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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第46話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/06 16:48
SIDE 桜咲刹那

アクセラレータさんが私たちを襲撃してきた魔法先生たちを倒し、立ち去って行ったすぐ後に他の魔法先生が来て、倒された彼らを運び去っていった。
魔法先生は『この事は内密に。質問なら学園長へ』ということを言っていたため、おそらくは味方の裏切りか、何らかの特殊な事情があるのだろうと思う。
きな臭い、と思うと同時に、これがミサカさんの言っていたアクセラレータさんが裏でうんぬんかんぬんという奴だろう。
アクセラレータさんが何かヘマをやらかしたのか、それとも何らかの不具合が生じたのか。
ミサカさんの言いぶりだと、アクセラレータさんが何か関係しているとしか思えない。
そう疑問に思っていたが、暫くして鬼たちとの戦闘が終了したことがトランシーバーから伝わってきて、私は一旦思考を止めて、その場に腰を下ろすことにした。

流石に今回は疲れたからだ。

襲ってきた鬼の数は数えられないし、斬った数も数えられない。
これだけの数を迎撃できて、しかも軽傷でいられるのもミサカさんのおかげだと思う。
そちらの方を見ると、彼女も一息をついて、私と同じように腰をおろしていた。
ヘルメットも脱いで、膝に置いて抱えている。
彼女の援護がなかったら危なかった所もあったし、私も余裕があれば援護をしていた。
そういう戦闘が気楽だったということもあるだろう。
お互いの事を気にしなければならないが、それだけ危険に対しての安心感がある。
一人で戦うよりはよっぽど戦いやすかった。
修学旅行に行くことを考えると、この連携があればどんな敵が来ても倒せそうな自信がある。
いや、私個人の事情にミサカさんを巻き込むのは不本意だが……どうしても助けが必要なら、頼めるのはミサカさんくらいだろう。
ネギ先生も魔法使いだが、現在のミサカさんよりも強いとは思えない。
私も実際にネギ先生の実力を見たわけではないが、魔法制御力が拙いことや、判断力、近接戦闘力なども考えると確実にミサカさんの実力はネギ先生より上だろう。
ネギ先生はどうやら典型的な魔法使いらしいし、瞬動などを用いて高速で接近してくる私やミサカさんのような接近戦を得意とする者には弱いからだ。
それに、頼れるかどうかと考えると、やはり年下のネギ先生よりもミサカさんの方が頼りになる。

考えるまでもないことだ。

ミサカさんを見ながらそう思っていると、ミサカさんがこちらの視線に気づいたのだろう、不思議そうにこちらを見返してくる。
「どうしたのですか、とミサカは尋ねます」
「いえ、ミサカさんと組むのは悪くないな、と思ったんです」
ミサカさんはその言葉に僅かに驚いたのか、瞬きを数回行う。
やがてその言葉を認識したのか、無表情が少しだけ柔らかくなった。
「ミサカも一人でやるよりは楽でしたし、またこういうことがあれば一緒に戦いたいと思います、とミサカは感想を述べました」
その言葉が照れ臭いのか、ミサカさんは私から視線をそらしていた。
それがその場凌ぎの言葉ではなく、本心から言っているのだとわかっているから、私も嬉しくなる。
共に戦える友人がいるということは、なんと頼もしいものか。
いや、龍宮のことをないがしろにしているわけではない。
龍宮の事も頼りにしているのだが、ミサカさんとは違う立場なのだ。
どちらも冷静だが、龍宮は大人の雰囲気があって、ミサカさんはどこか子供っぽい。
その素直さとか、思っていることが意外とすぐに表情に出たりする所とかが。
それが親しみやすい要因なんだろうな、と私は思った。

