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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第5話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/04 00:32
SIDE 高音・D・グッドマン

今現在の時刻は午後十時二十二分。
私とガンドルフィーニ先生、そして愛衣は、いつも通りチームを組んで麻帆良に侵入しようとする悪党を蹴散らすために巡廻を行っていた。

それにしても、肌寒くなると夜回りもキツくなる。

隣の愛衣なんてセーターの上に更にジャンパーを着込んでいる。
更に貼るカイロまで服の中にしこんであったかそうな顔をしていた。
くっ……私も見栄を張らないで貼れば良かった。
ちょっとガンドルフィーニ先生も羨ましそうな顔をしていた。
色々と外国に飛んでいるガンドルフィーニ先生は寒さに強いと思っていたのだが……。
やはり、日本の気候に慣れてしまったのだろうか。
その適応能力は各地を飛び回る魔法使い故だと思うが、適応し過ぎて寒さに弱くなるのはどうかと思う。

まあ、飛びまわっていない私がそんな偉そうなことを言うのもおかしいんですけど。

それはともかく、今日の巡廻は一味違うものになるとの事。
昨日森の中で鬼と交戦している所を見つかった謎の人物、アクセラレータとかいう奴が同行するらしい。

彼は危険過ぎる。

ガンドルフィーニ先生も言っていたが、彼の纏うオーラのような物が尋常ではないらしい。
ある程度の実力者になれば雰囲気とか気配とかで相手の実力をかなり正確に測れるようになるのだが、実戦経験が少ない私や愛衣はそんなことはできない。
せいぜい、強いと弱いと判別できるほど。
しかも、大方見た目に頼って。
この辺りは外に出て実戦経験を積むしかないのですが……そんな私でも、彼の雰囲気や殺気には度肝を抜かれました。
あれが戦場の殺気……本気の殺気と言う奴なのだと、初めて知った。
鬼や悪魔が向けて来るのも確かに殺気。
だがそれは強引に術者に制御されているがゆえに、しょうがなくとか、戦いが楽しいからとかそういう理由で向けてくる事が多かった。

しかし彼の殺気は違う。

あれは『殺す』という一念をそのままぶつけてきていた。
それも、あれは学園長に向けられていたもので、私への殺気はその余波に過ぎない。
それでも、私は思わず影に攻撃命令を出しそうになった。
腕を掴んでプルプル震える愛衣の存在がなければ、私は取り返しのつかない事をしていたかもしれない。
彼女が頭をブンブンと横に振っていたから踏みとどまることができたのだ。

私は良い相棒を持ったと思う。

まだ少し手がかかるが。

それにしても、あの殺気をまともに受けて椅子から動かない学園長の肝の強さにも驚いた。
いつもおどけているから麻帆良最強の魔法使いがどれほどの実力なのか想像もできなかったが、やはり今の私には遠く及ばないような実力者なのだと思う。
素直に、あの時は尊敬したものだ。
それもあの時だけだった。
アクセラレータと今夜一緒に仕事をしろ、と言うのだ。
本当に何を考えているんだか、あの学園長は。
学園長に対しての評価が急降下した瞬間だった。
ガンドルフィーニ先生、私、愛衣は集合場所に十分前には必ず来るようにしている。
自分でも少し早いとは思うが、これは魔法使いとしてうんぬんではなくマナーの問題でもある。
待ち合わせ時間に遅れるなどもっての外だ。

それにしても寒い。

「ねえ、愛衣。ジャンパー貸してくれない?」
「えへへー、嫌です。むふふー」
ぽふぽふとジャンパーの温かそうな胸元を叩いている愛衣が羨ましくて、ちょっと恨んだ。

まあ、叩かれているそこは平原だが。

私達はその場で五分ほど待っていると、ようやく街灯に照らされる暗い夜道を歩いて来る白い影が目に入った。
彼のような粗暴そうな人物がきっちりと時間を守るのは意外だった。
「時間をきっちり守るとは、意外と律儀なんだな、君は」
「うるせェよ、ガンドルフィーニ。……にしても、テメェ等と組むとはな。まァ、あそこにいたからそれなりの実力者とは思ってたンだが」
アクセラレータがこちらを見る。
思わず体が強張るが、こちらを見る目つきには敵意や殺気が全くなかった。
あるのはピリッとしたような緊張感だけ。

