昨日ネギ坊主が皆と再会できてから一日。
ネギ坊主達はザジサンとイギリス行きの飛行機に乗るのは決めたようだけど、出発は明後日の予定らしいネ。
それにしてもネギ坊主がメガロメセンブリアで死亡扱いになているというのは、ネギ坊主の魔法使いの修行を意味する、日本で教師をする事、というのを続けるのは難しいだろうナ。
逆に生きているという報告をしても厄介な事になただろうから……避けては通れない問題ネ。
一応、ネギ坊主の事についての内容は3-A以外のコミュニティには漏れないように細工してあるから情報漏洩は問題ないヨ。
……今日、私はさよと久々に学校に登校しているが、ネギ坊主が戻て来た事で、今まで3-Aにしては暗い雰囲気だたらしいのだが、もういつも通りのように見えるネ。
「美空、端末はどうだたかナ?まだ感想を聞いていなかたから教えて欲しいネ」
隣の美空にはそういう約束だたからネ。
「もうスゲー役立ったよ?役立ったからあんなんあればそりゃ通信には事欠かないわで便利だよ間違いなく。でも、超りん……超りんマジ謎多すぎるから。で……全部知ってたんスか?」
「ハハハ、便利すぎたみたいだネ。うむ、一般への普及は逆に先送りにするかナ。参考になたヨ、美空。質問だが……予想はしていた事もあたが、私にも正確なことは何一つ分からなかたというのが答えになるヨ」
「あー、まあ、そう言うか、うん。……昨日超りんが言ったとおり素直に喜んどくことにするよ」
「それが良いネ」
「あと一つ、知ってそうだから聞くけど、今晩国連総会の生中継があるから見とけって言われたんだけど超りんはどう思う?」
「私は別に困ることは無いネ。明日からの日々を私は寧ろ歓迎するヨ」
「そうかそうかー。そう言われると私がとやかく言う事でも無いし、超りんと同じで別に困らないからいいかって感じスね」
「しばらくは美空の嫌な面倒事があるかもしれないがそのうち慣れる筈ネ」
「あははははー。正直今なら大抵のことはそんなに面倒でも無いと思えそうな自分が怖いよ」
「それを慣れと言うんだヨ」
「あー……なるほど。手遅れだったわ……」
「手間が省けて良かたナ、美空」
「そりゃどうもー」
……美空と他愛の無い会話をしたが、美空の言た通り、火星の方は、間もなく今晩、ニューヨークで開催される国連総会で魔法世界の存在を公表される事になているから、リアルタイムで中継を見る予定ネ。
ハカセとさよと女子寮で3人揃てテレビを見るのは久しぶりかナ。
学校が終わて私はこれから何をするかと言えば、今後の為にやること、やりたい事はいくつもあるが、まずは魔分有機結晶の生産をまた開始する事が一つ。
プリズムミラー方式の人工衛星の一号機の開発、その為の予定を立てる事、関連企業に対しての部品の発注、SNSでの一括共通内容情報発信、ハッキング対策の強化、火星の植生変化の監視と対応、もしもの食糧問題に対応しての植物工場の計画、砂漠の緑化、環境変化の前に火星の貴重植物の採取、地球と火星両者での特許取得、超包子の火星への進出、食事文化の融合、魔法と科学の融合、その学問の体系化、優曇華の改造研究……休んでいる時間は無いナ。
国連総会の生中継は丁度午前0時ぐらいから始まるからそれまで結局今日は魔法球の中で計画を立てつつ、魔分有機結晶の生産をまた始めて過ごしたヨ。
ハカセも昨日に引き続き連日籠ていた工学部から早めに寮に戻てきたからさよと一緒に夕飯を食べて、3人で夜中になるまで待つ事にしたネ。
「珍しいですね。国連総会って普通は生中継なんてしませんし。それにどこの局も朝ニュースで見るように勧めるなんて火星の地表変化と関係することでもあるんでしょうか?今直前で丁度その話がされてますけど」
放送局側も生中継を流す事は決定しているが、何故生中継を流す事になたのかについて議論するという不思議な現象が今直前討論でされていた所ネ。
「その可能性は高いですよね」
ハカセには魔法世界の存在を話した事はあるが、それだけだから火星が魔法世界だとは結びつかないカ。
「何か重大発表でもあるのかもしれないネ」
「……超さんと相坂さん達は今回の件に関係していたりするんですか?」
ふむ、怪しさ満点だからそう思うのは当然カ。
「どうだろうネ。ハカセ、悪いがそれは答えにくいヨ」
「はー、分かりました。はっきりとは言えないんですね。1年の時に超さんの計画を聞いてからその後しばらくして計画が変更になった事関連だと、私はそう思うことにします」
