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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第45話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/06 16:45
SIDE ガンドルフィーニ

戦闘を終え、今、私はネギ君を背負って橋の上を歩いている。
背中は血で汚れていなかったし、女性に背負わせるわけにはいかなかったからだ。
神多羅木先生や葛葉先生は私の急な要請で引き抜かれたため、北にいる魔法先生たちを放置する状態になっていた。
もちろん、指揮が取れる人もいたのだが、やはりあの二人に聞くことが当然だと考えたのだろう。
彼らが指示を仰いできているらしく、そちらに対応することになった。
よって私はこの状況に置かれているわけだが、正直、もう少し後先考えて行動すれば良かったと後悔している。
確かに橋の方で鬼の反応があったという報告を受けた時、咄嗟に私自身が行くと言ってしまったが、この場合、損傷したアスファルトや橋の被害は私が始末書を書くことになるんだろうな、と思う。
この頃停電の準備で更に忙しくなっていて娘に会えていないのに……げんなりしてしまう。
北○や☆矢は娘に合わないらしいから、あの手この手を考えて一緒に触れ合う機会を探しているんだが、やっぱり効果は薄い。
どうも人間の特性上父親は娘に嫌われるのが運命らしいが、私はそれに屈したりしない。
そんな理論、私が覆してやろうではないか。
と思って燃えているのだが、妻からはため息をつかれる始末。
何やら『普通に遊んでくれれば良いのに……』とか言っていたが、私はこれが普通なんだが。

仮面ライダーごっこの何がおかしいんだろうか?

同年代の人に聞くと昔はやったというし、かく言う私も勧善懲悪は好みだったので、そういう類の物語のヒーローには憧れて、子供のころはよくその物語の主人公を真似したものだ。
しかし、娘はそれを拒否する。
それが私にはよくわからない。
幼い子供はヒーローに憧れるのが普通じゃないんだろうか。
今時の子供は精神的な成熟が早いというのは聞いているが、まさか小学校に入るか入らないかでもう仮面ライダーごっこを卒業してしまうとは。
それとも、私個人の主観が入るとダメなのだろうか。
今度、弐集院先生辺りに相談してみるとしよう。
彼も娘がいるし、娘にはよく懐かれているらしいし。
そう思うと、弐集院先生が娘と一緒に歩いているビジョンが生まれた。
……微笑ましいと思うと同時に、なんだかもの凄く胸の下辺りがムカムカしてきた。
親子が仲良くできないというのは、やはり人種の違いなのか?
それともあの体型か!?
顔か、まさか顔なのか!?
私も太る必要があるのか!?
流石にこんな職業だからメタボになるのはちょっと避けたいところなんだが。
ネギ君を背負いながら現状とは全く違う事を考えて現実逃避していると、後ろからネギ君の声がかかった。
「あ、あのー、ガンドルフィーニ先生。背負ってくれるのはありがたいんですけど、僕をどこに連れて行くんですか?」
「ああ、すまない。君も疲れているだろうから、とりあえず寮の方に送ろうと思ってね」
説明もせずに背負ってしまっていたことに、私は軽くため息をつく。
やはり戦闘後のせいか、少し思考が単純なものになりつつあったようだ。
私自身も浅い傷を負っているし、ここまで長い戦闘も久しぶりだったので疲れが出ているのか。
体力が現役時代に比べて落ちてるな。

……いや、私はまだまだ現役だ。

そう思いながら歩いていると、通路の横から高畑先生がやってきた。
「ガンドルフィーニ先生、ご苦労さまです」
戦闘はなかったのか、それとも戦闘があっても埃一つつかずに終えたのか、高畑先生のスーツに汚れは見えなかった。
西と南に大軍勢が現れたから、東の方には被害はなかったはずだし、おそらく何もせずに終わったんだと思う。
少々それが羨ましく思えてくる自分を律していると、ネギ君が声を上げた。
「タカミチ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「それはわかるけど、もうちょっと後にね。流石にネギ君もエヴァと戦った後じゃ頭も回らないだろう?」
ネギ君は焦った調子だったが、高畑先生はやんわりと言った。
要するに、疑問は後回しにしてとりあえず休め、という事だ。
そのネギ君の疑問というのに、私は罪悪感というか、後味が悪い感覚に支配される。
桜通りの吸血鬼事件から、我々はネギ君を騙し続けたのだ。
西を任されると言う大役になったため、私も学園長から事件の全貌を聞かされており、そのおかげで高畑先生の愚痴を聞くこともできていた。
ネギ君を成長させるためとはいえ、アクセラレータやミサカ君にも関わってしまった上に、何らかのトラブルも起こしてしまったと聞く。
それらのトラブルも、おそらく我々が介入すれば防げたものではないのかと思うと、今回の学園長のやり方には疑問が起こってくる。

