<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

赤松健SS投稿掲示板


[広告]


No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21322] 第25話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/08 00:52
SIDE 桜咲刹那

今日も私はお嬢様の護衛を行っている。
アクセラレータさんに色々と言われたが、やはり護衛の仕方は一年生の頃から変わらない。
彼はお嬢様は私の忌むべき白い翼を拒絶しないと言っていたが、自信はない。
私のような頑固者は自分から本気で変えようと思わない限り変わらないようだ。
愚かだと思うが、私は私から歩み寄る機会を私自身の手で全て潰している事から、この関係は永遠に続くんじゃないかと言う錯覚まで抱かせる。
今まではそれが一番いいと思っていた私も、アクセラレータさんの言葉で揺らいできている。
彼の言葉は今でも一字一句間違うことなく思い出される。

不思議だ。

彼の言葉は私がお嬢様について悩む時、ふっと繰り返されて消えていく。
それが私に力を与えてくれていることなど、あの人は考えもしないだろう。
そう思うと、ふっとおかしくなってくる。
さて、そんな私が今いるのは龍宮神社の前だ。
初詣で賑わっているその中に、お嬢様と神楽坂さんの姿がある。
どうやら図書館探検部の面々も一緒のようだ。
それぞれ私服、ということは初詣が終わった後にどこかに遊びに行く算段なのだろう。
麻帆良市外ならば少々護衛はやりづらくなるが、仕方ない。

一番護衛しづらいのが実はカラオケボックスだったりする。

デパートならばまだ良いのだが、カラオケボックスだった場合何時間も個室の中に入り浸るので外から監視するのは骨が折れるのだ。
場所や時間が変な具合に重なれば下心丸出しの男が声をかけて来ることもあるし、厄介この上ないのだ。
私がこれからのことを考えて多少げんなりとしていると、ちらっ、と視界の端に不健康そうな白い髪が過ぎった気がした。
いやいや、まさか彼が初詣なんかに来るはずがない。
だいたいイメージが沸かない。
そう思いながら振り向くと、そこにはモノクロのマフラーと黒いジャンパーを羽織ったアクセラレータさんが人の波に流されるようにして歩いていた。

アクセラレータさんが初詣……に、似合わない。

私が頬を引きつらせていると、アクセラレータさんが隣の人に面倒そうに声をかけているのが見えた。
誰だろう?
そう思った私が歩幅をずらして隣の人物を見えるように距離を調整した。
人ごみの間から見ると、どうやら隣にいるのは私と同年代の女の子のようだった。

ムカッ、と私の胸が疼く。

その原因は不明だが、とにかくその女の子についての情報を分析することにした。
髪はどこでも見たことがあるような茶髪。
それを肩口で切り揃え、前髪は右に撫でるような感じに整えてある。
顔は整っている方だろう。
問題はその表情だが……2-Aのザジさんと共通するような無表情だ。
アクセラレータさんの横であんな顔で応対できる人がいたなんて、と私は変な意味で絶句した。
まず思ったことは、見かけない顔だ、という事だろう。
これでもアクセラレータさんの家にお邪魔した回数はそれなりのものだと自負しているが、あんな女の子はみたことがない。
昨日の夜学園長から呼び出されていたが、もしかしてあの女の子のことだろうか。
あの女の子に何かあるのだろうか。
思わず興味本位からふらりとそちらに行きそうになり、私は本来の目的を思い出してハッとお嬢様を探した。
見つけることができたのでホッと一息。
しかし、アクセラレータさん達に視線を戻すと、二人ともどこか人ごみに紛れて消えてしまったようだった。
アクセラレータさんのことだ、私の視線に気付いて姿を消したのかもしれない。
この事については後日うかがう事にして、私はお嬢様の護衛に集中し―――。

「よォ刹那、何してンだ?」

「わぁあああああああああ!?」
いきなり背後から声をかけられてびっくりしてしまった。
慌てて後ろを振り向くと、そこにはニヤニヤした様子のアクセラレータさんと、きょとんとした感じで彼を見ている先ほどの女の子がいた。
何故きょとんとしているのだろうか……それはともかく!
「後ろから突然声をかけないでください!!」
「しょォがねェだろ。この人ごみだ、前から声をかけるなンて余裕があると思えンのかよ」
絶対嘘だ。
この人は私がびっくりする様を見て楽しんでいるはずだ。
でなければどうしてニヤニヤしているのか説明がつかないからだ。

