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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第9話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/24 20:46
SIDE 一方通行

寒い。
このクソ寒い一月二月三月をどうにかできないのか。
我が反射を使っても外気を反射できるだけで気温はどうにもならないのだ。
つまり、冷たい木枯らしは反射できるが気温はそのままということだ。
だから朝のジョギングと昼間の筋トレをそれぞれ終わらせたらこうやって湯たんぽを腹の上に乗せて寝転がっているというわけだ。
何故湯たんぽだって?

湯たんぽ舐めんな。

湯たんぽはこの寒さを打ち消してくれる凄まじいシロモノ……兵器と言っても良い。
一人だけ温まるのならば湯たんぽで十分だ。
そう、一月の頃は思っていたのだが……二月になってもっと寒くなって来ると足の先が凍傷になるかと思うくらい寒くなってきた。
しょうがないから湯たんぽを二つ買ったが、なんか足先に湯たんぽを置いておくのは落ちつかない。
この寒い時期を電気代も安く暖房機を使わずに乗り越えるにはどうすれば良いのか。

俺は600年の知恵袋を頼ることにした。

携帯で尋ねられたエヴァは何故か嬉しそうに、
「そうか、私を頼るとはな!!ふはははははは、お前でも頼ると言う事があるのだな!?」
「うるせェ、耳元で高笑いすンじゃねェ。とにかくさみーんだよ。……テメェは快適そうだな?」
やけに上機嫌でテンションが高いエヴァ。
詰まる所、彼女の部屋は快適その物と言う事だ。
くっ、こちとら俺の膨大な食費に削られて結構貧乏暮らししてるというのに……夜の襲撃も減ってきてるから特別ボーナスもないし。
だというのに、エヴァのあの待遇はなんなんだ!?
一軒家の上に地下室まであり、更には茶々丸もいるから掃除洗濯炊事の必要もない。

ホントに一家に一体茶々丸がほしい……ッ!!

俺が切ない気持ちでそう思っていると、エヴァがふぅむと悩みながら言ってきた。
「そうだな……私の家は一年中快適な空間だからそんな事は考えた事もなかったぞ」
「潰されてェのかテメェ」
「事実だ。暖房はダメだったんだな?ホットカーペットとかどうだ?」
「ありゃ毛布も買わねェと意味ねェ」
「贅沢な奴だな……」
悪いか。
こっちはそっちみたいなセレブじゃないんだよ。
選べるんならなるべく選ぶさ。
「……やっぱ炬燵買うしかねェか」
「コタツ?なんだ、コタツとは?」
「はァ?日本に十四年も暮らしてきて炬燵知らねェのか?」
驚きである。
確かに彼女の家はログ風だから似合わないかもしれないが、それにしても炬燵を知らんとは。
どんなセレブ生活送ってきたらこうなるんだ。
「しょォがねェ。実物見たほうが速ェだろ。テメェ、俺の炬燵買うのに付き合え。今からスーパー行くぞ」
それを聞いたエヴァは何故かちょっとだけ潜めた声で言った。
「……二人で、か?」
「ん?あァ、茶々丸が行きてェってンなら三人で行くが」
「あ……ああ、茶々丸が行きたいと言うのならな!!そ、そうだな、茶々丸にも話しておこう!!」
「……いきなりテンション上がるのが気になるンだが……」
「気にするな。とにかく気にするな」
何故向こうがそんな事を言うのか果てしなく意味不明だ。
まあ、それはとにかく気にするなと言うのだから気にしないでおこう。
深く突っ込んで墓穴掘ったらまずい。
「じゃ、今からそっちに行くからな。―――四十秒で支度しろ」
「はァあああああ!?無茶な―――」

ブチッ。

たまには困れ、エヴァよ。
俺は着替えてコートを羽織ると、風が寒い冬の麻帆良に足を踏み出した。
それにしても寒い。
いや、夜の寒さはもっと尋常じゃないのだが。
このごろ侵入者も激減しているのはきっと皆寒いからだろう。
氷河期が来たら平和になるんじゃないかと思う。