あまりにも、強引だ。

おそらく学園長もサウザンドマスターの血をひくネギ君に期待しているんだろうが、それにしても10歳の子供に色々と課題を設けすぎているのではないだろうか。
今回のエヴァンジェリンとの戦いだって、下手をすればネギ君が殺されかける可能性だってあったのだ。
私はほんの少しだけ、意識をエヴァンジェリンの方に向ける。
学園長とエヴァンジェリンの関係が良好なのは、以前から知っていた。
度々学園長室に入って碁を打つ姿は目撃されているし、それはそれぞれ年長者なのだからそういう交流もアリだと考えていた。
しかし、エヴァンジェリンは桜通りの吸血鬼事件を引き起こし、一般生徒を襲った。
それだけでも過激派が動く理由としては十分なのに、学園長はそれを抑えつけた。
ここからが学園長らしくない対応の始まりだ。
次に起こった問題は、茶々丸君をネギ君が襲撃した事件。
それもネギ君がそれを引き起こした事を隠蔽するためなのか知らないが、異様にミサカ君の噂のみが広まった。
おそらく鉄骨という証拠が残っていたからだろうが、それにも学園長の介入があったのかは定かではない。
そんなことがバレたらアクセラレータに殺されかねないから、おそらくしてないと思うが。
しばらくしてその噂は収まったが、過激派は裏で行動を開始するようになった。
私もそれらの鎮圧に駆り出された事がある。
それにより過激派の緊張が高まり、その結果、この停電で事件は起こった。
いや、断定するのは正確ではない。
こちらも情報を得ていないからだ。
だが、ほぼ確定といっていいだろう。
アクセラレータが南にいたのは、おそらくミサカ君を助けにいったから。
ミサカ君がただの鬼に後れをとることはないと考えると、それはそれ以外の襲撃があったということ。
過激派という文字が浮き上がってくる。
結局ミサカ君は襲撃され、アクセラレータを触発する結果となってしまった。
ミサカ君のことが噂になった時も、アクセラレータはかなり苛立っていた。

実際に襲撃されると、もう黙ってはいないだろう。

学園長は色々と動いてきたと思われるが、流石にこうなるとどうしようもない。
二度目だ、許しはしないだろう。
殺すことはないだろうなと思いながら、私はため息をつく。
学園長とアクセラレータの仲は、一年ほど前まではそれほど悪くなかったはずなのに。
悪態をついていたこともあったが、どちらかと言えばそれは親愛の感情であり、侮蔑するそれではなかった。
ネギ君とミサカ君がやってきた頃から、どうも敵対する立場になってしまったようだというのが私の予想だ。
ネギ君を擁護する学園長と、それによって被害を受けているミサカ君を守ろうとするアクセラレータ。
どちらを応援すれば良いのか、私は悩んでしまう。
ネギ君には期待しているし、立派に成長して欲しい。
無論、メガロメセンブリアが目指す象徴的なそれではなく、実際に尊敬されるような人物になって欲しいと思う。
だが、かと言ってアクセラレータをないがしろにするわけにはいかない。
彼は私の友だからだ。
私ですらここまで悩むのだから、実際の高畑先生はつらかったと思う。
学園長やエヴァンジェリンと密接な関係がある彼なら事情を知っているかもしれないし、その上でネギ君に付き合わなければならないのだ。
友人に嘘をつくのは、つらい。
今度、暇な時にでも一緒に飲みに行こうかと思っていると、ネギ君が住んでいる寮についた。
と言っても女子寮なのだが。
ネギ君を下ろすと、彼は私に礼を言って、神楽坂君と一緒に戻っていった。
神楽坂君がやけに高畑先生に手を振っていたが……まあ、まさかな。
彼らが戻っていくと、真っ先に口を開いたのは高畑先生だった。
「ガンドルフィーニ先生。今回の橋の件ですが……」
「わかっています。敵の潜航部隊の察知に遅れた、私の失態です」
あそこで高畑先生と私が偶然合流するとは考えづらい。
やはり、私の失態に対しての状況説明を要求しに来たのか。
胃がキリキリ痛みそうになるのを精神的に捻じ伏せながら、私は言い訳を始める。