新年早々、やっぱり私はアクセラレータさんにからかわれる運命にあるのか……。

そう思ってげんなりとするが、気を取り直して私は傍らにいる女の子を見やった。
その視線に気付いた女の子は、まるで茶々丸さんをイメージさせるような仕草でペコリと一礼した。
「はじめまして、一方ミサカと申します、とミサカは基本的な自己紹介をしました」
「は、はあ……」
なんだかとても変わった口調を持っているようだ。
少し返答がやりにくい。
そう思いながら、私は返答する事にした。
「私は桜咲刹那です。……それより一方ミサカとは?アクセラレータさんの名前が一方だったと思うのですが」
眉を顰めながらアクセラレータさんの方に向くと、彼はひらひらと手を振った。
「いろいろと事情があってな。ソイツは俺の親戚の従兄弟の姉の娘の息子の嫁の兄の妹ってことになってる」
「その無駄に長い関係は最早他人で良いのではありませんか?」
「そこは詮索すンな。ワケありだ」
「ということは関係者なのですか?」
「まァ、俺ほどじゃねェが、特殊な能力者だ」
特殊?
そう思って今名乗った一方さん……ややこしいのでミサカさんはその特殊な能力の説明を始めた。
「私は彼と同じく、魔力や気というものに頼らずに電撃を起こすことができるのです、とミサカは説明します。いわゆるエレクトロマスターです、とミサカは更に付け加えます」
「つまり、超能力って奴だ。遠距離からならテメェだってしとめられるほどの実力を持つンだぜ、こいつは。なにせタカミチを苦戦させたンだからな」
「た、高畑先生を!?」
それは……すごい。
高畑先生は麻帆良でも最強クラスの魔法先生だと聞いている。
それを苦戦させるとは……やはり、アクセラレータさんと同じく規格外の存在なんだな、と思う。
私が驚愕の表情でミサカさんを見ていると、彼女は不服そうにアクセラレータを睨む。
「私の許可もなくそこまで情報を与えるのはどうかと思います、とミサカは迂闊なアクセラレータを咎めます」
「どォせ知られるコトになるンなら最初からバラしといた方が面倒がねェだろォが」
「あなたにとってはそうでしょうが私にとっては自分の能力を分析されるのは愉快な事ではありません、とミサカは自分の能力をバラされたくないのかと警告します」

え?

「アクセラレータさんの能力をミサカさんは御存知なのですか?」
それを聞いたアクセラレータさんは明らかに『やべェ』と頬を引きつらせた。
どうやら私の今の疑問は真実だったらしい。
アクセラレータさんは恨むぞとばかりにミサカさんを睨むが、ミサカさんはつーんと顔を逸らした。
アクセラレータさんが押されている所なんて珍しい。
私は更に浮かんだ疑問を投げかける。
「そういえばアクセラレータさんは記憶喪失のようでしたが、ミサカさんはアクセラレータさんの事について何か知っているんですか?少し興味があるので教えて欲しいのですが」
それを聞いたアクセラレータさんはますます頬を引きつらせた。
何やら私には隠し事はうんぬんと偉そうなことを言っていたわりに、自分には隠し事があるようだ。
実際それで救われてはいるのだが、心の中にズケズケと入ってこられた恥ずかしい感覚は忘れていない。

軽い復讐のつもりの問いだった。

「はい、知っています、とミサカは桜咲さんの疑問に答えようと口を開きま―――むぐ」
「そこまでだ」
途中でミサカさんの後ろに回ったアクセラレータさんが手を口で抑えた。
そのまま馴れ馴れしく肩に腕を回す。
「おいミサカ、商店街の知り合いにヒヨコのマスコットがある駄菓子屋があるンだが、そこ行かねェか?」
「食べ物で釣るのですか、とミサカは短絡的な思考に落胆します」
「どっちかっつーとヒヨコのデザインの方なンだが」
すると、今までずっと不機嫌そうだったミサカさんの表情が柔らかくなったように感じられた。

そんなにヒヨコのデザインが好きなのだろうか……。

「……しょうがないですね、今回はそれで手を打ちます、とミサカはため息をつきました」
「テメェ毎回俺にたかるつもりか?」
「そのつもりですが何か?とミサカは悪びれもせずに答えます」
「ヒヨコが欲しくねェのか?」
「バラされたいのですか、とミサカは脅し返します」
ぐぎぎぎ、と睨み合う二人。
正直に言うと、こんなアクセラレータさんは初めて見たので困惑している。
私のアクセラレータさんのイメージは、強くて粗暴だがどこか何かを諦めたようなダルげで落ちついた雰囲気を纏っているものだった。
しかし今のアクセラレータさんはまるで子供のようにミサカさんと張り合っている。

驚くべきは張り合えるミサカさんかもしれないが。

アクセラレータさんとこんな張り合い方は高音さんも私も、もちろんエヴァンジェリンさんでもできないだろう。
やはり、ミサカさんはアクセラレータさんを良く知る人物だと捉える必要がありそうだ。
しばらく睨み合っていた二人はお互いにため息をつくと、それぞれ顔を逸らした。
アクセラレータさんもミサカさんの肩から手を離す。
「張り合っててもしょーがねェ。時間の無駄だ」
「そうですね、とミサカは少し疲れた気分で言います」
まあ、それはそうでしょうね。
私がそう思って二人を見ていると、その視線に気付いたアクセラレータさんが軽く手を振った。
「テメェはお嬢様の護衛だろ?こンな所でボヤッとしてていいのかよ?」
「ハッ!そ、そうでした!すみません、私はここで失礼します!」
私は慌てて辺りを見回し、早乙女さんの特徴的なアンテナみたいな髪を発見し、それを追跡するために歩き出した。
二人に向けて一礼するのも忘れない。
そして歩き出す私の後ろから、こんな言葉が聞こえてきた。
「一応ヒヨコの店には案内してやンよ、元々商店街は案内コースだからな」
「……期待していいのでしょうか、と私はアクセラレータのセンスを疑ってかかります」
「期待してろ馬鹿」
ああ見えて仲の良さそうな二人の会話を聞いていたら、何故か嫌な気持ちになる。

何故だろう?

