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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第43話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:da7c297e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/21 20:08
SIDE 桜咲刹那

もう戦闘も終盤であり、鬼もほとんど殲滅された。
こちらも負傷者は出ているが、死者はいないとのこと。
何体の鬼を倒したか覚えていないが、私たちは相当頑張ったと思う。
ミサカさんを見て、私は思う。
龍宮はいつも後方で援護するだけだが、それは近距離で戦う私の邪魔にならないようにするためだという配慮なのは知っている。
だから私は近距離で戦う味方というのはあまりいなかった。
ミサカさんは近距離で戦う事が多いため、今回はそういう類の戦いを初めて経験したが、これはこれで良い。
背中を任せられるというのはこういうものか、と思う。
ミサカさんに襲い掛かる鬼がいれば警告し、また倒す。
こちらも不意に襲ってきた鬼がいれば、ミサカさんが倒す。
そういう連携が自然と取れたのは、なんというか、もう相性の問題じゃないかと思う。
とにかく自然なのだ、連携が。
だが、当然私たちは無傷ではなく、細かい傷を負っていた。
近接戦を行うからこそ必然ではあるが、今ではそれが名誉の勲章であるような気がしてくる。

達成感がすごい。

久しぶりにそういう感覚になった気がする。
私はその達成感を得て満足した気分になりながら、ミサカさんの索敵の結果を待つ。
「―――戦闘は終了していないようですが、あらかた終わったようです、とミサカは報告します」
「そうですか。なら、私たちの出番ももう終わりですね」
「はい、とミサカは応じます」
気が抜けそうになり、戦場であるから気を引き締めろとの刀子さんの声が聞こえた気がして、慌てて気持ちを持ち直す。
そう、最後に何があってもおかしくないのだ。
そこの茂みから伏兵が襲ってくるかもしれないのだ、用心しなければならない。
再び緊張感に包まれる私に対して、ミサカさんはどうもぼーっとしているみたいだ。
と思ったら口が動いていたので、どうも連絡をとっているらしい。
それをとり終わった後、くるりとある一方向を見た。
その方向転換が不自然で、私は思わず尋ねていた。
「どうしたんですか?」
「私の知らない人が、三人ほどこっちに向かっています、とミサカは報告します」
知らない人、となると、増援の魔法使いだろうか。

しかし、今更?

後始末に来たのだろうか。
魔法先生が来るにしては遅いと思い、私が眉根を寄せていると、ミサカさんの言った通り三人組の大人がやってくる。
男の人が二人、女の人が一人だ。
どちらも見たことがない人たちだった。
「他の地区の方は終わったのですか?」
私はそう問いかけた。
彼らがやってくる理由がわからなかったからだ。
確かにこちらは苦戦していたが、今では終局に向かっているし、魔法先生には後方でどっしり構えていて欲しかった。
そう思って少し非難の意味を含めた口調になっていたが、それに対してミサカさんは冷たい声で告げてきた。
「刹那さん、待ってください、とミサカは警告します」
言われて、私は驚く。
何故警告される必要があるのだろうか。
相手は魔法先生だ。
まさか敵ではないだろうし―――と思った所で、私はその可能性があることに気づく。


魔法先生の姿を装った敵、ということか?


何故、ミサカさんはそれに気づいたのだろうか。
そういえばさっき、連絡で何事か話していたが……その時に何か聞いたのだろうか。
魔法先生らしき男は、無表情のまま静かにナイフを構えた。
後ろにいる男女も同じように武器を構える。
明らかな敵対行動を見て、私は反射的に武器を構えていた。
停電の真っただ中でこんな事があり得るのか。
まさか味方と思しき人と戦う事になるなんて。
目の前のナイフを構えた男は、静かに言った。
「一方ミサカ。お前やアクセラレータは麻帆良を乱す危険因子とみなす。よって―――排除する!!」
宣戦布告を告げると、ナイフの男が突っ込んでくる。
瞬動を使わないのは直線的な動きに対応されないためか。
ミサカさんは相手が麻帆良の人間であるということを知っているだろうに、容赦なく電撃を放った。
敵であれば敵として認識する。
ミサカさんは容赦がない、と少しだけ思った。


だが、敵は電撃を弾き飛ばす。


炸裂音と共に帯電した襲撃者が、雷撃の槍を物ともせずに突き進んできた。
「効かんぞ。その程度」
「―――ッ」
ミサカさんが顔を歪めた。
それは攻撃が通じない不安か、それとも苛立ちか。

私は援護に入るために気を夕凪に収束させるが、それを遮るように横から剣が突き刺さってきた。

気の収束を止めてそちらを向くと、フェンシングのような構えで剣を構えた女性がこちらを睨んでいた。
「邪魔はさせない」
同時に踏み込んでくる。
フェンシングの構えの通り突きを放ってくるが、これが非常に見づらい。
振り下ろしたりするのではなく、突きというのは避けづらいのだ。
バックステップで距離をとりながら懐に踏み込もうとするが、突きの動作が速くてなかなかそのタイミングがつかめない。
ああ言うタイプの敵は懐に入ってしまえば弱体化するのだ。
それはこちらも同じだが、私には桜楼月華がある。

踏み込んだ瞬間、この一撃を女性にぶつけてやる。

電撃が炸裂するのが視界の端に捕えられる。
そちらを気にしながらも、私は彼女を倒すのに集中する。
一つの事に集中する。
相手が突いてくる。
点のようなそれを屈んで避ける。
そのままぐるりと回って、夕凪で相手の剣を横に吹き飛ばす。
ああ言う持ち方は、横からの攻撃にも弱い。
というより、打ち合うようにできていないのだ。
その分、脆い。
体制を整え、踏み込む。
足元が注ぎ込まれた気によって爆発する。
その勢いと共に体を捻り、右手に収束した気を解き放つ。


