ガンドルフィーニは油断していた。
衛宮士郎に意識がいっていたことは確かだが、戦場に立つ者として、全てに注意を傾けなければならない。
死にかけの悪魔といえども注意を逸らすことは言語道断だろう。
いや、それはその場にいた全ての魔法使いに同様だ。
戦わずに済んでよかったと思う者。悪魔に対して恐れを抱く者。悪魔に憤りの感情を抱く者。
その様々な思考を閉ざす、生々しい音。
油断。
悪魔の姿ではなくただの肉塊。
元の悪魔の姿ではなく、人型の姿で横たわっていた悪魔が今や大きな肉塊となっている。
それは風船のように――――
そう、水を限界まで入れた水のように――――
ゾブリ、と音を立てて――――
弾ける。
その光景を間近で見ていたのはシスターシャークティだった。
意識を集中して目の前の悪魔を滅するために魔法を唱えている途中、悪魔が何かを言っていた気がした。しかし、事故に集中していた所為でほとんど聞こえなかった。
後に後悔するが、もう遅い。
何故もっと詠唱を速くできなかったのか、何故もっと力を磨かなかったのか。
気がつけば悪魔は肉塊となり弾ける寸前。
そして、弾ける瞬間に彼女は弾かれた。
痛みさえ感じる間もなく弾かれた。
誰、といえば――――
エミヤシロウだった。
悪魔はその存在が負の感情といってもいいだろう。
憎悪、憤怒、悲哀、狂気… 様々な負の感情の塊の存在。
悪魔に憑かれたと言われた人間の行動は常軌を逸している。そう表現されるのは、それまでの人間性からは考えられないほど豹変するからに他ならない。
大人しかったあの人が人を殺すなんて――――
人はその豹変振りに驚きを隠せない。
だが、それはその人の感情の器が溢れてしまっただけかもしれない。人は自己の感情という内的要因を制御できないと外的要因に変換する。
それが暴力だったり、殺人であったりする。
しかし、それは器の容量を感情が超えてしまった場合だ。
まるで何事もなく平和に暮らしていた人間が豹変する場合は些か赴きが異なる場合がある。
唐突に、そう唐突に平和な家庭が無残な人間の最期を物語る場所になる。
悪魔に憑かれてしまった。
その実態の一例として悪魔に憑かれてしまった場合、人の感情の器は矮小なものとなってしまう。
平和な家庭にあろうともストレスはどの生物にも存在する。ストレスを感じない生物は生物として破綻している。
生物にとってストレスは切っても切れないもの。
そのストレスや感情全てを受ける器が小さくなってしまったとき、人は感情が制御できなくなってしまう。
濁流のような感情の波が小さな器を一瞬で満たし、溢れて止まることを知らない。
内的要因が外的要因をどんどんどんどん肥大化させていき、常軌を逸した残酷な結果となる。
ベルフの肉塊に秘められたものはそれだ。
他の悪魔よりも狂気に満ちたベルフの血肉はより人を変質させる。
その血を浴びた者を破綻させる、精神汚染。
その最も近くにいたシャークティはエミヤシロウによって助けられた。
突き飛ばされた直後、彼達の姿を覆い隠すように人の身の丈を超える剣軍が降り注ぐ。
結果、エミヤシロウ以外の魔法使いは助けられた。
しかし、それは悪夢の始まり。
彼等は本当の意味で人の域を超えたナニかの力を目の当たりにすることになる。
ベルフを滅するべく向かった魔法先生たちは9割が戦闘不能になってしまった。
意識のあるもの無い者の共通の疑問はアレが何の魔法か一切理解できないということだ。
自分たちの魔法障壁を破壊し、意識を奪い。行動不能にした魔法。衛宮士郎が出したと思われる無数の剣は、衛宮士郎が飛び上がるように円の中から脱出した瞬間爆発した。それと同時に禍々しい殺気と嵐のような魔力の猛りを叩きつけられた。
爆発を逃れたのは魔法先生の葛葉と神多羅木だけ。
他のものは爆発の影響で意識を失ったり、戦闘不能となっている。爆発する剣の最も近くにいたと思われるシャークティはその中で一番酷い怪我を負っていた。
だが、もしも衛宮士郎が突き飛ばしていなければ… ゾッとする。
しかし、今この状況で命の危機にあるのは葛葉刀子と神多羅木の二人だ。
容赦のない殺気を浴びせられ、躊躇のない打ち込みをしてくる。
目の前の男は全身を赤黒い血を浴び白髪は猛る魔力に焦がされたかのように黒。
変質した衛宮士郎の剣を受け流す。
「はっ、はっ… くっ…」
息が上がる。
鬼を相手にしたってここまで息は上がらない。まだ衛宮士郎と剣を交えて2分経ったかというところ。
神多羅木の援護の魔法も相手の隙と思われる瞬間に葛葉と同時に放たれている
無詠唱魔法だからといって威力は軽視できないはずなのに、目の前の男は目視すらせずに叩き落とす。
まるでそこに来ることが分かっていたかのように。
葛葉の剣を避けながら――――哂いながら。
攻撃型の詠唱魔法を詠唱しようとすると牽制のようにどこからともなく無数の剣が現れる。魔法で撃ち落とそうにも速さと威力を兼ね備えた剣にはほんの僅かしか軌道をずらすことが出来ない
奥義を放ちたくても放てない。
その瞬間をタイミングを外されてしまうから放てない。
相手は片手だというのにっ!
