さて、どうしたものかと考えてみるがどうにも解決策が思い浮かばない。
俺の目の前には大変、御立腹なエヴァンジェリンがいるわけで、さらにそれを見つけてしまった俺が喫茶店で愚痴を聞いている。
それもかれこれ一時間。
茶々丸は猫の世話があるらしく、最初からいなかったが、今は早く戻ってきてほしい。この空気は少々、堪える。
「まず、ぼーやが私に弟子入りを願ってきたくせにあの娘のカンフーに鞍替えしているとは思わなかったぞ。
言い訳はしてくる、まったく…最近の若者はなっとらん」
という感じでパフェをパクついている(俺の奢りになっている)
「はぁ、いいじゃないか。体術は必要なものだし、エヴァンジェリンは魔法を教えるんだろう?」
「そうだが、それも含めて私は教えてほしいとぼーやは思っていると考えていたのだが、それがこのように裏切られては腹が立つ。
あぁ、そこの店員。ラズベリーパフェ一つ。
今度のテストは絶対に手を抜かんように茶々丸に言っておこう」
まったく。年寄りのような考えだと思えば弟子をちょっと取られて妬いているようにも見えてしまうのがなぁ。
素直じゃない。
「なんだ、文句でもあるのか」
「まぁ、多少はな。俺の奢りで食うのはいいとして仕事があるこの身としては愚痴を聞いている暇はそんなにないものでね」
「私も仕事はあるぞ」
「そんな時々の仕事だろうものと他の人に必要な今の仕事を比べるな。
重要度は比べたらそちらが上かもしれないが、生徒を預かる身にもなってみろ。これも重要な仕事だ」
「教え子の悩みを聞くのも先生の仕事だろうが」
売り言葉に買い言葉だ。
不毛だな。
「俺は行く。
お金は置いて行くから気がすんだら帰るんだぞ」
「はん、教え子の悩みも解決できないで何が教師だ情けない」
カチン
「ならとことん聞こうじゃないか」
まったく、この時のことを考えると俺も子供だと考えてしまう。ちょっとした挑発で熱くなってしまうとは本当に情けない。
ネギ君に根性がある、ないに始まり、合格できる、できないで拗れ、最終的に―――
「合格できなければ私と仮契約するということで構わないな!?」
「いいだろう! のった!」
ホントに熱くなりすぎた。
…思い返してみればこれがエヴァンジェリンの狙いだったんじゃないか? 結局はエヴァンジェリンの手のひらの上で踊っていただけかもしれない。
ため息しか出てこない。
ここまでのことになるとは思ってもいなかった。
俺は誰とも契約する気はない。なのに…はぁ…
これは何が何でもネギ君に勝ってもらうしかない。
だからといって俺が教えることなんでほぼない。
とりあえず、見に行くか…
俺はネギ君が練習している広場へ向かった。
ネギ君達は俺が見に来たことに驚いていたが、すぐに古の練習に戻っていく。
その練習成果がテストの日に出るといいが、ネギ君を賭けごとに巻き込んでいるので気が重い。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
だが、思った以上にネギ君は成長しているようだ。
終わってから古に聞いてみると、ネギ君は反則のような速さで技を覚えていくし、向上心もあるから強くなるとの話。
やってみなければわからないが茶々丸との戦いも…とのこと。
まぁ、もしもの場合は……なってからだ。ネギ君が負ける前提では失礼だ。
日曜の午前0時までまだ日はある。すべてはネギ君次第だ。
俺はネギ君の補佐をしているが、当然その中には教師として教鞭を持つということ時々ある。
その場合はネギ君が授業中にくわえて他の先生たちも授業中という場合だ。さらにその先生たちの誰かが病欠などでいなくなれば比較的、時間に余裕やその授業を教えられたりする人物が出向く。
今回は俺がその役を請け負った。
「というわけで今回の英語の授業は私が受け持つ。
では授業を始めよう」
クラスは麻帆良中等部2年。
その中に一人だけ見知った顔がいるが…今はそれを気にする必要はない。
頼まれたとおりに授業を進め、重要だと思われる部分には説明を付け加える。教科書通りのことしかしないのだが、どうも生徒の集中力が乏しい。
わからないのだろうか…むぅ、これは今後の俺の課題だな。これでは補佐といえども役に立たない。
英語が話すことができても意味がない。もっとわかりやすく、要点をまとめた上で教鞭を持たなければ…
授業は終了5分前に終わり、俺は授業の内容で質問はないかと言ったのだが、反応はなかった。
誰もが戸惑ったような感じであり、問われた本人たちが困っているようだった。
「何もないようだな。
では今日の授業を終了する。各自、気をつけて帰るように」
そう言い残して俺は教室を出る。
やはり他の先生たちよりも早く終わったらしく職員室には先生達の姿は少ない。
ホームルームはネギ君に任せてあるので授業が終わったその足でネギ君はクラスへ向かうだろう。
となると、残っている仕事を片付けてしまうと暇になってしまうな。
よし、見回りをするか。ここのところは新田先生やタカミチに任せていたからな。今日はキチンと行かなければいけないだろう。