「桜楼月華!!」


巻き荒れる暴風を纏った掌底が砲弾の如く突き抜ける。
直撃したが、手ごたえはない。
自ら後ろに飛んで威力を殺したか。
鬼の時のようにはいかないか。
木に叩きつけられる女性を見て、油断せずにそちらを見ていると―――横から圧迫感。
「ふんッ!」
2メートル以上ありそうな巨漢が、とんでもない大きさの拳を繰り出してくる。
だが、威力が乗ってるだけ大ぶりだ。
私の体格は小さいので、小回りが利くから避けるのはたやすい。
実を言うと、鬼で身体の大きな相手は慣れているのだ。

機動力は明らかにこちらの方が上だが。

拳を避け、同時に放ってきた蹴りも横に避けながら、夕凪を峰にして体の中央に打ち込む。
確かな手ごたえと共に、巨漢が後退した。
峰にしているとしても相当な攻撃力があったはずだが、何らかの対物理障壁でも張っていたのだろうか。
長期戦となると、厄介だな。
私も流石に疲れてきていて、彼らの相手はつらい。


そう思った時、巨漢に電撃が直撃した。


私の攻撃により勝機を見出したのか、突発的な攻撃だったが、巨漢はそれを無視するようにして立ち上がる。
ダメージは私の攻撃のみのようで、電撃で何かダメージを食らったようには見えない。
うっすらと、何らかの魔法陣のようなものが浮き上がるのが見えた。
それを見た私はミサカさんに向かって叫ぶ。
「ミサカさん、相手は何らかの雷属性の攻撃を軽減させる魔法を使っている可能性があります! 電撃では効果が薄いですよ!」
明らかにミサカさん対策の魔法だ。
ミサカさんは電撃を主体として行動する。
ならばその電撃を封じてしまえば、ミサカさんの戦闘能力は格段に落ちる。
ミサカさんから電撃をとれば、それは未熟な気の使い手でしかないからだ。
やはり、ここは私が敵を倒していくしかないのか。

しかし、魔法先生クラスが三人もいるんだ、私一人でなんとかなるか……!?

ミサカさんは私の言葉を聞いて、ようやく電撃を放つのをやめたようだった。
その体には新たな生傷が増えている。
おそらく、ナイフを扱う男の攻撃だろうが、ミサカさんも良く避けていた。
ミサカさんは一旦大きく距離を取ろうとするが、男は更に詰めてくる。
やはり、超接近戦では拳よりもナイフの方が強いのか。
ミサカさんも気によって強化された手で弾いてはいるが、それもいつまで持つか。
迅速に敵を撃破しなければならない。
相手が魔法先生らしき者であろうとも。
桜楼月華を食らってもまだ立ち上がってくる女性に向けて、私は斬空閃で吹き飛ばそうと気を込めて―――しかし、巨漢に防がれる。

何と言う耐久力だ。

その隙に立ち上がった女性は、再び剣を構えて私の方に向かってきた。
その動きは明らかに鈍いが、2対1という現状では自分が不利だ。
奥義は隙があるから使えない。
純粋な剣術でこの二人に勝るしかない。
だが、剣で人を斬るのには抵抗がある。
そのせいか、私の攻撃は鈍い。

友達を助けるため、と人を斬る。

それはひどく嫌な気持ちだった。
「くっ……あなた達は、どうしてこんな事をするんですか!? 麻帆良の魔法先生でしょう!?」
「だからこそだ」
巨漢が応じて、拳が降ってくる。
夕凪を構えてそれを受け流した。
衝撃が夕凪を伝わり、足から地面に逃げていく。
膝を曲げ、それすら前進する動力とする。
足を踏みしめる音と共に、私は巨漢の懐に突撃した。
「麻帆良にいる魔法先生だからこそ、現在の状況に我慢ができないんだ」
「それと、ミサカさんの何が関係しているというのですか!?」
繰り出された攻撃をまともに受けながらも、巨漢は立ち上がる。
鬼以上の耐久力に、私は歯噛みした。
構えをとると、巨漢は足に力を込めているのがわかった。
サングラス越しに伝わってくる気迫に、僅かに気圧される。
「今はエヴァンジェリンが麻帆良を騒がし、一般生徒にも危害を加えている。しかも、それは学園長容認のものだ。いかにネギ君を成長させるにしろ、一般生徒に危害を加える方法は納得できない」

瞬動で踏み込んできた。

突きだされる膝をまともに受け止めてしまい、吹き飛ぶ。
追撃を恐れて距離をとると、前から女性が突っ込んできた。
女性の言葉が、巨漢の言葉を継ぐ。
「その上、学園長が保護しているネギ君に一方ミサカが攻撃を加えたという情報もあったわ。エヴァンジェリンのことはまだ我慢できた。それが学園長の命令ならしょうがない、と。でもこれは違う。学園長の思惑を越えた事態だということは、すぐ開かれたアクセラレータやエヴァンジェリンとの集まりではっきりしてるから。事態の直後に会議を行うと言う事は、つまりはシナリオとは違う動きだった、という事でしょうしね」
「これ以上、麻帆良を騒がせたくない。今回の件でそのこともはっきりした。だから俺たちは警告のために攻撃するんだ。これ以上好き勝手やれば、俺たちだって黙っていないぞ、と」
今回の戦いはそのメッセージだ、と巨漢は言った。
私はそれに対して反論する。
剣を、横から吹き飛ばす。
「アクセラレータさんは、麻帆良の平和に貢献しています! 関西呪術協会からの敵も倒し、麻帆良の治安維持に活動しているじゃないですか! 確かに好き勝手しているところはありますけど、麻帆良を混乱させるようなことはしていないはずです!」

