〔士郎 START〕
やはりというべきか……先ほどのネギ君の魔力は暴走したことによるものだった。
原因は朝倉に魔法がバレたこと。
……ヤバイぞ、ネギ君。
「どうしましょう……朝倉さんにバレちゃいました……」
「あんたどうしてあのパパラッチ娘にバレちゃうようなことしたの?」
「しかたなかったんです……人助けとかネコ助けとか……」
まぁ、いろいろな理由で朝倉にバレてしまったということらしい。
うぅむ、これではネギ君は最悪、おこじょになるな。どうしたものか……俺は記憶を消すなんて魔術は当然使えない。
ネギ君たちとこれからどうするか考えていると……朝倉とカモが一緒にやってきた。
「お~い、ネギ先生~」
……何か企んでそうな顔をしてるな……それにカモも同じ感じがする。
朝倉はネギ君の秘密を守ると言ってネギ君が魔法を使った時に意図せず撮っていたものを返したが何か油断するなと俺の中で言っている。
「士郎さんもネギ君の関係者なの?」
「一応そうだ。
だがな朝倉、生半可な気持ちでこの世界に踏み込むなよ。
関わった者が平和に暮らせる保障はない。何かしらのリスクが返ってくることになるんだからな」
「りょ、了解……」
俺は朝倉が関わることに反対だ。それだけじゃない。本当なら神楽坂であっても反対だ。
だが、神楽坂はこの世界に関わることに覚悟を決めている。仮契約という形でだ。
覚悟した者に考え直せと俺に言う資格はない。
オヤジは俺が魔術の世界に入ることにずっと反対だった。それでも俺が頼み続けてやっと許しをもらえた。
反対を押し切って入ったのだからもう後戻りはできない。覚悟するというのはそういうことなのだ。
「どうしたんですの、ネギ先生?」
「あ、皆さん、お疲れ様です。
実は今、朝倉さんと仲良くなったとこなんですよ」
「そ~そ~」
俺から逃げた朝倉がネギ君の近くで雪広を挑発するような顔でネギ君の頭を撫でている。
でもネギ君。その言い方は誤解を招くから少し考えて話そうな。
「もう部屋に戻れ、そろそろ就寝時間だ」
雪広がネギ君に何か言いたそうだったが、就寝時間だ。
全員が部屋に戻って一安心……とはいかないようだ。
子供であるネギ君を除いた俺や瀬流彦先生など、修学旅行の引率の先生で明日の予定や見回りなどの確認をしていると……叫び声や笑い声、ドタバタと騒がしい音が聞こえてきたのだ。
新田先生は最初は我慢していた。“修学旅行なのだから浮かれてしかたありません”という立派なことを言っていたのだが、それも5分で撤回された。
あまりのうるささに堪忍袋の緒が切れた。
「コラァ! 3-A!
いいかげんにしなさい! 昨日は珍しく静かだと思ってれば!」
新田先生、もう少し抑えないと血圧が上がりますよ?
その後も少し説教をするつもりだったのだろうが、これ以上は身体に悪い。後は俺が引き受けることにした。
「新田先生、後は俺がやっておきます。先に先生方と打ち合わせしていてください」
「しかし……いえ、それでは任せます」
そう言って瀬流彦先生たちと下の階に戻っていった。
「おぉ~、士郎さん私達かばってくれたんだね! ありがとう!
よ~し! 今度はワイ談するよ~!」
「「「おぉ~」」」
完全に勘違いしている。俺はかばったんじゃない、これ以上は新田先生の身体が心配なのだ。
「柿崎、勘違いしているようだから言っておこう。
私は君達をかばったわけじゃない。決まりを守らないから叱りに来たんだ」
「えぇ~。士郎さんは私達の味方だと思ったのに~」
柿崎や明石などは不満だと言って俺に抗議するが、雪広などは俺が仕事の口調になっていることを察しているのだろう。正座して何も言わない。
「味方も何もないだろう。決まりを守らない方が悪い。
新田先生が言いたかったことを代弁すると……君達は朝まで班部屋から退出禁止、出ているのを見つけたらロビーで正座だ。
無論、私も君達を見つけたら同じようにしよう。
部屋で静かに話をする分にはまだいいだろう。だが、騒がしくしようものなら……わかっているな?
