緊急事態発生と詠春さんから手紙が届いた。
俺としても今回の事件のことに木乃香ちゃんが巻き込まれたことなどを報告しておくべきだろうと思っていたので、学園長に長距離転移魔法で至急京都に送ってもらうことになった。
そう言えば、あの巻き込まれた無関係の女の子は記憶を消すことまではしなかったらしい。
記憶を消すと一日分の空白が生まれ、いろいろと面倒なことになるので極力消さない方がいいのは確かなのだが。
一応学園長があの悪魔との戦いを見たあたりは魔法で記憶をぼかしておいたらしい。
なにかあったのは覚えているが、なにがあったかは覚えていないし、それをそこまで疑問には思わないという超高度な魔法を使っていた。
ネギと一緒にいた男の子のことは覚えているらしい。
まあそれでも魔法関係者に繋がる部分はぼかしていたけど。
まあそんな魔法をかけたのなら問題はないはずだ。
そう言えば、アルが学園長に俺宛の手紙を渡していた。
『京都に行くなら、ロリっ子巫女天国京都限定版を買ってきてください』
まああいつも人知れず悪魔の撃退を手伝ってくれていたらしいから、このくらいはやってもいいけど、俺が買うのかよ。
「そんなことが・・・」
相手はネギと明日菜ちゃんが目当てだったらしいですけど。
一応伝えておくべきかと思って。
「感謝します。それで、木乃香はどちらを選びそうですか?」
まだわかりませんね。
一応魔法の世界の危険は教えておきましたけど。
「その件に関してはあなたに一任します。
あなたが判断してください。
私には、どうすればいいのかわからない。
どちらにせよ危険な立場にあるんです。
自衛の手段の一つでも持っておくべきなのかもしれません。
ただ、やはり関わる危険を考えると」
誰も彼もみんな俺に押し付けてくれますね。
俺はそんなに全てを背負えるほど立派な人間じゃないというのに。
「すみません・・・」
それはそうとして、いいんですか?
俺が教えることになったとしても、俺は東洋の魔法は教えれませんよ。
関西呪術協会の娘としてそれは大丈夫なんですか?
「はい。
こちらの術に関しては、いずれ木乃香が戻ってきたときに教えることにしています。
関わることになったのなら、あの子には東洋と西洋の魔法を覚えて、西と東の架け橋になってもらうことになっています」
あの子も余計なもの背負ってるんですね。
「不憫には思いますが、長の娘に生まれてしまった以上は仕方ないとしか言いようがありません。
そのため、木乃香の婿になる人間を西洋の魔法を使う者にするという意見も出ています」
西と東の平和と友好のために、ですか。
今の時代に自由恋愛すら許されないとはね・・。
大人にできなかったことのしわ寄せが子供に行くというのも、どうにも歯がゆいものですね。
「それも木乃香が関わることを決めた場合です。
関わらなければそんなことにはなりません。
それに、私は、私は木乃香を嫁になんぞ・・・・」
ちょ、そんな唇を噛み締めなくても。
血が出てますって。
どちらにせよ、木乃香ちゃんくらいの美人ならいつかは誰かと結婚するでしょうに。
「私は認めない!」
いや、認めないと嫌われるんじゃないですか?
「くっ・・・・」
それで、木乃香ちゃんはそのことは
「もちろん知りません。
せめて、何も知らずに、関わることも無くいてくれればと思い・・・。
そうすればあの子を普通の女の子として生きさせるために、何をなげうってでも、そうするつもりだったのに・・・」
関わることを決めた場合は、そのことを教えますか?
「いえ、せめて学生の間は、普通に、出来る限り普通に女の子でいさせてあげたいんです。
それに、もしかすると案外ネギ君とでもくっついてくれるかもしれませんしね」
ネギですか?
あいつはまだ10のガキですよ。
「まあもしもの話です。
それに、ネギ君ならネームバリューを考えても十分です」
流石に今のアイツが恋愛のことを考えるとかは無いと思いますけどね。
「でも、いつか木乃香に伝える時がくれば、私は恨まれるんでしょうね・・・」
ほ、ほら元気出してくださいって。
そう言えば緊急事態とか言ってたじゃないですか。
「そうだった!ダン、急ぎましょう!」
どこにですか!
ちょっと手を離してください。
「実は、最近京都に巫女喫茶というものができたんです」
え?なにそれ、緊急事態?
「普通なら、所詮はまがい物の巫女さんなんぞと見向きもしないことなのですが。
なんと、その喫茶店で働いているのは、各地の神社から引き抜かれてきた現役の巫女さんらしいんです!」
だから、そこに行ってみたいけど一人じゃ恥ずかしいから俺を呼んだってわけですか?
「もしかすると、これはアーウェルンクスか、どこかの悪の魔法使いの仕業ではないのかと私は考えています」
なにをどう考えたらそうなるんですか。
「現役の巫女さんがちやほやしてくれる。
そんな夢のような喫茶店があったとすれば、正常な男ならば必ずや骨抜きにされてしまうでしょう。
そうして、まずは京都の男たちを意のままに操り、あわよくば我々関西呪術協会の人間すらも操り、京都を支配しようとしているのではないかと考えたわけです」
いや、それはちょっと。
どう考えても、あのアーウェルンクスが巫女喫茶なんて経営している姿が想像できないんですけど。
「それが既にやつの術中なのです!