そして、それが羨ましいとも思う。

素直に物事が言えたり、表情に出すことができる性格というのは羨ましいのだ。
私は言いたいことも押さえ込んで、表情も硬化させて生きてきたから。
それを見事に砕いたのが彼、というわけだが。
あの時の言葉を思い出す。
その考えは私にとってはあり得ない……というか、思いつかない考えだったのだ。
本質とか、付加要素とか。
一字一句とは言わないが、その台詞のほとんどを覚えているということは、私にとって衝撃的だったと言う事がわかる。
久しぶりにその言葉を思い出していると、ミサカさんが言った。
「ところで、いつまで休憩するつもりなのですか、とミサカは時間がおしているのではないかと焦ります」
「すみません、もうちょっと休ませてください」
先ほどトランシーバーから聞こえてきたのは、戦闘終了と共に集合の合図もあった。
それぞれの安否と被害状況の確認を行うためだ。
流石にこのまま流れ解散、というわけにはいかない。
いつもの防衛と違うのは人数が多いからだろう。
それだけ面倒くさいが、大多数の人間がいる社会で生きているのだからしょうがない。
本当なら大量の気を使ってしまって疲れた体を休めたいのだが、諦めるしかない。
だが、これだけ働いたんだ、ちょっとくらい休ませてくれてもいいだろう。
そう愚痴を言いながら、私は息を整えていく。
早かった動悸がおさまり、火照っていた身体もほどよく冷えていく。
同時に忘れたかった疲労が肩の上からのしかかってきて、このまま倒れて寝てしまいたい気分になる。
その脆弱な考えを思考の隅に押し込めながら、私は立ち上がった。
さっきの会話から、いつの間にか5分ほどが経過していた。
「もう大丈夫です、出発しましょう」
「―――あ、はい……とミサカは応じます」
ハッとした様子でミサカさんは顔を上げた。


寝ていたな、と思う。


私だって眠いが、彼女はただ待っていたのだ、睡魔に襲われて眠りそうになるのも仕方がないだろう。
目をこするミサカさんを目の端に捉えながら、私は集合場所に向かった。
地面と木を蹴ってすばやく移動する。
ミサカさんがついてきているか気にかけながら進むが、ミサカさんは特に問題なくついてくる。
戦闘中もそうだったが、その身のこなしは流石だ。
暫くして集合場所に到着すると、そこには魔法生徒のほとんどが集合していた。
それぞれ談笑をしている所を見ると、もう点呼は終わったのだろうか。
そう思っていると、魔法生徒だろう生真面目そうな男の人がこちらにやってきた。
「桜咲刹那と一方ミサカだな?」
少し棘がある言い方だと思いながら返事をしていると、集合が遅いと怒られてしまった。
時間厳守らしいが、消耗していたのだから少しは大目に見て欲しい。
治療術師に声をかけられ、怪我を治療してもらう。
ミサカさんは怪我が治療された体に驚いていたが、所謂魔法の力として納得したらしい。
超能力と魔法はやはり密接な関係じゃないのだろう。
さて、治療が終わるとすぐにミーティングが始まった。

そのミーティング内容は今回の戦いの報告だった。

私たちもうまく動けていたと思うが、やはり重傷者は出たらしく、鬼の攻撃をモロに食らってしまって骨を折った人がいるようだった。
折れたというよりは砕けたらしいが、その人以外は特に目立った被害はなく、去年に比べて負傷者は少なかったという。
だが、問題もあった。
前の方に実力者が集まりすぎたせいで、隠蔽鬼を使われて非常に撹乱されてしまったという事。
あれで指揮系統も混乱してしまい、一時的に魔法生徒の独断で戦い、動くことになった。
やはり均等に戦力は分け、それぞれ配置すべきだという意見が出た。
本来使うべきではなかった後方戦力さえ投入されたのだ、実力者もある程度後方にいて、戦況が危なくなってきたら適切な場所に向かうのが最良なのではないかと思う。
こちらも魔法生徒である以上、魔法先生ほど無茶ができないのが現状なのだが。

魔法生徒はもともとボランティアで関西呪術協会の襲撃に対して迎撃を行っているが、決して無茶はやらないという鉄則がある。

私や龍宮のように特殊な立場の人間は別だが、それでも死んだりすることのないように厳しく言われている。
魔法先生は既にそれが職業なので、死んでもそれは自己責任だが、魔法生徒の場合は自己責任と一言では切り捨てられない現状があるのだ。
若い人材が死んでもらっては学園長も困るのだろう。
話し合われた事はそれくらいで、ミーティングはそこで終了した。
解散になると、それぞれ体を伸ばしたり欠伸をしたりしながら生徒たちは辺りに散らばっていく。
ここに残って談笑する者もいるようだ。
私はこのようなミーティングに参加する事はあまり興味はなかったため苦痛だった。
凝った首を鳴らしていると、隣に龍宮がやってきた。
「疲れているな、刹那」
「ああ。そっちは元気そうだな」
「体力配分を考えるくらいには余裕があったんだ。どうも暴れまわる神鳴流剣士がいたらしくて、鬼たちはそっちに向かったらしい」
龍宮はくつくつと笑っていた。
やけに鬼たちが襲ってくると思えば、そう言う事だったのか。
それに、私が疲れているのはその後に魔法先生との戦いがあったからなのだが……言うわけにはいかない。
私が体力配分もできない未熟者と思われているらしいが、とりあえずはそれでいいことにする。