あぁ、一つ加えておくが私に期待しないことだ。もし、正座することになっても私は容赦はしない。朝まで正座ということに変わりもない。
わかったら部屋に戻れ、解散」
そう言って俺は階段を下りていった。
この時、俺は見落としていた。あの中に朝倉がいないことを……
〔和美 START〕
うぅ~ん、やっぱり怒られたね~。
予想通りと言えば予想通り。
ここで私は隠れていた所から出てみんなの前に現れる。
「くっくっく……怒られてやんの……」
「あ、朝倉さん~!?
ムキ~っ! 今までどこに行ってましたのひきょ~者~!」
「まぁまぁ、私からみんなに提案があるのよ。
このまま夜が終わるのもったいないじゃない? 一丁、3-Aで派手にゲームして遊ばない?」
ふっふっふ……まぁ、ただのゲームじゃないんだけど、どっちにしてもおいしい話なんだよね~。
いいんちょは反対、鳴滝姉は賛成、妹は正座が怖いから反対。
でも、この話聞いたら参加したくなるよ~? 特にいいんちょはね。
「ゲームってどんなゲームなの?」
お、話がわかるね~椎名。
「聞いて驚け~。
名付けて『くちびる争奪!! 修学旅行でネギ先生とラヴラヴキッス大作戦』!! ネギ君のマネージャーの了解もとってあるよ。
あ、それとさっきのことでわかってると思うけど、士郎さんと新田先生に見つかったらそれでアウトだからね? 特に士郎さんに見つかったらどうなるかわからないからね。気をつけること」
「「「「えぇ~? ネギ君とキス~!?」」」」
コラコラ、大声出すなって。士郎さんに聞こえたら私まで正座させられるじゃん。つ~か私が言った注意事項聞いてた?
みんなにルールを説明したら一気に目の色変わったね~。怖いくらいに。
うんうん、ネギ君はかわいいし他のクラスにも人気あるしね。
「朝倉さん……」
ん? やっぱりダメか、いいんちょ? いいんちょなら即効OK出すと思ったんだけどな~。
「やりましょう! クラス委員長として公認いたしますわ!」
「そりゃどうも」
怖ぇ~っていいんちょ。目が他の誰よりもマジだよ。
開始時間と人数を教えてからみんなが部屋に戻っていった。
誰もいなくなったらカモっちが私の懐から出てきた。いや、どこに隠れてんのさ。
「姉さん、士郎の旦那が会議してる間に旅館の周りに魔法陣描いてきたべ。
これで兄貴が旅館のどこでチューしたら即パクティオー成立!」
「そして今回は班&個人の連勝複式トトカルチョも実施するよ!」
これで私も食券長者!
もう、笑いが止まらないね~!
ネギ君にもしずな先生に変装して早く寝るようにって言っておいたし、これで大丈夫でしょ。
「なぁ、姉さん。士郎の旦那にも賞品対象になってもらわなくてもいいんかい?」
カモっちが放送の用意してる時にそんなこと言ってきたんだけど。私的には無しなんだよねぇ。
「いやさ、士郎さんて確かにカッコいい方だけど私等と結構歳離れてるじゃん。
みんなに好意的に接してもらってはいるけど恋愛対象にはならないでしょ? そこまで考えなかったとしても士郎さんにキスするってかなり恥ずかしいって。
まだ子供なネギ君ならまだしも士郎さん大人だしね。まぁ、ネギ君のことを本気な眼で見てる人もいるけどね」
いいんちょとか佐々木とかね。宮崎は言うまでもないけどね。
「そんなもんかねぇ? まぁ、儲かれば言うことなしだぜ。
そしたら始めるか! 姉さん!」
「了解! 始めるよ~!」
『ネギ先生とラヴラヴキッス大作戦! いよいよスタート!
実況は報道部、朝倉がお送りします!」
〔NOSIDE START〕
1班・史伽&風香 2班・楓&古菲 3班・いいんちょ&千雨
4班・裕奈&まき絵 5班・のどか&夕映
『さぁ~、2班、3班、4班急速に接近中! 早くも大乱戦の予感だよ~!』
「どうなるんだろうね~! 私50枚も賭けちゃったよ~」
「うわ、桜子それ賭けすぎじゃない?