「“はず”だろう?」

巨漢の言葉に、私の心がギクリと音を立てる。
「君にも具体的な確証がないという事だ。君は学園長とエヴァンジェリン、そしてアクセラレータが今回の件で裏で動いていることを知らないだろう。それは知らされていないからだ。そして極秘事項でもある。エヴァンジェリンと手を組んでいる学園長は信用できん。アクセラレータがそこで麻帆良を混乱させるようなことをたくらんでいないなど、誰が断言できる?」
「そんなこと、アクセラレータさん自身にしかできませんよ。自分の事は自分が一番わかるんですし、把握しているんですから。あなたたちにだって、それは無理でしょう!」
「そうだ。俺達にはアクセラレータの事なんてわからない。だから怪しい行動をとっていれば警戒せざるをえないんだ。どういう影響が及ばされるかわからない。誰だってわからないものは怖い。それが絶大な力を持っているなら尚更だろう」
「じゃあ、どうしてミサカさんを襲うんですか? アクセラレータさんに直接話に行けばいいじゃないですか!」


「これが彼にとって一番の『警告』になるからよ」


動きが止まった私に、剣が突き出される。
夕凪でその切っ先の軌道を変え、やり過ごす。
瞬動で迫ってくる巨漢の拳を避けつつ、反撃する。
「アクセラレータは強い。それこそ無茶苦茶にね。だからこそ学園長に対する暴言もまかり通っているんだろうし。彼に力で訴えようとしても、その圧倒的な力で叩き潰されるだけ。私たちの意思は何も通じない。ただ、学園長に引き渡されて終わりか、半殺しにされて病院送りがオチよ」
巨漢は肩で私の夕凪を受け止める。
女性の突きを、危うく避けた。
「だから、私たちは武力行使に出た。アクセラレータではなく、彼が一番大事にしている一方ミサカにね。アクセラレータほど強くない一方ミサカになら武力でも対抗できるし、アクセラレータに対するメッセージになると思ったのよ」


一番大事って、とちょっとそこに引っかかる。


まあ確かにミサカさんはアクセラレータさんに大切にされてますけど、それでも、―――って、なんなんだこの思考は。
取り払え。
迫ってきた剣を、夕凪で受け流す。
直後に横から襲ってきた拳をガードし、敢えて吹き飛ばされながら距離をとった。
「言葉でどうにかできないんですか!?」
「アクセラレータに言っても無駄だ。麻帆良を出ていって欲しいなんて、彼が聞くと思うか? 少なくとも、今は無理だろう。彼は麻帆良で君たちと会話するのを楽しんでいるんだ、俺たちが言うだけで出ていくとは思えない」
「アクセラレータさんはちゃんと話を聞いてくれます! あなたたちの予想だけで、彼の事を決めつけないでください!」
まるで、彼らの言い分ではアクセラレータさんは話も聞かない凶暴な獣のようではないか。
話も聞かずに、ただ自分の意見を押し通す人であれば、彼はただ孤立していくだけだ。
彼が孤立していかずに、きちんと居場所を作っていられる理由はちゃんとあるのに。
それは確かに、ただ話すだけでは相手の人格を深く知ることなんてできないかもしれない。
でも、話してみるだけで彼の印象は変わるはずだ。


いや、変わる。


断言できる。
私は彼に出会った当日から、出会った当初の彼の印象とはまた違う印象を持っていたのだから。
しかし、目の前にいる巨漢は私の言葉を断固として否定する。
それを証明するかのように、上から拳が降ってきた。
「限りなく低い可能性は0と同じだ。それに、こうやって実力行使に出た方が俺たちのメッセージは伝わりやすい」
「だから、どうして低い可能性だと考えるんですか! わずかな可能性があるんなら、それに賭けてみればどうなんですか!? 話し合いもなしにいきなり暴力で語るなんて、おかしいですよ!」


「そんなことができれば苦労はしていない!!」


夕凪に対して拳で競り合う巨漢は、その時初めて声を荒げた。
「学園長からの監視もあったし、俺たちは動くに動けなかった。俺たちが動けばガンドルフィーニや葛葉が俺たちを拘束しに来る。実際それで仲間が4人も拘束された。無論、3人でかかればなんとかなるかもしれないが、1対1で潰されればすぐに全滅だ。そうなれば俺たちの考えはアクセラレータには届かない。それ以前の段階で踏み潰されるだけだ。学園長がトップとなる穏健派の戦力と、権力差でな」
それでは意味がない、と巨漢は漏らす。
「話し合い? ふざけるな。そんな話し合いの場が設けられるのならとっくにしていたさ。吸血鬼事件が表向きになった時点で、エヴァンジェリンとアクセラレータに対しての情報は学園長の指示でシャットアウトされた。明石や弐集院も、連中を守るためか知らないが電子的な防壁すら築いていた。君のそれは事実かもしれないが、何の情報もない今、俺たちはこうして動く他なかった」
ぶつかり合う拳に押されて、火花と共に夕凪がはじかれる。
まずい、と思った時には掌底が私の腕に激突する。
受け流そうとしたが、肩の関節が外れそうだ。
足から気を放出して吹き飛び、再び距離をとる。
「じわじわと、まるで無数の蟻の波が押し寄せてくるかのようだった。逃げ道はなく、行動もできず、話す事もできず、ただ今現在の麻帆良を見ているのは、俺には耐えられなかった。俺たちの現状を突破するためには、ややこしい思惑が絡み合ったこの舞台で、どさくさに紛れるくらいしかなかったんだ。それが正しくない道であろうともな」
警戒されれば潰される、と巨漢は言った。
「学園長はエヴァンジェリンやアクセラレータの肩をいやに持っているが、おそらく何らかの取引をしているのではないかと考えている。でなければ、あそこまで彼らの防衛を頑強にする必要はない。もちろん、学園長は彼らを刺激して欲しくなかったのかもしれないが……俺たちも情報が欲しかった。学園長本人に聞いてもただ否定され、かわされるだけで何の情報も得られなかったしな。何もできなく朽ちていくくらいなら、俺たちは主張を押し通す。学園長がのらりくらりとして反論を封じているのならば、俺たちはこういう行動に出るしかなかった。今しか、このチャンスはなかった」
「私たちが潰されても良い。でも、私たちのメッセージが伝わればそれで私たちは満足なのよ。襲撃自体には意味がある。例えアクセラレータから見て私たちがゴミのような実力しかなくても、抗う事はできる」
この人たちは、変わらない。
自分の信じている柱がそれ一本だから、それに縋るしかないのだ。