未熟者であることに変わりはないのだし。

龍宮はどうも追加報酬を学園長に直接もらいに行くらしく、帰りは遅れるとのことだった。
それに了解と答えると、龍宮は中等部校舎の方に向かっていった。
いつもよりも僅かに足がはずんでいる所を見ると、やはり追加報酬があるのは嬉しいのだろう。
身体の中にある疲れを吐きだすように、深呼吸をする。
私も帰って休もうと考えていると、ミサカさんが声をかけてきた。
「刹那さん、帰る方向も一緒ですし一緒に帰りませんか、とミサカはと具体的な理由も述べながら誘ってみます」
「いいですよ。私もゆっくり歩いて帰ろうと思ってましたし」
自然に応じながら、私はミサカさんと帰り道を一緒に帰ることにした。
今までそんな風に誘ってもらったことがないから、新鮮な気持ちだった。
ミサカさんとあたりさわりのない事を話しながら、このように帰り道を友達と呼べるような人と一緒に帰った事はなかったということを思い出す。

私はいつでも一人だった。

お嬢様の後ろについていき、密かに護衛し、寮に戻れば部屋に戻って夕凪の手入れをする。
そういう人間だった。
お嬢様はいつも神楽坂さんや図書館探検部の人たちと一緒に帰ったり、買い物をしたり、遊んだりしていた。
私がそんなことはしたことがなかったため、それが楽しいのかどうかは分からなかったが、実際に話したりしていると楽しいものだということがわかる。
しかし、その楽しみを削らなければお嬢様の護衛に支障が出てしまう。
私が麻帆良にやってきたのはお嬢様に対しての護衛だ。
遊んでいるわけにはいかない。
でも、せめてこの一時くらいは気持ちよく過ごしたいと思う。
こういうワガママを思うようになったのも最近からだ。
人間性とはこういうものなのか、と思いながら、話はアクセラレータさんと親しいという電気屋のオヤジの話から、今回の戦闘に話に戻る。
いや、どうしてそうなったのか覚えていないが、何故かそう言う路線になったのだ。
ミサカさんはブツブツとアクセラレータさんに対しての愚痴を言っている。
まるでその様子は悪酔いした酒飲みのようだった。
「だからアクセラレータはミサカもちゃんと戦えるという事を知って欲しいのです、とミサカはブツブツ不満を述べます。ただこうしろああしろと言われたことだけをやるのはもううんざりで、もっと自分の判断で動きたいのです、とミサカは更にブツブツ不満を述べます」
「アクセラレータさんにも何らかの考えがあったんじゃないんですか?」
「どうせ『お前にはまだ早い』とか『中学生が考えることじゃねェ』とか言って強引に誤魔化すに決まってます、とミサカは過去の経験に基づいた意見を述べます。むしろ中学生だからこそ、この時点で色々と学ばせた方が柔軟な思考を持つことができるのではないのですか、とミサカは教育的観点からも不満を述べます」