人類は衰退するかもしれないが。

そんな馬鹿な事を思いながらたっぷり二十分ほどかけエヴァの家に向かった。
俺はドアの前にある呼び鈴を鳴らした。
ちりん、と綺麗な音がなる。
しばらくして出てきたのは茶々丸だった。
「アクセラレータさん、いらっしゃいませ」
「おォ。エヴァは?」
「四十秒で来なかったので拗ねておられます」
「誰が拗ねとるかーっ!!」
向こうからクッション的なものが飛んできたが、俺はそれを反射で跳ね返す。
むぶふ!?というくぐもった声が向こうから聞こえるが、俺は無視した。
「もしかしてアレがネタだってことを知らねェのか?」
「どうやらそのようで……マスターは学園長の影響を受けて古いSFモノしか嗜んでおられないのです」
「古いのにも良作はあるンだがな……スパロボとか見ねェってのが悔やまれる。茶々丸にロケットパンチを搭載した超とハカセには拍手を贈るが」
「ああ、そうですか。二人も喜びます」
「貴様等……とことん私を舐めくさっとるな」
物理攻撃で反撃できないのが悔しいのだろう、ぐぐぐ、と言いながらこっちをにらみつけてくるが、俺はスルー。
「じゃ、行くぞ。茶々丸は来るのか?」
「はい。コタツは私のデータにはありますが、実際どんな物か触れてみるのには興味があります」
「こらーっ!私を無視するんじゃない!!」
こういう感じで俺達の買い物はスタートした。
あまりにもナチュラルな感じでエヴァを無視したためエヴァはむくれていたが、それも俺と話している内に機嫌が直ってきたようだ。

流石金髪幼女、機嫌が悪くなるのも速いが直るのも速い。

十分ほど歩くと、俺達は商店街にやってきた。
ここは狭いように見えてかなり生活用具が充実しており、生活必需品は完全に揃っている。
少し前に家電製品についてお世話になった電気屋を尋ねた。
電子レンジがイッちまった時があったんだが、その時修理してもらったのだ。

タダで。

何と言っても無料と言う事が大きい。
それ以来、ここは贔屓にさせてもらっている。
ヴーン、という学園都市に比べればうるさいと思えるくらい古臭い自動ドアが開くと、中からは暖かい風が舞い込んで来る。
店と言うのは客を引き込むために気温を適温にしてくれているから良い。
少し暑い気もするが、エヴァはこれで丁度いいみたいな顔をしているし、茶々丸に至っては寒いと言う感覚もない。
感覚に関しては個人の自由だろう。
俺はこんなに寒いのに坊主で頭に捻り鉢巻きをしている爽やかなオヤジに尋ねた。
「オヤジ、炬燵ってここにあるか?」

「お、アクセラレータさんか。もちろん、電気を使う製品でウチに置いてないもんはないぜ!」

キラン☆と歯をきらめかせて親指を突き出すオヤジ。
ちなみに、俺はこういう馬鹿は嫌いじゃない。
エヴァは疲れそうだが。
さて、そのオヤジが案内してくれた場所に炬燵はあった。
その炬燵の造形を見たエヴァが眉間に皺を寄せながらそれを見つめる。
「これが、コタツか……見た目はかなり変だが」
「上にミカンが乗ってるのは仕様ですか?」
「よくわかってんじゃねえかお嬢ちゃん」
このごろ茶々丸がちょっと変わって来たように思えるが、俺は別に悪くない。