危機感と情報統制。


それがこう言う事態を招いたのだ、と私は思う。
学園長もアクセラレータさんも、全部打ち明ければ良いのに。
何を隠す必要があるんだろうか。
隠せば、それは何か汚い事をやっていると言っているようなものなのに。

だが。

私は、彼らの言葉を鵜呑みにすることはできない。
彼らの主張を受け入れる必要はない。
私は私の信じるものがある。
私の心の柱。
それはお嬢様と、あの言葉。
夕凪を握り、迷いなく私はそれに気を乗せる。
私の肉体は既にポンコツとなりつつあるが、そんなものは関係ない。
向こうが主張を押し通すなら、私も主張を押し通すまでだ。
「例えアクセラレータさんが何か考えているとしても、それは麻帆良を滅ぼすようなことじゃないってことはわかります」
「どうしてそう断言できる?」
「あの人、前に言ってましたから」
瞬動で踏み込む。
今までのそれとは違うキレ。
倒すための、全速力の瞬動だ。
その速度に唖然とする巨漢の顎に向けて、私の掌底が突き出された。
骨をうつ鈍い音と共に巨漢が縦に吹き飛び、倒れ伏す。
その砂煙を踏みにじりながら、私は答えた。


「麻帆良は悪くないな、って」


彼にとって、悪くないと言うのは良いということだ。
麻帆良は彼のお気に入りだと言うのに、どうしてその場所を壊そうとするのか、意味がわからない。
この人たちもアクセラレータさんと話すことができれば良いのに。
そうすれば、考えだって変わる。

きっと。

「……あなたが何と言おうと、もう私たちの行動は止められないわ。それに、戦闘することで目的は達しているもの」
「ミサカさんが傷つけられる前に、あなたたちを物理的に止めます。ただ倒されるほど私たちも雑魚じゃありません」
再び雷撃が迸る。
そういえば、集中していてミサカさんの方を見ていなかった。
ミサカさんはどうやら目くらましのために電撃を使って火花を起こし、それで相手を怯ませようとしているようだ。
実際、サングラスをしていてもその間から光は入る。
その作戦は功を奏していて、ミサカさんは男と互角以上の戦いを見せていた。
しかし、男は真剣な顔のどこかに満足そうな顔をしていた。
女性の言う通り、彼らの目的はもうほぼ達成したも同然だからだろう。
勝敗なんて関係ない。
彼らにとって、ミサカさんと戦闘をすればそれで良かったのだから。

それに、男はどうやらミサカさんを殺すつもりはないようだ。

ナイフなんていう殺傷能力の高い武器を使いながら、打撃を交えているのもそのためだろう。
だがダメージを与えているのに変わりはなく、消耗したミサカさんではいつ倒されるかわかったものではない。
こちらの決着を早々につける。
消耗で震えそうになる足を地面に押し付け、息を吐く。
目の前を見る。
そこには女性の姿があった。
私は奥義発動のために気を収束させ、それを放とうとして―――。



上空からの爆撃のような蹴りが、地面を吹き飛ばした。



轟音と揺れが地面を襲い、土砂と岩を巻き上げて粉塵となる。
私は咄嗟に後方に跳躍して顔を覆い、目にそれらが入るのを防いだ。
というのも、衝撃波に従って吹き飛ばされた、というのが正しいのだが。
その中で、私は高速で動く何かを見た。
それは突き抜けた後に暴風を残しながら、女性がいた場所に突っ込んでいった。

無言での攻撃。

肉を打つ音と、女性の悲鳴が同時に響く。
生々しいそれは二度、三度と続き、やがて砂煙が不自然な動きで上空に舞い上がる。
風が下から吹いているのだ。
魔力も気も使わずに、そんな現象を起こすことができるのは麻帆良に一人しかいない。


アクセラレータさんだ。


彼は女性の首を掴んで持ち上げていた。
情けでもあるのか、顔だけは殴っていない。
だが、足が折られており、腕も変な方向に曲がっていた。
この分だと胴体の骨もいくつか折れているだろう。
剣がどこにいったのかわからなかったので見回すと、見つけた。
何故か剣は壊れており、女性とは離れた所に吹き飛ばされていた。
アクセラレータさんは無言のまま、目にもとまらない速度で女性の腹に拳をブチ込んだ。
乾いた音がこちらにも響いていた。
血を吐きだした女性が気絶すると、アクセラレータさんはまるでゴミか何かを放り出すような仕草で女性を地面に叩きつける。