もしかしたらこの人は不満のはけ口が欲しかったんじゃないか、と思って苦笑いしてしまう。


さっきアクセラレータさんに何やら説明を求めていたし、色々と隠しているアクセラレータさんも悪いんじゃないかと思うが。
「あれですよ、きっと『直接的ではなく間接的に守った方がミサカも楽に生活できるんじゃねェか』とか考えてるに違いないです、とミサカはアクセラレータの思考を決めつけます」
その愚痴を聞いて、なんとなくだが、私とお嬢様の関係に似ているような気がした。
私はお嬢様を影からお守りしているが、もちろんそれは物理的な襲撃に対しての備えだ。
お嬢様には全くと言って良いほど戦闘力がない。
小さい鬼に対しても無抵抗でやられてしまうだろう。
裏で何か動いても、おそらく学園長がどうにかしてしまうだろうし、私はお嬢様を影から守っている。
対してアクセラレータさんとミサカさんの関係はほんの少しだけ違う。
それが直接的か、間接的なそれなのかどうかという違いだ。
私は直接的に行動に出てお嬢様を守るが、アクセラレータさんは立場とか、組織とか、そういうのからミサカさんを守っているように思える。
今回の襲撃事件だって、麻帆良の魔法先生が襲ってきたし、アクセラレータさんはそういう見えない危険からミサカさんを守っていたのではないだろうか。
直接的な危険であればミサカさんは対応してしまうだろうし。

でも、ミサカさんはそんな風に守られている事を不満に思っている。

ただ守られる存在じゃないと主張している。
お嬢様もそんな風に思うのだろうか。
そう思って、私はすぐさまそれを肯定する。
お嬢様はお優しい方だ、自分の影で誰かが傷ついているのを我慢できないのだ。
私が怪我を負うのはどうでもいいが、おそらくそれですらお嬢様は不満に思うだろう。
その場合、説明うんぬんを求められたとすると―――なんだか怖い。
やはり秘密にしている事は悪いことなのだから、怒られてしまうだろう。
いつかその時が来るんだろうと思うと憂鬱になる。
おそらくアクセラレータさんもそういう気分なんだろうと言う事がわかる。
これから大変なんだろうなあ、と暢気に思った。
しかし深く思うとなんだかものすごく自分の事に当てはまっている気がして、私はその事を考えないことにする。
ミサカさんの愚痴もおさまったので、私は少し前に気になっていたことについて尋ねていた。

「ミサカさん、そういえば先ほどのヘルメットはどうしたのですか?」

これについて尋ねたのには理由がある。
それはいつの間にかヘルメットが彼女の手からなくなっていたこともあるが、ヒヨコなどといったかわいい人形などを好むミサカさんが、このようなヘルメットを望んでつけることなんて考えられなかったからだ。
今までヒヨコのアクセサリーなどをつけていたミサカさんとその無骨なヘルメットは違和感が満載だった。

実戦だから、と言われればそれまでなのだが。

いや、もしかしたらアクセラレータさんのものじゃないのだろうか。
間接的にミサカさんを守ってきたアクセラレータさんのことだ、頭部に対してのダメージを軽減させるために用意したのかもしれない。
内部の構造などはわからないが、アクセラレータさんもかなり頭が良いらしいし、設計図とかを簡単に書いていそうだ。
ミサカさんは私の質問に、ああ、と呟いてポケットからカードのようなものをとりだした。


それには絵が描かれていた。


数字や読めない言語の他に、ミサカさんが描かれている。
麻帆良中等部の制服姿で立っていて、あのヘルメットを被って放電しているというカッコ良い姿である。
「これです、とミサカはカードを指し示します」
「え?」
ミサカさんはカードを指さしているが、だから何なのだろうか。
私が怪訝そうな顔をしているのを見て、ミサカさんも首をかしげる。
「仮契約カードですが、とミサカは刹那さんは知らないのですかと尋ねます」

パクティオーカード?

少し聞き覚えがあるような……龍宮がそんなことを言っていたような気がする。
よく覚えていない。
私がそれについて尋ねると、ミサカさんは私が知らないことが分かったのだろう、丁寧に説明してくれた。
まず、このパクティオーカードというのは超さんのトンデモ発明ではなく、魔法の品なのだそうだ。
パクティオーというのは、どうやら仮契約という意味らしい。
ものすごくジト目で見られたが、私は西洋魔法については素人どころかほとんど知らないのだ。
魔法に関わるもの全員がそういうことを知っていると思わないで欲しい。
内心で愚痴をもらしながら、私はカードの意味について教えてもらった後、これがどういうものなのかを説明してくれるよう頼んだ。
ミサカさんが言うには、西洋魔術師には魔法使いと従者という関係が存在するらしい。
魔法を扱う魔法使いには詠唱という隙がある。
魔法使いにも遅延魔法や無詠唱魔法とかそういうのがあるらしいが、その辺りは置いといて。
その詠唱中の魔法使いを守る存在が、従者という者らしい。
その説明からわかるように、従者は魔法使いを守るために存在しているのであり、その従者は魔法使いを守るための力を身につけなければならない。