あれ、こんな人だったかしら。

案外話し方が粗暴なだけの普通の人のように感じられた。
アクセラレータは私を見た後に愛衣を見ると、鼻を鳴らした。
「ハッ、ンな顔しなくても何もしねェよ」
愛衣を見下ろすと、彼女はまだまだ警戒した……というよりは怯えた目でアクセラレータを見ていた。

無理もない。

度胸はそれなりにあると自負している私が体を強張らせたのだ。
ビビりの愛衣はアクセラレータのような人物とはまったく初対面でもあるし、元々人見知りもするのだから、怯えるのも当然だ。
私が愛衣をかばうように前に出ると、アクセラレータは興味をなくしたように視線を愛衣から逸らし、ガンドルフィーニ先生を見やった。
「俺ァよくわかんねェからテメェ等についていく。先導してくれ」
「ああ、わかった。高音君、佐倉君、行くぞ」
私達が歩き出すと、アクセラレータが後ろからついて来る。
彼に背後を任せるのは非常に落ちつかないのだが、彼の手前、そんな本音が言えるわけもない。
どこか気まずい雰囲気で沈黙したまま歩いていくと、突然アクセラレータが口を開いた。
「オイ、お前。高音とか言ったか」
「……高音・D・グッドマンですわ。なにか?」
いきなりお前とはなんだと思ったが、こちらは自己紹介をしていないのだ。
咎めるのもなんだか違うと思い、ムカッときた感情を心の奥に押し込めて答えた。
アクセラレータは怪訝な表情をして私を見る。
「寒ィのか?やけに震えてンじゃねェか」
そんなに震えていたのだろうか。
愛衣に目線で訪ねてみると、彼女はコクコク頷いていた。
震えていたのかどうかはともかく、寒いのは事実だ。

私は正直に頷いた。

すると、そんな私の頭に何かがバサリとかかった。
思わず手にとって見ると、それはアクセラレータが着ていた黒い大きめのコートだった。
「使え」
後ろを振り向く。
そこには昨日の格好……つまり、白を基調にした薄手の長袖に長ズボンをはいたアクセラレータの姿があった。
真っ白な彼の色のせいかもしれないが、どう見ても寒い格好だ。
私はアクセラレータにコートをつき返した。
「私だけ暖かくなって、あなたが寒くなるのはよくありません。お返しします」
「テメェが震えてるとコッチも寒くなンだよ。さっさと着ろ」
それを拒否し、彼はズボンの中に手を突っ込んだ。

どうあっても受け取らないつもりらしい。

基本白一色の彼の格好は……彼の言葉ではないが、見てるこっちが寒くなる格好だ。
親切心としてなのか自分の寒さを抑えるためなのかはわからないが……こういう申し出の無下に断るのもいけないと思う事にし、私はそれを着ることにした。
さっき断っておいてなんだが、暖かい。

受けとって良かった、と素直に思った。

「ありがとうございます」
「……帰るときには返せよ」
つまりは彼と別れるまでずっと着ていて良いといわれ、私は頷いた。
なんだか、合流してたった一分のやりとりで随分と彼の印象が変わった。

見た目は怖い。

髪を白に染めている生徒もいるにはいるが、目も赤い生粋のアルビノのせいでもあるだろう。
纏っている雰囲気も、三白眼も怖い要素だ。
だが、喋っている口調とは裏腹になんだかとても優しい物を感じることができた。
「……ンだよ」
何時の間にか彼を見ていたらしく、彼は不機嫌そうな声でジロリとこちらを見た。
普通ならビビるその視線も照れ隠しの裏返しかと思えば、あまり怖くなかった。
「いえ、なんでもありません」
第一印象って大事なのね、と思いながら、私はガンドルフィーニ先生の後についていった。