「(……今はそれよりもお嬢様だ)」
私はその気持ちを忘れる事にして、さっさと気持ちを切り替え、お嬢様の護衛に専念する事にする。
だが、嫌味のように言いながらも嬉しそうだったミサカさんの顔を思い出すと、集中できなくなった。
この気持ちはなんなんだろう……。
結局、私は集中できないまま、雑踏に紛れて彼等の前から姿を消した。






SIDE 一方通行

刹那と別れた後、俺は神楽坂アスナと遭遇することなく初詣を終えた。
ガランガランという大きな音と共に願ったのは、とにかく今年は面倒な事が極力起きませんように、という非常に無難な願いだった。
既に面倒事が起きているから手遅れかもしれないが。

更に、俺達は色々と麻帆良を回った。

回るたびにその平和な様子にミサカは驚き、呆れていた。
俺としても麻帆良の能天気ぶりには呆れる事ばかりなので、それは仕方のない事だと思う。
それと共に少し嬉しそうな顔もしていた。
自分たちのいた所がどれだけ殺伐としていた場所だったか、それがわかり、そこから抜け出せた事を喜んでいるのだろう。
だが、それは卑怯だと思っているのかもしれない。
時折彼女の無表情は鉄のように硬直する。
おそらく、自分だけがこんな平和な場所にいることに抵抗があるのだ。
俺達の世界では、まだ『妹達』が生み出され、戦場へ駆り出されているかもしれないというのに。
この世界に来た事を後悔した事はないが、それでも向こうの世界で起こったイレギュラーを正してやりたいくらいの事は思う。
ただ、そんなことをすれば『猟犬部隊』の木原とかがやってくるだろうが……もし気が使えなくてもベクトル操作による身体能力向上がある限り俺の敵ではない。

アレイスター辺りは微妙だ。

学園都市にはまだまだ俺の知らない……アクセラレータの知らない闇がある。
そしてアレイスターしか知らない事も多い。
逆に言えば、アレイスターも知らないことがあるのだ。
アレイスターの未知に俺は勝つ事はできないだろう。
例え能力が完璧だとしてもだ。
「……ままならねェな」

世の中ってのは。

俺がここで平穏を過ごしている間にも、ミサカ達には彼女達にとっての日常という名の軍事訓練が行われている。
それはとても腹が立つ。
超能力者という力を持つ彼女達が反抗しないのもそうだが、おそらくその現状で納得しているだろう彼女達に対して。
だが、それは俺の予想でしかない。
もしかしたら百体ほどになった後に蜂起するのかもしれない。
そうなればそうなったで面白いことになるだろうな。
何せ『超電磁砲』百人の反乱だ、どれだけの被害が起こるか、アレイスターの計画にどれだけヒビが入るか想像するだけで楽しそうだ。
そんな想像をしていると、俺の言葉を聞き取ったのだろう、ミサカが首を傾げた。
「何がですか、とミサカは首を傾げます」
「この世だ」
「……意味が不明なのですが、とミサカは訝しげな視線を向けます」
「わかンねェならそれでいい」

帰り道。

既に人通りがほとんどなくなった夜道を歩きながら、ミサカはどこか不満そうにしながらも口を噤む。
彼女が何を考えているのかわからんが、どうやら今の俺に話しかけても無意味くらいのことは考えたようだ。
その手の中にあるカエルのマスコットをじっと眺めているからそんな事を考えているのかどうかも不明だがな。
ちなみに、彼女はヒヨコよりもカエルを選択した。
この辺りはオリジナルの性質なのだろうか。
確か原作ではヒヨコだったはずなのだが……まあ、個体で差が出るのかもな、と考えておく事にする。
それを発端として俺が今日を振り返っていると、あることを思い出した。
「あァ……しまった」
「どうしたのですか、とミサカは尋ねます」
「いや、テメェを紹介しなけりゃなんねェクソガキがいるンだが、それを忘れてた。明日でもいいか?」
「やることは特にないので構いませんが、そういう不手際はないようにしてください、とミサカは注意します」
それに答えることはなく、俺は帰り道を歩く。
しょうがないだろ、俺のうっかりは生前からだ。
ただ認めるのも癪だったのだ。
我ながら子供っぽいなと思う。
そのまま暫く歩くと、自宅であるアパートについた。
ボロな階段を上ると、俺の家の部屋の明かりがついているように見えた。