そこで手に入るのがアーティファクトと呼ばれる魔道具だ。

それは従者の能力を向上させたり、足りない欠点を補うようなものが多い。
ミサカさんのアーティファクトはこのヘルメットだということは、索敵能力の向上だろうか。
欠点なのか長所の向上なのかはわからないが、強力なアイテムであることに変わりはない。
そういう強力なアイテムがあるのなら、いずれお嬢様と仮契約をすれば私も力の底上げになるから、知識をつけておくのは良いと考えた。
その方がお嬢様を守ることができるからだ。
いや、お嬢様に魔法バレするわけにはいかないから、永遠にそういう機会が訪れない方が良いのだが。

……まあ、希望だ、希望。

そのように自分を無理矢理に納得させながら、私は更に尋ねた。
「その仮契約のやり方を教えてくれませんか? 私には守る方がいます。それをするだけで力を得られるのなら、それほど有難い話はありません」
うっ、とミサカさんは何故かそれに引いた。
確かにちょっと仰々しかったかもしれないが、これは私の本心だ。
もっと柔らかい感じに聞けば良かったか、と若干後悔しながらミサカさんの返事を待っていると、突然ミサカさんは『あー』とか『うー』とか言い始めた。
なんだか少しその頬が赤くなっているのがわかる。
何か、言いづらい事なのだろうか。
ミサカさんの様子を怪訝そうに見つめていると、ミサカさんは衝撃的事実を呟いた。


「仮契約の方法はキスです、とミサカはボソボソと説明します」


キス?
キスというのは、あれだ。
「接吻、ということですか?」
それに短く頷くミサカさん。
同時に、私はなんと恥ずかしい事を真顔で聞いていたんだと羞恥心で真っ赤になる。
無自覚でエロいことを聞いてしまったような感覚だ……いや、そんな経験はないが、おそらくそう言う感じなのだろうと結論づける。
あわあわと慌ててしまい、私は頭を下げる。
「す、すみません……言いづらい事を聞いてしまって」
「いえ、いいんです、これははっきり言わなかったミサカが悪いのです、とミサカは謝罪します」
ミサカさんの方も真っ赤になっていて、やっぱり恥ずかしかったのだと思う。
それはそうだ。
誰だってそういうことを言うのは恥ずかし―――ん?
そこで私はとある疑問にたどり着く。
キスをしたという事は、必然的にその相手がいると言う事になる。

ミサカさんの相手。

まあ、当然ながら魔法使いだろう。
これは魔法使いと従者のための契約なんだし。
となると、ミサカさんは仮契約の相手を既に選んでいたという事か。
キスをするとなると、やっぱり彼氏なのだろうか。
心の奥で、どこかホッとする自分がいる。
アクセラレータさんは魔法使いじゃない。
魔法使いじゃないアクセラレータさんが従者を必要とするはずがない。
むしろあの人の場合、従者が邪魔になりそうな気がする。
周囲を丸ごと吹き飛ばしそうな彼の戦い方に助けはいらないだろう。
やっぱりミサカさんはあの人にとって妹でしかなかったんだ。
その事実に無自覚的に踊りそうになる心を、慌てて抑えつける。
そして、その事を考えないように、別の事を考える。

しかし、ミサカさんにそういう相手がいたのは驚きだ。

今までそういうことに鋭い早乙女さんに気づかれていなかったし、朝倉さんにも……いや、彼女はアクセラレータさん関連では手を出さないことにしたんだったか。
噂がまったく立っていないことには疑問があるが、まあ、その辺りはどうでもいいだろう。
それよりも、彼女の相手が気になる。
まさか先生方じゃないだろうから、魔法生徒の誰かという事になるだろう。
「でも、ミサカさんにも相手がいたんですね。そういう関係を持つ男性がいたとは驚きです」
私が言うと、ミサカさんは吹きだした。
頭を振りながら、慌てて手も振る。
「い、いえ、そもそもミサカは興味本位というかアーティファクトを見たくてしたというかそういうことでして別に刹那さんが思うような関係になっているわけではないのですとミサカは説明します!」
取り乱すミサカさんを見て、これは確実だ、と思う。
アクセラレータさんはこの事を知っているのだろうか。
少し疑問に思うが、あの人の事だ、きっと知ってて容認しているんだろう。
あのアクセラレータさんが容認している男性。
気になる。

