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赤松健SS投稿掲示板


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No.21017の一覧
[0] 【完結】千雨からロマンス(ネギま×親指からロマンス)【修学旅行編追加】[I・B](2015/08/02 23:00)
[1] プロローグ[I・B](2010/08/19 09:17)
[2] 第一話[I・B](2010/08/21 10:13)
[3] 第二話[I・B](2010/08/21 10:18)
[4] 第三話[I・B](2010/08/25 11:42)
[5] 閑話[I・B](2010/08/24 10:39)
[6] 第四話 前編[I・B](2010/08/25 11:43)
[7] 第四話 後編[I・B](2010/08/26 18:33)
[8] 第五話[I・B](2010/08/28 12:48)
[9] 第六話[I・B](2010/08/30 08:28)
[10] 第七話[I・B](2010/08/31 15:25)
[11] 第八話[I・B](2010/09/06 10:54)
[12] 第九話[I・B](2010/09/09 11:39)
[13] 第十話[I・B](2010/09/11 10:35)
[14] 最終話[I・B](2010/09/13 13:10)
[15] エピローグ[I・B](2010/09/14 10:54)
[16] 番外編[I・B](2012/03/03 10:47)
[17] 修学旅行編1[I・B](2015/08/02 23:01)
[18] 修学旅行編2[I・B](2015/08/04 01:14)
[19] 修学旅行編3[I・B](2015/08/08 09:30)
[20] 修学旅行編≪終≫[I・B](2015/08/08 09:40)
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[21017] 第三話
Name: I・B◆5d02e568 ID:617c8265 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/25 11:42
この麻帆良学園は、私の感性で見て色々とおかしいところがある。

島が丸ごと図書館で、しかも中身はダンジョンじみているとかいう、図書館島。
明らかに世界遺産レベルなのに、取材なんかは一度も来たことがない世界樹。
常識外れな部活動や、オリンピックレベルの身体能力を持つ生徒、先生達。

この、ただの中学生に使わせるには色々とおかしい大浴場も、その一つだろう。

だが、私はこの風呂が気に入っていた。
広い空間でのんびり出来るということは、リラックスできるということ。
その後は血流が良くなって、マッサージの効果が上がるという、ことなのだ。













千雨からロマンス 第三話 ~ドッヂボールで親指パニック!?~













「大浴場、バンザイ」
「真顔で何を言っているですか。千雨さん」

自分で言って自分で頷いていた私に、綾瀬が嫌そうな表情でツッコミを入れた。
そんなことを言われても、困る。私は、表情を変えるのが苦手なのだ。

「綾瀬、また凝っているぞ?」
「ハルナの手伝いのせいですね。おそらく」
「と、いうことは早乙女と宮崎も……おぉ、イキの良いツボーズだ」

私に向かって、沢山のツボーズが手を振っていた。
早乙女の天柱と風池は、私の常連だ。あいつは目を使いすぎる。
まぁ葉加瀬もそうなんだが……私がマッサージをするのを妙に嫌がるんだよな。

常識がどう、科学がどうと、ぶつぶつと頭を抱えだすのだ。
マッサージ師のことが信じられないのなら、一度“大貫マッサージ学校”にでも行ってみればいいのに。

マッサージ界のキングとか呼ばれている大貫先生の学校。
あそこへ行けば、私クラスのマッサージ師なんざごろごろしてるぞ。

「ままならないな」
「何がですか?」
「キングの下へ行けば、葉加瀬も救われるだろうに」
「あ、新手の宗教でしょうか?」

綾瀬は、たまに失礼なことを言う。
突拍子もないことを、とは言うが、話しの流れから自然な会話だったろうに。

「ところで千雨さん」
「なんだ?」

頭を洗っていた私に、綾瀬がため息をつきながら尋ねた。
人の顔をまじまじと見つめながらため息とは、失礼なヤツだ。

「……どうして、眼鏡を外していないのですか?」
「趣味だ」
「――――素顔が、みられないじゃないですか」

丁度、桶で頭を流した瞬間に、綾瀬が何かを呟いた。
しかし、水の流れる音でまったく気がつかなかった私は、よく解らずに首をかしげた。

「うん?何か言ったか?」
「な、何でもないです!」

変な綾瀬だ。
まぁ、綾瀬は普段でも、時々変だが。
どうも、私と話していると綾瀬は脇道にそれることがあるのだ。

「――――そう、例えば、プロポーションも完璧な、この私のような」

雪広の声が、大浴場に木霊する。
考え事をしている最中に、話が進んでいたようだ。

「なぁ綾瀬、なんの話しだ?」
「あっ、千雨ちゃん!胸の大きい人の部屋に、ネギ先生が移るらしいよ~」

割って入った早乙女が、私に説明をした。
胸の大きい人というのがなんの関係があるのか解らないが、とにかくプロポーションの良い人間の部屋に移る、ということになったのだろう。

