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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第55話
Name: カラーゼ◆00732227 ID:b63b6bf3 前を表示する
Date: 2012/08/27 00:24
SIDE 一方通行

さわやか且つ、心地よい湿気を含んだ湯気が頬を撫でる。
普通の風呂ですら『あぁぁぁ』と唸ってしまう気分になる俺にとって、こういう露天風呂という場所は天国に等しかった。
現在は京都での見学が終了し、嵐山旅館に荷物を運んでいる最中である。
もちろん、それは生徒だけであり、部屋で生徒がわいわいしている間に我々引率の先生方は手早く風呂に入ることになる。
先生ではないが、とりあえず指導員である俺も例外ではなく、この心地よい時間を堪能していた。
今ならミサカの毒舌すら完全スルーできそうなくらいにリラックスしている。
そんな俺を見て、かけ湯をしている瀬流彦は困ったように笑っていた。
「そういう顔ばかりしておけば君も年齢相応の青年なんだろうけどなあ」
じゃあ俺は老けてンのか、と突っかかりもせずにスルーした。
今はそういう冗談よりも露天風呂を堪能したかったのである。
無視されて気分を悪くしたのか、普段は何事にも丁寧な瀬流彦にしては少々乱雑な仕草で露天につかる。
たかが高校生程度の年齢のガキに大人げないなと思いつつ、俺はリラックスした頭でこれまでのことを思い出す。
列車の中でカエル騒ぎがあったことは、しずな先生が気絶したと騒ぎになったことで確認した。
俺は俺で他の先生方に混じって騒ぎが起こらないように警戒していたわけだが、それ以外に何らかの問題が起こったという報告は聞いていないし確認もしていない。
あってもよっぽどのことがない限り生徒たちは先生たちに何も言わないだろうが。
そこそこの問題が起こったとしても、麻帆良の学生は3-Aに限らず全般的に能力が高い傾向が強いため、けっこう自力で解決してしまったりするし。
これは経験豊富な新田先生の談である。
さて、その能力が高い筆頭の3-Aであるが、俺が見ている限りきちんとしていたし、はしゃいではいたがそれも許容範囲内ではあった。
詳しく見ていなかったので俺の主観による判断であり、詳しい現状はミサカの報告待ちなのだが。
ミサカは俺が修学旅行に同行していることを知っている唯一の生徒なので(もしかしたら他のカンのいい生徒が気づいているかもしれないが)、中間報告みたいなのはミサカを経由することにしている。
今日は晩飯後の自由時間に自販機前で落ち合い、そこで話すことになっていた。
部屋に呼ぶことも考えたんだが、新田先生の目が近いし、変な噂が立ってもいかんので没案である。
俺はとりあえず緩やかに頭を回転させながら、瀬流彦に話しかけた。
「混浴っつっても流石に女性と男性じゃ時間が別れてるな。麻帆良のフザけた呑気さだったらそこら辺も一緒にブチ込む感じだと思っていたンだが」
「流石にそれじゃ色々と問題があるよ」
瀬流彦の返しが普通すぎて味気なく、俺はそれに応じた通常の返しをしながら肩を鳴らす。
普通はこれだから面白くない。
ミサカや刹那みたいに面白い反応をしてくれれば俺も楽しめるのに。
そう思いながら、俺は現状の確認を行う。
「とりあえず、これは確認になるが……そっちの方はどうなった?」
「ああ、『連中』のことだね。別に、ただの斥候部隊だったみたいだけど。特に何もしてこなかったしね」
「数は?」


