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No.21322の一覧
[0] とある転生者の麻帆良訪問(ネギま!×とある魔術の禁書目録 オリ主憑依)[カラーゼ](2010/10/31 15:16)
[1] 第1話[カラーゼ](2010/09/04 00:26)
[2] 第2話[カラーゼ](2010/09/04 00:28)
[3] 第3話[カラーゼ](2010/08/21 12:48)
[4] 第4話[カラーゼ](2010/09/04 00:29)
[5] 第5話[カラーゼ](2010/09/04 00:32)
[6] 第6話[カラーゼ](2010/09/04 00:33)
[7] 第7話[カラーゼ](2010/09/04 00:35)
[8] 第8話[カラーゼ](2010/09/04 00:38)
[9] 第9話[カラーゼ](2010/08/24 20:46)
[10] 第10話[カラーゼ](2010/09/04 00:41)
[11] 第11話[カラーゼ](2010/08/25 23:45)
[12] 第12話[カラーゼ](2010/09/04 00:42)
[13] 第13話[カラーゼ](2010/08/28 20:02)
[14] 第14話[カラーゼ](2010/08/28 18:04)
[15] 第15話[カラーゼ](2010/08/29 12:30)
[16] 第16話[カラーゼ](2010/09/04 00:43)
[17] 第17話[カラーゼ](2010/08/30 18:21)
[18] 第18話[カラーゼ](2010/08/31 22:41)
[19] 第19話[カラーゼ](2010/09/04 00:24)
[20] 第20話[カラーゼ](2010/09/03 22:22)
[21] 第21話[カラーゼ](2010/09/04 17:48)
[22] 第22話[カラーゼ](2010/09/05 23:22)
[23] 第23話[カラーゼ](2010/09/05 20:24)
[24] 第24話[カラーゼ](2010/09/06 20:43)
[25] 第25話[カラーゼ](2010/09/08 00:52)
[26] 第26話[カラーゼ](2010/09/11 21:59)
[27] 第27話[カラーゼ](2010/09/13 12:53)
[28] 第28話[カラーゼ](2010/09/15 14:10)
[29] 第29話[カラーゼ](2010/09/16 03:25)
[30] 第30話[カラーゼ](2010/09/19 00:34)
[31] 第31話[カラーゼ](2010/09/24 21:39)
[32] 第32話[カラーゼ](2010/09/30 00:28)
[33] 設定集[カラーゼ](2010/09/29 00:48)
[34] 第33話[カラーゼ](2010/09/28 00:13)
[35] 第34話[カラーゼ](2010/09/30 17:36)
[36] 第35話[カラーゼ](2010/10/04 23:06)
[37] 第36話[カラーゼ](2010/10/14 12:10)
[38] 第37話[カラーゼ](2010/10/14 23:18)
[39] 第38話[カラーゼ](2010/10/31 15:29)
[40] 第39話[カラーゼ](2010/11/07 15:05)
[41] 第40話[カラーゼ](2010/11/08 01:44)
[42] 第41話[カラーゼ](2010/11/10 01:14)
[43] 第42話[カラーゼ](2010/11/12 01:21)
[44] 第43話[カラーゼ](2010/11/21 20:08)
[45] 第44話[カラーゼ](2010/11/21 20:12)
[46] 第45話[カラーゼ](2010/12/06 16:45)
[47] 第46話[カラーゼ](2010/12/06 16:48)
[48] 第47話[カラーゼ](2010/12/05 13:38)
[49] 第48話[カラーゼ](2010/12/19 02:01)
[50] 第49話[カラーゼ](2011/01/17 16:43)
[51] 第50話[カラーゼ](2011/03/29 01:58)
[52] 第51話[カラーゼ](2011/05/29 01:44)
[53] 第52話[カラーゼ](2011/08/18 15:44)
[54] 第53話[カラーゼ](2011/09/03 18:05)
[55] 第54話[カラーゼ](2011/11/04 21:57)
[56] 第55話[カラーゼ](2012/08/27 00:24)
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[21322] 第17話
Name: カラーゼ◆68f6dca0 ID:11f779aa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/30 18:21
SIDE 一方通行

