平和だ。
こんなにすがすがしい朝はナギと旅に出て以来無かった気がする。
捕虜三人組は見張りの兵士さんの差し入れの紅茶を飲みながら椅子に腰掛けて朝食を食べている。
初めはちゃんとした椅子とかテーブルとか無かったんだけど、王女様が兵士さんたちに命令して用意させた。
他にもいろいろと用意させて今では充実した部屋になってる。
兵士さん達も美人には弱いようだ。
ちなみにテオドラが兵士さんたちに言ったときは「何を言う、このちんくしゃが」とか言われていたので俺が爆笑しているとハリケーンミキサー。
「そう言えば、主はナギと契約しておらんのか」
してませんよ、と俺が答えると王女様は意外そうな顔をした。
なんでも、そんなに弱いのだからアーティファクトの力を求めて契約くらいはしていると思ったらしい。
いや、アーティファクトは確かに魅力的だけどナギから逃げられなくなるデメリットがでかいんだって。
それに、アーティファクトすらも雑魚アーティファクトだったら立ちなおれない。
昔、穴の開かない靴下とかいうアーティファクトを出した人がいるらしいし。
「まあ、いざとなればその魔眼を使えば一撃だけならナギを上回る力が出せるのじゃろう?」
ああ、この魔眼(笑)ですか。
使いません。
魔力を貯めてることは事実というか、寝る前に使ってない余剰魔力を勝手に喰っていってるから魔力は溜まってると思うけど、使うと俺の右目が死ぬ。
眼帯とかしてると、もし就職することになったら不利になりそうだし。
そういえば、大戦終わったら紅き翼のメンバーどうするんだろ?
ラカンとか就職できるのか?まあ、あいつなら闘技場ででも戦えば稼げるんだろう。
その辺を王女様に聞いてみるとラカンとかナギとかくらいになるとそんなことしなくても宣伝のCMみたいなのにちょっと出たりするだけで莫大な金が転がり込むとか。
どうやら理不尽なことに一番将来に不安があるのは俺のようだ。
いざとなればうちで雇ってやると王女さまとテオドラに言われたが丁重にお断り。
それくらいならどっかの食堂で働く、と言うと王女様からビンタを、テオドラからハリケーンミキサー(略してハリミキ)を受けた。
無礼な、とか言ってたけどどっちのところで働いても無駄に疲れそうだからごめんこうむる。
それにしても、テオドラの角がとがってて非情に痛いので角をちょっと削って丸くしてもいいかと聞くと、一族の誇りになにをするつもりじゃ、と怒られた。
今度寝てる間にこっそりと削っておこう。
昼になって、俺もお仕事の時間になった。
今日は何を作ろうかと悩んでいると「プリン、プリン」とテオドラがうるさかった。
お子様と言うと「妾たちは長寿じゃから実際の年齢は・・・」とかなんとか言っていたが、俺にとって大切なのは身体年齢である。
まあ、しかたないのでデザートにプリンを作ることにした。
今日は中辛カレーをつくることにした。
カレーを作って食堂に持って行くと、隊長さんがすごく落ち込んでた。
なんでもこんなところにずっといるせいで彼女に会えなくて、今日届いた手紙で彼女に振られたらしい。他に好きな人ができたとか書かれていたらしい。
こんなところにも戦争の被害者が。
大体上司の白髪のすかしたガキがむかつくんだよとか関係ないことにまで怒っていた。
隊長さんのカレーに大きな肉をいっぱい入れておいてあげた。
テオドラがカレーを食べて「辛いのじゃ~」とか言っていた。
やっぱりお子様だ。
PS なんかナギたちが凄い勢いでここを目掛けて進軍しているらしい。
立ちふさがるものを全てぶっとばして、通った後は荒野になっているらしいとか兵士さんが言ってた。
囚われのお姫様×2+俺を助けるためにすごい奮闘中らしい。
俺は、平穏が終わるカウントダウンが始まったのを感じた。
あとがき
ナギたちが出てこなかったらダンは基本平穏ということが判明。
しかし次の話くらいでナギ登場。
よく考えると、テオドラフラグ立ったとしてもダンが死ぬと意味が無い。
転生した後に、自分が生まれ変わりだと言わないとフラグが無駄になる。
でも、ダンが自分からそんなことを言うとは思えない。