ネギ先生が部屋に来ることに、いったいなんのメリットが……。

「……部屋に来る、だと?」
「ち、千雨ちゃん?」

早乙女が、なにやら小さく呟いて後ずさる。
だが、雑音なんか聞こえない。

「胸はこのクラスでは平均的だが、腰のくびれやバランスには自信があるぞ。プロポーションの善し悪しで決めるのなら、私の部屋が適任だ」

腕を組み、胸を張る。
マッサージで鍛えられた肉体に、恥ずべき部分など無い。
私はそう断言できる程度には、マッサージ師として己の肉体を磨いている。

第一、美容のための整体もするんだ。
私自身が説得力のある肉体でなくて、どうするというんだ。

「そ、それなら私は、全然ダメですね……」

と、呟いたのは、雪広ではなく宮崎だった、
そういえば、宮崎は先生に片思いだったはず。
あれからちょくちょく会いに行ってはいるようだが、進展はないと聞く。
そんな時に名乗り出るのは、まずかったと言うことだろう。

「あ、こんちゃー、いいんちょ」
「こんばんはー」
「お、時間どおりにみんな入っているなんて、珍しいな」

私たちが揉めている間に、人が集まってきてしまったようだ。
眼鏡が曇ってきたので、ツボーズが見えなくなり始めたのが、残念だ。

「ん?」
「どうしました?」
「いや……なんでもない」

一瞬、岩陰にツボーズが見えた気がしたのだが……気のせいか。
眼鏡の曇りで、本当に見えないのだ。

「ところで綾瀬」
「なんですか?」

胸が小さいことを、気にしているのは解る。
宮崎もプロポーションのことで気に掛かる部分があるようだったし、それは一部の他の連中にもいえることだろう。

ここは、一石投じて一度に何羽も手に入れてみるとしよう。

「胸の大きくなるマッサージや、美容に効くマッサージも、あるぞ?」
「本当ですかっ?!」

食いついた。
他の連中――鳴滝姉妹や、宮崎、あと……マクダウェルもか?――も、耳を傾けている。

「マッサージをすることにより血行をよくするんだよ。そうするとエネルギーを消費させて脂肪を燃焼できるんだ。……で、身体の余分な水分や老廃物が排出される、と」

つまりは、マッサージによるダイエットだ。
乙女の永遠の悩みも、マッサージで気持ちよくなりながら何とかなる。
おまけに、部分痩せで好みの体型に変わっていくことが出来るのだ。

