次の日、やはりと言うべきか答えを出せている子はいなかった。
まああんな映像見せられちゃあしばらくはまともに飯も食えんだろうし仕方ないか。
ただ、誰一人記憶を消してくれと言うことが無く、青ざめた顔だが、もう少し時間をくださいと言われた。
これから命も、人生までもかかってくることだからゆっくりと悩みなさいとだけ言い別れた。
しかし、その夜のことだった。
彼女たちに追い打ちを掛けるような事件が起こったのは。
高位悪魔の襲来。
喫茶店にいたとき、なんだか嫌な感じがするなぁとカップを磨いていると、タカミチから連絡が入った。
どうやら、他の魔法教師や魔法生徒は高位悪魔を使役する相手が放った他の悪魔が暴れているのを抑えるのに精一杯で、誰一人動ける状態じゃないらしい。
しかも、魔法で学園全体を見渡し指揮をとる学園長の監視魔法が捉えた情報によるとネギが生徒を攫われて、高位悪魔のところに向かったと言う。
俺はそれを聞いて急いで杖を手にその場所に向かった。
流石に高位悪魔はまずいだろ。
戦争中も召喚されてたけど、あいつらの力は半端じゃない。
ネギ、死ぬなよ。
ここか。
杖の上からステージを見下ろしてみると、ネギと、少年が高位悪魔と戦っていた。
確かに生徒たちも結界の中に囚われているようだ。
「なんだ、ダニエル来たのか」
エヴァ?!
なんでお前が、いやお前が気づかないはずも無いか。
なにここで見てるんだよ。
「ネギを助けに来たのか」
当然だろ。
あんなもんガキが戦う相手じゃない。
俺だって、一対一で戦うと正直負ける算段のほうが大きいと思うくらいだ。
「助けることは許さんぞ。
あれは、坊やの相手だ」
何言ってんだよ。
高位悪魔の力はお前も知ってるだろう。
「ああ、だからこそだ。
いつか坊やはナギを探しに行くだろう、お前の静止を降りきってでも。それもそう遠くないうちにな。
そうすれば、必ず道は魔法世界にたどり着く。
なら、あの程度の相手をどうにかできないでどうする。
ナギ絡みの事件に高位悪魔にも勝てないような人間が関わったところで死ぬだけだ」
それはそうだろうけど・・・。
でも、まだ早いだろ。
確かにネギは凄い、俺なんか比べものにならないくらいの才能を持っている。
でもまだあいつは10やそこらの子供なんだぞ。
どこにそんな年で高位悪魔とやりあうやつがいるよ。
「ああ、それもわかっている。
だが、坊やが道を決めている以上は力を得る機会、経験を得る機会は多いに越したことは無い。
高位悪魔を相手にする機会なんぞ滅多にあることではないからな。
この経験は坊やにとって大きな糧になる」
・・・・お前、ネギを死なせたくないから出来る限りの経験を積ませておきたいって素直に言ったら?
「な!そ、そういうわけじゃない!私はだなぁ!」
まあ、どちらにせよ。せめてあの生徒たちは助けてくるぞ。
あの子たちが捕まってるからネギ頭に血が昇ってるみたいだし。
ネギのほうも、本気でヤバそうだったら手助けはするけどな。
「ふん、好きにしろ」
お前なりに弟子のことを考えての行動なんだろうけど、今回ばかりは流石に命の危険もあるからな。
経験も何も死んでしまったら意味が無いだろ。
お前だってそのつもりだったんだろうしな。
茶々丸ちゃんに撮らせた映像記録でもなんでも戦いを見ることくらいはできるのに、こんなところで見ているってことはいざとなったら助けるつもりだったんだろ?
なんか茶々丸ちゃんライフルみたいなの持ってるし。
「違う、これはだな!」
「まあまあ、エヴァンジェリン殿もその辺にしておくでござるよ」
誰?ござる?
「長瀬楓か。坊や達を助けに来たのか」
「そのつもりだったのでござるがな。
失礼ながら二人の会話を聞かせてもらったら、そういうわけにもいかなくなったでごあるよ。にんにん」
えっと、エヴァ。
この子誰?