あの橋にやってきた鬼たちは、西の方からの部隊の分隊だ。

隠蔽鬼などの部隊をぶつけ、私たちの目を引きながら、他の部隊で水中から手頃な場所に上陸し、麻帆良へ突入する。
どうやらそういう手はずだったようで、私たちはまんまと引っ掛かってしまった。
鬼の軍勢は、どうやらかなり遠くから二手に分かれていたらしく、察知することができなかったのだ。
察知できたのはアクセラレータが援護にやってきて暇になったため、索敵をしていた時に偶然探知できたのだ。
あの偶然がなかったとすると、人間状態のエヴァンジェリンと茶々丸君があの数の鬼に立ち向かう事になっていた。
しかも、後方にいるネギ君を守りながら。
それはかなりキツい戦いになっただろうから、間に合って良かったと思う。
しかし、それを援護したからと言って私の失態が消えることはない。
私は淡々と情報説明を行っていた。
「被害は橋のアスファルトがほとんどです。始末は私がやりますから……」
「そういう問題じゃないんだよ、ガンドルフィーニ」
さきほどから不機嫌そうなエヴァンジェリンが言った。
相変わらず尊大な態度で腕を組み、私を見上げてくる。
「あの場に鬼が登場した時点で問題だ。あれでぼーや達に『戦い』というものを理解されてしまったら、これまでのものが無駄になってしまうからな」
「……どういうことだ、エヴァンジェリン?」
その言葉が理解できずに、私は疑問符を浮かべる。
戦いもなにも、ネギ君とエヴァンジェリンが行っていたのは戦いではないのだろうか。
少なくとも、私が到着する前にはるか前方に見えた莫大な魔力の放出……おそらく雷の暴風クラスの中級魔法だろうが、それのぶつかり合いは明らかに戦闘行為だった。
あれを戦いといわないのであれば、何が戦いというのだろうか。
その疑問には、高畑先生が答えた。
「ガンドルフィーニ先生も御存知でしょうが、今回のエヴァ関連の騒動はネギ君を成長させるためと、戦闘に慣れさせること、つまり自信をつけることを目的としています。本気の戦いには生死をかけなければなりません。ゲームに例えると今回の戦いはイージーモードと言ったところでしょう。なにせ、殺しにかかっていないんですからね」
「貴様ら魔法先生が惜しげもなく魔法を使い、鬼を吹き飛ばしていた。鬼も本気の殺気を放って攻撃している。そんな戦場と、私とぼーやの戦いと同一に見れる存在がいたらここに連れてこい。私が懇切丁寧に視力検査をしてやるよ」
私は気づく。
ネギ君に自信をつけさせる戦いという事は、エヴァンジェリンも本気で戦っていないという事。

つまりは、お遊びだったという事か?

いや、流石に真祖の吸血鬼が戦えばネギ君はひとたまりもないから、エヴァンジェリンも加減をするとは思っていたが、つまりはそういうことか。
そのお遊びに、真剣勝負が介入してしまった。
私たちと、鬼の戦闘だ。
もう慣れてしまった私には戦場の雰囲気には何の違和感もなかったが、おそらくそれらを見ていたネギ君や神楽坂君は戦いとはどういうものかということをその目に焼き付けたはずだ。
エヴァンジェリンとの戦いをお遊びと思われてしまってはまずい。
ネギ君はずっと真剣にやってきたのだ、それをエヴァンジェリンが遊んでいた事を知れば、必ずショックを受けるだろう。
そのエヴァンジェリンは、ため息をつきつつ頭を掻いた。
「今回のジジイの策は少々杜撰すぎた、ということか。関西呪術協会がこれほどの大戦力を送り込んでくるということを視野に入れてなかったのか?」
「危険な行動を起こしそうだった過激派を押し込めてたんだよ。そのせいで防衛に出る予定だった魔法先生の数はかなり減ったし、魔法生徒の数も減ってる。万全な戦力で戦えたのなら、その状況にも対応できていたはずだ」
私も過激派を拘束していたので、その気持ちはわかる。