いや、ついている。

間違いない。
「正月早々暇なンだな、ガキども」
「…………」
俺がそう言うと、何故かミサカが俺を見上げてきていた。
ただじっと見られるというのも気恥ずかしいので、俺は彼女を見下ろす。
「ンだよ」
「嬉しそうですね、とミサカはアクセラレータの心情を分析します」
嬉しそう?
……そうか。

これがウレシイって奴か。

しかし、それを生まれて一年も経たない奴に指摘されるとはな。
それもそれで一興か。
「そうかもしれねェな」
俺がそう答えると、ミサカは訝しげに半眼になった。
「やけに素直ですね、とミサカはじろりとアクセラレータを見上げます」
「うるせェな。俺が素直じゃ悪ィのか」
「悪くはありませんが無気味です、とミサカは断言します」
やっぱ俺の印象はそうなんだな。
俺が部屋の前につくと、ミサカは当然のように俺の後ろで扉を開けるのを待っている。
「……オイ、家に帰らねェのか?」
「帰ったとしても備蓄がありませんので、とミサカはゴチになりますと暗に告げます」
「ハァ……しょォがねェな」
ミサカに飢えられると寝覚めが悪い。
俺は何やら騒がしい俺の家の扉をガチャリと開けた。
鍵がかかってなかった……というよりいつも通りこじ開けられていた。
下にある靴の数を見て、こりゃ意外と大所帯だな、とため息をつく。
実際、こんな声が聞こえて来る。

「茶々丸、そこの小娘からさっさと肉を奪え!」
「了解しまし―――むっ、速い!」
「甘ァああああああいッ!!茶々丸さんの行動にタイムラグがあるのは既に承知してますっ!!『ゴールデンフィンガー』の異名を持つ鍋将軍の私がいる限り好きにはさせませんよーッ!!」
「か、覚醒!?佐倉さんが覚醒してるーッ!?ま、魔力だけで凄まじいオーラが!?」
「というか愛衣、あなたそんなキャラでしたか!?アクセラレータさんに関わる内にどんどんキャラが変化していってませんかーッ!?」

パワフルどころかとんでもねえ鍋をつつきあっている馬鹿どもの声を聞きながら頬を引きつらせていると、後ろにいるミサカがポツリと言った。
「……類は友を呼ぶと言います、とミサカは告げます」
「じゃあテメェもそォじゃねェか」
自爆気味なミサカの言葉にため息をつきながら、俺はこの馬鹿騒ぎを鎮圧するためにベクトル操作で暴風を巻き起こす準備をはじめた。






SIDE エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル

私とした事が……迂闊だった。
まさか佐倉愛衣との肉の取り合いに夢中になりすぎて部屋に入ってきたアクセラレータに気付かなかったとは……。
その上不意をつかれて奴の風で外に吹き飛ばされる始末。
満月ではないのでただの人間である私は茶々丸に抱えられてなんとか着地した。
佐倉愛衣、高音・D・グッドマン、桜咲刹那も無事着地したようだ。
奴の部屋は三階だから、私達裏の者にとってはなんでもない高さだからな。

むしろ着地に失敗して足をじ~んとさせている佐倉愛衣が問題だ。

タカミチから訊く限りではどこぞの魔法学校で評価がオールAだった秀才と聞いたが、こういう突然な事態には弱いようだな。
私達が宙に浮かんで、あるいは跳躍して奴の部屋に戻ると、『寒い』と言って軽く手を振り、窓を閉めた。
その時佐倉愛衣が締め出されたのは狙ってやったに違いないと思う。
結局奴は迂回して玄関から戻ってきた。
いつもならアクセラレータはそこまでしないから、少しは腹が立ったという事か。

流石に私としてもあの騒ぎは少々やり過ぎだったが。

何故鍋が無事なのか、そして平然とアクセラレータの隣に座って茶を飲んでいるガキは誰なんだということはとりあえず無視する事にして、まず真っ先に頭を下げたのは桜咲刹那だった。
「す、すみませんでした、アクセラレータさん。熱くなると歯止めが利かなくなってしまいまして……」
「いえ、私が『ゴールデンフィンガー』とか言って燃えてしまったからです。桜咲さんは何も悪くないです!」
やはりゴールデンフィンガーは嘘だったか。
それにしては箸捌きが尋常ではなかったような……私であれば余裕だが桜咲刹那が目で追えなくなるくらいの速度だったぞ。

ある意味、こいつも逸材だな。

私がそう思っていると、デコピンくらいの威力で私の額に衝撃が来た。
び、微妙に痛いぞ。
「反省してるこの二人はまだイイが、反省の欠片もねェ幼女はどうなンだか」
「申し訳ありません、アクセラレータさん。マスターはこの通り素直ではないので……」
「それより、とりあえずこの状況を全部説明しろ。状況を把握してェンだ」
「わかりました」
異常なまでにスムーズに話が進む。
なんだかこのごろの茶々丸は非常にアクセラレータに毒されてきていると思う。
対応が誰に対してもたいてい同じだからなのかもしれないが。
「私達はそれぞれアクセラレータさんの家にやってきたのですが、その辺りの経緯は省かせてもらいます。なんとなく、程度なので。それでアクセラレータさんの帰りが遅いのでとりあえず鍋、と」
「なンでそこで鍋が出てくンだよ」
「大勢で食べる事ができて楽な調理というと鍋くらいしかありませんので。それで色々と話があり、何時の間にか鍋主体の鍋将軍合戦となってしまったわけです」
「……端折ってンな。つまりアレか、テンション上がり過ぎて引き下がれねェ所まで騒いじまったってコトか」
「そういう認識で間違いはないかと思われます。あ、ちなみに鍋を提案したのはマスターです」
そういう事実を暴露するんじゃない茶々丸!!
という私の心の声は虚しく、アクセラレータは私に向かって顔を向けた。
はァァァァァ、と大きくムカつくため息をついた。