「そう思うのは自由ネ。助かるヨ。一つ言えば、私の計画は本質的には変更されなかた、そういう事だヨ」
「……という事は、あー!!なるほど!そういう事なんですか!それはもう世紀の重大事件じゃないですか!」
火星が魔法世界だと確信したようだネ。
「この生中継で答え合わせですね」
「さて、いよいよ、始まるようだヨ」
「どこも見るように勧める訳ですね」
[さて、今回何か発表があるのでしょうか。それでは、第58回国連総会、生中継でお送りします]
画面が国際連合総会会議場に移て、同時通訳で生中継が開始されたネ。
……今回は国連総会の事務総長の演説の後に、各国の一般討論演説に入る前に重要な発表があるという説明がされたヨ。
「コフィー・アナン事務総長の演説ですね」
準備ができたのか緑色の床の壇上に事務総長が上がて来たネ。
[過去12カ月は、共通の問題や課題に集団で立ち向かうことを信ずる私達にとって、非常に辛い日々でした。多くの国において、またもテロリズムが罪の無い人々に……]
「……普通ですね」
……今回の国連総会は元々核兵器の廃絶についてが主な論点だから当然の流れではあるナ。
「これからですよ、葉加瀬さん」
「そうですね。……でも重要な話の筈なのに日本の出席者は小泉首相ではなく川口外務大臣なんですね」
「日本自体今も混乱しているから首相が国を離れる余裕はないと思うヨ。他国も首相の出席率はそこまで高くないからネ」
火星の件が発表されたら本国ですぐに何らかの検討が開始されるレベルの話だからそのほうが動きやすいからなのだろうけどネ。
……しばらく事務総長の演説が続いたヨ。
[……世界は変化したかもしれません。しかし、こうした目的は今尚意義も緊急性も失っていません。私達は常に、これらの目的を視野の中にしっかりと据えておかなければならないのです]
「今回の国連総会の内容としては一区切りついたみたいですが……」
[……今回の国連総会についての演説は以上です。……先月、非常に重大な世界的事件が起こりました。火星が地球と同じく青い星になったという事です。ここで、私は国連に新たな国家を迎える事を提案します。国連はこれまでその国家から陰ながらの支援によって最も危険な地域での活動も可能としてきたのです。……実は異世界というものは、存在しました]
「おおおおお!!異世界なんて非常識な発言が事務総長から出るなんて何かテンション上がってきますね!」
「何か無意味に楽しくなってきますよね!」
「その気持ち、分かるヨ!」
新時代が来た!という感じネ!
『あぁぁりえねぇぇぇぇぇえ!!!!!』
……窓から何か聞こえるナ。
「……今何か聞こえませんでしたか?」
「千雨サンの声だたネ」
ご愁傷様だネ。
「長谷川さん最近ストレス溜まってるみたいでしたからね、発散できたでしょうか?」
「……そうだと良いネ」
国際連合総会会議場はざわついているし、携帯を見れば、SNSの更新がこの時間帯では未だかつて無い程に行われているナ。
画面が切り替わたままで放送局ではどうしているか気になるがきっと混乱していると思うヨ。
事務総長が壇上から降りるのと交代で何人か……高畑先生もいるが、出てきたナ。
箒を持ている人もいるネ。
「あ、高畑先生出てきましたね」
「所謂魔法先生で悠久の風というNGOに所属しているとは知っていましたけど……テレビに映っていると不思議な感じがしますね」
「……コミュニティはもう炎上しているようだヨ」
デスメガネが何故出ているのか、と麻帆良全体のコミュニティではそんな感じになているナ。
「……あ、本当ですね」
「明日も学校あるのを忘れて今日は皆徹夜になりそうですね」
「ハカセ、私達にとってはいつもの事ネ」
「あー、そうでした。つい忘れてました」
「習慣化してますからねー」
高畑先生が話す訳ではなく、代表の魔法使い……あれはまほネットのデータベースで見た記憶だと確かアメリカの魔法協会のトップの人だたかナ。
[議長、事務総長、御列席の皆様、まず、ハントゥ・セントルシア共和国外務大臣閣下が、第58回総会議長に就任されたことを心より御祝い申し上げます。また、カバン・チェコ共和国元副首相兼外務大臣閣下の第57回総会議長としての御努力に敬意を表します。イラクの復興及び安定の確保に粘り強く取り組んでこられた、デ・メロ特別代表をはじめとする国連職員の方々が卑劣な爆弾テロの犠牲となられたことに、メガロメセンブリア政府を代表し、心より哀悼の意を表します]