「約12人。フォーマンセルで三組ほど」


それを聞いて、俺は頷いた。
実際、俺も感じられた人数はその程度だったからである。
しかし数が多い。
いくらなんでも多すぎやしないだろうか。
「こっちで把握できる人数を超えてる。厄介だな」
「しょうがないよ。むしろ、姿を現してくれただけ感謝しなきゃいけない。逆に考えれば、人数の把握はできたことだし」
「示威行為じゃねェのか? まさか、向こうも馬鹿正直に魔法先生が公式発表通りにネギ一人だと考えてねェだろ」
向こうの狙いがわからない以上、これは憶測にしかならない。
だが、考えておくのは良いことだ。
そのことについて頭に留めておきながら、続ける。
「っつか、その関西呪術協会はこっちに協力してくれねェのか? 向こうから一つたりとも接触してこなかったから勝手に色々とやっちまったが」
「僕たちは一応『ここにいない』ことになってるからね。学園長と向こうの長の密約らしい。関西呪術協会内の過激派を刺激しないように、向こうの長も四苦八苦してるみたいだし。僕たちを陰で容認するくらいが関の山だったんじゃないのかな?」
「俺たちを容認する程度が関の山だってか? どうせ今回で問題が起こるってことはわかってンだろォによ」
近衛このかが里帰りをする、という例外を除けば、中学生として近衛このかが京都にやってくるのはこれが最後だ。
それなのに、関東を潰そうと考えている連中が何もアクションを起こさないなんていう甘ったれた考えはありえない。
魔力を利用するというのは考え付かないでもないが、近衛このかを捕縛するという事実は近衛家に対しての脅迫にも使える。
無論、近衛詠春が娘を犠牲にしてでも関西呪術協会の過激派を抑え込むという素晴らしい度胸の持ち主なのであればそれは無意味だが、それが効果的だろうことは過激派が既にリサーチしているだろう。
その行動を起こそうとする過激派を抑えるために、刹那が護衛に付いたり、俺や瀬流彦が極秘に送りこまれているわけなのだが。
「向こうも苦労してるんだろう。過激派っていうのはどこでも問題だってことだよ」
「ンな事はわかってる。苦労しても抑え込めねェンだから俺たちみてェなのが動かなけりゃならねェんだ」
俺は湯船から立ち上がる。
頭の上に乗せていたタオルを広げて、肩にかけた。
「もう上がるのかい?」
「テメェが長湯なンだよ」
そう言って、俺は湯船から出ると反射を復活させ、体についていた水気をすべて吹き飛ばす。
こういう時、ベクトル操作能力というのは便利だ。
セコい使い方だとは思うが。
そう思いながら、俺は脱衣所で浴衣に着替える。
下着の上に浴衣を着て、それからカツラを被り、カラーコンタクトを入れる。
ネギが来てもバレた時は死ぬほど脅しておけば死んでも喋らないだろう、という甘い考えで対応するつもりだ。
どうせ、よっぽどのバカじゃない限り、瀬流彦や俺みたいに魔法先生やそれの関係者が紛れ込んでいると考えるだろうし、その戦力把握についてもすぐさま行われているだろう。
ネギが敵に俺がいるということをバラしたとしても、その時はその時で相手が知らなければ何らかの隙ができる。
それを利用するかして、遠慮なく叩き潰してほしい。

ぶっちゃけ、俺に楽をさせて欲しいわけだ。

自動販売機でコーヒーを買いながら、気の抜けたことを思う。
どうやら温泉でかなりリラックスしてしまったらしい。
たまには気が抜ける時間は欲しいが、あの場ではそれで良かったんだろうか。
既に済んだことなので気にしないように努めながら、俺はソファーで冷たいコーヒーを半分ほど一気に飲み干す。
やはりこの新作は口の中に残る後味が良い。
もう新作に手をつけなければならないほどの種類にハマっているわけだが、さて、今後はどうしようか。
一番最初にハマった種類に原点回帰するしかないのだろうか。
それともこれを機にすっぱりカフェイン摂取をやめてしまうか。
馬鹿かと思いながら、俺は飲み干したコーヒー缶を少し離れたゴミ箱に投げ込む。
缶専用と書かれた入り口の狭い面倒なゴミ箱にも、俺のベクトル操作能力があれば的確に飛び込んでいく。
アルミとスチールがぶつかり合う音を聞きながらソファーにへたると、