この戦いは、そのせいで少数で挑まなければならない戦いだった。

関西呪術協会という敵を前にして内輪揉めなど、組織として致命的だと思うが、そうならざるを得なかった状況になってしまったのだ。
過激派は穏健派と肩を並べるほどの大派閥だ。
確固たる主張を持つ者や、物事を杓子定規にしか考えられない連中が多い。
穏健派に比べれば数は少ないが、それでも多い人数が所属していることに変わりはない。
それだけの人数が所属しているという事は、それだけの人数を減らさなければなかったという事だ。
アクセラレータやミサカ君に、万が一にも被害が出ることがないように。
今後の事を考えると、学園長はそれによりアクセラレータを刺激することが最も避けたい事態だったのだろう。
しかし、実際に起こってしまった。
人手不足は過激派が沈黙したせいで深刻なものになっていたし、彼らの監視についても限界がある。
弐集院先生の電子精霊も万能ではないし、学園長もそうだ。
人数不足である欠点をすり抜けて、アクセラレータ陣営に被害が及んでしまった。
学園長は頭を抱えていることだろう。
「まあ、何にしろ、もうこれは終わったことだ。ジジイも頭を捻って良い考えを出せれば良いんだがな」
「あのアクセラレータだよ? もう二度目だし、そろそろ限界だと思うな。ミサカ君が疑われたときだって相当イライラしてたし、舌先で丸めこむのはもう無理だ」
「となると、謝罪か? ジジイが頭を下げた所で奴が引き下がるとは思えん。やはり何らかの条件を出してくるだろうな」
エヴァンジェリンはそれこそが当然だと言わんばかりに告げた。
アクセラレータが求めるものは、おそらくミサカ君の安全だろう。
戦いに出る以上安全は保障できないだろうが、戦闘での安全とは意味が違う。
背中を刺すような連中が気になってしょうがないのだろう。
彼は自分の安全は守れるだろうが、ミサカ君に関しては手が届かない所にもいるからだ。
それと、もうひとつ考えられることとしては金銭か。
彼も冬はカロリー消費が多くてとぶつぶつ文句を言っていたし、その辺りも要求するだろう。
私は学園長室の方角を向いた。
戦闘からしばらく経ったし、もうアクセラレータは学園長室にいることだろう。
アクセラレータ、流石に無茶な要求はするなよ。
学園長ももうお歳なんだから、と私は口の中で呟いた。






SIDE 一方通行

俺は、静かに扉を開けた。
別に今更怒ってもしょうがない。
蹴り開けようとも、静かに開けようとも同じことだ。
エネルギー消費を考えると、静かに開けた方が良い。
ただそれだけだ。
平静にしろ。
扉が閉まると、俺は静かに歩みを進める。
歩くたびに床が軋む。
今まで気にしていなかったそれはやけに俺の耳に入ってきて、この部屋の静寂を知らせてくる。
俺の目の前にはジジイがいた。
俺はポケットに手を突っこんだまま、ジジイの前に立つ。
眉毛の奥に隠れた目を見つめた。
「今回の関西呪術協会の襲撃が予想以上の戦力だったってことは認める。麻帆良が人員不足ってことも聞いてる。だが、だからと言ってこっちに危害が加わったことに違いはねェ。ミサカも負傷をした。もう黙ってられねェぞ」
ジジイは少し間を置いた後、静かに頷いた。
以前にも向こうから手を出してきたら黙っていないと言った以上、俺がこうして抗議してくるのは想定していたはずだ。
確かに俺の方でも対処すると言ったが、それは実戦でのことだ。
俺が直接動けば過激派を刺激する事はわかっていた以上、管理はジジイ側に任せていたのだ。
以前の茶々丸襲撃事件は妥協したが、今回は妥協しない。
思い切り不満と要求をぶつけることにする。
俺が口を開こうとする前に、ジジイは口を開いた。
「その前に、こちらも弁解させてはくれんかのう?」
「弁解?」
そう言って、ジジイは説明を始めた。
それは今まで俺が踏み込んでいなかった、過激派についての情報だった。
何度も言うが、俺から直接つっかかるわけにもいかなかったし、俺は後手に回っての対応を余儀なくされていたから、そちらについての情報はなかったのである。

まず、過激派はミサカの情報が広まると、それを基に色々と考察を立て、その真偽を確かめるために俺やミサカと接触を図るという計画があったらしい。

その中には俺たちに危害を加える可能性のある過激な思考の者もいたため、俺を刺激しないように片っ端からそういう過激派を潰していったらしい。
ガンドルフィーニや葛葉、神多羅木も動員したようだ。
彼らについてはまた後日、ミサカと一緒に挨拶に行くことを決める。
過激派を排除する一方で、更にジジイは俺の自宅の周りの警備を強化し、過激派そのものに対しての監視も用意した。
どうやらよっぽど過激派に問題を起こされたくなかったらしい、配置状況も確認すると病気かと思うほど厳重だ。
俺も外出しがちだったし、視線に気づかなかったか……。
むしろミサカばかりに視線が行き過ぎていて、それに気づかなかったのだろう。
その点は反省することにする。
そこから停電時の話になるが、過激派の動向や見張りにも兵力を割いており、過激な思考を持つ連中とその仲間には今回の戦闘を控えてくれとの命令も出したらしい。
そのせいで麻帆良の戦闘人員が激減し、西にも俺が援護に行くような状態になった。
むしろ、過激派の比率が少ない魔法生徒の方が戦力的にマシだったようだ。
過激派の連中には麻帆良が敗北すればどうするんだ、せめて今くらい協力しろと言いたいが、向こうも不満を言う事すら抑えられていたのであれば、やはり行動で表現するしかなかったのだろうか。