「もちろん個人差はあるが、風呂上がりにやってみようか?」
「ぜ、是非!」
「わ、私もお願いします!」
「ぼぼぼ、ぼくたちもっ」

集まってくるクラスメート達に、ほくそ笑む。
獲物は大漁。今晩は、ご馳走(フルコース)と洒落込めそうだ。

鳴滝姉妹なんかは、普段は妙な警戒心を持って近づいてこないからな。
私がそうもくろんでいると、綾瀬が胡乱げな目で私を見ていることに気がついた。

「なんだ?」
「千雨さんの頭の中を、一度覗いてみたいです」

その言い方じゃ、私が理解不能な思考回路を持っているみたいじゃないか。
失礼なやつだ。

「失礼なことを――」
「ネギ先生ーっ」
「――なんだ?」

急な騒ぎになったことで、私は話を切る。
慌てて眼鏡をずらすと、そこにはツボーズの集合体。
もとい……ネギ先生がいた。

騒ぎに便乗して、ツボを狙いに行くチャンスを失った私は、素直に傍観に徹することにした。

もみくちゃにされているネギ先生と、責められている神楽坂。
あの輪に入るのは、どう考えても自殺行為だ。

「と……先生は何を……あの杖って」

ネギ先生が杖を持ち、何かを小さく呟いた。
それだけで小さく風邪が起こり――神楽坂の胸が、膨らんだ。

「人体改造っ?!」

そんなことまでできるとは……どこまで非常識なんだ。
神楽坂が宙に浮き上がるほどの、豊胸。
私のマッサージで、いったいどこまで対抗できるか……。

「ネギ先生達のコミュニティーに、“マッサージ”はあるんだろうか?」

魔法使い達による魔法のマッサージ、か。
……畜生、気になる。

だが、私としては、私が“魔法を知っている”という事実を知られたくない。
魔法使い物にありがちな“記憶消去”の処置なんてとられたら、折角広がった視野が、また狭くなってしまう。





と……私はそんなことを考えていたせいで、神楽坂の胸が破裂するという事態を、見ることが出来なかったのだった。

大きくなった胸のツボーズ……もっとしっかり見ておきたかったのに……っ。










――†――










先日のお風呂騒動は、明日菜さんの胸が破裂するという珍事態により、収束しました。
もっとも、それで千雨さんのマッサージも流れてしまったのですが……まぁ、仕方のないことです。

結局、なんとか“自分で出来るマッサージ”を教えて貰い、一人部屋で悶々とツボを押すことになってしまいました。

……そうして、今日も私は一人でツボを押していました。
体育の着替えを早々に終えて、空いた時間にこっそり自己マッサージ。
隙あらばやっている、という感じでしょうか。

むなしいですが……すごく、むなしいですが、仕方在りません。
折角胸を大きくできるチャンスが出てきたのだから、活用すべきなのです。

私はそう自分を納得させると、再びマッサージに取りかかります。

「えーと、右手の人差し指と中指の上に、左手の同じ指を重ねて……」

千雨さんから貰ったメモに従って、押します。
話しでは、ここは“膻中(だんちゅう)”というツボだそうです。
もう、マッサージのことは千雨さんから聞けば、大抵の解答はくれるのです。

「夕映ー、なにやってんのー?」
「あ、ハルナ……今行くですっ」

おっと、危うく体育に遅れるところでした。
夢中になっていたのでしょう。……恥ずかしい限りです。





今日の体育は、バレーボールです。
屋上に集まって体育……だったはずのなですが、まさかのブッキング。
杜撰な管理ですね。

そして、普通に両者が同時に使用できるスペースがあるのに、対決。
もう意味がわかりません。

「千雨さんは、どうしますか?」
「どうって……選択肢が与えられる前に、入れられているんだが?」

そう、千雨さんはメンバーに数えられていました。
マッサージが関わると、身体能力が上昇する千雨さん。
その千雨さんが、マッサージに関わりのないことで運動をするのです。

「大丈夫、ですか?」
「負ける訳には、いかねぇだろ……あのツボが、手に入らなくなる」

のどかには悪いですが、一瞬“負けても良いかも”などと思ってしまいました。

「そんな顔しなくても、綾瀬を手放したりはしねぇよ」
「……誤解を招きそうな、言葉ですね」

千雨さんは、一々言動が危ういのです。
これではプレイボーイ……いえ、プレイガールみたいではないですか。
いえ、そう考えると、毒牙にかかっているのは私なのですが。

「さて、始まるみたいだな。審判よろしく頼むぞ、綾……綾瀬?顔が赤いが……」
「なっ、な、なんでもないです!早く行ってください!」
「そうか?」

思わず、変な声が出てしまいました。
普段はもっと理路整然とした思考が展開できるのですが、千雨さんと話していると、どうも思考が宇宙の方向へサマーソルトするです。

と、そんなことを考えている内に試合が始まっていました。
どうも、集中力が散漫になっていますね。

「行くわよ!子スズメ達!必殺――」

高校生の方々が投げたボールが、次々と私のクラスメートを狩っていく。
ドッチボールは数が多い方が不利……とは、漸く気がついたようですね。
いえ、人数が調整される程度なら別に不利というほどではありませんが。

次々とリタイアになっていく、クラスメート。
トライアングルアタックとか、太陽拳とか、千雨さんに通じるセンスを感じるです。
……なんだか、千雨さんの“薔薇の舞い”が見たくなってきました。