「メガロメセンブリア政府と来ましたかー」
「普通の一般討論演説のような導入だネ」
「でもメガロメセンブリア政府って言い方は凄く新鮮ですよね」
[地球全市民の皆様、私達はメガロメセンブリアという国家に所属しております。メガロメセンブリアが正式な国土を有する場所はこの地球の隣の惑星、火星であります。……こちらの映像をご覧下さい]
控えていた高畑先生達がホログラム映像を空間に映しだして……火星、魔法世界の地図だネ。
中継映像もそれに合わせてズームされたヨ。
「これが魔法世界の地図ですかー」
[火星……私達は魔法世界と呼称していますが、この魔法世界にはこのメガロメセンブリア本国を盟主とする国家群の集合であるメセンブリーナ連合、他にアリアドネー、ヘラス帝国という2つの国家が存在します。全地球市民の皆様、魔法世界、と呼称しましたが、この魔法世界では『魔法』というものが冗談ではなく、日常的に使用されているのです。次の映像をご覧下さい]
料理、掃除、治療、箒、飛空艇等々の映像が順次切り替わて紹介されていくヨ。
「おおー!何だかさも普通ですと言うように魔法の存在が地球に公表されましたね」
「あっさりしているが私の目的はこれで達成されたネ」
「他に公開する方法って言っても穏便に行くならこんな感じにしかならないですよね」
[これらは決して合成ではありません。この場でも魔法の実演をさせて頂きたいと思います。箒による浮遊です]
控えていた魔法使いの人が持ていた箒に跨て……。
―浮遊!!―
飛んだヨ。
[物理法則を無視していますが……これは手品ではありません。魔法、という確かな技術の一つなのです]
「私は知ってますからいいですけど……それでも、テレビを通している以上合成だと疑う人はいるでしょうね」
「その為に全世界に同時に発信してその誤解を無くそうとしているのだけどネ」
[……これが魔法であります。誤解無きように申し上げますが、私達魔法世界人は決して今まで火星に隠れ住んでいた訳ではありません。これまで永きに渡り魔法世界はこの地球の存在する宇宙から位相を異にしたれっきとした異界、として存在していたのです。しかしながら、先月8月27日、地球全12箇所の同時発光現象という天変地異と時を同じくして、魔法世界は火星の地表へと定着したようなのです。これは私達も予期せぬ事であり、現在も調査中の事項であります]
「話している人がスーツを着ている普通の人間なので、何だか実感が全然沸かないですね」
「それは実感を持て欲しい所ネ」
[……メガロメセンブリア本国の人口は約6700万人、ほぼ100%が人間で構成されています。……そして、魔法世界には亜人種と呼称される人類が存在するのです。彼らは先に上げたアリアドネーとヘラス帝国に多く住んでいますが、メセンブリーナ連合でも何ら私達人間と変わらない生活をしています。次の映像をご覧下さい]
半獣人、獣人、ヘラス族の人達と順に映像が映しだされたヨ。
「こ……これは衝撃的です!宇宙人と紹介しても良いぐらいには!」
その場合には……宇宙人は、実はいました、ぐらいかナ。
「今まで宇宙人予想をしていた地球人もこれにはテンション上がるだろうネ」
日本人の勝利で終わりそうだけどネ。
でも、所謂オンラインゲームのキャラクターメイキングではありがちだから意外と普通ではあるかもしれないナ。
[この彼らの映像も、重ねて申し上げますが、合成ではありません。ご覧の通り、魔法世界は地球とは確かに異なってはいますが、人々が変わらぬ日常を過ごすという点で何ら一切の違いはない、という事をご理解頂きたいのです]
やはり国連総会という場で地球に一斉公表するのは良い方法だだナ。
亜人種については公的な統一見解が無いと、余計な誤解が生まれかねないからネ。
[これまで魔法世界は異界、として存在して来ましたが、地球と魔法世界の行き来はゲート、と私達が呼称している地球の全12箇所に存在するポイントから定期的に時空間を超えて移動する事で可能でした。そして現在、魔法世界は火星へと定着しましたが、依然として行き来は可能です。但し、最近魔法世界側で事件が発生した事により、魔法世界側のゲート11箇所のうち10箇所は使用不可能となっている為、残る一箇所のみからしか行き来はできない状況であります。また、魔法世界側各ゲート復旧の目処は早くて2005年5月の予定です。一方、地球側のゲート12箇所のうち11箇所は調整の問題と魔法的問題に関係する事情から使用不可能であり、こちらの再稼働予定日は不明の状況であります]