「……やっぱテメェも2-Aってことか」

「どう言う意味だそれは!?」
「そのまンまの意味だが?」
わ、悪びれもせずにこいつは……!!
私をあの能天気なクラスの連中と一緒にするとは!!
殴りたくても殴ったらこちらが痛いのでプルプルと震えていると、今までずっと喋らなかった女がアクセラレータに言った。

「それよりも今優先すべきは鍋の再開ではないのですか、とミサカは空腹なので催促します」

……なんだこいつの口調は。
いや、わかりやすいといえばわかりやすいのだが……独特だな。
私だけではなく、高音・D・グッドマンや佐倉愛衣も微妙な表情をしている。
しかしアクセラレータは慣れているのか何も戸惑うことなく『それもそォだな』と呟き、自分の皿を取りに台所に向かった。
やけに素直に従ったな……奴も腹が減っているのだろうか。
そう思っていると、桜咲刹那が驚いた様子で女に言った。
「ミサカさん……でしたよね?どうしてここに来たんですか?」
む、桜咲刹那はこいつと知り合いなのか。
ただ、口調からするとどうやら最近……いや、初対面に近い会話だという事がわかる。
ミサカというらしい女は桜咲刹那に顔を向けた。
「アクセラレータの部屋は私の部屋の隣ですし、今日は麻帆良に来たばかりで食料調達もままならない状況でした、とミサカは―――」
と、そこで『ええええええ!?』と佐倉愛衣が絶叫した。
なんだ、うるさいな。
「こ、この部屋の隣に住んでるんですか!?でも、一昨日ここに来た時は誰もいなかったはずですよ?」
「……人の台詞を遮るのは無礼です、とミサカは『黄金の手』に注意を促します」
「お、『黄金の手』?そ、それは私の本名じゃないですってば!」

ブフッ!?

私はミサカの発言に思わず吹いてしまった。
高音・D・グッドマンも吹き出している。
ミサカというらしい女は『冗談です、とミサカは笑いをこらえながらナイスなリアクションに乾杯をします』と無表情でコップを掲げた。
面白いのか面白くないのかよくわからん奴だ。
「ミサカの名前は一方ミサカと申します、とミサカは唐突に自己紹介を始めます。そしてアクセラレータとは遠すぎて他人と断言できるほどの親戚にあたります、と追加説明をします」

ほう、ヒトカタミサカ、か。

奇妙といえば奇妙な名前に首を傾げている者達がいるが、名前自体はどうでもいいことだ。
それよりも、アクセラレータと親戚という事実だ。
アクセラレータは確か、異世界からやってきた者だ。
その親戚というのだから、こいつも、なのか?
雰囲気が独特過ぎて麻帆良の能天気さとうまくマッチしているので肯定しきれんのが問題だが。
やがてアクセラレータが戻って来ると、桜咲刹那と一方ミサカの間に腰を降ろした。
佐倉愛衣とは対面になる。
座った直後、アクセラレータは煮え過ぎた肉をポン酢につけて食べた。
食べながら言う。
「ミサカは昨日、俺と同じく原因不明の転移で麻帆良にやってきた。人とは違う生き方をしてきたからちィと常識知らずだが、そこらへんを考慮して接してくれると助かる。魔法の事は知ってるから隠さなくてもいい」
「昨日のジジイの呼び出しの元凶はそれか?」
「そォだ」
アクセラレータは私に対してだけやけに含みがあるような視線を向けてきた。
どうやら私が思っているように一方ミサカは奴の世界の住人らしい。
ということは、だ。
「じゃあ、こいつも貴様と同じく魔力も気も使わない異常現象が起こせるのか?私としてはそっちの方に興味がある」
「その前に、テメェらはミサカに自己紹介しろ。まだミサカはテメェらの名前もしらねェンだ」
それに反応したのはやはり元来生真面目な高音・D・グッドマンだった。
こいつも以前までは正義正義とうるさかったが、ここ一年で考えが変わったらしい。
まあ、『闇の福音』である私に敵意を向けてこない所を見ると、相当変わったんだと思う。
それぞれ自己紹介をしていき、最後に私が自己紹介をする。
「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ」

