ついにアリカ様の処刑日になった。
みんなも人助けに行かず部屋に集まっている。
さて、どうしたものか。
本気で動かないつもりなのか。
「ダン、あのときの話はまだ有効ですよ」
アル、それは前にも断っただろ。
とは言っても、本気でナギが動かないなら俺たちだけで行くことになるだろう。
なんせあのラカンすらもこうして動くのを待っている。
あと30分。
30分待ってナギが動かなかったら、俺たちだけで行くように提案しよう。
「ナギ・・・・・・」
かちこちと時計の立てる音だけが部屋に響く。
時間の流れるのがひどくゆっくりに感じる。
5分、10分と時間が経つにつれて杖を握る手の力が強くなっていく。
15分、20分。
誰一人何も言わない。
30分が経ち、もう限界だと思い立ち上がった。
ナギはまだ来ない。
行こう。
「ダン・・・・」
仕方ないだろ。
もう時間が無いんだ。
処刑されてからじゃ遅いんだよ。
「ようやく決意しましたか」
アル・・・。
できればこんな方法は取りたくなかったんだけどな。
「仕方ありません。事実こうするほか術はないのですから」
みんな、力を貸して欲しい。
アリカ様を助けたいんだ。
「・・・・お前には『巫女さん通信 魔法世界ver』の借りがあるしな」
詠春さん・・・ありがとうございます。
「へっ。まあ貸し一つってことにしといてやるよ。
今度、なんかうまいもん作れよ」
ああ、任せとけ。
未だかつて無いくらいのご馳走を食わせてやるよ。
「もちろん私も協力しますよ」
なんか、お前の言ったとおりの展開になってしまったな。
「なら、ガトウ達にも私の方から連絡を入れておきましょう。
必ず協力してくれるはずです」
任せた。
俺は、ナギに置き手紙でも書いておくよ。
あいつなら遅れてでもきっと来てくれるさ。
処刑場所にたどり着くと、そこは元老院のメンバーと兵隊たちに埋め尽くされていた。
俺はみんなとは別行動でタイミングを見計らっている。
アリカ様は一歩一歩谷に向かい歩みを進めて行く。
そして、アリカ様が谷底に落ちようとした瞬間に俺は箒に乗って飛び出した。
それと同時に離れたところからアリカ様を見張る兵隊たちのほうから爆音が聞こえた。
詠春さん達の起こした騒ぎに兵隊や元老院が目を取られている隙に、アリカ様が谷底に落ちる前に助けないといけない。
谷底に落ちてしまえば俺では魔法は使えない。
全ての魔力を箒にまわした。
ぐんぐんと距離が詰まる。
アリカ様っ!!
俺の叫びに気付いたアリカ様は目を見開いた。
「ダニエル!?」
必死に手を伸ばした。
アリカ様はもう死ぬつもりだったのだろう。
助けを求めるつもりも無かったのだろう。
ただの条件反射。
必死に手を伸ばす俺に思わず自分も手を伸ばしてしまった。
そして、手は繋がった。
ぐんっと落下速度もプラスされて腕にかかる重み。
思わず離してしまいそうになる手にしっかりと力を込める。
なんとか落下は止まった。
「ダニエル、主、どうして!」
ちょっと待ってください。
そう長くふたり分の重さを支えきれそうにないんです。
だから、せめて対岸に。
若干ふらふらとしながらも向こう岸を目指して箒を進めた。
しかし、このとき俺は油断していた。
「ダニエル!!」
詠春さんの叫び声を聞くまで、後ろから迫る魔法の射手に気づかないくらいに。
後ろを振り返ったとき、それはすでに目の前に迫っていた。
障壁を張る時間も無い。
はは、やっぱり俺じゃあ上手くいかないか。
そういうのが似合うキャラじゃないもんな。
アリカ様、すみません。
ぎゅっと目を閉じた。
しかし、何時まで待っても痛みは来なかった。
そっと目を開いた。
「なんとか間に合ったな」
ナギ!
「悪いな、ダン。遅くなってよ」
・・・・お前、遅刻だぞ。
魔法学校ならまた校長先生に怒られてるところだ。
「ああ、説教ならあとでいくらでも聞いてやるよ。
でもその前に、あいつらにお仕置きしてやらねえとな。
俺の親友になにしてくれてんだ!!」
ナギは一直線に兵隊たちに向かっていった。
その後、俺たちは攻撃を受けることも無く対岸にたどり着くことができた。
「ダニエル、なぜこんなことをした」
なんでってそりゃあ助けたかったからに決まってるじゃないですか。
「だからって主・・・・」
まあ、アルの言葉を借りて言うなら、たった一度くらい王子様になってみたかったのかもしれませんね。
「王子様?主がか?