「ああー、分かってましたけど、星間移動用のロケット開発は意味なかったですね……」
ハカセ達は工学部でロケット開発に手を出し始めていたようだからナ……。
だが、意味が無い訳ではない。
「ハカセ、科学の発展にとて意味がないという事は無い筈ネ」
「えー、まあNASAでも技術の転用は行われていますから分からなくもないですけど……こうロマンがですね」
「気持ちは分かるヨ」
代表の人はこの後もしばらく淡々と説明を続けたヨ。
[……そして私達メガロメセンブリア所属の者は皆殆どが地球由来の人間であり、魔法使い、なのです。メガロメセンブリアに限定にされない事ですが、魔法使いは地球で古代ローマの昔から歴史の表に出ることなくこれまでその存在を秘匿し続けて来ました。その理由は多岐に渡ります。魔法という技術そのもの性質の問題、また中世ヨーロッパで起きた魔女狩りという歴史的事象……これは表向きには実際に魔法使いが存在したという事は伏せられていますが、これには実際に少なくない数の魔法使いが犠牲になったとされています。更に、この現代社会では魔法と言えば非常識と思われる環境下、社会的混乱を起こさない為には地球では秘匿するべきだという暗黙の了解があったのです。メガロメセンブリアに限定されないと述べましたが、地球と魔法世界の行き来が可能になったのはゲート技術が用いられるようになったここ数百年の間にすぎません。古代ローマの昔から存在した魔法使いですが、今でこそ魔法使いの殆どがメガロメセンブリアに籍を持っていますが、純粋な地球に住む人類として存在していた時期も確かにあったのです。しかしながら、この歴史に関しては魔法世界でも完全な解明は進んでいません。また、ゲート技術自体が魔法世界で全世界に公表されたのもここ100年の事に過ぎません。そしてこの100年の間に亜人種の地球への流入がほぼ無かった事には様々な制限があったからに他なりません。……私達が今回この場を借りて、全地球市民の皆様に私達の存在、魔法世界の存在の公表をするに至った経緯には、地球から火星、魔法世界が観測可能、また、魔法世界から地球が観測可能という状況、そして既にこのニューヨークの存するアメリカ合衆国が打ち上げた火星探査機2基が4ヶ月後に火星に到着する避け得ない事実を始めとして、ひいては今後起こり得る混乱を可能なかぎり避ける為であることをご理解頂きたいのです。また、これまで魔法世界は地球と何ら変りない環境でしたが、火星に定着した事で環境変化が起きました。太陽光不足、1年のサイクルの凡そ1.8年への延長等がその最たるものであります。これらについては可及的速やかな対策を取る必要がありますが、場合によっては地球の科学技術力を借りる必要があるかもしれないのです。この点についてもご理解頂きたく思います。……続きまして、事務総長のお言葉にありました通り、私達のこれまでの地球での活動についてこの場を借りて公表させて頂きたいと思います。次の資料と映像をご覧下さい]
「完全に魔法世界のプレゼンテーションですね」
「国連総会の核関連の問題は何処へやらという感じだが、仕方ないネ」
表示された資料は悠久の風、四音階の組み鈴等の国連NGO関連の公的には伏せられていた活動内容が記されていたヨ。
紛争地帯での人命救助、災害復興支援、テロ組織への介入行為等が殆どだが、表立って地球の戦争には第一次世界大戦も、第二次世界大戦も、その後の戦争のいずれにも直接介入はしていないという点について何度も強調されたネ。
[……以上が私達の活動の実態です。これまで世間に広く魔法の存在を知られずに活動をすることが可能であった事には各国に存在する魔法協会による支援と魔法そのものによる情報処理という事情があったのは紛れもない事実であります。……時にこれらの方法が、地球の各国家の法律、また、人権から逸脱、無視した行為を取る方法であったことは否定できません。次の資料を御覧下さい]
これを公開しなければ意味が無かたのだが……勿論全てとはいかないだろうが、きちんと公開したナ。
表示されたのは、各国魔法協会による、この麻帆良のような自治区としか表現できない拠点としての土地の確保という事実に始まり、情報の改竄行為、この現代地球で最も利用頻度の高い認識阻害という魔法の存在、予期せず魔法を知てしまた人に対する最終手段としての忘却魔法の使用等だたネ。