魔法先生側は数と相手の負傷という有意な立場に立っているはず。なのに攻めきれない。
早く治療を施さなければ衛宮士郎の精神は崩壊してしまう。
だが、すでに二人は満身創痍だった。
経験したことのない凄まじい殺気。猛る魔力の圧力。押し潰されてしまいそうな衛宮士郎の存在感。
なにより、片手だというのに熟練の魔法先生に引けを取るどころかあっとうして余裕さえある。
身体に無数の裂傷を負いながらも目を離すことなく、二人は衛宮士郎に対峙し続ける。
そして、すでに二人の見解は一致していた。
このまま私たちが倒れては。この学園に被害が及ぶと。
だからこそ一気に勝負をつける。
もう、自分たち以外に戦力は期待できない。ならばこそ、体力が僅かにでも残っているまさに今、ここで衛宮士郎を倒さなければならない。
たとえ、それが死という結果を招こうとも。
一気に瞬動で間合いを詰めにかかるが行く手を剣が遮る。
しかし、それこそ神多羅木が全力を出さなければならない。
放つことができる無詠唱魔法を剣に向けて放つ。
限界の速度で放ち続けて、道を開く。
自身の間合いに入った瞬間、溜めた力を解き放つ。
「神鳴流奥義! 百裂桜華斬!」
全力をもって奥義を放った。
殺った!
本来は複数の敵に対して放つものだが、手数で、目視などできないほどの速度で振られる刀を片手だけで受けきれるはずがない!
「――――剣が増えたわけでもあるまい」
「え…」
思わず出てしまった言葉。
音すら消えていく中、意識を失う直前に見たものは、切り上げられる刀を片手で持った剣で抑えられた光景と、葛葉の身体を貫く無情な無数の剣だった。
パートナーを失い、体力も精神力も限界に来ていた神多羅木。
もう駄目だと、思ってしまった。
詠唱している間にやられる。無詠唱は叩き落とされる。相討ちなんてものは不可能。
衛宮士郎は哂いながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。
せめてここにタカミチいれば状況は違っていただろう。
一度でも衛宮士郎の戦いを見ている彼ならば自分たちのような遅れを取ることはなかったはずだし、倒しえたかもしれない。
だが、それももう意味がない。
もう、剣は振り下ろされる寸前なのだから。
「おや、貴方らしくないですねシロウ」
腕に巻きつくのは鎖付きのダガー。
振り向く先には――――
かつて、第五次聖杯戦争と同様の姿をしたサーヴァント、ライダーがいた。
「助太刀しに行かなくてよかったのでござるか?」
長瀬楓はエヴァンジェリンに聞く。
自分では力不足もいいところだが、このクラスメイトならば。と考えていた。
「私がか?
は、それは不可能だな。私が行ったところで血だまりがもう一つできるだけだ」
細められた目を見開き、真偽のほどを見極めようとしたが…
嘘ではない。
そう物語っていた。
「まぁ、封印状態でなければ負傷した奴を仕留めるのは簡単だ。
しかし、今の状態ではとてもではないが他の奴らより少し長く戦っただけで結果は変わらん。
今の奴は恐ろしいぞ? 力に制限をかける要因が何もないのだから。足手まといもいない、守るべき者もいない、優先すべきは自らの感情だ。
止められるとしたらさっき駆けて行った女ぐらいだろうさ。もう一人の悪魔では囮はできても倒せはしまい」
衛宮士郎の戦いは守るものがあるのが常であった。
今は何も守るものはない。自らを遮るものはない。抑える必要もない。
エヴァンジェリンは楓達を先導しながら、振り返ることなく口を開く。
「私も久しぶりに見たが、悪魔の血によって精神を―――そうだな逆にされたとでも言おうか。
そうなってしまった人間を御するというのは生半可な技量では成しえんのだ。人は自らの命を優先する。それの逆は自らの命を投げ出すに等しい行為をいとも簡単にやってしまうからな。それを憐れとは思わん。生物における生存本能だからな。
命を省みない行動ほど怖いものはない。テロなどでもそうだろう? 一つの命を投げ出すことで多くの命を道連れにできる。そういうことのできるやつらに法だのなんだのを説いたところで何も変わることはない。命の尊さ、そんなものは持ち合わせていない。
ましてや今の奴の力をもってすればタカミチ厳しいだろうな。いや、先ほどの―――赤い槍のような奥の手を用いれば魔法使いなんてものは脆弱。踏みつぶすだけだ」
振り返り、お前でも無理だというように、自嘲も含めた微笑。
本当に、今の彼女では勝てない。封印を解かなければこの学園は――――
「む?」
衛宮士郎とライダーのいる森から結構な距離が開いたところで電子音が鳴る。
エヴァンジェリンは不愉快そうな舌打ちをしながら電話に出る。
「何だじじぃ。言っておくが私は手を貸さんぞ。
貸したところで文句を言われるからな。いちいちうるさいんだよ貴様達魔法先生は」
向こうで学園長がうなる様子が想像できるが、正論でもある。
彼女の立場は非常に厳しい。かつての賞金首、悪名と轟かせた彼女が正義を口々に語る魔法先生たちに受け入れられるはずがなかった。例え封印状態であってもだ。
善意で動く。そういったことはエヴァンジェリンにとっては稀だろうが、少なくも今の状態で魔法先生、ましてやこの学園に手を貸す気は更々無い。
「封印を解いたところで貴様に私が強制できるのか?