麻帆良祭が終わった。
それからの数日間は晴れていた。
あの騒がしい麻帆良祭が起こっていた場所とは思えないくらい、麻帆良は静かである。
世界樹の上から麻帆良を眺めていて、そう思う。
現在は昼。
夕暮れ時以外にこんなところに登るというのは俺としては珍しいが、ちょっと考える事があったのだ。
世界樹の枝はそこらへんのベンチに寝転ぶくらいに安定感があるのでそこに寝そべり、さわさわと揺れる葉を見上げながら考える。
こうして一人になると良く思う事なのだ。

どうして、俺はアクセラレータになっているのかと。

そんなもん知るか、の一言で終わってしまいかねないが、俺は突如としてその思考に陥ることが多い。
どうも俺が気になっていることらしいが、それすらも良く分からない。
麻帆良祭を様々な人々と過ごし、経験し、接してきてわかってきたのだが、俺はどうも思考が一方通行寄りになることが多いらしい。
俺が何やら『一方通行』になってアイツが説教する、というのは数えるほどしかないが、俺は何度か一方通行に身体を乗っ取られている。
いや、むしろ俺が乗っ取っているから俺が害虫なわけで、一方通行が現れるのはむしろ当然と言うわけだ。
それが、俺は心苦しい。
もしも乗っ取られているのが俺なら、と仮定すると、俺は心中穏やかじゃないだろうからだ。
俺の中にいる一方通行はどうやら表に出たがっていると言うわけでもなく、ああいう時にしか出てこないと言う事は少なくとも現状に納得している、と言う事だろうか。
他人の考えている事はわからない。
だが、だからこそ俺は怖くなる。
皮肉な事に、一方通行の頭脳を持っているから、一方通行の考える憎悪などといった思考がすぐに想像がついてしまうのだ。
無論予想にすぎないが、だから俺の予想は無限に広がるし、いくらでも想定できる。
もしかしたら一方通行は俺に対して好意的で、だからこそ身体を預けてくれている、とも取れれば、一方通行は俺なんぞに身体を乗っ取られて怒り心頭であるが、身体を乗っ取られている以上どうにもならないため我慢している、とも取れる。
いるにはいるが、その気持ちを察することができない存在に対して気持ちを考慮するのは難しい。
難しいどころか、不可能だ。
俺はそう思う。

時折、自分が自分じゃないように感じる時がある。

勝手に口が滑っていたり、俺が俺であった時よりも思考がいやに暴力的であることがわかる。
客観的にそれがわかることが、俺には異常に思えるのだ。
自分の気持ちは自分が一番わかるという言葉をよく聞くが、俺はそれをもっともだと思うと同時、今の状況に当てはめればそれは違うと思ってしまう。
同時に二つの思考が『俺』の中に存在していることに気づいたのは、麻帆良祭最終日の超との会話だ。
あの時、俺は不自然だった。
まだ俺もその正体についてはわからないが……『俺』としての思考の中に、『俺』という別の思考があるのだ。
わかりづらい。
例えれば、取捨選択だ。
俺が欲しいと思うそれを手に入れたいと思う俺がいて、同時に俺は欲しくないと思ってもいる。
それを選択するわけでもなく、相反する意識が取捨されるわけではなく同時に存在するなんておかしい。
このごろの俺の思考もそうだ。
前の俺であった頃よりも確実に暴力的な思考にすり替わっていっていたのは、はたして俺の意思なのか?
そもそも憑依した時点で俺が前の俺であるかどうかなんて不明なのだが……。
確かに今の俺はアクセラレータであるが、同時に俺でもある。
なのに何故俺は一方通行であろうとしたのか……俺の意思じゃない俺の意思がそこにある。

それは非常に怖い。

時折こうして自己の意思を確認しないと自分が自分ではなくなっていく気がする。
人と話し、関わり、交わりを持つことで俺はいつの間にか一方通行と混同してしまっていたのではないだろうか。
麻帆良祭では、特にそれが出ていた気がする。
俺は一方通行の口調であり、外見である。
年月が過ぎる内に、俺はいつの間にか一方通行になりかけていたのではないだろうか。
俺の中にある二つの思考の一つは、もしかしたら一方通行の思考が俺の中に割り込んできたのではないだろうか。

