〔ネギ START〕
今日から新学期だ。
僕が正式な先生になって初めてクラスのみんなと顔を合わせるんだな~。
よし! こういう時は最初が肝心だし、失敗しないようにがんばろう!
職員室には士郎さんがいなくてしずな先生に聞いてみたら“私が来た時に少しだけ見たけどその後から見てないわ”とのことだった。
士郎さんは学校に来るのが僕より早いけど、しずな先生は士郎さんと同じぐらいに来るらしい。
それだったら少なくても数回は顔を合わせると思うんだけどな。
士郎さんは学期末テストの後、僕に会ってすぐに謝ってきた。
本当は僕が図書館島の地下のことを話してアスナさん達を危険な目にあわせてしまった事を謝ろうとしてたんだけど・・・
僕がなんで謝るのかと聞いてみたら。
「俺はネギ君の補佐だ。それなのに肝心な時にいなかったからね・・・。
今だから言っちゃうけど、学園長に君の課題を手を出さないように言われてたんだ。これはネギ君のやるべきことだからってね。
でも、それは言い訳にしかならないと思ったんだ。
ネギ君の課題の手助けはできないとしても他のことぐらいはできたと思う。
だけど俺はいなかった。俺があやまる十分な理由があるんだ」
僕はそんなことは全然気にしてなかった。
出張は仕事だし仕方ないことだと思うし、学園長が手助けをしないように言ったのは当然だと思うから。
だから僕は士郎さんは何も悪くないんだから謝らないでほしいと言ったんだけど・・・士郎さんは苦笑しながら言った。
「今回の出張は俺が行くと言い出したんだ・・・俺の勝手な判断でね。
ちゃんとした仕事が与えられてるのに、本当なら俺に関係ない仕事を優先してしまった。
今回のことは本当に申し訳なかった」
僕はそのまま士郎さんに謝られるがままになっちゃったんだよね。
僕は気にしてないのになぁ・・・勝手にとは言っても、それは士郎さんがやらなきゃと思ったからそっちを優先したんだと思う。
だから僕は士郎さんに怒りを感じてもいないし不満もない。
士郎さんに図書館島のことを話したら苦笑しながら“次にこんなことがないようにすればいいよ”と言ってくれた。
『3年!A組! ネギ先生~っ!』
元気良くHRが始まって僕は改めて自己紹介をした。
このクラスの中には僕がまだ話しかけていない生徒さんもいるんだなぁ。
一年で31人、みんなと仲良くなれたらいいなと思う。
「ネギ先生」
「はい、なんですかいいんちょさん?」
「士郎先生がいませんがどうかしたのでしょうか?」
「はい。それなんですけど、用事で遅れるとのことです。
それともう一つ連絡があります。士郎さんも僕と同じく正式な先生となりました。
このクラスの副担任をしてもうことになりました」
朝、学園長に会って教えてもらった。なんでも出張先で士郎さんはすばらしい働きをして、学園長がそれを評価、昇格にしたらしい。
補佐の立場にそれほど変わりはないけどいつも僕の側にいられなくなるかもしれないらしい。
「そうなんですか。それは喜ばしいことですわ」
「そうですね。僕としても心強いです」
そんな話をしてたら・・・とても鋭い視線を感じた。
視線のする方を見てみると・・・僕がまだ話しかけたことのない生徒と目が合った。
すぐに目を逸らされたけど、一瞬、寒気がした。
あの人は・・・エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさん・・・タカミチが名簿に困った時に相談しなさいって書いてあるけど・・・
さっきの視線はいったいなんだったんだろう。
しずな先生が身体測定の準備をしてほしいと言われたからみんなに言ったんだけど、間違えて準備と言う所をすぐに脱いでくださいといってしまった。
うぅ・・・ちょっと落ち着かなきゃ・・・
しずな先生は少し慌てた感じで亜子さんを呼んで保健室に行くように促してたけど仕事かな?