そのまま自体の行く末を見届けろ。貴様自身が出ないというのならば、あのメドゥーサとかいうデカ女に任せるしかあるまい。
これ以上なにもないな。では切るぞ」
そのままエヴァンジェリンは携帯の電源をoffにしてしまった。
「さて、ここまでくれば問題ないだろう」
糸で運んでいたネギ達を下ろすと、森に配置した人形を通して戦いの行く末を見届けるエヴァンジェリン。
人形を通して見えるものは、確実に人の域を超えた何かだ。
それが非常に興味をそそる。どちらも人外。
さて、どういう結末か。
本物の戦いに、童女の如く心が躍る。
まるで現実味を帯びない戦いだろう。
目に見えぬほどの速さで森の中を三次元に動きまわるナニか。
目に見えないはずなのに、その姿を見失うことなく常に視界に収め続けるナニか。
ジャラジャラと音を立てながら投合される楔。
虚空から現れる名刀、名剣の数々。
森を破壊し、尚止まらない。
片や健全。片や重傷。
勝負の行方など、火を見るよりも明らかなはず。どちらが勝っているかなど一目瞭然。
そのはずなのに――――
哂う。
「はっ!」
哂う。
「はははっ!」
哂う。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははぁっ!!」
自らの不利など関係がないように哂う。
衛宮士郎はもう、ヒトではなくなっていた。
ライダーは攻めあぐねる。
自身が優れているのはスピードだけだからだ。
接近戦では確実に、遠距離では賭けになる。
魔眼はおそらく使えないだろう。ライダーが知っている衛宮士郎ならば問題なく使用できただろうが、目の前にいるのは守護者、エミヤだ。
数々の英雄の宝具を心象世界に内包する彼は侮れない。
こうしている間でも今か今かと忌々しいあの鏡を投影してくるかもしれない。そうなればかつての自分の末路をこの世界でも歩むことになる。
唯一救いなのは弓が使えないことだろう。剣を射出するしかないのであればまだ避けられる。
また、ほとんどの宝具も使用不可だろう。
宝具を使用したとしても膨大な魔力量だが、負傷した彼にしてみればもう一度宝具を使うことは自身の破滅を迎える。
両手持ちの宝具、エクスカリバーやデュランダルなどの剣は確実に不可。
ルールブレイカ―での仮契約の破棄も考えられたが、あれを使う瞬間は使える右手がふさがり、自身の身体に刺すという行動が求められる。その隙に殺すことができる。
身体能力を制限された状態、お互いに決め手に欠ける状態だからこそこの状況だ。
故に千日手。
お互いが必殺を使えないが故に、森は蹂躙され続けられる。
だが、ライダーはこのままではいけないのだ。
彼は自身のマスターではないが寄り代。この世界に自らを顕現させる重要な要。
腐っても英雄であるライダーを顕現させ続けることのできる者など指で数えられるほどだ。
まして、御せられる者など彼以外は現時点で存在しない。
ライダーは焦る。
早くしなければ、この衛宮士郎は壊れてしまう。
身体ではなく心が。
エミヤシロウの強さは宝具でも弓でもない。
他を圧倒する強靭な精神力。
針に糸を通すという行為を、その規模の何百倍という戦いを、戦争を、命の危機を。
常人どころか英雄でさえ発狂しかねない。道を違え、見捨て、命を投げ出し、死にたいと願うかもしれない。
そんな人生を歩み続けてきた。
だが、衛宮士郎は投げ出さない。諦めない。見捨てない。
弱音を踏み潰し。
慢心を燃やし尽くし。
迷いを断ち切る。
例え意識を深層に落とされたとしても彼は必ずそこにいると信じて。
必ず悪魔の精神汚染を打倒して戻ってくると信じる。
なぜなら――――
彼は、幾たびの戦場を越えて不敗なのだから。
そうでなくては、衛宮士郎ではないのだから。
「――――殺」
細く、今にも折れてしまいそうな声が聞こえた。
「銃殺」
それと同時に攻撃が止む。
しかし、止んだ変わりにライダーの背筋すら凍るような呟き。
「絞殺、溺死、轢死、焼死、毒殺、餓死、刺殺――――」
何を言っているのか、とは思わない。いや、思えない。
それはエミヤシロウの歴史、存在、あり方、歪み方、死に方…
そのすべて。
「絞首台」
どれほどの思いがあるのか。
「封印指定」
後悔があるのか。
「実験材料」
消してしまいたいのか。
「ふざけるなっ!」
大気を揺らすほどの怒声。
弾けるように、破裂するように、吐露するように。
「後悔は無い! してはいけない! それは俺が救えなかった人達への侮辱!