俺はアクセラレータだと、一方通行なのだと、そう自覚させることで。

俺は昨日そう思い、タカミチと会話をしてみた。
無論、他愛のない世間話である。
その時、俺は俺であることを強く思った。
それでいて、会話する時も言葉選びをして、俺の回答をした。
すると、タカミチは『今日は機嫌が良いみたいだね』とか言ってきた。
あの時の気分は決して良いものではない。
むしろ、会話自体が俺にとって作業的なものであり、悪かった。
だが、それをタカミチは機嫌が良い、と言う。
今まで全く検証してこなかったが、俺はやはり一方通行の思考に寄ってきた思考で相手と会話を行っていた、ということになる。
そしてそれが俺の思考であるからこそ、俺は不自然を覚えない。
徐々に、俺は一方通行になっていくわけだ。

それを自覚した瞬間、俺はとてつもない恐怖に襲われた。

俺が俺でなくなる。
しかも、俺の知らない内にすり替わるように。
その恐怖の凄まじさと言ったら、ない。
俺は拳を握りしめ、耐える。
自分が自分でなくなることがこれほど怖いものとは思わなかった。
なんとなくであるが、自分の本能が告げている。

危険だ、と。

何に対する危険なのかがわからない以上余計にその不安を煽ってくる。
俺の精神がその不安によって摩耗することも計算ずくなのだろうか、一方通行は。
だとすると到底自分が敵うような存在ではない。
いや元々そうであるが、尚更とんでもない存在だ。
一方通行の事を自分とは違う存在であることを強く意識し、俺はその不安を振り払う。
更に思考から消そうと努力するのではなく、無気力に何も考えずにボーっと世界樹の葉を見上げる。
何も考えなければ先の事なんて考えなくて良い。
自分の思考が乗っ取られるなんて心配しなくても良い。
現実逃避的な考えにとらわれている事を自覚しながら、だが俺はひたすらに何も考えずに葉を見上げる。
そして、いつの間にか眠りに落ちていた。






ハッと気づくと、太陽はさっきよりも少し傾き、葉の影が違う風に見えていた。
頭をかきながら身体を起こし、目をこすりながら幹に身体を寄りかからせる。
さっきは軽いパニックに陥っていたのだ、と思う。
思う事にして、ならばどう対策を取るか、という前向きな思考に移る。
いや、対策を取ることは不可能だろう。
即座に俺の思考はそれを断定した。
そういう精神系統のことなんて俺にはさっぱりだし、実際一方通行の精神が侵食してきているのか、それとも肉体に精神が引っ張られているのかどうかもわからない。
あまりにも不確定要素が多い中、対策なんて取るのは不可能だ。
ならばどうする、という話になる。
俺は俺でなくなるのが怖い。
怖いが、かと言って一方通行を支配したいわけではない。
できるだけなら、俺と言う存在と一方通行という存在がうまく共存していきたいと考えている。
今現在、この身体を乗っ取っている俺からすればなんとも都合の良い話だ。

一方通行からすれば反吐が出る話だろう。

彼からすればそのまま乗っ取れば良い話なのだから。
ならどうするか。
俺の思考はだんだんと無限ループに落ち込んでいく。
どうするか、という疑問を立ち上げ、それは不可能だと断定する。
そんな無意味かつ無価値な思考を繰り返していく内に、俺は疲れてしまった。
ふぅ、と一つためいきをつく。
無性にコーヒーが飲みたくなり―――またその思考が一方通行寄りだと思い、俺は頭を殴りつける。
ガンッ、という音だけが響く。
反射で殴った痛みも殴られた痛みも感じなかった。

現実からの逃げ、ということはわかっている。

だが、逃げずにはいられないのだ。
立ち向かうと言う選択肢があれば、俺もそちらを取りたい。
その結果俺が一方通行になってしまうのであれば、それでも良い。
悔いはない。
だが、立ち向かう事もさせてくれず、ただじわじわと敗北を待つばかりというのは、果てしない恐怖を感じる。
四面楚歌になった状況にいる人たちはこういう気分なのだろうか、と思う。
何も考えない状況にして一度自分を落ち着かせ、俺は再度思考を行う。