「刹那」


ゾッとするような声。
私が聞いたことがないような、怒りの声だった。
その背中から怒気が伝わってくる。
それは私ではなく、私越しにミサカさんと戦っていた男に向かっているのがわかった。
「コイツを拘束しろ」
「は、はいっ」
思わずそう答えていた。
答えさせる迫力がそこにはあった。
僅かな砂煙を残して、アクセラレータさんが消える。
風が私の後ろへ突き抜けたことがわかる。
そう認識した時には、男の前にアクセラレータさんが姿を現していた。
既にこちらに来るのはわかっていたのだろうか、男がナイフを突き出すそぶりを見せた途端、アクセラレータさんの肩が動く。
次の瞬間、男は顔面を殴り飛ばされて吹き飛んだ。
しかし、アクセラレータさんは吹き飛ばした男の向こう側に回り込み、再び殴り飛ばす。
それが続く。


延々と続く。


殴り飛ばす音がマシンガンの音のように繋がって聞こえる。
まるでピンボールだ、と暢気に思った時には終わっていた。
体感的には数十秒だったが、あんな連打を数十秒も浴びていれば死んでしまう。
おそらく数秒くらいだったのだろう。
アクセラレータさんは男を見下ろしながら、舌打ちする。
「ミサカ、コイツ等を見張ってろ。しばらくすれば他の魔法先生が来てコイツ等を回収するはずだ」
しかし、ミサカさんは動かない。
怪訝そうに僅かに顔を動かしながら、アクセラレータさんはもう一度ミサカさんを呼んだ。
だが、ミサカさんは動かなかった。
ただ、じっとアクセラレータさんを見つめている。



「隠している事を、全て話してくれますか、とミサカは尋ねます」



その一言に、アクセラレータさんは一瞬震えたように見えた。
彼がびくつく姿なんて、初めて見る。
こちらから表情は見えないが、その体は緊張で硬直していて、震えを何とかして押さえ込もうとしているのがわかる。
何故、そんなにも怯えるのか。
それがわからない私は何も言葉を挟めず、唖然として眺めることしかできなかった。
ミサカさんは表情を変えず、血まみれの男を見下ろす。
「その人が言っていました。学園長や、エヴァンジェリンさんも、何らかのたくらみを持っていると。何か、裏で動いているのですか? 私は以前に動いた時はネギ先生とのゴタゴタのために動いていたと納得していましたが、この間からの『話し合い』のことは結局話してくれませんでしたよね。あなたも何か企んでいるんですか、アクセラレータ」
私は思わず耳を疑った。

いつもの口調じゃない。

いや、こっちが普通なのだが、なんというか、もうミサカさんはああいう口調なのだと私の中で固定してしまっていて、普通の口調で話されると違和感がある。
それだけ本気という事なのだろうか。
しかし、私はその疑問にたどり着いた時、衝撃を受けた。
ようやく彼女が話している内容が理解できたのだ。
思わず、私はミサカさんに尋ねる。
「ミサカさん、まさかこの人たちの言う事を真に受けているんですか?」
「そういうわけじゃありません、とミサカは答えます。ただ、前々からアクセラレータが疑わしい行動を取っていたのは事実です、とミサカは先日から連絡を受けて外出することが多かったということを暴露します」
だからと言って、と反論しようとして、アクセラレータさんの大きなため息がそれを遮った。
同時に、アクセラレータさんの緊張が薄れていく。

力が抜けて、肩が落ちる。

その時点で自分の体の変化に気づいたのか、アクセラレータさんはそれ以上の動きを見せなかった。
しかし、何故か彼の背中はいつもよりも小さく見えた。
アクセラレータさんはミサカさんに向かって言う。
「俺を疑うのか?」
「はい」
「気にいらないか、俺が」
「はい」
今度はミサカさんの言葉に怒気が滲んできた。
まるで放電でもしそうな勢いだ。
それに対して、アクセラレータさんは大きく息を吐いて顔を下に向けた。
「すまねェ。どォしても話したらいけねェことがあってな。事が収まるまで話しておくわけにはいかなかった」
「そうやって秘密にしているから、こういう事態が起こったのではないのですか、とミサカは問い詰めます」
「それなら具体例を提示しろ、と言いてェところだが、肝心の情報がなけりゃそれもできねェ、か。そうしなきゃならねェ理由もあるンだが……まァ、家に帰ったら、そこで全部教えてやるよ。納得がいくまで説明はする」
そう言うと、ミサカさんは不満げな顔をしながらも、どうやら矛を収めたようだ。

不穏な空気が漂う中、アクセラレータさんはこちらに向き直った。

今まで表情が見えなかったが、おそらく疲れた表情をしていたのだろう。
今はどこか取り繕ったような、不自然な顔をしていた。
さっきの緊張が抜けなかったのだろうか。
それらの疑問を尋ねる前に、アクセラレータさんが先に言ってきた。
「ミサカを助けてくれたンだろ? 借りができちまったな」
「あ、いいんです。私もミサカさんと一緒に戦っていましたし、これは成り行きです」
「ミサカに味方したのには変わりねェだろ? そォ謙遜すンな」
そう言って、アクセラレータさんは私の目から視線をそらす。
いつの間にか、その体は別の方向に向いていた。
「今から俺は西の援護に行く。劣勢というわけじゃねェみてェだが、俺が行った方が早く終わるらしいンだと」
「え? じゃあなんで南には来なかったんですか?」
「ミサカがどれだけ戦えるか見たかったンだよ。今みたいに危険になればすぐ助けに入る予定だったが、邪魔が入ってな。少し遅れちまったンだ」
それにミサカさんが答える事はなかった。
アクセラレータさんは背中に竜巻を接続して空に浮かぶ。
巻き上がる爆風に、思わず私は目に手をかざした。