それで誰に賭けたの?」
「うふふふ~、教えな~い」
(なぁ、いいんちょ。やっぱ私帰ったらダメ?)
(千雨さん! 往生際が悪いですわよ!
私がネギ先生の穢れなき唇を護るのです!)
{私関係ないじゃん……やるなら一人でやってくれよ。HPの更新しなきゃいけないんだからよ~}
(ゆ~な、ゆ~な。ネギ君教師部屋にいるらしいけど士郎さんもそこの近くにいるんじゃない? 士郎さん本気で朝まで正座させそうだよ?)
(大丈夫だって。士郎さん優しいし、いくら何でも中学生の私達を眠らせないで正座させるとかないでしょ。
やったら私明日の自由行動で絶叫マシーンに5回連続で乗ってあげるよ)
(それ何の罰ゲームになるの? ん?)
3班、4班。戦闘開始。
(いいんちょ!?)
(まき絵さん!? 勝負ですわ!)
(あぁ~……、やってらんねぇなぁ。
佐々木といいんちょ相打ちだし……明石もガキの遊びにムキになんなよ)
(あたたっ!?)
(はぁ……私はこれでもういいだろ? 後はいいんちょ一人でやってくれ)
(おぉ! エモノたくさん発見アル)
2班参戦。
(おぉ、三人同時に攻撃するとはなかなかやるでござるな古。
士郎殿は……今のところ動きはないでござるな。何故かはしらんでござるが屋根の上にいるようでござるな)
(付き合ってらんね~。じゃあな、いいんちょ。
って!? 何だこれ……うおっ!?)
「コラ長谷川! 何やっとるか~!?」
「ぎゃぴいぃぃぃ!?」
千雨、新田により捕獲。
(今の声は!?)
(やばい! 鬼の新田だ!)
(逃げますわよ皆さん!)
(お先~アル!)
(ぎゃふんっ!?)
「あっ! コラ明石! お前もか!」
千雨、裕奈。新田により確保。3班・4班、戦力50%ダウン。
(まき絵さん、このままではネギ先生の唇があの体力バカの二人に奪われてしまいます。
ここはひとつ……どうでしょう?)
(うん、そうだね! ここは休戦で……同盟といこうか、いいんちょ! その代わり早い者勝ちだから恨みっこなしだよ)
(望む所ですわ)
3班・4班残存兵合体。
「ゆ、ゆえ~、どうしてこんなところ通るの~?
これじゃあ部活みたいだよ~。ネギ先生と関係あるの~?」
「し~。黙って着いてくるです。
私の見立てではこのルートが最も安全かつ速いのです。
ネギ先生の部屋は端っこですのでどうやっても新田先生や敵に当たってしまうです。それに士郎先生が朝倉さんの情報では部屋にいないということです。旅館に仕掛けられたカメラに映らないのですから用心に越したことはないのです」
「誰からの情報なの?」
「ハルナに決まっているですよ。
部屋に残った人に情報を貰ってはいけないとは言ってなかったですから」
(のどか、今なら誰もいません。チャンスです。
そこの304がネギ先生の部屋です。さぁ、のどか今のうちに)
(うん、ありがとう~)
(今なら誰もいない……チャンスだよ)
(あうぅぅ……こわいです~)
((ん?))
(あ! 5班!?)
(ふ~ちゃん、ふみちゃん!?)
(まさかこの二人がここまで来てるとは予想外です……ですが)
(鳴滝忍法、分身の術!
甲賀しゅり……もげ!?)
(風香さん、史伽さん。私が相手です)
(おのれゆえ吉ちょこざいな!
我ら甲賀忍群に敵うと思うてかでござる)
(……口上が長いです)
(あわわわ……ゆえが枕の上から本で……い、いいのかなぁ?)
(なにをしてるですか! ここは私が食い止めるですから、のどかは早くその扉から中へ……)
(う、うん! ありがとうゆえ!)
(おぉ、見つけたアルよ~)
(くっ……古菲さんと楓さんが……ですがここは通さないです!)
2班、乱入。
「ネ、ネギ先生、すいません、こんな形で……で、でも私嬉しいです……
先生……キ、キス させてください……」
(あれ? 前にもこんなことがあったような……?)