ただあまりにもそのタイミングがまず過ぎたが。

そして過激派を抑えるつもりが抑える人数が不足していてすり抜けられ、結局は俺たちに被害が及ぶことになった。
麻帆良防衛か俺達に対しての保険か、そのどちらかはっきりせずに、どちらとも取ろうとするからこうなるんじゃないんだろうか。
どちらも欲しい気持ちはわかるが……。
そこまで語って、ジジイは一息ついた。
「ワシとしても君たちに迷惑をかけんようにワシの考えられる最善を尽くしたんじゃが、今回のミサカ君を襲撃した連中の主張によると、どうやらワシの対策が失敗だったようじゃった」
現在、俺が九割殺しにした連中は治療術師により治療されているが、未だに意識不明の者もいる。
俺のファンらしい女は精神錯乱状態にあるらしく、眠らせて営巣にブチ込んであるそうだ。
今回襲撃犯として活動した中では、刹那に気絶させられて軽傷ですんだ大男が幸運だったと言えるだろう。
刹那に気絶させられる程度で済んだんだし。


彼から事情聴取をした結果、彼らの主張は俺に対する警告。


ミサカの不穏な動き(と、過激派は認識している)や、これまでのアクセラレータの振る舞いからして俺たちは危険だと判断し、ただ学園長に従うだけではなくこうして反抗する者もいるのだということを主張したかったらしい。
何やら俺やミサカが麻帆良を潰すだとか、そんな事を言っているらしいが、俺自身にそういうつもりはない。
俺やミサカの戸籍はジジイが握っている。
それがなければ今の情報化社会では生き残る事はちょっと難しい。
裏の仕事に手を出せばやっていけるだろうが、俺はミサカにそういう道を歩んで欲しくはないと思っている。
普通に学校でバカやって、普通に卒業して、普通に就職して欲しいのだ。
生まれが生まれだから、せめてそういう当たり前の幸せくらいは与えてやろうと思うのだ。

……それを気に食わないと言い始めたんだから、そろそろアイツも思春期だろうか。

話は脱線したが、とりあえず俺は麻帆良を潰す気なんてない。
これまでの俺の行動からしてそれは明らかだと思うが……一応、行事に協力したり警備をしたりしているし、給金はきちんともらっているし。
今思えば、口調以外は立派な労働者だよな、俺。
やっぱり過剰な力を持っていたらそれだけで警戒されて危険扱いされてしまうのか。
まあ、そういう連中はそう言う考えだ、別に同調する気はない。
さて、彼らが俺たちを危険視して行動し始めたのは過剰な情報統制と圧力のせいだったという。
何をしようとしても雁字搦めになっている気分であり、何も把握できずにただ事態を見ていることができなくなったことが堪えられなくなり、行動に移すことになったという。
どうも学園長とエヴァ、俺が何か企んでいると踏んだらしい。
しかし、俺と直接接触を図ろうとする連中は取り押さえられたため、他から情報を得ることすらできなかった。
俺やエヴァを危険視する過激派の連中からすれば、停電時に何が起きるか不安で仕方がなかったのだろう。

つまり、ジジイの情報統制が裏目に出た、という事だ。

素直にミサカの事件の真相や、停電でのネギとエヴァの戦いに対しての詳しい事項を説明すればこんなことにはならなかった。
しかし、情報を公開する事はそれだけ情報が広まると言う事であり、ネギに伝わりやすくなる。
そうなればジジイのシナリオは破滅だ。
だからこそ情報を隠匿しつつ過激派を抑える必要があったわけだが、そんなもん不満が出て当然である。
自分のシナリオを重視した結果、結局ミサカは襲撃され、こういう事態になっている。
ジジイからしてもこうして上から抑えつけるのは苦肉の策だったんだろうが、ジジイの目的を考えると確かにそれが最善だ。
うまくいけば、全部うまくいくからだ。
今回はそれがうまくいかなかったのであり、こうしてことごとく裏目に出ているわけだが。
ジジイは説明をし終えると、深くため息をついた。
年長者のため息というのは文字通り年季が入っている。
俺なんかのそれとは深さが違った。
数拍置いて、ジジイは言った。