良い方向だ。

俺は自分で見まわさずにオヤジに尋ねる。
「できるだけデカくて燃費が良い奴。値段は問わねェ」
「じゃあ、コイツだな。最近麻帆良工学部の連中が遊び半分に作った調低燃費炬燵。値段は張るが性能は確かだ」
「……工学部のお遊びってのが気に食わねェな」
「そう言うな。外の企業さんが必死こいて作り上げたのよりも工学部の学生が作り上げた小遣い稼ぎの方がはるかに性能がいいんだからよ」
オヤジの顔は哀愁に塗れていた。
どうやら、過去に麻帆良工学部に敗れ去った企業の一員らしい。
「で、どうする?買うかい?」
「あァ。じゃァコイツで。テイクアウトするから組み立てる前の奴を出せ」
「へいへい」
愛想の良いオヤジによって運ばれてきた巨大な箱を持った俺は、そのままその店を出た。

俺の担いでいる箱は大通りではかなり目立つ。

だが元々目立つ一団なので特に気にしてはいない。
エヴァ危険派と呼ばれる派閥に属しているガンドルフィーニは俺がエヴァと良い感じに付き合っているのには良い顔をしなかったが、今では慣れたもんである。
最初の頃、麻帆良の最大の危険分子である俺と真祖の吸血鬼が仲良さげに喋っているという光景は彼等の度肝を抜かれたらしい。
大通りではギョッとする連中が毎日十人はいたものだ。

ガンドルフィーニも、もちろんタカミチもだ。

たまに、ホントにたまにだが、俺とタカミチ、そしてエヴァで食事をする時だってある。
話題は主に1-Aや学園長と忙しい仕事への不満、そして酒に酔ったエヴァのナギに対しての愚痴である。
え?俺は主に聞き手だって?
しょうがないだろ、この二人に通じそうな話題なんてないんだから。
雪がパラパラと降りそうな空の下、しばらく歩いていると、エヴァが尋ねて来た。
「……やけに汗臭いオヤジだったな」
「俺は嫌いじゃねェが」
「いや、だからと言って冬であんな豪快さはないだろう。見てるこっちが暑くなって来る」
「冬だからいいのではないのですか?」
「そう言う意味ではなくてだな、こう、暑苦しいのだ。ああいうのは」
そういうもんかね。
ま、よく娘は親父を嫌うというし、エヴァにとっちゃ正常な反応なのかもしれないな。
俺はどうでもいいんだが。






さて、ようやく我が家についた。
筋トレと思い筋力強化を使わなかったツケが一気にきた。
ここに来た当初よりも筋肉がついてきたと思っていたが、それは一般人の範疇でしかなかった。
流石にこのクソ重い炬燵を十分間楽勝で運べると言うわけではなかったらしい。
非常に疲れた。

自業自得とも言う。

エヴァは疲れたという俺をいやに物珍しそうな顔で見て来た。
「貴様が疲れると言う事もあるんだな。私は貴様の体力は無尽蔵だと思っていたぞ」
「……反射ってのァいろいろと便利なンだよ」
例えば、俺が地面を蹴る時の反動すら俺は反射できる。
その時の負担は僅かな物だが、長時間の戦闘において僅かな負担の軽減は非常に大きなものとなる。
地面が固ければ硬いほど歩き疲れるのは地面が固くて作用反作用の効果が柔らかい地面より大きいからだ。
それを無効化できるのだから、俺の負担は相当軽くなる。
普段ジョギングをしている俺にとって、この反射による負担の軽減を行えばかなりの距離を汗一つかかずに歩くことができる。
戦闘でも滅多にスタミナ切れを起こすことがないので、エヴァにそう思われていても仕方がないのかもしれない。
「っ、せ。あァ、疲れた」
家の前で鍵を開けるために両手に持っていた荷物を降ろすと、俺は一息ついた。
汗は余りかいていないが、身体はかなり温まっている。
炬燵いらないんじゃね?と思うほどだ。
だが寒い道をただ歩いて来ただけのエヴァはそうはいかずに。

「寒い。早く開けろ」

というもんだから、俺はさっさと開けることにした。
まあ、中と外の違いと言っても風があるかどうかくらいしかないんだがな。
実際、中に入ったエヴァの驚きは凄まじく、『なんでこんな冷蔵庫みたいな所に住めるんだ!?』と俺を驚愕の視線で見つめて来ていた。
よっぽど快適な生活になれていたのだろう。

こいつ、もう麻帆良を離れちゃ生きていけないんじゃないか?