「相変わらずの能力の無駄遣いですね、とミサカは一般人もいるのに何を考えているのかとアクセラレータを睨みつけます」


相変わらず毒舌で生意気なミサカがそこにいた。
睨みつけていると言った割には自販機に向いているその視線は、明らかにジュース代が欲しいと訴えかけている眼であった。
金あるくせに、と思いながら、俺はポケットに直接ぶちこんである百円玉を取り出し、親指で弾いた。
着弾点をミサカの額に定め、本来ならば分散するベクトルを一方向に収束した銃弾の如き一撃は、すんなりとミサカに受け止められてしまう。
「止まって見えますよ、とミサカはアクセラレータを挑発します」
「無理すンな、手が真っ赤じゃねェか」
気で強化したんだろうが、ちらりと見えた右手は赤くなっていた。
それでもしっかりと百円玉を握りしめている辺り、意地汚いのが分かる。
精いっぱい勝者の余裕を見せつけながら、ミサカは自販機に歩いて行った。
ぷるぷると右手が震えている様は、それの代償だろう。
自販機から落ちてくる小さなアルミ缶の音と、背後から聞こえてくる女子中学生の姦しい声が同時に聞こえる。
どうやら新しくバスと荷物が到着したらしい。
さっきは3-Cが来たから、今回は3-Dだろう。
ミサカの様子を見ると既に荷物を運びこんでいるようだから、今は晩飯前の自由時間か。
おかわり自由というのが存外嬉しかったりする。
とりあえず三杯くらいはおかわりしようと考えていると、ジュースを買ってきたミサカが隣のソファーに座る。
「どォだった?」
「アーティファクトが使えない以上、魔力反応というのはよくわかりませんでしたが、一定距離を置いてミサカたちを尾行している不審者がいるということはわかりました、とミサカは報告します」
「数は?」
「少なくとも12。3つの班に分かれて行動していたようです、とミサカは続けて報告します」
俺と瀬流彦が感じたとおりだ。
これで瀬流彦の感じる気配と、俺の風操作によって判明した追跡してくる人影、そしてミサカの電波による関知という三つの要素が揃っておきながらこう感じられたということは、情報は正しいということだろう。
それが敵意あるものなのか、果たして過激派に対するけん制を行う関西呪術協会の親関東派なのか、それは判別がつかないが。
ミサカの電波を飛ばす探査方法は、ただそこに何がいるのかを探索する能力だ、数を確かめられただけ良かったと思うべきだろう。
「続けろ」
「3つの班はミサカたちの左右と背後に配置されていて、その配置を崩すことはありませんでした。やってきたタイミングはあの酒騒動があった場所です、とミサカは報告します」
更にミサカはつらつらと報告していく。
かなり長い時間べったりと張り付いていたようなので、おそらく偶然ではないということ。
姿が見えないほど遠かったということから、おそらく魔法のようなもので位置を特定していたと推測したとのこと。
そして、三つの班の内、背後にいた班はすぐさま撤退したということ。
まさかミサカの電波探知に気づいたわけじゃないだろうが、理由は不明とのこと。
また、その怪しげな連中は龍宮も気づいたようだったということ。
結局向こうが手を出してこないので放置した後、バスに乗ったらいなくなったということ。
それらの報告を聞いた後、俺は短くため息をついた。
「瀬流彦から聞いた時も驚いたが、少なくとも10人以上の組織で動いてるわけか。このチャンスを逃すわけがねェし、当然か」
「はい。全員が戦闘員なんていうことは考えたくありませんが、そうなった場合、こちらの戦力は非常に心もとないものになりそうです、とミサカは情けなく思いながらも自らの見解を述べます」
「まァ、そォだな。流石に一気に襲いかかられたら、テメェらじゃひとたまりもねェ」
麻帆良で鬼の襲撃に慣れているとはいえ、あれは向こうがアウェイであることが関係していると俺は考えている。
それにここは本拠地なのだ、凄腕が何人いるかわかったもんじゃない。
俺は努めて表情をだらしないものにしながら、ミサカに答える。
「10人以上でかかってくるのは俺も予想外だ。まさか向こうの長がここまで過激派をのさばらせてンのは流石に考えられなかったからな。せいぜい5人程度かと思えば、かなり大規模だと考えられるわけだ」
「ミサカは負けるつもりはありませんが、それではこのかさんやネギ先生のことまで手を回すことはできません、とミサカは正直な見解を述べます」
「あァ。こりゃ、近衛このかが攫われることを前提で考えなきゃならねェな」
すると、ミサカの目が厳しくなった後、俯いてため息を漏らす。
「……はい、そうですね、とミサカは頷きます」
「しょォがねェよ」
これはジジイに連絡を取った方が良いかもしれない。
流石に大規模すぎる、ミサカ達には手が余る、と。
局所的な問題は解決できるが、人数の問題はどうしようもない。
ここで俺が近衛このかが攫われることを前提で考えるというのは、その方が非常にやりやすいからだ。
近衛このかが攫われることで、敵には本拠地と防衛地点が浮き彫りになってくる。
そこを襲いかかって、一網打尽にする。
改めて考えてもかなり楽だが、近衛このかがどういう扱いを受けるかわからない以上、それは非常に危険である。
なにしろ、近衛このかを囮に使うものと同じ手法なのだから。
俺がそう言う作戦も視野に入れていることは、薄々ミサカも勘づいているだろう。
だからと言って、止めることなんてできないがね。
俺も最大限のサポートをするが、極力表舞台に出てはならないという制約がある以上、限界がある。
最悪俺が出ることになっても、『関西呪術協会側が最初に協定を破った』という大義名分が必要だ。
せめて、向こうから先に手を出してくるまで、俺は表舞台に立つわけにはいかない。
少々歯がゆいが、ミサカはもっと歯がゆいだろう。
「報告は終わったか? 戻っていいぞ」
「あの、アクセラレータ。できれば、あまりこのかさんに危害が及ばないで欲しいのですが、とミサカはお願いをします」
「前提条件を忘れてねェか? どう足掻いても一度はネギか近衛このかに危害が加えられねェと、俺は出ることができねェンだよ」
いいか、と俺はミサカの方を見る。