「今回はワシの対応が失敗じゃった。すまんかった」


そう言って、ジジイは頭を下げた。
俺はジジイが頭を上げるまで待つ。
静寂が訪れた。
肯定もせずに、否定もしない。
とりあえず次の言葉を待つ。
行動で表すのは難しくない。
謝罪の言葉を出すのも、そう難しいことではない。
だが、俺が聞きたいのはそういうことじゃない。
ジジイが頭を上げると、俺は話を切り出した。
「ジジイの現状というのはわかった。で、今後はどォするンだ?」
俺が今聞きたいのは、そこだ。
失敗した、ならこれからはどうするんだ、ということだ。
起きてしまった事をくよくよしていてもしょうがない。
今起きていることに対応していなければならないだろう。
そんなこと、ジジイも承知だと思うが。
「流石に一部とはいえ今回で俺に完膚なきまでに叩き潰された以上、過激派も実力行使をしてくる可能性は薄くなると思うが……正直、停電時に襲撃して麻帆良の戦力の連携を乱すなンざまともな思考じゃねェ。これからもこういうまともじゃねェことを乱発してくるンだったら迷惑だ。テメェらにとっても、俺たちにとっても」
「……うむ」
ジジイは頷いた。
暫くの間が開く。
ピリッとしたそれから、緩慢な沈黙の間に切り替わっていく。
ジジイは髭を撫で、落ちついた様子で言った。
「今後のことじゃが、それはワシも考えとる。まず、今回ミサカ君に襲撃をかけた3名と、君に襲撃をかけた1名に関しては麻帆良を追放する。君やエヴァによって麻帆良が乱れると言っておったらしいが、彼らは結果的に麻帆良の戦力の連携を乱す結果になった。彼らの妨害が関西呪術協会に利する以上、もう麻帆良には置いておけん。これは過激派に対しての牽制とする」
ここで何らかの処罰をして麻帆良に置いておくとか言い出せば抗議するつもりだったが、そのつもりはないようだ。
俺も良い気はしないし、ミサカも落ちつかないだろう。
「次に、桜通りの吸血鬼事件に対する真相を公表する。過激派がこれ以上武力に訴える行動を止めるためには情報を渡すしかないじゃろう」
俺はそれに驚いた。
それはジジイができる限り回避したいことのはずだ。
ジジイは決して言わないと思っていたし、俺はそれを要求するつもりだったので、ジジイがそれを言い出したのは意外だった。
「いいのかよ。テメェのシナリオは崩壊すンぞ」
「もう崩壊したも同然じゃよ」
疲れた口調で、ジジイは呟いた。
どういうことか聞いた所、橋の所でエヴァとネギは戦っていたらしいが、そこに鬼が襲撃をしたという。
そこで刀子、神多羅木、ガンドルフィーニが大立ち回りをしてしまったらしい。
それがどうしてシナリオの崩壊に繋がるのか考える。
5秒ほど考えて、ようやく思いついた。

鬼が襲撃してきたという事は、本物の殺気やそういうものがぶつかり合う戦場になるということ。

あの戦闘を起こした目的はネギに経験を積ませるためと、戦闘に慣れさせるためだった。
戦闘に慣れさせるためという目的は成功したかもしれないが、経験を積ませたかといったら微妙である。
タカミチからも聞いたが、ネギはどうやらジジイに疑惑を持っているらしいし、それらのことも追及されたらアウトだろう。
エヴァとの戦いが茶番だと知れば、ネギの反応がどうなるか……怒るか、あるいは脱力するか。
どちらにしても、ジジイに対しての信頼が激減するには違いない。
タカミチもつらいだろうな、と思う。
「修正も入れてきたんじゃが、流石にもう隠しきれんじゃろうて。君に何らかの相談をしたという事は、おそらくシナリオにも気づき始めてきている頃だと思うんじゃよ。ワシに対する信用がなくなるじゃろうが、それくらいで現状が綺麗に片付くんならそれでいい。責任はワシがとる」
ジジイは疲れた表情で言う。
なんだか以前よりもやつれて見えたのは、やはり失敗が重なったからだろう。
「それと、君に対する報酬じゃよ、アクセラレータ。今回のはたらきは凄まじいものじゃった。よって君の特別報酬と、給料の値上げを行う。後日、振りこんでおくぞい」