「坊やの生徒の一人だ。ちなみに魔法関係者ではないが、裏の世界の人間と同等の力を持っている忍者だ」
「忍者とはなんのことでござるかな?」
忍者ってまだ日本に残ってたんだ。
イギリスでやってた映画でしか見たこと無かったよ。
まあそれはともかく、ちょっと行ってくるよ。
「それならこれを持っていくでござる」
バスタオルがいっぱい?
「彼女たちも流石にあの姿では乙女としてまずいでござるよ。
急いで取りに行ってきたでござる」
ああ、そう言えば裸だね。
じゃあ、ありがたくもらっていくよ。
今度喫茶店に来てくれたらこのお礼でもするから。
「あいわかった」
この距離ならまだ短距離転移でなんとかなるな。
じゃあ、行ってくるよ。
「消えた。瞬間移動でござるか?」
「まあ似たようなものだ」
よっと。
あれ?なんで封魔の瓶がこんなところに。
まああのスライム達封じるのに使えそうだしもらっておくか。
「何だテメーハ!」
「ダニエルさん!」
あそこで戦っているネギの保護者みたいなものだ。
どうやら彼女たちが捕まっているせいでネギがまともに戦闘に集中できていないんでね。
君たち封印させてもらうよ。
封魔の瓶!
あれ?弾かれた?
「明日菜の力を利用して魔法を無効化しているです!ペンダントを取らないと」
うわ、魔法無効化か。
ならとりあえずペンダントを取らないと。
「そうはさせネエゼ」
スライムか。
無詠唱火の一矢!
「魔法は効かねえッテ」
俺の火の一矢は例のごとく足元にあたり土煙を巻き上げた。
「くそ、見えネエ」
「相手の狙いはペンダントデス。なら狙いハ!」
三体のスライムはどうやら明日菜ちゃんのほうに向かったようだ。
「いねエ!」
そんな正直に一直線に向かうはずもないだろう。
「ナッ!」
氣で強化した蹴りで三体のスライムを後ろから蹴り飛ばした。
流石にこれ一撃で倒すと言うことはできなかったが、距離は十分にとれた。
明日菜ちゃん、ペンダント取るよ。
「はい!」
よし、これで大丈夫。
「クソ!」
じゃあ、今度こそ封印させてもらう。
封魔の瓶!
「ちくしょーこんなあッさりト!」
どうやら術者が封印されたから結界も解けたみたいだし、これでネギの方も少しは落ち着くだろ。
「困ったことをしてくれたものだね」
人質なんて趣味の悪いことしてるんじゃねえよ。
「私としても不本意ではあったのだがね。これも目的のためならいたしかたないというわけだ」
「ダニエルさん!」
ネギ、エヴァがそいつはお前が倒せだと。
「なに言ってんのよ!」
いや明日菜ちゃん、俺に怒られても。
で、どうするネギ。
お前が無理だと言うのなら、俺も力を貸す。
「・・・・・いえ、大丈夫です」
本当にいいのか?
何も恥ずかしいことじゃない。
お前の年でそこまでやれただけでも十分にすごいよ。
「それでも、僕は自分の力でやりたいんです」
・・・・俺が本気でやばいと思ったら勝手に手助けするからな。
「ダニエルさん」
みんな、ごめん。
なんだか巻き込まれてしまったみたいだね。
「いえ、ダニエルさんのせいではありませんから・・・」
これ、バスタオル。
とりあえず体に巻いておくといいよ。
「ありがとうございます」
それにしても、死人が出なくてよかったよ。
「・・・・私たちは、魔法の世界のことを勘違いしていたようです。
こんな、こんな世界だとは思わなかった・・・・」
それに気づくのが誰かが死んだ後じゃなかったのは幸運だよ。
魔法の世界ではね、誰かが死ぬっていうのはこっちの世界よりもずっと身近にあることなんだ。
そのことを踏まえた上で考えて欲しい。
そして、できるなら記憶を消して以前の生活に戻って欲しい。
「・・・・まだわからないです。
どうしたいのか、私には私自身のことすらも・・・」
ゆっくりと悩めばいい。
落ち着いて考えて、そうして結論を出さないと。
きっと後悔するから。
「はい・・・でも、あの時、ネギ先生の過去を見たとき。
ネギ先生の力になりたいと思った。
そのことだけは私の本当の気持ちです」
そっか、ありがとう。
それじゃあ、俺はあそこで眠っている二人の様子を見に行ってくるけど、一人は刹那ちゃんだけど、もう一人は?