SIDE ガンドルフィーニ

意外だった。
彼に後ろを任せたのは、ここで攻撃して来る事があれば敵として排除するためだったのだが、まさか高音君にコートを着せると言う紳士行為をやってのけるとは。

悪いが、似合わない。

だが、彼の印象を大きく変えることができた。
もちろんまだ警戒は解いていない。
むしろ、あれがカモフラージュではないかという疑惑も沸いてきている。
仲間の信頼を得ている人物が裏切ると、精神的ダメージも与える事ができるからだ。
彼なら平然とやってのけるだろう……と思っていたのだが、どうもさっきの紳士行為が演技なのか心からの親切なのか判断がつかないのだ。
まだ会って一日、実際に彼を視界に収めているのは一時間にも満たないというのに、警戒し過ぎるのは浅はかだったか。
まあ、それでも警戒を怠る事はないが。
私はアクセラレータに向けていた警戒を多少外に向ける。
たいてい結界を破って入って来るのは関西呪術協会の陰陽師が扱う鬼達や、我々麻帆良の魔法使いに良い気持ちを持たない西洋魔術師が召喚した悪魔や邪精霊達だ。
これらはまだ良い。
探知ができるからだ。
だが、極稀に麻帆良の敷地内に妖怪が姿を現す事がある。
一昔前にはぬらりひょんも現れたとか。

学園長と見間違えたのでは―――げふんげふん。

過去最強の敷地内で確認された妖怪は鵺の一種。
複数の生物を融合させた姿を持っている強力な雷獣だ。
この前の世界樹の大発光の時期に現れたらしく、学園長も鎮圧に出たとか。
次が確か、巨大ながしゃどくろだったか。
それは私も参加していたのだが、何よりも戦闘後の隠蔽に苦労した。
何しろ森の木々など優に越す巨躯なのだ、葛葉先生も神鳴流の決戦奥義を使うし、神多羅木先生も雷の暴風を撃つしで大変だったのだ。
その翌日は瀬流彦君をつき合わせて飲んでしまった。
あまり強くないのに。

……愚痴はともかく。

そんな妖怪達を早期発見するのも、我々広域指導員の役割でもあるのだ。
今の所一般人に被害がでたことはないが、食われでもしたら大変なことになるからだ。

と、そんな事を思っていると携帯がなった。

とある古い日本のアニメの音楽を着メロにしている。
妻も私のその趣味はよくわからないと賛成の意を示してくれない。
北斗百○拳はカッコ良いと思うのだが。
娘も幼い頃は喜んでくれたのだが、今ではその趣味については距離を取られているのが実情だ。
明石教授はわかってくれるのだが……非常に寂しい。
電話に出ると、学園長の声がした。
『ガンドルフィーニ君かの?S12地区で陰陽師の襲撃が始まったそうじゃ。数は四十前後。すぐに鎮圧に向かってくれ』
「はい、わかりました」
ちなみに、学園長は宇宙戦艦ヤ○トを始めとしたSFアニメには目がなかったりする。

この数字と英語をあわせた地区指定も完全な趣味らしい。

私達としては昔は西の方とか東の方とかアバウトな指示だったから、案外役にたってはいるのだが。
「どうしたのですか?」
「陰陽師の襲撃だ。すぐに鎮圧に向かおう」
私の言葉に高音君と佐倉君の顔が引き締まった。
だが、どうにも後ろのアクセラレータの顔が締まらない。
というか、いつも通りだ。
緊張感のない……いや、彼の場合はいつも緊張しているのか?

どうにもそんな風には見えないのだが。

兎にも角にも、私達は鎮圧のために森の中へ向かった。
慣れている私達ならともかく、アクセラレータがついて来れるのかと思ったが、それは杞憂に終わった。
涼しい顔で木々を避けて余裕でついて来る彼を見て、運動能力はさほど悪くないのだと思った。
どう見てもまともに筋肉がついているとは思えないのだが。
これも風の力と言う奴なのだろうか。

全く出鱈目だ。

「もうじき目的地に到着する。準備はいいな?」
「「はい」」
「あァ」
真面目な声にダルげな声が混じる。
それに文句を言う前に、目の前に鬼の気配が出現した。

数は六。

私は正面にいる鬼に銃を撃った。
……弾き返したか。
やるな。
私が突っ込むと、後方から高音君の影の使い魔が飛来して来る。
彼女の技は大多数を相手にするとき、とても有効だ。
有効なのだが……。
今回は少し相性が悪かったようだ。
この鬼、質が良い。

「なんやこんなひょろいのは!?まともな奴はおらんのか!?」

そう言いながら棍棒を振りまわし、高音君の影達を紙のようにふっ飛ばしていく鬼達。
最近では影達でも鬼や悪魔達に十分通用していたから、それは彼女にとっての油断となった。
彼女は一旦動揺すると動揺が収まるまで戦闘力がかなり落ちるという欠点があるのだ。
何故かこの欠点は昔から変わらない。
慌てて『黒衣の夜想曲』を展開しようとするが、その前に高音君にクナイが飛来する。

―――避けきれない!?