中等部を見回り、高等部に移る。
今のところは特に異常はない。普段のように帰宅する生徒部活動に向かう生徒があふれている。
その中で俺が教師で見回りをしていることを知っている生徒が挨拶をして帰って行き、それに俺は微小しながら返す。
…教師というものは中々、良いものだと改めて実感する。
この些細なやり取りだけでも何か満たされるものがあるのだから不思議なものだな。
だが、この姿はやはり目立つようで周りには俺を見ている視線を感じる。俺を見たことのないもの、俺がいることに不快感を持つ者。さまざまな理由から話しているのかもしれないが、気にすることもない。
見回りは仕事であって、彼女たちにどの様な目で見られるとしてもそれに差支えは無いからだ。俺をどのように見るかも彼女たちの自由だ。
「先生?」
先生、というのが俺だと判断して振り返ると、ウルスラ女子高等学校の帽子をかぶった数少ない生徒がいた。
そしてその生徒の姿には覚えがある。
「君は…高音・D・グッドマンだったかな?」
「はい、覚えてくれていたのですね。
…といってもあまり忘れることのできない会い方でしたが…」
彼女なりに気にしているようだった。
「き、気にすることはないさ。あれぐらいの方が忘れにくいというか衝撃的だったというか…」
「そ、そうですよね…衝撃的ですものね…」
フォローのつもりが泥沼にハマっていくように彼女は表情を暗くしていく。
「な、何か用か?」
無理やりだが話題を変えることにした。
「いえ、たまたま見かけたので声を掛けてみたのですが迷惑でしたか?」
「そんなことはないさ」
…会話が続かない。
とても重い空気になってしまう。どうしたものか…俺はこのぐらいの年頃の女の子の会話についていける自信はないし、どういう話題が良いのかも今この状況では思い浮かばない。とりあえず歩いてはいるが何かある当てはない。
俺と同じことを彼女も思っていることだろう。何か話さなくてはこの空気は本当に気まずい。
「え、衛宮先生は何を目標にして魔法使いとして行動しているのですか?」
「魔法使いとしての目標?」
俺は魔法使いではないが何か目標を持って行動するというのは魔術師も魔法使いも変わらないだろう。
それに俺の目指すものは隠すものではないし、それが恥ずかしいという感情もない。
「俺はね、正義の味方になりたいんだ」
俺の言ったことに彼女は面を食らったかのように目を丸くしている。
他人から聞けばバカらしく聞こえるかもしれないが俺は本気だ。何を言われようとも諦めるつもりもなく、自分で自分の道を違えることもなく、この道を歩いていくことだろう。
「やっぱり驚いたかな。こんな大人がこういうことを言うとは思わないだろう」
彼女は未だに口を開かない。
そのまま歩いていると大学部の方向へ向かう道に来てしまった。
おそらく彼女とはここで別れるだろうと思い。
「俺はこっちへ行く。
気をつけて帰るんだぞ」
そこでも彼女は戸惑ったようにした後、頭を下げる。
それを見た俺は大学部の方向へ向かっていく。
そしてネギ君のテスト当日。
俺はテストが行われる広場へ行こうとしたのだが、ネギ君にいらないプレッシャーをかけるわけにもいかないと考え、その広場が見渡せる位置の木に登って見ることにしたのだが、そのテストを見て驚いた。
茶々丸に一撃でも当てることができたら合格ということは知っている。しかし、それがここまで過酷なテストになるとは思ってもいなかったし、ネギ君があそこまで粘り強く、どれだけ打たれても諦めない姿勢は同年代の子供では滅多にいないだろう。
やはり俺が教えるということはあり得なかったな。あれだけの才能を預けられたとすれば、俺がネギ君の成長の妨げにしかならなかっただろう。
良いものを見たというのが素直な感想だろうか。
木を下りて呟く。
「強いな、ネギ君は」
「そうだね。やっぱり彼の息子のことだけって訳じゃないね。
様々な努力をしたからこそあそこまでがんばれる」
すぐ近くの茂みから覚えのある声が聞こえてくる。
姿を現したのはタカミチだった。
「気配は消していたんだけどやっぱり気づいてたのかい?」
「あぁ、そういう気配なんかには感覚が鋭くなっているもんでね」
「まだまだ僕も修行が足りないなぁ」
タカミチは笑いなが俺の隣に立つ。
当然。
「仕事の話か?」
「うん。
こないだの仕事の続きさ」
あの違法魔法薬を作っていた奴らのさらに上の組織のアジトがようやく見つかったらしい。
場所は今回も海外で出発は明日の夜。
「キチンと決着をつけたいだろうと思ってね。
行くかい?」
「俺の回答はわかっているんだろう?
なのにそれを聞くことは意味がないさ」
そうだね、と言いながらタカミチは資料を渡して帰って行った。
絶対に、決着をつける。
あとがき
今回は話がまとまっておらず、正直なところ私も何を書いていいのか分かっていない状況でした。
申し訳ありません。
それと質問なのですが、オリキャラが出るのは読者様的にはありなのでしょうか?
そこが気になって今まで書いてきたわけなのですが…どうなんでしょう?