俺はそう思いながら炬燵を組み立て始める。
組み立ててみると、案外デカい。
一辺が俺とエヴァと茶々丸が入れそうなくらいデカい。
こりゃちゃぶ台を片付けなければならないな。
茶々丸にちゃぶ台を畳んで押入れに片付けてくれるように頼み、俺は炬燵の組み立てを続行した。
とは言っても、もう布団を取り付けるだけであるが。
ばさりと布団をかけて、俺はお待ちかねとばかりにコンセントを刺しこむ。
炬燵は起動して数分間までの間は何故か外にいるより寒い感じがするので決して入らない。
エヴァがそれを知らずに入って寒いと言っていた。

いいから我慢しろ。

「おい、これは本当に暖かくなるんだろうな?」
「暖房機と同じだ。ちょっと待てば暖かくなるンだよ」
なにやら半信半疑そうなエヴァだったが、どうやら次第に暖かくなってきたらしく、『おお!』と驚きの声をあげる。
ようやく温まって来たようだ。
毛布に包まっていた俺も炬燵に入る。
茶々丸は必要ないだろうが、東洋の神秘に触れるために入ってきた。

しばらくしてエヴァがタレてきた。

具体的に言うと、顔を緩ませてぐてーっと机の上に伸びている。
もっとすると溶けるんじゃないかと思っていたが、残念ながら溶けなかった。
つまらねー。
茶々丸はというと、炬燵の感想そっちのけでエヴァの顔をガン見で録画していた。
真正面にいるのに気付かないエヴァも凄い。
完全にぽかぽかと温まって来ると、エヴァがポツリと呟いた。
「これは暖かいな……ウチも買うか」
「賛成です、マスター」
「あの夏みてェに暖かい家に必要なのかは疑問だがな」
ちなみに、この後炬燵の外が寒いとなかなかエヴァが外に出なかったのは余談となる。






翌日、というか翌朝。
しかも早朝。
寒いにもほどがあるというほど寒い外では、俺とガンドルフィーニチームの朝の見まわりが行われていた。
必要ないと思うんだが、こんなクソ寒くてもマッパで走るオヤジがいるんだから困る。
死にたいのか、と慌てて止めたが『我が生涯に一片の悔いなし』的な顔をして爽やかに笑っていたので殴り殺しかけた。
その時は高音に止められた。
何故かガンドルフィーニは止めなかった。

男にしかわからないムカつきらしい。

さて、今日の朝も見るからに重装備のガンドルフィーニチームとそれより少し薄着の俺という四人で見まわっていた。
何故薄着なのかというと、この後ジョギングに移行するからだ。
アスナの新聞配達より早く起きて見回りとか、どんだけー。
「そう不満そうな顔をするなアクセラレータ。私も同じ気分だ」
「できれば高音と愛衣の二人にやってほしいンだが」
俺がちらりと二人を見ると、二人はブンブンとものすごい勢いで手を振った。

「確かにマギステル・マギを目指すためにはこういう慈善事業もしなければならないというのはわかりますけど、真っ裸の変質者を担いで帰ると言うのはやはり少し抵抗感が……」

「お姉様……それ自分で言ってて悲しくならないんですか?」
「それは言わない約束よ愛衣ッ!!」
脱げ女こと高音に真っ裸の変質者を悪く言う資格はない。
下に何か着ろといつも言っているのだが、反省しないのか結局下には何も着てこない。
多分これで負けられないと自分を追い詰めているのかもしれないが、負けた場合のことを考えとけよ。
そんな事を思っていると、目の前に自動販売機が見えてきた。
キュピーンッ!!と俺の目が輝く。