背中に冷たい物が走った気がして、私は銃を向けて迎撃しようとするが、数は八つ。
多すぎる。
愛衣君が唱えていた魔法の射手を迎撃に出そうとするが、その前にせまっていたクナイを爆風が吹き飛ばした。

「締まらねェ戦いしてンじゃねェよ。出し惜しみってなァ格下相手にやるもンだぜ?」

アクセラレータだった。
私は目の前の鬼の棍棒を避け、頭に銃弾を叩きこんでいると、その横を白い疾風がつき抜けていく。

速い。

空間に溶けるように消えていく鬼の背後で、肉を打つ鈍い音とと鬼のうめき声が同時に聞こえた。
「まとめてぶっ飛ばしてやンよ」
その声に、私は高音君と佐倉君に後退命令を出す。
彼の言葉を証明するように、風が彼の周りに収束を始めたからだ。
普段なら後退命令を渋々ながら聞く二人もアクセラレータがいることで不吉な何かを感じたのか、そのまま後退する。

数秒後、ギュゴッ!!という空気が渦巻く音がして、目の前に巨大な竜巻が出現した。

その回転数は凄まじいものになりつつあるらしく、私達が後退していなければ確実に吸い込まれていた規模の物だ。
退避しきれなかった鬼達……いや、おそらくアクセラレータが全員巻きこむような位置に竜巻を出現させたのだろう、鬼達は全て巻きこまれ、体のあちこちを折れ曲がらせながら上空に吹き飛んだ。
地面に叩きつけられて戦闘不能になった鬼達はそれぞれ消えていく。
竜巻によって木などがへし折れた空間の中央に、アクセラレータは立っていた。
破壊され尽くした自然の闇の中、まるでその空間から拒絶されたかのように不自然な白。
あの竜巻の中央にいたはずなのに、砂一つついていない。
風の使い手だとしても異常過ぎる。
おそらく、神多羅木先生もこんな真似はできないだろう。
そう思っていると、彼は私達に向き直った。
「ボサっとしてンじゃねェ。次が来るぞ」
あんな事をしてのけた後に息一つ乱れず、さっきと同じ調子で彼は告げる。
こんなことも、彼にとっては造作もない事なのか。
私は彼の力に恐怖と共に頼もしさを感じながら、迫って来る数十の鬼の気配に向かって突撃した。






SIDE 佐倉愛衣

す、スゴイです……。
私が見た感じ、アクセラレータさんは全く呪文を詠唱していませんでした。
学園長から聞いたとおり、彼は無詠唱の強力な風の力を使うようです。
お姉様も多少は風の魔法を使うことができますけど、アクセラレータさんの使う風に比べればそよ風みたいなものです。
大きな竜巻を起こしたアクセラレータさんは突っ込んでいったガンドルフィーニ先生を援護するように小さな風の砲弾を撃っているようです。
彼が空気を押し出すように手を振るうと、その先にいる鬼達が怯むからです。
気弾に少し似ていますね。

……うう、魔力でも気でもない能力なんて目じゃ確認できません。

能力で見ればアクセラレータさんは神多羅木先生と同じような感じだと思います。
無詠唱の魔法の実力が段違いですけど。
あ、ちなみに私は後方から魔法の射手で援護しています。
私は肉弾戦なんてできないので、こうやって後方支援するのが一番なのです。
お姉様の最強の操影術、『黒衣の夜想曲』を起動したお姉様はたいてい敵の中に突っ込んで鬼達を吹き飛ばしていくので、これが相性は良い、と思っています。

本音を言うと、今でも怖いんですけど。

ええ、わかってますよ?
魔法世界じゃ本物のドラゴンが出たり、キメラドラゴンに滅ぼされた村なんていくつもあるってお姉様が言ってましたから、外に出る事になったら今とは比べ物にならないほど怖い目にあうことくらいは。
でも、敵の前で怯えてなんかいられません。
私は『黒衣の夜想曲』の鞭で追い込まれた鬼達をまとめて焼き尽くすために詠唱します。
「メイプル・ネイプル・アラモード!ものみな焼き尽くす浄化の炎、破壊の主にして再生の徴よ!」
私が使える中ではかなり強い方の魔法。
最強と言っても過言ではありません。 
雷の暴風?燃える天空?
あんなものと一緒にされては困ります!
「我が手に宿りて敵を食らえ!」
それはともかく、いきます!