「どうしますか? この人はチューしたいみたいですけど」
「ですが、この人はここに留めて置かなければいけないと新たに命令されています」
「はい、ではチューさせるところはあそこで、そこに着くまではさせないということでいいのでは?」
「それでいきましょう」
「え?」
ネ、ネギ先生がいっぱい……目の前のは…ネギ先生。となりもネギ先生、後ろもネギ先生……え?
「ひゃあぁぁぁああぁっ!?」
(のどか!?)
(本屋! どうしたアル!?)
(なっ!? のどか~!?)
(ネギ君は窓から逃げただね! 史伽! 追うよ!)
(あ、待ってです~)
(私達も追うアル! かえで~!)
(あいあい)
「おぉ! 急展開だね~。これは盛り上がるよ~!」
「姉さん、朝倉の姉さん」
「ん? 何よ」
「何か……俺っちの目の錯覚かなぁ……
ネギの兄貴が五人いるように見えるんだけど……」
「なっ……!?
何これどういうこと~? 分身の術は存在した!? これは大スクープだわ!」
「そんなことより本物の兄貴はどれなんだよ~!」
(ネ、ネギ先生~、いらっしゃいませんか~?
むむむ……304から逃げたとは聞きましたけど。ネギ先生はいったいどこへ……)
「いんちょさん……」
「!」
(ネギく~ん出ておいで~。
う~んネギ君アメよかチョコの方が好きかなぁ? あ、このアメおいしい)
「まき絵さん……」
「!」
「……くーふぇさん」
「……史伽ちゃん」
「ネギ先生は必ずここに連れて来るですから、ここで休んでいるですよ。
……まずはお手洗いに……!? ネギ先生!?」
「あ、どうも夕映さん」
「ちょうど良かったです。先生、実はあの……」
「のどかさんは寝てるんですね。
それは僕もちょうど良かった。
あの……言いにくいことなんですが……いろいろと考えて僕……
僕夕映さんのことが……キスしてもいいですか? 夕映さん……」
「!?」
「キ、キキ、キキキ、キス……ですか? 私と……」
「はい……」
「チューしていいですか?」
「え?」
「その……お願いがあって……その……キスを……」
「へ?」
「今から史伽ちゃんの唇をいただきます」
「「な”っ!?」」
「何これ~、マジでどうなってるのこれ~!?
アンタ妖精なんだからなんとかしてよ~!?」
「妖精の俺っちだってできることとできないことがあるんだよ~!?」
「夕映さんキス……していいですか?」
「み、見損なったです! ネギ先生! のどかの告白されておいてすぐに私に迫るだなんて、それはないでしょう!?」
「それでも……夕映さんとキスしたいんです……ここで」
そ、そんなのできるわけないです……!?
いえ、これはネギ先生であるはずがありません! のどかに告白されておいてすぐに私に乗り換えるようなことを10歳のネギ先生がするはずがありません! これは朝倉さんの陰謀です! そうに決まっているです! でなければこんなネギ先生が……それにのどかに申し訳ないです……なっ!?
テレビの中にネギ先生が4、5人!? ということは……!
「離れるです! アナタはいったい……な”っ!?」
う、腕が伸びた!? 最近の子供はそんなことが……できるはずないではありませんか! そんなの人間ですらありません!
「う……うぅ…あれ? 私ネギ先生を……きゃあぁぁぁっ!?」
「ちゅ~―――もっ!」
「あわわわ……ゆ、ゆえ、ネギ先生を撲殺……!」
「落ち着きなさいのどか。
このネギ先生はニセモノです。乙女の恋心を弄んだ者の末路はこんなものです」
「任務失敗、ネギでした」
「ケホケホ。ほら、見るです。やはろニセモノだったではありませんか。
しかし……この紙型はオカルトの本で見たことがあるような……
そうです! ここにいたのがニセモノということは他の所に本物のネギ先生がいるはずです! 探すですよ! のどか!」
「あ、待ってよ、ゆえ~」
「いいんちょさん」「まき絵さん」「くーふぇさん」「史伽ちゃん」
「はい……!」 「なに……!?」「アイヤ~」 「あぶぶぶぶ……」
「「「「ここではしません」」」」
「「「「え?」」」」
(あぁ! ネギ先生が……どこへいくのですか!? いえ、ご安心ください。私はどこまでもネギ先生について行くつもりです!!)