「じゃァな」


それだけ言い残し、アクセラレータさんは夜空に飛び立っていった。
後に残るのは爆風の名残と砂煙だけ。
いや、彼にズタボロにされた魔法先生がいたか。
私は夜の戦いの時には常備している縄を取り出し、魔法先生を拘束することにした。
ミサカさんは、じっとアクセラレータさんが向かった方向を眺めていた。






SIDE 一方ミサカ

アクセラレータを信じていないわけではありません。
もちろん、とても信じています。
少なくとも、この世界にいる人間の中では最上位に位置するくらいには。
この世界にやってきて、右も左もわからないのをきちんと教えてくれました。
悪態をつきながら、面倒くさそうに。
あんなことも知らなかったのか、という羞恥心が沸いてきて、ミサカは恥ずかしくなります。
でも、それとこれとは話が違います。


最近、アクセラレータはミサカに対して隠し事が多すぎます。


もちろん、何も言わずに外に行く事は最近始まった事ではありませんが、その頻度が高い上に、携帯のメールを見てから出ていくことが多くなりました。
つまり、誰かと連絡を取り合って『話し合い』に向かうと言う事。
むくむくとせり上がってくるのは、ミサカが生まれる前のミサカの記憶。

軍用ミサカではない、実験体ミサカたちの記憶。

アクセラレータの脅威はしっかりと脳の奥まで記憶されています。
どうやって殺されたのか、それすらもきっちりと思いだせます。
だからこそ、やはりミサカの中ではアクセラレータは警戒対象なのかもしれません。
それに対して残念に思うミサカがいて、同時に納得します。

本当は、疑いたくなんてないのです。

もっと、アクセラレータが話してくれればこんなことを言わずに済むのに。
ミサカが尋ねた時、アクセラレータは顔をこわばらせていました。
まさか、そんな事を言われるとは思っていなかったのでしょう。
ミサカがこのように反抗したことなんて、今まで一度たりともありませんでしたから。
アクセラレータがそんな事を思うと言う事は、彼にとってミサカはただただ従順な存在でしかありません。
もう、ミサカはそんな立場は嫌なのです。
隠しているのも、理由があるはずです。
その理由すら教えてくれないのは、きっと何らかの事情があるから。
その事情に私を巻き込んでくれないのが、この上なく歯がゆいのです。
ミサカは言われる事を言われるがままにやる機械ではありません。
ちゃんと自分で考えて、行動ができる人間なのです。
だからガキ扱いなんかしないで、ミサカを一個の対等な人間として見て欲しい。

確かにミサカは子供です。

この麻帆良に住んでいる人の中では、年齢順で下から数えた方が圧倒的に早いほどの子供です。
でも、ミサカはちゃんと話せます。
常識も学習しました。
外見相応の会話能力だってあります。
10代の思考能力もあります。
確かにアクセラレータは学園都市最高の頭脳を持つ、優れた人間なのでしょう。
でも、コンピュータにはバグが発生します。
しかし、バグはコンピュータが間違えて発生するものではなく、人間がコンピュータを操作することを間違えることにより発生します。
アクセラレータは間違いなく人間です。
例えスーパーコンピュータ並の頭脳を持っていようとも、人間である以上間違いだってあるはずです。
その時、頼れる人がいなかったら、独りよがりで進んでしまいます。


ミサカ達にとっての悪夢である『実験』。


あれについて相談ができる仲間がいれば、とミサカはこのごろ思うのです。
ミサカはそんな相談相手になりたい。
ただ守られるヒロイン願望なんて持っていません。
悪役に攫われて、ただ助けを待つことなんてミサカにはできません。
ミサカには実力があります。
アクセラレータのそれには及びませんが、それでも力があるんです。
彼にとっては矮小な力の一つにしか過ぎないのでしょうけど、それは決してマイナスにはならずにプラスになるはずです。

いつまでも守られるなんて嫌。

一緒に矢面に立って戦うと言うのがミサカの願望であり、目標でもあります。
確かに一月の初めはアクセラレータや高畑先生にお世話になりました。
でも、今は三カ月後の四月です。
ミサカの人生の中でも大半を占めるのが、麻帆良での思い出です。
何も分からなくて、頼るしかなかった頃のミサカじゃありません。
守るな、なんて言いません。
ただ、何であろうとも事情を説明して欲しいです。
アクセラレータが一人で抱え込んで、一人でやるなんてことはありません。
相談されたいんです。
世話になったんだから、恩返しくらいさせて欲しい。
汚い裏の事情だって、反抗せずに呑み込んでやります。
不快に思おうとも、その感情を抑制することだってやってみせます。
ミサカはアクセラレータの義妹です。

つまり、家族です。

不満や愚痴だって吐きだして欲しい。
時折聞きますけど、それもやっぱり情報統制されたそれにすぎないこともわかっています。
言いたくないことと、言えない事は別です。
言えない事は言わなくていいですけど、そういう隠し事はしないで欲しいんです。
結局、何が言いたいのかというと。



ミサカが『やれない』『できない』『アイツにはまだ早い』と決めつけて、裏でミサカについての事が決定されていくのが嫌なのです。



今回の停電だってそうです。
ミサカの出撃はアクセラレータの提案によって決まりました。
最初はミサカもようやく力になれると素直に喜んだものです。
でも、結局こうなってみればつまらないのです。
今回の事をミサカが認識している情報の上で、とあるステージに例えてみます。