「紅き焔!!」

ドカン!!と私の魔法が一箇所に集められた鬼達を包みます。
その爆風と爆炎に飲まれ、四体の鬼が消えました。
「いいわよ、愛衣!その調子!」
お姉様からもお褒めの言葉を戴きます。

ちょっと嬉しいです。

ちらっとガンドルフィーニ先生のほうを向いてみると、まあ、なんというか、地味な戦いでした。
派手さを求めるのは戦闘では間違いだと思うのですが……アクセラレータさんが撃ち出した風弾が直撃して怯んだ鬼の首をガンドルフィーニ先生が刎ね飛ばすのを延々と繰り返しています。
ガンドルフィーニ先生は身体能力もハンパないので、たまに瞬動も使います。
もちろん通常移動速度や攻撃速度もかなり速いです。
接近戦において最強はナイフ、というのを理論ではなく実戦でいくタイプの人ですよね。
速度と威力に特化されたナイフの攻撃は鋭く、速く、怯んだ敵の首を切り落とします。
アクセラレータさんの風弾は不可視でなんの反応もないので、向こうも避けられないようです。
風を肌で感じられる人はなんとか避けられるかもしれませんが、そんな超人は葛葉先生くらいで十分です。
そんなことを思っていると、アクセラレータさんが風弾と平行して近づいてきた敵を吹き飛ばしてました。
こう、掌を突き出した状態なのに横の敵を吹き飛ばしてるんです。
もしかして、あれも風弾?
掌を突き出してるのはもしかしてカモフラージュなんでしょうか?
私は魔法の射手で迫り来る鬼達を倒し、その二つの無詠唱魔法を平行して扱うアクセラレータさんの異常性に呆けていると、

「油断は禁物やで、嬢ちゃん」

「ハッ!?」
お姉様の鞭の渦を抜けてきた巨躯の鬼が私に向かって棍棒を振り上げていました。

―――いつもならこんな失敗なんてしないのに!

慌てて待機状態にしてあった魔法の射手を放ちますが、鬼は振り上げていた棍棒を横薙ぎに振り払って魔法の射手を撃ち落します。
振り払う衝撃波が私に襲いかかってきて、私は吹き飛ばされました。
「きゃあ!?」
「愛衣!?」
お姉様の声も、私の耳には入ってきませんでした。
衝撃波で頭を揺らされたようで、立てません。
呪文詠唱をしようにも時間がありません。
視界の端でお姉様が『黒衣の夜想曲』で鬼達の侵攻を食い止めながら、他の影達を出して私を援護しようとしてくれますが、私の前にいるこの鬼はどうやらリーダークラスの実力者のようで、見てもいないのに後ろを棍棒で振り薙いで吹き飛ばします。
「嬢ちゃん、こっちも命令があるんや、悪く思わんといてな」
振り薙いだ勢いを利用して、さっきよりも更に高く棍棒を振りかぶる鬼。
戦う者として、ここは最後まで敵を睨み付けて果てるのが普通なのかもしれませんが……私は目に涙を溜めて怯える事しかできませんでした。
と、銃声が聞こえました。
鬼がしゃがんでガンドルフィーニ先生の弾丸を避けます。
しかし、しゃがむ勢いのまま棍棒は振り下ろされ、私は棍棒に押し潰されて―――。


ゴォン!!