ものすごーく、気になる。

「で、そのパクティオーのお相手というのは誰なんですか?」
「どうしてそういう話の方向に!? これは仮契約カードについての話ではなかったのですかとミサカは話を戻そうと画策します!!」
「この場合その説明口調は仇になりますね。考えてることが丸わかりですよ」
私はニヤニヤしながら尋ねていく。
自分にこんな一面があったとは驚きだが、やっぱり私も女なんだなあ、と実感する。
友人に彼氏がいると言う事でここまでわくわくするとは。
でも、わくわくするんだからしょうがない。
しょうがないんだ。
そう自分に言い訳しながらミサカさんを追いつめて行くと、ミサカさんはため息をついて、もう一度ため息をついた。
よっぽど言いたくないらしい。
それはそうだろうが、やっぱり聞きたい。
私はそのミサカさんの言葉を心待ちにしていたが、その次に聞いた言葉に耳を疑う事になった。




「仮契約したのはアクセラレータとです、とミサカは言います」




私の思考が停止した。
その言葉が耳に入り、脳の中をぐるぐる回ってでていくのがわかる。
数秒、間が開いた。
手が震えた。
その手をミサカさんに見られないように後ろに回しながら、私は聞き間違いであってほしいと祈りながら、もう一度尋ね返す。
「あの……仮契約したのは、アクセラレータさん、なんですか?」
「はい、とミサカは肯定します」
消え入りそうな声だったが、私にははっきりと聞こえた。
次の瞬間、私は今までの気分が一気に低下し、世界が壊れるような音を聞いた気がした。
動悸が聞こえる。
不整脈になっている。
それを自覚することなく、私は一歩だけ後ろに下がった。

無意識だ。

体力がごっそりと虚空に吸い込まれて消えていく。
笑いそうになる足を無理矢理に地面に押しつけた。
その事実を否定したくなるが故に、私は質問をした。
「あ、アクセラレータさんは魔法使いじゃなかったはずです。どうして仮契約ができたのですか?」
「……もともと、仮契約というのは仮契約を行う魔法陣と、仮契約を行う二人の人間がいれば可能なのです、とミサカは説明します。魔法使いでなくてもその二つの要素があればできることです、とミサカは追加説明をしました」
ミサカさんは恥ずかしいのか、私の方を見ない。
それで良かった。
今の私の顔を見られたくなかったからだ。
魔法使いでなくてもできる。
一般人でもできる。
魔法陣と人間二人がいればできる。


『超能力者』同士でも、できる。


その事実は私の心を真っ向から押し潰した。
僅かな希望と悪あがきが潰え、内から溢れてくる莫大な感情が私の思考を支配する。
鼓動が煩い。
むしろ止まれ、と命令したくなるくらい、私は思考の余裕がなかった。
ちょうど寮が見えていたことが幸いだった。
別れを告げることができる。
この顔を、見られなくて済む。
「仮契約についての説明、ありがとうございます。それじゃあ、私はこれで。おやすみなさい」
「え? はい、おやすみなさい、とミサカは挨拶を返します」
ミサカさんは私の唐突な挨拶に戸惑ったように返事をしていたが、その程度の違和感なら私としては行幸だ。
早歩きにならない程度に歩き、門をくぐる。
階段を上り、誰にも出会わなかったことに感謝しながら部屋の鍵を開けた。
暗かった。
そのまま、電灯も点けずに私は靴を脱いで歩みを進める。
龍宮が帰っていないことにホッとする余裕もなかった。
夕凪が床に落ちる小さな音と、私がベッドに倒れる大きな音が耳に届く。
私の心の中には、さまざまな声が響いてきていた。