亜子さんは保険委員だから、もしかしたら身体測定で必要なものがあるのかもしれないし。
みんなの身体測定が終わるまで教室の外で待ってたら、少しだけ変な感覚があった。気にするほどのものじゃないけど・・・
そしたらすぐに亜子さんが慌てたようにこちらに走ってきた
「先生ーっ!大変やーっ!まき絵が・・・まき絵が!」
亜子さんの慌てぶりは今まで見たことがないぐらいだった。何かあったんだと思って話しを聞こうと思ったら。
「何!? まき絵がどうしたの!?」
「うわぁ~!?」
イギリス紳士として目をそらさなくてはいけないものがたくさんあった・・・
保健室の扉を開け、中を見ると士郎さんとベッドに寝ているまき絵さんがいた。
「士郎さん、どうしてここに?」
「俺が佐々木を見つけたんだ。昨日、和泉に佐々木が帰ってきていないと聞いて今日は朝から探してたんだ。もしもということがあるからね。
少し前に桜通りで寝ている所を見つけてここまで運んできたんだ。その後はしずな先生に会って和泉を呼んでもらって今に到るというわけだよ。
怪我などはしていない。ただの貧血のようなものだろう」
みんなは安心したようにしてるけど・・・桜通り・・・?
何でそんなところで寝るようなことになったんだろう・・・
・・・いや、まき絵さんからほんの少しだけだけど‘魔法の力’を感じる・・・
どういうことなんだろう・・・僕の他に魔法を使える人がいる?
「ネギ、なに黙っちゃってるのよ」
「あ、はいすいません。
・・・まき絵さんは士郎さんの言う通り貧血みたいですね。
それとアスナさん。僕、今日は帰りが遅くなりますから晩ご飯いりませんから。
もう少ししたら僕も教室の方に戻りますから先に言っててください」
アスナさんたちが教室に戻って保健室には僕と士郎さんが残った。
士郎さんはまき絵さんに残った魔法の力に気づいてるのかな・・・
すると、士郎さんの方から声をかけてきた
「ネギ君、ここに残ったということは・・・気づいてるんだね?」
「・・・はい。士郎さんも気がついてたんですね。
ほんの少しだけですけど、まき絵さんから魔法の力を感じます。
でも、どうして魔法使いとは関係ないまき絵さんから魔法の力がするんでしょう・・・」
「・・・こんな噂話を知ってるかな?
満月の夜になると桜通りに現れるという吸血鬼の話を」
僕は知らない。アスナさんやこのかさんに聞けばわかるかもしれないけど、今は関係ない。
「佐々木の首筋を見てほしい。赤い点のようなものがあるんだ」
「え?」
僕が確認してみると、たしかに良く見ないとわからないぐらいの赤い点があった。塞がって見えにくくなってるけどこれって・・・
「わかるかい?たぶんこれは噛み跡だ。
・・・噂の吸血鬼のものだと俺は考えてるんだけど、佐々木は死者にはなってないから違うかもしれない・・・ネギ君はどうだい?」
僕は士郎さんのいう死者というものがわからないけど、これは噛み跡で間違いないと思う。
もしかしたら残された魔法の力は記憶を消す為に使ったのかもしれない。
「これは噛み跡ですね。士郎さんの死者というのはわからないですけど、もしかしたら・・・本当に吸血鬼がこの学校にいるのかもしれません」
これが本当だとしたら見過ごすわけにはいかない。これ以上被害者を出さないためにも、魔法使いとしても。
「僕は今日の夜から見回りをします。
黙ってるわけにはいきませんから」
「・・・そうか。
それなら俺も同行しよう。一人よりは二人の方が見つけやすいだろうし捕まえられる確立も高くなるだろう」
「だ、ダメですよ。危ないじゃないですか。
それに僕はまき絵さんの担任なんですから、この事件を解決しなくちゃいけないんです。
だから士郎さんは・・・」
「関係ない、と言いたいのかな?
それなら心配はいらない。俺も佐々木の副担任なんだからね。だからこれに関わる権利は持ってるんだ。
なにより見過ごせない」
う・・・そうこられたら僕はどうすれば・・・
いや、いくら士郎さんが魔法使いの関係者でもこれはさすがにマズイんじゃないかな?
「ついでに言わせてもらえばネギ君が拒否しても俺は勝手に動くからそのつもりでな。
俺から言わせてもらうと協力した方が効率がいいと思うんだけど・・・どうかな?」
うぅ・・・士郎さん、その笑顔はいじわるに見えます・・・
僕は士郎さんに言い包められてしまい、協力することになった。
士郎さんのいうことに一理あるんだけど・・・嫌な予感がする。
今日の夜、桜通りで待ち合わせになった。