えてくれはしなかった。
何時もはぐらかすか逃げてばかりで、ちっとも私の話に取り合ってはくれなかった。
でも、あの時だけは違った。
奴と別れる間際に交わしたあのやり取りの時だけは、奴もしっかりと私の気持ちを受け止めてくれていたように見えたのだ。
だから私はおとなしく待ち続けた。
何時の日も何時の日も奴のことを想いながら、幾つもの月を越えて待ち続けたのだ。
奴の言った『光』に身を窶しながら……。

だが、それを奴は踏みにじった。
元よりふざけた男だとは思っていたが、少なくとも奴は自分が抱いた女の情を汲み取ることのできない人間ではないと信じていた。
それなのに……奴は私の心も、情も、想いも何もかもを否定し、あまつさえ裏切ったのだ。
この光という名の檻に、私だけを置き去りにして。
それが……それだけが、私はどうしても許せず、幾度も幾度も奴を思い出しては心の中で罵倒し、そして辺りにあった物にも者にも皆須らく当たって散らした。
目元からあふれ出る『涙(かんじょう)』に自分ですら気づかないまま……。

次に湧いた感情は悲しみだった。
もう何をしても奴は戻ってこない。
自分の愛した男はもう二度と私のことを振り返っても、迎えに来てもくれはしない。
私は永劫この薄暗い『光』の中に囚われたまま悠久の孤独を生きて行かねばならない。
暴れに暴れた果てに、そう悟った私にはもうただただ悲しみに暮れることしか出来なかった。

数百年の刻を経て、ようやく自分が心を赦し、愛せる男を手に入れられたのだと思っていた。
私のことを畏怖もせず、蔑みも哀れみもせず、ただ一人の女としてみてくれる男にようやく出会えたのだとも思っていた。
そして何よりも、私はもう一人でいなくてもいいのだと本気で信じていた。
けれど、そうした刹那の幸せは呆気ないほど簡単に私の両手から零れ落ちた。
600年前のあの時と同じように。
私が人の身から化け物へと変わったあの時のように。
刹那に掴んだ幸福の情景は、脆くも私の前から消え失せ果てたのだ。
まるで私自身の犯した過去が女に生きようとした今の私を嘲るように。

そして、そうした激情と悲哀を超えて、最後に残ったのは喪失感と虚無感だった。
私がナギと出会い、奴と時間を共有するようになってから今に至るまで私はただ奴の事だけを想い、そして奴の存在だけを希望として生きながらえてきた。
だが、もうナギは死んだ。
私が愛し、身も心も奉げた男はもうこの世にはいないのだ。
ならば、これから先私は一体何を支えに生きて行けばいいのだろう。
生涯でただ一人、自分を愛してくれるかもしれなかった男に裏切られた私は一体何に縋って生きて行けばいいというのだろう。
涙も枯れ、怒りも消え失せ、ただただ絶望の念に飲まれるしかなかった私の思考がそんな疑問に行きつくまで、そう多くの時間は掛からなかった。

「生きる意味など……ない……」

疑問の答えは、自分でも驚くほどにあっさりと口元から零れ落ちた。
そう、もはや私の生きる意味などない。
ナギという希望が欠落した果ての未来など、私にとっては生ける地獄と同じだ。
私はもう誰からも恐れられたくなんかない。
誰かから命を狙われることも。
誰かに恨まれ蔑まれることも。
誰かを不幸にすることも。
私は……もう真っ平御免だった。
そして奴がいなくなった今、またあの得体の知れない怨嗟が渦巻く世界の中で生きて行かねばならないというのなら─────私はもう生にしがみ付いていたくなどなかった。

「もう、疲れた……」

私はきっと長く生き過ぎたのだろう。
その所為で多くの人間から恨まれることにもなって、また多くの人間の命を奪うことにもなった。
今を思えば、どこか適当なところで区切りをつけて死んでおけばよかったのかもしれない。
そうすれば誰かに愛される喜びを知ることもなく誰も彼も恨みながら死ねたはずだ。
愛する者を失った悲しみも、信じていた者に裏切られる苦痛も感じることなく、ただ自らに仇なす者を恨み、自らの生涯を恨みながら死んでいくことが出来たはずだ。
でも、私は奴に出会ってしまった。
悪の魔法使いでも闇の福音でもなく、ただの女として私を扱ってくれたあの男に。
それが恐らく、私にとっての最大の幸福であり、最大の不幸だったのだろう。
好きだった男に殉じて迎えるなどという最期を泣き笑いしながら受け入れてしまうくらいには……。

「待っていろ、ナギ。私も今……そっちにいく……」

故に、私は自らの手にナイフを取った。
心の臓腑に一突きもすれば忽ち絶命することの叶う、純銀製のナイフだ。
そしてそれを私は躊躇なく自らに向かって翻し、そして力いっぱい自身の胸にその刃を突き立てた。
手元から零れ落ちる流血と共に薄れる意識のなかで、最後まで奴のことを追い求めながら。
きっと、その時の私の表情は笑っていたのだと思う。
例え地の果てに逃げても絶対に追いかけてやる。
そんな何時だかに言った言葉の通りに、私は愛する男を追って生涯に幕を下ろすことが叶ったのだから。

それが1993年。
今から10年ほど前のこと。
私ことエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがあらゆる意味での『死』を迎えた日の出来事だ。
これは、そんな私の物語。
闇の福音でもなく、悪の魔法使いでもない。
好きな男の背を追い続け、そして掴むことの出来ない『星』を追い続けた哀れな女の物語だ……。





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