殺されたことに怒りも悲しみもない! 俺の死で救われる人がいたならば喜ぶべきだ!」
溢れる感情を制御できない。
「正義の味方になりたかった、あの時の約束は間違いではない! それだけを目指して、理想を掲げて、追いかけたモノを!
助けられずに見捨てた! 守り切れずに殺してしまった!
諦めて何が悪い! 救えなくて誰が悪い!」
いつしか、ライダーはダガ―を下ろし、眼帯に手をかけていた。
「俺はセイバーを裏切り、凛を裏切り、桜を裏切り――――!!!
数え切れないほどの人間を裏切ってきた… それの何が悪いというのだ! 私は一を切り捨て九を救うという方法で数え切れないほどの人を救ってきた!
数え切れないほどの人を切り捨て殺した! 切嗣と同じ方法で多くの人を救った! 救って救って殺して殺して…」
手に眼帯を握り、目を瞑る。
「たった一人の味方にもなってやれずに、俺は死んだ!
イリヤ助けられなかった!
腕に浸食されて自らを失った!
全身を剣に貫かれて死んだ!
衛宮士郎という存在を消すことだけを唯一の希望とした!」
唐突に夫婦剣を投影して駆けだした。
とっさのことに反応できない。身体が一瞬でも硬直してしまった。
「だから!」
これは致命的だ。もう間に合わない。
だが、やらなければならないことがある。ここで止めなければ彼はずっと悲しい存在になってしまうから。
「俺を、殺してくれライダー!!」
命に代えても。
「この時を待っていた!!」
今まさにライダーと衛宮士郎が決する時、ヘルマンはそこを狙っていた。
気配を殺し。自分を殺し、気がつかれずに目標を達成するために。
悪魔の姿をもって、石化の魔法をもって。目標を達成する。
だが、石化の魔法は放たれず、その口腔には剣が突き刺さっていた。
しかし、それこそがヘルマンの狙いでもあった。
一瞬でもライダーから注意が逸れたのだ。
それだけで十分だ。
結果的に衛宮士郎を一時的にでも排除、もしくは能力を知ることができれば依頼は達成されたことになるのだから。
屁理屈かもしれない。それでも良かった。
この世界でも破格の、元の世界で特例の中の最高位。
石化の魔眼が彼の姿を捉えた。
一瞬の抵抗を見せただけで、衛宮士郎は完全に石化した。
視力が極端に落ちても問題はない。目を瞑りながらライダーはヘルマンへと近づいた。
「ふ、美女に看取られるのもいいものだ」
「そうですね。感謝してもいいとは思います。
ですが、その前に聞きたいことあります。消えるのはその後にしてもらってもかまいませんか?」
うむ、とヘルマンは頷く。
すでに身体は半分、口には穴が開いていたが、存外喋れるものだと思った。
「何故、あのタイミングで?」
「私では一瞬で消されてしまう。
ならば君に可能性を託したというだけだ。」
「それでは意味が通りません。私が殺された瞬間に同様のことをしても結果は得られたでしょう。
真意を、私は聞いているのですよジェントルマン?」
ふっ、と小さく彼は哂った。
「ではいう代わりに伝言を頼まれてほしい。
ネギ君と小太郎君に私が失望させてくれるなと、伝えてほしい」
コクリとライダーは頷いた。
そして、ヘルマンは悪魔らしからぬ言葉を、消えゆく身体とともに残した。
「なに、私はこの憐れな人間にこれ以上傷ついてほしくなかっただけだよ」
そう残して消えた。
麻帆良の傷は深く、まだ騒ぎは治まることはないだろう。
しかし、戦いの終わった今この時だけは、雲の切れ間に覗く月のように静かにあってほしいと、彼女は一人願うのだった。