・・・ぷっくく・・・主は王子様などではなく料理人じゃろうに」
いや、まあおっしゃるとおりなんですけどね。
柄じゃ無いことは俺もよく分かってますし。
でも、料理人だって夢をみるんですよ。
「夢・・・か。私は今こうして生きていることがまるで夢のようじゃ」
そいつは夢じゃなくて現実ですよ。
あなたは今こうして生きている。
「私は死ぬつもりでおった。
私がこの世界の全ての憎しみを一身に受けて死ねば、少しでも人々の心が救われると言うのなら本望じゃった」
残念ながら失敗に終わりましたけどね。
「それは主らのせいじゃろう」
そうですね。
俺たちのわがままでアリカ様の計画は失敗に終わりました。
でも、アリカ様には今まで何度もわがまま聞かされてきたんですから、たった一度くらい俺たちのわがままも聞いてもらわないと。
「私が生きていて喜ぶ者なんぞおるまいよ」
そんなことないですって。
少なくとも、俺はアリカ様が生きていて嬉しいですから。
「ダニエル・・・」
ん?アルのやつが口パクでなにか言ってるな。
『今です!そこで一気に攻め込むのです!』
ぶはっ。
あいつ馬鹿か。
何言ってんだよ。
でも、まあ・・・
「アリカ様、俺は・・・・・」
たまには柄じゃないことをするのも悪くないかもな。
あとがき
久しぶりにアリカ様を書きたくなった。
アリカ様のナイスバディはかなりの破壊力。
>最近のダンは凡人どころか「努力の天才という設定」になってしまっていますね。
何か無闇矢鱈とかっこよくなってますし。
これも一種の中二病、ダニエル(笑)と大差ないような気がしますが、作者さんは同お考えでしょうか。
書いてるうちに感情移入してしまい、ダン=自分、かっこよくしなければ、とでもお思いになったのでしょうか。
批判的な感想は全てスルーなさっているのでこれもスルーされるのかな。
ダニエルがかっこよくなるというか、精神的に大人になるというのは原作編を書くことに決めたときに決めていた。
最近魔法の世界に関わったばかりの子どもが命かけてるところで、30くらいのいい年した大人、しかも戦争まで経験してるベテランが必死に逃げようとしたりしてるのは流石にどうかと思ったから。
あと、努力の天才というのは考えてなかった。
あくまで、努力したうえに経験のあるベテランくらいの考えだった。
強さも、経験なんかを除いたスペックとしてみればネギの方がだいぶ上だろうから、一年戦争末期のカイ・シデン(小説版ではない)が乗っているガンキャノンが新米ジオン兵の乗っている、ガンダムと同等かそれ以上の能力を持つというゲルググと戦うくらいの考えで書いていた。
中二かどうかは自分では判断できないと思うのでそちらの判断に任せるしかない。
それと、批判的な意見に対してはどう返していいのかがわからない。
例えば最近つまらんという感想もあったけど
>最近つまらん。
申し訳ない。これからおもしろくなるように努力しようと思う。
こう返すのもどうかと思って返さなかった。
最後に理解してもらいたいのは、全体の感想を見ても、多分今まで返事をしたのは一割に届いていないと思うから、割合的に見て批判とそうでないのとでは批判のほうに返信を返す確率のほうがだいぶ低いと思う。
おそらく、原作編を読んで不快感を感じたんだろうと思うけど、そういった意見がこれからもどんどんと増えても、こちらが示せる誠意の見せ方は当初の終了予定だった過去篇以降の話を消して完結させるという方法しかないと思うのは許してもらいたい。
流石に原作編を全部書き直す気力はない。
>最初のころに比べて一話一話の内容が薄くなってる気がします。
多分俺が上手くシリアスをかけていないということだと思う。
ほとんどノリで書いてたギャグの頃と違って出来る限り頭をひねっているけど、まだまだ精進が足りないということが再確認できたので感謝。
>あと、最近のダニエルの言ってることが自分で散々揶揄してきたダニエル(笑)と大差がなくなってきてる気がする。正直、今のダニエルはダニエル(笑)のことをどうこう言えないと思う。
俺もその辺の書き分けに頭を悩ましているが上手くできていない。
これからも出来る限り書き分けれるように努力する。
指摘感謝。
>我ながら酷い意見だと思うけどダンは赤い翼のメンバーに振り回されてるべき。そんな中でたまに真面目なトコをちょろっと見せてくれるダンのおかげでこの作品を好きになったので、また初期のようなノリバンバンやらないかなと密かに地味にこっそり期待してたりします
言峰風に言うと。
喜べ、君の望みはようやく叶う。
まああくまで今のところの予定だけど。
まだ微妙なところ。
久々にハルヒを見ていたら
ハルヒ「ただの人間に興味はありません。
この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら
あたしのところに来なさい。 以上!」
ダン「あの、別世界から来た魔法使いなんですが・・・」
という電波を受信した。
まあハルヒの世界に行っても特にやることが無いとは思うが。