―――え?
「ったく、ガキのお守りは趣味じゃねェっての」
目を硬く閉じていた私の目の前にいたのは白い影。
アクセラレータさんでした。
葛葉先生の報告にあった通り、鬼の一撃を片手で受けとめて平然としています。
それどころか、鉄でできているはずの棍棒が砕け散っていました。
目の前にいる鬼は踏みこむアクセラレータさんが左腕を薙ぐ事で簡単に吹き飛ばされました。
「なんやとぉおおおぉぉぉ!?」
吹き飛ばされてドップラー効果を出しながら木に叩きつけられる鬼。
それを無視し、アクセラレータさんは砕けた棍棒の破片―――とは言っても大きい石くらいはある鉄塊を掴みます。
「どけェ、高音!!」

そのまま、投擲しました。

まるでそれは、砲弾のようでした。
爆発はしないから鉄鋼弾でしょうか。
しかし、ものすごい勢いで着弾したそれはソニックブームで鬼をまとめて三体くらい吹き飛ばしました。
あれは爆発したと思っても不思議ではないでしょう。
お姉様が避けていなければ同じように衝撃波に巻き込まれていましたけど。
そのトンデモない威力と彼の細い体がどうにも一致しなくて、というよりも事態の推移についていけなくて私が呆然としていると、アクセラレータさんに肩の辺りを蹴られました。
「えうっ!?」
結構痛かったです。
アクセラレータさんは私を見下ろしました。
私も思わずアクセラレータさんを見上げます。
思えば、アクセラレータさんをまともに正面から見たのはこれが初めてでした。
月明かりが色素が抜けたかのような不健康な白髪を輝く銀髪のように照らしています。
いつもは怖いその顔も、今ではどこか優しげに見えました。

カッコいい、と思ってしまいました。

ときめく私の心を無視し、アクセラレータさんは言い放ちます。
「手間かけさせんじゃねェよ。立て。腰が抜けて立てねェのか?」
お姉様が取り逃した鬼を爆風で吹き飛ばしながら、アクセラレータさんは挑発するような言い方で言いました。
ムカッと来ました。
私は立ちあがると、箒を構えます。
「それでいィんだよ」
アクセラレータさんはそう言い残すと、砂煙を残して掻き消えました。

―――瞬動術!?

お姉様を先頭にして、アクセラレータさんはお姉様が取り逃した敵を滅茶苦茶な速度で叩き潰しにかかりました。
私は武術をやってないからわかりませんけど、振るわれる拳はなんだか素人くさい感じがします。
でも、まるで隕石にも匹敵するかのような威力を持っています。
地面を踏みしめるたびに砂煙が上がり、次の瞬間には鬼の懐で拳を突き出し、続けてくるりとその場で回転して踵落としを決めます。
肩の辺りに直撃した踵落としは、鬼の足元に放射状のヒビを入れるくらいの威力でした。

さっきの後衛としての仕事ぶりはどこにいったのでしょう?

その身のこなしや速度は神鳴流剣士の葛葉先生と比べても遜色ないものです。
私は目で追うこともできませんでした。
ガンドルフィーニ先生やお姉様は私と同じように驚愕した面持ちでアクセラレータさんを見ていましたが、思い出したかのように鬼達へ攻撃を開始します。
私も負けてはいられません。
前衛の三人を援護するために、私は魔力を漲らせました。
「……メイプル・ネイプル・アラモード!!」






SIDE 一方通行

一言言わせてもらおう。


俺TUEEEEEEE!!


踏みこみんで殴り飛ばして蹴り降ろすだけでここまでの威力が出るのかよ一方通行!?
古菲のトンデモ身体能力と比べても遜色ない。
もちろん、俺は意識的にベクトル操作をやっているわけではない。
演算とかそんなややこしいのは無意識的に俺のスーパーコンピュータ並みの頭脳がやってくれている。
原作じゃ演算式をちゃんと一方通行は認識していたようだが、俺は認識してもそんなんはわからない。
頭の中に数字の羅列がどんどんどんどん流れていくだけだ。
それよりも大切なのはイメージだ。

前に進む。

それをひたすら意識すると、一瞬で7メートルもの距離を詰める事ができた。

投げて、吹き飛ばす。

それをひたすら意識すると、鉄塊は隕石のような威力の砲弾と化した。
体内電流を加速させ、俺の認知速度を上げる。
筋肉に指令を伝達させる速度を向上させるのだ。
後は殴る、蹴る、殴るの繰り返し。
もちろん反射はできるので、攻撃されても全くの無傷。
自分でも思うが、チート過ぎるだろ。
空間を何とかされる魔法(例えば空間断絶魔法とか空間消滅魔法とか万華鏡写○眼とか)を使われると反射は役にたたないが、鬼達相手ではなんともない。