ずるい。



私は知らなかった、そんなこと。
どんなこと?
言いたくない。
でもそれを知っていれば、ミサカさんに先にとられはしなかったのに。

どうして。

隠さなくても良かったのに。
私でも、良かったのに。
知っていれば、ミサカさんに先にとられはしなかったのに。

おかしいと思ってた。

ミサカさんとアクセラレータさんの空気は自然だもの。
いつしかそれが自然になっていた。
私は聞かなかっただけだ。
頼っていただけだ。

ミサカさんは聞いたんだ。

ずるい。
私にはそんなことはできない。
勇気がないから。
うるさい。
そんなもの、元から私になんてない。

心が軋んだ。

つらい時、思いだしていた彼の言葉がガラスのように容易く砕け散る。
背景に、ミサカさんが見える。
猛烈な感情が沸き上がってきた。
妬ましい。
ずるい。
どうして。
憎い。
一緒にいたいのに。
できないのに、私は。
あなただけ。
私だって。


私だって、あなたと同じ境遇で、あなたと同じ環境で、あなたと同じ生活をしていたら。


できるんだ。
私だって、できるんだ。
なのに、現実は私の思うように動いてくれない。
決定された事実は過去に遡らなければ変えることはできない。
ミサカさんは卑怯だ。
私の見えない所でアクセラレータさんに甘えることができて。
何が自分で行動したい、だ。
拳に力が入って震える。
本音が口から洩れそうになった。


それがどれだけ私にとって羨ましい状況であるかも知らないで、と。


愚痴を聞いていて共感もなにもできなかったのは、ミサカさんとお嬢様の境遇が似ていたからじゃない。
その状況に嫉妬してたんだ。
アクセラレータさんが大切にしてくれている。
その事実に。
私はお嬢様の護衛がある私には満足に時間が取れないのに。
私の中にある別の感情が溢れだす。
一日が48時間であれば良いのに。
私だって甘えたい。
頼りにしたい。
寄り添いたい。
あの時の手。
その暖かさを思いだす。
欲しい。
私から溢れたそれは、もしかしたらそれは欲なのかもしれない。
抑えつけられていた反動?
我慢していたから?

どうでもいい。

震える手を、もう一度握る。
枕に叩きつけ、顔を押し付ける。
そうでもしなければ隣人に気づかれそうだったから。
壊れそうだ。
考えが結論になり、結論が考えになる。
ぐるぐると回る新事実は、私を崩壊させるためだけに暴れまわる。
過去の光景が浮かび上がる。
それらすべてが私を嘲笑っている気がする。
私はただ舞いあがっていただけだ。

なにがミサカさんの彼氏だ、恥ずかしい。

彼女には一番身近にその可能性が一番高い人がいたじゃないか。
魔法使いしかできないなんてミサカさんは一言も言っていなかった。
私が思いこんでいただけだ。
ずるい。
ずるい。
怒りと妬みと情けなさと虚しさが、同時に私に襲い掛かってくる。
しかし、多少は冷静になったせいか、私はようやく気づくことができた。
何を今更、と私は思った。
結局、私は。
あの喫茶店では家族みたいなとか抜かしていたが。
そんなタテマエなんて知らない。


私は、やっぱり。


やり場のないエネルギーを拳に蓄積させて握り潰し、そのまま外部に発散させずに溜めこんでいく。
心の苦しさはやり場のない怒りに変わり、虚しさに変わり、悲しみに変わる。
どうすればいい。
何もかもが薄っぺらく感じる。
感情の渦が私を巻き込んでいくのを感じる。
それに逆らわず、無抵抗に呑みこまれていきながら。
私は直感した。



ああ、これが失恋か。



今までに感じていた暖かさとか、気持ちよさとかが何故発生するのか。
それを自覚すると同時に、口から呻きが漏れる。
堪えきれずに吐きだしたそれを、枕で強引に受け止めさせる。
暗い部屋で、暗いナニカに呑みこまれる感覚に襲われた。
そのナニカは私の胸の中にある感情をつついてくる。

表に出してしまえ、と言ってくる。

枕を抱きしめた。
ぎゅっと、抱きしめる。
それでもやっぱり堪えられなくて、枕と頬の間から声が漏れた。
そうでもしないと、ナニカを忘れられそうになかったから。
その声に賛同してしまいそうで、怖い。
邪魔者がいるんなら、排除してしまえば良い。
暴力的な感情にとらわれそうになるが、私は何とか持ちこたえる。
それだけはできない。
そんなこと、できはしない。
できるはずがない。
頭の中でそれだけを繰り返しながら、


私は、泣いていた。







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