『俺』と言う存在は果たしてどうなっているのか。

現在、俺の―――いや、一方通行の体には俺と一方通行の二つの意思があるはずだ。
それは俺も確認しているし、でなければ説明がつかない。
そうして、その中に俺とは違う俺の思考もある。
まったくもってややこしい。
そしてその違う俺の思考は、どうやら俺を一方通行に染め上げたいらしい。
そんな気がする。
俺はもともと二重人格ではなかったが、一方通行に憑依して三重人格になった、と言う事だろうか。
……ええい、ややこしいにもほどがある。
思わず思考を放棄してしまいそうになるが、踏みとどまる。
俺にかかわる事だから。
さて、これまでの俺の行動を検証してみることにする。
この際だから、全部。
俺はこの世界に来た時、色濃く『俺』を残していた。
タカミチや刀子、刹那を見てハシャいでいたりしたことからそれは明らかだ。
慣れ、というのもあるが、例えば俺が今からタイムスリップして『紅き翼』とご対面しても、俺はハシャいだりしないだろう。
エヴァと超の説教の後辺りからだ、俺が俺じゃなくなってきたのは。
唯一俺が俺らしく真剣に話せたところは……刹那の翼の所だけだろうか。
いや、あの時も『一方通行』が出てきていたか。
ありがちな話だが、もしかしたら一方通行を表に出すごとに、俺は一方通行に近づいて行くのかもしれない。
それとも、一方通行が外に出やすくなってきているのだろうか。
何度も開けていると瓶の蓋が緩みやすくなるように。
だとすると、これから一方通行の出現は抑えなければならない。
俺の消滅がかかっているから。
共存できるのならそれが一番だが、共存できる話し合いの場がないのなら、もう俺が取る行動は勝つことしかなくなる。
好きで消滅なんてしたくない。
それともこの均衡状態を永遠に保つか―――まあ、それは無理だろうがな。
おそらく、というか確実だろうが、俺は負けるはずだ。
この身体の持ち主が一方通行なのだ、ただ憑依している邪魔者が削除されて当然だろう。
それまでこの身体で好きなだけ勝手するか、とは言わない。
俺は俺らしく生きてみたい。
結局、俺の結論はそこに行きつくのだ。
一回死んで、憑依して、んでもって消滅するんなら、俺は俺としてこの世界で死にたい、と思う。
かと言って、この身体に抗うのはつらい。
タカミチと自己を強くもって話すと軽く書いたが、あれは相当に精神力を使う。
いつもあんなことをしていたら、いずれ俺はノイローゼになってしまうだろう。
……それじゃあ本末転倒だ。

だから、俺はこの身体に流されてみようか、と思う。

それじゃあ乗っ取られるだろう、と思うのだが、その時はその時だ、と思う自分がいる。
俺の前世のように、死はいつ訪れるかわからない。
今この瞬間世界樹の魔力が暴走してここら一帯が後からもなく吹き飛ぶとか、月が落ちてくるとか、どこぞから撃たれた核が降ってくるとか。
馬鹿げた妄想だとは思うが、あらゆる可能性は0じゃない。
数式でもなければ。
無論、ただ流されるわけではなく、俺は一方通行ではなく『アクセラレータ』になってやろうと思う。
この身体に抗うだけでは、いずれ俺が消滅して終わりだ。

だから、共存を図る。

それこそ無理矢理、だ。

話し合いの場なんて設けられるはずがないから、敵対するのではなく無理矢理に共存に持ち込む。
それが俺としての最善だ、と思うのだ。
だから、俺は『アクセラレータ』を演じる。
共存するには、こういった俺と一方通行の均衡状態が一番だ、と思うのだ。
完全な『一方通行』にならないために。
だが……いずれ話せる機会があったら一方通行と話してみたい。
何も取り繕わず、素直な彼の話を聞いてみたい、と思う。
何のことない、ただの馬鹿な妄想かもしれない。
だが、俺の中に一方通行がいるのは事実だ。
彼の考えを聞いてみたい。
俺を排除するのか、俺と共存するのか、引きさがるのか。
三つ目はないと考えて、まず俺は不利になるだろうな、と暢気に思う。
何度も言うが、この身体の持ち主は一方通行。
俺が俺である存在を主張するには変わりないが、第一の権利は彼にあるのだ。
怖いが、しょうがない。
空を仰いでいると、いつの間にか空が赤くなり始めていた。
夕焼けの始まりである。
赤く染まり始めた空を美しいと思いながら、そう言えばこの思考は俺なのか一方通行なのか検証していなかった事を思い出す。
憑依する前にこれほど見事な夕焼けを見た事はなかったから、俺がロマンチストなのか、一方通行がロマンチストなのかわからない。
まあ、一方通行はリアリストだ、という印象に変わりはない。
だが、この夕焼けを見ている時は非常に落ち着いた気分になるのだ。
どうしてだろう?
その思考に辿りついた後、俺にひらめくものがあった。