「俺はあくまでピンチヒッターだ。序盤のボスで詰まった時に全クリした別データの主人公が介入してくるようなモンなンだよ。そんな歪なことするには、ボスがレベル99とかいう理不尽が必要だ。理不尽には理不尽で対抗するのはわかるが、ただ楽をしようとするとしっぺ返しが来るぞ」

例えば、近衛このかが危機に陥る前に俺が脅威を排除するとする。
すると向こうは『関東魔法協会からはネギ・スプリングフィールドしか魔法先生はいないはずなのに』となる。
もちろんそれは勘違いであり、ネギはあくまで魔法先生である。
要約すれば、関東と関西が結んだ約束事は、教師が魔法関係者であるが、親書を届けるために仕方がなくネギという魔法先生一人が来るのを了承した、というようなものだ。
決して『その他の魔法関係者がいない』というわけではない。
生徒はどうするんだって話になるしな。
学園長と関西呪術協会の長が結んだという約束事にはネギはいいが他の魔法先生は進入禁止ということになっているため、生徒は大丈夫という抜け道は有効だが、俺はグレーゾーンだ。
俺は先生ではなく、広域指導員だ。
それは魔法先生として含まれるのかは微妙だし、どちらかというと魔法関係者寄りだという自覚はある。
だが、向こうはそんな細かい事情なんぞ汲んでくれないだろう。
その向こうにとっての違反事項を抗議されれば、融和を望む関東魔法協会は強硬な姿勢に出れず、自らの非を認めるかもしれない。
あのジジイがそんな立ち回りをするとは思えないし、時間は稼ぐだろうが。
そのせいで俺が早期に退場してしまえば、残る日程で俺の助けは得られないというわけ。
別に、土壇場になればエヴァがやってくるんだろうし。
俺という圧倒的戦力をふいにしてしまう意味はミサカでもわかっているだろうし、だからこそ難しい顔をしている。
俺としてもミサカに楽をさせてやりたいという気持ちはあるが、守るべき時に行動できないほど歯がゆいことはないので、今はおとなしくすることにする。
暴れる時間は、やはりクライマックスである。
俺は肩を落とすミサカに、大げさにため息をついてやる。
「そんな顔すンな。俺がいる限り、全員無事に麻帆良に帰してやる。それだけは保障してやンよ」
何の根拠もない保障だ。
相手が何人いるのか、どんな攻撃を使うのか、外部組織とのつながりはどうなのか。
それすらもわかっていない状況で、彼我の戦力差を比べられるはずがない。
だが、正直に言っていいことと言ってはいけないことがある。
今回は、後者だ。
ミサカは俺の気休めに小さく頷くと、階段の方に向かって歩き出した。
彼女が階段の上に消えていくのを見た後、俺は携帯を取り出す。
立ち上がり、携帯を持っていない方の腕をグルンと回す。
敵が組織として行動し、大規模な戦力を持っているのであれば、それは正解だ。
例え少数であっても、子供であっても、舐めてかからないプロの意識が見え隠れする。
数は力であることをよくわかっている連中だ。
こっちは無い物ねだりをするわけにはいかないし、このままでは少しまずい。
それなら、と俺は笑う。