「あの人は、魔法のことも知らないクラスメイトです」
わかった。
どうやら眠っているだけみたいだな。
あの悪魔も人質を全く傷つけないとは変なところで紳士的だな。
「ん・・・・あら?私は、小太郎君が、あのおかしな人に・・・」
この子も見てしまっているのか。
どうしたものかな。
「あなたはどなたかしら?」
ただの喫茶店のマスターだよ。
「そのマスターさんがどうしてここに?」
ちょっと心配な子がいてね。
危なっかしい子ってどうにも放っておけないからさ。
「それは私もです。小太郎君も、とても元気が良くて、元気が良すぎて・・・・」
眠ったか。
まあ、まだ魔法が少し残っているみたいだしな。
さて、記憶を消すかどうかは学園長の判断に任せないといけないな。
でも、あれだけネギが魔法のことがバレてるのに気づかない人でも無いだろうし。
もしかすると、この子も消さずに放置ってことになるんじゃないか?
「ふはははは!ネギ君、君はとんだお人好しだなぁ!やはり戦いには向かんよ」
ネギ、勝ったみたいだな。
「はい」
よくやった。
本当に、よくやった。
「ダニエル・・・紅き翼のダニエル」
知ってたのか。
「知らぬはずも無いだろう。
私もあの戦争では何度も召喚されたことがあるのだ」
なら、何度か戦場で顔を合わせたこともあるのかもな。
あの戦争で見た悪魔の数なんかいちいち憶えてないけど。
「私は、見たことがある。
あの戦場で、必死に生きようとする幼かった君の姿は輝いていたよ」
あんたに見つかってよく死ななかったものだ。
「そのまえにサウザンドマスターにやられてしまったからね」
あいつ、俺の知らないところで。
「だが君はもう成長してしまったようだ。私の食指は動かないな」
それはありがたい。
あんたみたいなのと殺り合いたいとは俺も思わないんでね。
「私の召喚主からも話は聞いてあるよ。
戦闘経験の豊富な優秀な治療魔法使いが麻帆良にいるとね。
しかし、どうやら君でもネギ君の村の人間にかけた私の石化は解けなかったようだね」
ああ、残念ながら魔力が全然足りなくてな。
というか、あれはあんたがかけたのか。
「コノエコノカ嬢。
おそらくは極東最大の魔力を持ち、修練次第では、良き師に巡りあえば、世界屈指の、いや世界最高の治療魔法使いになれるだろう。
そうなった彼女ならば、私の石化を解けるかもしれないな。
そして、師は今ここにいる」
まずは木乃香ちゃんを魔法に関わらせるかを決めないと話にならないけどな。
俺としては反対なんだよ。
「魔法使いの君が、優秀な才能を咲かせること無く、潰えさせようと言うのかい?」
別におかしなことでもなんでもないだろ。
魔法に関われば、多かれ少なかれ戦いに巻き込まれる。
戦いなんて経験せずに済むならそれに越したことは無い。
「君はどうやら戦いが嫌いなようだね」
俺は毎日のんびりと過ごせたらそれでいいよ。
戦いなんてしたいと思ったことは一度も無い。
「そうか、どうやら君も戦いには向かないようだ。
どうして、私が目をつけた人間はこうも戦いに向かないものばかりなのか」
知るかよ。
「ネギ君、君には礼を言っておこう。
いずれまた、成長した君を見る日を楽しみにしておこう。
私を失望させてくれるなよ、少年。
ダニエル君、ぜひともその日が来るまでネギ君が死ぬことが無いように頼むよ!
ふふふ、はははははははは!!」
お前に言われなくても。
こっちはとっくにナギからネギを任されてるんだよ。
それに、ガトウさんが命に代えて守りぬいたアスナちゃんに、詠春さんの一人娘の木乃香ちゃんか。
・・・ちょっと、俺には重すぎるよ。
なあナギ、お前今なにしてるんだよ。
早く帰ってこいよ、バカヤロウ。
あとがき
スライムとの戦いでダン無双みたいになってるけど、原作でものどかたちでなんとかなったくらいだし、正直雑魚だろうと思い、このくらいあっさりと勝たせておいた。
スライムって基本的に雑魚だよね?
とりあえず、昨日は久しぶりにセーブに残しておいた文化祭のユーフィー達のところをプレイした。
やっぱり最高だわ。
ちょっと神剣宇宙に行ってくる。