「……真祖の吸血鬼の方ですか、とミサカは驚きます」

ほう、私のことを知っているのか?
そう思った私が不敵に笑っていると、アクセラレータが野菜を頬張りながら手を振った。
「俺が教えたンだよ」
……そうか、と私は落胆した。
なんだ、久しぶりにいじめてやろうと思ったのに。
まあ、アクセラレータと同じくこいつも一癖も二癖もありそうだから、からかうのも容易じゃないと思うが。
私がつまらなそうに鼻を鳴らすと一方ミサカが不思議そうに首を傾げて尋ねてきた。
「私のイメージとしては、真祖の吸血鬼とはもっと年上の方かと思っていたのですが、とミサカはミニマムサイズの身長を観察します」
「……言っておくが、私は貴様なんぞよりもよほど年上だからな」
「それは女性として自慢するべき事ではないと思います、とミサカは冷静に指摘します」
「なっ、なにぃ!?」
ひ、密かに気にしていることを言葉尻を捕らえてくるとは!
やっぱりアクセラレータの親近者はマトモじゃないのだな!
私が額に青筋を浮かばせていると、一方ミサカは私の威圧などものともせずに、何事もなかったかのようにアクセラレータと共に鍋をつついている。
この図太さ、本当にアクセラレータと似た所があるな……。
そう思った私はこれ以上何かを言っても無駄だと判断し、深呼吸して落ち着く事にした。
「話は終わったな?」
ああ終わったよ!と怒鳴りたい気持ちを抑える。
クッ、なんだかストレスが溜まるばかりじゃないか!!
「じゃ、ミサカの能力を説明するが……いいか、ミサカ?」
「私が説明します、とミサカは自己主張します」
その言葉通りに、一方ミサカは説明を始めた。

「私の能力は発電能力、電気を起こすことができる超能力者です、とミサカは簡潔に説明します」

それを証明するかのように、一方ミサカがかざした手と手の間でバチバチと電流が流れ、火花が散る。
確かに魔力も気も感じられないな。
改めて見ると信じられん現象だ。
アクセラレータのそれはなんというか無茶苦茶だったので現実感がなかったが、雷の精霊などを呼び出して攻撃する魔法があるので一方ミサカの能力のほうが現実感があったのだ。
一方ミサカは手の間にある電気を消すと、鍋に野菜を入れた。
「電撃の最大出力は約6億ボルトと推定されています、とミサカは言います」
「ろ、6億ボルトですかぁ!?」
「とてつもないですね……それを魔力を使わずに出してのける、というわけですか……」
佐倉愛衣と高音・D・グッドマンがそれぞれ驚きに唸った。
6億ボルトといわれても私としてはピンと来ないが、自然界における電撃の最大出力が十億ボルトじゃなかったか?
それを詠唱もなしにぶっ放す事ができる『歩く雷』……『歩く非常識』のアクセラレータがいなければ確実に危険視されている存在だな。

そして、その気になれば今この場でここにいる全員を感電死させる事も可能だと言うことだ。

流石の私も全開状態ならばともかく、この状態で雷の速度に反応しろと言うのは無茶だ。
障壁で防ぐことはできるだろうが、その威力次第では破られてしまうだろうし。
更に無詠唱で雷を操れると言うことは、ほぼ確実に先制攻撃を撃てるという事を意味する。
撃ち出すタイミングがわからないので雷撃を避けるのは非常に困難だ。
それを避けるためには避雷針を作るしかないだろうが、そんなものがこのあたりにそうそうあるわけないしな。
初対面の敵にはかなりつらい相手だろう。
私が一方ミサカの電撃使いの特性を分析していると、いきなり桜咲刹那が真剣な表情で一方ミサカに尋ねた。
「それで、ミサカさん。昼間の事なのですが……」

昼間?

そういえば、こいつは前に会ったみたいなことをほのめかしていたな。
一方ミサカは昼間の件とやらを思い出したらしく、意見を求めるようにアクセラレータを見やった。
アクセラレータは面倒そうに舌打ちする。
「……俺の能力と記憶のことだろ?」
なるほど、アクセラレータが嫌がるわけだ。
いまだに私とジジイ、そしてタカミチ以外にこいつが記憶喪失を偽っている事、そしてこいつの能力がベクトル操作能力ということを知っている奴はいない。
アクセラレータ自身も結構な話術を誇るが、こいつ等の前だとボロがでそうで嫌なのだろう、実際そんな顔をしていた。
能力と記憶、ということについては佐倉愛衣や高音・D・グッドマンも知りたかった事らしい。
身を乗り出して一方ミサカに詰め寄る。
「アクセラレータさんの記憶と能力について知ってるんですか!?」
「知っていますが、全てではありません、とミサカは期待するなと告げます」
「コラ、説明すンのァ俺だ。自分の事くらい自分で説明する」