「頭と耳と口を最大限に利用するしかねェよな?」


勝敗を決めるのは情報だ。
こういう動けない状況では、いつでも切り札を切ることができる状況を作るべきだろう。
そう思っている俺は、すぐさま電話をかける。
その番号は、今頃のうのうと机でふんぞり返っているであろう、麻帆良の妖怪のものだった。






SIDE 神楽坂アスナ

私はただ、良かれと思って行動しただけだった。
まあ、桜咲さんの事情も知っているので、これを機会により親密になろうというこのかの気持ちはわかってたし、提案したのも私だ。
護衛という点でも私と刹那さんがいるから問題ない。
むしろ、遠距離で護衛という逃げ道がない分、それは効果的な作戦だった。
我ながらえげつないかも、と調子に乗りながら浴場へ行った時、私はひたすらに後悔することになった。

なぜ、ミサカさんがいるのか。

しかも一人で。
別に入浴開始時刻は過ぎているから問題ないし、居て悪いなんて言うつもりはないが、もうちょっと空気を読んでほしいというか、なんというか……。
そういえばミサカさんは広いお風呂が好きだったな、と少し前に超たちとはしゃいでいたことを思い出す。
だからこそ生徒の中で一番風呂に入りたかったのかなとか思いながら、ミサカさんに挨拶して風呂に浸かる。
ちらりと横を見てみると、桜咲さんは明らかに顔が引きつっていて、ミサカさんも何やら刹那さんに顔向けしづらそうにしている。
事情を知らないこのかは二人の気まずさには気づいているみたいだけど、どうやら自分のスタンスを貫き通すことにしたらしい、桜咲さんに話しかけている。
その状況を見て判断したのか、少し恨みがましいような目で私を見てくるミサカさん。
どうも私が主犯だということを瞬時に察知したらしい。
相変わらずよくわからないところで凄い人だと思いながら、目線すらも桜咲さんに察知されたらたまらないので、ひたすら無視することにする。
もちろん、私に気づかれたと思ったのか、すぐに目をそらしたが。
心地よい汗を流そうと風呂にやってきたら、流したのは冷たい汗だったってどういうことよ。
ミサカさんもミサカさんで、さっさとあがってしまえばいいのに。
そんな身勝手なことを思いながら、私はただひたすらに沈黙と空気に耐える。
救いは、たまに来るこのかの言葉に相槌を打つ時だけだった。
やがて温まったのか、ミサカさんが『失礼します、とミサカは頭を下げます』と言い残して去って行った。
途端に緩まる空気と、ほっとする桜咲さん。
ああもう表情に出すぎだと私は注意したくなるが、もう遅く、完全にこのかには何らかのトラブルがあることがバレてしまったようだった。
桜咲さんに話しかけつつ、こっちの状況も窺っていたらしい、私の方に目線で『説明して』と要求してくるのがわかった。

もう私の頭がパニックになりそうになる。

桜咲さんからはミサカさんとアクセラレータが付き合っていて、自分はそれに嫉妬していることを口止めされてて。
つまりミサカさんに色々と話しかけても誤解される可能性が非常に高く、その場合私の命が危ないわけで。
何か目線を向けられているだけで何らかの判断がされる可能性がある。
その上、このかにその現状を説明しろと。
口止めされているのに。
もうどうしろと。
この歯がゆいというかどうしようもない悩みをどうしろと。
このかに言わないと、最大限サポートすると言った手前、友人を裏切ってしまった感じがあって嫌だし、本当のことを話せば桜咲さんに斬られてしまう。
「一体どうしろっていうのよ、もう」
風呂上りの牛乳を飲みほした後、誰にも聞こえないように口の中でもごもごと呟く。
桜咲さんがやけにこっちに向けて反応しているように見えるのは、やっぱり私が信用ならないからなんだろうなあと思うと、この先とっても不安になってしまう。
盛大に、そりゃ盛大にため息をついていると、桜咲さんと一緒に髪を乾かしたり、櫛でときあったりしていたこのかが戻ってきた。
こっちは仲が進展していそうでそりゃーもう私からすれば結構なことなんだけど、もう一回だけ密かにため息をつかせてもらう。
なんで私がこんなに気苦労しなきゃなんないのよ……。
「どうしたん、アスナ? ため息なんかついて」
「なんでもない。ちょっと不条理って奴にため息をついてただけだから」
「アスナ、難しい言葉知っとるんやな」
「これくらい知ってるわよ!」
このかは相変わらずころころと笑っている。
その後ろに控えるかのように、桜咲さんが立っていた。
げっそりしているように見えるのは、果たしてこのかから逃げられなかったからか、ミサカさんとお風呂ではち合わせたからか。
と、ここで桜咲さんから目線で『先に行っている』という意思表示が。
そうはいかない。