(ネギく~ん! 待って~!)
(待つヨロシ!)
(何で史伽なんだよ~!)
(お姉ちゃんが乱暴だからです~!)
(あぁ~足が痺れて感覚無くなってる自分がおもしろくなってきたよ千雨ちゃん)
(おいおい、そっちに楽園はないからさっさと戻って来い。私だって痺れて感覚無いんだから我慢しろよ)
(そんなことは言ってもね~。
誰かネギ君にキスしたかな~?)
(知るか!
……ん? 誰かこっちに来て……っておい! なんであのガキが4人もいるんだよ!?)
(おぉ~! さっすが朝倉! 影武者用意してるなんてやるじゃん!)
(それで解決なのかよ!? どう見ても本人じゃねぇか! 似すぎにも程があるだろ!?)
(だから影武者じゃないの?
あ、4人のネギ君が奥の方に……あ”っ……新田やっちゃったよ……)
(うおぉ……私関係ないからな、新田)
(それに続いていいんちょにまき絵に1班に2班が追いかけて行ったよ~。盛り上がってるね~。
お、遅れて5班も来たよ。こりゃ、いいんちょが一番かなぁ?)
(だから私に聞くなっつの)
〔あやか START〕
ネギ先生は非常口の方へ走っていきましたわね……ホ~ホッホッホ! 待っていてくださいネギ先生! 必ずやこの雪広あやか、4人のネギ先生から本物を見事当ててみせますわ~!
さぁ、追い詰めましたわよ……
「待った~! いいんちょ! ネギ君のキスは私がもらうんだからね~!」
「待つヨロシ! ネギ坊主にキスするのは私アル!」
「史伽待て~!まだ納得してないぞ!」
「しつこいですお姉ちゃん! そんなだからネギ先生に選ばれないんです!」
ちっ! 早くネギ先生にキスを……!
あら? 何故、非常口の扉が開いているにかしら……?
「残念だがここが終点だ。君達は自ら罰を受けにここに足を踏み入れた」
!!?? し、士郎先生!? 扉から虎柄竹刀を構えたその姿は士郎先生ですね!?
「「「「任務完了、さよならみなさん」」」」
「アイヤ~、逃げるアルよ!」
「同感でござる」
あぁ! お待ちなさい! 私を置いて逃げるなんて……!
「逃げたらさらに重く」
その言葉にお二人の動きは石造になったように止まりました。
「な、何が重くなるアルか?」
「朝になるまで逃げるのはダメでござるか?」
「あまりお勧めはしない。
私は逃げた者を地の果てまで追いかけよう。……それと長瀬……清水で前科があるな? それで逃げた場合はどうなることか……」
こ、怖いですわ、士郎先生…。風香さん、史伽さんはその場に座り込んでただただ謝って……
あぁ……申し訳ありませんネギ先生……
私は志半ばで倒れます……お許しください……
「さて、哀れな君達に罰の軽減のチャンスをあげよう」
「な、何でもするでござるよ」
「そうアル! 何でもするアルから……許してほしいね!」
「そうか、それだったら……この騒動の主犯を吐け。それで少し軽くしてやろう。
あぁ、みんなで一緒に行っても構わん」
あぁ……その言葉に私は手を伸ばしてしまいそうです……いけません! 友人を売るなど私にはできませんわ!
「いいんちょ、どうしよう……いったら少しは楽になるんじゃないかな……?」
「ですが……それではあまりにも……」
やはりできません! 私にはやはりできないのです!
「では罰について話そうか……」
聞いてはいけません! 古菲さんも楓さんもまき絵さんも風香さんも史伽さんも、その言葉を聞いてはいけません!
そうです! その絶対に言わない姿勢はすばらしいですまき絵さん!
「……朝まで正座で……」
それくらい我慢しますわ! 友人を売ることは絶対に……!
「膝の上に仏像を置け……」
「「「「「「朝倉和美です」」」」」」
ごめんなさい……朝倉さん……私は負けてしまいました……