それは嬉しい。

この頃ミサカが晩飯を作るせいで食べる量が減ってきて、食費が減ったんだよな。
少し金が浮いてきた所に給料が増量するのは嬉しい。
ちょっとした贅沢ができるだろう。
今日は西にいる鬼の軍勢のほとんどを潰したが、俺としては楽勝の部類だったのでボロい儲けである。
金の方に思考が行きそうになったが、俺はそれを戻すことにする。
その話題を最後に持ってきたことに人為的なものを感じたためだ。
俺を調子に乗らせて機嫌を良くするためだろうか。
確かに機嫌は良くなったが、追撃の手を緩めるつもりはない。
俺は『どうじゃ?』とどや顔をしてくるジジイを見た後、指を3つ立てた。
「まだ足りねェな。それだけだと過激派が再燃する可能性もある。この際だ、可能性はトコトン潰して置いた方が良いだろ」
「君の要求は?」
「まず、茶々丸襲撃事件のことだ。あれのせいでミサカは過激派の標的になっちまったンだ、ネギに対して攻撃うんぬんの曖昧な情報に対して、もっと明らかな情報を公開することを要求する。あァ、桜通りの吸血鬼事件に対しての説明に含まれてンならいいが、どォしても違和感があってな。その辺りの事は隠すように聞こえたンだ」
「それはネギ君と話をせんといかん。今すぐ決められる事じゃないぞ」
「なら後日でも良い。とにかく、修学旅行までにそれをはっきりさせろ。それと、桜通りの吸血鬼事件と茶々丸襲撃事件に対しての情報は電子情報とそれを印刷した用紙で保存しろ。これを曖昧に口頭で伝えるのは許さねェ。具体的な資料がなけりゃ、また曖昧な情報を間違って解釈して暴走する輩がでる危険性があるからな」
学園長の場合、それとかがありそうで困る。
それらについての説明を大勢の前で口頭で行うよりも、内部抗争になりかけている現状ではその争いの基を明確にさせる必要がある。
それは事件の当事者からの説明と、資料が必要だ。
無論、ネギを応援する連中は快く思わないだろうが、ネギ本人から説明があれば何も言えないだろう。
俺たちが何かしたとか言いそうだが、それこそ不毛だ。
俺たちが何かをしたという具体的な証拠はないし、その発言の根拠が乏しいからだ。
こちらに情報と当事者がいるんだ、反論なんざさせはしない。
俺は内心で呟き、続ける。
「それと、修学旅行の話だがな。どォも3-Aは京都に行くらしいじゃねェか。大丈夫なのか?」
「ミサカ君からの情報かの?」
「今日、決まったらしい。テメェがゴーサイン出すにしろ何にしろ、京都行きを許可できるのか? 関西呪術協会の総本山だろ?」
「それについては話は決まっておる。向こうの長とは度々話し合いをしておった。京都にはサウザンドマスターの使っていた家があることと、関西呪術協会の長が『紅き翼』に所属していた事は知っとるかの?」
「知らねェが、つまりそれはネギを釣る餌ってことか?」
「平たく言えばそう言う所じゃ。ネギ君には親書を持っていくという名目上、京都に入ってもらうことになる。ネギ君はナギの息子であることは関西呪術協会に知れ渡っとるし、向こうの長はサウザンドマスターの親友であったことで有名じゃ。西洋魔術師であるネギ君に親書を持たせれば、関東魔法協会と関西呪術協会の不和をなんとかしてくれる懸け橋になれるじゃろう。ネギ君にとっても、双方にとっても良いことばかりじゃて」
「……先にタカミチとかに親書を託せば良いンじゃねェか?」
「それだとネギ君が京都入りをすることができんじゃろう。魔法先生が入ってくることには難色を示すが、使者としてなら許容するのが向こうの姿勢じゃ。ネギ君が京都入りすることはできんし、3-Aにはハワイに行ってもらうことになるじゃろう。ネギ君もそれは悔しいじゃろうしの」
これだけ聞けば、うむ、なるほど、と頷きたくなるが、そうはいかない。