舞台を整え、台本を作り、演技指導を教えてくれるプラグラムはアクセラレータ。
全てが完璧な舞台の上で、決められた役割をこなすのが出力装置であるミサカです。

役者にとっては裏事情なんてそれほど気にする事じゃないのかもしれません。
自分の仕事じゃない、と割り切っているのかもしれません。
でも、ミサカは役者じゃありません。
ミサカはミサカです。


ミサカ二〇一一二号、一方ミサカです。


それ以外の誰でもありません。
だからいい加減、ミサカにも自分で台本を執筆させて欲しいです。
舞台を整えさせて欲しいです。
できれば、それも一緒に。
未熟だから、なんていうのなら、私は無理矢理についていきます。
そうやって学ぶことで、未熟は改善されていくものですから。
迷惑をかけるのはわかっています。
でも、置いて行かれずについていくにはそうするしかないでしょう。
今回のこれを機会として、ミサカもちゃんと成長しているという事をアクセラレータにアピールしなければ。
でないといつまでも子供扱いです。
それは嫌です。
絶対に認めさせてやります。
ミサカは内心で決意しながら、グッと拳を握りました。






SIDE 一方通行

焦った。
ここにきてから、おそらくではあるが一番焦った。
いや、襲撃されてミサカも刹那も傷ついていたのも結構焦ったのだが、それとは比べ物にならないくらい焦っていた。
その理由は、ミサカの言葉である。
隠し事、というのがとても驚いた。
今でも心臓がバクバクと鳴っている。
誤魔化しきれたとは思えないが、俺が思っている事を悟られたという事はないと思う。


俺が思っていた事は、俺の内部の人格の事だ。


俺が隠していることとして常に考えている事はそれだからだ。
まさか気づかれたのか、と思って青くなってしまったのだ。
すぐ別の事だと言われて持ち直したが、しかし焦った。
ため息をつきながら、俺は風を切って飛行する。
隠し事、なんてことを言い出すもんだから、こんな時に限って思いだすことがあった。

俺はもともと刹那やミサカに対して隠し事をしている。

彼女らだけではないのだが。
俺が異世界の人間である事はネギま側の人間に秘密にしている。
一部学園長などにはバレているが、大部分の人間に隠していることには違いない。
最大の秘密は『俺』が憑依しているということだ。
アクセラレータを演じてはいるが、それでも隠し事をしていると気が滅入る。
ミサカに対して今更ながらそれを言う事は、もうできないかもしれない。
墓場まで抱えて持っていく秘密になるかもしれない。

そもそも、俺は嘘をついていても平気な人間ではないのだ。

社会の処世術としてある程度の嘘はつくが、こうして親しい者たちにも嘘をつくのはつらい。
たまに布団に入り、寝入る時にそれをトラウマのように思い出したりして嫌になる。
おそらく、それは彼女らが俺を信頼していると俺が自覚しているからだろう。
自惚れかもしれないが、流石にこれだけ付き合っていれば信頼してくれていると思う。
だから俺は嘘をついているのが嫌になる。
もちろん、そこまで気にする人間は少ないのかもしれないが、俺はそう言う人間だ。
ここにきて1年と半年近く経つが、自分の性格というのはそう簡単に忘れはしない。
ここの生活が濃いせいか、前の自分の記憶は薄れつつあるが、やっぱり俺という基盤は残っているようだ。
影響されているにしろ、そう言う根幹というのはなかなか変わらないらしい。
本当の一方通行ならこういう時、どうするんだろうか。

やはり突き通すんだろうか。

俺も一度は嘘をつくと決めたんだ、ウジウジ悩むというのも男らしくない。
そう思うが、だが嫌になるのはやめられないし、変わらない。
忘れるわけにはいかないし、かと言って意識するのはつらい。
いつかこれも話すことになるのだろうか、と思うと、やはりつらくなる。

上空を飛んでいると、ようやく西のドンパチが見えてきた。

暴力的な思考の後は、いつも妙に冷めた思考になるが、今回もそうらしい。
その切り替えの時にミサカの言葉を受けたから、俺もナーバスになっているんだろうが。
あー、説明したくねぇ。
裏で動いていた事を話すのは恥ずかしい。
恥ずかしいやら心理的に苦しいやらで、モヤモヤする。
さっきもファン発言されて動揺したことといい、この事といい、今日は厄日だ。
イライラするのを通り越してげんなりする。
急速にやる気がなくなったが、まあ、仕事だ。


しょうがない。


俺は竜巻を接続したまま体勢を整え、飛び蹴りの体制で目の前の鬼の軍勢に突撃する。
斜め38度の角度から地面に直撃した。
加速した俺は砲弾と化し、地面を吹き飛ばしながら鬼をも巻き込む。
ブッ潰し、吹き飛ばし、破壊する。
鬼に攻撃していた味方の攻撃も飛んできた気がするが、些細な事だ。

ベクトルを操作して急制動。

突進していたベクトルを反対方向に変換する。
振り向くと同時、視界にいる鬼を把握する。
拳を引き絞り、ラリアットのような体勢で突撃した。
先ほど飛来した時と同じスピードで突撃する。
それは瞬動以上の速度。
鬼たちに認識できるそれをはるかに超えていた。