「オゴれ」

「嫌です」

「なんでテメェが速攻で反応すンだよ」
「もう六回目じゃないですか!?」
そう、いつも同じルートを見まわっているために、俺は毎回高音に自動販売機でコーヒーを奢らせていた。
「ケチな奴だな。毎回貼るカイロ貼ってきてるとは思えねェなァ」
「そ、それとこれとは話が違います!」
「じゃ、じゃあ私が―――」
「騙されちゃだめよ愛衣!アクセラレータは言葉巧みに私達の財布から小銭を抜き取っていくのよ!」
「どンな認識されてンだ俺は」
「日頃の行いが悪いせいだと思うが」
ガンドルフィーニが呆れたように呟いた。
「じゃあ交換条件だ」
ほほうなんですかと高音が食いついて来る。
俺が交換条件を言うのは珍しいからだろう。
「今日の帰りは俺ン家で炬燵に入っても良し」
「なっ……コタツ!?日本の暖房器具のコタツですか!?」
何故か高音が飛び抜けるように反応した。
エヴァとはまた違う反応だなと思っていると、ガンドルフィーニが少し驚いた表情のまま話しかけて来る。
「今じゃ学生寮は狭いから誰もコタツなんて買わないからな……そういえば君の家はスペースが余ってたな」
「何もねェからな。で、どうする?コーヒー一つで炬燵に入れるんだぜ?もちろんタダじゃ絶対に入らせねェけどな」
まさに悪魔の契約とばかりに顔を歪ませる高音。
愛衣も期待している顔をしていた。
「炬燵なんて久しぶりです!私おばあちゃん家に里帰りした時しか入った事ないんですよ!あれあったかいですよね!」
「あァその通りだ愛衣。……フッ」
俺はそこで高音を見ながらにやりと笑みを浮かべた。
何やら嫌な予感がした高音はグッと身構えるが、別に高音に直接何かするわけではなかった。
「よォし愛衣、そんなテメェはタダで招待してやンよ。ガンドルフィーニもどォだ?仕事まで一時間くらいあるだろ?」
「ええ!?ホントですか!?」
愛衣は素直にはしゃぐ。

いやぁ、なんつーかこういう素直なのは良いね。

茶々丸とは違う意味で癒される。
アクセラレータの周りにはいなかったタイプだ。
ガンドルフィーニは苦笑しながら手を振った。
「それは今度の休日に行かせてもらおう。ちょっと今月は忙しくてね」
「公務員も楽じゃねェな」
肩を竦めていると、横から高音の高い声が轟いた。
「ちょ……ちょっと待ってください!なんで愛衣はタダなんですか!?」
「この間カイロ分けてくれたし、今もコーヒー奢ってくれようとしたしな。これくらいは当然だろ?」
「私は五回もコーヒーを奢って差し上げたじゃないですか!」
「テメェは親切を金で買えると思ってンのか?とンだマギステル・マギだな」
「ぐぁ……う、うう、いいですどうせ私は脱げ女です……」
いじけ始めた高音。
愛衣はそれを見てあわあわしているが、俺は高笑いである。
いやいや、人をいじるというのは本当に面白い。
いじられると頭に来るが。
俺は高音がいじけるさまをみてひとしきり楽しむと、強引に肩を組んだ。
「ひゃっ!?」
驚いたのか『びくぅ!!』と肩を竦ませる高音。
「間に受けンじゃねェよ、愛衣とセットのテメェを招待しねェわけにはいかねェからな。炬燵に蜜柑くらいは楽しませてやンよ」
「じょ、冗談でしたか……それよりもセクハラですよ」
確かにいきなり異性と肩を組むのはセクハラである。

「関係ねェよ。俺は女だぜ?」

その言葉に0度に近い温度が絶対零度となった。
マイナス273度である。
何故か愛衣だけではなくガンドルフィーニまで凍りついている。
俺以外の三人は俺を見て、驚愕に塗れた声で叫んだ。
「「「…………嘘ォ!?」」」

