〔ネギ START〕
士郎さんはまだ桜通りに来ていない。
もしかしたら仕事が入ったのかもしれない。士郎さんは広域指導員の仕事もしてるから。
・・・夜の桜通りってちょっと不気味だなぁ。
たしか日本には桜の木の話で怖いものがあったような・・・
そんなことを思いながら桜を見ていたら通りの向こうで黒い影が見えて・・・誰かを襲おうとしてる!?
すぐに通りの向こうの方から叫び声が聞こえた。
距離は近い。杖で飛んでいけば間に合う!
それに襲われてる人は・・・宮崎さんだ!
「待てっ!
ぼ、僕の生徒に何をするんですか!」
宮崎さんは驚きと恐怖で気絶してしまったみたいだ。
でもそれは魔法を見られることがないからいいけど・・・ここにいたら危険なのにかわりはない。宮崎さんを守らなくちゃ!
吸血鬼を捕まえる!
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル。
風の精霊11人、縛鎖となりて敵を捕まえろ。
魔法の射手・戒めの風矢!」
魔法の射手が吸血鬼を捕まえる為に向かっていく。
でも、それは氷の盾にはね返されてしまった。
やっぱり犯人は・・・魔法使い・・・!?
「くっ・・・驚いたぞ。凄まじい魔力だな・・・」
えっ? この人は・・・
「き、君はうちのクラスの・・・エヴァンジェリンさん!?」
「新学期に入ったことだし、改めてご挨拶といこうか、先生・・・いや、ネギ・スプリングフィールド。
10歳にしてこの力とは・・・さすがに奴の息子のことだけはあるな」
え・・・? どうしてそのことをエヴァンジェリンさんが・・・
いや、今そのことは関係ない。
「何者なんですか、あなたはっ!
僕と同じ魔法使いなのに何故こんなことを・・・!?」
「・・・この世にはいい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだよ、ネギ先生。
氷結・武装解除!」
そう言って魔法薬を触媒に武装解除の魔法を使ってきた。
とっさにレジストはしたけど、少しだけ魔法を受けてしまった。
! 宮崎さんはっ!?
「宮崎さん、大丈・・・わぁ!?」
宮崎さんの制服のほとんどが今の魔法で氷になって散ってしまって・・・ダメッ! 見ちゃダメだ僕!
どうしよう、どうしよう・・・そんな時。
「何や、今の音!?」
「あっ! ネギ!
・・・ってあんたそれ・・・!?」
アスナさんとこのかさんが来た。
あわわわわ! アスナさん誤解してますよ! 宮崎さんをこんな風にしたのは僕じゃないんですよ!
「ネ、ネギ君が吸血鬼やったんか~!?」
「ち、違います! 誤解なんです!
あっ! 待てっ!」
そんなやりとりをしてたらエヴァンジェリンさんが離れていってしまった。
「アスナさん、このかさん!
宮崎さんを頼みます! 僕は事件の犯人を追いますから心配しないで先に帰っててください!」
そういい残して僕は急いでエヴァンジェリンさんを追った。
このかさんとアスナさんがなにか言ってたような気がしたけど、もう聞こえない。
風の魔法で足が速くなってるからずっと後ろにいる。
それにしても・・・なんでエヴァンジェリンさんはこんなことをしてるんだろう?
それに言い魔法使いが悪い魔法使いがいるなんて・・・世のため人のために働くのが魔法使いの仕事なのに・・・
それにエヴァンジェリンさんは僕のお父さんのことを知ってるみたいだった・・・
・・・いや、今そのことはいいんだ。今僕がやることはあの人を捕まえて話を聞かなきゃ!
僕はエヴァンジェリンさんの魔法の威力が弱いことを感じ取り、お父さんのことを聞きたくないのかと言われて勝負に出た。
精霊を召還し、エヴァンジェリンさんを武装解除して寮の屋根の上に追い詰めることができたんだけど・・・
エヴァンジェリンさんのパートナーである絡繰茶々丸さんが出てきて、魔法の詠唱を邪魔されてしまい、逆に僕が捕まっちゃった・・・
その後、僕が知らないことをエヴァンジェリンさんに言われたんだけど・・・お父さん、何をしたんですか? 呪いのせいで長いこと学園にいることと魔力が低く封じられてることがわかった。
だから触媒を使ってたんだ・・・それに溜まってた怒りで僕につかみかかってきてがぁ~っと不満をぶつけてきた。
く、苦しい・・・
「このバカげた呪いを解くには奴の血縁者たるお前の血が大量に必要なのだ。
・・・悪いが死ぬまで血を吸わせてもらう・・・」
「うわぁ~ん、誰か助けて~!」
カプッ
か、噛まれちゃった・・・僕、噛まれちゃった・・・
死んじゃうのかな・・・。こんなことになるなら誰かパートナーを探しておくんだったよ~・・・
僕が諦めかけたその時。
「コラ~~ッ! この変質者ども~!
ウチの居候に何すんのよ~!」
アスナさんが文字通り、飛んできた。
「はぶぅっ!?」
エヴァンジェリンさんと隣にいた茶々丸さんがアスナさんに蹴り飛ばされて僕から離れた。
「か、神楽坂明日菜!?」
「あ、あれ~? あんたたち、ウチのクラスの・・・。ちょっとどういうこと~!?
ま、まさかあんた達が今回の事件の犯人なの!? それに二人がかりで子供イジめるような真似して・・・答えによってはタダ済まないわよ!」
「ぐ・・・よくも私の顔を足蹴にしてくれたな・・・神楽坂明日菜・・・。
だが残念だったなネギ先生。たかが素人が増えた所で仮契約さえしていないのでは茶々丸の相手にならんぞ!」
う、たしかに言う通りだ。運動神経が良くたって相手は戦ったりする人なんだから・・・いくらアスナさんでも危ない。
でも、その考えは僕の後ろから聞こえた声で消えてしまった。
「だったら素人でなければいいんだな。それなら俺が相手をしよう」
後ろから現れたのは黒いスーツと赤いシャツに身を包んだ白髪、長身の人がいた。
「士郎さん・・・!」
士郎さんは射抜いてしまいそうな視線でエヴァンジェリンさんを睨んでる。
とても怖かったけど・・・同じくらい安心してしまった。
「くっ。さすがに貴様がいるのであれば分が悪い。
今日のところは引いてやるが・・・覚えているがいい」
「あ、ちょっと!
・・・ここ8階よ・・・?」
エヴァンジェリンさん達がいなくなったことで僕は緊張の糸が切れてしまい抱きついてしまった。
「まったく・・・あんたは犯人を一人で捕まえようなんてカッコつけて!
取り返しのつかないことになったらどうする・・・って何してるの?
何で士郎さんに抱きついてるの? 士郎さん、教えて?」
「俺にもわからないけど・・・。
怖かったんだろう。先生とはいってもまだ子供なんだ。
今回みたいに命の危機にさらされれば泣いても不思議じゃないさ」
「うわぁ~~ん、士郎さ~ん! ぐすっ・・・」
僕は士郎さんに抱きついたまま思い切り泣いてしまった。
とても怖かった・・・。本当に死んじゃうんじゃないかと思った・・・
泣いてる僕を撫でてくれるアスナさんと士郎さんの手がとても温かかった・・・