ガボッ!!と鬼の右半身をほとんど吹き飛ばした。


錐揉み回転して吹き飛ぶそれを目の端で捉えながら、ベクトル操作して体を回転させる。
目標を定める。
今度は2体まとめて吹き飛ばす。
その際に吹き飛んだ棍棒を手に取り、跳躍。
10メートルほど軽く跳躍して、風を操作し、空中で姿勢を安定させる。
狙うのは200メートルほど離れていて油断している鬼の軍団。
よくもこれだけ揃えたと思うが、まとめて殲滅させてもらう。
突撃してきたベクトルを利用して10メートルほど飛びあがったわけだが、それだけで全てのベクトルを消費したわけではない。
上昇力として俺自身を上に持っていくベクトルを操作し、持っている棍棒に集中させる。
俺の持っている手からスライドするように、その棍棒が莫大なエネルギーを持って飛び出した。


途中で棍棒が自壊し、まるでその破片が散弾のように鬼の軍勢を襲った。


クラスター爆撃のようになり、地面が吹き飛ぶ。
地響きが辺りを揺らした。
舞い上げられた鬼は穴だらけになりながら、次々と空間に解けて消えていった。
大柄な鬼ほどよく食らったのだろう、生き残ったのは小柄な鬼ばかりだった。
それらすべてをチマチマと倒していくのは面倒くさい、というかそこまでやる気がない。
小鬼が動きだす前に、ベクトルの演算が終了する。
吹き飛んだ地面の中心から暴風が巻き起こった。

ハリケーンだ。

それは見る間に巨大になり、残っていた小鬼や木なども巻き込んで吹き飛ばしていく。
内部の暴風によって体が捻じ曲げられ、それら小鬼が全て消滅する。
竜巻を解除すると、土塊や木の破片が広範囲にわたって降り注いだ。
その中には巨大な土塊もあり、あちこちに落着する。
浮いている俺はちょっとやりすぎたかと思っていると、通信が入る。
ガンドルフィーニの声だ。
『アクセラレータ、こちらのことも考えてくれると助かるんだが』
「悪ィ。負傷者が出てたら謝る」
『流石にただ降ってくる土塊や木に直撃して気を失うような魔法先生はいないよ。ただ、もう少し気をつけてくれ。これはいつもの少数による襲撃戦じゃないんだ』
「あァ。確実に潰していく方法に変更する」
『頼むよ』
通信を切り、俺は真下に降り立った。
先ほど無限瞬動によって鬼を蹴散らしていたが、まだ生き残りがいる。
それらは棍棒を構えたり、クナイを構えたりしているが、やはり俺の敵ではない。


踵を地面に叩きつけると、俺の前方の地面が爆発した。


土や岩が高速で飛来し、辺りの鬼たちに直撃。
その体の一部を吹き飛ばしていく。
背後から鬼が3体。
背後から振り下ろされた棍棒をガードせずに頭で受ける。
呆気なく砕け散る棍棒。
俺に落ちてくる棍棒の瓦礫のベクトルの向きを変え、そのまま散弾としてその鬼に直撃させる。
その間にクナイが飛来してきたが、棍棒よりもクナイの方が対処は簡単。
ただ反射すれば良いだけだ。
だが、クナイは反射しても持ち手側が刃というわけではない。
投げた手に直撃し、せいぜい怯ませるくらいでしかない。
たいして問題はない。
その時に、クナイを上回る速度で踏み込めば良いだけだから。
懐に入ると、その頭を掴み、振りまわす。
普通なら首と胴体が遠心力でお別れするような速度でも、俺のベクトル操作でそれはさせない。
そのベクトルすら利用して回転速度を加速させ、ミサイルと化した小鬼を別の小鬼に投げつけた。
地面に激突し、衝撃波と血飛沫が舞う。
ぎょっとしてそれに怯む鬼の一人に向けて、その懐に踏み込む。
その向こうにはもう一人の鬼。
それごと突き破ってやる。


『ジェット・パンチ』


目の前の鬼を突き破り、その衝撃波は突き抜けてその向こうにいる鬼すら吹き飛ばした。
2匹の鬼は血が混ざりあいながら吹き飛ばされ、木に激突した。
残りは、6匹か。
かなり警戒している。
鬼はだいたい好戦的、というか戦いを楽しみにしている風があるが、俺にはそれが当てはまらないらしい。

それはそうだ。

ただ蹂躙されるなんぞ、よっぽどのMでなければ喜ばないだろうしな。
「今日は急ぎの用があるンでな。サッサと終わらせて、家に帰る」
そう言って、俺は踏み込んだ。
ジェット・パンチの理論を応用した超高速連続攻撃。
頭を殴る。
拳を振り下ろし、肩に直撃。
ラリアットで肉体を抉る。
腹を殴る。
膝で腹を突きあげる。
回転し、遠心力も加えて殴り飛ばす。
1秒も経たずに辺りの地面が俺の踏み込みによって爆発し、それに応じて敵も肉体を吹き飛ばして消滅していった。
あまりにも攻撃が速すぎて、吹き飛ぶのが遅くなったのである。
それら圧倒的な破壊をもたらしても、俺が真っ白であることに変わりはない。
服にも砂埃一つついていないだろう。
もうそれに違和感も覚えなくなった自分に半分呆れながら、俺はトランシーバーをとりだした。


「次はドコだ?」


トランシーバーからは、真面目なガンドルフィーニの声が返ってきた。






~あとがき~

ミサカ・刹那側が決着です。
結局、反対部隊はアクセラレータに鎮圧されました。
ミサカと刹那が襲撃されていたため、慌ててブッ潰したため、一言も喋っていません。
ミサカは今までアクセラレータが話し合いと言って出ていくことに疑問を持っており、襲撃者の言葉を聞いてその疑問が噴き出した、という事です。
内容はその疑問についてと言うよりも、裏で動いて自分には事情を説明しないアクセラレータに対しての不満ですけどね。


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