物事には必ず長所、短所がある。


ジジイは長所は述べても、短所は言っていない。
それを素早く考察し、俺は発言する。
「デメリットとしては、関西呪術協会の本拠地である以上、俺たちを襲ってきたような連中が向こうにも確実にいるってことだ。関西呪術協会はテメェの部下もまとめきれてねェ奴がトップなんだろ? テメェ等の内部でドンパチするのは構わねェが、こっちに襲撃をかけて、去年は重傷者まで出た。そンな連中がいるンだ、自分たちの陣地にわざわざ入ってくる所を狙わねェはずがねェだろ」
「それらについては向こうにもお願いしてあるが、君が信用せんのも無理はない、か。君が気にかけておるのはミサカ君かの?」
「それもあるが、3-A全体が心配だな。あのクラスが問題を起こさねェわけがねェ。問題を起こせば起こすほど隙が生まれる。どさくさに紛れて人質をとることなンぞ、向こうにとっては容易いことだろ。無論、向こうも一般人に手を出せばどンなことになるかはわかってンだろォから、手を出してくるとすればネギや神楽坂、後は刹那に近衛このかくらいだ。テメェの孫についてはまずいンじゃねェのか? 色々と立場が微妙だろ」
「このかはカンが鋭くてのう……3-Aで決まってしまったもんを強引に覆したら理由を聞いてくるに決まっとる。その時に安易な言い訳をすれば後々まで響いてくる。孫にうそつき呼ばわりされるのはつらいんじゃよ……」
俺は沈黙した。
実際、ミサカの言葉でほんの少し複雑な気持ちになった俺なら、ちょっとそれがわかる。
こっちも人の事を言えないのが現状であった。
「今回のエヴァとの戦いは修学旅行に対する備えでもある。本来なら時間をかけるつもりじゃったが、こう突貫作業になってしもうたのもそのためじゃ。戦闘経験もなく向こうに行って、そのままやられてしまったらこちらの過激派が爆発してしまう。そうなったら全面戦争は避けられん。いや、全面とは言わんが、小競り合いが確実に過熱するじゃろう」
「焦ってたのか。そうでなけりゃもう少しマシな計画を立てれたンじゃねェのか?」
「さての。終わったもんをウジウジ言うとってもしょうがないんじゃろ?」
「……違ェねェな」
俺はそれに同意をすると、踵を返す。
とりあえず言いたい事は言っ―――ああ、言っていなかった。
「それと、俺は3-Aの修学旅行に同行する」
「む? ミサカ君が心配か?」
「なンでもかンでもミサカに結びつけるンじゃねェ。間違っちゃいねェが、俺は3-A全体の事を考えてるンだ。これだけ関西呪術協会の攻撃が大規模化してきてンだ、向こうからの反抗勢力も相当デカいモンなンだろ? 誰か魔法先生をつけるにしろ有名どころのタカミチやガンドルフィーニは使えねェ。かと言ってエヴァは連れていけねェ。となると、龍宮や刹那、ネギが頼りになるわけだが……俺はそれでも安心はできねェンでな」
「一般人を襲撃する可能性がある、と言いたいのか?」
「鬼の軍勢の規模からして向こうも相当の数の人員が長って奴の制御から離れてるはずだ。俺は今さっきブチ切れた奴が変貌する様ってのを見てきたからな。人間、切れたら何するかわかンねェモンだ」
こめかみを人差し指でトントンと叩きながら、俺は言った。
積極的には関わらないが、保険として俺は存在した方が良いだろう。
どうせ、ミサカは関わるんだろうしな。
結局はミサカが心配なのだが、その辺りは言わないことにする。
「しかし、君も相当な有名人じゃろう。魔法先生でないにしろ、麻帆良最強戦力であることには違いないはずじゃが……関西呪術協会にも君の事は有名じゃぞい?」
「変装すンだよ」
即答した瞬間、ジジイは眉を寄せた。
首を捻る辺り、俺の言葉がかなり意外だったらしい。
「君が変装してものう。どの道目立つ気がするのはワシの気のせいか?」
「気のせいだ」
自信はないが、まあ、なんとかなるだろう。
ヅラ被って普段とは違うイメージの服を着れば、ぱっと見ではよくわからないだろうし。
「一応、その辺りの手配もしてくれねェか。そォだな、理由は『問題クラスである3-Aには新田だけではなくアクセラレータもつけるべきだ』とかそういう感じの理由をつけてくれ。俺も新田とは面識がある。連携は取れるはずだ」
「君と彼の仲は知らんが、また過激派が騒ぎそうじゃな。情報公開は早めにしておくぞ」
「その情報公開ってのも難しいな。関西呪術協会に知れたら抗議が来るだろォしな」
「気づかせんようにうまくやるしかないじゃろう」
ため息をつくジジイだが、どこかホッとしているようにも見える。
おそらく俺の雰囲気が沈静化しているからだろうが、別にこれはあの件とは関係ないしな。
「向こうの長とも交渉してみる。流石に無断で君を送り込むわけにはいかんでの」
「拒否された場合は、旅行費くらい出してくれンのか?」
「その辺りは君の懐と相談じゃのう」
フォフォと笑うジジイは、やはり相変わらずのバルタン笑いだった。
なんだか久しぶりに聞いた気がする。
やはり好きにはなれないが、長く付き合ってきたんだ、悪いものじゃない。
俺との関係上、やはり殺伐としたものになるのは否めないが、付き合っていく以上はできるだけ良い関係を築けるに越したことはない。
俺はそう思った後、学園長室から退室していった。
廊下を歩いていて、俺は急に足取りが重くなるのがわかる。
今から帰って、これから自分がやってきたことを全部ミサカに暴露しなければならないからだ。
自分がやってきたことに後悔はないし、間違ったことをしたつもりもない。
だから胸を張って言えば良いわけだが、何というか、話す相手が問題なのだ。
そのやってきたことというのがその本人を守ってきたことなのだから。
これはものすごく恥ずかしい。
顔が赤面してくるのがわかる。
体が異様にかゆくなる。


ああ、家に帰りたくない。


俺はできる限り歩幅を小さくし、歩く速度を減じさせるという姑息な手を使いながら、できるだけ現実から逃げようとした。
だが、逃げることなんて不可能だ。
結局、俺は処刑台に自ら歩いていることに変わりはない。
頭の中でザッと話す事をまとめながら、それを考えている自分が恥ずかしくなって、嫌になった。








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