「み、みんな!諦めちゃダメです!」

ネギ先生の言葉で、皆さんがやる気になりました。
ルールブックを取り出して、のどかも頑張る様子です。
なら私は、なんだかんだで残っている千雨さんに、アドバイスをしましょうか。

「千雨さん」
「なんだ?避けるだけで精一杯だぞ?私は」
「正確にツボを捉える訓練、だと思ってみてはいかがでしょうか?」

私の言葉を、千雨さんは口の中で反芻しているようでした。
そして、それが終わると……真剣な表情で前に出ました。

さて、ここから――私たち二年A組の、反撃開始です。










――†――










時折綾瀬は、すごく面白いことをいう。
今回のことも、その一つだ。

ボールをツボに見立てるのは、形状からして難しい。
いや、頭部に見立てられないこともないが、それだと空飛ぶ生首でグロテスクだ。
では、どうするのか?

ボールの中心に指を突き立てることにより、ツボを正確に押す訓練だと思えばいい。

「ならば、眼鏡の大人しそうな貴女を!」

綾瀬と宮崎のルールブックに参っていた高校生が、私に向かってボールを投げる。

だが、私の集中力は――普段には比べものにもならないほど上がっていた。

ボールの中心を見極めて、親指を突き立てる。
動作はこれだけ……これだけで、十分だ。

「なっ?!……親指一本で、止めたっ!?」
「親指一本で?……マッサージ師で一番強いのは、親指にきまってんだろうが」

そう、マッサージ師たるもの、親指一本で逆立ちくらいは出来ないとならない。
私がマッサージ師であることが見抜ければ、アイツらもそのくらいの判断は出来たろうに。

「千雨さんの常識が、わからないです」
「大丈夫だよー、夕映ー。私も、わからないから」

外野で、綾瀬と宮崎が失礼なことをいっている。
もう少しマッサージ師という職業について、今度語っておこう。

「頼んだ」

味方にパスをして、攻撃に繋いで貰う。
投げるのは不得意だが、受け止める程度だったらいくらでもできる。

「大河内」
「うん」

受け止める。

「古菲」
「ハイネ!」

渡す。

「超」
「こんな情報、無かったはずネ……うぅ」

片付ける。
あっという間に、相手チームは残り三人にまで減っていた。
そして……。

「時間です……試合終了!」

試合が終わった。
全員適度に疲れていて、ツボーズが活性化していた。
あまり動きすぎるのも良くないし、ツボーズを見る限り、丁度良い塩梅だ。

『わわっ、まだ動くのー?』

ツボーズの声がして、振り向く。
そこには、神楽坂に狙いをつける、高校生――名前は知らないが、リーダーの女生徒だ――の姿があった。

まだボールを放つ前。
それなら、どうにでもなる。

「やめておけ」
「っ」

高校生の手が止まる。
私は、手に軽く指を当てているだけだ。

「う、動かないっ」

人体を知るということは、なにも気持ちよくさせるばかりではない。
こうして、身動きがとれなくなるツボも、当然のことながら存在するのだ。
だが、止めているだけじゃダメだ。

だから、そっと耳元に呟いた。

「大人しくしてください……【先輩】」
「っっっ!?!?」

私の“ローレライ”は、耳元に呟くほどの距離でないと、対象の指定が出来ない。
普通に使ってしまうと、最大射程は半径二十メートルで、無差別だ。
敵味方に限らず腰を砕く訳にはいかないから、ドッチボールでは使えなかったのだ。

もっとも、それでも調整しきれず、高校生チームの半数の腰を砕いてしまったが。
……まぁ、些事だ。





そして、意気揚々と綾瀬達の輪に戻った私は、気がつかなかった。

「――――素敵」

あの先輩方が、そんなことを呟いていたということに……。










◇◆◇

そして、千雨ファンクラブが、密かに鳴動し始めた――――。


ということで、後書きです。

今回は、ドッヂボール編でした。
これで漸く、一巻の内容が終了です。

原作よりもアグレッシブ……なように見えますが、ネットアイドルをする時のテンションと比べて、そんなに差はないです。……たぶん。

次は二巻の内容に入るか……それとも超の受難(閑話)を入れるか、ですね。

それでは、ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
次話も、どうぞよろしくお願いします。


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