一方ミサカから視線が外れ、アクセラレータの方に視線が集まった。

アクセラレータはポン酢につけた肉を頬張ってから話し始めた。
「俺はどォも東京の一角に住ンでたらしい。詳しい場所はミサカでもわかンねェってよ。ンで、俺の年齢は現在十七歳。両親は蒸発して俺一人で生活してたらしい」
両親が蒸発、という言葉に私と一方ミサカ以外の者が沈黙した。
軽軽しく言うが、ここ日本の現代社会において、両親がいなくて生きていくのはかなり大変なことであるからだ。
「俺の一族には……ミサカもそうだが魔法使いの血が通っているらしくてな。俺の能力もそれで発現したモンらしい」
「で、その能力とは?」
桜咲刹那が興味津々とばかりに身を乗り出した。
アクセラレータは気が乗らないとばかりにため息をつきながら答える。

「俺の能力は『ベクトル操作能力』。あらゆる運動量、熱量、電気量の力の向きを操作する事ができる超能力者だ。テメェら魔法使いとは根本的に違う『天然』の魔法使いの一人だ。ジジイに訊いたら滅多にいねェらしいけどな」

「ちょ、超能力、ですか?スプーンを曲げたりするあの?」
「有名なのはそォだな。ありゃァおそらく『念動能力者』。実在するンだから困ったモンだ」
皆、なかなかに驚愕しているが、一般人から見れば超能力者も魔法使いも同じようなものだと思うのだが。
私は一般人ではないが、それくらいの視野の広さくらいは持っている。
しかし、天然の魔法使い、と解釈したか。
納得できそうで納得できん説明だな。
実際、こいつ等もうんうん唸っているし。
「超能力者なんて聞いた事ありません。魔法使いならまだしも、魔力も気も使わずに超常現象を起こせる存在ならもう少し有名になっても良いと思うのですが……」
「そういう連中は差別を受ける。魔法社会でも現実社会でもだ。異端は排除される運命にあるからな。だから俺達超能力者は基本的に身を隠している。バラエティにたまに出てくンのは『こんなのはインチキだ』ということを頭に刷り込ませるためにやってるンだとよ。御苦労なこった」
そうまとめるか……なかなか、本物っぽい話になってきたじゃないか。

凄過ぎる力はかえって反発を招く。

こいつ等もそれを知っているからアクセラレータの言葉が真実なのだと『勘違い』するだろう。
「だから、このことはなるべく内緒にしてくれ。俺が超能力者として有名になりゃァ、他の超能力者が叩かれる可能性もあるからな。……まァ、有名なので言やァ魔法無効化能力者か。あれも一種の天然の超能力者だ」
激レアとされる能力者のことか。
ここで具体例を出されれば信用せざるをえんと言うことだな。
なかなか、こいつも狡猾じゃないか。
実際、魔法無効化能力者が超能力者ということはわからんくせに。
「もっとも、超能力ってのは自覚して発動するモンだ。世の中には自分の超能力を知らずに内包してる連中だって多く存在する。強すぎる能力者の一族なんて戒厳令がしかれてたりするほどだからな」
これで、止めだろう。
ここまで具体的に説明されれば、流石のこいつ等もアクセラレータの言葉を信用するしかなくなる。

実際納得するようにうんうんと頷いている真実を知らない馬鹿どもを見ていると笑いたくなって来る。

佐倉愛衣はガッツポーズでも取るようにして気合を入れながら言う。
「わかりました。そういう理由なら、私はアクセラレータさんの能力を無闇に広めたりしません!約束します!」
高音・D・グッドマンもゴホンと咳払いしながらそれに頷いた。
「私もです。あなたが危機に陥る事はそうそうないでしょうが、私達の短絡的な行動であなたが不幸になるのは私の本位じゃありませんし」
桜咲刹那は力強く頷いた。
「私もお二人と同じ意見です。絶対に喋りません」
三人の言葉を聞いた一方ミサカは驚いたようにアクセラレータを見やる。
「昼間も思いましたが信用されているのですね、とミサカは驚きをあらわにします」
「ウゼェだけだ」
そう言ってアクセラレータはコーヒー缶を掴んでその中にある液体を喉に流しこんだ。
「照れ隠しのつもりか?バレてるぞ」
「…………」

私が告げても表情変えずにだんまりか、面白くないやつめ。

もちろん私がいうまでもなく三人は気づいてたらしい、それぞれくすりと笑うと席を立った。
「それじゃ、私達はこれでおいとましますね。お姉様、行きましょう」
「ええ。レアな光景も見れたり、今日は満足です」
そう言って佐倉愛衣と高音・D・グッドマンが部屋から出ていくと、最後に桜咲刹那が一礼して去っていった。
最後になんだかアクセラレータに笑みを向けていたのが気になるが……クッ、おもしろくない。
三つの気配がこのアパートから遠ざかっていくのを確認した後に、私は首を小さく振ってアクセラレータに反射を解除するよう指示し、念話でアクセラレータに尋ねた。
念話も反射ではじいてしまうコイツと念話で話すには合図をしなければならないのである。
面倒だが、しょうがない。
『いいのか、本当の事を言わずにいて』
すると、反射を切ったアクセラレータは即座に答えた。
『知らずにいて良いことは腐るほどある。奴らはどォせ後3,4年もすりゃァ麻帆良から出ていく連中だ。奴らが俺のことをどう思ってるのかくらいは把握してるつもりだ。そのイメージを崩したくねェ』
『ふん……嫌われるのが恐いのか?貴様らしくないな』
『俺が嫌われるのは別にいい。そうなった場合、ミサカの立場がなくなっちまう』

一方ミサカだと?

