「おい、居たぞ!前方500メートルの地点を走っている!」
「了解!動けるやつは全員向かえ!逃がすなよ」
こいつはやばいですね。
どうやら見つかったみたいです。
どんどんと距離を詰められてます。
「ああ、そうだな・・・っと!」
ガトウさんの居合拳が上空から偵察をしていた敵の魔法使いをたたき落とした。
まさか、こんなところで仕掛けてくるとは予想外でしたね。
元老院か、それとも・・・。
「まあ、俺たちに恨み持ってるやつは数え切れねえし、なにより嬢ちゃんがいるんだ。
ここまで多いと誰の手先かなんてわからねえよ」
ナギ達がいたらこれくらいの人数・・・。
「ガトーさん・・・ダニエル・・・」
ああ、アスナちゃんは何も心配する必要はないよ。
大丈夫。絶対守るから。
傷一つでもつけたらアリカ様に怒られるしね。
「でも、ダニエル・・・私より弱いのに・・・」
うっ、痛いところつくなぁ。
「おいおいダニエル。正論で返されてるじゃねえか」
ガトウさんまで・・・。
一応これでも昔よりは強くなったとは思うんですけど。
「まあ昔よりはな。あのころはひどかった・・・・。
まああの連中のことは俺たちにまかせときな。
タカミチ、お前は絶対に嬢ちゃんを守れよ」
「はい!」
「よぉタカミチ、火ぃくれねえか。
最後の一服・・・ってやつだぜ」
ガトウさん・・・。
「・・・・はい」
きっとタカミチもわかっているんだろう。
もうガトウさんは助かりようもないってことが。
「・・・あー、うめえ。
さあ、行けや。ここは俺がなんとかしておく」
魔力さえ残っていればこんな怪我くらい・・・・。
「無いもんねだっても仕方ねえ。
雀の涙みたいなお前の魔力でここまでもっただけでも上出来だ」
そう言ってもらえると助かります。
でも・・・俺にも、ナギ達みたいな魔力があったら。
「ガトーさん・・・」
アスナちゃん・・・涙が・・・。
アスナちゃんは、以前と比べると表情の豊かになったが、涙を見るのは初めてだった。
「・・・なんだよ嬢ちゃん。泣いてんのかい?
涙見せるのは・・・初めてだな。
へへ・・・嬉しいねえ」
ガトウさんはいつもと変わらない不敵な笑みを見せた。
きっと、しゃべるのも苦痛に違いないのに。
少しでも心配をかけないようにって。
すごく、すごく痛々しく感じた。
「師匠・・・」
この音、追手が近づいてきてる。
あと数分ってところか。
「タカミチ・・・記憶のことだけどよ。
俺のとこだけ念入りに消しといてくれねえか」
「なに言ってんスか!」
「これからの嬢ちゃんには必要のないもんだ」
「でも!」
タカミチ・・・・ガトウさんの言うとおりにしておいてくれ。
アスナちゃんは、これからただの女の子に、ただの女の子になるんだ。
誰かが死ぬ記憶なんて・・・必要ない。
「ダン!」
「やだ・・・よ。
ナギがいなくなって、・・・おじさんまで・・・」
ガトウさんは震える手をそっとアスナちゃんの頭にのせた。
「幸せになりな嬢ちゃん。あんたにはその権利がある」
「ダメ!ガトーさんっ!いなくなっちゃやだ!」
タカミチ!
もう時間がない。すぐに動け!
「はっはい!」
タカミチは暴れるアスナちゃんを小脇に抱えると、ガトウさんに頭を下げて走り出した。
「ガトーさん!ダニエル!」
アスナちゃん!元気でな!
「・・・なんだよダニエル。嬢ちゃん達についていかなかったのか」
まあ、ここを切り抜けたら後は心配ないですしね。
俺がついて行く必要はないですよ。
「このくらい俺一人で十分なのによ。
魔力の切れたお前がいてどうするよ」
忘れたんですか。
俺も昔ガトウさんに氣の使い方を教わった弟子の一人ですよ。
まだ、戦う術は残っていますって。
「ああ、そうだったな・・・。
お前は本当にできの悪い弟子だった。
タカミチよりも全然才能がなかったしな」
いや、あれはあいつが凄すぎるだけでしょう。
それにしても、ガトウさんこそ大丈夫なんですか。
ボロボロじゃないですか。
大人しく寝ていた方がいいんじゃないですか?
「馬鹿言うな。これくらいならお前よりは全然動ける」
「おい、いたぞ!ガトウとダニエルだ!」
「相手は死に体だ!さっさと片付けて逃げたやつを追うぞ!」
残り4人ですか。
なんとかなりますかね。
「自信がないなら引っ込んでな」
ちゃんとやりますって。
「かかれ!」
なんとかなりましたね。
「・・・ああ」
俺も流石に限界ですよ。
今日はこのままここから動けそうにないです。
魔法生物とかに狙われないといいんですけど。
まあ、あんだけ暴れればしばらくは寄ってこないでしょう。
「なあ・・・ダニエル」
なんですか?
タバコなら持ってませんよ。
あれは健康に悪いですから、治療魔法使いとしてはタブーです。
「そんなことじゃねえよ・・・嬢ちゃんのことだ」
アスナちゃんですか。
大丈夫です。
一人も抜かせませんでしたし、今頃は安全な場所についてますよ。
「これから、先・・・嬢ちゃんは・・・ただのガキになる。
まあ、それでも・・いろいろと問題もあるだろうが・・・送った先の連中が・・大抵のことは・・・なんとかしてくれる。
タカミチもついてるしな・・・」
それなら俺も安心です。
アスナちゃんには、幸せに、幸せになってもらわないと。
「ああ・・・。
それでも・・・なんかあったときは・・・頼む」
・・・はい。
任せてください。
師匠の頼みですからね。
「師匠、か。
ダニエル・・・戦争は終わった。
お前も・・・そろそろ・・幸せに・・・普通に・・・」
幸せに、普通に、ですか。
それもいいですね。
ようやく長い、長かった戦争が終わったんです。
なにをしようかな。
家に帰るのは無しですね。
あのバカ親共は本当に・・。
そうですね・・・本でも書きながら畑でも耕して、のんびり暮らすのとかいいと思いませんか?
「・・・・」
・・・・・・・・・ガトウさん?
あとがき
>だってキティちゃんのボーイフレンドはダニエル君ですよ(サンリオ的にw)
なんだその理屈w
そろそろ春休みがおわる・・・。