いや、むしろチャンスね。

私は足りない頭を一瞬でフル回転させて、このかの右肩を右手で掴んで、ぐいっと下に押し付ける。
振り返られないようにしてから、するりと脱衣所から出て行こうとする桜咲さんに向けて、思いっきりラリアットをぶちかました。
避けられても服を掴んで引き倒そうと思っていたんだけど、
「ぶふううううーっ!?」
本当に疲れていたのか、油断していたのか、どっちかはわからないけど、すごく綺麗に当たってしまった。
思いの外すっきりした私は、倒れそうな桜咲さんと強引に肩を組む。
「桜咲さん大丈夫!? すべって頭でも打ったの!? 頭大丈夫!?」
「げほっ、ち、ちが……か、神楽坂さ」
「このか、ちょっとしずな先生の所に行ってくるから、先に部屋に戻ってて!」
「え? 一緒に行った方がええんちゃうの?」
そこで、いいから! と私はこのかの目を見た。
こういう時、この親友は空気を読むのがとても上手だ。
何かを感じてくれたのか、このかは頷いてくれた。
後でとりあえず事情を説明しようと心に決めながら、私はせき込む桜咲さんを荷物みたいにして担ぎあげる。
ただでさえせき込んでいるというのにお腹に負担がかかる担ぎ方をしたもんだから、桜咲さんが更にせき込んだ。
あれだけ大変な思いをしたんだから、ちょっとくらい仕返ししてもいいだろう。
ぶっちゃけ八つ当たりなんだけど。
陸上部にも負けない私の脚が唸りを上げる。
階段を8段飛ばしで駆け上がる勢いで、一気に旅館の屋上にやってきた。
流石に準備運動もなしに駆け上がったからか、息が荒れて、汗がドッと出てくる。
もう一度入り直したい気分になったけど、今はとにかく桜咲さんだ。
桜咲さんを降ろしてから、携帯電話を取り出してネギに電話をかける。
数コールして、ネギが出てきた。
『アスナさん、どうしたんですか?』
「ちょっとこのかを見ててくれる? 私も桜咲さんも手が離せなくなっちゃって」
『え? それはどういう―――』
「今は温泉の入り口辺りにいるはずだから! 頼むわよ!」
『えええっ!? アスナさん、せめて理由を教え』
ぶった切った。
最近は妙に慎重になってきたネギだけど、口が軽いというか、うっかりすることは変わりない。
あまり秘密にはしたくないけど、これは秘密にしなきゃいけないこと。
後で言い訳を考えることにして、私は桜咲さんに向き直る。
その頃にはもうせき込んでいた状態から回復した桜咲さんが、怪訝そうな顔でこっちを見ていた。
「神楽坂さん、どうしたんですか? さっきのは一体……」
「さっきのはごめん。二人で話し合う場所が欲しくて。乱暴だけど、考えたらこんな強引にしかできなかったのよ」
「何か理由があってやったということはわかりましたが、何のお話ですか?」
そこで、私は桜咲さんに近づいてごにょごにょと呟く。
「ミサカさんのことよ」
それを聞いた瞬間、桜咲さんは納得したような顔をして、同時に盛大なため息をついた。
自覚はあったみたいだけど、流石にただ『秘密にしてほしい』じゃあもうごまかせない段階までこのかに気づかれている以上、ちょっと凝った誤魔化しをしなきゃいけない。
もちろん、このかはそれも見破ってくるだろうけど、そこまでして私たちが誤魔化している以上、深く踏み込んでくることはない、はず。
今もこのかは直接的というよりは外堀を埋めるように桜咲さんとの仲を進展させていっているみたいだし。
運が絡むけど、放置しておくよりは裏で話しておいた方がいいはずだ。
屋上を見ている人は誰もいないか桜咲さんに確認させた後、私たちは話し合いを始めた。







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