どっちもロマンチストだったら、違和感はないはずだ、と。

俺と一方通行の共通点……探してもそうそうないだろう。
だが、こういう共通点を持っているのなら、なんとなく共存もできるのかな、と甘い考えを持ってしまう。
実際、彼には共存する義理などないと言うのに。
じりじりと沈みゆく夕日を眺めていると、俺を呼ぶ声が下から聞こえた。
視線だけ下に向けると、愛衣が両手を振って俺の名前を呼んでいた。
その隣には腕を組んでいる高音も見える。
俺は俺の名前を反芻する。

そう、俺は『アクセラレータ』だ。

恐怖をねじ伏せ、俺は心の中で呟く。
ガチン、と何かスイッチが切り替わる感覚。
この時、俺はなんとなくであるが、現在の状況を把握する。
この一方通行の体には、憑依者である『俺』、そして身体の持ち主である『一方通行』、そして俺が一方通行に憑依することでできてしまった中途半端な人格『アクセラレータ』があるのではないか、と。
アクセラレータという奴の人格が俺と似通っているせいで、俺は混同していたのだろうか。
そのアクセラレータが俺なのか、それとも俺がアクセラレータと勘違いしているのか、そもそもアクセラレータなんておらずに、ただの俺の勘違いなのか。
認識の違いで身体を乗っ取られるとは、なんともわからんね。
夕日が照らす中、堂々と浮いて降りたら流石にまずいため、俺は木の幹を蹴って着地した。

『アクセラレータ』の思考のまま。

「おォ。何か用か?」
「用がないと話しかけちゃいけないんですか?」
不思議そうに愛衣が首をかしげる。
「商店街に行こうとしてここを通りかかったら、偶然あなたを見つけたんです。愛衣がどうしてもと言うから―――」
「ええっ!?ちょ、私そんなどうしてもとか言ってません!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を見ながら、俺は思う。
コイツ等には心配をかけちゃいけない、と。
気を使われるのも勘弁だ。
俺とコイツ等はただただ友人である間柄がちょうど良い。
ある程度の距離を取り、そこそこな関係でいる方が良い。
それが、最善だ。
その内心を隠し、俺は肩を竦めながら、踵を返して商店街方向へ歩きだす。
「わかったわかった、さっさと行こォぜ。俺も腹減った」
「って誰も一緒に行くなんて一言も―――なんで愛衣は自然に後ろについて行ってるの!?」
「ふぇ?ダメですか?」
「ダメじゃないけど……ああもう、仕方ないですね……」
俺の後ろに愛衣、高音と並び、そのまま俺たちは商店街に向かう。
俺は『アクセラレータ』だ。

完全な『俺』ではなく、また完全な『一方通行』でもない。

やはり、中途半端な思考の俺にはそういう中途半端な存在の響きが心地よい。
夕焼けに照らされ、世界樹の幹に俺たちの影が映される。
その幹に映った影が、俺には一瞬だけ五つに見えた。






~あとがき~

今回はとてつもなく短いですね。
主人公の独白……というよりも、精神状況の説明だけだったのでそうなるのも無理ないかもしれませんが……。

結論として、『俺』は『一方通行』に意識を乗っ取られないように『アクセラレータ』になることを決意しました。
思考は一般人、そして姿は一方通行。
どちらに偏ることも現状ではありえない、ということですね。
だから現状を維持することにして、一方通行と対話する時を待つ。
対話できるかどうかも不明ですので、主人公の無駄な努力かもしれません。
序盤で主人公がそこらへんにいる青年っぽい感じの考えが目立っていたのに対し、麻帆良祭編での主人公の思考が暴力的で一方通行寄りだったのはこういうわけです。
何やら言い訳っぽくなってしまいました……すみません。

これからも主人公は精神の侵食に悩まされることになります。
愛衣や高音を前にした時のように、絶対に彼女ら友人にはバラすことはないように隠しながら。
心配かけたくない、という彼のつまらない意地だったりします。
でも、そういうつまらない意地を張ったりするのが男なんじゃないかなあ、と私は思います。


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