物理系の攻撃には無敵だ。

よくわからんのがタカミチの居合拳とか雷の暴風や闇の吹雪に代表される魔法だが……炎を跳ね返せるんだから大丈夫だよな?
そう思いながら俺は拳を鬼に向けて振り下ろす。
どうやらこれが最後だったらしく、『ぬかったわぁあああ!!』と消えていく鬼に駄目押しの蹴りを加えて閉めとなった。
俺達は辺りを警戒するが、鬼の大部隊はこれ以上こないようで、ホッと一息つけるようだった。
「オイ、これで終わりか?」
「そうみたいだ。……それにしても、君は肉弾戦も強いんだな。葛葉先生や高畑先生と真正面からやりあえるんじゃないか?」
「さァな」
つまらなそうに俺は言う。
どうも、徐々に口調や対応が一方通行に似てきている気がする。
それでいて行動は俺の意志だ。
だからどうにもツンデレっぽい口調が抜けないのだ。
体に思考が釣られているのだろう。
残虐性のない一方通行か……。

……都合良過ぎね?

「あ、あの……」
「あァ?」
そう思っていると、どこかオドオドした様子の口調で話しかけて来る者がいた。
佐倉愛衣である。
「さっきは、その、危ない所を助けていただいてありがとうございました」
そういえばあまりにも見てられなかったから助けたんだったか。
ヤバい、更に思考が一方通行よりになってきている。

言い訳っぽい感じになってるし、これは完全にツンデレの方向だ。

「あァー、別に気にしなくていい。危ねェ目にあってる味方を助けるのは当然だろ?こっちの頭数減らされりゃァ困ンのは俺だしよォ……だからそンなキラキラした目でコッチ見ンじゃねェ!テメェさっきまでの目つきとかはどォしたンだ!?」
「やはり、こう言う場合は謙虚に言うのがヒーローって奴なんですね!あ、でもアクセラレータさんはどっちかって言うとダークヒーローって感じですよね?色は白ですけど」
「人の話無視すンじゃねェ!何でそンなポジティブに考えられンだよ!?っつーか俺の言葉のどこをどう解釈したらヒーローって結末に辿りつくンだかキチンと説明しろ!!」
「こう、危機に陥っている所を颯爽と助けに来るなんてもうホントヒーローじゃないですか!私そんなヒーローに憧れてたんです!ホントにカッコよかったですよ!私も一生に一度くらいあんな登場の仕方をやってみたいです!」
「高音ェえええええええッ!!この暴走してやがるクソガキをどうにかしろ!!手におえねェ!!」
「い、いえ、私もこんな愛衣は初めて見るので……頑張ってください」
「ガンドルフィーニ、テメェ教師だろ!?生徒くらい制御して見せろ!!」
「Good luck!」
「流暢な英語とクソ爽やかな笑顔で親指立てて喋ってンじゃねェええええええええええッ!!」
キラキラした『そんけーします!』みたいな純真な少女の笑顔と生暖かい二つの視線に挟まれて、俺は生きた心地がしなかった。
この無限地獄から開放されたのは、俺の叫び声を聞いたタカミチが様子を見に来る十分後の事だった。
ちなみに俺は知らないが、この騒ぎの件で俺の警戒度がかなり下がったらしい。
……不名誉な事この上ないが。






おまけ
俺は疲れた体を癒すために自室のバスルームに入ってシャワーを浴びようとした。
キュッ、と蛇口を捻ってシャワーを浴びようとした瞬間、反射で全て跳ね返されてちょっと鬱になった。
反射を切り忘れたのである。
ビシャビシャになった壁を雑巾で拭く一方通行。
シュールな光景にも程があった。






~あとがき~

いつも感想をくださる方、本当にありがとうございます。
深夜まで書いてて結局投稿できなかった第5話をお届けします。
一般人憑依一方通行が初めて鬼と遭遇した時以来の戦闘シーンですが、いかがでしたか?
満足してもらえると嬉しいです。
次の更新は早ければ夜、遅ければ明日になりそうです。
明日の朝はちょっと早いので。
次回の予告をしますと、待ちに待ったあの方が出てきます。
あの方をフルボッコしてしまおうか否か……悩みます。


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