これはこれから波紋を呼ぶことは間違いないし、麻帆良でも学園長に説明要求がされるのも時間の問題だが避けては通れない道だナ。
「超さん、麻帆良にも認識阻害が使用されているのは分かるんですが、麻帆良ってそれだけではない気がするんですけど……どうなんですか?」
「ハカセもそう思うカ。私が思うにこの麻帆良という土地は何らかのまさに非科学的力、魔法の根源的なものが働く場所と言ても過言ではない筈だヨ。麻帆良では事故による重傷者が殆ど出なかたり、凶悪事件の発生率が極端に低かたり、麻帆良で生活すると何らかの秀でた才能に目覚めやすいのもこの土地そのものに何らかの力があると考えないと説明がつかないからネ」
霊脈が集中しているからとは言え、こうも不思議な事があるものなのカ……しかし、そもそも神木・蟠桃がどのように生まれたのかについても、自然発生だというのだから今更だナ。
「やっぱりそうですかねー。ロボットが暴走するのは日常茶飯事ですけど、大怪我した人なんて出たこと無いですし。科学者としては信じ難い事ですが、運が良いだけでは到底説明できないですよね」
「とにかくここは何か他とは違う、恵まれた場所だと思うヨ」
[以上のように、止むを得ないという理由だけでは決して容認できない行為を私達がしてきたことは紛れもない事実です。この判断については国際社会に任せる他ありません。批判を受けるのも避け得ない事であると認識しています。そしてこれら私達の活動はメガロメセンブリアにおける基本理念であり、魔法世界全体の総意ではないことはご理解下さい。一つ、私達の風習について述べさせていただきます。……一定の活動を行い、何らかの形で社会に貢献した魔法使いはその活動を評価されマギステル・マギと呼称される称号が授与されるという風習が古くからメガロメセンブリアには存在します。そして実際に魔法使いの卵達の多くはそれを将来の夢として抱く事が多いのです。これには私達の教育による影響が関与していることは否定できません。ですが、そもそもマギステル・マギとは決められた形のあるものではありません。基本理念としては個々人それぞれが目指す自身のこうありたいという理想の姿を目指してそれに向けて邁進するというものなのです。マギステル・マギとして認められる事は確かに私達の間では重要な意味を持ちますが、例えある個人の活動がマギステル・マギとして認められないとしても、それは自身が納得すればその時点で紛れもなくその個人にとってのマギステル・マギの一つの形なのであります。これを子供に教えるにあたり、正義という言葉を使用する事が多いのですが、わかり易さを重視しているだけにすぎません。メガロメセンブリアという国の基本思想というのはこのようなものですが、地球の各国家、社会における思想との間で誤解を生じ易い点であると考え、このような説明を致しました]
実際にネギ坊主ぐらいの年齢だと正義で分かりやすく教えられているらしいからナ……確かに誤解を招きやすい点だネ。
杖一本で色々できてしまうというのは特に子供にとっては正義に使うべきだ、とでも教えないと善悪の判断がつかないうちは何をしでかすかわからないからナ。
「あー、なるほど、偏った理念の場合、下手すると偽善とかそういう批判をうけやすそうですよね」
「そういう事もあるだろうネ。……魔法という力を持た人々にとって、その力を制御するのには確固とした自身の目標を持つ事は大事だと思うヨ」
「結局はなりたい自分になるために頑張るって事ですよね」
「……そういう事だネ」
「そのマギステル・マギの称号というのもノーベル賞みたいな感じなんですかね」
「ノーベル賞との比較はまた難しいと思うが、そのような感じだと考えて良いだろうナ。災害復興支援で活動した魔法使いだと差し当たりノーベル平和賞というのは適用できそうではあるネ」
[議長、今後の日程におきまして、第58回国連総会の本来の議題とは異なりますが、火星、魔法世界についての議論の場を設ける事をメガロメセンブリア代表として提案します。……以上をもちましてメガロメセンブリア代表として、すべての国連加盟国、全地球市民の皆様に向けて、演説を終えたいと思います]
……これで、一段落だネ。
メガロメセンブリアの人達は壇上で一礼して降りて行たヨ。
中継映像での国際連合総会会議場の全体の様子が映されたが、どうにも唖然としている人達がいれば、ざわざわしている人達もいるという状況だナ。