なんでこの女をそんなに気にする?
まさか親類と言うだけでそこまでする男でもないだろうに。
『このミサカという女も貴様の親戚ではないのだろう?貴様と同じ世界の出身だから、かなりヤバいことに関わっていたんじゃないのか?』
アクセラレータはそれを聞いて、しばらく黙った。
だが、言ってくれた。
『こいつは学園都市の最暗部に位置する存在だ。ヤバいどころか、こいつの存在の理由を知れば殺されるくらいの立場にいたンだよ』
『……そんなトップシークレットなのか?』
『間違いねェ』
おそらく、これがアクセラレータにとっての最大限の譲歩なのだろう。
それ以上は言う必要もないし、言いたくもないに違いない。

私にも、言いたくない過去は存在するからな。

「茶々丸、行くぞ」
「はい、マスター。それではアクセラレータさん、ミサカさんも、失礼いたします」
「おやすみなさい、とミサカは手を振って見送ります」
しかし、と私は思う。
この一方ミサカという女の口調は慣れることはないな。
それはカンでもない、ただの確信だった。






SIDE 一方通行

「どうして私たちの世界の事を話さなかったのですか、とミサカは疑問に思います」
連中が帰った後、ミサカは真っ先にそう聞いてきた。
超能力がこの世界に存在するなんて、そんな事は知らない。
魔法無効化能力者が超能力者なんてことも知らない。
俺はミサカの質問に対して、こう答えた。
「俺たちの情報が漏れるのはまずい。例えあいつらでも話したらまずいことになることだってある」
「しかし、あの人たちはあなたの事を信用しているようでした、とミサカは抗議します」
「…………」
そんなことはわかっている。
俺だってそうなんだ、それくらいはわかってる。
だが、俺は危険性を考えたのだ。
あいつ等が俺たちの事を話すと言う危険じゃない。

いずれ俺たちの能力がバレた時、俺たちに対して興味を示してくる連中の対策だ。

俺たち超能力者に興味を持ってくる連中がいないとも限らない。
その場合、あいつ等が標的になるのは避けなければならない。
「俺たちの情報はヤバすぎる。それはテメェにだってわかってンだろ。深入りさせる前に、ある程度の理由で納得させた方が向こうのためだ」
「それは、そうですが……」
ミサカも言葉を濁す。
もしもこの場にいるのが上条当麻と御坂美琴であればこんな事はしなくても良かっただろう。
連中が持ってるのは一般的な情報のみだからだ。
だが、俺たちが持っているのは学園都市の闇の記憶。
そして、俺たちがこうして付き合っているのがおかしいと思える俺たちの関係。
このままズルズルと全てを話していったら、それらすべてを話してしまいそうになる気がする。
全部話しそうになって怖い。


『俺』のことまで話しそうになって、怖い。


俺は舌打ちをした後、ソファーの上に寝っ転がった。
「俺ァもう寝る。お前も帰れ」
「……わかりました、とミサカは答えます」
そうしてミサカが帰った後、俺はコーヒー缶に残っていたコーヒーをすべて飲み干し、中途半端に温いそれにイラついて缶を握り潰す。
缶の中に僅かに残っていたコーヒーが、血のようにポタポタとテーブルの上に落ちた。
叫びたくなる衝動を抑えつけ、歯ぎしり。
なんとなくだが、『一方通行』の気持ちがわかった気がする。
彼が人を遠ざけた気持ちというものが。

楽なのだ。

自分だけを守れば良いから。
反射を使って守っていれば、自分が傷つくこともないから。
だが、俺は関係を持ってしまった。
親しいと断言しても過言ではないくらいの。
それはとても捨てがたい、暖かいものだ。
それを守らなければならないために、俺は嘘をつく。
つきたくない相手に。
そして一応、これはミサカを守るための処置でもある。
ミサカが2-Aに行くとして、その前に下手な情報でも出回ったらミサカの今後の関係に関わるだろう。
ミサカは『超能力を扱える女の子』という情報だけ与えておけば良い。
クローンというだけで憐みの視線を向けられると言うのは、多分つらいだろうと思うから。
それが偽善だとわかっているから、俺の心は軋む。
不愉快で、イラつく。
「……クソッ」
俺は更に、缶を縦に握り潰し、掌の中に握りこんで圧縮した。
それをコーヒー缶が溢れているゴミ箱の中に叩きつけ、俺は寝室に向かう。
さっさと眠れるとは、とても思えなかった。






~あとがき~

ミサカ初顔合わせの巻でした。
さて、ほのぼのとしていたアクセラレータファミリーの中にミサカと言う火種が投下されました。
彼女らからすれば意味不明かつ正体不明な彼女の事を気にする事でしょう。
精神が揺れます……すみません、こういう状況が好きなんです。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02803897857666