「嘘だ」

即答してやった。
原作でも言われていたとおり、外部刺激が少ないおかげでホルモンバランスが崩れ、男か女かわかんねェ中性的な体つきと顔つきをしていた俺の身体だが、いかに筋肉がついてきたとはいえ中性的な顔が男らしくなるわけではない。
女だといえば女に見えなくもないのだ。
信じるのも無理はない、といった所だろう。
もちろん高音はサルのように叫んだ。
「むっきぃいいいいい!!」
「ああ!?お姉様帰ってきてくださ―――ってこんなところで『黒衣の夜想曲』!?ま、まさか暴走ですか!?ガンドルフィーニ先生、助けてくださいーッ!!」
「アクセラレータ……心臓に悪い冗談はやめてくれ」
「無理」
こういう感じで俺の寒い朝の見まわりは過ぎ去っていく。
からかうってのがこんなに楽しいというのを覚えたのはこの見回りからだった。
その後、俺は自腹でコーヒーを買ったが高音に蜜柑を食わせて『あ、それ一個百円な』と言った時の高音の表情といったらなかった。

ちなみに愛衣はタレ愛衣と化していた。

エヴァよりも溶けそうになっていたのは秘密だ。






そして、俺は早朝の走り込みに出る。
朝は冷えるが、もう慣れた。
朝の見回りのおかげで目も覚めるし、無茶苦茶眠いことを除けばそれほどの苦行ではない。
ちょいと高音と愛衣を炬燵にブチこんでいたおかげで時間を食ってしまったのである。
別に時間がないわけではないが、ペースを崩したくなかったのは確かだ。

俺は若干いつもより早いペースで走っていく。

見るからに筋肉がついている―――というわけではないが、運動を行うための最低限の筋肉はついてきているはずだ。
将来的に『気』を使おうと考えている俺にとって、まず基礎的な体力はつけなければならない問題であった。
だって、自力で瞬動ができるアクセラレータとか最強じゃね?
そこに更にベクトル操作を加えたら瞬動が縮地になりかねない。
いやむしろ無限瞬動とか可能になるかも知れない。
その場合は反射神経も強化しなきゃな……。
虚空瞬動やらネギまにはトンデモ技術ばかりなので、是非習得してベクトル操作で改造してみたい。
目標はその改造だが、さて、どれくらい先になるやら……。
道のりは長そうだが、地味にやっておくことは無駄じゃないだろう。
基礎ってのは何事も大事だからな。
そう思って走っていると、目の前に見覚えがあるツインテールが見えた。

その場で足踏みしているのは神楽坂アスナだった。

何してやがる、と思うが、何やら俺の方を見て軽く手を振っているので、そちらに近づく。
「おはようございまーす!」
「……あァ」
何でコイツ朝からこんなテンション高いんだと高血圧を羨ましく思いながら、俺はため息交じりに応じた。
冬になったってのにこの元気の良さはあり得ないだろう。
着こんでいる俺が馬鹿みたいに思える。
寒ィンだよ畜生。
「今日は遅いわね。昨日遅くにでも寝たの?」
「用事があってな。シャカイジンってのは大変なモンなンだよ」
「こんな朝から?」
「ダチが部屋ン中でハシャいでたンだよ。外が寒ィから出たくねェって言いだして大変だったンだぜ?」
それはしょうがない、とばかりに神楽坂は苦笑しながら肩をすくめる。
「この時期の朝は冷えるからしょうがないわよ。あたしだって部屋でぬくぬくしたいわ」