ふむ……これからに期待だネ。
「……何だか本当に未知との遭遇、異文化交流でしたね。これから先が楽しみです」
「ハカセ、これからの楽しみと言えば、人工衛星を作る事にしたヨ」
「ええっ?今度人工衛星作るんですか!?」
興味湧いたみたいだネ。
「さっき太陽光不足と言ていたからネ。それで、種子島に一緒に行くカ?」
「い、行きます!絶対行きましょう!JAXA、それも種子島宇宙センター、一度行ってみたかったんです!」
テンション上がて来たナ、ハカセ。
「でも鈴音さん、その前に東京の調布ですよね?」
さよの言うとおり、JAXAの本拠地は調布航空宇宙センターだからまずはそこだネ。
「まあ、そうなるかナ。でも来月上旬には何らかの目処は立たせたい所ネ」
雪広の社長サンが協力してくれる事になているヨ。
「……でも、いくら超さんが作ると言っても流石に人工衛星規模となっては計画自体通るものなんですか?」
「通してもらうヨ。費用は私が全額出す予定だからネ」
「えー?えっと、超さん、100億ぐらいしますよね?」
「うむ、100億はするだろうナ。でも大丈夫ネ。その資金はあるヨ」
「私考えてませんでしたけど……超さん今どれくらい持ってるんでしたっけ……」
「複数基作る余裕が充分あるぐらいには持ているヨ。その前に、試作基をとにかく一基作てみないことには始まらないからネ」
「鈴音さん、女子中学生、個人で人工衛星に全額投資……また大変になりそうですね」
うむ……さよの言うとおりだろうネ……。
またメールが殺到したり、ハッキングが増えたり、最終的には命を狙われる事になるのだろうナ……。
……ネギ坊主達のように一度死亡した事にした方が余程楽かもしれないが……それはそれで問題があるからあり得ないが、少なくとも国籍はそろそろ日本に変えた方が良いナ。
麻帆良に跳んで来た時は、ここの魔法先生達の対応策として、中国と日本の両方にハッキングを仕掛けて私が中国からの留学生だという情報を捏造したが、翆坊主と会てすぐに計画を変更した事で今は寧ろ中国からの留学生にしている方が今後も麻帆良、日本を本拠において活動するのだから色々と都合が悪い。
しかし既に私自身が作成した個人情報を今更無かた事にすることは難しい以上、正規の方法で乗り越えるしかないが、残念ながら日本国籍取得の要件を私は一切満たしていないというのは問題だナ。
未成年、5年以上住んでいない、住所も……女子寮では駄目だからネ……。
「それも承知の上だヨ。予定としてはプリズムミラー方式による太陽光の集光の可能な人工衛星を作る予定ネ」
「やっぱり一般的な人工衛星とは違うんですね」
「普通の人工衛星も一基ぐらいは打ち上げて良いかもしれないけどネ。ハカセ、一部設計図はできているから見るカ?」
「もうできてるんですか!是非見せてください」
「分かたネ。……これで良いヨ」
パソコンの画面にプリズムミラー方式の人工衛星の設計図の一部を表示したネ。
「おおー!確かにこれは工学部で全部作るのは流石に無理ですね」
「色々な企業から特注で部品の作成を依頼する必要があるからネ。工学部でもある程度部品を作る事もできるだろうが、今回は規模の大きさから外部の力を借りるヨ」
私の未来技術を基盤にして作ろうにも、今までのような小物や元々あるものを弄る、プログラムレベルならばまだしも、まず人工衛星では部品数が多すぎて設備の用意から困難ネ。
それにもし未来技術を基盤にして作たとしても、全世界に知られる事が想定される人工衛星が現行の技術水準でメンテナンス不可能では私の後々の手間が増えるだけだからナ。
数基までは種子島で完成させてそれが問題なく実際に稼働するのが確認できれば、クルト総督に説明した通り、また麻帆良に人工衛星の部品の搬入と、その組み立てを専門にする施設を建ててそこにダイオラマ魔法球と作業用にプログラムした田中サン達を配備すれば量産体勢に入れると思うネ。
「いやー燃えてきました!」
「人工衛星は燃え尽きたらおしまいですよ!」
「さよ……言てみたかただけだと思うけど、そういう意味ではないヨ」
「あははー、分かってますよ」
……本当に歴史上これ以上はないと言えるような大事を成したというのに、こうしていると全く緊張感というか、そういうものと無縁なさよや翆坊主といて、私も大分感覚が鈍て来た気がするナ……。
……とにかく、私はこれからもやるべき事、やりたい事を行い続けるのには変わらないネ。