さあ、京都を守るために行きますよ」
店の前に着くと、純和風な建物の入り口を巫女さんが箒で掃除していた。
「あら、御参拝ですか?」
「ぬぐっふぁあああ!!」
どうしたんですか詠春さん!
「まさか、こんな王道且つ破壊力が抜群なものを初っ端から出してくるとは。
始めからクライマックスだとでも言うのですか・・・・。
危うくやられてしまうところでした」
いや、俺はなんとも無いんですけど。
「それでも男か!」
もう中に入らなくてもよくないですか?
どう見てもただの一般人の経営してる店ですって。
それに昔の口調に戻ってますよ。
「何を言う!
これはぜひ中を見てみなくては、視察が必要だ」
「この八百万饅頭と、巫女萌え緑茶を」
俺は緑茶だけで。
どう見ても普通?の店なんだけどな。
「ぬおおおおお!!」
店のカレンダー見て叫ばないでくださいよ。
「なんと!毎週水曜日は巫女巫女ジャンケンデーで、勝ったら好きな巫女さんと握手ができるだと!
金曜日にはビンゴ大会まであるのか!
しかも一等の景品は巫女さんとの一日デート券だと!
くっ・・・・なんという卑劣な作戦だ!!」
全部どうでもいいんですが。
「なんだと!さらには店で値段に応じてのポイント制を採用していて、それにも豪華景品がつくだと!!
アーウェルンクスめ、どこまでやるつもりだ!!
くそ!
店のメニュー上から下まで全部!」
「ありがとうございます!」
ああ、この人にこの作戦使えば確かに京都簡単に堕ちそうだ。
「あやしいな、あやしいんだが確証が持てなくては手が出せん。
ここは定期的な視察が必要だな。
しかし、アーウェルンクスが相手となっては他のものには任せられん、ここは俺自身がやるしかないか」
いや、詠春さんが一番任せられないですよ。
「あ、あの」
ん?
あれだけ注文していたのにもうできたんですか?
「い、いえそうでは無く・・・ダニエル様ですよね?」
え?
俺のこと知ってるんですか?
「実は・・・私以前は関西呪術協会に所属しておりましたが、先日の一件で石化させられたことで、魔法がトラウマになって魔法に関わることをやめたんです」
詠春さんもそう言えば、この子見たことがあるなと言っている。
あれだけ綺麗に石化させられたらトラウマになる人もいるか。
「それで、ぶしつけで失礼なんですが。
最後の思い出に、握手していただけませんか?
ずっとファンだったんです」
え、まあいいですけど。
「ありがとうございます!」
まあ、君みたいな子なら魔法の世界から抜ければ危険な目に会うことも無いと思うから平和に暮らしてね。
「ああ、なんと優しいお言葉。
私、今日のこと一生忘れません」
その子は頭を下げるとそそくさと店の奥に引っ込んで言った。
詠春さん、あの子も魔法から離れて平和に暮らせると言いですね。
流石にあんな利用価値も無い子を狙うやつはいないだろうし。
ってなんですかその小刀は!!
「ダニエル、どうやらお前はアーウェルンクスの術にかかってしまったようだな。
早急に術を解かないといけない」
術なんてかかってませんって!
「殺人犯も窃盗犯もみんなそう言うんだ。
なに、神鳴流は魔を断つ剣。
お前に取り付いた魔だけを絶ち切ってやろう」
ちょっと、こんな町中で!!
やめて、やめてください!!
アーーーーーーーーッ!
ひどい目にあった。
「今日は非常に有意義な一日でしたね」
俺は後半はいらなかったと思うんですが。
あ、そう言えばなんかアルがロリっ子巫女さん天国京都限定版とか言うのを買ってきてくれとか言ってたんですが。
「ああ、あれなら発行部数も少なかった限定物でしたからもう残っていないでしょう」
ああ~・・・。
まあ、アルのだしいいか。
「心配には及びません。私が5冊ほど持っていますので1冊あげましょう」
なんで5冊も持ってるんですか。
「なぜって、観賞用に保存用、携帯用に、枕の下に敷く用、さらに厳重保存用で5冊ですが」
そんな何言ってるんだみたいな目で見ないでくださいよ。
おかしいのは絶対詠春さんですから。
その日のうちに学園に戻ったのだが、喫茶店に戻った瞬間にアルが転移してきた。
そして、俺から例のブツを受け取ると狂喜乱舞して俺に土下座せんばかりに礼を言って転移していった。
あいつなんであんなジャストタイミングで来るんだよ。
どっかに監視カメラでも設置してるんじゃないよな。
あとがき
やっぱり紅き翼のメンバーは扱い易い。
書きやすくていい。
流石に学園生徒にこんなのはいないからなあ。
ネギパーティーから離脱者を出すにしても、抜けても支障の無いメンバーとかいるんだろうか。
別にパルとか朝倉、さよなんかはいなくても原作見てても問題ないんじゃないかとも思ったけど、メンバー抜けさせて続きが上手く書けるかな。
それにしてもロリ・エターナルか。
尋常じゃない数の仲間がいそうだと思った。
ロリ・エターナル集合とかなったらどれくらい集まるんだろうか。
THE FOOL読んでて、ダンが聖なるかなに行ったらどうなるかと考えたけど、どう考えても神剣使い相手だと瞬殺される。
せいぜい短距離転移で逃げ続けるしかない。
魔力切れた時点で死亡。
となりんちの望くん・・・・流石に始まらないな。