ジョギングしている俺の横で、神速とも言える速度で郵便受けに新聞紙をブチ込んでいく神楽坂。

脚の速さと言い、その速度と言い、裏を知ってる連中なら何か疑問に思われて当然な能力のような気がするが……王家の血ってのは凄いんだな、としか言いようがない。
くそう、その身体能力が欲しい。
「あ、それよりちょっと聞いてよ。ここ最近誰かにつけられてる気がするのよ」
「冬にストーカーは普通出ねェンだがな」
裸で道路を突っ走る狂ったオッサンならいたが。
「……心配なら、警察にでも行って相談すりゃいいンじゃねェの?」
「違うの違うの、このかっていう私の友達なんだけど、あの子と一緒にいるといつも絶対誰かにつけられてる気がするの。この頃特に」
……オイ、刹那。

神楽坂にバレるとかテメェ末期だぞ。

内心で焦りながら、俺は顔と声は普段通りにして応じる。
「テメェのその瞬速の脚で逃げきれねェのか?」
「このか背負って走るわけにはいかないでしょうに……でもねー、なんていうか気持ち悪くないのよね。ただ気になるだけで」
……王家ってのはカンというモンに特化してんのか?
「気持ち悪くねェストーカーなンざいンのかよ」
「いるんじゃない?世の中って広いし」
そこでいると考えるテメェが凄いよ。
呆れつつ、そういうお人よしな所が神楽坂アスナたりえる柱なのかもしれないと思う。
なにせ、エヴァは悪くないと断言した奴だからな。
信用しすぎもどうかと思うが、こういうのは人間の美徳だと思う。

俺からすれば眩しすぎるが。

「インチキな宗教勧誘には気をつけろよ。テメェみてェなのが一番騙されやすい」
「なぁに?そういうのに引っ掛かった事あんの?」
「俺はそう言う連中を見てきたんだ。ったく、無駄な散財にしかなンねェよ」
これは一方通行ではなく『俺』の経験になるが。
そういうのにのめり込んでいき、明らかにインチキなモンでも購入している奴がいた。
まあ、ソイツはソイツの金だから自由に使えば良いんだが、まったく散財としか思えなかった。
なまじ純粋な奴ほどそういうのにはのめり込みやすい。
神楽坂には近衛このかがいるから大丈夫だとは思うが。
「ふーん、そうなんだ……まあ、私はともかくウチにはこのかがいるから大丈夫よ」

それには全く同感だな。

近衛このかはあのままいけば本当に良い奥さんになりそうだ。
黒化さえしなければ。
是非良い旦那さんを持ってほしい。
俺は横を走っている神楽坂をチラリと見やる。
「まぁコイツに関してはなァ……時が解決してくれるかどうか」
「ん?何か言った?」
「別にィ」
こういう何げない感じで、俺たちの会話は終わる。
炬燵騒ぎがなければ、これが俺のいつもの朝だ。
……予想以上に食費がかかるのは運動してるのもあるが、もしかしてこうして会話してカロリー消費してるのもあるのだろうか。
これは今日も茶々丸に御馳走になるしかないか。
エヴァ?あんな幼女は知らん。
パーカーにより熱気がこもる中、いつもは感謝するはずの朝日がかなり鬱陶しくなる。
その朝日を見て、俺はいつもこう思うのだ。
―――あー、腹減った。






~あとがき~

アクセラレータの日常編、朝をお送りしました。
この後、アクセラレータは飯食って寝て飯食って麻帆良をブラついてエヴァん家にたかりに行ってコンビニでコーヒー買って寝ます。
こういうぬるいのがアクセラレータの日常ですwww
今まで殺伐としていた状況ばかりだったので、こういうのは書いてて和みました。
いいですねぇ、日常って。
とか言いつつも、次回はおそらく戦闘モノになります。
舞台は四月になりますが、あのイベントが起こるので。
何度も書いてるように、アクセラレータTUEEEE!!だけを展開するつもりはありません。
でも、TUEEEE!!はしますwww


感想で熱や冷気などのベクトルは操作できるという感想をいただきました。
作者がアホでした、すみません……。
次回からは気をつけます。
そういえばアクセラレータが寒がったりする描写ってないですよね。
ベクトルって、難しいですね。


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